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が教えてくれ る教育

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岡山大学算数 ・数学教育学会誌

『パ ピルス』第11号 (2004年)53頁〜62頁

「 不耕起栽培」 が教えてくれ る教育

洲 脇 史 朗 岡山理科大学 今 の農業は,弱い作物 でも育つ よ うに. 田んぼや畑 を耕 し,農薬 を散布 す るのが 常識 である。 しか しその結果 ,作物は さらに弱 くな り, よ り深 く耕 さなければな ら ず, よ り強い農薬 を用いなけれ ばな らな くなった。その悪循環 を断 ち切 るために開 発 されたのが,田んぼを耕 さない 「不耕起栽培」である。 田んぼを耕 さないで稲 を 栽培す ると,稲 は野生化 して冷害や病奮虫に強 くなる。その結果 ,農薬 を必要 とし な くな り,安全でおい しい米を実 らせ る。ただ しそれには,耕 さない 田んぼでも育 つ強い苗を作 ることが条件 となる。我が国の教育界 も,弱 くなった子 どもたちに過 剰 な支援 を して,ます ます子 どもたちを弱 くす る悪循環に陥 ってい るよ うに思 う。

「不耕起栽培」はこの よ うな教育界 に一つの ヒン トを投げか けて くれ るQ

1.「不耕起栽培」 との出会 い

平成16年4月12日の深夜 ,私 は車 を運 転 しなが ら,特 に意識 はせず ,

N

K ラジオ

「深夜便 ない とエ ッセイ」 を開いていた。稲 作研究家岩滞信夫氏が稲 の 「不耕起栽培」 に ついて語 ってお り, これが私 と不耕起栽培 と の出会いである。岩滞氏は,耕 さない (不耕 起 の) 田んぼの方が,耕 した 田んぼ よ りも, 安全 でおい しい米 を実 らせ ると青 う。 ま さか と言 う思いで聞いていると,耕 さない堅い 田 んぼに植 え られた苗 は,根 を張 る時 にス トレ スを生 じ,そのス トレスに抵抗す ることで野 生化す る。そ して,冷害にも病害 虫に も強 く なるか ら,農薬 をま く必要がな くな り, 自然 の恵みをいっぱい受けた安全でおい しい米 を 実 らせ る と言 う。耕 さない農法 は近代農業 の 常織 を葎すだ けでな く

,

「耕 す こと

」 ‑

「文 化」であるとしてきた我 々の文化 を否 定 して いるよ うに思 える し,文化 の伝承で ある教育 をも否定 してい るよ うに思 える。 しか し私 自 身,学生 に対 してや対外的には 「教育 とは子 どもが根 を張 りやすい環境 を作 ってや ること だ」 と言いつつ,心の奥底では 「今 の教育 は あま りにも手取 り足取 りし過 ぎではないか」

と叫んでいた。 そんな腰 の定ま らなか った私 に とって, この 「不耕 起栽培」 はま さに強烈 なス トレー トパ ンチであった。

ラジオ を聞 きなが ら

,

「今 まで とは正反対 の耕 さない農法が正 しい農法 の一つな らば, 耕 さない教育 も正 しい教育 の一つ と して提言 して もよいのではないだ ろ うか」 と言 う抑 え きれ ない思いが沸 々 と沸 き上が って きた。 と りあえず耕 さない不耕起栽培が正 しい農法 で あるか どうかを確 かめ るこ とが先決であるD こ う考 えると私 は居 て も立 って もおれず ,放 送後 まもな く千葉県 に岩津氏 を訪 問 したQ そ して千葉県佐原市 の農家 が不耕起栽培 で長年 にわたって素晴 らしい米 を生産 してい る現状 に接 し,本物 の栽培法 であ るこ とを実感 したD そ して, ここに 「不耕 起教育」 を提言 す る決 意 を固めたのである。

岩滞氏は 「今 までの稲 作 は,弱い苗 で も育 つ よ うに,田んぼを耕 し,農薬 を散布 してき た。 その結果 .稲 は さらに弱 くな り, よ り深 く耕 し, よ り強い農薬 を必要 とす るよ うにな った。 この悪循環 を どこかで断 ち切 らなけれ ばな らないD」 と, さらに 「昔‑帰れ と言 う

(2)

のではない。本物の稲 を育てよ う」 と言 う。

目か ら鱗 とはまさにこのことである。

日本 の熱心な教師たちは,能力 の低い子 ど もや努力 しない子 どもでもわかるよ うに指導 内容や指導法を 日々研究 してきた。 また授業 中での発見学習を大切にす るあま り,結論 を 知 って しま う予習 を歓迎 しな くなった。その 結果,子 どもたちはますます努力 しな くな り.

家庭学習 を しない悪い習慣 が身に付いて しま った。教師は,人権的立場か ら子 どもにス ト レスをかけることを恐れた り, 自らの技能 に 溺れす ぎて,子 どもを鍛 えることを しなかっ たのである。 もちろん,本 当にできない子 ど もたち‑過分のス トレスをかけろ言 うのでは ない。その子 どもに合ったス トレスをかけて やればよいことである。いずれ に しても,全 体の方向性 を誤った結果,ついに,1999年 の 国際教育到達度評価学会の調査では家庭学習 (塾の時間を含む)の時間が世界で最低の国 の1つになって しまった。 当然学力 も下降 し ている。今や宿題 を課 した くても.あま りに もや って こない子 どもが多す ぎて.その後処 理に困惑 し,課せ られない学校や教師が多い と聞 く.かろ うじて 日本国民の資質 と教師の 優れた指導法で,世界 トップクラスの学力 を 維持 しているが,先の見通 しは暗い。 この悪 循衆の泥沼にはまって しまった教育界‑了不 耕起栽培」が教えて くれた 「不耕起教育」 を 提言す る。

