“組織開発”の手引き
サマリー
2015年4月
目 次
1. 持続的な企業成長のため、こんな組織には組織力向上が必要となる ... 2 2. 組織力を高めるための“組織開発”とは? ... 3 2.1. 日本における組織開発の定義 ... 3 2.2. 新しい組織開発の定義と5つのポイント ... 4 2.3. 海外にみる「意図をもった変化(Planed Change)」の思想 ... 5 3. 組織開発が対象とする3つの層とそのポイント及び成果の関係 ... 6 3.1. 第 1 層:会社全体・事業ユニットレベルを適用単位とする ... 6 3.2. 第 2 層:部門やグループレベルを適用単位とする ... 7 3.3. 第 3 層:個人の仕事レベルを適用単位とする ... 8 4. 組織開発のステップをどうとらえるか? ... 10 4.1. 組織能力と競争優位の視点 ... 10 4.2. 組織開発の基本的なステップ ... 10 5. 組織開発の担い手に求められることは? ... 13 5.1. 経営課題調査からみる部署の多様性 ... 13 5.2. 「意図をもった変化(Planed Change)」を推進する組織開発担当の必要性 ... 13 6. 変化を導き定着させるポイント ... 15 6.1. 変化したい気持ちにする ... 15 6.2. 共有できるビジョンを創りだす ... 15 6.3. 変化を促すために外的な力を活用する ... 16 6.4. 変化を促進させるために ... 16 6.5. 変化の推進力を維持するために ... 161. 持続的な企業成長のため、こんな組織には組織力向上が必要となる
次のような組織では、組織力の強化が必要になると考えられます。皆さんの企業はいか がでしょうか? 【健全性を失った組織】 ・ 職場全体に疲弊感がみられる組織 ・ 社員のモラールや従業員満足度などが低下する組織 ・ 離職率が高まっている組織 ・ ミドルに疲弊感、閉塞感、孤立感がみられる組織 ・ コンプライアンス行動がなかなか浸透・定着しない組織 ・ WLB(ワークライフバランス)施策がうまく運用されない組織 【経営革新・事業革新を推進する組織】 ・ 市場や拠点のグローバル化が進む組織 ・ 合併統合、リストラクチャリングにより組織規模や事業内容の急激な変化が進む組織 ・ ベンチャー企業など業績拡大で規模が急激に拡大する組織 【就業形態や業務形態に課題のある組織】 ・ コミュニケーションがとりづらい勤務形態の人が多い組織 ・ フロントライン(接客業務を担う社員が多い)、“感情労働”の職場が多い組織 ・ 専門職が多く、たこつぼ化している職場が多い組織 ・ 外注事業者や社外とのコラボレーションが多い組織 【国籍・性・年齢・世帯構成の多様化する組織】 ・ 管理職が男性でメンバーに女性が多い職場、あるいは逆の職場が多い組織 ・ 管理職よりもメンバーの年齢が高い職場が多い組織 ・ 若い社員と中高年社員が混在している職場が多い組織 ・ 経験の浅い若手管理職がマネジメントしている職場が多い組織 ・ 職場メンバーの多国籍化が進む組織 【雇用形態が多様化する組織】 ・ パート、アルバイトなど非正規社員が多い組織 ・ 中途採用が多い組織 【処遇形態の多様化】 ・ 多様な処遇形態、多様な労働契約が導入されている組織 ・ 人事制度の的確な運用ができていない組織 ・ 必要とする人材像が変化しその確保・育成・定着が必要になっている組織 【その他】社内にこれまでになかった特徴を持つ職場が増えている組織など2. 組織力を高めるための“組織開発”とは?
