IRUCAA@TDC : 三元合金化による新しい歯科鋳造用合金の開発
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(2) 様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成21年 5月29日現在 研究種目:若手研究(B) 研究期間:2006~2008 課題番号:18791450 研究課題名(和文) 三元合金化による新しい歯科鋳造用合金の開発 研究課題名(英文). Development of newly ternary titanium alloys for dental castings. 研究代表者 服部 雅之(HATTORI MASAYUKI) 東京歯科大学・歯学部・講師 研究者番号:10307390. 研究成果の概要:Ti-Cu, Ti-Cr をベースに Ti-Cu-Pd, Ti-Cu-Cr 三元合金を考案した。試作 Ti-10.0Cu-Pd 系合金の鋳造性は、Pd 添加による三元合金化により低下することが明らかとなっ た。また Ti-10.0Cu-Cr 系合金の鋳造性は、Cr 添加による鋳造性の低下は認められず、Ti-Cu-Pd 系とは異なる傾向を示した。鋳造システムは異なるものの、既存の歯科用合金(金銀パラジウム 合金)と比較しても差異は認められなかった。チタンとクロムをベースとした合金は、フッ化水 素酸と過酸化物の環境下でも変色は少なく、良好な機械的性質をもち合わせることからも、歯 科鋳造用チタン合金開発においてのマーカーとなることが示唆された。. 交付額 (金額単位:円). 2006年度 2007年度 2008年度 年度 年度 総 計. 直接経費 1,700,000 900,000 700,000. 3,300,000. 間接経費. 合. 0 0 210,000. 計 1,700,000 900,000 910,000. 210,000. 3,510,000. 研究分野:医歯薬学 科研費の分科・細目:歯学・補綴理工系歯学 キーワード:チタン、チタン合金、チタン鋳造、鋳造用合金 1.研究開始当初の背景 1970 年代後半より真空技術や溶解技術の 進歩により、チタン鋳造が可能な専用鋳造機 が開発され、チタン鋳造体による歯科修復物 や補綴物の作製が可能となった。1980 年代に 入り、積極的なチタンの鋳造研究や臨床への 応用が進められてきた。チタン製の補綴物や 修復物を製作する方法については、チタンの 融点が 1,680℃と高いだけでなく、極めて活 性な金属であり、歯科鋳造が難しく、切削加. 工性も悪いことから歯科鋳造に限らず粉末 冶金、放電加工などに加えて CAD/CAM による 加工も検討されている。その中で、近年の歯 科用チタン合金の開発は、修復物・補綴物を 作製するための鋳造性や切削性の観点から、 Ti-Nb-Cu 合金、Ti-Ag 系合金が、耐食性の観 点からは、Ti-Pd,Ti-Pt,Ti-Ta 合金や Ti-Cr 合金が検討されている。また米国では Ti-Al-Fe,Ti-Hf 合金の研究開発が行われて いるが、歯科鋳造用として歯冠修復への応用.
