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図 1-1 分子標的治療薬によるざ瘡様皮疹の一例 図 1-2 分子標的治療薬による乾燥性皮膚炎 ( 乾皮症 ) の一例 Q 1 分子標的治療薬でがん治療中の患者さんには どのくらいの頻度で皮膚障害が起こるのですか? また どのような症状がいつごろ発現しますか? a 極端な皮膚乾燥 b さざ波状皮疹

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(1)

抗がん薬治療の

副作用軽減を目的とした

〜がん患者さんの治療継続を支援するために〜

自社医薬品講演会記録集

分子標的治療薬の普及により、がんの治療実績の向上ととも に、従来の抗がん薬とは違った特有の副作用に注目が集まっ ています。中でも看護師に関心の高い「皮膚障害」と「口腔 粘膜炎」をテーマにしたセミナーが東京で開催されました。

セミナーのエッセンスを集めてQ&Aとして解説します。

共  催:ナース専科×日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社      タイアップセミナー

開 催 日:2017年8月27日(日)

開催場所:株式会社エス・エム・エス セミナールーム

ケア ポイント

清原祥夫

先生

西島安芸子

先生 静岡県立静岡がんセンター

皮膚科 部長 静岡県立静岡がんセンター 看護師長

皮膚・排泄ケア認定看護師

解説 解説

皮膚障害編

(2)

一般名 皮膚症状 セツキシマブ

ざ瘡様皮疹、脂漏性皮膚炎、皮膚乾燥・亀裂、爪囲炎、掻痒症 パニツムマブ

テムシロリムス ゲフィチニブ エルロチニブ ラパチニブ アファチニブ

レゴラフェニブ 手足症候群(発赤、水疱、皮膚剥離)、発疹、皮膚乾燥、紅斑、掻痒、ざ瘡、爪の障害 ソラフェニブ 手足症候群(発赤、水疱、表皮剥離)、皮膚炎、紅斑

ⓐ 極端な皮膚乾燥 ⓑ さざ波状皮疹 ⓒ ひび割れ状皮疹

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12(週)

ざ瘡様皮膚炎

重症度

皮膚乾燥

爪囲炎

発現例数

発現(初発)時期 200

150 100 50

0≦1W ≦2W≦3W ≦4W ≦6W ≦8W ≦12W≦24W 24W< 不明 手足症候群 高血圧 下痢 発疹

副作用発現例数:1313例 登録患者数:2373例 調査期間:2009年5月20日〜11月19日

Q 1 分子標的治療薬でがん治療中の患者さんには、

どのくらいの頻度で皮膚障害が

起こるのですか? また、どのような症状が いつごろ発現しますか?

皮膚障害は分子標的治療薬治療中の患者さんのほぼ全員に生じる副 作用と考えます。皮膚症状や発現時期は薬剤の種類によって異なり ます。

表1-1 皮膚障害に注意が必要な分子標的治療薬

図1-1 分子標的治療薬によるざ瘡様皮疹の一例 図1-2 分子標的治療薬による乾燥性皮膚炎(乾皮症)の一例

図1-3 EGFR阻害薬によって起こる皮膚症状の典型例

図1-4 マルチキナーゼ阻害薬市販後調査における副作用発現時期

A

森文子:皮膚障害.がん化学療法ケアガイド.濱口恵子・本山清美,編.中山書店,2012 ,p.192.より引用改変

ナーゼ阻害薬で約60%と高率で発現します。このこと から、分子標的治療薬を投与する患者さんに対しては、

ほぼ全員に生じるものとして対処すべきでしょう。

 分子標的治療薬でみられる主な皮膚障害には、ざ瘡様 皮疹、乾燥性皮膚炎(乾皮症)、爪囲炎、手足症候群な どがあります。出現する皮膚障害やその頻度は薬剤によ っても異なり(表1-1)、EGFR阻害薬ではざ瘡様皮疹、

