鋼橋の架設工法概説
―架設工法の分類と選定および技術の変遷―
藤田 瑞穂
日本橋梁建設協会 架設小委員会
平成29年度 第33回基礎講座
鋼橋の架設工法概説
―架設工法の分類と選定および技術の変遷― 架設工法 分類 選定 技術 変遷 平成29年10月26日
一般社団法人 日本橋梁建設協会
技術委員会 架設小委員会
鋼橋の架設工法概説
1.鋼橋の特徴
(鋼橋架設の前提条件です)
2
橋を形作る素材
鋼(はがね)
鉄にさまざまな化学元素を含ませて熱処理した材料。
【長所】
・ 引張りに強く、じん性に富むため、薄い板で構造を形作る ことができ、重量を軽くできる。
・ 材料の加工性に富むため、成形しやすく、豊富なデザイン が可能。用途に応じた既製品も入手しやすい。
【短所】
・ 錆びやすいので、塗装などによる防食が必要である。
・ 座屈や疲労と呼ばれる破壊現象に留意する必要がある。
構造力学との関わり
曲げ部材
引張
筋肉の伸びる側:引張 筋肉の縮む側: 圧縮
曲げ部材には、圧縮力と引張力が働く
圧縮
引張
荷重
4
橋における力のつり合い
桁橋 圧縮
引張
アーチ橋
圧縮
吊橋
引張 トラス橋
三角形を構成すると部材に
鋼橋とは
工場製作 ⇒ 部材輸送 ⇒ 架設・床版等
鋼材使用によるメリット 高品質・高強度な材料
単位強度あたり軽量、加工の容易性 単位強度あたり軽量、加工の容易性
工場製作によるメリット
工場管理による高品質な製品 工場製作による現場負荷低減
(現場での省人化・安全性向上等)
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キャンバー
キャンバー とは とは
橋桁は自重や付属物の重量によって
橋桁は自重や付属物の重量によって た た わみ
わみ を生じます。 を生じます。 そこでこのたわみを考 そこでこのたわみを考 慮して、あらかじめつけておく
慮して、あらかじめつけておく そり そり をキャン をキャン バー
バー (camber) (camber) といいます。 といいます。
本締め前 本締め後 完成高さ
架設工事では品質・安全確保が重要
重量物取扱や高所作業が多く、墜落災害等を招く 危険性が高い。市街地や道路等近接での事故は 公衆重大災害につながる恐れがある。
採用される橋梁形式や架設方法は多用、同じ条件 の現場はない。各現場での品質・安全対策も、現 の現場はない。各現場での品質・安全対策も、現 場ごとに検討・立案し着実に実行する。
設計で前提とした施工方法に対して、施工計画を作 成し、橋の安全性の確保に十分に配慮し、適切 かつ確実に施工する。
過去の不具合・事故事例の教訓、対策を共有。
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鋼橋の架設工法概説
2.鋼橋の構造形式
(架設工法選定は相性があります)
プレートガーダー橋(I桁)
従来形式Ⅰ桁橋−阪神高速池田線
(主桁が5本)
少数Ⅰ桁橋−藁科川橋
(主桁が2本)
箱桁橋の例
従来形式箱桁橋− 名古屋高速西春工区 細幅箱桁橋− 引佐ジャンクションCランプ橋
ラ ー メ ン 橋の例
π(方づえ)ラーメン 梶橋
V脚ラーメン 二上橋
立体ラーメン
(上下部剛結構造)
福岡高速5号線
トラス橋の例
(単純ワレントラス)
荒川橋梁
ワーレントラス橋
アーチ系橋梁
アーチ
アーチ橋
M:曲げモーメント S:せん断力
N :軸力
ランガー橋
ロ−ゼ橋
補剛桁
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アーチ系橋の例
アーチ橋−末野大橋 ランガー桁橋−樺島大橋
ローゼ橋−矢形川虹の大橋 ニールセンローゼ橋−水取大橋
斜張橋−舞鶴クレインブリッジ
斜張橋・吊橋の例
吊橋−安芸灘大橋
16
40%
5%
3%
1% 12%
I 桁
箱 桁 トラス アーチ
56% 斜張橋
34%
2%
2% 0% 6%
I 桁