2.

r

不耕起栽培」か らの示唆

次に不耕起栽培 を紹介 しなが ら,そこか ら 見 えて くる不耕起教育への示唆について考察

してい く。

(1)不耕起栽培の発見

通常の慣行栽培では田んぼを年 に4, 5回 は耕す。その 目的は土壌 に空気 を入れた り, 雑草の繁茂を防いだ り,田植 えを容易に した り,苗が根 を張 りやす くす るためである。 し

か し冷害 に強 い稲 作 を 目指 していた岩 滞 氏 は,冷害で大部分の稲が実をつけなかった年 に,畦に近い稲だけが実 をつけているこ とを 発見 した。 田んぼで畦の近 くは耕転機が入 ら ず耕せていない ことが多い。 このことか ら, 苗 は耕 していない堅 い 田んぼに植 える こ と で,冷害 に強 くなることに気付いた。

しか し,意図的に耕 さない田んぼに苗 を植 えてみ ると,植 えるのもや っかいな上に,せ っか く苦労 して植 えた苗 の一部は根 を張れな いで枯れて しま う。一般の農家が現在使用 し ている手軽な苗 (稚苗)では歯が立たないの である。そ こで岩津氏は,昔の農家が使 って いた苗 (成苗) に着 目した。 しか も,昔の成 苗のままで もまだ不十分で, さらに手間暇か けて強 くしなければな らない。 この強い成苗 の育成 は大変面倒であ り,鹿家の多 くは敬遠 す る。 これが今 日,不耕起栽培がなかなか普 及 しなかった要因の一つである. 当然不耕起 教育 にも同様の間暦が生 じるはず であるOつ ま り,強い苗の育成時期 に当た る教育がかな り面倒であ り,その ことが,一般の学校‑不 耕起教育を普及 させ るのを妨げる要因になる

と懸念 され る。

(2)強い成首

通常の田植 えに使 う稚苗は,保温または加 温 して約20日で育てた2.5葉の苗であ り, 最近の農家の多 くは, これす ら自分で育てる 手間を省いて,育苗セ ンターか ら買 う。 これ に対 して不耕起栽培で使用す る成苗は,倍の 40日ほ どかけて注意深 く育てた5.5葉の苗 である。稚苗までの約20日間はホワイ トシ ルバーシー ト等で気温 ・水温 ・日射量を細か く調節す るな ど細心の愛情 をそそ ぐ。一方, 常に水 をほ しが る体質 (根が弱 くなる) を作 らないために,一度十分に水 を与えた後 は第 1葉が完全に開 くまで,我慢で きる限界 を見 極めなが ら水や りを控 える。 またこの期間の 後半で温度 を上げす ぎると.第2葉が歴乳の 養分を使 って徒長 し,第3葉の展開が遅れ,

54 ‑

(3)

以後の生長に悪影響 を及ぼす。 これは幼児期 にいっぱいの愛情をそそ ぐことや,我慢 させ ることの大切 さを教 えて くれ ると同時に,あ ま りにも早い時期での先走 り教育が将来に悪 影響及ぼす ことを予感 させ る.

また稚苗の時期に田んぼに搬 出 し,根 に力 を蓄えるため伸びす ぎない よ うに,関東以北 では寒風にさらした り,以南では苗の上をロ ーラーで転が した り足で踏みつけた りす る。

こ うす ることで苗は伸長 を止めて茎 を丈夫に し,刺激 に耐 える成苗に育っ。何 とな くこの 時期の教育の在 り方 を示唆 しているよ うに思 うし,不耕起栽培の成否の8割が ここまでで 決まると言 うのであるか ら,不耕起教育の成 否 も, 8割がここまでの強い苗 を育成する教 育にかかっているのであろ う。

(3) 田植 え

さていよいよ田植 えであるが,耕 さない堅 い田んぼに田植 えをす るのは容易なことでは ない。通常の田植機では全 く歯が 立たない。

初期には棒 きれで穴をあけそこに苗を移植 し ていたが,これでは鹿家 の生計が立たない。

鹿家に とって生計 こそが第‑の条件 である。

そこで岩樺氏は農機具 メーカに掛 け合 って.

細い溝 を掘 りなが ら,その横 に苗 を移植 して い く田植埠 を開発 した。棟は細 く しなければ 苗が浮いて しま うし,細 くすれば,前後左右 にゆれなが ら進む田植機 はその溝にね らいを 定めるにくくなる。 しか し,岩滞氏は不屈の 努力で不耕起用 田植機 の開発 に成功 した。た だ,生産台数の関係 でかな り割高 とな り,単 独の農家での購入は困難 な状況にあるO この ことも不耕起栽培が普及 しにくい一因 となっ ている。

不耕起教育 も,田植 えに当た る時期 には, 堅い田んぼに溝 を切 り,その溝か らずれない よ うに生徒を植 え込んでや らなければな らな い。それ も我が国の学校教育の現状を考える な らば,田植機 のよ うに効率 を重視 した,集 団指導を前提 としなけれ ばな らないだろ う。

