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Laurance 1999 GCM RAMS Piekle et al Zhang et al Mabuchi et al. 2005a, b Malhi and Wright Kanae et al RAMS CO 2 UNEP WCMC

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Academic year: 2021

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Ⅰ.はじめに

熱帯林は地球の全森林面積の60 %を占めている といわれ,一般に日射のエネルギーや蒸発散量の大 きい地域に存在するため,地球の気候形成に与える インパクトは大きい.その熱帯林が人為的な営力に よる伐採や荒廃にさらされていることは良く知られ タイ北部の熱帯季節林の水文気象を調べた既往の観測研究情報を整理し,今後の研究課題を検討した.まず, 森林生態学分野の文献より,この地域の多様な森林植生を四つの潜在的な森林タイプとそれぞれが人為撹乱され たタイプに分類した.熱収支の季節変化などの水文気象に関する基礎情報は,一部の森林タイプを除いて主要な 森林タイプで既に調べられていた.その情報を整理した結果,森林タイプによって乾季の蒸発散量に大きな違い がみられることが,この地域の森林植生における水文気象の大きな特徴であることがわかった.この地域の熱帯 季節林にとっての環境変化のリズムは,雨季と乾季という毎年繰り返される季節変化に加えて,降水量やその季節 変化の年々変動によって形成される.最近の幾つかの研究事例より,その降水の年々変動に伴って,この地域の熱 帯季節林の生理生態が単年の調査からは想定できなかった応答を示すことが報告されてきた.このような森林の生理 生態の反応は,この地域の熱帯季節林における熱・水・炭素循環が年々に大きく変化することを示唆する.今後の研 究課題として,降水の年々変動に対する各熱帯季節林の反応を明らかにしてゆくことが重要であると考えられた. キーワード: 熱帯季節林,森林タイプ,水文気象学,降水の年々変動,タイ北部

田中 延亮

1)2)

久米 朋宣

2)3)

吉藤 奈津子

1)2)

田中 克典

4)

瀧澤 英紀

5)

白木 克繁

6)

小坂 泉

5)*

タンタシリン チャチャイ

7)

タンタム ニポン

7)

鈴木 雅一

2) 1)科学技術振興機構 (〒332-0012 埼玉県川口市本町4-1-8) 2)東京大学大学院農学生命科学研究科 (〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1) 3)九州大学農学研究院 (〒811-2415 福岡県篠栗町津波黒) 4)地球環境フロンティア研究センター (〒236-0001 神奈川県横浜市金沢区昭和町3173-25) 5)日本大学生物資源科学部 (〒252-8510 神奈川県藤沢市亀井野1866) 6)東京農工大学農学部地域生態システム学科 (〒183-8509 東京都府中市幸町3-5-8) 7)カセツァート大学林学部

(Chatuchuk, Bangkok 10900, Thailand)

総 説

タイ北部の熱帯季節林における

現地観測をベースにした水文気象研究

― 既往研究の整理と今後の課題 ―

Vol. 20, No.4, Jul 2007 pp. 347 - 361

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ているが,そのなかでも東南アジアの熱帯林や熱帯 季節林は驚くべきスピードで減少してきたとされて いる(Laurance 1999).これまで,森林伐採が地球 規模や地域の気候に与える影響は,主にGCMモデ ルや領域モデル(例えばRAMS,Piekle et al. 1992) による計算結果を用いて示されてきた.従来の幾つ かの数値実験では,東南アジアの熱帯林伐採による 地表面温度上昇や降水量減少といった地域の気候変 動に対するインパクトは,アマゾンの熱帯林伐採の 場合ほど深刻ではないという結果が示されてきた (例えば,Zhang et al. 1996).しかし,最近のより精 緻な数値実験では,東南アジア熱帯林の他の植生へ の転換は,アジアモンスーン循環に影響を与え,こ の地域の降水量の空間分布が変動するという予測結 果が示されている(Mabuchi et al. 2005a, b).このよ うな東南アジアの熱帯域での気候変動は地上の気象 観測データからも示唆されている.例えば,Malhi and Wright(2004)は,世界の地上観測降水量から 作成された降水量データセットに基づいて20世紀後 半の世界の熱帯林分布域の降水量長期トレンドを解 析し,東南アジア熱帯林での降水量減少傾向はアマ ゾン熱帯林での傾向よりも顕著であることを指摘し ている.また,Kanae et al.(2001)は,タイの34箇 所の地上気象ステーションにおける降水量の長期ト レンドを解析して9月の降水量がタイ全土で減少傾 向にあることを見出し,その傾向をタイ東北部の森 林伐採をシナリオしたRAMSの計算結果によって説 明している.これらの研究は,東南アジアの熱帯林 の被覆状態やその時系列的な変化,各森林タイプに おける陸面過程(大気−植生間の水,熱,CO2循環 過程)の把握が重要であることを示している. 東南アジア熱帯域の森林植生は,高い人口圧によ り複雑な攪乱を受けたこと,アマゾンやアフリカの 熱帯林に比べて山地林が多いことにより(UNEP− WCMC 2004),多様な森林植生がパッチ状に混在し ていることが特徴である.その複雑性を考えると, 各植生の熱水収支の記述,植生モデル(例えば, Sellers et al. 1996,Mabuchi et al. 1997)における空 気力学的パラメータ,植物生理パラメータ,土壌パ ラメータの整理は十分ではない.その整理不足は, 特にインドシナ半島の熱帯季節林の分布域で顕著で ある.そのため,例えば,アジアモンスーンの気候 システム解明を目的としたGAME/Tropicsおよびそ の後継プロジェクト(沖 2002)では,タイ北部の 熱帯季節林をターゲットとし,森林植生−大気間の 熱,水蒸気,CO2の交換過程を現地観測し,その情 報不足を補うための研究が続けられてきた. この地域では,上述したような長期間にわたる降 水量の減少傾向とは別に,エルニーニョの発生年に 雨季の開始時期が遅くなる傾向(Zhang et al. 2002) や降水量が少なくなる傾向(例えば,Malhi and Wright 2004)が報告されている.また,その少雨傾 向と関連して,この地域の植物活性(NDVI,正規 化植生指数)の低下や地表面温度の上昇が起こるこ とがわかってきている(西田ら 2005).このような 気象の年々変動とそれに伴う植物活性の応答は,森 林植生における水,熱,炭素交換のプロセスや量の 年々変動というシグナルで現れる(例えば,White et al. 1999).つまり,この地域の熱帯季節林におけ る水文気象のリズムは,毎年繰り返される雨季と乾 季という環境変化に対する応答に加えて,エルニー ニョイベント等に関連して発生する環境変化への応 答という時間スケールの異なる二つの応答の組み合 わせによって形成されるといえる. 本稿は,まず,タイ北部の多様な森林植生とその 特徴を森林生態学分野の文献を用いて整理し,各タ イプにおいて観測ベースで行われた水文気象研究を レビューする.それらの既往研究成果の到達度を踏 まえ,この地域の熱帯季節林の水文気象の総合的理 解に向けた今後の研究課題を整理する.

