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チオ尿素溶液中における金合金の電解研磨挙動 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 望月 陽介 博士の専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 医工博甲第336号 学 位 授 与 年 月 日 平成27年3月18日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 機能材料システム工学専攻 学 位 論 文 題 目 チオ尿素溶液中における金合金の電解研磨挙動 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 柴 田 正 実 教 授 川 久 保 進 教 授 鈴 木 章 泰 教 授 奥 崎 秀 典 准教授 山 中 淳 二 准教授 柳 博

学位論文内容の要旨

金合金の研磨工程には,毒性の強いシアン化合物を含む研磨液を使用した化学研磨や電 解研磨が用いられており,シアン化合物を含まない研磨液が望まれている.そこで,本研 究では,貴金属と安定な錯体を形成するチオ尿素に着目し,研磨液として用いることとし た.チオ尿素溶液を用いた金合金の電解研磨挙動を解明するとともに,研磨工程に使用可 能な非シアンの電解研磨液の開発,および研磨条件の確立を目的とした.本研究では,低 品位金合金として宝飾製品での利用が増えているK10(Au 含有量 41.7%の金合金)を対象 とした.また,従来法であるシアン化合物を用いた化学研磨法を用いたとき,K10 の研磨 面の光沢度は,Gs(60°)=745 であった.

Au-Ag-Cu 三元合金の一つである K10YG(イエローゴールド)(Au42%,Ag37%,Cu21%) についてチオ尿素溶液における電解質の効果を検討した.電解質として硫酸を用いて0.6 V (vs. Ag/AgCl)で電解研磨したときのみ,光沢を有する研磨面が得られ,研磨面を平滑化 し,光沢面とするためには,硫酸イオンが必要であることを見出した.硫酸,チオ尿素溶 液を用いた電解研磨では,チオ尿素濃度≧0.5 mol・dm-3,硫酸濃度≧0.2 mol・dm-3のとき 光沢面が得られた.0.5 mol・dm-3硫酸,0.5 mol・dm-3チオ尿素溶液を用いて,0.6 V で 300 秒間電解研磨を行った結果,光沢度は 700 を超え,シアン化合物を使用した従来法での結

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果と同等の光沢度を得ることができた. 回転電極法を用いて拡散速度を変化させたときの電解研磨挙動について検討した.拡散 速度を増加させることによって,硫化の始まる電位が貴な電位へシフトすることが判明し た.このことから,電極表面近傍に存在する溶解した金属錯体イオンの濃度が上がること で,研磨面の硫化反応が促進されていると考えられる.光沢面が得られる電位での電流密 度は,無撹拌条件下よりも撹拌条件下の方が大きかった.研磨液の撹拌は,研磨時間の短 縮効果をもたらすことが分かった.撹拌条件下では,1.0 V で 30 秒間電解研磨することで, 従来法と同等の研磨面が得られた. K10(Au-Ag-Cu)三元合金における研磨挙動をさらに解明するために,各単体金属およ び二元合金について,硫酸,チオ尿素溶液中での電解研磨挙動を調べた.K10(Au-Ag-Cu) で光沢が得られた電位では,いずれの単体金属においても光沢面は得られなかったが,Ag およびCu ではより卑な電位において光沢面が得られた.Au はいずれの電位においても光 沢面が得られなかった.このことから,研磨面に平滑化をもたらすチオ尿素金属錯体イオ ンと硫酸イオンから形成される層は,Ag および Cu の存在下で形成されることが判明した. また二元合金では,Au の含有量が 40%付近の合金において光沢が得られ,Au の含有率に も影響を受けることが判明した.Au の含有率が大きいと表面が粗くなり,Au の含有量が 小さいと表面が硫化することが分かった. K10(Au-Ag-Cu)三元合金において Ag と Cu の影響について検討するため,Ag/Cu 比 を変化させた合金について硫酸,チオ尿素溶液中での電解研磨挙動を比較した.Au と合金 になった場合,Cu に比べて Ag の方が研磨されやすいことが判明した.また,貴な電位で 生じる表面の硫化膜は,Ag を多く含む金合金の方が形成しやすいことが判明した.いずれ の合金においても同様の電解研磨条件で光沢面が得られため,同時に 2 種類の合金を研磨 することも可能であった.このことから,コンビと呼ばれる二色の合金から作られる宝飾 製品についても利用可能であることが示唆された. Au,Ag,Cu 以外の金属(Zn,Pd)を含んだ K10 の電解研磨について検討した.Zn を 含んだ K10YG(Au-Ag-Cu-Zn)四元合金では,K10(Au-Ag-Cu)三元合金と同じ条件で 光沢面を得ることができた.金合金に含まれるZn は K10 の電解研磨挙動にほとんど影響 を与えないことが判明した.研磨面の光沢度も 700 を超え,三元合金の場合と同様に,従 来のシアン化合物による化学研磨と同等の研磨面を得ることができた.一方,Pd を含んだ 金合金の場合,その電解研磨挙動は異なり,同条件では光沢面を得ることができなかった. Pd がチオ尿素溶液に溶解しにくく,十分な溶解速度が得られないためであると考えられた. 研磨液に用いる電解質および研磨電位を検討した結果,電解質に硫酸ナトリウム,研磨電