(4)分 けつ

堅い田んぼに植 えた成苗は, しば らくは根 を張 ることができず,隣接 した耕 した 田んぼ の苗がす くす くと生長 しているのに比べてか な り見劣 りがす る。 この間,不耕起栽培 に踏 み切 った農家は 「本 当に大丈夫だろ うか」 と 精神的な苦痛 を強い られ る。不耕起教育 も同 様で, 「自分た ちでやれ」 と突 き放 してはみ た ものの,手取 り足取 りしているクラス と比 べてか な りの遅れ が生 じ, 「本 当に大丈夫だ ろ うか」 と教師が不安 になる時期であろ う。

やがて堅い 田んぼのス トレスが,苗 にホル モンの分泌 を促 して根 を太 くし,固い地面に 穴をあけ,深 くて丈夫 な根 を張る。根 を張る と同時に,盛んに分けつ (茎が増える) し始 める。 ここで苗 は野生化 し冷害や病 害虫に強 い体質 となる。そ して鹿薬の散布 を控 えるこ とができ, 田んぼに鳥 を頂点 とす る 自然 の生 懐系ができあがる. こうなると,害虫の天敵 もや ってきて,害虫による被筈はますます抑 えられ る。不耕起教育 もここまで くれば. さ ま ざまな効果 が現れ て豊 か な教 育環 境 とな

り,軌道 に乗 る時期であろ う。

(5)年間湛水

ただ,不耕起栽培で も除草剤 を使用 しない 替合 は,雑 草の被害が甚大で あるo い くら野 生化 した と育 って も,本物の野草 とは対等関 係 までであ り,兼分の半分は雑草に持 ってい かれ る。不耕起栽培 の最大の難点 といって よ い。雑草は教育界ではい じめや青少年の犯罪 に当た る。除草剤 である管理教育 を強化 しな けれ ば,これ ら犯罪が教 育界へ甚大な被害を もた らす ことを示唆 している。

しか し,不耕起栽培は これ を見事に解放 し た。 それ は 「冬期湛水 (実際 は年間湛水)」 と言 う手法である。稲刈 りを した後の 田んぼ に水 を張 り (湛水),その状憶 を来年 の稲刈 りの直前まで保つのである。冬期には農家間 に水利権の問題 があ り,‑農家だ けが 田んぼ に水 を張 ることはできない。 しか し,水利権

(4)

の及ばない所か ら個人で水 を引 くことはでき る。 この ように して苦労を しなが ら水 を張 り 続 けた田んぼはイ トミミズを大量に繁殖 させ

る。それ らの糞が稲の良質 な肥料 となるばか りでな く,飛んできた雑草の種子 を葎 い発芽 を抑 える。すぼ らしい発想 である。 このよ う な水 田は農薬による汚染は もちろんのこと, 耕 したことによる泥水の排 出もな く,逆に田 んぼの豊 かな生態 系 に よ り水 の浄化 がす す む。近年琵琶湖周辺では湖水の汚染対策の切 り札 と して この不耕 起栽培 が広が りつつ あ る。不耕起教育でも,子 どもの非行対策 とし て,管理教育にたよらず, この年間湛水に当 たる素晴 らしい事例 を見つ けるこ とが急務で ある。

(6)普及 を妨げるもの

不耕起栽培は,強い成苗 を作 る段階で大変 な努力がいること,専用の田植機 が高価で あ ること,水利権の間周 で冬期の湛水が難 しい ことな どがネ ックとなって,なかなか普及 し なかった。 しか しここを乗 り切れば,後は見 守 るだけでよい。ただ,田んぼを耕 さないな ど一 日本の勤勉な農家に とっては許 されない 不届 きな栽培法であ り, この感覚 も農家が不 耕起栽培 に踏み切れ ない要因 となって きた。

横着で耕 さないの と, 目的をもって耕 さない の とでは根本的に異なるのだが,理解 を得 る のは難 しい。不耕起教育 も同様の閉居が発生 するはず である。 これ を乗 り切 るには,正 し い教育であると言 う信念を持ち,強い苗作 り か ら,堅い田んぼへ根 を張 って分 けつす るま で,一斉 した揺 るぎない方針で進 める勇気が 必要である。

8.不耕起赦青の定義

研究を進めるに当たって,不耕起教育を定 義 してお きたい。

岩滞氏の不耕起栽培 とは 「耕 さない堅い田 んぼで稲 を野生化 させ る農業」である。 この

ことか ら,不耕起教育 を 「手を貸 さない峻酷 な場で生徒の生 きる力 を育成す る教育」 と定 義す ることにす る。峻酷 とは,情にほだ され ることなく強 く厳 しいことであ り,生 きる力 とは,自ら判断 ・行動 し問題 を解決す る資質.

他人 と協調できる人間性 ,た くま しく生 きる ための健康 と体力等である。

今 までの教育 は,幼 ・/J、・中 ・高の全 てで 同 じよ うに,総合的な生きる力 を育成 しよ う としてきた。各指導要領 に記載 された 目標 は, それぞれの校種 に合わせ た言葉 を使 ってはい るが,同 じ内容 であ り,校種による役割分担 はない。 しか し不耕起教育は, 目標達成時を 高等学校卒業時 と定め,それに向けてそれぞ れの校種でや ってお くべ きことを しっか り分 担 してや ろ うと言 う教育である

最終的には,生徒 を前 に して 「自分た ちで やれ」 と突 き放す教育である。生徒 ばか りで なく,教 えるのが大好 きな教師に とって も忍 耐がい る。今 までの手取 り足取 りの教育 を受 けてきた生徒はその多 くが脱落す るが,峻酷 な場を想定 して育ててきた生徒たちな らば切 り抜 けて, さらにた くま しくな る。不耕起教 育はそのよ うな強い生徒 に育て てか ら,峻敢 な墳‑送 り込 も うと言 う‑‑貫教育である. 当 蘇,生まれなが らに して峻酷な場に耐 え られ ない子 どももい る。それ ら子 どもたちには, 周 りか らは甘や か しに見えても,その子 ども たちに とって峻酷 な場 を考えていけばよいこ

