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まえがき

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Academic year: 2022

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まえがき

著者 坂田 正三

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

シリーズタイトル 研究双書 

シリーズ番号 607

雑誌名 高度経済成長下のベトナム農業・農村の発展

ページ i‑ii

発行年 2013

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00042146

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ま え が き

 べトナムでドイモイと呼ばれる市場経済化導入が1986年に始まって以来,

すでに四半世紀が経過した。その間のめざましい経済発展は,世界中から大 きな注目を集めるところとなり,これまで経済成長の実体やその要因に関 するさまざまな研究が行われてきた。アジア経済研究所からも,研究双書,

情勢分析レポートなどの書籍をはじめ,調査研究報告書や

Discussion Paper

Series

といったウェブ媒体の報告書という形で数多くの研究成果が公表され

てきた。

 本書は,ベトナムの農業および農村経済の発展という,現在のベトナム経 済研究のなかでは必ずしも数多く取り上げられてきたとはいえないテーマに 関する論文集である。本書のねらいのひとつは,2000年以降のベトナム農 業・農村を考察の対象とすることである。1990年代から2000年代初頭の状況 をまとめた長憲次『市場経済下ベトナムの農業と農村』(筑波書房2005年)以 降,日本ではこのテーマで学術書としてまとめられた書籍が出版されてこな かった。2000年代に入りベトナム経済全体が大きな変貌を遂げるなかで,本 書刊行の意義は大きいと考える。

 本書のもうひとつのねらいは,農業あるいは農村経済のみを切り取ってそ の発展に関する考察を行うのではなく,国家の経済発展やグローバルな経済 の動向といった,農業 ・ 農村以外の経済発展との関連について考察すること である。ベトナムは,2000年代に入り,外資の流入と軽工業製品の輸出の増 加により急速な経済成長を達成した。その一方で,食糧生産も増加し続け,

都市部の需要増に応えるのみならず,コメやコーヒー,コショウ,カシュー ナッツといった産品で世界の輸出シェアの上位を占め,外貨獲得に大きく貢 献している。また,農業の生産性向上と農村に興った非農業部門の経済活動

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ii

の活発化はベトナムの貧困削減に大きく貢献した。めざましい工業発展のな かにあっても,国家の経済発展における農業と農村経済の重要性は失われて いないのである。

 しかし本書は,ベトナム農業・農村経済の明るい未来を展望するという類 のものではない。われわれ本書の執筆陣はむしろ,ベトナム農業 ・ 農村経済 が転換期にあるという現状認識を共有している。すなわち,ミクロレベルで は農家の農業経営戦略や生産組織のありよう,農家家計の労働力の分配など,

マクロレベルでは農産品の国際競争力強化,農村コミュニティの維持,農地 の転用など,さまざまな課題への対応を迫られている。本書では,これらの 課題に直面し構造的な転換を遂げつつある,あるいは転換を模索するベトナ ムの農業 ・ 農村の姿を描き出すことに主眼がおかれている。

 本書は,アジア経済研究所において2011~2012年に実施した「ベトナムの 農村発展-高度経済成長下の農村経済の変容」研究会の最終成果である。同 研究会の中間報告は調査研究報告書としてまとめられ,アジア経済研究所 ホームページに掲載されているので,こちらも参照されたい(http://www.ide.

go.jp/Japanese/Publish/Download/Report/2011/2011_409.html)。

 研究会における現地調査の実施にあたっては,ベトナム社会科学院ベトナ ム経済研究所とカントー大学にはひとかたならぬお世話になった。ベトナム では現在でも外国人が農村調査を自由に実施することは困難であり,地域の 人民委員会への届出といった手続きや調査への同行などの便宜を図っていた だいた。また,研究会の講師として,アジア経済研究所の寳劔久俊氏,山田 七絵氏に中国の農業 ・ 農村発展の講義をお願いし,中国との比較というこれ までになかった切り口でベトナム農業 ・ 農村の現状を考察する機会を得た。

寳劔氏にはオブザーバーとして研究会の場において多くの有益な示唆をいた だいた。この場を借りてこれらの方々に深く感謝を申し上げる。

 2013年11月

 編  者 

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