(3) を目的としたものは国内に限らず、国外にお いても少ないのが現状である。また近年、歯 科臨床において純チタン製修復物や補綴物 が歯磨剤や洗口液に含まれるフッ化物や義 歯洗浄剤に含まれる過酸化水素により変色 や腐食を引き起こすことも問題となってい ることからも、新規歯科鋳造用チタン合金の 開発が待たれている。 代表研究者らは、以前から歯冠修復への応 用を前提とした歯科鋳造用チタン合金の開 発を行い、数種のチタン合金を試作してきた。 チタンは切削加工の困難な金属であるが、チ タンに銅を添加することで切削性が向上し、 融点が低下することにより鋳造性が向上す る反面、延性が低下することを明らかにした (Dent Mater J 20(1), 16-23, 2001) 。また、 チタンにクロムを添加した合金をあわせて 考案し、様々な角度から検討を行い、クロム 添加量の差異が、機械的性質に影響を及ぼす ことを明らかにしている。 このような観点から、チタンの利点を損な うことのない歯科鋳造用チタン合金の開発 は、金属アレルギーが増加傾向にある昨今、 チタンによる修復の適応を広げ、金銀パラジ ウム合金を中心とする金代用合金に新たな 選択肢を加えるものと考えられる。 2.研究の目的 チタンは耐食性や生体親和性に優れる反 面、融点が高く、高温活性であり、酸化し易 いといった欠点を有している。そのために加 工や成形が難しく、鋳造による補綴物や修復 物の作製を困難なものにしている。また近年、 歯科臨床において純チタン製修復物や補綴 物が歯磨剤や洗口液に含まれるフッ化物や 義歯洗浄剤に含まれる過酸化水素により変 色や腐食を引き起こすことも問題となって いる。申請者は、現在までに歯冠修復を前提 とした歯科鋳造用チタン合金の開発を行っ てきた。 チタンは元来、切削加工の困難な金属であ るが、チタンに銅を添加することで切削性が 向上し、融点を低下させることで鋳造性が向 上する。反面、延性の低下が開発を行う上で の問題点となっている。また、チタンにクロ ムを添加することで、添加量によっては、機 械的性質が向上し、延性の顕著な低下が認め られないことを見出してきた。これらの諸物 性を改良する目的で数種の添加元素に着目 し、Ti-Cu-Cr,Ti-Cu-Pd 三元合金を考案した。 銅添加量は切削性を考慮し 10 mass%とし、ク ロムおよびパラジウムを数 mass%添加するこ とで約4%の延性を示し、二元合金と比較し、 有意に延性が向上することを明らかにした (歯科学報 104(6), 561-565, 2004)。この 結果は、タイプ4金合金(硬化熱処理後)の延 びと同等であることからも、臨床応用への模. 索を行う上で重要な知見である。 本研究の目的は、機械的性質と生体安全性 に優れた歯科鋳造用チタン合金を開発する ことであり、試作合金の適正な組成比を決定 することが第一である。同時に、既に考案し ている Ti-Cu, Ti-Cr をベースとしたチタン 合金のさらなる基礎的実験により高耐食・新 規チタン合金の臨床応用への模索を行うこ とである。 3.研究の方法 (1)試作合金の設計と作製 試作チタン合金は、スポンジチタンと無酸 素銅、添加元素を所定量秤量し、アルゴンア ーク溶解炉中で溶解し作製する。(図 1) Ti-Cu-x 合金の設計. 試作合金の溶製. スポンジ チタン 無酸素銅. 添加元素. ?. 図1 試作合金の設計~合金の作製. (2) メッシュパターン鋳造体の鋳込み率測 定(鋳造性評価) 20×20mm の Polyestel sieve cloth に直径 2mm のランナーバーを交差する 2 辺に付与し、 交点をスプルー接続部位としたものをパタ ーンとし、一個の鋳型にパターン一個を埋没 する。パターンの埋没ならびに鋳型の予備加 熱をメーカー指示の条件で行う。チタン鋳造 機はサイクラーク(モリタ、既存設備)を使 用する。鋳型材はチタベスト CB(スピネル系) を指定の混液比と加熱条件で用いる。鋳造後、 鋳造体を鋳型より堀り出した後、80μm のガ ラスビーズを用いたサンドブラスターで焼 きついた鋳型材を除去し、鋳込まれたメッシ ュの交点数をカウントし、元のメッシュパタ ーンの交点数で除した値をパーセントで求 め、鋳込み率とする。 (3)機械的性質評価 ①引張試験片の作製 ISO8891 に準拠したダンベルパターン(申 請設備にて購入のオートワックススポット にて作製,直径3mmφ,標点間 15mm)を円錐 台に垂直に植立する。埋没、鋳造は上記に従 う。 ②引張り試験 引張り試験は、万能材料試験機(オートグ ラフ AG-I 20kN、島津製作所)にドリルチャ ック方式のつかみ具を用い、標点間距離 15mm のストレーンゲージ式伸び計を取り付け、ク ロスヘッドスピード 1.0mm/min.の条件で行 い、得られたチャートから 0.2%耐力、引張強.
