原 著
肝腫瘍に対する化学塞栓療法後の肝区域・
亜区域内のlipiodo1停滞の検討
治一
謙秀
知澤
可門
ラ ドなロ ユ ユ レくヨく力肇暁備粥
鵬欄
学学
木本山鍛
医医
荒藤内礫傑
μ目μ
オ ユ ユ ユ画人樹
敏正正
原込楽
日苅松
抄録:肝腫瘍に対する化学塞栓療法施行後のComputed Tomography(CT)でi圭p圭odo}(以下 Lip)の,肝区域・亜区域内停滞の原困について検討した。 2週闇後のCTで肝区域・亜区域内にLipが停滞している8例を調査した。 停滞する原閃は(1)区域・亜区域内に比較的大量のLipを動注した場合および(2)Lipが門脈 内に流入した場合であった。特に門脈内に流入した場合,3週間後のCTでもLipの停滞が腫瘍内 のLipと同様の高い濃度で認められる領域が存在し,腫瘍内hpとの区別のため少なくとも1カ月 以後のCTでの再評価を必要とすると考えられた。 キーワード CT,リピオドール,抗癌剤,門脈内流入はじめに
化学塞栓療法(Transarterial chemoemboliz− ation, TCE)は肝細胞癌(H:epatocellular car− cinoma, HCC)の治療に有効である。しかし Gelatぬspo澱ge(以下GS)と抗癌剤を注入す る方法は門脈内腫瘍栓や小転移巣に限界があ る1)。一方,油性造影剤Lipiodo1(Lipiodo1 て」1trafru三d, ethylester of the fatty acid of poPPy seed oi1, Andr6−Gelbe Laboratory, France)と GSに抗癌剤を混舎させる方法2『4)はこれらに対 して効果があったという。我々は抗癌剤と:Lipi− odoi(以下Lip)を懸濁化(suspension)し用い ている。すなわちCis−Diamminedichloropla− tinum(CDDP)に関しては荒木ら5)の方法, Adriamycin(ADM)に関しては山下ら6)の方 〒409−38山梨県中巨摩郡玉穂町下河東l110 受付1989年4月26臼 受理1989年5月29日 法に準じ作成したものを用いている。さらに GSを症例に応じて注入している。 またLipは腫瘍【副管2)や腫瘍内6)に集積する ことから腫瘍の局在やTCE効果判定に有用と されている。その主な評価はComputed Tomo− graphy(CT)で成されている。 我々の施設ではルーチンとしてTCE後2週 間目にCTを実施している。この時腫瘍を含 む,もしくは含まない肝区域・亜区域内に腫瘍 と同等の高い濃度の:Lipの停滞を認める症例 を経験した。この現象の機序について検討し た。 対象と方法 a.対 象 対象は昭和59年3月から昭和64年1月までの 間に山梨医科大学附属病院放射線科を受診し, 超音波検査,CT検査,血液生化学検査より134 日 原 敏 彦,他 HCC,肝硬変症とHCCの合併,あるいは転移 性肝腫瘍と診断され,TCEを施行後2週間目 のCTで肝区域・亜区域内に:Lipが停滞してい た8症例である。男性7例,女性!例で,平均 年齢は54歳であったo b.方 法 b級 画像所見について次の項目に関して検討 した。 (!)CTでのLipの区域・亜区域内の停滞の 程度を観察しLipの停滞度を次の4つに分類し た。 惜 腫瘍内の:Lip集積とおなじ高い濃度のLip が区域・亜区域内の大部分, 升 腫瘍内のLip集積とおなじ高いLip濃度部 分が区域・亜区域内の半分以上, 十 腫瘍内のLip集積とおなじ高いLip濃度部 分が区域・亜区域内の半分以下, 一 Lipの停滞を認めない。
(2)さらにTCEから3週間後のCTを8例
中6例で実施し,(1)と同様に検討した。 (3)血管造影でのArterio−portal shunt(A−P shunt)の有無,:しip注入直後の門脈末梢枝の描 出の有無を調べた。 (4)肝胆道シンチグラフィにてLip注入後3 週目に,肝実質壊死の有無を3例で調べた。 b−2 TCEの手技に関して次の項目について 検討した。 (1)Catheter先端の肝動脈内での位置, (2)Lipの注入量, (3)抗癌剤使用の有無,(ADM 40 mgを含 有するADM一:しip suspension,もしくはCDDP 100mgを含有するCDDP−Lip suspensionを 注入している)。 (4)GS使用の有無,(1 mm3細片を注入して 表1.Lipiodolの局在部位と画像診断・TCE手技 iPostCT…症例禰礁麗i∵∵
の描出墨田
P盃管遥影…@ i
鑑,繧鴫㍑騨
罵趨iLi鷲doli擁斉畑町1呈
