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中川 正 山口行正

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日本小児循環器学会雑誌 5巻2号 262〜270頁(1989年)

心臓要管理者の小・中・高校在学中の予後

(平成1年4月25日受付)

(平成1年7月4日受理)

大阪府立成人病センター循環器検診第3科

    北 田  実 男

  大阪市立小児保健センター循環器科

中川 正 山口行正

key words:学校心臓検診,心臓要管理者,年間総死亡率,年間急死率,死因

      要  旨

 学校心臓検診で発見された心臓要管理者,延べ87,576人年の小・中・高校在学中の予後調査によって 次のような結果を得た.

 1.年間総死亡率は前期(昭和37〜48年度)が2.65%・,後期(昭和49〜60年度)が1.64%・であった.こ れを同期間,同年齢の対照と比較すると,前期,後期とも対照の5〜6倍であった.

 2.年間急死率は前期が0.37%・,後期が0.55%・であった.対照の急死率は前期,後期とも約0.03%。であ り,それとの比でみても後期の方が高い.その最大の原因は後期に先天性心疾患術後遠隔期の急死が急 増したことである.

 3.後期の成績を管理区分別にみると,死亡率はE(最も軽い区分):対照の1.3倍,D:7倍, C:60倍,

B(通学例のうち最も重い区分):200倍であり.急死率はE:対照と同じ,D:40倍, C:200倍, B:950 倍であった.

 4.管理区分EまたはDで急死した病型で多かったのは不整脈:4例,先天性心疾患術後遠隔期:2 例などである.

 5.以上の結果からみると,現行の心疾患管理区分の判定基準は概ね妥当であるが,不整脈と先天性心 疾患術後遠隔期の症例については再検討の余地がある.同時に管理指導のあり方についての再検討も必 要である.

      緒  言

 学校心臓検診は昭和48年5月の学校保健法施行規則 の改正によって義務化されて以来(実質的な義務化は 昭和49年度から)すでに15年経過した.私達は義務化 前から学校心臓検診を実施しており,発見した心臓要 管理者の数は昭和60年度末現在で延9万人を越える.

 この間に疾病構造は大きく変化し,保健医療環境は 著しく改善された.最近では心疾患患児の体力づくり が社会的要請としてますます重要視されるようにな り,患児に対する運動制限の緩和が求められている.

別刷請求先:(〒537)大阪市東成区中道1−3−3      大阪府立成人病センター  北田 実男

その要望に応えるためには,現行の管理区分判定基準 や管理指導のあり方を再検討する必要がある.その基 礎資料とするため,心臓要管理者の小・中・高校在学 中の予後調査を行ったので,その結果を報告する.

        対象および方法

 大阪府立成人病センターまたは大阪市立小児保健セ ソターが実施している,小・中・高校の学校心臓検診 で心臓要管理者と判定し,追跡してきた症例のうち,

個人データーが保存されている昭和37年度以後の症例 を対象にした.症例数は昭和37〜48年度(前期)が 38,047人年,昭和49〜60年度(後期)が49,529人年で ある.この期間中に管理区分の判定基準が数回改訂さ れたので,ここでは日本学校保健会心疾患委員会の基

(2)

準1)を基に,Weidmanらの報告2)を参考にしてf乍成し た私達の基準3)によって再評価し,統一した上で集計

した.

 追跡検診欠席者調査,転校・進学・就職先調査など によって死亡例を抽出し,該当例の家庭,学校,医療 機関,さらに必要に応じて監察医事務所,警察署など への訪問調査を行った.関係者から聞き取り調査を行 うとともに,関連資料の提供を受けて,死亡例の生前 の生活実態,管理指導状況,受療状況,死因などにつ いて検討した.

      結  果

 表1は心臓要管理者の小・中・高校在学中または同 年齢における年間総死亡率と年間急死率を前期と後期 に分けて示したものである.前期より後期の方が総死 亡率は低いが,急死率は逆に高い.

 表2は疾患群別に年間総死亡率と急死率をみたもの 表1 心臓要管理者の年間総死亡率と年間  急死率

       (小・中・高校生)

前  期 後  期

患者数(人年) 38,047 49,529

     No.

総 死 亡

101 81

%。 2.65 1.64

     No.

