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DF に由来する規格項目が 14 項目となっている 鉱油を対象にした規格項目はその大部分 が EN590 規格と共通である 特に 鉱油系ディーゼル燃料の規格項目には通常利用され ない硫酸灰分や評価方法の異なる酸化安定度試験が加えられている 表 1 EN14214/590 の規格項目の比較 鉱油を対象

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7.バイオ燃料の課題に関する調査研究

PEC 新燃料部 渋谷政彦

バイオディーゼルに係わる燃料規格の課題に関する調査

(株)新日石総研 環境・製品技術調査部 石川 榮

1.調査の目的、背景

炭酸ガス削減の観点から世界中で再生可能エネルギーの利用が進められている。中でも バイオディーゼルと呼ばれる動植物油を原料とした脂肪酸メチルエステル(以降BDFと 略す)は欧米で自動車用燃料用として規格化が進められている。わが国でも総合資源エネ ルギー調査会の燃料政策小委員会で、BDFの自動車用燃料としての適性について様々な 角度からの検討が必要であるとして、一般車両での使用を想定したBDF混合軽油の性状、 安全性および排出ガスに関する検証試験が体系的に取り進められている。しかし、BDF と一言に呼んでも動食物油脂を原料にするので種類も多く、また比較的容易に製造が可能 なため、その製造方法の違いから様々な微量成分を含むものとなっている。わが国におい てBDFを自動車用燃料として混合使用する場合、その品質規格をどのように規定するか が重要となる。 今回の調査ではBDFの利用が最も進んでいる欧州における規格化ならびに規制の実態 調査を行うとともに国内で規格化する場合に障害になると思われる課題を整理し、まとめ た。

2.調査の内容、結果

2.1 欧州のBDF規格制定の経緯 欧州でBDFの研究が開始されたのは、オーストリアで 1970 年代末と言われており、 1991 年に世界で初めてのBDFの品質規格 ONORM C 1190 が制定された。これは主に欧州 で生産されている菜種油をメチルエステル化したBDFを対象にするものであった。その 後、欧州各国でBDF規格制定の動きが活発化し、各国独自のBDF規格が次々発行され た1 )。このような各国のBDF規格制定の動きを背景に、欧州委員会は 1997 年にBDFの 欧州統一規格の研究と評価試験方法を確立するよう指令を出した。そして、様々な検討が 行われ、1 )、 2 )2003 年にBDFを対象にした自動車用ディーゼル燃料規格 EN 14214 と暖 房用燃料規格 EN 14213 が発行された。また、従来からある鉱油系自動車用ディーゼル燃料 規格 EN 590 は 2004 年に EN14214 規格に合格したBDFを 5%以下で混合することを認め た内容で改訂され現在に至っている。 2.2 EN14214(2003)及び EN590(2004)規格項目と試験方法 EN14214 及びEN590 の規格項目は表1に示すように鉱油系ディーゼル燃料を対象と した一般規格項目とBDF由来の規格項目に分けられる。 EN14214 規格では、通常の鉱油を対象としたディーゼル燃料用規格項目が 12 項目でB