2.1. 日本における組織開発の定義 日本能率協会は、米国の行動科学の主要理論と組織開発の事例資料をいちはやく翻訳し、 普及啓蒙をした団体の一つでもあります。 時は1969 年、日本能率協会 NICB 研究委員会という名称の組織を設置し、NICB(全米 産業会議)がまとめた資料を翻訳し、『行動科学―その概念とマネジメントへの適用』とい う書籍として刊行いたしました。 そこには、行動科学分野の主要理論(マグレガー、アージリス、リッカートなど)や、 TRW 社の“チームビルディング”、部門間葛藤解決、シンテックス社の組織開発、テキサ ス・インスツルメンツ社の職務充実計画など米国における組織開発の実例がいくつも紹介 されています。 こうして開始された日本の組織開発ですが、近年の組織開発の定義について引用すると 次のようになっています。 【組織開発(そしきかいはつ) organizational development】 行動科学の知識を利用しながら、トップの管理のもとで計画的に、組織全体にわたり、 組織の有効性(目的達成度)と健全性(人間の満足度)を増大させるために行う組織の変 革をいう。略称OD。 利用する行動科学の知識は、リーダーシップの型、動機づけ、コミュニケーションなど である。 ODが必要になった理由は、組織環境(市場(しじょう)、技術など)の変動性と複雑性 が増大し、硬直的組織ではそれに適応できなくなったため、有機的組織への変革が不可欠 になったことにある。有機的組織とは、伸縮的構造、開放的組織風土、相互信頼の態度、 支持的リーダーシップなどの特性を備えた組織である。 ODの具体的手法には、感受性訓練sensitivity training(ST)、アクション・リサーチ、 対決集会confrontation meeting、マネジリアル・グリッド managerial grid、小集団活動、 目標による管理、組織動態化、能力主義人事などがある。2.2. 新しい組織開発の定義と5つのポイント
また、近年様々な研究が進み、組織開発の新しい定義が生まれてきています。
ここでは、Cummings/Worley 著の Organization Development & Change より、その 定義と5つのポイントを紹介します。 組織開発は、効果的な組織を生み出すため、行動科学の知識を応用して、計画的に組織の システム全体(戦略の面、組織構造の面、組織の生成発展プロセスの面)を開発・改善・ 強化する活動。 ポイント1:適用する対象 ・ OD は、全組織システムの戦略・構造・プロセス変化に適用される(会社組織全体、ユ ニット、生産拠点、部門、グループ、個人の業務など) 例えば、組織戦略を修正するためにも OD が適用される、その場合、①外部環境への 対応力・対応方法の改善(価値観や行動様式の改革)、及び、②戦略上の変化を促進す るための、組織構造の改革、部門間や部門内チームの関係の改革などが含まれる ポイント2:立脚する知見 ・ OD は、行動科学の知識と実験(リーダーシップ、グループダイナミクス、ワークデザ インなど)に基づいている ・ 個人や組織の社会的側面を無視しがちな経営コンサルティングや技術革新手法、オペレ ーションマネジメントとは異なる ポイント3:推進アプローチ ・ OD は「計画的な変化」を推進する。しかし、経営コンサルティングやプロジェクトマ ネジメントのような、専門家主導で予め計画管理されたアプローチとは異なる ・ OD は診断から課題解決までの計画はあるが、計画を実施する過程でうまれる、現場組 織からの予測不能な反応を、積極的に取込み有効活用していくことが求められる。従っ てその計画推進は臨機応変に変更することが重要となる ポイント4:推進のポイント ・ OD は、変革プログラムの PDCA を継続的に回していく活動となる ・ 変革プログラム適用の最初のステップだけでなく、その活動を組織内で定着習慣化し、 組織文化(カルチャー)にしていくための活動が重要となる