(4) さおよび伸びを算出する。 (4)変色試験 直径 10mm、厚さ 1mm の板状試料を鏡面研磨 し、回転式浸漬装置を用い硫化ナトリウム水 溶液や上記溶液に 10~15 秒、大気中に 45~ 50 秒のサイクルで 72 時間浸漬試験を行う。 色彩計で L*a*b*値を測定し、浸漬前後の色差 (⊿E)を求める。 4.研究成果 (1)Ti-Cu-Pd 系合金の Pd 添加量の検討 歯科鋳造用として臨床応用するには機械 的性質、特に延性の改善が必須である。延性 の改善を目的とし、パラジウム添加量を増加 させた試作合金の特性評価を行った。これま での研究成果からパラジウムの添加量が増 すにつれ伸びの増加が著明であったことに 着目したことによる。 パラジウム添加量を 7.5mass%、10.0mass% とし、Ti-Cu-Pd 三元合金を溶製し、歯科鋳造 法により試料を作製した。引張試験の結果か ら、パラジウム添加量 7.5%(Ti-10.0Cu-7.5Pd 合金)および 10.0%(Ti-10.0Cu-10.0Pd 合金) 鋳造体の引張強さはそれぞれ 885 MPa, 893 MPa であった。また、0.2%耐力はそれぞれ 736 MPa, 735 MPa であった。既報の結果(1.0, 3.0, 5.0%添加試料および Ti-Cu 二元合金)と比較 すると、それぞれの強さに変化は認められな かった(図2) 。. 図2 Ti-Cu-Pd 合金の引張強さ. (2)メッシュパターンによる鋳造性評価 Ti-10.0Cu-Pd 三元系合金鋳造体の鋳造性 試験の結果を図4に示す。Ti-10.0Cu-Pd 三元 系合金鋳造体では、Pd 添加量(1.0, 3.0, 5.0, 7.5, 10.0mass%)にかかわらず、鋳込み率は 50~60%の範囲であった。一方で、Ti-Cr 二元 系(Cr:15.0, 20.0mass%)では、90~100%と 高い鋳込み率を示した。今回は、鋳造条件を すべて同一にして行ったため、Ti-10.0Cu-Pd 系では低い鋳込み率を示したと考えられる。. 図4 Ti-Cu-Pd 合金および Ti-Cr 合金の鋳造性. 図5 Ti-10Cu-3.0Pd(左)および Ti-20Cr 合金(右) の鋳造性. Ti-10.0Cu-Cr 三元系合金鋳造体の鋳造性 試験の結果を図6に示す。Ti-10.0Cu-Cr 合金 の鋳造性は、Cr 添加量(1.0, 3.0, 5.0, 7.5, 10.0mass%)に関わらず 96~99%の範囲にあ って、添加量の違いによる鋳造性の低下は認 められず、Ti-Cu-Pd 系とは異なる傾向が確認 できた。鋳造システムは異なるものの、既存 の歯科用合金(金銀パラジウム合金)と比較 しても、本研究に使用したパターン形状では 差異は認められなかった。. 伸びは、7.5%添加試料で 4.5%、10.0%添加 試料で 3.5%を示し、Ti-Cu 二元合金の値と比 較し有意に大きな値を示した(図3) 。. 図6 Ti-Cu-Cr 合金の鋳造性. 図3 Ti-Cu-Pd 合金の伸び. (3)耐食性評価 耐食性に優れると言われてきたチタンお よびチタン合金が、口腔内環境の条件(フッ 化物配合歯面塗布剤や洗口剤)により、容易.