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DFに由来する規格項目が 14 項目となっている。鉱油を対象にした規格項目はその大部分 がEN590 規格と共通である。特に、鉱油系ディーゼル燃料の規格項目には通常利用され ない硫酸灰分や評価方法の異なる酸化安定度試験が加えられている。 表1 EN14214/590 の規格項目の比較 鉱油を対象とした一般規格項目 EN590 (2004) EN14214 (2003) 規格項目 規格値 試験方法 規格値 試験方法 BDFに由来する 規格項目 密度 粘度 引火点 硫黄分 残留炭素 セタン価 セタン指数 灰分量 硫酸灰分 水分 全夾雑物量 銅板腐食 酸化安定度 CFPP ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ― ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ― ○ ○ ○ ○ ○ × △ × △ ○ ○ ― ― × × ○ ○ × ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ― ― × ○ ○ ○ × ○ ・エステル含有量 ・酸価 ・ヨウ素価 ・リノレン酸メチルエステル含有量 ・多価不飽和脂肪酸メチルエステル 含有量 ・メタノール含有量 ・モノ-グリセリド ・ジ-グリセリド ・トリ-グリセリド ・総グリセリン含有量 ・遊離グリセリン含有量 ・アルカリ金属 (Na+K)含有量 ・アルカリ土類金属 (Ca+Mg)含有量 ・リン含有量 ○:規格値又は試験方法が鉱油系ディーゼル燃料と同じことを示す。 △:規格値又は試験方法が鉱油系 ディーゼ ル燃 料と類似して いること を示す 。 ×:規格値又は試験方法が鉱油系ディーゼル燃料と類似していないことを示す 。 BDFの品質として特に重要と思われる項目について以下に述べる。 2.2.1 エステル含有量 EN14214 規格ではエステル含有量が 96.5%以上と規定されている。この規格項目は欧 州の統一規格制定時にドイツが強く主張したため採用された。1) エステル含有量を測定 することでBDFの精製度合いが判断できる。試験はEN14103 に規定されたガスクロマ トグラフィー法によって測定される。この試験方法は炭素数 14 から 24 までのすべてのピ ークを加算する方法であり、ほとんどの動植物油原料をカバーできるが、炭素数の短い脂 肪酸は測定できないので魚油、ココナツ油、ヤシ油などから製造したBDFの分析には問 題を含んでいる。また、2 量体や3量体などの重合化合物はこの方法では検出できず廃食

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用油を原料にしたBDFには適さないとの報告もある。3) EN590(2004)規格では BDF の混合量が 5%まで認められている。鉱油系ディーゼル燃料中 の BDF 含有量を測定する方法として赤外線吸収スペクトルを用いる EN14078 試験が採用さ れている。この試験方法は鉱油中に混合されている 1.7%∼22.7%までの BDF 量を定量でき る。赤外線吸収スペクトル法は短時間で分析可能という利点があるが、BDF と原料に用い られる植物油を区別できないという問題点もある。鉱油中の BDF を液体クロマトグラフィ ーとガスクロマトグラフィーで定量する試験方法が EN14331 として 2004 年に制定されてい るのでこの試験を用いることも検討する必要があると思われる。 2.2.2 水分 BDF は極性基を持っており吸湿性が高い。貯蔵中に水分含有量は 1,000mg/kg にも達する と言われている。1) そして溶解限界を超えると分離水となり、バクテリアなどの繁殖を 促進し、生成した沈殿物が燃料フィルターや燃料配管の目詰まりを引き起こす。また、加 水分解反応が起こり、BDF が遊離脂肪酸に変換され、燃料供給系統の腐食を引き起こした りする。鉱油系ディーゼル燃料規格 EN590 では水分量を 200mg/kg 以下と規定しているが吸 湿性の高い BDF の水分を給油所段階で 200mg/kg 以下にコントロールすることは困難であり、 EN14214 規格では 500mg/kg 以下と決められた。 BDF が高濃度で利用されているドイツでは BDF の製造者たちが結成した AGQM と呼ばれる 組織が市場の BDF の品質管理を行っている。水分については以下のような厳しい独自の基 準値を設定して管理している。 表2.AGQM 独自の水分管理基準 BDF 生産者 220mg/kg 以下 その他加入者 300mg/kg 以下 2.2.3 酸化安定度 BDF は原料の特性から不飽和結合を有するエステルを含んでいるので鉱油系ディーゼル 燃料に比べて酸化分解されやすい。酸化され易さは不飽和結合を 2 個以上有する多価不飽 和脂肪酸エステルにおいて顕著である。BDF の酸化劣化物は不溶性の沈殿物や粘性物質と なり、燃料噴射システムやフィルターの目詰まりを生じさせる。 欧州では 2001 年から BDF の貯蔵、酸化安定性を評価するための「BIOSTAB」と呼ばれる プロジェクトが開始され、Rancimat 試験と呼ばれる食品関係で用いられる方法を用いた BDF の酸化安定性試験(EN14112)が開発された。4 ) この試験は 110℃に過熱した BDF から 生成する揮発性の酸(蟻酸、酢酸)を水溶液中でトラップし、伝導率が急激に上昇し始める までの時間を誘導期間として測定する。規格値を決める段階ではエンジン、燃料噴射装置 メーカと BDF 製造者の間でかなりの議論があったようであるが、製造したばかりの菜種油 BDF がエンジンに悪影響を及ぼさないということで、新鮮な菜種油 BDF の酸化安定性の値 から 6 時間以上と決められた。5) この規格値は給油所段階で合格しなければならない。 図1に示すように BDF の酸化安定性は時間経過とともに低下することが知られており、給 油所段階で 6 時間以上を維持するためには、BDF の製造時に酸化防止剤を加えて 10 時間以 上にしておく必要があり、市販される BDF には酸化防止剤(BHT)が添加されている。

