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はじめに(pdf)

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Academic year: 2021

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日本語版へのメッセージ

サブプライム住宅ローン危機を取り巻く最近の出来事によって,金融リスクを適 切に管理し,そして金融機関が十分な資本のバッファを確実に保持することの重要 性が再度明確に示された.金融業務への規制増大傾向は今後も続く可能性が高いと 考えられ,バーゼルIIは最終的なルールとはなり得ないであろう.よって規則や細 部は変わっていくかもしれないが,定量的リスク管理の基礎概念と,本書の主題を なす主要な技法やツールは近年大いに受け入れられてきており,今日ではリスクマ ネジャーの教育において必要不可欠な要素である. 我々は,日本における定量的リスク管理の実務家,研究者,そして学生がこの日 本語版を楽しみ,そして有益な書物だと判断されることを心から願っている.日本 語版は原著の初めての外国語版であり,この出版を実現するための様々な尽力に対 して,訳者代表である塚原英敦氏,そして共訳者の方々に感謝したい. 2008年6月 アレクサンダー・J・マクニール リュディガー・フライ ポール・エンブレヒツ

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はじめに

なぜこの本を書いたか ここ数十年において金融リスク管理という分野は急激な発 展を遂げてきた.この分野で生じる定量的 (quantitative)モデリングの諸問題に この本は特化している.我々は,長年にわたる実務の専門家や規制当局者との議論 や共同プロジェクトの結果,この分野への参入を目指す実務者と学生両方に向けた, 技術的ながら理解しやすいレベルでの定量的リスク管理 (QRM)の教科書の必要 性を感じたのである. 我々は,この話題に関するいかなる講義にとってもコアとなる題材であると考え られる方法論の体系をまとめようと努力した.この題材選択とその提示方法は,金 融数学,保険数学および統計学からの観点を基にした我々自身の見方を融和させた ものとなっている.これらの見地を混ぜ合わせた書物が既存の文献におけるギャッ プを埋め,さらに銀行や保険会社などにおいて,幅広く学際的な技能をもった定量的 リスク管理者に対する将来的ニーズを部分的に先取りしたものとなると考えている. 誰のためにこの本を書いたか この本は主として学部上級生,大学院生,金融業界 の専門家向けの,定量的リスク管理科目のための教科書である.少なくとも大学の 計量的な専門分野における入門科目レベルでの確率・統計の知識は基本的な前提条 件である.さらに,絶対的に必要というわけではないが,ファイナンス,経済学, 保険論についての事前知識があれば,関連するいくつかの節をより良く理解するた めに有益だろう. この本の2次的な役割は,実際に用いられる概念や技法を明快かつ簡潔に取り 扱った書物に興味をもっているリスクの専門家にとっての参照文献としてである. そのようなものとして,規制当局者,エンドユーザー,学者の間でのコミュニケー ションを促進することを願っている. 3番目の読者層は,ますます増加しているこの分野の研究者である.ほとんどの 章は現在の実用上重要な研究の最先端へと読者をいざなってくれる.また,増大す る文献への案内となる,幅広い注釈付きの文献案内が各節末についている.

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は じ め に iii この本の利用法 定量的リスク管理についての科目をスイス連邦工科大学チュー リッヒ校,チューリッヒ大学,ライプツィヒ大学,ロンドン・スクール・オブ・エ コノミクスで教えた筆者らの経験に基づくと,週3∼4時間の通年(2学期)科目な ら,第2章から第8章の題材,そして部分的に第10章をカバーすることができる. 第1章は通常,問題の背景についての読み物として学生に与えている.第9章は, 現在クレジット・デリバティブの価格付けとヘッジに関する定量的方法への関心が 高いことから盛り込まれた,より技術的に要求の厳しい章である.よって,第9章 は主として,信用リスクについてのより上級の専門的な科目向けとして意図されて いる(下記参照). 市場リスクの科目であれば,まず第2∼4章をほぼ完全に扱って,第5, 6, 7章の 題材(正規混合接合関数,整合的リスク尺度,閾値超過に対する極値論的方法)に は時間が許せば取り組むことが考えられる. 信用リスクの科目は,第8章と第9章に基づけばよいが,それ以前の章のいくつ かの話題について準備的に扱う必要がある.2.1節と2.2節で基本概念について必 要な基礎が得られる.3.1, 3.2, 3.4, 5.1, 5.4の各節はポートフォリオ信用リスク の多変量モデルを理解するために必要である.6.1, 6.3節は資本がどのように信用 リスクに配分されるかを理解するために必須である. オペレーショナルリスクに関する短期講習やセミナーは,第10章に基づいて行 うことができるが,他の章の補助的な題材からも益を得るであろう.2.1節と2.2 節,そして第6章と第7章は特に関連が深い. また,より特化した科目として,第2, 5, 6章に基づくリスクの計測と総計をテー マとする科目を,そして第2∼4, 7章に基づく金融計量経済学のためのリスク管理 技法についての科目を考案することも可能である.多変量解析,時系列解析や一般 化線形モデルといったテーマについての統計学の科目を活気づける興味深い例とし て,様々な章からの題材を用いることもできよう. 取り上げなかった話題 本書では,読者が定量的リスク管理という表題から期待す る話題すべてを取り上げることはできなかった.おそらく抜け落ちていることが 最も明白なのはヘッジによる派生証券のリスク管理であろう.それは,関連する 技法とそれらを理解するために必要な金融数学はすでに多くの優れた教科書で十 分扱われているというのが我々の考えだからである.他に省かれた話題としては, RAROC(リスク修正後の資本利益率)と運用実績計測の問題がある.これらの大 きな分野に加えて,スペース上の理由から多くのより細かな話題が軽視されている が,それらには注と解説の項(本書の不可欠な部分であると考えてほしい)でさら なる文献を提示しつつ触れている. 謝辞 本書の原点は,A.M.とR.F.がチューリッヒのスイス連邦工科大学(ETH) においてP.E.のグループでポスドクの研究を始めた1996年に遡る.このプロジェ クトを活発に行える環境を提供してくれたETHに3人の著者全員が感謝している.