Ⅱ.タイ北部の森林植生

タイの森林面積率は,統計や資料によって多少の 変動はあるが,1913年にはタイ国土の75 %であっ たが,53 %(1961年),25 %(1982年)と急激に減少 したといわれている(Hirch 1987).その減少率の高 さはMyers(1994)の世界の熱帯林伐採をレビュー した文献でも指摘され,世界の熱帯林を有する国の 中でも最も激しい伐採が行われている国の一つであ ったといえる.2000年にタイの国立公園野生生物局 がランドサット画像を解析した結果(National park, Wildlife and Plant Conservation Department(NWPCD) 2000)によると,タイ全体の森林面積率は約33 %で あるが,タイ北部に限定するとその面積率は約59 % となっている.例えば,コラート高原を含むタイ東 北部の森林面積率(16 %)と比較すると,タイ北部 には森林植生が比較的多く現存していることがわか る.タイ北部の地形は,南北に連なる標高1,000 m 以上の山地とその間にある大小の盆地によって構成

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される(図−1).このような標高差のある地形は気 温分布だけでなく降水量分布にも影響を与え(Kuraji et al. 2001),かつ,地質や土壌タイプの分布が複雑 であることから(Pendleton 1962),この地域には多 様な森林タイプが存在する.人為的攪乱の影響を考 えない場合,森林を構成する樹木の種組成は,主に 気象や土壌の要因によって決まると考えられる.そ のため,いわゆる森林生態学的に分類された森林タ イプ毎に,それぞれの水文気象の特徴を抽出するこ とは,この地域の森林植生全体の水文気象を把握す るためには好都合である.そこで,本稿の第Ⅳ章に おいて既往の観測研究をレビューする際,森林タイ プ毎に得られた知見を整理するという形式をとるこ とにした. タイ北部の気候は1年のうち4-5ヶ月間の明瞭な乾 季をもつことが特徴である(第Ⅲ章参照).この地 域には,乾季において,(見かけは)落葉しない常 緑タイプの森林と落葉するタイプの森林が混在す る.Santisuk(1988)は,種組成や相観が全く異な る4タイプの森林植生がこの地域に存在し,それら が標高と乾燥度によって分類できることを示した (図−2).標高が1,000 m以下の低地では,乾燥度の 高い地域から湿潤な地域にかけて,乾燥フタバガキ 林(dry dipterocarp forest),混交落葉林(mixed deciduous forest),乾燥常緑林(dry evergreen forest)

という森林タイプが分布する.一方,標高が1,000 m 以上の山地では丘陵性常緑林(hill evergreen forest) が広がる.その4タイプの森林のうち,乾燥常緑林 と丘陵性常緑林は常緑タイプの森林で,混交落葉林 と乾燥フタバガキ林は落葉タイプの森林である.各 タイプの森林を構成する樹木や地理的分布の特徴 を,本稿の注釈に整理したので適宜参照されたい. なお,この地域の森林植生を区分する際に注意すべ き点は,上で区分された森林はあくまでも人為的撹 乱の影響の少ない潜在的な森林植生を区分している 点である.実際には,潜在的な森林植生の多くは, 焼畑農業,移動耕作,農地開発,人工林造成といっ た人間活動の影響を強く受けてきた(Santisuk 1988, Ruangpanit 1995及び注釈参照).撹乱された森林植 生では,樹木の種組成や森林の相観が潜在的なもの から大きく変化するため,その水文気象は潜在的な 森林植生のものとは区別して考える必要がある.そ こで,本稿では,タイ北部地域の4つの潜在的な森 林タイプのそれぞれに対して,人為的な撹乱の影響 を受けた森林あるいは人間により造成された森林と いう区分を設けることにした(図−2). 本稿の第Ⅳ章では,まず,潜在的な森林における 研究事例として,乾燥常緑林と丘陵性常緑林で得ら れた結果をレビューする.次に,人為撹乱を受けた 森林タイプにおける研究事例として,丘陵性常緑林 図−1 a)タイ全図,b)タイ北部の地形図

Fig.1 a) Map of Thailand and b) topographic map of northern Thailand.

b)図において,都市は丸マーク(○),研究サイトは星マーク(☆)で示した

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二次林,低地の森林を含む複雑植生,チーク人工林 での成果を取り上げる.これらの第Ⅳ章で取り上 げる森林のうち,2タイプの潜在的な森林について は注釈で述べるが,3タイプの人為撹乱後の森林の 位置付けについては以下に簡単に補足説明をして おく. タイ北部地域の標高の高い山地における主要な人 為撹乱の形態は焼畑農業や移動耕作である.その結 果として形成される放置農地,休閑地,二次林など が混在するモザイク状の植生は,この地域の(国立 公園や生物保護区以外の)山地における典型的なラ ンドスケープとなっている.このような人為撹乱が 起こる標高の高い山地にはもともと丘陵性常緑林が 分布する(図−2).そのため,本稿では,このよう なモザイク植生に存在する二次林を丘陵性常緑林が 人為的に撹乱されたものとして区分した.一方,こ の地域の低地における代表的な人為撹乱後の森林タ イプの一つに,農地,草地などに混じって疎に森林 が存在するような複雑植生を挙げることができる. 第Ⅳ章では,タイ北部から中部にかけての農業地 帯にある複雑植生を対象とした研究事例を取り上 げるが,この一帯の農地の多くの部分は乾燥フタ バ ガ キ 林 か ら 転 換 さ れ た も の と さ れ て い る た め (Santisuk 1988),本稿ではこの研究事例を乾燥フタ バガキ林が人為撹乱されたものに区分した.最後 に,チーク人工林の位置付けについて述べる.チー ク(Tectona grandis)は,潜在的には混交落葉林の 樹冠上層を構成する熱帯季節林のシンボル的な樹木 であった(吉良 1984及び注釈参照).その材木とし ての商品価値が高いことから,20世紀初期から1989 年の木材伐採禁止令の発令まで択伐が続いた(松 本・ハーシュ 2003).そのため,現在の混交落葉林 にはチークがほとんど残されていない.一方,1960 年代後半から,この地域ではチークの造林が進めら れ,タイにおける重要な人工林樹種となった(石 塚・Bonyalid 1988).現在では,チークはアカシア やユーカリとともに世界の代表的な熱帯広葉樹の人 工林樹種となっている(Krishnapillay 2000).チー ク人工林は,もともと混交落葉林にあったチークだ けを選択的に植林した森林タイプであるため,本稿 では,人為的に造成された混交落葉林と区分した (図−2). 図−2 タイ北部の熱帯季節林タイプと周辺の水文気象研究サイト

この地域における代表的な4つの森林タイプである乾燥常緑林(dry evergreen forest),丘陵性常緑林(hill evergreen forest),混交落葉林(mixed deciduous forest),乾燥フタバガキ林(dry dipterocarp forest)の分布を Santisuk(1988)の図をもとに作成した.網掛けされた範囲は,人為的撹乱を受けた森林や人工的に造成された森 林を表す.現地観測をベースとした水文気象研究の対象となった森林タイプには,観測サイト名をイタリック体で示 した.人為撹乱後の森林植生を対象にした観測サイトのうち,パンクン(Pang Khum)の森林タイプは丘陵性常緑 林二次林,ターク(Tak)は森林を疎に含む複雑植生,メーモ(Mae Moh)はチーク人工林である.