爪囲炎、乾燥性皮膚炎が、マルチキナーゼ阻害薬では手 足症候群が高頻度に起こります。ここで重要なのは、皮 膚症状の発現と抗腫瘍効果には相関性があり、治療効果 のバロメーターになるということです。

 ここで、代表的な皮膚障害とその症状について説明し ましょう。

●ざ瘡様皮疹

 ニキビ様の皮疹が分子標的治療薬の投与早期に現れ、

膿疱の形成や掻痒を伴うことがあります(図1-1)。頭部、

高頻度に発現する皮膚症状は 治療効果のバロメーター

 そもそも分子標的治療薬とはどのような薬なのでしょ う? 分子標的治療薬は、殺細胞的に全身に作用し、分 裂している細胞を攻撃する従来の抗がん薬とは違い、が ん細胞の増殖や分化、転移にかかわる特異的な標的分子

(EGFR)にのみ作用する薬です。しかし、標的分子は がん細胞に限らず、正常な皮膚や爪、毛包、汗腺、脂腺 などにも存在しています。そのため、上記の組織もダメ ージを受け、これまでに経験しなかったような皮膚症状 が現れます。つまり、分子標的治療薬での皮膚障害は薬 理作用そのものによる副作用ということができます。従 来の抗がん薬でも皮疹などの皮膚障害が現れることはあ りますが、抗がん薬の副作用だけでなく、薬剤に含まれ る添加物によるアレルギーが原因の場合も考えられま す。

 分子標的治療薬による皮膚障害は、薬剤の種類によっ て差はみられますが、EGFR阻害薬で約90%、マルチキ

分子標的治療薬で皮膚障害が 起こるのはなぜだろう

顔面、背中、胸部などに出やすく、毛根がダメージを受 けて脱毛することもあります。

●乾燥性皮膚炎(乾皮症)

 白い粉のような細かな落屑や鱗様の落屑がみられます

(図1-2ⓐ)。進行すると皮膚が割れて、さざ波状やひび 割れ状、あかぎれ状の皮疹がみられることがあります

︵図1-2ⓑⓒ)。分子標的治療薬治療中は皮膚の保湿力が 低下するので、乾燥性皮膚炎は身体のどの部位でも起こ り得ますが、四肢末梢では衣服の袖口、裾口から空気が 入りやすいため、乾燥が進みやすくなります。

●爪囲炎

 爪の周囲の炎症で、腫脹や紅斑が現れ、強い疼痛を伴 います。進行すると亀裂が生じて、肉芽が形成されるこ ともあります。難治性で、特に肉芽が形成されると治癒 までに長い期間を要します。見た目は陥入爪とよく似て いますが、陥入爪は力がかかる指趾にできるのに対し、

分子標的治療薬による爪囲炎はどの指趾にも起こります。

●手足症候群

 分子標的治療薬による手足症候群は、手掌や足底の荷 重部に限局性の紅斑や、ピリピリするような感覚の異常 が突然に現れます。進行すると皮膚が角化して亀裂や水 疱が生じ、強い疼痛を伴います。歩行困難になる例も少 なくありません。