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図1 BDF(酸化防止剤の有無)の酸化安定性の経時変化 6) 一方欧州の燃料噴射装置メーカの中には、BDF の市場の品質検査で不合格品が多いこと やコモンレールの噴射圧力が高圧化されていくことを考えると、現在の規格値 6 時間以上 では不充分だとする意見もある。図2に酸化防止剤を添加した酸化安定性の良い BDF を使 用して試験した時にコモンレールポンプ内部に生成したデポジットの例を示す。 図2 BDF(酸化防止剤入り)のコモンレール実機試験結果 7) また、鉱油系ディーゼル燃料規格 EN590 では、ディーゼル燃料油を 95℃、酸素雰囲気下 で 16 時間 酸化 劣 化さ せた 後、 フィ ルタ ー でろ 過し て不 溶解 分量 を求 め る方 法(EN ISO 12205)が用いられている。この試験方法は従来から鉱油系ディーゼル燃料の酸化安定度評 価方法として利用されており、BDF が 5%程度混合した燃料であればそのまま利用できると して従来からの方法が採用された。

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この方法を利用して BDF の酸化安定性を評価しようとする試みも過去に行われたようで あるが、満足する結果が得られていない。理由として BDF が不溶解分をろ過するセルロー スフィルターを溶解することや BDF が酸化劣化物に対し高い溶解性を有していることなど が上げられている。このように BDF と BDF を 5%以下混合したディーゼル燃料の酸化安定 度試験の評価方法がそれぞれ異なるので両者を直接比較することは難しい。

