鉄(VI)酸カリウム処理による水中有機物の
存在形態の変化
風間ふたば 加藤健司 (昭和59年8月30日受理)
Oxidative Changes of Organic Characters in the
Waters by Ferrate (VI) Treatment
FutabaKAZAMA KenjiKATO Abstract Astudy on the effectiveness of potassium ferrate as an oxidant in treating waters was carried out. River waters and waste waters were used as samples. Such water indexes as COD, BOD, TOC and molecular weight distributions were examined, before and after ferrate treatment. The ferrate oxidation of organic matters in the waters resulted in the following changes: 1)The dissolved organic matters which passed through the filter with O.45μm pore size increased where would be explained by transformation of the particulate organic matters into the smaller particles. 2)The compounds of higher molecular weight also tended to transform into the compounds with molecular weigth below lOO. 3)The UV−absorption of dissolved organics decreased similarity of the distribution changes.
1.はじめに
6価の鉄を中心原子とする酸素酸のカリウム塩(K2 FeO、)は,乾燥状態では極めて安定な化合物で,水に よく溶解して505nmに吸収極大を持つ赤紫色の水溶 液となる。 先の報告1)でも紹介したように,鉄(VI)酸イオンは 水中で強い酸化力を示し,酸化還元反応の結果,水酸 基を放出してpHを増大させると同時に水酸化鉄(III) を生成する。さらに,大腸菌をはじめとする多くの細 菌やウイルスに対して強力な殺菌効果を示すために, いくつかの機能を持ち合わせた水処理剤として興味が よせられて,1970年代よりMurmanら2), Waite3), Carr4)らによる研究が進められており,著者らも殺菌剤として特異的な特性を持つことを指摘してき
た5)6)。 K2 FeO4は1840年代にはじめて合成され,その強力 * 環境整備工学科,Department of Environmental Engineering な酸化力はすでにこの頃より知られていた。その後, 1900年代にかけて硫化水素,亜硫酸,アンモニア,エ ーテル,クロロホルム,アルコールなどの各種の化合 物に関する酸化反応について定性的な研究が進められ ていた。さらに,近年Waiteら7)やCarr8)は芳香族化 合物,有機酸,アミノ酸などを対象として反応速度定 数の測定や酸化反応に及ぼす諸因子について化学的な 解析を行っている。その結果,K2FeO4の酸化反応の特 異性がしだいに明らかにされるとともに,その複雑な 反応機構についても興味ある示唆が得られてきた。 ところが,都市河川水や下水などを試水として,衛 生工学的な立場から酸化実験を行った例は比較的少な く,とくに都市河川水や下水などに含まれる有機物の 存在形態がK2 FeO、による酸化の結果どのように変化 するかを検討した報告はほとんどない。このようなK2 FeO、処理に伴う水中有機物の変化は,それら試水その ものの水質特性と,それらに含まれるもろもろの有機 物の種類とともに,それらの存在形態によっても異な るものと考えられる。今回,甲府市内の河川水や下水終末処理場内の工程 水など,その水質特性を異にする数種の試水を対象と してK2 FeO4による酸化実験を行い,それらに含まれ る有機物の存在形態を示唆するCOD, BOD, TOC値 などの増減や有機物の分子量分布の変動について研究 したので,その結果を報告してK2 FeO4を用いた酸化 処理の特色を明らかにしてゆきたい。 