第・1・iHCC i右前上区域i+1㌧面臨前瞬+
第 2 羊 輩 3 4、 5. 6 7. 8.HCC
post opeHCC
HCC・LC β本内誼L 吸虫症 HCC・LCHCC
1eiomyo一 ご なつ ほは 肝転移N
N
右前上区域枝i 6m1 ● (3次枝)ii鴨脚
○ 右後上区域 帯 右前下区域 門葉・右葉 升 前区域 右前上区域 右後上区域 右前上区域 帯 十 十 N NN
PN
N
N
N
P P P P P PN
N
副肝動脈 (1次枝) 右肝動脈 (1次枝) 左肝動脈 (!次枝)7m1 ● i O
右前区域枝 (2次枝) :右肝動脈 (1次枝) 右肝動脈 (1次枝) N: P: 6ml !5㎜1 20m1 9m1 8m1 惜腫瘍内のLip集積と同じ高い濃度のLipが区域・亜区内の大部分 冊 〃 半分以上 十 ” 半分以下 一Upiodolの停滞がない ● ● ● ● ● 20ml ● ○ ○ ○ ● ● iミ≦塞ミ’ヒ{三 ● イ吏ノ匿Fヨ 陽性 ○未使用 ○いる)。 b−3 腫瘍とLip停滞との位置関係について調 べた。 c. 撮影装置,撮影法 使用機種はGE−CT9800,肝全体をスライス 幅は10rnm,スキャン時間は2.Osec/slice, window幅250 HU,1eve140 HU とした。 いる(図1−b)。血管造影でA・Pshuntを認め ず(図!−c),Lipの門脈末梢枝への停滞を示さ なかった(図1−d)。カテーテル先端を右前上区 域枝(3次枝)に置き,Lip 6 m1を注入, GS は注入していない。 <症例3>(第2群) 2週間後のCTでは右後上区域にLipの灘区 結 果 8例の画像所見とTCEに関するデータを表 1に示す。これらのデータの比較から,Lip注 入直後のLipによる門脈末梢描出の有無で2つ のグループに分けることができた。認めなかっ た症例を第1群,認めた症例を2群とした。
第1群は2例(症例1,2)あり,3週間後
のCTではLipの停滞を認めなかった。1例は カテーテル先端が3次枝(亜区域枝)に,!例 は2次枝(区域枝)におかれ,.血管造影では A−Pshuntは認められなかった。比較的大量の Lip(6ml,7m1)が注入された。第2群は6例(症例3∼8)あり,3週間後
のCTを実施した4例とも強いLipの停滞を認 めた。5例ではカテーテル先端は1次枝に,1 例では2次枝(区域枝)におかれた。血管造影 ではA−Pshuntは1例(case 4)のみで認めら れた。:Lipの量は6m1∼20 ml(平均13ml) で比較的大量に注入された。肝胆道シンチグラ フィを3週間後に実施した3例とも区域・亜区 域内の肝実質壊死を示さなかった。 第1群と第2群をあわせた8例においては抗 癌剤は全例で使用され,GSは2例に使用され ていた。腫瘍とLip停滞部位の位置関係では腫 瘍を含んでいるものが8例中6例認められた。 症 例 〈症例工〉(第!群) 2週間後のCTでは右前上区域にLipの亜区 域性の停滞(停滞度+)を認めた(図1−a)。3 週間後のCTではLipは消失(停滞度一)して 攣, 図1−a 2週間後のCT 図1−b 3週間後のCT 図1℃ 右前上区域(3次枝)の選択的動脈造影136 日 原 敏 彦,他 図1−dlipiodol 6 m1の注入後
繊﹃
響
欝
繰,灘
∫箋 図2−c 腹腔動脈造影 域性の停滞(停滞度忘)を認め(図2−a),3週間後のCTでもLipは停滞していた(停滞度
十)(図2−b)。血管造影でA−Pshuntを認めな かったが(図2−c),Lipの門脈末梢への停滞を 認めた(図2−d)。カテーテル先端は右肝動脈 (1次枝)に置かれLip 6 ml注入, GSは注入 していないQ 図2−a 2週間後のCT 図2−d:Lipiodol 6 ml注入後 〈症例5>(第2群) :Lip注入直後,左葉と右葉前区域の門脈末梢 に,Lipの停滞がみられた。2週間後のCTで も同様に左葉と右葉前区域にLipの停滞を見た (停滞度什)(図3−a)。3週間後の肝胆道シンチ グラフィでは異常区域欠損像を認めなかった (図3−b)。図2−b3週間後のCT
図3−a 2週間後のCT図3二b 3週間後の肝胆道シンチグラフィ 討 論
TCE後2週塚目のCTで:Lipが肝区域,亜