 皮膚障害の発現時期については、これまでの経験から ある程度、明らかになっています。EGFR阻害薬の場合、

ざ瘡様皮疹は投与初期(数日)から現れ始めて、1~2 週でピークに達します。乾燥性皮膚炎は4週間後くらい、

爪囲炎は6週間目くらいから起こり始めます(図1-3)。

マルチキナーゼ阻害薬による手足症候群は、70%くら いの人が2~3週間目に現れ、その後、急速に進行しま す(図1-4)。

 こうした皮膚症状は、それ自体が致死的で重篤になっ た例はほとんどありません。しかしながら、患者さんの

発現時期を予測した介入で 副作用対策を

QOLを低下させ、闘病意欲が削がれることで、およそ3 割の患者さんが治療から離脱してしまうといわれていま す。そのため、それぞれの皮膚障害の発現時期を把握し、

予防的介入と異常の早期発見に努めることが重要です。

早期から対策を講じればコントロールは可能で、症状が 悪化した場合には、分子標的治療薬を一時中断したり、

減量することで、治療を継続することもできるからです。

 分子標的治療薬は致死的で重篤な副作用がほとんどな い薬です。多くの患者さんが安心して楽に続けられるよ うに、“皮膚障害は起こるもの”という視点をもち、分 子標的治療薬治療中の患者さんのケアに取り組んでいき ましょう。

       <解説:清原祥夫 先生>

山﨑直也:分子標的薬剤によって起こる皮膚症状と対策.血液・腫瘍科 2010;

61(5):564-9.より引用

ナース専科×日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 タイアップセミナー

(2017年8月27日開催).清原祥夫先生 ご講演資料.より

ナース専科×日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 タイアップセミナー

(2017年8月27日開催).清原祥夫先生 ご講演資料.より 清原祥夫先生 ご提供

(3)

日常的にスキンケアはどのように行ってい るか

ひげそりは何を使っているか、シェ ービングクリームは使用しているか 化粧品にこだわりはあるか、化粧品 やネイルに関係する職業か 毎日入浴あるいはシャワー浴を行っているか 入浴後に保湿の習慣はあるか

髪の毛を染めているか

医師から皮膚障害が出ることを聞い ているか

ケアを手伝ってくれる人はいるか 職場にがん治療のことを伝えているか 仕事の場所は屋外か、屋内か さらに男性では

さらに女性では

皮脂膜

水分 角質細胞 水分

アレルゲン 細菌

細胞間脂質

(セラミド)

角質層

皮脂膜の減少

異物の侵入 細胞間脂質の減少

アレルゲン 水分蒸発 細菌

乾燥した皮膚(ドライスキン)

正常な皮膚

Q 2 分子標的治療薬で治療を始める前に Q 3

患者さんのスキンケア状況について、

聞いておくとよいことは何ですか?

スキンケア用品にはどんな種類がありますか?

また、上手な使い方や予防的スキンケアの コツを教えてください。

はじめに、抗がん薬治療や副作用に対する患者さんの理解度を確認 することが重要です。日常生活の習慣や職業、支援者の有無などか らセルフケア指導のあり方を考えます。

スキンケア用品には、洗浄剤・保湿剤・皮膚保護剤などがあります。

患者さん自身が使いやすく、継続しやすいものを選択し、正しい使い 方を指導しましょう。

A A

 スキンケアの実施状況については、入浴・洗顔・洗髪 などの清潔習慣や、保湿の習慣のほか、男性の場合はひ げそり、女性の場合は化粧品について質問します。その 際は「日常のスキンケアはどうしていますか」と漠然と 聞くのではなく、「毎日入浴、あるいはシャワー浴をして いますか」と具体的な質問をするようにします。特に入 浴に関しては、高齢者の場合「毎日は入らない」「汗を かいたら入る」という人が多くみられます。先入観をも たずに確認していくことが大切です。

 保湿の習慣については、入浴後にボディローションな どで保湿を行っているか、ハンドクリームを使う習慣があ るかを確認します。化粧品は使えなくなることがあるため、

こだわりなどについて聴取します。ひげそりには電気シェ ーバーの使用が望ましく、カミソリでは毛瘡(カミソリ負 け)が生じてブドウ球菌による感染症につながりやすくな ります。シェービング剤で菌の増加が抑えられるので、使 用を勧めます。また、皮膚障害は頭皮にも現れるので、

髪染めは頭皮への刺激になることを伝えましょう。

<解説:西島安芸子 先生>

生活習慣の聴取から スキンケア状況を把握する

 抗がん薬治療を開始する前に、まずは患者さん自身が 治療について理解できているか確認することが大切で す。そのうえで、医師から副作用に関する説明をどのよ うに聞いているか、そのことを理解しているかを確認し ます。

