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Ⅰ 1 雇用調整実施の判断基準 雇用調整とは 経営の要諦の1つは 売り上げと 雇用量とのバランスをとることです バランスが適度に保たれることによって会社は順調に成長発展していきます 売上が少なくなり しかも そのような状況が当分の間続くと見込まれるときは それに合わせて雇用の量を調整することが必要で

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(1)

雇用調整の

実務

労務管理

Ⅰ 雇用調整実施の判断基準

1.雇用調整とは 2.会社存続のための雇用調整

Ⅱ 雇用調整のステップ

1.トラブルのもととなる労務問題 2.主な労務問題

Ⅲ 雇用調整を実施する際の注意点

1.雇用調整の段階的実施 2.新規採用の停止 3.非正規従業員の削減 4.正規従業員の賃金引下げ 5.退職者の募集 6.整理解雇

Ⅳ 一時帰休による雇用調整

1.一時帰休の実施方法 2.一時帰休に伴う雇用調整助成金の活用法

(2)

労務管理

雇用調整の実務

経営の要諦の1つは、売り上げと、雇用量とのバランスをとることです。バランスが適 度に保たれることによって会社は順調に成長発展していきます。 売上が少なくなり、しかも、そのような状況が当分の間続くと見込まれるときは、それ に合わせて雇用の量を調整することが必要です。経営の判断に基づいて雇用量を調整する ことを「雇用調整」といいます。 経営を取り巻く環境は、常に良好であるとは限りません。 世間一般の景気が悪くなったり、売上が減少するなど、経営環境が厳しくなると、どう しても売上に比較して雇用に余剰が生じてしまいます。 また、世間一般の景気が良好でも、経営者の経営判断が適切でないために経営が不振に 陥入り、余剰人員が生じることもあります。 どの業界においても会社間の競争は激しく、そのような変化と競争の時代には、経営者 が好むと好まざるとにかかわらず、売上が大きく落ち込んだり、あるいは長期にわたって 顧客数が減少することがあります。 雇用が過剰になったときは、適切に、雇用調整策を講じることが必要です。過剰雇用の 状態を放置しておくと、人件費の負担が重くなり、会社の存続が危機にさらされます。 経営を取り巻く環境は、常に変化しています。 雇用調整は、変化と競争の時代において、会社が存続していくためのやむを得ない措置な のです。 なお、整理解雇の実務の詳細については「労務管理 企業のリスク防止対策・整理解雇 の実務」において触れられていますので、そちらもご参考ください。

雇用調整実施の判断基準

雇用調整とは

会社存続のための雇用調整

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労務管理

雇用調整の実務

最近の金融危機の影響を受けて、雇用環境は非常に厳しい状況となっています。その一 方で、労働者の権利意識は高まり、労働条件や待遇面で争いとなるケースが増えるととも に、トラブルが複雑化し、適切な解決策が見出せず長期化する傾向にあります。 今後も人員削減や賃下げなどを検討せざるを得ない企業も増えることが予想されます。 そこで、解雇や雇止め、内定取り消し、賃金の引き下げなどといった社会問題化している 労務課題とその実務対応について解説していきます。 雇用対策は、「人件費抑制・削減」と「人材活性化」の2つに大別 できます。「人件費抑制・削減」は経費削減策、「人材活性化」は価 値創出策というとらえ方ができます。このうち「人材活性化」は、 中長期的な人材戦略として取り組むべき課題であり、不況時だけの 人事施策ではありません。また、即効性のある対策にはなりません。 即効性のある対策は、経費削減策、つまり人件費抑制・削減という ことになります。 主な人件費抑制・削減策は、以下の通りです。 ■主な人件費抑制・削減策 ●新規採用抑制、退職不補充 ●賃上げ抑制 ●内定取消 ●賞与額ダウン ●賃金引下げ ●出向 出向とは、元の会社との労働契約を継続したまま、別の会社の指 揮命令下に入る形態です。一方、元の会社との労働契約を終了させ、 別の会社と新たな労働契約を結ぶ形態が転籍です。転籍については、 本人の同意が必須ですが、出向については同意を得ることが望まし いものの、就業規則に規定されていれば十分と考えられます。