箱 桁 トラス アーチ 斜張橋
橋梁形式別の実績では
39%
斜張橋 複合橋 斜張橋
複合橋
総件数 417件 総重量 261,536t
『橋梁年鑑平成26年度版』
件数では鈑桁、箱桁
のガーダー形式 90 % 重量では鈑桁、箱桁
のガーダー形式 79 %
鋼橋の架設工法概説
3 架設工法の分類と選定
(具体例)
3.架設工法の分類と選定
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架設工法の分類 架設工法の分類 大分類
大分類 中分類 中分類 小分類 小分類
A
A 桁を所定の位置で組立てる 桁を所定の位置で組立てる
ベント工法
ベント工法 クレーン種類 クレーン種類 キャンチレバー工法
キャンチレバー工法 などで分類 などで分類 ケーブルエレクション工法
ケーブルエレクション工法 ケーブルエレクション工法 ケーブルエレクション工法
B
B 別の位置で組立てた桁を所定の位置に移動する 別の位置で組立てた桁を所定の位置に移動する
大ブロック一括架設工法 大ブロック一括架設工法 送出し工法
送出し工法 架設機材 架設機材 横取工法
横取工法 などで分類 などで分類 回転工法
回転工法
Aグループ Aグループ
①
①ベント工法 ベント工法
③
③ケーブルエレクション工法 ケーブルエレクション工法
上から吊る 上から吊る
下から支える 下から支える
②キャンチレバー工法 キャンチレバー工法
一端で支持する 一端で支持する
斜めから吊る
斜めから吊る
架設工法事例(A)
(a)トラッククレーンベント工法 (b)ケーブルエレクション(直吊)工法
(a)トラッククレーンベント工法 (b)ケーブルエレクション(直吊)工法
Bグループ Bグループ
⑤
⑤送出し工法 送出し工法 ⑥ ⑥横取り工法 横取り工法
④
④大ブロック一括架設工法 大ブロック一括架設工法
⑦
⑦回転工法 回転工法
架設工法事例(B)
( e )手延式送出し工法 ( f )回転工法
( e )手延式送出し工法 ( f )回転工法
架設工法の種類
(1)トラッククレーン工法 ・トラッククレーンベント工法
・トラッククレーン一括架設工法
・トラッククレーン片持式工法
(2)ケーブルクレーン工法 ・ケーブルクレーンベント工法
・ケーブルクレーン片持式工法
・ケーブルエレクション直吊り工法
・ケーブルエレクション斜吊り工法
(3)送出し工法 ・手延式送出し工法
・架設桁送出し工法
・架設桁送出し工法
・移動ベント送出し工法
(4)トラベラクレーン工法 ・トラベラクレーンベント工法
・トラベラクレーン片持式工法
(5)フローティングクレーン工法 ・フローティングクレーンベント工法
・フローティングクレーン一括架設工法
(6)台船工法 ・台船一括架設工法
(7)大型搬送車工法 ・大型搬送車による一括架設工法
(8)その他の工法 ・横取り工法
・回転工法
トラッククレーンベント工法 トラッククレーンベント工法
トラッククレーン ベント設備
桁を所定の位置で組立てる
手延べ式送出し工法 手延べ式送出し工法
手延べ機
別
別の位置で組立てた桁を所定の位置に移動 の位置で組立てた桁を所定の位置に移動する する
地組ヤード
送出し
多軸式特殊台車送出し工法 多軸式特殊台車送出し工法
送出し
多軸台車
多軸台車
トラベラクレーンベント工法 トラベラクレーンベント工法
トラベラクレーン
ケーブルクレーン斜吊り工法 ケーブルクレーン斜吊り工法
ケーブルクレーン
斜吊り設備
ケーブルクレーン直吊り工法 ケーブルクレーン直吊り工法
ケーブルクレーン
直吊り設備
多軸式特殊台車一括架設工法 多軸式特殊台車一括架設工法
多軸台車
フローティングクレーン一括架設工法 フローティングクレーン一括架設工法
フローティングクレーン
セッティング ビーム
一括架設桁
台船一括架設工法 台船一括架設工法
一括架設用補強材 一括架設桁
ニールセンローゼ桁
台 船
安全の確保 安全の確保