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位を0.9 V とすることで,研磨面は滑らかになったが,Pd を多く含む大きな凸部が多数現 れ,光沢面とはならなかった.Pd の溶解を促進するため,Pd と錯体を形成する EDTA-4Na を研磨液に加えることで研磨面を改善することができ,0.5 mol・dm-3硫酸ナトリウム,0.5

mol・dm-3チオ尿素,0.1 mol・dm-3 EDTA-4Na 溶液を用いて 0.9 V で電解研磨することで光

沢面を得ることができた. K10 の 鋳 造 材 料 に 対 し て 研 磨 液 を 応 用 し た . K10 ( Au-Ag-Cu ) お よ び に K10 (Au-Ag-Cu-Zn)では,樹枝状の鋳造組織が現れたものの光沢を有する研磨面を得ること ができた.一方,K10(Au-Ag-Cu-Zn-Pd)では,光沢が得られなかった.溶解しにくい Pd に偏りがあるためであると考えられる. 実際の K10 の製品パーツについて電解研磨を行った.K10(Au-Ag-Cu)および K10 (Au-Ag-Cu-Zn)の圧延および鋳造の製品パーツは,すべての面に光沢が得られ,良好な 研磨結果となった.また,複数試料を同時に研磨する方法についても検討した結果,すべ ての試料について良好な結果を得ることができた.これらの合金において,従来のシアン 化合物を用いた化学研磨の代替手法として期待できる.

論文審査結果の要旨

本研究では,貴金属と安定な錯体を形成するチオ尿素に着目し,研磨液成分として用い ることとした.それらの金合金表面上での電解研磨挙動を解明することを目的とし,同時 に,チオ尿素を用いた非シアン系電解研磨液の開発,および研磨条件の確立を目的とした. 第一章は,本研究の緒言であり,現在の金合金を取り巻く状況,化学研磨や電解研磨の 原理,電気化学におけるチオ尿素の反応について記している. 第二章では,低品位金合金として需要の多いK10(Au 含有量 41.7%)の Au-Ag-Cu 三元 合金についてチオ尿素を含む電解研磨液の効果を検討した.電解質の種類や濃度を変化さ せた結果,研磨面を平滑化し光沢面とするためには,硫酸イオンの存在が必要であること を見出した.さらに,光沢が得られる電位領域では電極近傍の反応機構について考察した. 研磨液の濃度および研磨時間を制御することで,従来法のシアン化合物を使用した化学研 磨と同等の研磨を行うことができたと記している. 第三章では,研磨液の撹拌等による研磨挙動を検討した結果,拡散速度を増加させるこ とによって,硫化の開始電位が貴な電位へシフトすることが判明した.硫化電位のシフト と同時に,拡散律速となっている電位での電流密度が大きくなっており,研磨時間の短縮 効果が得られることを記している.

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第四章では,三元合金における研磨挙動についてさらに検討するため,各単体金属およ び二元合金について,硫酸,チオ尿素溶液中での電解研磨挙動について検討した.三元合 金で光沢を得られた電位では,いずれの単体金属においても光沢面は得られなかったが, Ag および Cu ではより卑な電位において光沢面が得られた.このことから,研磨面に平滑 化をもたらすチオ尿素金属錯体イオンと硫酸イオンから形成される層は,Ag および Cu に よる効果であることが判明した.また二元合金では,Au の含有量が 40%付近の合金におい て光沢が得られ,Au の含有率にも影響を受けることが判明したことを記している. 第五章では,K10(Au-Ag-Cu)三元合金における Ag と Cu の影響について検討するた め,Ag/Cu 比を変化させた金合金について電解研磨を行った.その結果,Au 合金では Cu よりもAg の方が研磨されやすいことが判明したと記している. 第六章では,他金属(Zn,Pd)を含んだ K10 の電解研磨について検討した.Zn を含ん だK10(Au-Ag-Cu-Zn)四元合金では,K10(Au-Ag-Cu)三元合金と同条件で光沢面を得 ることができた.一方,Pd を含んだ金合金の場合,硫酸ナトリウム,チオ尿素,EDTA-4Na 溶液を用い,K10(Au-Ag-Cu)三元合金よりも貴な電位で研磨することで光沢面を得るこ とができたと記している. 第七章では,K10 の鋳造材料に対して開発した研磨液を応用した.K10(Au-Ag-Cu)合 金およびに K10(Au-Ag-Cu-Zn)合金では,樹枝状の鋳造組織が現れたものの光沢を有す る研磨面を得ることができたことを記している. 第八章では,実際の K10(Au-Ag-Cu)合金および K10(Au-Ag-Cu-Zn)合金の製品パ ーツでは,すべての面に光沢が得られ,良好な研磨結果となった.開発した電解研磨方法 は,従来のシアン化合物を用いた化学研磨の代替手法として期待できることを記している. 以上、本論文はチオ尿素を用いた非シアン系電解研磨液を開発し,金合金表面上での電 解研磨挙動を解明することによって最適研磨条件を確立し,従来のシアン系化学研磨の代 替手法として期待できることを実証したものであり,実用上重要な知見を多く含んでいる. よって,本論文は博士(工学)の学位論文として,十分に価値があると認められる.

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