雇用調整のステップ

トラブルのもととなる労務問題

主な労務問題

出向・転籍

人件費

抑制・削減

の必要性

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労務管理

雇用調整の実務

雇止めとは、有期雇用契約の期間が満了した時点で、契約を更新 しないことを指します。契約事項を実行するだけのことですが、そ れまで契約更新を繰り返してきたなど一定の要件に該当する場合は 解雇とみなされることもあります。解約とは、契約期間が残ってい ても労働契約を終了させることで、この場合は解雇になります。 割増退職金など、退職に一定のインセンティブを与えて退職を促 すのが早期退職優遇制度です。これには、次の 2 つのパターンがあ ります。 ●恒常的な制度として設ける 例)○歳~○歳で退職する場合は 2 割増の会社都合退職金を支 払う ●期間を区切って実施する 例)募集期間○○月~○○月、募集人員○○人。この間に退職 する社員には 5 割増の会社都合退職金を支払う 退職勧奨は、早期退職優遇制度よりさらに踏み込んだ制度で、整 理対象の社員を決め、退職を促すというもので、いわゆる「肩たた き」です。ただし、退職する、しないはあくまでも本人の任意であ るという点には注意が必要です。退職を強要したり、執拗な退職勧 奨を行うと、不法行為として損害賠償責任を負わされることがあり ます。 経営上の理由で解雇することを整理解雇といいます。整理解雇を 実施するには要件があり、これを整理解雇の4要件といいます。要 件を満たしていない整理解雇は無効とされる可能性があります。

早期退職優遇

退職勧奨

整理解雇

非正社員の

雇い止め・解約

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労務管理

雇用調整の実務

雇用調整は段階を踏んで行っていかなければなりません。 前段階を実施したものの経営状態が改善しなかったとき、初めて次の非正規従業員の削 減へと進むべきです。 新規採用の停止に特に法的な基準はありませんが、採用内定を取り消す場合には気をつ ①新規採用の停止 ②非正規従業員の削減 ③正規従業員の賃金引下げ ④退職者の募集 ⑤整理解雇 新規採用募集の停止 内定取消 契約社員の雇い止め 契約社員の解約 派遣社員の解約 給与引下げへの個別合意 就業規則の不利益変更 早期退職優遇制度 退職勧奨 賞与のカット

雇用調整を実施する際の注意点

雇用調整の段階的実施

新規採用の停止

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労務管理

雇用調整の実務

ける必要があります。採用内定とは、「解約権付きの労働契約」の成立と解されます。 使用者が内定者に対して内定通知書を送付することは、労働契約の申込みに対して承諾 したこととなり、これによって労働契約が成立します。 ただし、入社日までの間に事情の変更かありうるため、使用者側に解約権が留保されて いるということになります。内定取消のポイントは、内定時に交わす誓約書です。「内定取 消事由」はあらかじめ誓約書に書いておくべきです。そこに書いていない理由で内定取消 とすると、「無効」と判定される可能性があります。 ■内定取消を有効にするための条件 ●内定時に交わす誓約書に内定取消事由を書いておくこと ●会社の経営状況、今後の展望を内定者にきちんと説明すること ●採用内定当時知ることができない事実、理由があること ■内定取消通知書の例 ※①内定通知書において、内定取消事由としてどのような事由を通知していたか明記。 ※②内定を取り消す具体的根拠となる事由を明記します。経営状況の急激かつ予測不可能な悪化が生じても、直ちに内 定取消を行ったのではなく、他の取りえる手段を講じ、最大限の経営努力をしてきたことを説明。 平成○○年○月○日 ○○○○殿 株式会社 ○○○○ 代表取締役 ○○○○ 内定取消通知書 拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 当社は貴殿に対し、平成○○年○月○日付の内定通知書をもって、貴殿の採用を内定する旨 の通知をいたしました。 上記内定通知書において、内定時に想定しえなかった経済情勢の急激な悪化により人員削減 の必要性が生じた場合には、内定を取り消すことがある旨の通知をしておりました(※①) 当社は、貴殿に対して内定通知書を発出して以降、当特には想定し得なかった経済情勢の急 激な悪化により、業績が悪化し、経営の危機に陥りました。当社は、残業規制、一時休業、役 員報酬・従業員賞与のカット、資産の売却、有期雇用労働者の雇止めなどの合理化を進めてい ますが、当社の経営の危機は想定の範囲を遥かに超える深刻なものであり、かかる合理化のみ では到底十分ではありません。(※②) 以上の経緯により、当社としては誠に遺憾ながら、貴殿については留保していた解約権を行 使せざるを得ず、本通知書をもって、貴殿の内定を取り消すことをご通知申し上げます。 当社としては、貴殿が早期に、他のしかるべき企業に就職されることを期待申し上げます。 敬 具