2. 実験材料および実験方法 2.1実験材料 甲府市内を流れる貢川と濁川から採取した河川水と 市内0下水終末処理場から採取した初沈後水と二次処 理水とを試水として実験に供した。表一1は,それら試 水の採水日と水質分析結果とを示したものである。 終末処理場の初沈後水は,COD値で数十から数百 ppmを超える比較的高濃度の有機物を含み,0.45μm メンブランフィルターを通過しない懸濁態の有機物の 比率も多かった。これに対して,二次処理水になると 有機物濃度も当然希薄になり,また懸濁態のものは少 なく溶存性の成分がほとんどを占めていた。一方貢川 および濁川の河川水は,上述の二次処理水とほぼ同程 度の有機物を含んでいた。 実験に供したK2FeO4はSchreyer7)らの方法に従 い合成したもので,その純度は94.5%Schreyerら9)である。 2.2 実験方法 試水200∼500mlにK2 FeO4粉末を125∼1000 mg/ 1(35∼283mg−Fe/1)となるよう添加して撹拝後,室 温で暗所に24時間放置した。前述のようにK2FeO、は 酸化反応により水酸基を放出するので,試水のpHは 除々に上昇して,24時間後にはK2FeO4を125 mg/1 添加したものはpH 7.7∼9.5,1000 mg/1加えた場合は pH 10.7∼11.7を示していた。またK2FeO4添加直後は 赤紫色を呈していた試水は水酸化鉄の生成により赤褐 色を呈するようになり,沈殿部分と上澄み部分とに分 離していたので,マグネチックスターラーにて分散懸 濁させ,まず処理水全体のCODc,, CODM,(以後これ らをT−CODc., T−CODM.と称す)を測定した。つぎ に処理後の溶存性有機物濃度を求めるために,メンブ ランフィルター(0.45μm)にて水酸化鉄を含む懸濁液 を炉過して,その炉液にっいてCODc,, COD.。, BOD, TOC(以後これらをFCOD,,, F−CODM。, F−BOD, F−TOCと称す)を測定した。 実験に供した初沈後水およびそれをK2 FeO4酸化 処理した試水は,それらに含まれる有機物の分子量分 布を知るため,いずれもメンブランフィルターで炉過 し,その400m1をとりロータリーエバボレーターを用 いて約20倍に濃縮した。その際沈殿が生成したのでこ れをさらにメンブランフィルターで除去してから,こ の8mlを内径2.1 cm,長さ60 cmのセファデックス G−15ゲルカラムに注入し吸着させた後,pH 9.0の溶 表一1 試水の水質 初 沈 後 水 二次処理水 貢川河 川水
濁川河川
水 採 水 日 (1) (2) (3) (2) (1) (2) (1) (2) 気 温 (℃) 18.2 15.0 7.9 15.0 6.4 3.2 5.2 8.0 水 温 (℃) 17.5 17.0 13.3 17.5 8.8 5.1 8.2 9.5 pH 7.3 7.0 7.1 7.3 7.1 7.1 7.3 7.2 SS (mg/1) 167.5 698.0 362.0 1.2 35.4 6.2 3.5 16.8 IL (mg/1) 134.5 630.0 324.0ND
8.4 3.9 3.0 4.3 Cl− (mg/1) 34.8 36.0 362 51.2 37.6 11.3 12.7 33.1 NH、+−N (mg/1) 44.0 20.8 60.0 12.1 2.7 3.7 4.9 4.8 NO、一一N (mg/1) 0,109 0,005 0,194 0,004 0,008 0,060 0,044 0,064 NO、『−N (mg/1) 0.7 3.1 0.6 7.8 1.9 1.9 0.4 4.5 PO43−−P (mg/1) 3.9 4.0 N.D 0.9 0.8ND
1.3 N.D DO (mg−O、/1) 0.1 N.D 0.6 1.7 9.7 10.6 8.7 6.4 CODM。 (mg−02/1) 64.6 246.6 70.4 8.0 5.7 4.8 7.5 5.8 (Fつ 25.3 21.1 一 7.4 5.3 4.1 6.1 4.9 COD、, (mg−O,/1) 275.6 1019.7 310.1 13.5 21.9 14.5 20.3 15.3 (Fつ 49.0 100.5 34.9 11.0 152 12.7 17.5 13.0 BOD (mg−02/1) 362.0 672.0 187.0 5.0 11.3 10.6 一 9.0 (F*) 19.0 71.4 } 4.2 一 14.2 一 14.5 採水日 (1)1982年11月12日 (2)1982年11月29日 (3) 1982年12月8日 *0.45μmメンブランフィルター炉過液液を用いて1ml/minの流速で展開した。