急   死

14 27

%。 0.37 0.55

前期:昭和37〜48年度,後期:昭和49〜60年度

である.総死亡率が最も高いのは前期,後期とも心筋 疾患である.前期と後期で差が大きいものをあげると,

後天性心臓弁膜症は前期は高かったが,後期は0であ る.特殊心疾患(全身性疾患に伴う二次性心疾患)は 前期が0で,後期が高い.先天性心疾患は手術を受け ていないものも,術後例もともに後期の方が低い.

 急死率は心筋疾患が前期,後期とも抜群に高い.そ の他の心疾患の急死率を後期でみると,先天性心疾患 の術後,同術前,特殊心疾患などが高い.

 表3は死亡例,急死例ともに症例数が最も多い先天 性心疾患の非手術例を病型別に分けて,年間総死亡率 と急死率をみたものである.前期,後期を通じて総死 亡率が特に高いのはFallot四徴症とEisenmenger症 候群である.その他の病型で前期において高いのは大 動脈狭窄症,後期において高いのは大動脈弁閉鎖不全 を続発した心室中隔欠損症である.

 急死率は前期,後期を通じてみると大動脈狭窄症が 最高である.後期だけでみるとEisenmenger症候群が 最も高く,次いで大動脈弁閉鎖不全を続発した心室中 隔欠損症,大動脈狭窄症,Fallot四徴症の順である.

 表4は年間総死亡率と急死率を管理区分別にみたも のである.総死亡率は前期,後期とも管理区分が重く なるほど急上昇している.急死率は管理区分による較 差がさらに大きい.

 表5は死亡例数が最も多い先天性心疾患の死因を重 症度別,年代別にみたものである.前期,後期を通じ てみると手術死が最も多く,次いで多いのは急死であ 表2 心臓要管理者の年間総死亡率と年間急死率

(小・中・高校生)

総 数

先天性

心疾患 後臓天弁 性膜 心症

筋疾患 特心 殊疾  患

心心 電肥 図大

X心

線拡  大

高血圧 起調 立節 性障  害

リ熱 ウの マ既 チ往

川既 崎往

そ経 の過

他観・察

術前 術後

    前期患者数

38,047 6,930 833 2,029 316 601 3,453 291 1,670 394 3,664 17,039 X 827

(人年)   後期

49,529 8,071 5,373 1,019 442 625 11,585 1,907 2,053 601 5,263 7,904 2,900 1,786

前期 101 48 5 25 4 0 5 0 2 1 1 7 × 3

 死 亡 No

  後期 81 32 17 0 9 6 6 0 1 2 3 3 2 0

前期 2.65 6.93 6.00 12.32 12.66 1.45 120 2.54 0.27 0.41 × 3.63

%。

  後期 1.64 3.96 3.16 20.36 9.60 0.52 0.49 333 0.57 0.38 0.69

前期 14 7 0 2 3 0 2 0 0 0 0 0 × 0

No  後期 27 9 8 0 5 1 3 0 1 0 0 0 0 0

急  死

前期 0.37 1.01 0.99 9.49 0.58 ×

%。

  後期 0.55 1.12 1 49 11.31 1.60 0.26 0.49

前期:昭和37〜48年度,後期:昭和49〜60年度

(3)

264−(64) 日本小児循環器学会雑誌 第5巻 第2号 表3 先天性心疾患(術前)の病型別年間総死亡率と年間急死率

(小・中・高校生)

総 数

VSD VA

SDR十

ASD ECD PDA

細畠留雪亨

PS AS TOF

日氏

前期 6,930 2,416 67 1,211 152 633 38 502 68 212 1,631

患者数

(人年) 後期 8,071 3,848 47 1,330 106 316 67 923 154 108 1,172

前期 48 12 0 3 2 1 1 2 5 8 14

No    後期 32 5 2 1 1 3 2 0 2 8 8

前期 6.93 4.97 2.48 13.16 1.58 26.32 3.98 73.53 37.74 8.58

%。

    後期 3.96 1.30 42.55 0.75 9.43 9.49 29.85 12.99 74.07 6.83

前期 7 0 0 0 0 0 0 0 2 1 4

No    後期 9 1 1 0 0 1 2 0 2 1 1

急死

前期 1.01 一 一 一 一 一 29.41 4.72 2.45

%。

    後期 1.12 0.26 21.28 3.16 29.85 12.99 9.26 0.85

VSD:心室中隔欠損症 PDA:動脈管開存症 ASD:心室中隔欠損症 AS:大動脈狭窄症

AR:大動脈弁閉鎖不全症 PS:肺動脈狭窄症 ECD:心内膜床欠損症 TOF ファロー四徴症

前期:昭和37〜48年度,後期:昭和49〜60年度

表4 心臓要管理者の管理区分別年間総死亡率と  年間急死率

       (小・中・高校生)