Fig.2 Forest types of tropical monsoon forests in northern Thailand and hydro-meteorological study sites in nearby regions. This diagram is redrawn from Santisuk (1988). Shades show reforested area or forest area disturbed by humans. Italicized characters denote study sites. Forest types of Pang Khun, Tak, and Mae Moh are secondary hill evergreen forest, complex vegetation including sparce forest, and teal plantation, respectively.

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Ⅲ.気象概要

タイ北部の熱帯季節林における気象の概要を, チェンマイ県の山地にある丘陵性常緑林サイトのコ グマ試験地(以下,コグマ(Kog-Ma),18°48′N, 98°54′E,標高1,265-1,420 m)とランパン県の低地 にあるチーク人工林サイトのメーモ試験林(以下, メーモ(Mae Moh),18°25′N,99°43′E,標高380 m) で得られたデータを用いて示したものが図−3である. 山 地 に あ る コ グ マ の 平 均 年 降 水 量 は 約 1,768 mm (1998-2004年)であり,低地にあるメーモの平均年降 水量である約1,387 mm(2001-2005年)よりも大き い.このように,標高が高くなるに従い年降水量が 大きくなる傾向は,同地域にあるメチャム流域でも 確認されている(Kuraji et al. 2001).両サイトとも に,降水の季節変化は明瞭であり,年降水量の多く は南西モンスーンが卓越する雨季(5-10月)に集中 する.ただし,3-4月のモンスーンオンセット前の 時期(プレモンスーン期)においても,中緯度偏西 風の変動の影響を受けて降水が発生する場合がある (Kiguchi and Matsumoto 2005).日射量の季節変化

は,両サイトともに雲や水蒸気の影響を受ける雨季 にやや低く,乾季後半にやや高いというパターンを 示す.標高の高いコグマの年平均気温は約20℃であ り,標高の低いメーモの年平均気温(約25℃)より も低い.気温の季節変化は温帯地域に比べると不明 瞭であるが,両サイトともに,乾季後半(3-4月) に高く,雨季の開始と共にしだいに低くなり,乾季 前半(12-1月)に最低となる.一方,飽差の季節変 化は明瞭であり,両サイトともに雨季に小さく乾季 に高いというパターンを示す.乾季後半の飽差の上 昇はメーモで特に顕著であるのは,乾季後半の気温 がメーモのほうがより高いことを反映している.以 上から,山地と低地で多少の差はあるが,タイ北部 地域における気象の季節変化の最大の特徴は,飽 差 , 日 射 量 , 気 温 が 増 加 し 大 気 側 の 蒸 発 要 求 度 (evaporative demand)が大きくなる乾季,逆に大 気の蒸発要求度が小さい雨季という二つの対照的な 季節が存在することであることがわかる.このよう な大気側からの要求の変化に対して,この地域の各 森林植生タイプがどのように応答するかという点 は,次章で既往研究を整理する際の着眼点の一つで 図−3 a)コグマ試験地(1997-2005年)とb)メーモ試験林(2000-2005年)における降水量,日射量,気温,飽差(VPD)の 平均的な季節変化

Fig.3 Seasonal variations in mean 5-days rainfall, solar radiation, air temperature and vapor pressure deficit (VPD) at a) Kog-Ma experimental watershed for the 1997-2005 period and b) a teak stand in MaeMoh plantation for the 2000-2005 period.

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ある. 両サイトの降水量の長期変化を図−4に示す.コ グマの降水量の変化は,チェンマイ国際空港(標高 395 m)の変化とほぼ同調している.その両地点と もに,年々の降水量の変化は大きいことがわかる. 例えば,コグマの1998年の降水量は1,262 mmであり, 2002年の降水量(2,459 mm)の約半分である.また, メーモの最近20年の降水量の変動も大きく,最も寡 雨であった1986年の年降水量は850 mm,多雨年で ある2005年は1,700 mmであった.この地域の降水量 の年々変動幅は大きいことがわかる.

Ⅳ.各森林タイプにおける観測研究の整理

本章では,第Ⅱ章で述べた森林タイプ毎に,これ までおこなわれた主に森林−大気間の熱や水蒸気の 交換過程に着目した観測研究を整理する. 1.乾燥常緑林 乾燥常緑林における水文気象の主要な研究は,サ ケラート研究地域(以下,サケラート(Sakaerat), 14°31′N,101°55′E,樹高35 m,標高300 - 600 m,観 測 タ ワ ー の 標 高 は 535 m) で 行 わ れ て き た . Thompson and Pinker(1975)は,同地域の乾燥常緑 林エリアに建設された高さ48 mの気象観測タワーを 用いて温度と風速プロィールの観測をおこない,同 常緑林の森林の3時期(1月,6月,9月)の粗度パラ メータを同定した結果,ゼロ面修正量はほぼ季節変 化しないが,地表面粗度は0.83 -5.62 mの範囲で大き く季節変化することを報告している.さらに,Pinker et al.(1980)は,その粗度パラメータを用いて傾度法を適 用し,1970年における乾季(1月)と雨季(6月)の熱 収支を求めた.その結果,乾季と雨季の純放射量には ほとんど差がないこと,また,雨季である6月に3.3 mm d-1であった蒸発散量が乾季である1月には0.6 mm d-1 まで低下するとした.大気の蒸発要求度の高い乾季 において蒸発散量が少なかった原因は,植物による 蒸散抑制の効果であると推察している(Pinker et al. 1980).このような乾季における樹木による蒸散抑制 は,サケラートの乾燥常緑林における優占種の一つ であるフタバガキ科のHopea ferreaを対象にして, 一年を通した気孔コンダクタンスの環境応答特性の 変化を調べた最近の研究(Ishida et al. 2006)において も確認されている. 地理的にやや離れたサイトであるが,カンボジア のコンポントム州にある乾燥常緑林サイト(以下, コンポントム(Kampong Thom),12°44′N,105° 28′E,樹高27.2 m,標高88 m)ではボーエン比法を 用いた通年の熱収支観測がおこなわれ,同サイトで は雨季よりも乾季において蒸発散量が大きいことが 図−4 タイ北部の a)コグマ試験地およびチェンマイ国際空港とb)メーモ試験林の年降水量の年々変動

Fig.4 Annual rainfall a) at Kog-Ma watershed and Chiangmai international airport and b) MaeMoh plantation. a)には,コグマ研究ステーション(コグマ試験地の宿泊施設)における1966-1980年の年降水量(○,Chunkao et

al. 1981),コグマ試験地における1998-2004年の年降水量(●),チェンマイ国際空港における長期降水量(□)を

示した.また,b)には,タイ林業公社(FIO)によって得られたメーモ試験林における1986−2001年の年降水量 (□)と2001年-2005年の年降水量(●)を示した.