これらの展 開液はフラクションコレクターにて5m1ずつ分取し, そのTOCと紫外吸収を測定してゲルクロマトグラム を作成した。 3.結果と考察 3.1K2FeO4の酸化による有機汚濁指標の変化 採取した試水のすべてについて添加量を変えてK2 FeO4処理を行ったのち,それらのCOD, BOD, TOC を測定したが,図一1はそのうち初沈後水と二次処理水 および貢川河川水を取りあげて,その結果を示したも のである。 図一1において,K2 FeO4添加量を増やしてゆくと, 処理水そのものも,それを炉過したものも,その CODM。はいずれの試水の場合にも処理前の原水の値 より小さくなるが,それに対してCODc,値は試水によ り処理前後で異なった変動を示している。すなわち, 懸濁物が極めて少ない二次処理水ではK2 FeO4処理に よってCODc,もCODM。とほぼ同じ割合で減少してい るのに対し,懸濁態の有機物を多量に含む初沈後水や, 貢川河川水ではK2 FeO4処理後も全体のCODc,(T− CODc,)は処理前の原水の値とほとんど差が認められ ないのみならず,これを炉過した場合にはそのTOC
値もBOD値もCODCr値とともに増加するのが特徴
的である。とくにCODc,として220 mg−02/1ほどの 懸濁物を含んでいた初沈後水では500mg/1濃度にK2 FeO4を添加し処理したことにより炉液のCODc., BODとも約20 mg−02/1も増加している。 このような傾向は採取した他の試水についても一様 に認められたので,用いた試水すべてについて500 mg/1のK2 FeO4を添加し処理した場合について,処 理前の原水中に含まれていた懸濁態の有機物量(S− CODc,:T−CODc,−F−COD,,)と酸化処理によって増 加した溶存性の有機物量(△CODc,,△BOD,△TOC) との関係をプロットしたところ,図一2のように両者の 間に明瞭な相関性が認められた。したがってK2 FeO4 処理によって,懸濁態として存在していた比較的大型 の有機物が酸化分解して0.45μmのフィルターを通衰 ミ
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●CODCr ▲BOD ■TOC (K2FeO45Cllrg/1) ●−
1.O lO lOO lOOO S−CODCr(㎎一〇2/1) ( S−CODCr=T−cODcr− F−CODCr )試水の懸濁態有機物
図一2K2FeO4処理による溶存性有機物の増加 300 、250 ?9100
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0 250 500 750 1000 KF・04(・g/1) F−COD Cr ●ノLr三堕qr±
△’ F−COD Mn 250 500 750 1000 K2F・04(・g/1) 初沈後水(1) \15ぶ
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250 500 750 1000 K2F・04(・g/1) 250 500 750 1000 K2FeO4(・g川二次処理水
図一lK2FeO4による試水の酸化 20\15
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§ご8
0 250 500 750 1000 K FeO (mg!1) ・レー「㍍一゜「▲一 ● F−COD Cr F−TOC F−CODMn
250 500 750 1000 K2F・04(・g/1) 貫川河川水(1)過するまでに低分子化したことは明らかである。 一方,溶存する有機物の化学的な酸化に対する抵抗 性や生分解性など,K2 FeO、処理に伴うその化学的性
状の変化を検討するために,炉液についてTOCと
CODc,の比ならびにCODc.とBODとの比を求めK2