 しかしながら、多くの患者さんは治療のことで頭がい っぱいで、副作用まで理解するのが難しい状態にありま す。症状の程度がイメージできず、いざ皮膚障害が起き ると「こんなにひどいと思わなかった」と嘆かれる患者 さんが少なくありません。そこで看護師が患者さんの理 解度を確認する場合には、具体的な皮膚症状がイメージ できるようにかかわることが大切です。このときパンフ レットなどを用いて行うと効果的です(図2-1)。

 皮膚障害は退院後に現れることが多いので、退院前に 再度説明するとともに、生活習慣や職業、家族等の支援 者の有無などを把握します(図2-2)。独居で支援者が なく、セルフケアが難しい場合には、社会資源の活用な ど、皮膚障害が出現したときの対応を考えておく必要が あります。

まずは患者さんの理解度や 支援者の有無などを確認する

せて洗浄するように指導します。また、頻回な洗浄は皮 脂が除去されすぎてしまうため避け、全身の洗浄は入浴 時の1日1回で十分なことも伝えます。

 分子標的治療薬治療中は皮膚が乾燥しやすいうえに、

高齢者では加齢によるドライスキンも加わります。乾燥 は皮膚のバリア機能を低下させるため、皮膚トラブルを 予防し、皮膚の表面(角質層)を滑らかに維持するため にも全身の保湿が重要です(図3-1)。保湿剤には、軟 膏、クリーム、ローションタイプなどの種類があります が、それぞれに特徴があるので、患者さん自身が使いや すく継続しやすいものを選んでもらいましょう。

 保湿剤を塗布するタイミングとしては、皮膚を湿らせ た後や、入浴後なら皮膚が水分を吸収している15分以 内に塗ると、保湿成分が浸透しやすいといわれていま す。その際、こすると皮膚に負担がかかるので、手のひ らで包み込むようにして浸透させます。軟膏の場合は、

保湿で皮膚の表面を滑らかに維持し、

皮膚の弾力性を高める

 スキンケアの基本は「洗浄」「保湿」「保護」であり、

その中でも最も大切なのが洗浄です。洗浄が適切に行わ れていないと、その後に塗布する保湿剤や治療薬が皮膚 に浸透しにくくなり、効果が妨げられます。軟膏が処方 されている場合には、古い軟膏をしっかりと落としてか ら塗らないと、新たに塗布した薬の成分が有効に働かな いことを十分に説明しましょう。

 洗浄剤は特別なもの使う必要はありません。患者さん のなかには、皮膚に優しいものを新たに用意しなければ いけないと思う人もいるようですが、普段使い慣れてい るもので十分です。それまでの使用経験により、皮膚ト ラブルを起こさないことが実証されているからです。た だし、すでに炎症が起きている場合には、弱酸性の洗浄 剤のほうが皮膚への刺激が少なく、痛みが軽減されやす くなります。

 洗浄剤は、界面活性剤の起泡作用によって汚れが落ち るため、よく泡立てて使用します。泡立てるのが難しい 患者さんには、泡タイプの洗浄剤を紹介するとよいでし ょう。泡を皮膚にのせて汚れを包むように愛護的に洗 い、手足なら指を1本1本、爪の間も「丁寧に洗う」こ とがポイントです。「よく洗いましょう」と言うと、ご しごし洗ってしまいがちなので、伝え方を工夫すること も大切です。洗浄後は微温湯(約38℃)で流し、タオ ルでこすらずに、押さえるようにして水分を拭き取りま す。水を使うことが難しい状況の場合は、ティッシュ等 で拭き取るタイプの洗浄剤を用います。

 炎症や亀裂などがあるとその痛みから、洗浄あるいは 洗浄剤の使用に抵抗を感じる患者さんが多くみられま す。患者さんには、二次的な感染を引き起こさないため にも洗浄が大切であることを伝え、炎症部分にも泡をの