総 数 E D C B

前期 38,047 33,348 3,014 1,323 362 患者数

(人年)   後期

49,529 43,262 4β25 1,522 420

前期 101 22 16 24 39

総 死 亡 No

  後期 81 17 8 29 27

前期 2.65 0.66 5.31 18.14 107.73

%。

  後期 1.64 0.39 1.85 19.05 64.29

前期 14 0 2 5 7

No  後期 27 1 5 9 12 急  死

 前期%。

0.370.66 3.78 19.34 後期 0.55 0.02 1.16 5.91 28.57 前期:昭和37〜48年度,後期:昭和49〜60年度

る.細菌性心内膜炎は軽症例の最大の死因である.

 表6は後天性心臓弁膜症の死因である.最も多いの はリウマチ熱の再発であり,次いで多いのは慢性心不 全である.ただし,年代別にみると,後期には後天性 心臓弁膜症の死亡例は1例もない.

 表7はその他の主な心臓要管理者の死因を全期間ま

とめてみたものである.心筋疾患は13例中8例が急死,

基礎心疾患を認めない不整脈は11例中5例が急死であ

る.

 表8は急死例のみを取り出して,学年別,性別に分 けたものである.急死例は高学年ほど多く,性別では 男子が女子の2倍である.

 表9は急死例の疾患別,管理区分別の内訳である.

区分Eの急死はX線心拡大の1例のみである.区分D の急死は先天性心疾患の術後遠隔期:2例,心筋疾 患:1例,基礎心疾患を認めない不整脈:4例の合計

7例である.

 表10は急死例の発症時の行動である.運動中ないし その直後の急死が18例:44%で最も多い.しかし,睡 眠中の急死も5例あり,すべて中等症以上の先天性心 疾患またはその術後遠隔期の症例である.

 表11は急死例の発症時の行動と身体状況を組合せて みたものである.41例中17例:41%に身体状況の異常 がみられた.身体状況が平常と変らなかった24例中12 例は運動中ないしその直後に急死したものである.

 表12は管理区分別に急死発症時の行動をみたもので ある.D以下の比較的軽い区分で急死した8例中7例 は運動中ないしその直後の急死であり,残りの1例は 登校中に急死したものである.

(4)

表5 先天性心疾患の重症度別・年代別死因

(小・中・高校生)

慢性心不全 急  死 総

細心菌農性炎 脳脳 塞膿 栓瘍

無発 酸作素 呼感

(+)

呼感

(一)

呼感

(+)

呼感

(一)

臓手術 顧病死 外因死

総  数 102 9 6 2 6 4 4 20 40 6 5

術  後 22 1 0 0 1 2 1 7 7 1 2

軽 症 10 5 0 0 0 0 0 0 1 2 2

術 前

中等症 26 1 2 1 0 1 2 3 15 0 1

重 症 44 2 4 1 5 1 1 10 17 3 0

前 期 53 5 4 1 5 2 1 6 26 1 2

年 代

後 期 49 4 2 1 1 2 3 14 14 5 3

呼感:呼吸器感染 前期:昭和37〜48年度,前期:昭和49 一一 60年度

表6 後天性心臓弁膜症の重症度別・年代別死因

       (小・中・高校生)

慢性心不全 急  死 総

細心菌農性炎 脳 塞 栓

リ熱ウのマ再チ発

呼感

(+)

呼感

(一)

呼感

(+)

呼感

(一)

心 臓手術 巫病死

外因死

総  数 25 1 1 10 3 4 0 2 1 2 1

軽 症 9 1 0 6 0 0 0 0 0 1 1

症度 中等症 5 0 1 1 0 1 0 1 0 1 0

重 症 11 0 0 3 3 3 0 1 1 0 0

前 期 25 1 1 10 3 4 0 2 1 2 1

年 代

後 期 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

呼感:呼吸器感染 前期:昭和37〜48年度,前期:昭和49〜60年度

表7 その他の主な心臓要管理者の死因        (小・中・高校生)