ポイント5:成果の着眼点 ・ OD では次のような、“組織の効果性”を改善することを着眼してすすめる活動である 【1】組織としての順応性を高める 順応性を高めることで、自律的課題解決能力を高める。(一般的に、組織開発を推 進する際には、必然的にその組織成員に必要な知識・スキル習得の支援もプログ ラムに盛り込まれる。但し人材教育ありきでなく、組織順応性が優先される) 【2】経営上のパフォーマンスを高める OD は社会科学を活用し、コスト削減、商品サービス改善、生産性向上などの目標 達成を支援する(利益増、品質向上、生産性向上などの業績指標の向上) 【3】組織としての健全性を高める ステークホルダーである、顧客の満足、従業員の成長やモチベーション向上、コ ミットメント向上などを促進する この点が、単なる機構改革などに代表される他の変革手法と異なる 2.3. 海外にみる「意図をもった変化(Planed Change)」の思想 既に、環境変化の多くは不可避の変化であり、変化への適応を、あなたの会社組織が次 のステージに進むために必要となる基本的な変革であると位置づけることが、競争優位を 維持するために重要だと述べました。 これは、環境への対応を“なりゆきの変化”ではなく、“他社に先んじて、意図的に自社 が変わる能力を高める”というコンセプトに立脚して推進することとなります。 このコンセプトを「意図をもった変化(Planed Change)」と呼びますが、「意図をもっ た変化」を経営活動にビルトインし、組織能力を意図的に高めることが企業の競争優位の ために必要な時代であるといえます。 そして、そのための手段が組織開発です。 従って、組織開発は、経営トップが経営の戦略として明確に位置づけ、活動を推進して いくことが必要です。
意図をもった変化
≠なりゆきの変化
顕在問題の解決のため 問題事例を水平垂直展開するため 外部環境への適応能力を高め、企 業変革を促進させるため 非生産的な認識(見方・考え方) を、生産的なものに転換するため 他社に先んじて 自ら変わる能力を高める3. 組織開発が対象とする3つの層とそのポイント及び成果の関係
既に述べたとおり、組織開発を適用する対象は、会社組織全体、ユニット、生産拠点、 部門、グループ、個人の業務など、いくつかの層に分けてとらえることが重要になります。 こ こ で は 、Thomas G. Cummings 及 び Christopher Worley 著 の Organization Development & Change をもとに、3つの層を紹介します。
3.1. 第 1 層:会社全体・事業ユニットレベルを適用単位とする この層は、組織として最も大きなOD の適用単位となります。 例えば、全社や完結する事業ユニットが直面する、新製品・新サービスの開発、環境変 化への適合、新技術の導入などの課題に焦点をあてるような場合なども、この適用単位と なります。 影響要因 この適用単位に影響を与える要因は、一般環境(社会・技術・経済・政治)や、その組 織が事業で競争をする産業構造となります。 産業構造の要素としては、供給業者の交渉力、買手の交渉力、代替品の脅威、新規参入 脅威、競合企業のレベルなどが挙げられます。
影響要因
一般環境
産業構造
革新要素
成果
技術
組織構造
測定システム
戦略
人的資源シ
ステム
組
織
文
化
そ
の
組
織
の
効
果
性
組織開発上の5つの革新要素 この適用単位に対して組織開発に取り組む場合、重要な革新要素は次の5つとなります。 戦略:競争優位を維持するために、どのような経営資源の使い方をするか? 技術:生産技術など、どのような技術を使って製品やサービスを提供するか?組織構造:戦略実現のために、どのような組織をつくるか(タテとヨコ)? 人的資源システム:戦略実現のためにどのような採用・開発・評価・処遇の仕組みを つくるか? 測定システム:戦略実現度を測定するために、どのような情報をどのように集めるか? 組織開発は、経営トップが経営の戦略として明確に位置づけ、活動を推進していくこと が必要だと述べました。 ここで見たとおり、その理由は、経営戦略と組織開発は一体となって展開されることが 必要だからです。 組織文化の生成 組織文化とは、その会社・組織における、基本的なものの見方(仮説)、価値(バリュー) の優先順位、組織の常識・規範などを意味します。そしてそれは、職場で起るものごとに 対する社員のものの見方、考え方、行動に影響を与えることとなりますが、組織文化それ 自体は、戦略、技術、組織構造、人的資源システム、測定システムの5つの組み合わせが 変わることによって、変わることになります。 しかし、一方で、既に培われた組織文化は、全社的な戦略、技術、組織構造、人的資源 システム、測定システムという革新要素を変える際に、変化を妨げる働きをすることにも なることに注意が必要です。 組織成果のポイント この適用単位の組織開発的な成果としては、次の点をおさえることが重要となります。 組織のパフォーマンス e.g., 利益、生産性、株価 生産性 e.g., 従業員当費用、原価、歩留率、品質 ステイクホルダーの満足 e.g., 市場シェア、従業員満足、コンプライアンス他 3.2. 第 2 層:部門やグループレベルを適用単位とする この層は、機能で分割された職場単位などがOD の適用単位となります。 例えば、部門内メンバーの信頼関係向上やチーム力向上、職場における疲弊感の増大、 特定の職場における生産性の低下、あるいは特定部門でのパフォーマンスを最大化させる、 などの課題に焦点をあてるような場合なども、この適用単位となります。