ディーゼル燃料噴射装置(FIE:Fuel Injection Equipment)メーカは、2004 年 6 月に BDF 及び BDF 混合燃料に関する共同声明書を発行している。この中で「硫黄分 15ppm 以下 の超低硫黄ディーゼル燃料に BDF を 5%以下混合した燃料は酸化安定性が大幅に低下する」 と注意を促している。具体的に Bosch 社は、超低硫黄ディーゼル燃料に菜種油 BDF を 5%混 合した燃料を用いて Rancimat 法による酸化安定度試験を実施し、酸化安定性が低下するこ とを確認し、EN590 規格に Rancimat 法試験を追加することを要望している。 しかし、BDF の規格化に携わった研究者の中には Rancimat 法酸化安定度試験は BDF を鉱 油系ディーゼル燃料に混合した燃料には利用できないと主張する人もいるので今後議論が 行われるものと思われる。 2.2.4 ヨウ素価 ヨウ素価は、BDF 中の総不飽和度を測る指標である。ヨウ素価は試料 100g と反応するヨ ウ素量(g)で表示される。EN14214 規格では 120gI2/100g 以下と規定されている。 この規格値はドイツの自動車メーカの強い要望により決められた。ドイツでは以前から菜 種油 BDF を使用して様々な試験を実施してきた経緯にあり、菜種油 BDF のヨウ素価値を基 準にしたヨウ素価 120 以下を強く主張した。この規格値の設定により大豆油やひまわり油 を原料とする BDF は規格値を超えるため単独では使用できない。ひまわり油の栽培が盛ん なスペインはひまわり油 BDF の使用を促進するために自国の BDF のヨウ素価規格を 2003 年 12 月に 140gI2/100g 以下と規定している。8) このようなことからヨウ素価を規定する のではなくリノレン酸メチルエステル量や多価不飽和脂肪酸メチルエステルの量を制限す るほうが適切であるという意見もある。 表3 主な BDF のヨウ素価測定例 9) BDF の種類 ヨウ素価(g I2/100g) BDF の種類 ヨウ素価(g I2/100g) 菜種油 ME 112 パーム油 ME 50.5 大豆油 ME 128 京都廃食用油 ME 116 ひまわり油 ME 120∼14010) 亜麻仁油 ME 191 2.2.5 リノレン酸メチルエステル含有量 リノレン酸は不飽和結合を3個有する炭素数 18 の不飽和脂肪酸である。ヨウ素価の規定 だけでは亜麻仁油のようなリノレン酸を 50%以上と多く含む植物油を排除できないとし て規定された。規格値は 12%以下となっている。 2.2.6 多価不飽和脂肪酸メチルエステル含有量 魚油を原料にした BDF のように不飽和脂肪酸メチルエステルを多く含む BDF を排除する

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ために設けられた規格項目で不飽和結合を 4 個以上含む多価不飽和脂肪酸メチルエステル を制限するものである。EN14214 の規格値として 1%以下と規定されているが、試験方法が 確立されていない。実際には既存のガスクロマトグラフィー法を用いて熟練した試験員が 分析したデータを用いている。 2.2.7 モノ‐、ジ‐、トリ‐グリセリド及び総グリセリン含有量 モノ‐、ジ‐、トリ‐グリセリドは原料油中に存在し、大部分は製造工程でグリセリン 相に濃縮されエステルから分離される。しかし、少量のものが最終製品に混入する。した がって、BDF の分離精製が正しく行われているかを判断するためにこの項目が規格化され た。総グリセリン含有量も遊離グリセリンやモノ‐、ジ‐、トリ‐グリセリドと同様、BDF 製造時の反応条件が適切であることを判断する指標となる。表4に示す規格値は BDF 導入 の初期段階に、低品質な BDF を使用してトラブルを経験したことから決められている。 表4 EN14214 の規格値 項目 規格値 (mass.%) モノ‐グリセリド含有量 0.80以下 ジ‐グリセリド含有量 0.20以下 トリ‐グリセリド含有量 0.20以下 総グリセリン含有量 0.25以下 2.2.8 遊離グリセリン含有量 遊離グリセリンはエステル交換反応プロセスの副産物で、エステルから分離され、副産 物として販売される。しかしながら、精製段階での分離、洗浄が不充分だとエステル中に 混入する。BDFの使用初期段階に、遊離グリセリンの含有量の多いBDFが貯蔵中に沈 殿物を生じ、それを使用した燃料噴射ノズルで深刻なトラブルが発生したため規格化され た。EN14214 では 0.02mass%以下と規定されている。この規格値以下であればグリセリンの 分離は起こらないと言われている。 2.2.9 アルカリ金属含有量 アルカリ金属はエステル交換反応で使用される金属触媒に由来する。良く利用される触 媒はナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどである。これらの アルカリ金属は、製造プロセス中の十分な洗浄で除去することが可能である。 規格値は 5 mg/kg 以下である。この規格値は精製度の高い場合と低い場合の製造プロセ スから得られたBDFのサンプルを分析した結果から決められた。ナトリウムおよびカリ ウムの合計 5mg/kg 以下は、非常に高いレベルのプロセス技術を利用しないと達成できない ので、脂肪酸石鹸として多くの残留触媒を含む低品質な BDF は排除されることになる。試 験方法は原子吸光法が用いられているが、精度が ISO 基準を満たさないという課題がある。 Ca や Mg などのアルカリ土類金属分を分析する ICP(Inductively coupled Plasma)法が Na や K の分析にも利用できるので規格委員会の中で今後検討される予定である。