FeO4濃度との関係を表一2,表一3にまとめてみた。それ らの表から明らかなように,K, FeO、濃度が高くなる につれて,F−COD,./F−TOCはほとんどの場合小さく なり,またF−BOD/F−CODc,はわずかながら増加す る場合が多くなっている。 この結果はつぎのように解釈することができよう。 すなわち,前述のようにK2 FeO4処理により,比較的 大型の懸濁態有機物が酸化されて低分子化し,溶存態 となった結果,F−TOCは増加したものの,まだ化学的 酸化に抵抗性を持ったものが多いため,F−COD,,はそ れに比例しては増加せず,そのためF−CODc,/F−TOC は表面上減少するように見える。また,K2Cr207で酸 化される形態となったものの生分解性は,どちらかと いえば幾分増加するため,F−BOD/F−CODc,を見ると わずかながら増加する結果となって現われた。 このように,K2 FeO4処理は懸濁態有機物などを低 分子化するとともに,その低分子化された有機物への 生分解性を幾分増加させるとみるべきであろう。 3.2 K2 FeO4処理による溶存有機物の分子量分布 の変化 上述の実験結果につづいて,K2 FeO4処理による水 中有機物質の低分子化の実態を具体的に把握するため 処理場の初沈後水を対象にして,酸化処理前後の有機 物の分子量分布の変動をゲルクロマトグラフィーで調 べてみた。 図一3はK2 FeO4処理前後のゲルクロマトグラムで ある。図一3から,初沈後水は広い分子量分布を示し,分子量数百∼数十の範囲にかけて4∼5個のTOCの
表一2 溶存性有機物質の変化 (1) (F−CODCr/F−TOC) K、FeO、(mg/1) 0 125 250 500 1000 初沈後水 (2) i3) 3.02 P.78 2.96 P.63 2.96 P.45 2.70 P.69 2.38 P.56二次処理
水 2.22 1.66 2.10 1.42 1.25 貢川河川水 (1) i2) 2.17 Q.54 2.10 P.87 2.16 P.88 1.93 O.60 1.78 O.82 濁川河川水 (1) i2) 1.13 R.25 1.20 Q.61 1.21 1.27 1.10 R.10 表一3 溶存性有機物の変化 (2) (F−BOD/F−CODCr) K2FeO、(mg/1) 0 125 250 500 1000 初沈後水 (1) i2) 0.39 O.71 0.44 O.63 0.48 O.49 0.62 O.59 0.54 O.60 二 次処理 水 0.38 0.57 0.64 、 0.81 0.83 工貝 川河川 水 1.12 1.31 0.92 1.40 1.33 濁 川河川 水 1.12 1.05 0.81 0.68 1.26 表一4 K2FeO4添加量と各画群中の有機炭素量 (μ9−C) K、FeO、(mg/1) 0 125 500 画 群 1 諱@群 II 諱@群 III @ 計 344 P174 V92 Q310 589(+245) W49(−325) P313(+521) Q751(+441) 888(+544) V31(−443) P561(+769) R180(+870) ピークを持っている。また強い紫外吸収が分子量1000 付近および分子量70∼80付近とに認められる。 ここで,分子量4000以上を画群1,100∼4000を画 群II,100以下を画群IIIとし,酸化処理に伴うそれら各 画群中に含まれる有機炭素の変動を表一4にまとめて みた。さきに指摘したように,K2 FeO4の添加によって 80 ミ tr 60540
§200
遡O.1 来0.2 0.3 80 60 40 200
_5〔レ’ 60 No. Frac. 220 0.1 260 0.2 0、3 80 60 40 20 0 6n Frac.No. 260 0.1 0.2 0.3 (1)初沈後水(3) (2)K2F・04125・g/1 (3)K2F・04500・g/1 図一3初沈後水およびK2FeO4処理水のゲルクロマトグラム懸濁態の比較的大型の有機物の低分子が進んだため に,メンブランフィルターを通過する溶存性の有機物 量は増加するので,その結果,K2 FeO、添加量が多くな れば,当然セファデックスカラムに捕足される全有機 炭素量も多くなるはずである。 そこで,各画群ごとの有機炭素量の変化をみてみる と,K2 FeO4処理によって高分子量の画群1は当然増 加しているが,画群IIではむしろ減少し,さらに低分 子量の画群IIIが増加する傾向が見うけられた。 このように,K2 FeO、添加量を多くした場合,画群II に現われるピークが低下し,それに対応してさらに低
分子量の画群が増加していることは,分子量100