とである。

4.

r

不耕畠栽培」 と r不耕起赦育」の対比 稲 の 「不耕起栽培」がそのまま人間の教育 に当てはまるはず もないが,良いこととして 確立 された この栽培法 は,同 じ地球上の生物 として重要な ヒン トを与 えて くれ る。 と りあ えず,苗作 りか ら稲刈 りまでの180日を人 生の55年 にた とえて話 を進 めたい。人生は 80年 と言 うけれ ども,稲刈 りまで を,直接 子育てや生産にかかわ る55歳 くらいまで と

56‑

(5)

考 えるのが妥 当であろ う。刈 り取った後の株 も湛水の中で生 きてお り,その根 は田んぼの 生態系を支 える。 これ を56歳以降の後輩 を 育成す る時期 と考 える。 この計算でい くと稲 作の10日が人間の3年 にあた り,下記の よ

うな対応 が考 え られ る。

①愛情 としつ けの必要 な稚苗 まで (20日まで)を 6歳 まで

②寒風や ロー ラーで根 に力 を蓄 える成苗 ま で (40日まで) を12歳 まで (小)

③堅い 田んぼに移植 (田植 え) (40日ころ)を13歳 (中 1)

④移植後強い根 をはるまで

(60日まで)を18歳 まで (中23高)

⑤分 けつが完 了 し勢い よく茂 るまで (100日まで) を30歳 まで

⑥穂 が出てか ら稲刈 りまで (180日まで) を55歳 まで

⑦古株 とな り生態系 を豊かにす る (180日以降) を56歳以降

5.不耕起軟膏の在 り方

次 に,上の区分 に基づいた具体的な事例 を 考察 し,不耕起教育 を紹介 してい く。

(1

)

「稚苗作 り」 と 「家庭 ,保育 臥 幼稚 園教育

稚苗 を育成す るまでの約20日間は,人生 の6歳 までに当た る。これ は,家庭や保 育園, 幼稚園での教育期 間である。 この間,苗 を細 心の注意 を払 って育てた よ うに,両親 の愛情 に満 ちた細やかな子育てが必要で ある。 この 時期 に親 の愛情が欠如す ると,子 どもの一生 に悪影 響 をお よぽす こ とは よ く知 られ て い る。また この時期 は,苗 に飢 えるぎ りぎ りま で水 を我慢 させた よ うに,幼児 に我慢 させ る な どの厳 しい嬢 をす る時期で もある。愛情 を 伴 う厳 しさは子 どもを成長 させ る。かつては:, この よ うな愛情 と妹 は,祖 父母や近所 のお じ

さん,おば さんが一緒 になって行 い.それ を 見なが ら若い両親 も子育てのプ ロに育 ってい った。それがあま り望 めない今 日,保 育園や 幼稚園は この よ うな親 を育 てる役 目も負 うこ とになる。大変な苦労であるが,子 どもの一 生 を左右す るのであ るか ら,その使命感 を持 った保 育士や教諭 でなけれ ばな らない し,そ れ に見合 う待 遇 で迎 え られ な けれ ば な らな

いO

また,育苗では この期 間の後 半を高温 に し す ぎて,第2集 を徒長 させす ぎる と第 3葉 の 展 開が遅 くな り,ひ弱な苗 とな る。現在 ,あ ま りに も早期の学習 が流行 してい るが, これ らが悪影響 を及 ぼす恐れがあ るこ とを示唆 し てい る。 た とえば,国際化 に伴 い英語 を早期 に導入す る現象 が起 きてい るが,ニ ュー ヨー ク 「子 どもの国幼稚園」の早津 邑子園長 は 「母 国哲 が確 立 しない間に,別 の言葉 が入 って く る と思考 に異常をきたす」 と警告す る。幼児 も4歳〜 6歳 にか けて無理 に背 伸 び を させ ず , 自然 との触れ合 いや,集 団生活‑適応 さ せ るこ との方が重要 である。

これ に応 える保育園 として大阪府 泉南郡熊 取町 のア トム共同保育園があ る。平成15年 3月 に現在地 に移転 したが,それ までは 自然 豊かな界境 の中で,みんな生 き生 き と裸 で ど ろん こになって遊んだ。 当然体力 もつ くし風 邪 も引きに くくなる。 また, けんか を して も 保育士はす ぐには止 めないで,本人た ちがあ る程度解決す るまで じっ と待 ち,指導 はその 後 にす る。 けんかの中で痛み を知 り葛藤 を体 験 し,子 どもな りに納得 し,仲直 りす る力 を 身 につ け させ る。 これ ら体力や社会性 は,全 て将来‑の基礎 とな る。

保育士 と保護者 も内面を さらけ出 して本音 でぶつ か り合 う。行事の運営 に保護者 が参加 す るこ とは よくあるが,行事 自体の決 定, さ

らには新学年 の担任決 定や保育園の経理‑ ち 保護者 が参加す る。 そ こまでや らな くて もと 思 うが, ここまで され ると保護者 も本気 にな

(6)