Annual rainfall at Kog-Ma watershed during the 1966-1980 period (○, after Chunkao et al. 1981) and that during our study period (●) are shown in Fig. 4a). Also shown in Fig. 4a) is the long-term rainfall record at Chiangmai airport (□). In Fig. 4b), annual rainfall at MaeMoh plantation observed by FIO during the 1986-2001 period and that during our study period are expressed by blank squares (□) and solid circles (●), respectively.

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指摘されている(Nobuhiro et al. 2005,Shimizu et al. 2006).このように乾季においても蒸発散量が 維持できるのは,乾季においても土壌中に地下水が 存在し,その水分を樹木が利用しているからである と考えられている(Nobuhiro et al. 2005).残念な がら,Pinker et al.(1980)のサケラートにおける 熱収支の観測研究では,土壌水分や地下水の要素ま でを含めて議論されていない.コンポントムとサケ ラートの乾燥常緑林における乾季の蒸発散量の違い が,樹木の利用可能な水分の有無だけで説明できる かどうかは,コンポントムにおける成果とサケラー トで進行中のフラックス観測(Gamo and Panuthai 2005)の結果の比較により明らかになってくると 期待される.

2.丘陵性常緑林

丘陵性常緑林における水文気象は,主に上述のコ グ マ に お い て 調 べ ら れ て き た (図 − 1 ,図 − 2 , Tanaka et al. 2006b).Tanaka et al.(2003)は,深さ 0.5 mまでの表層土壌が非常に乾燥する乾季後半に おいても,コグマの林冠を構成する樹木の最大光 合成速度や気孔開度が低下しないことを観測した. さらに,そこで得られた気孔コンダクタンスと光 合成速度のパラメータを組み入れた多層生態系モ デル(Tanaka 2002)を用いて,コグマの2年間の 熱収支を示している(図−5).図−5に示された 数値シミュレーションによる蒸発散量やその季節 変化は,同時におこなわれた樹冠遮断蒸発量の観測 結果(Tanaka et al. 2005),流域からの流出量から求 めた年蒸発散量,樹液流速の季節変化の観測結果と 一致したことから,コグマの蒸発散量を良好に再 現していると考えられている(Tanaka et al. 2003). 図−5から,コグマの丘陵性常緑林からの蒸発散量 は雨季に低く(2-3 mm d-1),乾季前半に最も低く (1-2 mm d-1),乾季後半に最も高く(3- 4 mm d-1 なっていることがわかる.つまり,丘陵性常緑林の 蒸発散量は概ね大気の蒸発要求度の増加に応じて増 加しているといえる.コグマで得られた丘陵性常緑 林の蒸発散量の季節変化は先述のサケラートの乾燥 常緑林のものと異なったため,同じ地域の常緑林で あっても森林タイプによって蒸発散量の季節変化パ ターンが異なることを示唆するものである.また, 後述するタイ北部の森林を含む低地の複雑植生や低 地のチーク人工林においては,ともに乾季に蒸発散 量が低下することが報告されている(Toda et al. 2002,Attarod et al. 2006).これらと比較すると,こ の地域の熱帯季節林のうち,丘陵性常緑林は特徴的 な蒸発散量の季節性を示す森林タイプであることが わかる. コグマでは,乾季後半において,深さ0-50 cmの表 層土壌はテンシオメーターの測定レンジを超えるよ うな乾燥状態にあるが,渓流水の流出量は約1 mm d-1 図−5 コグマ試験地の純放射量(Rn)と潜熱(LHF)の季節変化のシミュレーション結果(Tanaka et al. 2003より引用) Fig.5 Simulation results of the seasonal variation in the net radiation (Rn) and latent heat (LHF) over a hill evergreen forest in 1998

and 1999 (after Tanaka et al. 2003).

2年間(1998-1999年)を対象に行われた32通りの数値シミュレーションで得られた出力のうち,純放射量は太いエ ラーバー,潜熱は細いエラーバー,32通りの潜熱の出力結果の平均値は太実線で示されている.細いエラーバー付 きの細実線は,計算された樹冠遮断蒸発量(interception)を示す.また,図中の丸(○)は実測された純放射量, 四角(◆)は実測された樹冠遮断蒸発量を示す

Simulated ranges of net radiation and latent heat are indicated by thick error bars and thin error bars, respectively. Mean of the simulated latent heat is shown by a thick solid line. Simulated interception and its mean are indicated by a thin error bars with a thin line. Observed net radiation and interception evaporation are expressed by blank circles (○) and solid diamonds (◆), respectively.