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労務管理

雇用調整の実務

実際に内定取消を行う場合は、会社の経営状況など、内定取消をせざるを得なくなった 事情をきちんと説明する責任があります。説明責任を果たすことと、誠意ある対応が最大 のポイントになります。 いわゆる「お詫び料」についてですが、内定取消にあたって金銭の支払が義務づけられ るわけではありません。ただし、内定取消が違法と判定された場合、損害賠償を命じられ る可能性はあります。 (1)契約社員の雇止めの予告 労働契約の形態には、期間の定めのない契約と、期間の定めのある「有期労働契約」と があります。前者が主に正社員に適用されるのに対し、後者は、パートタイマー、契約社 員などに一般的な契約形態です。 有期労働契約で、会社が契約期間の満了をもって労働契約を終了させることを「雇止め」 といいます。雇止めは、元々の定め通りに契約を終了させる行為ですから、違法ではあり ません。しかし、雇止めの予告が必要とされる場合があります。 ■雇止めの予告が必要とされるケース 有期労働契約を3回更新 or 1 年を超えて継続勤務 ↓ 30 日以上前に更新しないことを予告しなければならない 雇止めは、契約に定めてあった通りの行為ですが、状況によってはそれが無効とされる ことがあります。その場合、雇止めは解雇と同等に扱われます。したがって、いわゆる「解 雇権濫用の法理」が類推適用され、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である と認められない場合は、無効とされます。 雇止めの可否はどのような基準で判断されるか、以下に示します。 ■雇止めの可否の判断基準 ●雇用の臨時性・常用性 ●更新の回数 ●雇用の通算期間 ●期間契約の更新管理の状況 ●雇用継続の期待をもたせる言動・制度 等を総合的に判断

非正規従業員の削減

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労務管理

雇用調整の実務

会社は、雇用契約の雇用管理がどのようになっているか確認し、上記基準に照らして問 題がありそうなら、早急に是正策を講じる必要があります。 ■雇止め通知書の例 ※①これまでの契約締結・更新の状況および期間満了の年月日を記載。 ※②雇止めをせざるをえない理由、すなわち企業の業績悪化の状況、特に当該労働者の所属業務についての受注停止の 事実を具体的に記載。 ※③現在の契約期間の満了をもって雇止めすることを通知。 (2)契約社員の期間途中での解約 有期労働契約には、次の3つの意味があります。 ①契約期間中、労働者はやむを得ない事由がない限り退職できない ②契約期間中、使用者はやむを得ない事由がない限り労働者を解雇できない ③労働契約期間の満了によって労働契約が終了する 契約期間途中の解約は、「解雇」になります。そして、会社はやむを得ない事由がない限 り、契約期間の途中で労働契約を解約することはできません。労働契約法は第 17 条第 1 項で、「会社はやむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間 において、労働者を解雇することができない」と定めています。では、どのような場合が やむを得ない事由に該当するかですが、これは、解雇権濫用法理(客観的に合理的な理由 があること、社会通念上相当であること)より狭いと解されています。 平成○○年○月○日 ○○○○殿 株式会社 ○○○○ 人事部長 ○○○○ 通 知 書 貴殿と当社とは、平成○○年○月○日に期間○年での有期雇用契約を締結し、平成○○年○ 月○目に更新されておりますが、平成○○年○月○目をもって期間満了となります。(※①) 当社は、昨年より業績が悪化しているため、人件費の抑制・削減を進めており、 特に貴殿の従事されている○○業務については業務の受注自体を停止しております。(※②) つきましては、貴殿につきましては、平成○○年○月○日の期間満了をもって雇用関係を終 了させていただきます(※③)ので、この旨ご通知申し上げます。 以上