影響要因 この部門やグループに影響を与える要因は、上位層の要素である、①戦略、②技術、③組 織構造、④人的資源システム、⑤測定システム、及び、それによって培われた⑥組織文化 などが挙げられます。
全社的な
組織要素
戦略 技術 組織構造 人的資源システ ム 測定システム目標
役割構造
集団構成
グループ機能
行動規範
部門や
グループ
としての
効果性
影響要因
革新要素
成果
組織開発上の5つの革新要素 この適用単位に対して組織開発に取り組む場合、重要な革新要素は次の5つとなります。 単位組織の目標:該当する単位組織がどのような目標をもつか? 役割構造:構成メンバーの役割分担の整合性、人・物・カネ等の権限委譲の度合い 集団構成:構成メンバーの経験、スキル、教育履歴、国籍、性別、年齢etc グループ機能:構成メンバーが相互観察・調整・支持・評価などチームとしてどのよ うな関係性をつくるか 行動規範:職場での行動を制約する構成メンバー相互の暗黙のルール 組織成果のポイント この適用単位の組織開発的な成果としては、次の点をおさえることが重要となります。 製品やサービスの品質や生産性など組織単位に即した成果 e.g., 組織単位別の従業員当費用、原価、歩留率、品質 メンバーの凝集性 e.g., グループや組織へのコミットメント度合い、エンゲージメント度 職場満足度 3.3. 第 3 層:個人の仕事レベルを適用単位とする この層は、与えられた仕事という、最小のOD 適用単位となります。 例えば、仕事へのモチベーションの向上、欠勤等の組織健全性への対応などの課題に焦点をあてるような場合なども、この適用単位となります。 影響要因 与えられた仕事レベルに影響を与える要因は、2つの上位レベル要素である、①戦略、 ②技術、③組織構造、④人的資源システム、⑤測定システム、⑥組織文化、⑦単位組織の 目標、⑧役割構造、⑨集団構成、⑩グループ機能、⑪行動規範などです。 また、その仕事の担当者自身の職業経験なども影響要因となります。
全社的な
組織要素
グループ単位
の革新要素
個人の
職業経験
仕事に求めるスキ
ルの幅と深さ
仕事の細
分化のさ
れ方
仕事の意味
仕事の自己裁
量度合
結果に関する
フィードバック
影響要因
革新要素
成果
個人の
効果性
組織開発上の5つの革新要素 仕事レベルに対して組織開発に取り組む場合、重要な革新要素は次の5つとなります。 仕事に求めるスキルの幅と深さをどうするか? 仕事の細分化の仕方をどうするか? 仕事の意味をどう与えるか? 仕事の自己裁量度合いをどう設定するか? 仕事の結果に関するフィードバックをどうするか? 組織成果のポイント この適用単位の組織開発的な成果としては、次の点をおさえることが重要となります。 パフォーマンス e.g., 一人当たり限界利益、一人当たり付加価値、サービス品質、製品品質 欠勤率 仕事満足度 e.g., 内的動機付け キャリア開発 e.g., 知識・スキルアップ、自己効力感4. 組織開発のステップをどうとらえるか?
4.1. 組織能力と競争優位の視点 組織開発のステップのとらえかたを考えるにあたり、企業が競争優位に至るパターンを 知ることが重要です。 <組織能力と競争優位の展開> 新しいポジション 新しいポジション 新しい組織能力新しい組織能力 新しい 競争優位の獲得 新しい 競争優位の獲得 新しいポジション 新しいポジション 新しい組織能力新しい組織能力 新しい 競争優位の獲得 新しい 競争優位の獲得 新しいポジション 新しいポジション 新しい組織能力新しい組織能力 新しい 競争優位の獲得 新しい 競争優位の獲得 目指すべき ポジション 目指すべき ポジション 目指すべきポジション に必要な組織能力 目指すべきポジション に必要な組織能力 競争優位の構築 競争優位の構築 目指すべき ポジション 目指すべき ポジション 目指すべきポジション に必要な組織能力 目指すべきポジション に必要な組織能力 競争優位の構築 競争優位の構築 目指すべき ポジション 目指すべき ポジション 目指すべきポジション に必要な組織能力 目指すべきポジション に必要な組織能力 競争優位の構築 競争優位の構築 目指すべき ポジション 目指すべき ポジション 目指すべきポジション に必要な組織能力 