急  死 慢性心不全

総数

呼感

(+)

呼感

(一)

呼感

(+)

呼感

(一)

辰病死

外因死

心 筋 疾 患 13 1 7 0 4 1 0

特殊心疾患 6 1 0 0 2 3 0

不  整  脈 11 0 5 0 1 1 4

X線心拡大

3 1 0 0 0 2 0

起立性調節障害 4 0 0 0 0 2 2

川崎病の既往 2 0 0 0 1 1 0

呼感:呼吸器感染 昭和37〜60年度

表8 心臓要管理者急死例の学年別・性別内訳

学  年  別 性  別

総数 小  学

低学年 高学年

中学 高校

総   数 41 5 7 12 17 26 15

術前 16 2 3 4 7 10 6

先天性心疾患

     術後 8 1 1 5 1 5 3

後天性心臓弁膜症 2 0 0 0 2 2 0

心  筋  疾  患 8 2 2 0 4 6 2

特 殊 心 疾 患 1 0 0 1 0 1 0

不   整   脈 5 0 1 2 2 1 4

X 線 心 拡 大 1 0 0 0 1 1 0

昭和37〜60年度

(5)

266−(66)

表9 心臓要管理者急死例の疾患別・管理区分別内  訳

(小・中・高校生)

総数 E D C B

総     数 41 1 7 14 19

     術前

先天性心疾患

16 0 0 5 11

術後 8 0 2 2 4

後天性心臓弁膜症 2 0 0 1 1

心  筋  疾  患 8 0 1 4 3

特 殊 心 疾 患 1 0 0 1 0

不   整   脈 5 0 4 1 0

X 線 心 拡 大 1 1 0 0 0

昭和37〜60年度

表10 心臓要管理者急死例の疾患別・急死時の行動       (小・中・高校生)

覇史塞 歩行中

作中

位中 橿中㊨箆

食事中 臥位中

総     数 41 18 6 2 2 2 4 5 1

   術前

先天性心疾患

16 4 3 2 1 1 0 1 3 1

術後 8 4 1 0 0 1 0 0 2 0

後天性心臓弁膜症 2 0 0 0 0 0 1 1 0 0

心  筋  疾  患 8 4 2 0 1 0 0 1 0 0

特 殊 心 疾 患 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0

不   整   脈 5 5 0 0 0 0 0 0 0 0

X 線 心 拡 大 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0

昭和37〜60年度

表11 心臓要管理者急死例の急死時の行動と身体状況       (小・中・高校生)

 事故時の    行動

身 体 状 況

覇害鯵 歩行中

起立動作中

位中 橿史覆︶

食事中

位中

総     数 41 18 6 2 2 2 1 4 5 1

疲     労 7 3 1 0 1 0 1 0 1 0

睡  眠  不  足 3 2 1 0 0 0 0 0 0 0

呼 吸 器 感 染 7 1 2 0 1 0 0 2 1 0

平常と変わらず 24 12 2 2 0 2 0 2 3 1 昭和37〜60年度

 表13は学校管理下における急死例を発症時の学校生 活により分類したものである.体育中が5例で最も多

日本小児循環器学会雑誌 第5巻 第2号 表12 心臓要管理者の管理区分別・急死時の行動       (小・中・高校生)

  管理区分

行動 総数 E D C B

総   数 41 1 7 14 19

運動中(直後) 18 1 6 5 6

その他の覚醒時 18 0 1 8 9

睡  眠  中 5 0 0 1 4

昭年37 一一 60年度

表13 学校管理下における心臓要管理者急死例  の内訳

(小・中・高校生)

下校中 体育中

大 会

部 活

内授業

業間

総 数 19 4 3 5 2 2 1 2

    術前

先天性心疾患

5 0 3 1 0 0 1 0

術後 4 1 0 1 1 0 0 1

後天性心臓弁膜症 0 0 0 0 0 0 0

心  筋  疾  患 6 3 0 2 0 0 0 1

特 殊 心 疾 患 0 0 0 0 0 0 0 0 不   整   脈 3 0 0 1 1 1 0 0 X 線 心 拡 大 1 0 0 0 0 1 0 0

昭和37 一一 60年度

く,次いで多いのは登校中の4例である.登校中に急 死した4例中3例までが心筋疾患である.