区域内に停滞する誘因として,Lip注入直後Lip による門脈末梢の描出を認めない症例(第1群) では比較的狭い領域に大量のLipを注入したこ とがあげられる。この群に属する2例のうち1 例は3次枝から,他は2次枝からLipが注入さ れている。:Lipによる門脈末梢の描出を認める 症例(第2群)のうち5例は1次枝から1例は 2次枝から注入されているが,やはり比較的大 量のLipが注入されている。以上より2次枝 (区域枝)ないし3次枝(亜区域枝)に単に:Lip を大量に注入した場合とLipが門脈末梢枝に流 入した場合があるといえる。 さらにLipの注入量に注目し,同量(6 m1) のLipを注入した症例1と症例3の3週間後の CTを比較してみると,門脈にLipの停滞を見 た症例3で明らかにより高濃度のLipの停滞を 認める。すなわちLipが門脈内に流入した場合 は,流入しない場合に比べ,非腫瘍性肝実質で Lipの停滞が長いと考えられる。また3週間後 に実施したCTで,症例3を含めた第2群のす べての症例が,腫瘍内Lipと同じ高い濃度とし て,区域・灘区域内にLipの停滞を示したこと はこの事を裏付ける。 臨床的には肝腫瘍,特に肝細胞癌に対する Lipの肝動脈注入は小腫瘤の存在診断やTCE の評価に有用であるとされている1−4)。Yumoto ら7)は,Lip 2∼5mlと抗癌剤および, GSを注 入後7∼10日目で非腫瘍1生肝実質と腫瘍内の :LipをCTで明瞭な濃度差として認めている。 また松井ら8)の手術切除標本の組織観察例での 検討では,Lip単独1∼7ml(平均3.5ml)の 注入で非腫瘍性肝実質から15日前後で,また腫 瘍非壊死部からは20∼30日前後で消退してい る。さらにLip単独動脈内注入後に惹起された 腫瘍壊死部,非腫瘍性肝実質壊死部では30日以 上長期停滞をCTで認めている。これらの結果 から彼らは,Lipは病巣のvascularityに比例 して分配集積し,注入後に惹起された壊死部に 30日以上長期停滞する。またLipには腫瘍選択 性あるいは腫瘍親和性はないと述べている。我 々の検討では門脈へLipが流入した場合,3週 間後のCTでも非腫瘍性肝実質に腫瘍内と濃度 が同じ程度に高い:Lipの停滞が認められた。特 に腫瘍を含んでLipの停滞をみるとき,非腫瘍 性肝実質との鑑別がつかない。少なくともTCE 後のCTで2週間目と3週問目の区域・亜区域 内のLipの高い濃度領域の減少が認められるこ とから非腫瘍性肝実質からはLipが排出を継続 していると考えられる。よってTCE後に惹起 された腫瘍壊死部のLipと非腫瘍性肝実質内 Lipの明瞭な濃度差をCTで証明するためには !ヵ月以上の期間を要すると考えられる。 我々はLipに抗癌剤を懸濁化したものを注入 し門脈末梢を描出した3例において,Lipによ る門脈閉塞ないし抗癌剤の毒性で非腫瘍1生肝実 質の壊死をきたすのではないかと考え,肝胆道 シンチグラフィで3週間後に調べてみたが,区 域・亜区域性の壊死像は認められなかった。 Lipに抗癌剤を用いた我々の症例では肝梗塞を 示すような所見は特に認めなかった。しかしな がらSatohら9)の犬の実験ではLipとGSを用 いると肝実質の壊死率が高く,併用時はLip O.2m1/kg以下が妥当とされる。人間にそのま まこのことを適応させるのは難しいが。Lipに GSを併用するときはLipの注入量に注意しな ければならない。同様のことをNakamuralo)ら も報告している。138 日 原 敏 彦,他 Lipが門脈へ流入する経路として鏡L管造影で A−Pshuntが認められる場合は明らかである。 一方,A−P shuntが認められない場合, Naka− muraら10)は門脈末梢Lipの停滞は:Lipの動注 量と関係しており,A−P communicationを通 過すると推定している。すなわちA−Pcom− mu取icationとはBookstainら11)の言うtrans− si難usoidal routeとtransvasal route, Choら12) の言うperibiliary vascular plexusの3つ通路 を意味する。また出町ら13)は肝硬変を除外する と門脈と sinusddの間に弁様の endothelial ce1P4)が存在するためperibiliary vascdar plexus を通過するであろうとする。我々のCTでの Lipの区域・亜区域性の停滞の観察では腫瘍を 含んでいる症例が多く(8例中6例),腫瘍と関 連するtransvasahouteを推定した15)が結論に は達しなかった。 Lipが門脈内に流入し,非腫瘍性肝実質に比 較的長期に停滞していた理由を考える場合, Lipの排出経路を知らなければならない。 Iwai ら16)のC−14Lipiodo1の生体内分布の研究では 注入後15分で肝臓に高い活性を認めたが,本質 的には胆汁内に存在する活性を示したとする。 さらに少量は肺臓と脾臓に存在したという。