洗浄で皮膚の清潔を保ち、

治療薬や保湿剤の浸透を高める

図2-1 患者さん用パンフレットの一例 図2-2 セルフケア指導前に知っておくこと

図3-1 バリア機能が破綻した皮膚

静岡県立静岡がんセンター ご提供

ナース専科×日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 タイアップセミナー(2017年8月27日開催).西島安芸 子先生 ご講演資料.より一部改変

ナース専科×日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 タイアップセミナー

(2017年8月27日開催).西島安芸子先生 ご講演資料.より一部改変

(4)

軟膏・クリームは人差し指の先〜第一関節まで

ローションは1円玉大

締めつけの強い靴下を着用しない

物理的刺激を避ける 皮膚の保護

2次感染予防

直射日光にあたらないようにする

露出部分にはサンスクリーン剤を使用する 足に合った軟らかい靴を履く

保湿剤を塗布する、加湿器を併用する(冬季)

衣服は皮膚への刺激が少ない素材のものにする 裸足になることを避け、木綿の厚めの靴下を履く。

軟らかい中敷きを使用する

清潔を心がける。石鹸は十分に泡立て、丁寧に洗浄する

外出時には露出の多い服装を避け、日傘、帽子、手袋 を使用する

エアロビクス、長時間歩行、ジョギングなどは禁止 する

包丁で硬いものを切らない、ぞうきん絞りを控える 炊事、水仕事の際にはゴム手袋などを用いて、洗剤 類にじかに触れないようにする

熱刺激を避ける

熱い風呂やシャワーを控える

全身の皮膚の状態

スキンケア用品の使用状況

ひげそりの実施状況

刺激の除去 残薬の確認

患者さんの自覚症状の有無

手足の爪の状態

爪の切り方

指導したとおりに、洗浄や保湿が行 えているかを確認する

電気シェーバーを使用しているか、

使用後はすぐにシェーバーを洗浄し ているか、シェービング剤を使用し ているかを確認する

半袖やノースリーブな ど紫外線の刺激を受け やすい服を着ていない か、軟らかく、刺激の 少ない素材の衣類を着 用しているか確認する サンダルなど露出の多 い靴や、ハイヒールな ど足の負担になる靴、

硬い素材の靴を履いて い な い か チ ェ ッ ク す る。できれば、サイズ の合ったスニーカーが 望ましい

深爪ではないか、爪切りを使ってい るかなどをチェックする。伸びすぎ た手の爪は皮膚を傷つけることがあ るので、伸ばしすぎにも注意。

基本はスクエアオフ。切るだけだと 割れやすいので、ヤスリをかけるの が理想的

残薬を持参してもらい、処方どおり に薬を使えているか確認する。複数 の外用薬が出ている場合には塗布の 順番が間違っていないかを確認する 治療時期により出現しやすい皮膚障

害があるので、分子標的治療薬によ る治療をしてからどのくらい経って いるかを把握しながら確認する 皮膚

スキンケア

処方薬 服装や履物

図4-1 外来受診時の観察ポイント 図3-3 予防処置に関する指導内容

Q 4 抗がん薬治療を行っている患者さんが 外来を受診したとき、

チェックすべきポイントは何ですか?

皮膚症状が出現あるいは進行していないかなどを確認します。治療や セルフケアに感じている疑問、困難感を拾い上げることも大切です。

A

 分子標的治療薬治療中は、皮膚の保護も大切です。ド ライスキンによる水分蒸発や、尿・便失禁による皮膚の 浸軟、排泄物の化学的刺激を防ぐために、撥水効果があ る皮膚保護剤を用います。皮膚保護剤にもさまざまな種 類があるので、クリームやジェル、スプレータイプなど の中から患者さんに合ったものを選択します。

