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翻訳書で知る東南アジアの農村 (レファレンスコー ナー)

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翻訳書で知る東南アジアの農村 (レファレンスコー ナー)

著者 高橋 宗生

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名 アジ研ワールド・トレンド

巻 177

ページ 54‑54

発行年 2010‑06

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00046424

(2)

アジ研ワールド・トレンド No.177 (2010. 6) 54

  途上国各国において数多くの農村調査が実施され︑報告

書や研究書が多数出版されて

きた

︒研究所図書館ホーム

ページの蔵書検索画面で︑フ

リーワードに

﹁農村﹂

︑地域

コードに東南アジア全体およ

び各国を表す﹁AH*﹂︑言

語 コ ー ド に 日 本 語 を 表 す

﹁JPN

﹂を入力し

︑当図書

館が所蔵する東南アジア農村

を扱う和書を探してみると

二〇〇タイトル以上の図書が

みつかる︒その中には︑注目

される海外の研究成果やルポ

ルタージュなどの翻訳書も含まれており︑日本語で外国人

研究者の手による農村調査・

文献調査の成果を読むことが

できる︒その総数は多いとはいえないが︑東南アジア農村

のあまり知られていない姿が

みえてくるかもしれない︒ここではそれらの中から五冊紹

介する︒  J・デルヴェール著︑石澤

良昭監修・及川浩吉訳﹃カンボジアの農民  自然・社会・

文化﹄︵風響社  二〇〇二年︶

は︑主に一九五〇年代に実施

した農村調査を基に︑カンボジア農村の自然環境︑衣食住︑

生業形態︑農業経営などを解

説している

︒﹁環境︱カンボ

ジア平原﹂︑﹁農村の文化﹂︑﹁住

民と経済﹂︑﹁農村社会﹂︑﹁地

方の生活﹂の計五部からなり︑

付録として統計を中心にした参考表︑二五種の地図を収め

た参考図︑漁具︑農具︑家屋

のイラスト他を収めた参考図

版などが巻末に付く︒本書は農村︑農民に関する記述が詳

細かつ正確で︑農民の智慧を

随所に見出せるところに特質があるといわれる︒気候︑地

理︑土壌︑植生を扱う第一部

に限らず︑地理学者の観察眼

を他の部にも感じることができる︒東南アジア人文地理学

の泰斗が著した不朽の名著と

しても知られており︑八〇〇

ページを超す大部の翻訳書となっている︒

  次に︑タイ語を原典とする

チャティプ・ナートスパー原著︑野中耕一︑末廣昭共編訳

﹃タイ村落経済史﹄︵井村文化

事業社  一九八七年︶をみて

いく︒本書は一〇〇ページ余りの代表的論文に加えて小論

三点と

R

・ランガの

﹁タイ

国土地制度史﹂の一部を収録

した翻訳書で︑代表的論文名

がそのまま書名となってい

る︒その論文は古代村落共同 体の時代から説き起こし︑後半は自給自足経済の中に商品経済が浸透し始める一九世紀後半から二〇世紀前半にかけての農村経済の変化に注目する︒土地所有制度︑国家と村落との関係などがどのように変化していったかを中部タイとそれ以外の地域とを比較して論じている︒タイの村落経済の歴史的変化を知るには恰好の本であろう︒  続いて︑セロ・スマルジャン︑ケンノン・ブリージール著︑青木武信﹇ほか﹈訳︑中村光男監訳﹃インドネシア農村社会の変容  スハルト村落

開発政策の光と影﹄

︵明石書

店 二〇〇〇年︶を紹介する︒

本書は開発独裁体制といわれたスハルト政権下で実施され

た様々な開発政策の農村社会

への影響を︑インドネシアの

三州︵アチェ︑ジョクジャカルタ︑南スラウェシ︶で調査

した報告書である︒国家開発

プログラムが農村コミュニ

ティに及ぼした社会的︑文化

的インパクトを探ることに重

点が置かれ︑識字率向上キャ

ンペーン︑家族福祉運動︑家族計画プログラム︑コメ増産

計画︑協同組合運動などの実

態を解説している

︒﹁家族プ

ロフィール﹂と題した一一〜一三章では︑三州の農村に住

む各々五〜七人の住民に対し て詳しい聞き取り調査が行われている︒ここ二︑三〇年間の経済︑社会︑文化の変化を彼らがどう認識し︑個々の生活がどう変わったかを知ることができる︒  同じく開発政策の農村への影響を扱った本として

ニッスダー・エーカチャイ著︑アジアの女たちの会訳︑松井

やより監訳﹃語りはじめたタ

イの人びと

微笑みのかげ で﹄

︵明石書店

一九九四︶

がある︒本書はタイの三地域

︵東北部

︑南部

︑北部︶にみ

られる政府︑企業主体の開発と農民の惨状に関し︑口語体

の引用を使って実際に農民の

口から語らせる手法で︑開発

が農村に及ぼす負の側面を描き出している︒たとえば︑自

然林伐採とユーカリ植林︑観

光開発と住民立ち退き︑投機

家による土地買占めなどが実際にどのような結果をもたら

したかが叙述されている︒農

民や漁民の写真を多数収録

し︑彼らの立場に立ってタイ

の変貌を跡付けている︒

  最後に国内外の学界で大き

な論争を呼び︑多くの書評論文を残すことになった英文書

籍の翻訳を紹介する︒ジェー

ムス・C・スコット著︑高橋

彰訳﹃モーラル・エコノミー

  東南アジアの農民叛乱と生

存維持﹄

︵勁草書房

一九九

九年︶がそれである︒本書は

ビルマ︑ベトナムの両低地に焦点を当て︑資本主義化前の

農民が行動決定を行うに際

し︑危険を回避し損失可能性を最小限化しようとすると仮

定する︒続いて︑農村内制度

が生存危機から農民を保護す

るように機能していると仮定する︒農民とその属する社会

にはそれぞれ﹁安全第一﹂原

則と﹁生存維持倫理﹂が働い

ているというのがスコットの基本的な考え方で︑それらの

仮説が植民地経済や農村政治

の分析に応用されている︒こ

﹁モーラル

・エコノミー

﹂ 論に反論を唱えたサミュエ

ル・ポプキンは︑モラル・エ

コノミストが注目する農民運

動の道徳的推進論を批判し

政治的能力に注目した︒自ら

の立場を﹁ポリティカル・エ

コノミー﹂と呼び︑先植民地期から革命初期に及ぶベトナ

ム農村社会史を論じたポプキ

ンの著作に関しては

︑﹁日本

語版へのことば﹂の中で著者

自らが短くコメントしてい

る︒︵たかはし

むねお/アジア経

済研究所図書館︶

翻訳 書 で 知 る 東 南 アジ ア の 農 村

高橋宗生

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