      考  案

 学校心臓検診は義務化によって全国に普及し,検診 内容も年々充実してきたが,発見された患児に対する 管理指導には多くの問題がある.学校の管理指導体制 や保護者の対応に問題がある場合が多いが,管理区分 判定上の問題も少なくない.このような問題が起こる 最大の原因は小児心疾患の予後が十分解明されていな いところにある.

 心疾患の本来の自然歴の解明は,心臓外科の発展,

内科的治療法の進歩のめざましい現在のわが国ではも はや不可能である.したがって,今回の私達の調査研 究は,その時々の保健医療環境下における小児心疾患 の予後の解明と,その背景にある問題点の検討を目的

としたものである.

 心臓要管理者の年間総死亡率と急死率を算出する分

(6)

母には個々の患児の追跡年数(人年:patient−years)

の合計値を用いた.心臓要管理者全体としてみた場合,

総死亡率は前期に比べて後期の方が有意に低い.しか しこの間に対照とすべき同年代,同年齢の一般人の死 亡率も低下したので,それとの比でみた場合は,前期,

後期とも対照の5〜6倍であり,統計上の有意差はみ

られない.

 急死率は後期の方が高い.対照の急死率は私達の調 査では前期,後期とも年間約0.03%・でほぼ等しいので,

対照との比でみても後期の方が急死率は高い.その最 大の原因は後述するように,先天性心疾患術後遠隔期 の急死が後期に急増したことである.

 疾患群別に,年間総死亡率と急死率をみると表2の ようになる.総死亡率が最も高いのは,前期,後期と も心筋疾患である.その追跡症例の病型別内訳をみる と大部分が肥大型心筋症またはその疑診例であり,そ の他に少数の拡張型心筋症,慢性心筋炎およびそれら の疑診例が含まれている.Maronら4)によると,若年者 の肥大型心筋症35例を平均11.5年間追跡した調査で は,年間総死亡率は約27%・である.私達の調査の結果 はそれよりも低いが,調査対象を肥大型心筋症の確診 例に限るとMaronらの成績とほぼ同じである.

 心筋疾患の次に死亡率が高いのは,前期では後天性 心臓弁膜症,後期では特殊心疾患である.特殊心疾患 にはMarfan症候群, Hurler症候群, Hunter症候群,

筋ジストロフィー,甲状腺疾患,その他種々の全身性 疾患に伴う二次性心疾患を含めた.特殊心疾患の死亡 率が後期に高くなった最大の原因は昭和54年度からの 障害児全員就学である.すなわち,それまでは未就学 のまま闇に葬られていた患児の中に重症心疾患を有す る患児が多く,それが調査対象に加わったためである.

 次に急死率についてみると,心筋疾患が抜群に高い.

ちなみに,先にあげたMaronらの若年者の肥大型心 筋症についての報告では,11例の死亡例はすべて急死 であったと報告されている.

 先天性心疾患術後遠隔期の急死が後期に急増し,心 筋疾患に次いで2位を占めている.その病型別内訳を みると,Fallot四徴症の根治術後:2例,両大血管右 室起始症の根治術後:2例,複雑なチアノーゼ性心疾 患の保存的術後:2例,大動脈狭窄症の術後:1例,

心室中隔欠損症の術後:1例であった.今回の調査で は術後遠隔期の急死の直接原因までは特定できなかっ たが,文献によると,複雑な,あるいは重症の先天性 心疾患の術後遠隔期の急死の直接原因として,心室性

不整脈5)6)その他の手術に関連した不整脈7)が重要視さ れている.なお,前期には術後遠隔期の急死が1例も なかったのは,前期には術後の追跡症例数が少なかっ たことも一因であるが,最大の原因は前期には複雑あ

るいは重症先天性心疾患の術後例がほとんどなかった ことである.

 基礎心疾患を認めない不整脈の年間急死率は前期が 0.58%・に対して,後期は0.26%。と減少傾向がみられる.

この0.26%・という数値は他の心疾患の急死率に比べる と低いが,それでも対照の急死率の約10倍である.な お,基礎心疾患を認めない不整脈の大部分を占める単 純な心室性期外収縮,上室性期外収縮,1度房室ブロッ

クなどの予後良好と考えられるものを除外した場合 は,この数値の10倍以上,すなわち対照の急死率の100 倍以上になる.