工程、作業時 工程、作業時
間帯の制約 間帯の制約
地理的・地形的 地理的・地形的
な条件 な条件
新技術の 資料
架設工法選定のイメージ
構造形式 構造形式 環境上の制約 環境上の制約
設計条件 設計条件 との整合 との整合
交通規制 交通規制 地元対策 地元対策
最も
最も安全 安全で で 経済的な工法 経済的な工法
多くの情報を盛り込むことが要求される 34
平地 山岳地 川・河口
送出し工法 送出し工法
トラッククレ−ン工法 フロ−ティングクレ−ン工法 トラベラクレ−ン工法 トラベラクレ−ン工法 ケ−ブルエレクション工法 フロ−ティングクレ−ン工法
ケ−ブルエレクション工法 フロ−ティングクレ−ン工法
トラッククレ−ン工法 トラッククレ−ン工法
鈑桁・箱桁 トラス
場所 橋種
架設工法の選定
(代表的な施工実績)
ケ−ブルエレクション工法 フロ−ティングクレ−ン工法
トラッククレ−ン工法 台船工法
フロ−ティングクレ−ン工法 台船工法
フロ−ティングクレ−ン工法 台船工法
フロ−ティングクレ−ン工法 台船工法
トラッククレ−ン工法 トラベラクレ−ン工法
ラ−メン 斜張橋
トラッククレ−ン工法 トラッククレ−ン工法 トラッククレ−ン工法
ア−チ ロ−ゼ ランガ−
ケ−ブルエレクション工法 ケ−ブルエレクション工法 ケ−ブルエレクション工法 ケ−ブルエレクション工法
トラベラクレ−ン工法 トラベラクレ−ン工法
7.9%
4.7%
6.7%
1.2% 1.9%
TC ベント工法 CC ベント工法 送出し工法
架設
架設工法別の実績 工法別の実績比率 比率
77.7%が 77.7%が
クレーンベント工法 クレーンベント工法
65.6%
12.1% 横取り工法
大ブロック工法 片持ち式工法 ケーブル式工法 クローラクレーンベント工法
トラッククレーンベント工法
(橋梁年鑑平成26年版)
鋼橋の架設工法概説
4.工法別架設ステップ
(イメージトレーニング)
トラッククレーンベント工法(ステップ)
単材架設
単材架設 ① ①
単材架設
単材架設 ② ②
40
単材架設
単材架設 ③ ③
単材架設
単材架設 ④ ④
どこでもベントは建 てられ訳ではない
42
単材張出し架設
単材張出し架設 ① ①
単材張出し架設
単材張出し架設 ② ②
44
単材張出し架設
単材張出し架設 ③ ③
単材張出し架設
単材張出し架設 ④ ④
46
単材張出し架設
単材張出し架設 ⑤ ⑤
地組架設
地組架設 ① ①
地組
48
地組架設
地組架設 ② ②
地組架設
地組架設 ③ ③
50
送出し工法(架設ステップ)
送出し要領
送出し要領 ① ①
手述機 連結構 主 桁
手述機 連結構 主 桁
52
送出し要領
送出し要領 ② ②
送出し要領
送出し要領 ③ ③
54
送出し要領
送出し要領 ④ ④
送出し要領
送出し要領 ⑤ ⑤
桁組立架台
56
送出し要領
送出し要領 ⑥ ⑥
桁組立
送出し要領
送出し要領 ⑦ ⑦
58
送出し要領
送出し要領 ⑧ ⑧
送出し要領
送出し要領 ⑨ ⑨
60
送出し要領
送出し要領 ⑩ ⑩
桁を継ぎ足しながら
送り出す
トラベラクレーン(架設ステップ)
62
連続トラス 連続トラス
前記の条件に全て適合する。トラベラクレーンを搭載しての架
設でも、1支間分の片持ちも可能な範囲といえる。
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラスの例
最初の支間 最初の支間は は クレーンベント
クレーンベントで架設 で架設
トラベラクレ
トラベラクレ -- ンの ンの 片持ち架設 片持ち架設 片持ち架設 片持ち架設
64
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラス ①
トラベラクレーン トラベラクレーンの の 組み立て
組み立て
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラス ②