 物理的な圧迫や摩擦、熱、紫外線からの刺激も皮膚症 状を悪化させます。それらについては、予防処置を指導 することも大切です(図3-3)。皮膚障害のうち、ざ瘡 様皮疹は必ずといってよいほど起こりますが、爪囲炎は 適切なケアにより予防が可能です。また、手足症候群の 予防や治療中においては、手足に負担をかけないことが とても重要になります。局所に荷重がかかるような動作 を避け、負担のかかる作業は控えるように指導します。

 しかし、日常生活のなかには、患者さんが意識せずに 行ってしまう動作もあります。例えばつま先立ちや、家 事でかぼちゃなどの硬いものを切る、指先に負担がかか る手芸をするなどです。患者さんの生活を把握し、いか に具体例を示して指導できるかがポイントになります。

<解説:西島安芸子 先生>

外的刺激は最小限にとどめる工夫を

必ずいったん手のひらで軟らかくしてから塗布します。

 適量は、両手の面積を塗布する場合、軟膏・クリーム では人指し指の第一関節ぐらいまで、ローションなら一 円玉ぐらいが目安となります(図3-2)。「塗った後に、

ティッシュが皮膚にくっつくくらいの量」と説明すると、

患者さんに適量を理解してもらいやすいでしょう。

 上記の項目のほかに、患者さんが困っていることがな いかを必ず確認しましょう。「こんなことを聞いても大 丈夫だろうか」という思いから、患者さんは遠慮してし まうことが少なくなく、苦痛に感じながらセルフケアを 行っているかもしれません。例えば、どうしても外用薬 を1日3回塗るのが難しいのであれば、2回に変更が可 能か医師に相談することもできます。看護師から声かけ することで、患者さんは安心して疑問や本音を言えるよ うになり、副作用対策も進めやすくなります。特に、最 初の1クール目で行う指導でのかかわりはとても重要に なります。

<解説:西島安芸子 先生>

困っていることや疑問点などを 積極的に聴取する

 外来受診時には、皮疹、紅斑など皮膚の異常の有無、

爪の状態、外用薬の使用状況、スキンケアの様子、服装 や履物などを確認します(図4-1)。

 こうした状況を確認するときは、出現しやすい副作用 と症状の程度をあらかじめチェックリストにまとめ、患 者さんに記入してもらうようにするとよいでしょう。そ れをもとに、出現している症状の程度や前回受診時との 変化、自覚症状について、看護師が一緒に確認します。

同時にセルフケアの実施状況もヒアリングし、うまくで きているときは、患者さんの頑張りを支援していること を伝え、指導が守れていないときには、どうすればでき るようになるかを一緒に考えていきます。

副作用の出現や症状の進行がないか チェックする

図3-2 保湿剤の使用量の目安(大人の手2枚分の面積)

厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群(平成22年3月).p.15.より引用一部改変(2017年11月10日閲覧)

http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1q01.pdf

ナース専科×日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 タイアップセミナー(2017年8月27日開催).西島安芸子先生 ご講演資料.を参考に作成

(5)

早期から比較的強めのステロイド軟 膏で対応(ストロングクラス以上)

ステロイド外用薬介入の タイミングと強さ

※予防投与については効能外 ステロイド軟膏塗布 ステロイド軟膏塗布

50mg/day 常用の1/4 〜1/2

ステロイド軟膏塗布

ステロイド少量内服治療

(PSL : 10〜20mg/day)

(MINO) (MINO)

予防投与

抗炎症作用(+)    

エリスロマイシン、テトラサイクリン バラマイシンなど   

軽症 中等症 重症

自覚症状がほとんどない 生活に支障がない 感染を併発していない

自覚症状がある 日常生活に支障がある 感染の可能性が高い 自覚症状が少しある(かゆみ、痛み)

生活にほとんど支障がない 感染を併発していない

許容内 我慢できない!