最 近のMillerら17)の報告によれぽ胆汁内への早 期排出は肝臓間質系の活性化によるが,それは Lipのsi獄usoidでの微小塞栓による肝虚」血の存 在もしくはKupffer細胞によるLipの貧食によ り促進されると推定している。その後:Lipは Kup登er細胞から肝細胞へ移動し,そこで代謝 され胆汁内へ排出される。残りのLipは循環系 である肝血管を通過して,肺臓・脾臓・骨髄の 網内系で処理されるとする。しかし門脈内に流 入した場合に関しては特に報告がない。我々は 推定の域を脱しないが,門脈圧が肝動脈圧より 低い状態のため,門脈内へ流入したLipがゆっ くりsiRusiodへ」順行性に流れており, Kup旋r 細胞で直接貧食されるまでに時間がかかると考 えている。さらに:Lipと抗癌剤には毒性が存在 するため,Lipないし抗癌剤の停滞が長いこと によりKupf£er細胞ないしは肝細胞に障害を与 え胆汁内への排出を遅らせている可能性が考え られる。 我々の今回の検討では:Lipに抗癌剤を懸濁化 (suspensiOH)したものが門脈へ流入して区域・ 亜区域内に比較的長期間停滞したものが多かっ た。肝胆道シンチグラフィでは肝梗塞所見は認 めなかったが,この領域での肝機能障害は強い と推定される。またこのような場合少なくとも !ヵ月以後のCTを実施しないと非腫瘍性肝実 質部のLipを腫瘍内:Lipと見誤ると考える。 1【≧e£erellces りNakanlura H:。, Tanak我TりHori s・・8‘α∼・: Tr鋤scathαer cmbolizatiα10f hepatocdlular carcinoma: assess翌]αent of ef轟cacy in cascs of resectioll f◎110wing em正)oliz盆tion. Radiology, 1983; 147:401−405. 2) Ohishi H., Uchida H・, Yoshi][蒙1ur批 H・・ 8孟 αど。: Hepatocellular carcinoma deteαed−by io(玉ized oi至:use o釜anticancer ageuts・ R・adio玉ogy,1985; 154: 25−29. 3)Nakam珈a H.:Tra装sc縦theter chemoemboliza− tion o£hepatocelMar carcinoma・1η:Kimura K。,Yamada K., Krako経IH., C㍑ter SK. eds. Cancer chen㌃otherεしPy: challenges for the fu一 ωre. h玉ternational Congress Series 729。 Tokyo: Excerpta M¢(lica,1986;272」280・ 4)Takayasu K,, Shima Y., Muramatsu Y.8‘αZ.: Hep縦t・ce1Mar carci捻・ma:treatme航with in− traar宅erial io(lized oil with a麹d without chemo− therapeutic agen£s・ Radiology,1987;王63:345− 35璽. 5)Araki T., Hihara T・, Kachi K・8’α乙:Newly developed transarterial chemoembolizatlon搬a− teria1: C]DI)P−Lipioぐlo三 Suspension Gastroin− tes£. RadioL, 1989; 14:46−48. 6)山下康行,他:各種轡型の抗癌剤一Lipiodolに よる肝動脈塞栓療法の実験的研究。口細医議会 誌, 1985; 45: 1313−1321, 7>Yumoto YりJh}no K・, Takuyama K.8孟αz・: Hepat・cellu1段r carcin・ma detected by iodized oiL Radiology, 1985; 145: 19−24・ 8)松井 修,高島力,角谷真澄,他:肝癌内Lip。 iodo互集積機序について一Lipiodo1単独動注例 における検討一日本医放会誌,1987;47:1395− 1404. 9)Satoh M・, Kish玉K・, Shimoy段ma Y沼∠α1・:£耀ects o11:Liver Tissue o{犯xperi㎜ental B:ep縦tic Ar しeγyRmbol三zaticH with Iodized Oil and Gei飢i嶽
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