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好気性脱窒細菌間の硝酸性窒素除去能および有機物利用能比較

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Academic year: 2022

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(1)VII‑159. 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月). 好気性脱窒細菌間の硝酸性窒素除去能および有機物利用能比較 東京大学大学院工学系研究科 学生会員 ○尾谷 洋平 正会員 長谷川 聖、 正会員 花木 啓祐. 農業地域の地下水系は、農地への施肥を起源とする窒素 負荷の流入のため、硝酸性窒素汚染が特に深刻である。 生物学的に硝酸性窒素を除去する方法のうち、好気性脱 窒を用いた方法は、排出源に近い畑地の好気条件下の土壌 中で脱窒反応を起こすことができ、汚染範囲をより狭い範 囲にとどめることができるので、現地への適用が達成され れば、従来の無酸素条件下での脱窒を用いた方法に比べ、 より有用な方策となりうる。よって、好気性脱窒細菌のバ イオレメディエーションへの適用を念頭において研究を 行う。 しかし、好気性脱窒細菌については知見が浅いため、こ こでは好気条件の純菌系における脱窒反応の有無と、有機 物源の脱窒性能への影響を評価した。. 2. 実験方法 2.1. 使用菌株について 本研究に使用した菌株は、 Alcaligenes faecalis (IFO 14479)、Microvirgula aerodenitrificans (LMG 18919) 、 Thiosphaera pantotropha (ATCC 35512)の 3 種類である。 このうち、A. faecalis と T. pantotropha に関しては、活 性汚泥処理プロセスの汚泥中に生息し、従属栄養硝化能力 をもつ脱窒細菌であることがすでに知られていた。 M. aerodenitrificans は、1998 年に Patureau et al.によって 無酸素好気法の汚泥中から単離された新種である。この種 は硝化能力を持たないとされている。 2.2. 実験操作 凍結乾燥で到着した細胞を、ペプトン 10gC/L を主な有 機物源とする M. aerodenitrificans 用培地と、ポリペプト ン 10g/L を 主 な 有 機 物 源 と す る A. faecalis 用 、 T. pantotropha 用培地でそれぞれ培養した(ステップ①)。 ステップ②では、ステップ①の培地に硝酸カリウムを加え た組成のものを用いた。 その後、有機物源を制限して培養した(ステップ③)。 ステップ③の有機物源には、酢酸ナトリウム、エタノール、 グルコース、ロイシン、ペプトンの 5 種類を用いた。ステ ップ②と③において NO3-N 濃度の初期値は 200mgN/L と した。培養温度は 28℃に保った。. 3. 実験結果 水質の経時変化の測定結果は図 2〜4 に、A. faecalis の 例を示した。 植え継ぎ後すぐに菌体は増殖を開始し、2〜3 日後で増 殖は終了する。硝酸性窒素の還元はこの増殖期に起こって おり、これを過ぎると硝酸性窒素、亜硝酸性窒素ともに横 ばいとなる。これは図に示した A. faecalis のみにとどま ら ず 、 3 種 の 菌 株 に 共 通 し た 傾 向 で あ る 。 ま た 、 M. aerodenitrificans のエタノール、グルコース、ロイシン を用いた 3 つの系は、14 日の培養後も菌体増殖が認めら れなかった。. 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 0. 4. 6 8 10 経過時間[d]. 12. 14. 200 150 100 50 0 0. 2. 4. 6 8 10 経過時間[d]. 12. 14. 図3.A. faecalis におけるNO3-Nの経時変化. で培養 200. 酢酸 Na エタノール グルコース. 1L三角フラスコ 液量 500 mL (各実験共通). 2. 図2. A. faecalis におけるOD(580nm吸光度)の経時変化. 濃度[mgN/L]. <ステップ②> ステップ①の培地 +NO 3-N200mgN/L. 酢酸Na エタノール グルコース ロイシン ペプトン. 吸光度 2.5. <ステップ③> 有機物源1gC/L NO 3-N200mgN/L. <ステップ①>. ロイシ ン. 150 100 50 0 0. ペプト ン. 2. 4. 6 8 10 経過時間[d]. 12. 14. 図4.A. faecalis におけるNO2-Nの経時変化. 図1.実験の概観. キーワード. ステップ②とステップ③の培養液について水質の経時 変化を測定した。菌体濃度には 580nm 吸光度(OD580)を用 いた。NO3-N、NO2-N 濃度測定にはイオンクロマトグラ フ法を用いた。. 濃度[mgN/L]. 1. 本研究の背景と目的. 好気性脱窒、硝酸性窒素、有機物源、純粋培養. 連絡先:〒113-8656 東京都文京区本郷 7-3-1 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻. ‑317‑. TEL&FAX 03-5841-8529.