るし,保育士 も担任か らはず された くない思 いで死に もの ぐるいになる。 また市原園長の 強い方針 で,保育士は保護者 に対 して

,

「そ れはお母 さん,あんたがす ることやない。子 どもがす ることや !」と助言 をため らわない。

若 い保育士はさす がに年配の保護者 には言い づ らいよ うで,保育 ノー トを活用 している。

このよ うに して保護者や保育士 自身が成長 し てい く。 このよ うなシステムを作っていった 園長の功績 は大きい。

この7月13日に同園を訪問 し会長 と園長 に話を聞 くことができた。現在,町の中に移 転 し.建物 も近代的になっていたのはい ささ か残念であるが,園長の保護者 と保育士 を育 てる姿勢 に変わ りはなかった。ただ,卒園 し た子 どもたちを受 け入れ る小学校 との連携 は 必ず しも うま くはいっていないよ うである。

複数の幼稚 園や保育園か らの子 どもを受け入 れ る小学校 に とっては,低 い方‑合わせ るの がごく自然であ り,このよ うに成長 した子 ど もたちはかえって重荷 となっているよ うであ る。せ っか く強 く育てても,その地区全ての 保育園や幼稚園 と小学校 との間に連携 と信頼 がなけれ ば,効果 が半減す ることを実感 させ られた事例 で もある.

(2)「成苗作 り」 と 「小学校教育」

20日間で育てた稚苗を野外に出 して さら に成苗に育てるまでの20日間は,人生の7 歳か ら12歳に当たる。 これは小学校の期間 である。育苗では,根に力 を蓄 えるため伸び す ぎない よ うに寒風にさらした り, ロー ラー を転が した りす る。これを小学校 に例 えると, むやみやた らと高い レベルの教育をす るので はな く,基礎 とな る 「学力や体力」,そ して 基本 となる 「何事 も諦めず努力す る態度」を

しっか りと身につけ させ ることに当たる。

学力について言 えば,この段階ではあま り 多様な学力 を要求せず,徹底 した基礎学力の 育成が望ま しい。特に 「読み書き計算」は,

‑5 81

生涯の基礎であ り,将来必要 とされ る漢字等 は小学校段階で大部分を暗記 して もよい とさ え思 う。戦前に教育を受 けた世代 が漢字 にめ っぽ う強いのは小学校時 に漢字の特訓を受け たか らである0 1学期の前半でその学年で学 ぶ漢字 を全て覚 えさせておけば,以後の国語 の指導が非常に うまくい くの と同 じである。

ただ し単純な作業であるだけに,ゲーム的な 要素を取 り入れた り, 自己記録の更新 を 目指 すな ど,成長が実感できる取 り組 みが必要で ある。 また,これ らの 自己記録 を更新す るた めには,家庭学習は欠かせないo家庭学習の 時間が世界で最低になった要因の一つは,こ の反復練習を軽視 した結果に他 な らない。家 庭学習 こそ 自分 の意志 で学ぶ 最 高 の場 で あ り, この習慣は将来の宝 となる。夏休みに宿 題 を出 さないことが流行 した り,授業での発 見学習 を重視 しす るあま り,家庭 での予習を 歓迎 しなくなったのも,家庭学習の習tFを奪 った大きな要因である。 この小学校段階は, 他のことはさておいてで も,家庭学習の習慣 を身につけさせなければな らない大切な時期 である。

東 北大学で脳 を研 究 してい る川 島教授 は

「読み書 き計算の徹底反復練習は,子 どもの 脳 を活性化 し, さまざまな能力 を伸 ばすだけ でな く,その とき使 う脳 の箇所 は人格 を司る 箇所 と重なってお り,人格 も高め るo適切な 時期 に適切 な学習 をき ちん と行 わせ る こと は,子 どもの脳や心の発達 に必要 なことだ。」

と言 う。そ して,川島教授は,読み書 き計第 の反復練習で,子 どもたちが落ち着いて きた 事例や, 自閉症や痴呆の治療 として読み番き 計算の反復練習が取 り入れ られていることを 紹介す る。単純計算の繰 り返 しで, 自閉症の 子 どもが集団に入れ るよ うになった事例 も多 くある。読み事 き計算の反復練習は,人間が 自然に身につけた知恵なのか も しれ ない。

体力 について も,走る,飛ぶ,投 げる,秩 ぐ等の基本的なスポー ツを通 して鍛 えてい く

(7)

ことが重要である。技巧 に走 るのは中学校 に 入ってか らで よく, この時期は体力 を育成す るために必要な基礎的な運動だけでよい。 こ れ らも,単純な繰 り返 しが多いだけに,読み 書 き計算 と同様 に, 自己の記録の更新 を 目指 して努力 させ ることが望ま しい。誰 しも進歩 が感 じられ ると,や る気が出るものである。

忍耐力については,学力 と体力の育成課程 で身につけてい くものであろ うO学力や体力 と忍耐力の育成は表裏一体のものであ り,学 力や体力の増進 中にこそ忍耐力 の増進が期待 できるO苗 を寒風にさらした り,上か らロー ラをかけることに相 当す るo Lか し,子 ども に辛抱 をさせ るには教師にも辛抱がいる。教 師の辛抱 こそが,子 どもの辛抱の成否 を決定 す ると言ってよいOそ してこれ ら忍耐力育成 は.幼い時期 を逃す と非常に困難 となること は誰 しもが認 めるところである。

社会性 についても, この時期は 「悪い こと は悪い, こんな時はこうすべきだ」 と教 える 時期であるよ うに思 う。支援 と言 う青葉が持 てはや された結果,教師は強制的に教 える と 言 うことを遠慮す るよ うになった。 「今信 号 が赤です。 さて ど うした らいいで しょうb」