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労務管理

雇用調整の実務

■契約期間途中で解約するためには (3)派遣社員の期間途中での解約 労働者派遣契約の中途解除によって、派遣労働者の雇用が失われることを防ぐため、派 遣先の都合により派遣契約を解除する場合には、以下の措置を取ることが派遣先の義務と なります。(派遣契約時にこれらの措置について明記しなければなりません) ①派遣労働者の新たな就業機会の確保 ②休業手当などの支払いに要する費用の負担等を行うこと また、やむを得ない事由により、派遣労働者を解雇する場合は、派遣先による解除の申 し入れが相当の猶予期間をもってされなかったことにより、派遣元事業主が解雇の予告を しないときは 30 日分以上(解雇予告をした日から解雇までの期間が30日未満の時は解 雇の30日前から解雇予告までの日数分以上)の損害賠償を行わなければなりません。 法律上は、期間の定めがない契約よりも 期間の定めがある契約の方が雇用が保障されている 契約期間途中での解約は、正社員の解雇よりハードルが高い 合理的な解約理由が必要 (民法 628 条) 損害賠償責任 がある

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労務管理

雇用調整の実務

(1)賞与カットの合理性 「賞与」も、就業規則や労働契約に定めがあれば、賃金となります。しかし、会社の支 払義務が具体的にどうなるかは、就業規則の定め方によって違ってきます。 ■就業規則での賞与の規定の仕方 ①『賞与は毎年 6 月 10 日と 12 月 10 日にそれぞれ基準内賃金の 2 ヵ月分を支払う』 ・その規定にしたがって、賞与を支払わなければなりません。 ・賞与の月数を、上記規定より少なくする、あるいはゼロにするという場合は、就業 規則の不利益変更の法理が適用されます。 ②『賞与は会社の業績および本人の勤務成績により、原則として毎年 6 月と 12 月に支 払う』 ・支給額、支給月数や支給日を会社が決めたとき、初めて具体的な支払義務が 発生します。 上記②のような定めであれば、賞与を不支給にしても法的には問題がありません。ただ し、これまでずっと賞与を支給していて、急に支払わないことになる場合は、早い時期に 従業員にその理由をよく説明し、理解を得られるようにするべきです。 (2)賃金引き下げと不利益変更の考え方 賃金減額のように、労働条件を引き下げることは、労働契約の不利益変更になります。 これは雇用者・被雇用者間の契約ですから、当事者の合意が基本です。ただし、一定の 要件を満たせば、就業規則を変更することによって、個々の労働契約も変更されたとみな すことができます。その要件とは、次の2つです。 ●就業規則変更の内容が合理的である ●変更後の就業規則を周知している

正規従業員の賃金引下げ

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労務管理

雇用調整の実務

■就業規則不利益変更の判断基準 ●労働者の受ける不利益の程度 ●労働条件の変更の必要性 ●変更後の就業規則の内容の相当性 ●労働組合等との交渉の状況 ●その他の就業規則の変更に係る事情 賃金を引き下げる場合も、上記の枠組みで考えることになります。実務的に、賃金を引 き下げるための条件は以下の通りとなります。 ■賃金引き下げの条件 ●会社の経営状況、今後の展望を従業員によく説明すること ●引き下げ期間を限定すること ●引き下げの程度を明確にすること ●役員も役職者も含めて全員で負担すること ●就業規則を変更すること 就業規則の変更例を以下に示します。 ■就業規則の変更例 (3)手当の見直しから始める 手当も、就業規則に支給条件等が定められていれば労働の対価としての賃金になります。 したがって、手当の廃止、引き下げについても、就業規則不利益変更の枠組みで考えなく てはなりません。手当廃止・引き下げの必要性、引き下げの程度、経過措置などの代償措 置を総合的に検討し、判断します。 諸手当は、その性格上、次の3つに分類できます。 付 記 ○○年○○月○○日から○○年○○月○○日までの期間において、 以下の通り、基本給の減額を行います。 ①部長職 10% ②課長職 7% ③一般職 5%