(2) VII‑159. 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月). 4. 考察 <硝酸性窒素除去量による評価> NO3-N 濃 度 と NO2-N 濃 度 の 合 計 値 の 、 初 期 値 (200mgN/L)に対する除去率により、有機物源による菌体 の窒素除去能力の違いを評価する。実験③において、ロイ シンとペプトンは有機性窒素を含むため、初期の全窒素の 量は異なるが、培地中に含まれる 200mgN/L の硝酸性窒 素のうち除去された量が、与えられた有機物源の硝酸性窒 素除去能力を示すと考える。14 日後の窒素成分の組成を 図 5〜7 に示す。 % 100. ステップ②. ステップ③. <微生物濃度との関係> NO3-N、NO2-N の減少量を菌体濃度で割って、単位菌 体量あたりの除去量を求めた。ここで、菌体濃度は各系の 菌体濃度の最大値を用いた。ただし、A. faecalis において エタノールを用いた系は、菌体濃度が最大値に達する前に NO3-N、NO2-N ともに検出されなくなったので、検出さ れなくなった時点での菌体濃度を用いて算出した。ただし、 M. aerodenitrificans においては、エタノール、グルコー ス、ロイシンを用いた場合、14 日の培養後も菌体増殖が 認められなかったので、評価の対象外とした。 150. 75. 100. 減少分 NO2-N NO3-N. 50. 50. 25 0. A.faecalis % 100. ステップ②. ステップ③. 除去率による評価で NO3-N、NO2-N が完全に除去され た系列において大きな値が出ており、先の評価と同様の傾 向が出ている。異なるのは、T. pantotropha においてエタ ノールを有機物源として用いた系列では、最大 OD が 1.137 と、この菌種のほかの系列に比べて低いのに対し、 NO2-N、NO3-N の減少率は 76.8%に達しているため、他 の系列に比べて値が高くなった点である。. 50 25. ン ペプ ト. ロイ シン. ス コー グル. エタ. ノー ル. 酸 Na 酢. ステ ップ ②. 0. 図6. M. aerodenitirficans における14日後の窒素分の組成 ステップ②. 5. まとめ この実験の結果より評価を行うと、酢酸ナトリウムを有 機物源とした場合には T. pantotropha、A. faecalis の 2 種類が高い硝酸性窒素除去能力を発揮した。また、エタノ ールを与えた場合は A. faecalis、ロイシンを与えた場合は T. pantotropha と、高い硝酸性窒素除去能力を示す菌株は 有機物源により異なるという結果が得られた。 また、M. aerodenitirficans は、有機物を変えると生育 した場合にも NO3-N、NO2-N を除去するには至らなかっ たが、ステップ②では脱窒能力を発揮している。よって、 条件によっては硝酸性窒素除去能力を発揮する可能性が 残っており、今後はこれを解明していくことが課題となる。. ステップ③. 75 50 25. ン ペプ ト. ロイ シン. ス コー グル. ノー ル エタ. 酢. 酸. Na. 0 ステ ップ ②. T.pantotropha. 図8.(NO2-N、NO3-N減少量)/(最大OD). 75. % 100. M.aerodenitirficans. 酢酸 Na エタノ ール グルコ ース ロ イシ ン ペプト ン. 図5. A.faecalis における14日後の窒素分の組成. 酢酸 Na エタノ ール グルコ ース ロ イシ ン ペプト ン. 酢酸 Na エタノ ール グルコ ース ロ イシ ン ペプト ン. ン ペプ ト. ロイ シン. ス コー グル. エタ. ノー ル. 酸 Na 酢. ステ ップ ②. 0. 図7. T. pantotropha における14日後の窒素分の組成. T. pantotropha は、ステップ②の場合に加えてステップ ③の酢酸ナトリウム、ロイシンを有機物源とした 2 つの系 列で、NO3-N、NO2-N ともに検出されなくなった。また、 A. faecalis は、ステップ②では還元された硝酸性窒素が亜 硝酸性窒素として蓄積したが、ステップ③では酢酸ナトリ ウムとエタノールを用いた 2 つの系列で NO3-N、NO2-N ともに検出されなくなった。 また、菌体が増加した系では、すべての系で硝酸塩還元 が起こっていることもわかる。. ‑318‑. (参考文献) Patureau, D. et. al., 1998. Microvirgula aerodenitrificans gen. nov., sp. nov., a new Gram-negative bacterium exhibiting co-respiration of oxygen and nitrogen oxides up to oxygen-saturated conditions, International Journal of Systematic Bacteriology, 48, 775-782.

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