とか

,

「こんな友達がいます。 どの よ うに し て あげ る といいです か。」 では な く

,

「今信 号は赤だか ら止ま りな さい。」や 「この よ う な友達には,このよ うに手を貸 してあげな さ い」 とス トレー トに教える時期であろ うO 自 分たちで考え,応用す るのは,で きるだけ多

くの場面 とその場での対応 を教 えた後の帯で ある。

これに ら応 えるもの として広島県尾道 市立 土堂小学校長陰山英男氏の取 り組みがある。

陰山氏は

,

「百マス計算」で有名 になったが, 他の方面でも優れた成果 を残 している。 百マ ス計算は,単純計井を繰 り返 し行 うのに大変 iEれた手法である.子 どもも単純に計算 を繰 り返すだけではす ぐに飽 きて しま うが,時間

の短縮 を 目的 とすれば.ゲーム感覚になる し, 進歩が 自覚で きるo これ を読み沓 き計算の全 てに取 り入れ,徹底す ることで大変な成果 を 上げている。そ して, 自己記録 を更新す るた めに必死 とな り,家庭学習の習tRが 自然 と身 に付いて くる。

大 きな声での音読は 自信 につながると同時 にクラス全体の活気 を呼び,最後には子 ども たち 自身が暗唱す る分丑で 自己記録 を目指す ようになる。漠字の徹底指導は思いのほか, 実際 に使 える湊字力 と して身に付 くOさらに,

1学期の最初 にその学年 の漢字 を全て覚えさ せて しま うと,以後の国語 の授業が,教師 も 指導 しやす くなる し,子 どもも理解 しやす く な り楽 しいと言 う。

計井力の爆発 的なア ップは,信 じられない ことだが,数学的思考力 をも高めている。 た とえば,土堂小学校 の6年生は,有名私立中 学校 の入試 に関 して特別 の訓練 を していない にもかかわ らず ,かな り高度 な思考力 を要す る私立中学校入試問題 をほ とん どの子 どもた ちがスラスラと解 いた と言 う。

陰山氏が,体力や精神力の面で も粘 り強い 人間 を育てているこ とはあま り知 られていな い。土堂小学校 の朝 ・昼 ・夕は児意が運動場 で走 り回っている。 そ して,体力作 りを通 し て,耐 える力,頑張 る力 を兼 っている.その よ うな取 り組みで,個性が兼われ ると同時に, 障害をもつ児童‑の労 りの心が本物 として育 つOそのことは,陰 山氏が長年勤めた前任校 の兵庫県朝来町立山 口小学校で実証 されてい る。

また東京都板橋 区立新河岸小学校の杉内氏 も,陰山氏 と似た トレーニ ングを しなが ら, 発育の場面や家庭学習で,急に能力がア ップ す る時期 「」を引き出 しているO強制的な 中に個 を大切 にす る指拳 を行 っている。要す るに,子 どもが 自ら学習習慣 を身 につけるき っかけを作 ってい るので ある。杉山氏は 「教 師がダメになったのは,支援 と言 う言葉が入

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ってきてか らだ と」明快に言 う。

「鍛 える」 ことよ りも

,

「子 ども自身が気 付 くことが大切であ り,教師の仕事はそれ を 支援す ることだ」 と思っている教師にとって は,このよ うな陰山氏の教育は 「塾のや り方 であ り,学校教育の とるべき手法ではない」

と反感 を抱 く。 これが陰山方式が普及 しない 要因でもある。 しか し./小学校教師が,今 の 自分の役割 を,完成 させ ることではなく,中 学校や高等学校へ向けての土台作 りであると 割 り切 るな らば,強い苗を育てる陰山方式に Hを向けてほ しい と思 う。そ して 「支援」 と 言 う言葉 は小学校段階では我慢 して,中学校 以降の堅い田んぼに移植す るまで大切 に しま っていてほ しい。

ただ,い くら1校が強い苗を育てて も,複 数 の′J、学校 の卒業生 を受 け入 れ る中学校 で は,一番弱い苗に照準を合 わせ なければな ら ない。ア トム共同保育園の卒園児 を受け入れ る小学校 と同 じであるBや は り少 なくとも, その地域全体で小 中学校の強い連携がな され か すれば,不耕起教育は達成できない。

(3)「田植 え」 と 「中学1年

強い苗 を育てた後 は,いよいよ堅い田んぼ

‑の移植 である。 これは人生では中学 1年 に 当たる。普通の田植機では苗が田んぼに ささ らす浮いて しま う。そこで,初期 には棒で穴 をあけなが ら一木 一一本手 で苗 を植 えていた が.これでは採井が とれないo い くら優れた 農法であって も,農家が生活できないのでは 意味がない。 どうしても不耕起栽培用の田植 機 は必要である。 しかも堅い田んぼに田植 え

をす るには,細い燐を切 ってか らその溝 に苗 を植 えることになるが.揺れなが ら進む 田植 機 が細い溝に合わせて苗 を植 え付 けるのは至 難の業である。

これは学校教育では,個別指導ではな く集 団指導で効率良 く,強引に 自主学習の堅い田 んぼ‑植 え付けることを意味す る。 しかも, 揺れ る生徒たちを細い溝か らはず さないよ う

ー60‑

に植 えるのだか ら教師の努力 も大変である。

要す るに中学1年 は,小学校 まで と全 く環境 を変 えた峻酷 な堅い田んぼ‑子 どもたちを移 す時期であるか ら,多少強引にでも,彼 らの 生活環境 を峻酷な場に合 った状態に矯正す る 時期 といえる。