Q 5 スキンケアを実施してくれない患者さんには、 Q 6

どのようにアプローチすればよいでしょうか。

皮膚障害が発現したときの評価方法、

治療のタイミングや治療方法を 教えてください。またその場合、

抗がん薬治療は中止となりますか?

実施できていないのは理由があります。まずはそれを聴取する ことから始めましょう。そのうえで一緒にケアを体験してもら うなど、受け入れられやすい方法を考えていくことが大切です。

皮膚症状は段階的評価スケールをもとに評価します。手足症候群で は抗がん薬の休薬・減量再開が原則となりますが、その他の症状に 対しては一般的に休薬の必要はありません。ただし、ジオトリフの 場合は、「重症」や忍容性のない「中等症」で休薬・減量を行います。

この対応で治療効果の減弱は確認されなかった報告があります。

A A

 スキンケアなどのセルフケアは、すべてを実施しても らうのではなく、治療に影響を及ぼすこと、必ず実施し てほしいことを明確にし、指導します。そして、少しで も患者さんが実施できたことがあれば、それを認め、「こ うすれば、もっとよくなりますよ」と段階を踏んで進め ていくことが大切です。「抗がん薬治療を続けるために もこの期間だけは頑張りましょう」と期限を区切るよう な、患者さんが取り組みやすくなる声かけも重要です。

少しでもできることを一緒に見つけていく姿勢でかかわ っていきましょう。

<解説:西島安芸子 先生>

必ず実施してほしいケアを明確に伝える

 どんな人でも長年の生活習慣を変えるのは至難の業で す。そのことを念頭に置いて根気よくアプローチしてい きましょう。特に男性の場合は、日常的に化粧をしてい る女性と違い、スキンケアになじみのない人が多いため、

行動変容は難しいようです。患者さんにはスキンケアが できない理由が必ずあるはずですから、できないことを 責めるのではなく、「どうすればできるようになるのか」

を一緒に考えていくことが大切です。

 実施しない理由の一つとして、ケア時に痛みを伴った 経験から拒否するケースが多くみられます。疼痛の有無 を必ず確認したうえで、痛みの少ないケア方法を看護師 とともに体感してもらうことで、できるようになること もあります。

 ケアの方法がわからないようであれば、一緒に手足を 洗ったり保湿剤を塗布するなど、実施方法を粘り強く指 導しましょう。併せて次回の外来時には、指導した方法 が正しく行えているかを確認します。また、中にはケア 用品の使用感に抵抗を感じている場合もあります。保湿 剤のべたつきが気になるようなら化粧水から始めてみる など、患者さんが使いやすいタイプのものに変えてみる のも有効です。

 体力的な衰えや身体機能が原因で実施が難しいとき は、家族に協力を仰いだり、訪問看護・介護の活用や通 所介護施設などに協力を求めます。特に独居の患者さん では地域との連携を深めることで、治療やケアを継続さ せることが重要です。

ケアを行わない理由は千差万別

ンの内服投与、アダパレンの塗布です(図6-1)。

 ステロイド外用薬は、「軽症」の早期から比較的強め のストロングクラスを使用します。これは、ざ瘡様皮疹 は1~2週でピークに達するほど強い炎症が起こるた め、この炎症を止めるには、できるだけ早い段階に強い 力で抑え込む必要があるからです。逆に弱いステロイド を使用すると、皮疹の治癒が遅れて投与期間が長くなる だけでなく治りにくくなります。その後は、重症度が下 がり治療効果がみられたらランクダウンし、ミドルクラ スのステロイド外用薬に変更します。こうすることで、

ざ瘡様皮疹をコントロールするとともに長期投与によ るステロイド皮膚炎などの副作用も予防していきます。

 ステロイド療法は早い段階で介入するほど効果がある ため、外来受診する患者さんの場合、治療のタイミング が遅れないように対策を講じておくことも重要です。し かし、事前処方は保険適用外であり、また患者さんの中 にはステロイドに対して抵抗感をもつ人もいます。前も って副作用対策について十分な説明を行っておくことが 大切です。