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を 下 回 る こ と が な い た め ( Yamada et al. 2001, Tanaka et al. 2003),樹木が利用可能な水分は土壌深 部に存在するはずである.Tanaka et al.(2004)は, 樹液流速度の季節変化の実測値と流出量から求まる 蒸発散量を再現するために必要な樹木の根の伸長深 について数値実験により検討している.その結果, 根の深さが4-5 m以上であるとして計算した場合に, 実測された樹液流速や流域の蒸発散量と整合する結 果が得られるとした.この結果は,図―5で示され た乾季後半に蒸発散量のピークが生じることの原因 として,樹木が深い土壌に存在する水分を利用して いる可能性が高いことを示している.また,この検 討はコグマでのケーススタディという位置付けだけ でなく,一般に,乾季後半に蒸散量がピークを示す 植生における陸面過程を表現するためのモデルパラ メータとして,通常の土壌深(1-2 m)よりも深い 土壌深を設定することが必要であることを示すもの である(Tanaka et al. 2004). ここまでは,丘陵性常緑林における蒸発散量の季 節変化の基本的なパターンとそのメカニズムについ て触れたが,この地域に顕著な降水量の年々変動の 結果として発生する大きな乾燥イベント時の樹木の 生理反応についても興味深い結果が示されている. Kume et al.(2007)は,多雨年および少雨年それぞ れの乾季後半において,土壌水分低下に起因する蒸 散抑制が同試験地の樹木で生じているかどうかを調 べた.その結果,多雨年の乾季後半には丘陵性常緑 林は蒸散が活発であるが,大きい乾燥イベントを伴 う乾季には土壌水分の低下を介して樹木が水ストレ スを受けていること,また,樹木サイズが小さい樹 木においてそのストレスが顕著に現れることを見出 している.この樹木サイズによる水ストレスを受け る度合いの差異は,根系の発達具合が樹木サイズに よって異なるために生じている.高木の場合,土壌 深部に達した深い根によって乾季後半の蒸散が活発 に維持されている.一方で,小型の個体は高木ほど 根系が発達しておらず土壌深部に貯留された水分を 利用できないため,厳しい乾燥イベント時において 高木に比べて蒸散抑制が顕著に現れる.ここで示さ れた結果は,コグマ試験地の樹木が深い根により土 壌深部の水分を吸水し,(群落スケールでは)活発 な蒸散を維持していることを示唆した上述の数値実 験の結果(Tanaka et al. 2004)を傍証するものであ る.また,この結果は丘陵性常緑林の更新過程が土 壌の水文過程と密接な関係を持つことを意味してい る.コグマでは,降水の年々変動に伴って,Kume et al.(2007)が観測対象としたイベントよりも強度 の乾燥イベントが発生する.このような大きな乾燥 イベントと水・炭素循環過程,森林動態との関係を 把握することは,この地域の熱帯季節林の水文気象 の総合的理解には必要不可欠であり,今後の課題と いえる. この地域の標高が1,000 m以上に立地する森林は, 場 合 に よ っ て は 雲 や 霧 に 包 ま れ る こ と ( c l o u d immersion)がある(Werner and Santisuk 1993).一 般に,森林の樹冠は地表面粗度が大きいため霧や雲 と効率良く衝突する.その結果,森林生態系は降水 以 外 の 経 路 か ら 水 分 供 給 を 受 け る こ と に な る (Bruijnzeel 2005).標高1,265-1,420 mに立地するコ グマもその例外ではない.Tanaka et al.(in press) は,コグマの霧と降水を約3年間観測した結果から, 霧発生時間の総数は降水発生時間の総数に匹敵する こと,また,霧発生は雨季に卓越することを観測し ている.また,この雲や霧の発生によって,コグマ の丘陵性常緑林の樹冠部に降水量の8-11%に相当す る水分量が供給されたと見積もられている(Tanaka et al. 2006a).このように霧発生が熱帯の山地林の 水文過程への影響を調べる研究は,主として中南米 の熱帯山地林における研究によって進められてき た.東南アジア地域の熱帯山地林の多くは,コグマ と同じようなブナ科やクスノキ科の常緑性の樹木で 構成される森林タイプ(lauro-fagaceous forest, Ohsawa 1993)である.そのため,コグマでの一連 の霧研究は,東南アジアの典型的な熱帯山地林にお ける先駆的研究であると位置づけることができる. 今後,水文学的な視点だけでなく,霧や雲の発生が 丘陵性常緑林の生態系に与える影響を広い視点で調 べる必要がある. 3.丘陵性常緑林二次林 Giambelluca et al.(1996)は,過去のGCMによる 熱帯林の伐採実験の多くが,森林植生を一様に草地 に転換するシナリオとなっていることを問題視し, 第Ⅱ章で述べたようなモザイク状の植生を示すチェ ンマイ県パンクン村(以下,パンクン(Pang Khum), 標高 1,250 m)の各パッチの水文気象を移動観測し た.観測データを用いて陸面過程モデル(BATS) の再現性をオフラインシミュレーションで確認した 結果,この地域の森林荒廃地に速やかに形成される 二次林の水文気象は,草地よりもむしろ森林のパラ

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メータを用いた計算のほうが再現性は高いことを指 摘している.さらに,Giambelluca et al.(1999)は, 森林荒廃の影響を受けたタイ北部の山地のモザイク 植生を対象にして,ある領域のアルベドの約100年 間にわたる長期変化を調べ,GCM実験における伐 採シナリオに用いるためのより現実的なアルベドを 提示している. GCMの数値実験のパラメタリゼーションを念頭 においた研究だけでなく,Giambelluca et al.(2000) では,パンクンの各パッチの乾季における熱収支の 観測結果が報告されている.そこで興味深い点は, 乾季において,休閑地や農地のパッチでは潜熱より も顕熱の放出が卓越するが,丘陵性常緑林の二次林 (Lithocarpus elegansなど極相の丘陵性常緑林でも頻 繁に出現する樹木の若齢木で構成されている森林) のパッチでは顕熱よりも潜熱が卓越するとしている 点である.その蒸発散量は,8年生二次林において 5.6 mm d-1,25年生二次林において5.9 mm d-1であっ た.これは,低地熱帯雨林と同程度あるいはそれ以 上の大きさである.このように大きい蒸発散量が維 持されたのは,二次林において樹木が根を発達させ 土壌深部の水分を利用していること,また,隣り合 う農地や休閑地のパッチからの顕熱の移流により蒸 散が活性化されることが原因であると推察している (Giambelluca et al. 2003).考えられた原因のうち, 土壌深部の水分についての実験的な検証はされな かったが,パッチ間の顕熱の移流の効果については, 別の山地林サイトでの樹液流のトランセクト観測の 結果を用いて検証されている(Giambelluca et al. 2003).原因がいずれであったとしても,丘陵性常 緑林の荒廃地に形成される二次林は,コグマのよう な撹乱されていない丘陵性常緑林と同様に,乾季に おいても活発な蒸発散量を維持する森林植生タイプ であると考えられる. パンクンの二次林の蒸発散に関連して,もう一つ 触れておくべき研究事例を紹介する.Wilk et al. (2001)は,約40年間で森林面積が80 %から27 % に 減 少 し た タ イ 東 北 部 の ポ ン 川 流 域 ( 流 域 面 積 12,100 km2)からの流出量の長期変化に顕著な傾向 がなかったことを示し,その原因は農地や水田に残 された孤立木,放置された農地にすばやく形成され る二次林からの蒸発散が森林の蒸発散と同じように 生じているためであると考察している.この考察と パンクン村における二次林での観測結果は,森林伐 採の結果として形成される二次林植生からの蒸発散 量は比較的大きいという点で一致している. 4.森林を含む低地の複雑植生 タイ北部と中部の間のターク県にある低地の複雑 植生(ターク(Tak),16°56′N,99°26′E,樹高が20 m 程度の落葉樹や常緑樹が疎に分布した草地・農地・ 裸地が複雑に混じった植生,標高121 m)において, Toda and Sugita(2003)は乱流観測を行い,同植生の乾 季(2月と3月)の地面修正量(15.7 m)と地表面粗 度(0.31 m)を同定している.また,乱流の連続観 測から,その複雑な植生の熱収支の季節変化や日変化 を報告している(Toda et al. 2002).その結果によれ ば,雨季の8月が蒸発散量のピーク(3.29 mm d-1 であり,乾季である1月には1.16 mm d-1,2月には 0.63 mm d-1まで減少している.土壌が極端に乾燥す る乾季においても同複雑植生からの蒸発散量がある 程度維持された理由として,フェッチ内に存在する 常緑樹や灌漑用貯水池からの潜熱の放出が寄与して いたと分析されている(Toda et al. 2002).ただし, その乾季の蒸発散量は,上述した丘陵性常緑林ある いはその二次林の乾季の蒸発散量に比べると非常に 小さく,サケラートの乾燥常緑林の乾季における蒸 発散量に近い値である.低地に存在する複雑植生は, 大気の蒸発要求度の高い乾季において,乾燥によっ て蒸発散量が低下するタイプの植生であるといえる. 5.チーク人工林 チークは落葉性の樹木であるため,チーク人工林 は乾季にほぼ完全に落葉する.チーク人工林の水文 気象は,主にメーモで調べられてきた(図 − 1 , 図−2).Attarod et al.(2006)は,ボーエン比法を 用いてメーモの蒸発散量を観測し,蒸発散量は雨季 である9月に4.1 mm d-1で最大となり,チークの葉が 完全に落葉する2-3月に最も低く2.5 mm d-1となると報 告している.前節の複雑植生の場合と同じく,大気 の蒸発要求度の高い乾季において,乾燥によって蒸 発散量が低下するタイプの植生であるといえる. 落葉タイプの森林の場合は,樹木のフェノロジー が顕熱・潜熱の配分や炭素収支に大きく影響する. そのため,落葉タイプの森林における熱・水・炭素 循環を把握するためには,フェノロジーやその年々 変動を把握することが最も重要な基礎情報である. Yoshifuji et al.(2006a)は,メーモにおいて,樹冠 上下の入力日射量の比率から樹冠の葉量の相対的な 変化を調べると同時に,樹液流の季節変化から蒸散