これに応 える中学校 として,東京都 の私立 中高一貫校順天学園がある。 当校 では,中学 1年の一学期の中間考査以降に約11回のス クールステイを行 う。そ こでは学校 に寝 泊ま りさせ なが ら生活習慣 の改善を し,全生徒 に 主体性 をつけ させ る。夜 の 7 :30か ら2時 間を強制的に勉強時間 と設定 し,勉強内容は 自分で決め させ る。 「自分の こ とは 自分 で決 める」 これがスクールステイのポイ ン トであ る。そのスタッフは 「自分で学習す る気持ち がなければ本 当の学力はつかない し,主体的 になる部分は 自分の時間の中で培われ る」 と 言 う。小学校時に家庭学習の習慣 がなか った 生徒 も,このスクール ステイが終わる頃には かな りの家庭学習ができるよ うにな り,授業 を受 ける姿勢 も前向きになる。そ して多 くの 生徒が良い方に転 が り始 める。 このよ うに中 学校1年の時期 は, 自主的な学習習慣や行動 が身に付 くまで,強制的に生活習慣 を矯正す る時期 である。 このよ うな生活習慣 が身に付 けば,学校の授業 も家庭学習を前提 とした 自 主的な方法で展 開できるよ うになる。

(4)「根 を張 る時期」 と 「中学2 3年 と高 等学校教育

堅い田んぼに苗 を移植 して,苗がその堅 さ に耐 えなが ら,やがて深 く強い根 を張 り,盛 んに分 けつす る (茎 を増やす) までの20日 間は,人生では14歳か ら18歳に当た る。

これは中学2年 か ら高等学校卒業 までの期間 である。そ して 「堅い田んぼ」を 「峻酷な場」

と定義 し.中学1年でその場に移植 し,その 環境 に適応 させ たのであるか ら,この時期 は,

自分たちで決定 し行動す る割合 をどんどん増

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や してい くことになる。 中学校段階では無理 として も,高等学校 では,ほ とん ど全ての教 科や行事 を 「自分たちでやれ」 と峻酷な敏に す ることは可能である。ただ しい くら峻酷な 場 とは言 って も,個 によ り対応は異なるべ き であ り,突 き放 しもその中に愛情 を感 じさせ るものでなければな らない.支援 と言 う言葉 は, この時期 にこそ使用する言葉であろ うO この唆酷 な場の例 として,学校 をあげて取 り組んでいる事例 を探す ことはできなかった が, 1つの授業例 として,横浜市の私立横浜 高校の取 り組みがある。横浜高校は4コース か らなる普通科の高校である。この高校では, 企業か らの援助で運営 されている経済教育団 体か ら経済プ ログラムの提供 を無俳で受 け, 普通科ではあるが,企業経営を勉強 している。

企業か ら派遣 された講師に 「経営者 として会 社の戦略 を話 し合 って決めてもらいます。 自 分で決 めない と物事は一つ も進みませんよ。」

と厳 しい 口網で指示 され, 5人一組 になって サインペ ンの会社経営のシ ミュレー シ ョンを 行 う。数字だけ しか香いていない業界 レポー トか ら経営方針 を決 めるのだが,意志決定の 重要 さを体験す るO

意志決定の項 目として,①価格,②生産量.

③設備投資費,④宣伝広宅費,研究開発費 を 計算 してい くことになる。 この間詐師は遅れ た グループにア ドバイスはす るが,意志決定 は最後まで生徒たちに任せ るO結果発表で, 庫秀 な企業は賞賛 され,倒産企業のグループ は講師か らは 「従業員の家族は どうす るので すか」 とこっぴ どくたたかれ る。それで も, 生徒 た ちは

,

「先生に教 え られてす る勉 強で はな く, 自分たちが考えて決定す る勉強であ り,答 えがた くさん出て くるのが炎 しい」 と 言 うD また授業後 の感想 では

,

「会社 を経営 するにはす ごい計算力がない といけない こと に気づいた。また,そこに人間関係や給料の 配分な ども考 えていかなければな らないO普 段は どっちで もいいな どと唆味な返事を して

いたが,今回はそ うもいかなかった。 自分の 臆病 さや決定の鈍 さな どを痛感 させ られた。」

と成長の跡 を伺 わせた。 またスタッフのひ と りは

,

「多様 なものに触れ て,豊 かな材料 を 取 り込む ことが大切」 と言 う。

(5)「年間湛水」 と 「地域 の力」

年間湛水の 目的は,稲刈 りを した後か ら来 年の稲刈 り直前まで田んぼに水 を張 り続 ける ことで,雑草の繁殖 を抑 えることと,田んぼ の生態系を豊かに して,稲 の生育に良い帝境 をつ くることである。 これ を人間社会にた と えれば,根気強い取 り組みで青少年非行な ど の犯罪 を抑 え,教育に良い衆境 を作 ることで ある。

この10年間における犯罪発生の伸び率が 世界最高 と言われ る我が国において,軒並み 脊少年犯罪 が増加 して い る県庁所在 地 の 中 で,唯一犯罪 を減少 させ ている鹿児島市では, 他 に誇れ るねぼ り強い取 り組みが2つ ある。

鹿児島市は育少年犯罪が多発 した昭和60年 に,市長 の提案で 「青少年への声かけ運動

と r校 区公民館制度」 をスター トさせ たo

「青少年への声かけ運動」は他の地域で も み られ る事例であるが,鹿児島市の取 り組み は半端なものではなか った。巡回者 は 日々青 少年 との接 し方 を研究 し,地 区全体で青少年 を育て よ うと言 う意職 が高まっているo多 く の市民が,青少年の健全育成 に係 わってい る ことを誇 りに している。