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A.M.とR.F.は,ポスドク職への財政的援助を与えてくれたスイス・リー(Swiss Re)社とUBSにそれぞれ感謝する.R.F.はその後チューリッヒ大学のスイス銀行 研究所(Swiss Banking Institute) ,そしてライプツィヒ大学に職を得たが,こ

れら2つの研究機関の援助に感謝する.

ETHチューリッヒ校の数学研究所 (Forschungsinstitut f¨ur Mathematik (FIM)) は こ の プ ロ ジ ェ ク ト の 様 々 な 段 階 で 財 政 的 援 助 を 供 与 し て く れ た . 2004年初めの正念場には,オーバーボルファッハ数学研究所 (Mathematis-ches Forschungsinstitut Oberwolfach)での1週間で大きな進展を遂げられた. P.E.には,ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにおいて100周年記念教授と して過ごした時間が懐かしく思い出される.その会計・金融学科の同僚たちとの数 多くの議論は,P.E.が定量的リスク管理の重要性に対する考え方を形成する上で 役立っている.また,この計画へのRiskLab Zurichの非常に貴重な貢献に感謝の 念を示したい. 本書の基本方針は,RiskLabのスポンサーであるUBS,クレディ スイス,スイス・リー社との共同プロジェクトと議論に強く影響を受けている.ま た,スイスのNCCR FINRISK研究プログラムは,本書で扱った話題に関する博 士課程および博士課程終了後の研究に資金を提供し,我々は大いに恩恵を受けた. 原稿の様々な部分にコメントをくれた数多くの校正者,そして定量的リス ク 管 理 と そ の 基 礎 と な る 数 理 の 理 解 に 手 を 貸 し て く れ た チ ュ ー リ ッ ヒ ,ラ イ プ ツ ィ ヒ 他 の 同 僚 た ち に は お 世 話 に な っ た .そ の リ ス ト は ,Stefan Alt-ner, Philippe ArtzAlt-ner, Jochen Backhaus, Guus Balkema, Uta Beckmann, Reto Baumgartner, Wolfgang Breymann, Reto Bucher, Hans B¨uhlmann, Peter B¨uhlmann, Val´erie Chavez-Demoulin, Dominik Colangelo, Freddy Delbaen, Rosario Dell’Aquila, Stefan Denzler, Alexandra Dias, Stefano Demarta, Damir Filipovic, Gabriel Frahm, Hansj¨org Furrer, Rajna Gib-son, Kay Giesecke, Enrico De Giorgi, Bernhard Hodler, Andrea H¨oing, Christoph Hummel, Alessandro Juri, Roger Kaufmann, Philipp Keller, Hans-Rudolf K¨unsch, Filip Lindskog, Hans-Jakob L¨uthi, Natalia Marko-vich, Benoˆıt Metayer, Johanna Neˇslehov´a, Monika Popp, Giovanni Puc-cetti, Hanspeter Schmidli, Sylvia Schmidt, Thorsten Schmidt, Philipp Sch¨onbucher, Martin Schweizer, Torsten Steiger, Daniel Straumann, Dirk Tasche, Eduardo Vilela, Marcel Visser, Jonathan Wendinである.原稿の準 備についてはGabriele Baltesの助力に感謝する.

本書の制作に関するすべての助力に対してRichard Baggaleyとプリンストン大 学出版局のチームに感謝する.また,称賛すべきフィードバックをくれた匿名の査 読者にも感謝する.彼らのお陰で本書は良い方向へと形成された.驚くべきスピー

ドと能率で,我々の書いたムラのあるLATEXコードをより洗練された本へと変え

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は じ め に v

我々の妻達Janine, Catharina, Gerdaと家族には,心から感謝しなければなら ない.我々がリスクについて長く熟考したばかりにきっとイライラさせられたに違 いないが,明らかな報いもなしに彼女らは絶えず支援し続けてくれた. 追加的な情報源 この本の補助的資料を得るためには,この本のホームページ http://press.princeton.edu/titles/8056.html を訪れることを読者に勧めたい.本書の例を作り出すために用いたコンピュータ・ コード(ほぼすべてS-PLUS用)を利用可能にし,正誤表を記載するのがその目的 である. 特別な略記法 この本では確率論における一般的な用語に対する多くの略記が用い られている.“iid”は「独立かつ同一分布をもつ」,“MLE”は「最尤推定量」,“se” は「標準誤差」の意である.