目指すべきポジション に必要な組織能力 競争優位の構築 競争優位の構築 獲得されうる ポジション 獲得されうる ポジション 新しい組織能力 の蓄積・獲得 新しい組織能力 の蓄積・獲得 競争優位の構築 競争優位の構築 獲得されうる ポジション 獲得されうる ポジション 新しい組織能力 の蓄積・獲得 新しい組織能力 の蓄積・獲得 競争優位の構築 競争優位の構築 獲得されうる ポジション 獲得されうる ポジション 新しい組織能力 の蓄積・獲得 新しい組織能力 の蓄積・獲得 競争優位の構築 競争優位の構築 獲得されうる ポジション 獲得されうる ポジション 新しい組織能力 の蓄積・獲得 新しい組織能力 の蓄積・獲得 競争優位の構築 競争優位の構築 現在のポジション 現在のポジション 現在の組織能力現在の組織能力 現在達成されて いる競争優位 現在達成されて いる競争優位 現在のポジション 現在のポジション 現在の組織能力現在の組織能力 現在達成されて いる競争優位 現在達成されて いる競争優位 現在のポジション 現在のポジション 現在の組織能力現在の組織能力 現在達成されて いる競争優位 現在達成されて いる競争優位 (井本 亨/企業戦略と持続的競争優位 『立命館経営学』第44巻第5号より引用) この図のように、 ①目指すべきポジション(望ましい状態)を明確に設定する そのポジションと現状とのギャップを見出し、必要な組織能力を獲得する というアプローチと、 ②競争の中で常に課題を見出し、新しい組織能力を蓄積・獲得していく それによって競争優位の構築を図る というアプローチが、現実の企業経営には想定できるでしょう。 従って、組織開発のアプローチも、この2つの視点があり得ると考えられます。 4.2. 組織開発の基本的なステップ ここでは基本的な組織開発のステップを整理しています。 なお、ステップ自体に組織メンバーを様々な形で巻き込むことを通じ、コミュニケーシ ョンが促進され、そのプロセス自体が組織開発となる点も重要なポイントとなります。診断:組織の症状を見極める 意図をもった変化を導くため、組織の症状を見極めることは大切なことです。 組織の症状を見極めるために、既に述べた3つの層を層別化した上で、症状を見極める 必要があります。 なぜならば、第1層は第2層の要因となり、まそれらは第3層の要因となるからです。 第1 層:会社全体・事業ユニットレベル ①戦略、②技術、③組織構造、④人的資源システム、⑤測定システム、⑥企業文化 第2 層:部門やグループレベル ①単位組織の目標、②役割構造、③集団構成、④グループ機能、⑤行動規範 第3 層:個人の仕事レベル ①仕事に求めるスキルの幅と深さ、②仕事の細分化の仕方、③仕事の意味、 ④仕事の自己裁量度合い、⑤仕事の結果に関するフィードバック また、定量的手法や定性的手法など、課題に応じた適切な手法を選び、貴社の組織力の 実態や強み弱みを診断することも大切になります。 望ましい組織のビジョンとゴールを決める 意図をもった変化を導くために、望ましい組織のビジョンとゴールを明確にすることが 大切です。 そして、望ましい組織のビジョンと現状の組織状況とのギャップがどこにあるのかを明 確にしていきます。
Appreciative Inquiry (AI)等の考え方では、組織変革の促進力を高めるために、このプロ セスに社員全員を巻き込み、望ましい組織のビジョンやゴールを社員全員で共有していき ます。 変革のための計画をつくる 望ましい組織のビジョンと現状の組織状況とのギャップがどこにあるのかを明確にし、 そのギャップを埋めるために、変革のための計画をつくります。 変革のための計画は、ギャップを埋めるためのポイントが、上記第1層から第3層のど こにあるのかを明確にした上でつくることが大切です。 また、活動プログラムは課題に応じ次の4つのアプローチを使い分けることも大切です。 戦略面に関するアプローチ 技術・構造面に関するアプローチ 人的資源管理面に関するアプローチ 人系プロセス面に関するアプローチ
変革のための計画を実施する 上記の計画を実施します。 課題が第1層から第3層のどこにあるのか、また、どのようなアプローチが必要なのか 等に応じて、経営トップの役割や、経営企画部門、人事部門、各事業部門の連携や横断的 体制づくりなど、推進体制の構築がポイントとなります。 変革のための活動実施の結果を評価する 変革計画で設定したゴールへの達成度の評価を行い、次ステップの課題を明確化するこ とになります。 また、環境変化に応じて、適宜次ステップの課題も見直しをかける必要があります。
5. 組織開発の担い手に求められることは?