 次に,死亡例,急死例ともに症例数が最も多い先天 性心疾患の非手術例について,病型による違いをみて おきたい.年間総死亡率は前期,後期を通じてみると,

Fallot四徴症が最高(50.0%・)で,以下,大動脈狭窄 症(31.5%。),Eisenmenger症候群(28.6%。),大動脈 弁閉鎖不全を続発した心室中隔欠損症(17.5%。)の順 である.文献的にみてもこれらの病型の生命予後は悪

い8)9)10)

 急死率は,前期,後期を通じてみると大動脈狭窄症 が最高である.後期に限るとEisenmenger症候群が最 高である.これらの病型に急死が多いことは文献上か らも明らかである9)ll).その他の病型については,今回 の調査では症例数が少ないため評価は差控えたい.

 管理区分別にみた年間総死亡率と急死率は表4に示 したとおりである.後期の数値を同年代,同年齢の対 照との比でみると次のようになる.総死亡率はE(最も 軽い区分):1.3倍,D:7倍, C:60倍, B(通学例の

うち最も重い区分):200倍であり,急死率はE:対照 と同じ,D:40倍, C:200倍, B:950倍である.管理 区分による較差は,総死亡率よりも急死率の方が一層 大であることが分かる.

 死亡例数が最も多い先天性心疾患の死因を重症度 別,年代別にみると表5のようになる.前期,後期を 通じてみると心臓の手術に関連した死亡が最も多い.

後期は複雑な先天性心疾患や重症の先天性心疾患に対 する手術が増加したにもかかわらず,手術に関連した 死亡例は減少傾向を示している.反面,術後遠隔期の 急死例は後期に急増している.慢性心不全による死亡 は後期は減少傾向を示している.細菌性心内膜炎は軽

(7)

268−(68)

症例の死因として最も重要である.Karlら12)による と,細菌性心内膜炎は非手術例,術後例を問わず起こ りうるが,非手術例と術後例では起炎菌が異なること が多いという.

 後天性心臓弁膜症の重症度別,年代別の死因は表6 に示したとおりである.最大の死因はリウマチ熱の再 発であり,次いで慢性心不全による死亡が多い.急死 は比較的少ない.いずれにしても,後天性心臓弁膜症 による死亡例は後期には1例もない.その理由として,

後期の症例はほぼ全例が軽症例であったことと,リウ マチ熱の再発例がなかったことがあげられる.かつて は,後天性心臓弁膜症の最大の原因であり,また最大 の悪化要因であったリウマチ熱は,現在完全に制圧さ れたわけではないが,先進国ではその脅威は減ってい

る13).

 その他の主な心臓要管理者の死因は表7に示したと おりである.心筋疾患と不整脈の死因として急死が重 要であることは文献上でも指摘されているとおりであ

る4)14)15).

 なお,川崎病既往児の長期予後における急死が注目 されているが,今回の追跡症例2,900人年中には急死例 はなかった.しかし,死亡例が2例あったので,参考 までに,死亡に至った経過をここに略述しておきたい.

 1例は昭和52年に6歳で川崎病(疑い)に罹患し,

13歳で死亡した男児である.長距離走中に倒れて入 院し,事故後4日目に死亡したもので,死因は内因性 の脳出血であった.

 他の1例は昭和51年に3歳で川崎病に罹患し,12 歳で死亡した男児である.テニス部活動中に強度の疲 労を訴えて緊急入院し,事故後16日目に心不全により 死亡したものである.

 2例とも剖検は行われておらず,川崎病の既往と死 因との因果関係は不明である.

 心臓要管理者の急死例を取り出して,学年別,性別 に分類すると表8のようになる,急死は高学年に多い こと,男子が女子より多いこと,などは周知の事実と いえよう.

 心臓要管理者の急死例の疾患別,管理区分別の内訳 は表9のとおりである.区分Eの急死例はX線心拡大 の1例のみであった.この症例は剖検によって冠動脈 入口狭窄症と診断された症例であり,現状では急死の 予知,予防の困難な症例といえる.比較的軽い区分D で急死した症例のうち最も多かったのは基礎心疾患を 認めない不整脈の4例である.次いで多かったのは先

日本小児循環器学会雑誌 第5巻 第2号 天性心疾患術後遠隔期の2例である.これらの疾患の 管理区分の判定基準は再検討が必要と思われる.もっ とも,区分どおりの生活規制が徹底されていない場合 が多い点にも問題があり,管理指導体制の改善も必要

である.