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労務管理

雇用調整の実務

●職務関連手当:職務手当、役職手当など、従事する業務の内容・レベルや就いている ポジションに対応した手当 ●生活関連手当:家族手当、住宅手当など、生活費の補填を目的とした手当 ●基準外手当 :時間外手当など このうち生活関連手当は、労働基準法上の位置づけは別として、労働対価性は他の手当 に比べて希薄です。特に、成果・貢献度重視型賃金が主流となる中、生活関連手当の位置 づけは相対的に低くなっています。また、家族手当、住宅手当などは、時間外手当算定の 基礎賃金から除外されています。 以上から、基本給の引き下げに比べると、生活関連手当の縮小・廃止の合理性は、認め 得る余地が大きいものと考えます。ただし、「認め得る余地が大きい」というのは、あくま でも相対的な話です。就業規則不利益変更の枠組みで判断するのが基本となります。 早期退職優遇制度とは、退職金割増などの優遇措置を講じ、早期の退職を促す制度です。 ①恒常的な制度として設ける場合、②期限を区切った時限的制度とする場合の2通りが あります。業績悪化への対応として早期退職優遇制度を実施する場合は、②の期限を区切 った方式となります。 ■早期退職優遇制度の実施のステップ ①人員削減の対象、目標値、募集時期の検討 ②退職条件の優遇措置の検討 ③組合・従業員との協議 ④希望退職制度導入の正式決定(取締役会決議) ⑤従業員への説明 ⑥従業員からの応募の受付、承認、合意書の作成 早期退職優遇制度では、退職する、しないは労働者の自由意志に任されています。その ため、高業績を上げている社員など、会社に残ってほしいと思う社員が、手をあげてくる 可能性もあります。 そういう場合を想定し、早期退職優遇制度が適用されるのは、会社が認めた社員に限定 することは可能です。その場合、割増退職金の支払も、会社が認めた者だけにするといっ た方法が考えられます。

退職者の募集

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労務管理

雇用調整の実務

(1)整理解雇の要件 経営上の理由で人員削減をする場合、整理解雇の4要件を満たすのが原則になります。 人員削減を実施する場合は、合理的な人選を行い、解雇手続きを丁寧に行うことが実務上 のポイントです。労働契約法第 16 条には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会 通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」 と定められています。したがって、解雇が有効とされるには、次の 2 つの条件を満たして いなくてはなりません。 ●客観的に合理的な理由があること ●社会通念上相当であること そして、整理解雇の場合、整理解雇の4要件を満たしているか否かが、有効か無効かの 重要な判断基準になります。 高度の経営危機にあることが必要ですが、倒産の危機に瀕してい ることまでは求められていません。合理的必要性があれば予防型整 理解雇も認められます。ただしその場合、より厳格な判断が必要です。 配置転換・出向、新規採用の中止、昇給停止、賃金引下げ、一時 帰休、希望退職募集といった解雇回避努力を尽くしたかどうかが問 われます。しかし、この解雇回避努力の内容については企業の裁量 権も認められており、例えば希望退職者の募集を行わなかったこと をもって解雇回避努力を怠ったとはいえないとした判例もあります。 対象者の選定基準として、次のポイントがあげられます。 ●解雇しても生活への影響の少ない者 ●企業再建、業績向上への貢献度の少ない者 ●雇用契約で企業への帰属性の低い者