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2.2.10 アルカリ土類金属(Ca+Mg)含有量 アルカリ土類金属は洗浄に用いる硬水に由来する。カルシウムとマグネシウムのエンジ ンへの影響についての研究があまりなされておらず、従来規格化されていなかった。しか し、BDFに含まれるカルシウム化合物が燃料噴射ポンプ内の目詰まりトラブルを引き起 こすことが判ったため、新たに追加され 5.0mg/kg 以下と決められた。 試験方法は ICP 法(prEN 14538)が使用され、ナトリウムとカリウム測定の試験方法と異 なっている。しかし、この試験方法は最新の ICP 技術に基づいており、予備的研究では 4 種類の金属(Na 、K、 Ca、 Mg)すべてを測定できることが明らかになっている。 2.3 欧州におけるBDFの品質管理 2.3.1 BDF の製造方法 10) BDF 製造の一般的な概略工程を図3に示す。BDF は菜種油などの原料油脂とメタノール を水酸化カリウムなどの触媒を用いてエステル交換反応させ製造される。エステル交換反 応は、大気圧下で 60∼70℃と比較的温和な条件で行うことが出来るので「ホームメイド BDF」と呼ばれる少量ロットでも製造できる。高品質な BDF を得るにはエステル交換反応後 の精製工程が非常に重要となる。一般的に 1 万 t/年以下のプラントはバッチ式と呼ばれる 方法が用いられ、2 万 t/年以上の大型プラントは連続式と呼ばれ、精製工程に蒸留法が用 いられている。 触媒 メタノール ①ミキシング ⑤水洗処理 ⑥蒸留処理 バイオ ディーゼル 燃料 回収メタノール 原料 (植物油) (廃食用油) (動物油脂) ②エステル交換 反応 (粗)バイオディーゼル燃料 酸 ③中和処理 ④相分離 ⑥メタノール回収 (粗)グリセリン 前処理 触媒 メタノール ①ミキシング ⑤水洗処理 ⑥蒸留処理 回収メタノール 原料 (植物油) (廃食用油) (動物油脂) ②エステル交換 反応 (粗)バイオディーゼル燃料 酸 ③中和処理 ④相分離 ⑥メタノール回収 前処理 触媒 メタノール ①ミキシング ⑤水洗処理 ⑥蒸留処理 バイオ ディーゼル 燃料 回収メタノール 原料 (植物油) (廃食用油) (動物油脂) ②エステル交換 反応 (粗)バイオディーゼル燃料 酸 ③中和処理 ④相分離 ⑥メタノール回収 (粗)グリセリン 前処理 触媒 メタノール ①ミキシング ⑤水洗処理 ⑥蒸留処理 回収メタノール 原料 (植物油) (廃食用油) (動物油脂) ②エステル交換 反応 (粗)バイオディーゼル燃料 酸 ③中和処理 ④相分離 ⑥メタノール回収 前処理 図3 バイオディーゼル製造 概略工程図 2.3.2 BDF 製造工場での品質管理例 ドイツとオーストリアの比較的新しい大型BDF製造工場が製造工程の品質管理に用い ている試験項目例を表5に示す。最終的に仕上げられた BDF の EN14214 規格項目試験は他 の分析試験機関などを利用して実施されている。