 急死例の発症時の行動は表10に示したとおりであ り,運動中ないし直後の急死が44%で最も多い.心疾 患を有する児童・生徒の急死の誘因として,運動が最

も重要であることがうかがえる.Lambertら11}による と,1〜21歳の心疾患患者の急死調査では,激しいス ポーッ中の急死が10%,遊び程度の動作中の急死が 32%であったという,また,Maronら16)は十分にト レーニングを積んだスポーツマンで競技スポーッ中に 急死した29例(13〜30歳)の剖検所見について次のよ うに報告している.29例中28例に心病変が認められた.

28例中22例は確診例,6例は疑診例であり,確診例22 例中14例は肥大型心筋症,疑診例6例中5例は特発性 求心性左室肥大であった.彼らの症例に先天性心疾患 や心臓弁膜症がみられなかったのは,それらは心雑音 によって早期に発見され,競技スポーツに参加するこ

とが少ないためであろうと述べられている.

 他方,今回の調査例では睡眠中の急死が5例

(12.2%),座位や臥位での急死が6例(14.6%)あっ た.睡眠中の急死の5例はいずれも重症の先天性心疾 患またはその術後遠隔期の症例であった,この点に関 して,先のLambertら11)の報告によると,睡眠中の急 死が16%,安静時の急死が42%であったという.

 次に,急死例の発症時の行動と身体状況を組合せて みると,表11に示したように,41例中17例:41%に疲 労,睡眠不足,呼吸器感染などの身体状況の異常がみ られた.平常と変らなかった24例中12例は運動中ない し直後の急死であった.運動を急死の誘因と考えると 残りの12例:29%には何らの誘因も認められなかった

ことになる.この点から考えると,急死予防の具体策 として,緊急時体制の確立,特に救急蘇生術の普及が 不可欠であるといえる.

 急死例の管理区分別にみた発症時の行動は表12のと おりである.このうち区分C以上で急死した33例中11 例は制限されているはずの運動が誘因となった急死で あった.心疾患患児の急死予防には,管理区分に添っ た管理指導の徹底が重要であるといえよう.

 学校管理下における急死例の発症時の学校生活の活 動内容は表13のとおりである.登校中に急死した4例 中3例までが心筋疾患であり,心筋疾患の管理指導の

(8)

むずかしさをうかがい知ることができる.

 表10〜13の結果をみると,心疾患を有する児童・生 徒に対しては運動規制が重要であることは疑う余地が ない.しかし,発育期における体育の重要性を考える と,運動を過度に規制するのはよくないことも事実で ある.心疾患患児が可能な限り活力ある生活を享受で きるように,小児循環器科医,学校保健関係者,地域 のスポーッ指導者などの協力体制の確立が必要であ

る17).

       文  献

  1)日本学校保健会編:学校心臓検診の実際(第2     版),予防医学中央会,東京,1984.p.150−158.

  2)Weidman, W.H.:Report from the joint study     on the natural history of congenital heart     defects. III, Indirect assessment of severity.

    Circulation,56:1−13,1977.

  3)大国真彦編:小児メディカルチェックと運動指     導の実際,文光堂,東京,1989,p.16−27.

  4)Maron, B.J. and Roberts, W.C.:Car−

    diomyopathies in the first two decades of life.

    Cardiovasc. Clin.,11:35,1981.

  5)Garson, A., Gillette, P.C., Gutgesell, H.P. and     McNamara, D.G.:Stress−induced ventricular     arrhythmia after repair of tetralogy of Fallot,

    Am. J. Cardiol,,46:1006,1980.

  6)Deanfield, J.E., McKenna, W.J., Presbitero, P.,

    England, D., Graham, G. R, and Hallidie・Smith,

    K.:Ventricular arrhythmia in unrepaired and     repaired teralogy of Fallot. Relation to age,

    timing of repair, and haemodynamic status. Br.

    Heart J.,52:77,1984,

  7)Bink−Boelkens, M.T., Velvis, H., van der Heide,

    J.J., Eygelaar, A. and Hardjowijono, R.A,:

    Dysrhythmias after atrial surgery in children.