整理解雇

解雇回避

の 余地がないこと

人員削減

の必要性

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労務管理

雇用調整の実務

一般的には、年齢、人事考課などが指標となります。能力や成果 にもとづく人事が主流となる中、年齢基準は合理性を失いつつあり ます。しかし、既に年金支給開始年齢に達していて職を失っても生 活には困窮しない者と、働き盛りとして一家を支えている者とで判 断が異なっても、上記①の基準に照らすと合理性はあります。また、 人事考課という「過去の結果」だけでなく、将来への期待や職務転 換の可能性なども判断基準として有効です。以上から、次のような 事項を基準に総合判断するのが妥当と考えられます。 ●従事する職務の現在価値および将来の価値および存続の可能性 ●将来従事しえる職務 ●人事考課など、これまでの貢献度 ●年齢、生活への影響度 ●雇用形態 これには、整理順序、整理方法、説明責任の 3 つがあげられます。 ①整理順序 ②整理方法……希望退職などの解雇回避努力の施策を取った上 で、整理解雇に踏み切るのが原則です。 ③説明責任……労働組合や従業員に対して、経営情報を開示し、 会社の状況や整理解雇がやむを得ない措置である ことを理解してもらいます。

対象者の

選定基準の 合理性

解雇手続の

妥当性

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労務管理

雇用調整の実務

以上から、整理解雇までのステップは、次のようになります。 ■整理解雇のステップ (1)人員削減計画を立てる ①業績予測を立てる ・受注量、生産量の推移及び予測 ・売上、利益の推移及び予測 ・経費削減必要額及び残業削減など人員削減以外の手段によって可能な削減額 ②解雇人数及びそれによる業績改善効果を見積もる ③解雇対象者を選定する ④解雇対象者への経済的支援、再就職支援措置を検討する (2)従業員説明会を開き、経営状況についての理解を求める (3)解雇回避措置を実施する ・早期退職優遇措置 ・退職勧奨 (4)指名解雇 ・1ヵ月以上前に対象者と面談を行い、理解を求める

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労務管理

雇用調整の実務

一時帰休とは、「雇用関係を維持しつつ、就業時間の全部または一 部について、従業員に自宅待機(休業)を命ずること」です。従業 員との労働契約の解消や変更を行わない点で、解雇や賃金引き下げ と比べて穏健な方策であるといえます。また、整理解雇の4要件の うち、解雇回避努力について、一時帰休を検討・実施したか否かが 要件充足の判断材料となります。 人件費削減を目的とした一時帰休は、労基法 26 条の「使用者の 責に帰すべき事由」は存在すると考えられますので、休業手当を支 払うことになります。 休業手当は、「平均賃金の 100 分の 60 以上」の金額になります。 経営状況の悪化による休業を行う場合、一定の要件を満たせば、「雇 用調整助成金」や「中小企業緊急雇用安定助成金」を受けることが できます。 ●実施条件充足の確認 ●実施対象部門の決定 ●一時帰休者の選択 ●一時帰休の期間の選択 ●賃金カット割合、その他の条件の検討 ●組合・従業員との協議 ●一時帰休制実施の正式決定 ●従業員への書面の配布と実施

一時帰休の実施方法

一時帰休による雇用調整

一時帰休

の 実施手順

一時帰休

の 考え方

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労務管理

雇用調整の実務

景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なく された事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによっ て、従業員の雇用を維持した場合に助成されます。 受給額は、休業を実施した場合、事業主が支払った休業手当負担額、教育訓練を実施し た場合、賃金負担額の相当額に次の(1)の助成率を乗じた額です。ただし教育訓練を行っ た場合は、これに(2)の額が加算されます。(ただし受給額の計算に当たっては、1人1日 あたり7,810円を上限とするなど、いくつかの基準があります。) 休業・教育訓練の場合、その初日から1年の間に最大100日分、3年の間に最大15 0日分受給できます。出向の場合は最長1年の出向期間中受給できます。 助成内容と受給できる金額 中小企業 中小企業以外 ①休業を実施した場合の休業手当または教育訓練を実施 した場合の賃金相当額、出向を行った場合の出向元事業 主の負担額に対する助成(率) ※対象労働者1人あたり7,810円が上限です。 (平成27年8月1日現在) 2/3 1/2 ②教育訓練を実施したときの加算(額) (1人1日当たり) 1,200円

一時帰休に伴う雇用調整助成金の活用法

参照

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