トラベラクレーン トラベラクレーンを を 定位置に移動
定位置に移動
66
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラス ③
運搬
運搬台車に 台車により より 部材運搬
部材運搬
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラス ④
68
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラス ⑤
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラス ⑥
70
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラス ⑦
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラス ⑧
72
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラス ⑨
トラベラクレーン
トラベラクレーンの片持ち架設 の片持ち架設
連続トラス ⑩
74
75
ア−チ系上路橋の架設 ア−チ系上路橋の架設 斜吊ステップ
斜吊ステップ ①(鉄塔組立) ①(鉄塔組立)
斜吊り用鉄塔
76
斜吊ステップ
斜吊ステップ ②(ア−チの架設) ②(ア−チの架設)
斜吊り用ケ−ブル
斜吊ステップ
斜吊ステップ ③(ア−チの架設) ③(ア−チの架設)
78
斜吊ステップ
斜吊ステップ ④(ア−チの架設) ④(ア−チの架設)
斜吊ステップ
斜吊ステップ ⑤(ア−チ閉合) ⑤(ア−チ閉合)
ケ - ブルクレ - ン
80
斜吊ステップ
斜吊ステップ ⑥(斜吊り設備解体) ⑥(斜吊り設備解体)
斜吊ステップ
斜吊ステップ ⑦(補剛桁の架設) ⑦(補剛桁の架設)
補剛桁
支柱 支柱 ワイヤ - ブリッジ
82
斜吊ステップ
斜吊ステップ ⑧(架設完了) ⑧(架設完了)
直吊り工法は全荷重を吊る 直吊り工法は全荷重を吊る
84
直吊り工法
直吊り工法 ① ①
直吊り工法
直吊り工法 ② ②
86
直吊り工法
直吊り工法 ③ ③
直吊り工法
直吊り工法 ④ ④
直吊り工法
直吊り工法 ⑤ ⑤
直吊り工法
直吊り工法 ⑥ ⑥
90
鋼橋の架設工法概説
5.技術の変遷
(仮設工法の歴史)
1. 架設工法の歴史 1. 架設工法の歴史
(西暦)元号 (1868) 明治 (1912)大正 (1926) 昭和 (1989) 平成
No. 架設工法 年 10 20 30 40 10 10 20 30 40 50 60 10 20
1.くろがね橋 21.天竜川橋梁 41第一木曽川橋梁7.武庫川橋梁 45.新大橋
41.大滝川橋梁 2.東北・荒川橋梁 11.大分川橋梁
安倍川橋梁38. 43.新木曽川橋 62.黄金跨線橋
11.第一利根川橋梁 30.富士川橋梁 49.大江跨線橋 2.大分川橋梁 23.第7小繋川橋梁
8.小丸川橋梁
2.釜の脇橋梁 41.天草1号橋
4.薄波橋梁 3.第一白川橋梁 33.坂東橋 11.烏山・荒川橋梁
足場式
操重車 張出し 架設桁 重連式 送出し
①
②
④
⑤
③
⑥
表−1 国内の鋼橋における架設技術の変遷
明治 大正 昭和 平成
戦後 本四
足場式
連結式など 送出し
操重車など 張出し式
架設桁
11.烏山・荒川橋梁 39.浜松町跨線橋15.永代橋 50.荒川湾岸橋
3.清洲橋 6.六甲アイランド橋
3.言問橋 24江川橋 6.西宮港大橋
4.六角川橋梁 2.豊海橋
6.白鬚橋 4.第一神通川橋梁
10.第二神通川橋梁
1.太田人道橋
2.信濃川橋梁 30.西海橋 54.大三島橋 6.東雲橋 24.桃林橋
9.第一吉野川橋梁 27.群馬大橋
佃大橋38. 48.生浦大橋
神戸大橋45. 49.港大橋
35.勝瀬橋大和川橋57. 多々羅大橋11.
44.尾道大橋 63.岩黒島・櫃石島橋