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の開始・停止時期をモニタリングした結果,展葉・ 落葉の時期や,蒸散開始・停止時期が大きく年々変 動していたことを指摘した.展葉・落葉時期,蒸散 開始・停止時期の年による違いは,降雨に伴う土壌 水分変化のタイミングの年々変動と対応しており, 乾季後半(雨季開始前)に大きな降雨イベントに よって土壌水分が大きく上昇した年には展葉と蒸散 開始も他の年より早かった.また,雨季終了が早く 土壌水分の低下が早かった年には落葉と蒸散停止も 早く,逆に雨季の降雨停止が遅く土壌水分の低下が 遅かった年には落葉と蒸散停止も遅いという対応が 見られた.同様の年々変動が,衛星で観測された NDVIの時系列変化からも検出できることがわかっ ている(Yoshifuji et al. 2006b).このような着葉期 間・蒸散期間の年々の変動は,2001年から2005年ま でのわずか5年間に,最大約60日間の変動していた (Yoshifuji et al. 2006a,b).蒸散は雨季の初めに展葉 とともに増加するのに対し,乾期には土壌水分の低 下に伴い落葉の進行に先駆けて蒸散が低下していた ため,蒸散期間は着葉期間よりも短いものの,その 年々変動は連動していた.蒸散期間の長さの年々変 動が大きいことは,年蒸発散量にも大きな年々変動 をもたらしている可能性を示唆している.温帯落葉 林でフィールド観測データを基に報告されている生 長期間の長さの年々変動は,大きいもので20日程度 であるのに比べて(Goulden et al. 1996,Wilson and Baldocchi 2000,Granier et al. 2002,Saigusa et al. 2002),メーモのチーク人工林で得られた60日間と いう変動幅は非常に大きいといえる.さらに,温帯 では展葉・落葉期にあたる春と秋にはそもそも入力 となる放射エネルギーが低下するのに対し,タイ北 部の場合は一年を通して放射エネルギーが大きい. そのため,温帯と比較して,この地域における蒸散 期間の長さの変化が年間の熱・水・炭素収支に及ぼ す影響は大きいはずである.現在までのところ,温 帯や冷帯の落葉林に比べて,気候の年々変動が,熱 帯林の生長期間の長さに与える影響やその長さが 熱・水・炭素循環に及ぼす影響について調べた研究 例は非常に少ない.そのため,降水変動に代表され る気候の年々変動がこの地域の落葉タイプの森林の 熱・水・炭素循環に及ぼす影響をフェノロジーの変 化という観点から調べることは今後の重要課題で ある. なお,メーモでは,降雨とそれに伴う表層土壌の 水分変化が展葉落葉の年々変動を引き起こす主要な 要因だと考えられるが,一方で,この地域の熱帯季 節林の樹木のフェノロジーのトリガーや外的環境に よるコントロールは,樹種や立地,樹木のサイズに よ っ て 異 な る こ と が 報 告 さ れ て い る ( 例 え ば , Elliott et al. 2006).メーモで観測されたような降雨 変動に伴う着葉期間・蒸散期間の大きな年々変動 が,この地域の他の落葉タイプの森林でも生じてい るのかという点についても,さらに検討する必要が ある.

Ⅴ.まとめと今後の課題

タイ北部地域の熱帯季節林は,雨季と乾季という 季節進行に伴った毎年の環境変化に加えて,約5年 に一度の頻度で不定期に発生するエルニーニョイベ ントに対応して起こる環境変化の中で成立している 生態系である.この地域には多様な森林タイプが存 在するが(図−2及び注釈参照),すべての森林タイ プがこの時間スケールの異なる二つの環境変化の影 響を受けている.本稿の整理により,雨季と乾季と いう季節進行に伴う環境変化への各タイプの熱帯季 節林における水文気象の応答はそれぞれ特徴がある ことがわかった.具体的には,乾季における大気の 蒸発要求度の増加に対して蒸発散量が増加するタイ プのものと逆に蒸発散量が低下させるタイプのもの が存在した.本稿でレビューした既往研究が報告し ている乾季の蒸発散量は,乾燥常緑林の0.6 mm d-1 から丘陵性常緑林の二次林における5.9 mm d-1まで 実に広い範囲にあった.換言すれば,森林タイプに よって乾季の蒸発散量に大きな差がみられること が,この地域の森林植生における水文気象の大きな 特徴であるといえる. 本稿で挙げた既往研究は,その視点や目的,観測 期間の長さ,観測項目,手法は多様である.人為的 な撹乱の影響の少ない混交落葉林と乾燥フタバガ キ林での研究事例がないものの,既存の研究情報 はタイ北部の主要な森林タイプがおおむね網羅し ていた(図−2).ある領域の総合的な陸面交換過 程の理解のためには,例えば,AmeriFlux(http:// public.ornl.gov/ameriflux/)のようなネットワークを 構築し,代表的な土地利用において,同時期に,同 様の手法で一斉モニタリングを行うことが有効であ ることは間違いない.しかし,本稿での既往研究の 整理から,タイ北部の熱帯季節林の水文気象の総合 的な理解のための研究情報の基礎は整いつつあると