5.1. 経営課題調査からみる部署の多様性 日本能率協会で実施した調査をみると、組織に関わる課題の推進部署は、人事部門、経 営企画部門、各事業部門と多様性がみられました。 この多様性は、既に述べた通り、組織に関る課題が、その企業の状況によって第1層か ら第3層まで様々なレベルにあり、従って位置づけも、全社的課題、部門課題、人事的課 題など、様々に位置づけられることに由来すると推察されます。 5.2. 「意図をもった変化(Planed Change)」を推進する組織開発担当の必要性 一方、加速度的な環境変化の中で、「意図をもった変化」を経営活動にビルトインし、組 織能力を意図的に高めることが企業の競争優位のために一層必要になってきます。 従って、組織開発の活動推進のために、次の点が重要です。 組織開発を経営トップが経営の戦略として明確に位置づける
組織開発部門の設置や組織開発担当者の設置など、担当者を明確化する
組織開発担当の位置づけと役割イメージ ・ 第三者性が保てること(一歩身を引いて複眼的に考察できる) ・ 経営戦略を深く的確に理解し、組織開発の次の活動を展開できる 診断:組織の症状を見極める 望ましい組織のビジョンとゴールを決める 組織に関わる課題を推進する部署 39.2 6.9 16.1 4.5 8.4 3.9 人事部門 人材開発部門 経営企画部門 組織開発部門 0.0 19 各事業部門 その他の部門 2 部門横断型 の委員会や プロジェク トチーム 特に担当 する部門 はない 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 凡例 (n=510) 変革のための計画をつくる 変革のための計画を実施する 変革のための活動実施の結果を評価する ・ 組織における第1~3層までのつながりを理解し、各層の状況や整合性を把握できる 組織開発担当に必要な特性 ・ 心の状態を管理する能力(自覚力、気づきの力、感受性) ・ 対人関係能力(他人や他のグループ・部門と協業できる力) ・ 一般的なコンサルテーション能力(コンサルティングプロセスを展開できる力) ・ 組織開発に関する知識と経験、深い洞察力
6. 変化を導き定着させるポイント
みなさんの企業や組織が望ましい変化を創りだすために、いかに変化を導き、定着させ るかがポイントとなります。そして、そのために5つの点を実践しましょう。 6.1. 変化したい気持ちにする 変化についての受け入れ余地を創りだす 変化したい気持ちにするために、変化についての受け入れ余地を創りだしましょう。 組織が変化することの必要性を、頭でなく身を持って実感できるようにする 望ましい状態と現在の状態とのギャップを明確にして相互理解をつくる 変化することにメリットがあると確信できるような見通しを伝える 変化への抵抗に対処する 変化に対しては往々にして抵抗が生まれます。抵抗に対処するには次の3つのポイント があります。 抵抗したい気持ちを受け止め、受け入れられるようサポートする 変化の必要性の理解を促進するため、コミュニケーションをする メンバーを変化のための計画や意思決定に巻き込む 6.2. 共有できるビジョンを創りだす 自分達の会社の核となる価値や目的を見つけ出し共有する 共有できるとは、一人ひとりのアイデンティティや価値観レベルにおいて、接点が見い だせるということです。 組織にとって何が重要で、大切にしたいものはなんなのか(コアバリュー)を共 有する 自分たちの組織の存在意義はなんなのか、何のために存在するのかを共有する ありありとした将来のビジョンを創り上げる 行動を引きおこせる位に共有するには、一人ひとりの脳に快を得るように、五感であり ありと、望ましい将来像を描きましょう。 皆にとって大切だと思え、皆の力を引き出すような将来のイメージを描き出す 渇望するほどに望ましいと思える将来の状態を描き出す 6.3. 変化を促すために外的な力を活用する 変化のために、顧客や株主、従業員などステークホルダーによる外的なプレッシャーを 有効活用することも大切です。 社内変革推進メンバーがどの程度の影響力を社内で発揮できるかを把握する 社内変化の促進剤となりそうなステークホルダーは誰なのかを見極める そのステークホルダーが社内変化の促進剤となるような仕掛けをつくる 6.4. 変化を促進させるために 変化を促進させるために次の点も大切です。 行動計画をつくりコミットメントを高める 変化のための具体的な行動計画をつくりましょう その行動を確実に行うために何が必要なのか、いつ、どこで、どのような方法で 行うのかを明確にしましょう 変化を促進させる体制づくり その変化を加速させるために、適切な体制(担当者や責任権限の仕組みなど)を 工夫しましょう 6.5. 変化の推進力を維持するために 変化を推進する際には、それに抗する現状維持のパワーが必ず生まれます。その中で変 化の推進力を維持するには次の点が大切です。 確実な変化を創りだすために必要な資源を確保・投入しましょう 社内変革推進メンバーのためのサポート体制を整えましょう 新たに必要となるスキルを一人ひとりに獲得させましょう 獲得したスキルに基づく新しい行動パターンが常に発揮できるよう習慣付けまし ょう