(5) に腐食が進行し金属イオンの溶出や金属の 変色が起こると言われている。そこで、フッ 化水素酸を生成する酸性フッ化ナトリウム 水溶液と過酸化水素中での試作 Ti-Cu, Ti-Cr 二元合金の変色を調べた。 過酸化水素を含む溶液中への浸漬前後の 変 色 度 ( 色 差 ) は 、 Ti-Cu(10mass%), Ti-Cr(20mass%)合金ともに 10 以下の値を示 し、変色の程度は小さい傾向を示した。一方、 フッ化ナトリウムを含む溶液では、Ti-Cu 合 金は 10 以上の変色を認めたが、Ti-Cr 合金は ほんのわずかな変色であった。チタンとクロ ムをベースとした合金は、 フッ化水素酸と過酸化物の環境下でも変 色は少なく、良好な機械的性質をもち合わせ ることからも、歯科鋳造用チタン合金開発に おいてのマーカーとなることが示唆された。 Ti-Cr 二元合金が耐食性や機械的性質に優れ ているが、三元合金化による検討では、 Ti-Cu-Cr 系はこれらの特性は良好であるこ とからも鋳造性の改善が可能となれば、十分 に臨床応用できると思われる。 5.主な発表論文等 (研究代表者、研究分担者及び連携研究者に は下線) 〔雑誌論文〕(計3件) ① Shinji Takemoto, Masayuki Hattori, Masao Yoshinari, Eiji Kawada, Yutaka Oda, Suppression of Fluoride-Induced Corrosion of Titanium by Albumin in Oral Modified Environment, Journal of Biomedical Materials Research Part B: Applied Biomaterials, referee reading:yes, 87B:475-481. 2008 ② Tatsumi Noguchi, Shinji Takemoto, Masayuki Hattori, Masao Yoshinari, Eiji Kawada, Yutaka Oda, Discoloration and dissolution of titanium and titanium alloys with immersion in peroxideor fluoride-containing solutions, Dental Materials Journal, referee reading:yes, 27:117-123. 2008 ③ 時崎照彦、服部雅之、小田 豊、インジウ ムを添加した Ag-Au-Cu-Pd 系合金の物性、 歯科材料・器械、査読:有、26:367-374. 2007 〔学会発表〕(計5件) ① Masayuki Hattori, Shinji Takemoto, Masao Yoshinari, Eiji Kawada, Yutaka Oda, Mechanical Properties of Ti-Cr Alloys for Dental Castings, The 6th International Symposium on Titanium in. Dentistry, June5-6,2007,Kyoto, Japan. ② Yutaka Oda, Shinji Takemoto, Masayuki Hattori, Masao Yoshinari, Eiji Kawada, Influence of pH on Discoloration of Titanium-based Alloys in Solutions Containing Hydrogen Peroxide, International Dental Materials Congress 2007, November 21-24, 2007, Bangkok, Thailand. ③ Shinji Takemoto, Masayuki Hattori, Masao Yoshinari, Eiji Kawada, Yutaka Oda, Electrochemical behavior of titanium in fluoride and hydrogen peroxide, The 85rd general session & exhibition of the IADR/AADR/CADR, March 21-24, 2007, New Orleans, Louisiana, USA. ④ Yutaka Oda, Shinji Takemoto, Masayuki Hattori, Masao Yoshinari, Eiji Kawada, Influence of peroxide concentration on discoloration in titanium-based alloys, The 84th general session & exhibition of the IADR, June 28-July 1, 2006, Brisbane, Australia. ⑤ 野口竜実、武本真治、服部雅之、河田英 司、吉成正雄、小田 豊、過酸化水素お よびフッ化ナトリウム水溶液によるチタ ン合金の変色、第 281 回東京歯科大学学 会例会、平成 18 年 6 月 3 日、千葉市 〔図書〕 (計1件) ① 小田 豊、河田英司、吉成正雄、服部雅 之、武本真治、学建書院、新編歯科理工 学 第 4 版(小 田 豊編) (第 3 章鋳造の理 論と技術、 第 4 章印象材分担)、 全 306 貢、 2007 6.研究組織 (1)研究代表者 服部 雅之(HATTORI MASAYUKI) 東京歯科大学・歯学部・講師 研究者番号:10307390 (2)研究分担者 (. ). 研究者番号: (3)連携研究者 ( 研究者番号:. ).
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