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いえる. 冒頭で述べたように,この地域の降水に代表され る気候の年々変動は大きい.年々の降水変動に対応 してメーモのチーク人工林の着葉期間の長さが年々 変動していたこと,あるいは,少雨年の乾季後半に コグマの丘陵性常緑林の若木が水ストレスを受けた ことは,降水の年々変動の結果生じた現象である. これら研究事例は,雨季と乾季という季節進行に 伴った毎年の環境変化に加えて,不定期に起こる気 候の変動に対応してこの地域の熱帯季節林が確実に 反応していることを示すものである.本稿の整理か らは,気候の年々変動に対する森林生態系の反応は 十分に調べられていないことがわかった.コグマと メーモだけでなく,他の森林タイプにおいても,気 候の年々変動を念頭においた水文気象研究が今後の 課題であるといえる. 現地観測をベースにした水文気象のプロセス研究 では,既存の陸面過程モデルでは再現できないある いは想定していない現象の発見がある.例えば,丘 陵性常緑林の蒸発散量のピークが乾季後半にあった ことや霧や雲の発生が丘陵性常緑林の水文プロセス に影響していたことがその例である.このように新 たに発見された個々の地表面プロセスが,タイ北部 領域あるいはインドシナ半島領域の気候システム形 成に対して感度の高いプロセスであるのかどうかを 分析し,必要に応じて改善した陸面過程モデルやそ のパラメータセットを提示することも今後の課題で ある. 謝辞 本 稿 の 第 Ⅳ 章 で 紹 介 し た 研 究 成 果 の 一 部 は , JST/CRESTプロジェクト「熱帯モンスーンアジアに おける降水変動が熱帯林の水循環・生態系に与える 影響」(代表:鈴木雅一),GEWEX/GAMEプロジェ クト(代表:安成哲三),GAME/Tropicsプロジェク ト(代表:虫明功臣),科学研究費若手研究(B) (課題番号17780119,代表:田中延亮),科学研究費 基盤研究(C)(課題番号17580135,代表:田中克 典),GEOSSプロジェクト「地球観測による効果的 な水管理の先導的実現」(代表:沖大幹)の一部に より補助された.また,ここで紹介された観測デー タや文献の一部は,蔵治光一郎博士(東京大学), 川元美歌氏(国際農林水産業研究センター),東京 大学農学部森林理水及び砂防工学研究室・日本大学 生物資源科学部森林環境保全研究室・東京農工大学 農学部森林保全学研究室・カセツァート大学林学部 流域管理学研究室の多くの卒業生により収集され た.二名の匿名の査読者の方々,横井覚博士(東京 大学)から本稿に対して貴重なコメントをいただ いた.メーモ試験林での過去の降水量データはFIO より提供いただいた.さらに,本稿執筆の出発点 となったカセツァート大学での研究説明会では,加 治屋裕介氏(東京大学),江夏泰治郎氏(東京農工 大学)に発表の一部を分担していただき,若原妙子 氏(東京農工大学),Jakkit Chainet氏(カセツァー ト大学林学部),カセツァート大学林学部職員の 方々,カセツァート大学林学部の多くの学生・大学 院生に会場運営等でお世話になった.末筆ながら, 記して感謝いたします. 注釈 常緑タイプの森林の一つに,標高が約900 m以下 に成立する乾燥常緑林(dry evergreen forest)がある. フタバガキ科(Dipterocarpaceae)の樹木が優占して おり,樹高が35 m程度に成長する森林である.その 地理的分布は主としてタイ中部の中央山地やコラー ト高原の南側に集中しており(Ogawa et al. 1961, Rundel and Boonpragob 1995),タイ北部では湿潤な 谷地形に存在する程度である(Santisuk 1988).乾 燥常緑林は平地の人間にとってアクセスの良い低標 高地帯に成立し,比較的土壌の養分条件の良い場所 に立地しているため,タイ人による焼畑農業などに よる集中的な攪乱の対象となってきた(Santisuk 1988,Rundel and Boonpragob 1995).

常緑林タイプのもう一つの種類として,標高約 1,000 m以上に成立する丘陵性常緑林(hill evergreen forest)がある.丘陵性常緑林は樹高が35 m程度の森 林であるが,その森林を構成している樹木は上述し た乾燥常緑林と大きく異なりクスノキ科(Lauraceae), ブナ科(Fagaceae),ツバキ科(Theaceae)の樹木が 主体である.この地域の丘陵性常緑林の詳細な種組 成や森林動態は,スミソニアン熱帯研究所の熱帯林 比較研究ネットワークの一つであるドイインタノン の大面積調査プロットで詳しく調べられている(原 2003,神崎 1999).Ohsawa(1993, 1995)の整理に よると,このような科の樹木で構成される常緑林 (lauro-fagaceous forest,またはoak-laurel forest)は,

パプアニューギニアを含む東南アジア低緯度熱帯域 の山地(標高1,000-2,500 m),ヒマラヤ山脈東部を 含むインドシナ半島の山地,フィリピンや台湾の山

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地,日本の南西部の低地(標高1,000 m以下)まで 緯度横断的に広く分布するとされている.日本の低 地に分布するいわゆる照葉樹林と比較すると,科レ ベルでは共通性は高いが,丘陵性常緑林の構成種は より多様であり,突出木が存在するなど森林の相観 はかなり異なる(Hara et al. 2002).NWPCD(2000) の森林タイプ別の面積統計では,タイ北部の全森林 面積に対する常緑林の面積は21 %となっている. その統計では丘陵性常緑林と乾燥常緑林が区別され ていないが,Ogawa et al.(1961),Santisuk(1988) の文献から判断すると,タイ北部の常緑林の多くは 丘陵性常緑林であると推察される.現在,タイでは 天然林からの伐倒木の持ち出しは禁止されているた め,大面積の森林を伐採して農地や牧草地を造成す るようなタイプの森林伐採は主流ではない.問題と なっているのは,丘陵性常緑林の分布域である山地 における少数民族あるいはタイ人による焼畑農業や 移 動 耕 作 ( slash-and-burn cultivation, shifting cultivation)による森林攪乱である(Santisuk 1988). このような森林攪乱は面積の小さいパッチを単位と して行われるため衛星画像のような広域情報では実 態把握が困難であり,フィールドワークに基づいた 事例研究によって実態報告されることが多い(例え ば,Fox et al. 1995, 2000).焼畑移動耕作によって造 成された農耕地では乾季においても灌漑農業が行わ れるため,特に少雨年において,下流域のタイ人農 民との水資源に関する対立が大きな社会問題となっ ている(Walter 2003,蔵治 2005).さらに,このよ うなパッチ状に攪乱されたモザイク状植生が,生物 多様性の維持機能を低下させる原因となっていると いう調査報告がある(Pattanavibool and Deardon 2002).