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訳者まえがき

本 書 は ,“Quantitative Risk Management: Concepts, Techniques and Tools”の全訳であり,計量・数理ファイナンスおよび保険数理という幅広い 領域にわたるリスク管理の基礎概念と定量的手法を解説した教科書である.この本 を読むための予備知識および講義での用い方については,原著序文に述べられてい るので,そちらを参照していただきたい.現在の日本の大学での状況を考えると, 確率・統計の基礎をきっちり学んだ学部3, 4年生,あるいはリスク管理の定量的側 面に重点をおく大学院(ビジネス・スクール)なら大学院の初年度に用いることが できると考えられる.目次を一見するとわかるように,各章の主題それぞれが1冊 の書物を要するくらい大きなテーマであるが,その中でリスク管理に関連する部分 を上手く抽出しまとめている.定量的リスク管理の手法を体系的に習得するための 基礎となる材料がすべて手際良くまとめられているという点で,類書が今のところ 存在しないことは本書の大きな魅力になっている.

本書には,多くの箇所でCrouhy, M., Mark, D. and Galai, R. (2001) Risk Management, McGrow-Hill, New York(邦訳:『リスクマネジメント』三浦良

造他訳,共立出版,2004)への参照があるが,この2冊は理想的な補完関係にあ り,大雑把にいうと,『リスクマネジメント』でリスク管理の定性的な面を,そし て本書で定量的な面を学ぶことができるといえよう.もちろん,本書にも欠点がな いわけではなく,時系列解析についてはGARCH型モデルにやや偏重している, リスク尺度の扱いがその重要性に比して軽い,さらに練習問題がないことなどが指 摘され得るが,全体として極めてよく書かれた教科書である.著者はすべてこの分 野の第一線級の研究者であり,Alexander J. McNeil教授は統計学に根差した計 量ファイナンスの研究者,R¨udiger Frey教授は数理ファイナンスの研究者,Paul Embrechts教授は保険数理および関連する確率過程理論において著名な研究者で ある.この絶妙なバランスがこのような好著を生み出したのかもしれない.

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訳 者 ま え が き vii

学の海外研修制度を利用して,スイス連邦工科大学チューリッヒ校(Eidgen¨ossische Technische Hochschule Z¨urich,以下ETHと略記)に滞在する機会を得た.招 待してくださったFreddy Delbaen教授とリスク尺度に関して議論する傍ら,夏 学期には,本書の著者の一人であるPaul Embrechts教授の講義“Quantitative Methods for Risk Management”に顔を出していた.彼からこの講義を基にし

た教科書を執筆中だと聞き,当時ETHの教授で,取りまとめ役として原稿を管理 していたAlex McNeil教授から原稿をもらって読み進み,感銘を受けた.数理理 論をいたずらに深く掘り下げるわけではなく基本に止め,さらに実務上重要である, データに基づく統計実証分析の方法にかなりの紙数を費やしている.これは数理面 をある程度重視したビジネススクールの教科書としても使えるのではないかと考え, 私の恩師であり本書の翻訳チームにも加わっていただいた三浦良造先生に相談した ところ,三浦先生もまた私の主張に共感され,共立出版にお話をしてくださり,こ の翻訳企画がスタートした. 訳出の基本方針としては,まずわかりやすい日本語であることを心がけた.この 分野では,実際に対応する日本語が見あたらないものも多く(リスク,ポートフォ リオ,エクスポージャーなど),また,適当な訳語は考えられるが,不幸にもカナ 表記がすでに定着してしまったものも少なくないので,その上にまたカタカナ語を 無闇に増やすのは好ましくないと考えた.口語の場合はまだしも,文語ではカタカ ナ過多であると読みにくくなる印象があるからである.よって,訳者代表である塚 原の主張により,適切な訳語が考えられる場合にはできるだけそちらを用いるよう にしたが,それによって逆に読みにくくなっていることのないことを願うのみであ る.あまり標準的ではないと思われる訳語に対しては,索引で原語を括弧書きで併 記した.また,我々が見つけた原著の誤りはすべて原著者に確認の上訂正した.文 献リストも最新の情報に基づいて更新済みである. 謝辞 翻訳分担者のスケジュールのズレから,当初予定していた翻訳完成時期を大 幅に過ぎてしまった.この翻訳書の出版に際して多大なるご尽力をいただいた共立 出版(株)の小山透氏と赤城圭氏には深く感謝の意を表したい。また,快く原著の ほぼ最終版のTeXファイルと図のEPSファイルを提供してくれたAlexには心か ら感謝したい.彼のウェブサイトhttp://www.ma.hw.ac.uk/mcneil/には,

正誤表や本書のためのS-PLUSライブラリがアップされているので,適宜参照さ

れたい.

 2008年6月

参照

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