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表5 BDF 製造工場での品質管理試験項目(例) 原料 エステル化工程 精製工程 酸価、pH ○ ○ ○ 遊離脂肪酸 ○ ○ リン量 ○ ○ 水分 ○ ○ グリセリド量 ○ ○ CFPP ○ 酸化安定性 ○ 2.4 欧州のBDF普及促進策(優遇税制) 欧州連合加盟国は、2003 年 5 月 8 日の欧州指令 2003/30/EC1)でバイオ燃料やその他の再 生可能燃料の導入目標を設定し、促進することになっている。導入目標値として2005 年末までに輸送用燃料の2%以上、2010年末までに5.75%以上が設定されている。 そして毎年 6 月 1 日までに各国ごとのバイオ燃料などの導入計画などを欧州委員会に提出 することが求められている。しかし、この欧州指令は強制力を持っていないので加盟国の 取り組みには差があり、2005 年 2 月時点で25ヶ国中9カ国が正式な報告書を提出してい ない状況にあった。BDF 普及促進策として用いられている欧州主要国の優遇税制の実態を 表6に示す。 表6 欧州主要国BDFに対する優遇税制 国名 燃料消費税 (ユーロ/L) BDF 優遇税制 (ユーロ/L) 備考 ドイツ 0.470 0.470 優遇税制(消費税)は 2009 年末まで 2004 年 1 月から BDF 混合燃料にも適用 フランス 0.417 0.330 生産割当量 387,500t/年 イタリア 0.403 0.403 生産割当量 300,000t/年 オーストリア 0.310 0.310 2005 年から新制度導入(表は旧制度数 値) デンマーク 0.370 なし BDF はドイツやスウェーデンへ輸出 英国 0.682 0.300 優遇税額が低くまだ普及していない スペイン 0.294 0.294 ひまわり油利用のため国内ヨウ素価規 格を 140 以下に変更 スウェーデン 0.368 0.368 優遇税制は 2008 年末まで 2.5 BDF 混合燃料の国内品質規格化と課題 わが 国の 自動 車用デ ィー ゼル 燃料(軽 油)の 品 質は揮 発油 等の 品質の 確保 に関 する 法律 (品質確保法)によって規定されているが、BDF の混合を想定した項目は含まれていない。

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軽油規格に BDF の規格項目を反映する方法として、以下に示す2通りが考えられる。 2.5.1 BDF の性能項目を軽油規格に加えて改訂する方法 BDF 混合軽油の品質を考える場合、現在の品質確保法同様に最終段階で品質を規定する ことが好ましい。前提条件として BDF 混合量を5%以下と仮定した場合の課題を示す。 (イ)現在の品質確保法の軽油強制規格および標準規格項目 硫黄分、セタン指数、蒸留性状、残留炭素分 動粘度、流動点、CFPP などの項目は特 に変更する必要はないと考えられる。流動点や CFPP などの低温性能は混合量が 5%以下 であれば軽油の性能に大きく依存すると思われる。しかし、わが国の場合使用する BDF が特定できないので低温流動性向上剤を含めた幅広い検討が必要と思われる。 (ロ)新たに反映される可能性のある項目 BDF を5%混合する場合、エステル分含有量、水分、全夾雑物量などBDF由来の試験 項目の課題を表7にまとめて示す。多くの試験項目で検出限界以下の成分量を分析する ことになり、精度の良い試験方法の確立が必要となる。 表7 欧州主要規格項目を軽油規格に反映する場合の課題(BDF5%以下と仮定) 項目 基準案 課題 エステル含有量 wt% (5 以下) 欧州では赤外線吸収スペクトル法が採用されている が、BDF と植物油の識別ができない。 ガスクロ法(EN14331)などの利用も検討することが 必要。 水分 mg/kg (200 以下) BDF は吸湿性があるが 5%以下の混合ならば影響力は 少ないと思われる。EN590 は 200 以下となっている。 規格化の必要性も含めた検討が必要。 全夾雑物量 mg/kg (24 以下) 軽油規格には従来から設定されていないので規格化 の必要性も含めた検討が必要。 酸化安定性 g/m3 (25 以下)