タイ北部の落葉タイプの森林のひとつである混交 落葉林(mixed deciduous forest)は標高が800 m以下 に出現し,乾季において中高木を中心として落葉す る森林である.混交落葉林は,マメ科(Leguminosae) やクマツヅラ科(Verbenaceae)など比較的多様な 種組成を示し,タケの叢生が見られるのはこの植生 タイプの特徴である.NWPCD(2000)によるとタ イ北部の森林面積の66 %を占めており広く分布し ていることがわかる.かつては別名をチーク林と呼 ばれるほどクマツヅラ科のチークが落葉混交林の樹 冠を構成していたが(Ruangpanit 1995,吉良 1984), 有用材であることから人間によって択伐されてきた (山田 2006).したがって,現存する落葉混交林は 主にチークを選択的に除去した森林タイプであると いえる(Rundel and Boonpragob 1995).混交落葉林 は比較的養分の豊富でアクセスの良い低標高地に成 立し農耕に適するため,焼畑農業や農地開発といっ た人為的な攪乱を受けてきた.また,タイの低標高 地域の森林は1年から3年に一度の割合で発生すると いわれる乾季の野火(林床火災)にさらされる(例 えば,Werner and Santisuk 1993).その結果,人間 の生活域に近い混交落葉林が耐火性の強いフタバカ キ科の数種の樹木によって組成される極めて単純な 乾燥フタバガキ二次林が形成されるケースがある (Stott et al. 1990)

もうひとつの落葉タイプの森林である乾燥フタバ ガキ林(dry dipterocarp forest)は,乾燥常緑林と同 じフタバガキ科の樹木(種組成は異なる)で構成さ れるが,乾季における林床火災(野火)に対する耐 性の強い樹種が生き残り,種数が少ない単純な林相 を示す(杉本ら 2001).また,混交落葉林は中高木 を中心として落葉したのに対して,乾燥フタバガキ 林は乾季にほとんどの樹木が落葉する.また,乾燥 フタバガキ林は混交落葉林と同じ標高帯(800 m以 下)に存在するが,両者の分布は土壌の養分特性, 基岩母材,地形の違いによってはっきりと区別され, タイ北部における乾燥フタバガキ林は浅い土壌の乾 燥した山地尾根に出現する(Santisuk 1988).乾燥 フタバガキ林の面積はタイ北部の森林面積の10 % に過ぎないが,タイ東北部では森林面積の31 %を 占める主要な植生となっている(NWPCD 2000). さらに,近隣の亜熱帯地域であるインド亜大陸, ミャンマー,ラオス,カンボジア,ベトナムにも広 く範囲に分布していることが知られている(Rundel and Boonpragob 1995).乾燥フタバガキ林は貧栄養 な土地に成立しているため農業開発等の人為的攪乱 の主たる対象とはならなかったが,タイ北部から中 部にかけての水田地帯は乾燥フタバガキ林から転換 されたものとされている(Santisuk 1988). 注釈の文中のカッコ内に示した森林タイプの英名 表記は主にタイの林業関係者や森林水文関係者が用 いる英名表記である.文献によっては,混交落葉林 はtropical seasonal forestやtropical mixed deciduous forest,乾燥常緑林はtropical seasonal forest,乾燥フ タバガキ林はdeciduous dipterocarp forestやsavanna forest, 丘 陵 性 常 緑 林 は lower montane forestや temperate evergreen forestという用語で表現されるこ とがあることを注意されたい.

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(受付:2006年7月12日,受理:2007年4月6日 )

This paper describes an ecological classification of tropical monsoon forests in northern Thailand and reviews published hydro-meteorological studies conducted at each forest type. As a result of summarizing current status of knowledge, we found that basic hydro-meteorological aspects, i.e. seasonal variation in energy partitioning throughout a year with normal climatological condition, at most of the forest types in the region has been already studied. Also, we found a clear contrast in evapotranspiration in the dry season between forest types. The contrast might be one of notable characteristics of hydro-meteorology in tropical monsoon forests in the region. Inter-annual variations in both rainfall and its seasonal distribution might be significantly large in this region, leading to occasional severe droughts and irregular ecological rhythms of trees. Recent findings from several study sites imply that the variations in rainfall result in phenological and physiological responses of the studied forest ecosystems. These responses in turn may affect the exchanges of energy, water vapour, and carbon between forest ecosystems in the region and the atmosphere. Such effects of temporal variations in rainfall on the tropical monsoon forests have been poorly understood thus far. We, therefore, stress the necessity of further efforts to examine the ecological and hydro-meteorological responses of all tropical monsoon forests to the inter-annual variation in rainfall and its seasonal distribution.

Key words : tropical monsoon forest, forest types, hydro-meteorology, inter-annual variation in rainfall and its seasonal distribution, northern Thailand

Nobuaki TANAKA1)2) Tomonori KUME2)3) Natsuko YOSHIFUJI1)2) Katsunori TANAKA4)

Hideki TAKIZAWA5) Katsushige SHIRAKI6) Izumi KOSAKA5)* Chatchai TANTASIRIN7) Nipon TANGTHAM7) Masakazu SUZUKI2)

1)Japan Science and Technology Agency (Honcho 4-1-8, Kawaguchi, Saitama 332-0012)

2) Graduate School of Agriculture and Life Sciences, The University of Tokyo (1-1-1 Yayoi, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8657)

3) Kasuya Research Forest, Kyushu University (Tsubakuro, Sasaguri, Fukuoka 811-2415) 4) Frontier Research Center for Global Change (Shouwa-tyo 3173-25, Kanazawa-ku, Yokohama, Kanagawa 236-0001)

5) College of Bioresource Sciences, Nihon University (Kameino 1866, Fujisawa, Kanagawa, 252-8510) 6) Department of Ecoregion Sciences, Faculty of Agriculture,

Tokyo University of Agriculture and Technology

(Saiwaimachi 3-5-8, Fuchu, Tokyo 183-8509) 7) Faculty of Forestry, Kasetsart University

(Chatuchuk, Bangkok 10900, Thailand)

Present affiliation: Japan Conservation Engineers, Co., Ltd.

Hydro-Meteorological Studies Based on Field Observations

at Tropical Monsoon Forests in Northern Thailand: Current Status

参照

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