そ して, もう一つの 「校 区公民館制度」は 他 に例 の ない鹿 児 島市独 自の取 り組 みで あ る。鹿児島市内の全小学校 の校 内に公民館 を 作 り,地区民 と学校が協力 して,小 ・中学生 を巻 き込んだ地域の活動 を行 う。 スポーツ大 会では,地区役員が小 中学生宅を訪問 して出 坊 を要請す るO この よ うに して,子 どもたち を地区民が常に把握 している。そ して地区の 運動会や文化祭 は勿輪 の こと,入学式や卒業 式までや ると言 う。各公 民館の年間行事回数 は百数十回に及び,土 日だけでな く平 日にも

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組 まれ てい る。 この よ うな活動 は青少年犯罪 を激減 させ ただ けでな く,地域全 体 に活気 を 与 え,学校 を取 り巻 く環境 に良い影 響 を与 え てい る。

(6) ス トレス とホルモ ン

成 苗 は堅 い地面 に出 くわす と戸 惑 うが.や がてそ の ス トレスはエチ レン と言 うホル モ ン の分 泌 を促 し,根 を太 く丈夫 に して堅 い地面 を突 き破 ってい く。 この とき苗 は野生化 し, 冷賓や 病 害 虫に強 くなる。 強い成 苗 に とって ス トレス は味方 なのであ る。

これ と同様 な こ とが人間の体内 に も起 る。

ス トレス を感 じる と視床下部等 を介 して ス ト レスホル モ ンを分泌 し,ス トレス の原因 で あ るス トレッサ一 に抵抗す る力 を出す。 中学 に 入 学す るまでに, しっか り した基礎 基本 を身 につ けてお けば,学校 がか けるス トレスに負 け るこ とな く, ス トレス耐性 が さ らに強 くな り,や が て出会 うで あろ う大 きなス トレス を 自力で解 決す る能力 を持つO今 まで,われ わ れ は子 どもに対 して,人権 的立場 か らで き る だ け ス トレス を か け な い よ うに 往昔 して き た。 しか し, ス トレスに強 い耐性 さえ身 につ け させ てお けば, ス トレス をか け るこ とをお それ る必 要 はない。 ス トレスは人 間 を強 くす る味方 なので あ る。 ただ し,生まれ つ きス ト

レスに弱 い体質の子 どもや ,まだ 自主的習慣 が身 に付 いていない子 どもに対 して,急激 な ス トレス をか けるこ とを避 け るな ど,個別 の 対応 が必要 な こ とは言 うまで もない。

6.+ 後 の課札 とま とめ

不耕 起 栽培 は

,

「弱 い苗 のた めに よ り深 く 耕 し, よ り強力 な農事 を開発 し,稲 をます ま す 弱 く して きた現在 の慣行 栽培 の悪循」 を 断 ち切 ろ うと言 う英断で あ った。 現代 の学校 教 育 も

,

「ス トレスに弱 い子 どもた ち に . で きるだ けス トレス をか けない よ うに した こ と で ,子 どもた ちをます ます 弱 くす る悪循環 」

6 2

に陥 ってい るのではないだ ろ うか。 多 くの教 師はそ の よ うな現代教 育 の在 り方 に疑 問 を持 ちなが ら,人権 的立場 か ら公 言す るこ とをは ばか って きた。 この悪循 環 を断 ち切 るた めに 提言 したのが不耕起教 育で あ る。

生 きる力 を育成す るためにあ えてス トレス をか け る。 そ のために前 もって ス トレスに耐 える資質 を作 ってお くC これ が不耕起教育 の 本質 で ある。 当然 そ こには 「で きない子 のた めに懇切 丁寧 な指導 を して どこが悪 い。 ス ト

レス をかけて不 登校 に な って もよいのか。 生 命 が失 われ て も よいの か。」 とい った批 判 が でて くる。確 か にい き な り現状 の 中 ・高 等学 校 を堅 い 田んぼにす る こ とはで きない し,価

‑の配慮 を忘れ てい るわ けでは ない。稲 作 は 出発 点で,籾 を塩水 に浮 かせ てバ カ苗病 にか か りに くい籾 を選別 した り,浸 種 で発 芽 時期 をそ ろえた りと均質化 で きるが,人間は こ う はいかない。生 まれた環境 が全 く異 な る個 ‑ の対応 は,当然重大 な課題 で あ る。

しか し,長 い 目で見 て 「不耕 起教育」 は統 合的 な教育 と して正 しい よ うに思 うし.指導 要額 の理念 「生 きる力 の育成 」そ の もので も ある。 ただ, どの段階 で も同 じ目標 を掲 げ る 指導要領 とは.それ ぞれ の段 階 で, してお く べ きこ とに徹す る点 で大 き く異 なってい る。

今後 はそれぞれ の段 階で効果 の見 られ た事例 を一つ で も多 く紹介 して い きた い と思 う。

【文献】

岩滞信 夫 :不耕 起 で よみ が える(2003), 創森 社

川 島隆太 :子 どもを賢 くす る脳 の鍛 え方 一徹底反復練 習 !読 み春 き計井 (2004),小学館

陰 山英 男 :奇跡 の学カ ー土堂小 メ ソッ ド (2003),文轟春秋

朝 日新 聞 :Weekly 教 育 (2004/7/11朝 刊) 国際教 育政策研 究所 :数 学教育 ・理科教育 の

国際比較(2001), ぎ ょ うせ い (平成16年9月15日受 理)

参照

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