∼4000程度の有機物が比較的酸化処理の影響を受け 易くその結果分子量100以下にまで酸化分解され易い ことを示すものである。 また各画群について,その有機物質の量的変化を知 るとともに,その構造変化にも関連すると思われる紫 外吸収(A22。, A260:光路長1cmのときの220 nm,260 nmにおける吸光度)の変動について観察してみよう。 TOCと紫外吸収との対応をみてみると, K2 FeO4の 添加の有無にかかわらず,強い吸収を示したフラクシ ョンではそのTOC値も高い場合がほとんどで,両者 は比較的よい一致を示していたが,220nm,260 nmの 吸光度はともにK2FeO4処理によって減少する傾向が ある。 そこで,K2 FeO4添加前後の各画群中のTOC量と紫 外吸収の強さとの関係を比較するために,各画群中で とくに強い吸収を示したフランクションの吸光度と TOCとの比をとって表一5にまとめてみた。前述のよ うに,画群IIに含まれる有機物はとくにK2 FeO4の酸 化を受けやすく,より低分子量の有機物へと酸化分解 されるので,その化学構造も変化して,紫外吸収にも 何らかの影響が現われるものと考えられたが,K2 FeO4添加量を125 mg/1,500 mg/1と増やしてゆくと, 画群IIばかりでなく,画群1や画群IIIにおいても A22。/TOC, A26。/TOCともそれぞれ添加前の40%お 表一5 K2FeO4酸化による紫外部吸収の変化 K2FeO4 (mg/1) 0 125 500 A22。/TOC 画 群 1 0.0048 0.0017 0.0011 画 群 II 0.0150 0.0058 0.0040 画 群 III 0.0156 0.0062 0.0023 A26。/TOC 画 群 1 0.0018 0.0008 0.0007 画 群 II 0.0042 0.0016 0.0007 画 群 III 0.0058 0.0029 0.0008 よび20∼30%程度にまで一様に減少しているのがわ かる。 種々雑多な有機物を含んでいる天然水や下水処理水 などでは220nmや260 nmなどにおける吸光度と,BODやCODなどの水質因子との間に良好な相関性
が認められることが報告されている1°)11)。しかしなが ら純物質の場合には,化合物の種類によって吸収極大 を示す波長やその波長における吸収の強さが異なるこ とが指摘されており,一般に芳香族性の化合物は275 nm付近に吸収極大を持つことや,下水中にしばしば 存在が確認されている糖類や低級脂肪酸,簡単なアミ ノ酸などは非常に弱い吸収しか示さないことが知られ ている12)。 このようなことを考慮しながら今回の結果をみてみ れば,K2 FeO、は酸化によって水中の有機物の分子量 分布を変えるばかりでなく,有機物の化学構造にも影 響を与えていることは明らかで,たとえば芳香族性の 化合物や,腐植質のように芳香族環の骨核を持つ化合 物に対しては,紫外吸収を低減するように作用したと 考えられる。また,分子量の大きな有機物の酸化によ って生成されるより低分子量の化合物は紫外吸収の弱 い化合物となるはずで,このような変化は,先に述べ た化学的あるいは生化学的酸化に対する抵抗性の変化 とも深い関連を持つと考えられる。ちなみにK2 FeO4 処理によって増加が最も著しかった画群IIIの有機物 は,酢酸やギ酸などのような低級脂肪酸が主であると 考えてみれば,これらはK2Cr207や微生物の酸化を受 け易い反面,KMnO4による酸化を受けにくい化合物 であることが知られており13},図一1においてF− CODc,, F−BODの増加に対し, F−CODM。が増加しな かった結果とも矛盾しない。また,画群1にはK2 Cr2 0,の酸化に対して抵抗性の強い有機物が多く存在す ると考えれば,表一2,表一3で示したように,全有機炭 素量の増加の割にF−CODc,値が増加しなかったこと や,生分解性がいくぶん増加したことを,ゲルクロマ トグラムの解析により具体的に説明ずけることができ たと思われる。4.おわりに
今回,水質の異なる数種の試水を対象に,125mg/1 ∼1000mg/1のK2FeO4を添加して酸化実験を行った 結果K2FeO4は1)懸濁態の有機態の有機物が存在すれ ば,まずそれを低分子化し,0.45μmのメンブランフィ ルターを通過するような有機物へ可溶化させ,また, 2)分子量の大きい溶存性の有機物質をより小さい分子 量へと低分子化し,3)かつ溶存性有機物の紫外吸収も低減化させることが明らかとなった。 しかしながら,K2 FeO4の酸化反応の機構について はいまだ不明な点が多く,著者らは,ぶどう糖14)やアミ ノ酸15)を対象とした実験においてpHの調整方法が異 なればK2 FeO4の酸化力に著しい差の生じることも 経験している。また,Fe6+以外の化学種が酸化にかか わる可能性も示唆されているように,その機構はかな り複雑で,酸化反応に及ぼす因子についても現在のと ころ充分把握がなされているとは考えにくい。 謝 辞 本研究にあたっては,実験に協力してくれた今井恵 次君に謝意を表する。 また,本研究の一部は文部省科学研究費補助金奨励 研究(A)の交付を受けたことを付記する。