    Am. Heart J.,106:125,1983.

8)Bertranou, E.G., Blackstone, E.H., Hazelrig, J.

   B.,Turner, M.E and Kirklin, J.W.:Life    expectancy without surgery in tetralogy of    Fallot. Am. J. Cardiol.,42:458,1978.

9)Nadas, A.S.:Report from the joint study on    the natural history of congenital heart defects.

   IV. Clinical course. Circulation,56:1・36,1977.

10)Keane, J.E, Plauth, W.H. and Nadas, A.S.:

   Natural history study, Ventricular septal defect    with aortic regurgitation. Circulation,56:1・72,

   1977.

11)Lambert, E.C., Menon, V.A., Wagner, H.R. and    Vlad, P.:Sudden unexpected death from car−

   diovascular disease in children. A cooperative    intemational study. Am. J. Cardio1.,34:89,

   1974.

12)Karl, T., Wensley, D., Stark, J., Leval, M., Rees,

   P.and Taylor, J.F.N.:Infective endocarditis    in children with congenital heart disease:Com・

   parison of selected features in patients with    surgical correction or palliation and those    without. Br. Heart J.,58:57,1987.

13)Bland, E.F.:Rheumatic fever:The way it    was. Circulation,76:1190,1987.

14)Rozanski, JJ., Castellanons, A. and Myerburg,

   R.J.:Ventricular ectopy and sudden death.

   Cardiovasc. Clin.,11:127,1980.

15)Gillette, P.C.:Supraventricular arrhythmias    in children. J.A.CC.,5:122B,1985,

16)Maron, BJ., Roberts, W.C., McAllister, H.A.,

   Rosing, D.R. and Ebdstein, S.E.: Sudden death    in yourlg athletes. Circulation,62:218,1980.

17)Vaccaro, P., Gallioto, F.M., Bradley, LM.,

   Hansen, D.A. and Vaccaro, J,:Development    of a cardiac rehabilitation programme for chil−

   dren. Sports Med.,1:259,1984.

(9)

270−(70) 日本小児循環器学会雑誌 第5巻 第2号

Follow−up Study of Heart Disease Among Elementary, Junior and Senior High School Students    Mitsuo Kitada1), Tadashi Nakagawa2) and Yukimasa Yamaguchi2}

1)Department of Epidemiology and Mass Examination for Cardiovascular Diseases,

      The Center for Adult Diseases, Osaka

      2)Division of Cardiology, Children s Medical Center of Osaka City

   The subjects of this study were schoolchildren for whom school medical examination indicated the need for management of a heart condition. Follow・up of these children throughout elementary and high schoo1(87,576 patient−years)provided the following results.

   1,The annual total death rate among the examined schoolchildren for the first half of the study period(1962−1973)was 2.65%⑪, which was higher than the figure(1.64%o)for the last half of the study period(1974−1985). The annual total death rate for both the first and last half of the study period was 5−6times as high as the figure for control children of corresponding ages for the corresponding periods.

   2.Annual sudden death rate among the examined schoolchildren was higher for the last half of the study period(0.55%o)than for the first half(0.37%o). The difference in the annual sudden death rate between the examined children and controls was larger in the second half of the study period(0.55%o vs. O.03%o)than in the first half(0.37%o vs.0.03%o). These differences seem to be primarily attributable to a sharp increase in the number of children who died suddenly in the second half of the study period many years after surgical treatment of congenital heart diseases.

   3.When the children were grouped according to the severity of heart diseases, the annual total death rates during the second half of the study period in Group E(mildest cases), Group D, Group C and Group B(severest cases among the children who could attend school)were, respectively,1.3,7,60 and 200 times as high as those of controls during the corresponding period. The annual sudden death rates during the second half of the study period in these groups were 1.0,40,200 and 950 times as high as those of the controls, respectively.

   4.Of the Group E and D children who died suddenly during the study period,4cases had arrhythmias and 2 cases had undergone surgical treatment of congenital heart diseases.

   5. These results suggest that the current criteria used for grouping of schoolchildren requiring management of heart diseases are quite appropriate, but that the criteria need to be reviewed for children with arrhythmias or those who have undergone surgical treatment of congenital heart diseases.

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