EN14214 と EN590 では試験方法が異なる。Rancimat 法酸化安定性試験を望む声があるが試験方法の精度 も含めた検討が必要。 酸価 mgKOH/g (0.025 以下) 酸価と腐食などとの関係を明確にする必要がある。 また、EN14104 試験の適用範囲が 0.1‾1.0mgKOH/g と なっているので精度を含めた検討が必要。 リノレン酸メチルエステル量 wt% (0.6 以下) EN14103 試験の適用範囲が 1‾15%となっているので精 度を含めた検討が必要。 多価不飽和脂肪酸 エステル量 wt% (0.05 以下) EN14214 でも試験方法が規定されていない。極微量 濃度の分析試験方法の確立が必要。 メタノール含有量 wt% (0.01 以下) EN14110 試験の適用範囲は 0.01%∼0.5%なので精度 を含めた検討が必要。 モノグリセリド wt% (0.04 以下) EN14105 はココナツ油やパーム油の分析にはピーク

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ジグリセリド wt% (0.01 以下) トリグリセリド wt% (0.01 以下) 総グリセリン wt% (0.0125 以下) 遊離グリセリン wt% (0.001 以下) が重なるので利用できない。分析精度も含めた検討 が必要。 アルカリ金属 (Na+K) wt% (0.25 以下) ア ル カ リ 土 類 金 属 (Ca+Mg) wt% (0.25 以下) 試験方法の適範囲は 1mg/kg 以上なので極微量の金属 分を精度良く測定する試験方法の確立が必要。 リン含有量 mg/kg (0.5 以下) EN14107 の適用範囲は 4‾20mg/kg となっているので 精度も含めた検討が必要。 基準値案の( )は EN590 または EN14214 規格値を 5%反映した数値 2.5.2 BDF 混合軽油規格と混合に用いる BDF 規格の2本立てとする方法 欧州のように BDF を軽油の基材と位置付け、BDF 規格と BDF 混合軽油規格の 2 本立てで 品質を確保する方法。このような方式をわが国で利用する場合、欧州で実績のある規格、 試験方法などを利用できるという利点があるが、わが国では原料の特定が難しいので混合 基材として使用される BDF 規格の制定、その規格合格品が間違いなく混合に使用されると いう品質管理体制、BDF の混合量の規定などの確立などが必要になる。

3.まとめ及び今後の課題

(1)EN14214 規格は、長年利用されてきた菜種油 BDF を意識した規格となっている。 (2)EN590(2004) 規格は EN14214 規格に合格した BDF を5%以下で混合することを認めた 規格となっているが、混合された燃料の分析から BDF が EN14214 規格に合格していた ことを確認することは出来ない。 (3)ドイツでは BDF の製造、販売業者の集まりである AGQM が市場の BDF の品質管理と普 及を推進し効果を上げている。 (4)欧州では燃料消費税の優遇措置によって BDF の普及が進められている。しかし、そ の取り組み方は国によって異なる。 (5)BDF に由来する項目を品質確保法の軽油規格に反映させるためには微量の成分を精 度良く測定する試験方法の確立が必要となる。 (6)BDF 規格を制定しその規格合格品を軽油規格に反映させるためには幅広い原料に適 応した BDF 規格の制定と BDF の混合量の規定などが必要となる。

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引用文献

1)日本貿易振興機構報告書;欧州におけるバイオディーゼル燃料性状規格 2004 年 3 月 2)欧州規格委員会指令 M/245

3)M. Mittelbach, H. Enzelsberger ;J. Am. Oil Chem. Soc.76(1999)545-555 4)M. Mittelbach;バイオディーゼル会議資料 11 月 17 日∼18 日(2004)

5)Stability of Biodiesel;Presentation of the BIOSTAB Project Results July 3(2003) 6)AGQM 提供資料

7)Bosch 社提供資料

8)スペイン燃料法令:BOE num 307 45961

9)PEC バイオディーゼルの性状に関する調査報告書:PEC-2003L-02

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