 ミノサイクリンは炎症を抑えるために投与します。炎  皮膚症状は、段階的評価(gradiation)により自覚症

状や生活への支障の有無、感染の可能性などを評価しま す。ただし、gradiationは、患者さんの主観的評価が尺 度となり、言い換えれば「患者さんが我慢できるか、で きないか」で決定されます(図6-1)。客観的な評価は 難しく、発疹の範囲など皮膚症状の程度から医療者が重 症だと判断しても、患者さんが許容することもあればそ の逆もあるためです。

 皮膚障害に対する治療のタイミングは、重症度が上が ったと評価されたときです。患者さんが我慢できない状 態が「重症」となり、積極的な治療を開始するタイミン グになります。

●ざ瘡様皮疹 

 主な治療は、ステロイド外用薬の塗布とミノサイクリ

段階的評価スケールをもとに 重症度を評価

各症状に対して適切な治療・対策を 実施する

Lynch TJ Jr,et al:Epidermal growth factor receptor inhibitor-associated cutaneous toxicities: an evolving paradigm in clinical management.Oncologist 2007;12(5):610-21.より引用改変

図6-1 EGFR阻害薬における皮疹の評価と対応

(6)

ベタメタゾン・d- クロルフェニラミンマレイン酸塩  3T/day x 14 ミノサイクリン塩酸塩  100mg/day x 14

ジフルプレドナート 3回/day

Day15 ジフルプレドナートで治療 Day24 治療後9日 Day38 治療後23日 経過良好 尿素 20% 2回/day

2回/day

before 20日後

本来の爪よりも大きく、肉芽の上に覆い かぶさるようにつくる

(a)部分抜爪(スパイラルテーピング法併用)

(b)つけ爪(歯科用アクリル樹脂による人工爪)

抗がん薬減量再開(80mg/day)

中断・休薬 いったん、休薬!

早期回復→減量再開

比較的 早期に改善 78歳女性 盲腸がん、肺転移 2次治療でレゴラフェニブ水和物投与 陥入爪

の場合 爪囲炎 の場合

伸縮性のある布製の絆創膏に切り 込みを入れる

切り込み部分に爪を通す。このと き指の腹側をしっかりと押さえる

爪甲と痛みのある側爪郭を引き離 すように引っ張りながら指に貼り 付ける

両側の爪の下にテープを密着さ せ、爪の角が出るように整える

1 2 3 4

少し伸ばして「一 文字切り」にする

(バイアスカット)

角はヤスリで丸く 削る(スクエアオ フ)

指先(図の赤線)

より深く切らない ようにする 図7-3 爪の切り方

ナース専科×日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 タイアップセミナー

(2017年8月27日開催).西島安芸子先生 ご講演資料.を参考に作成

Q 7 爪囲炎を起こした患者さんが

自宅でもできるセルフケアの方法を 教えてください。

爪の周囲を保護できるテーピングが有効です。爪はスクエアオフに 切るように指導しましょう。

A

日後)には「重症」に進行しているというケースが多く みられます。強い疼痛によりQOLが低下し、抗がん薬治 療を継続できなくなる可能性も高いため、予防とともに 発現後は速やかな対応が重要です。予防処置では、抗が ん薬治療が開始される前から足底硬化症(胼胝、鶏眼な ど)のケアや尿素製剤などによる角質コントロールを行 い、さらに徹底したスキンケアにより皮膚を軟らかく保 持します(Q3参照)。白癬などの合併症は治療しておき ます 。

 発現した場合は、紅斑にはステロイド外用薬の塗布、

角質の増殖や乾燥に対しては、尿素軟膏やヒルドイド軟 膏、亀裂にはステロイド外用薬とセレスタミン(抗ヒス タミン薬のd-クロルフェニラミン、ステロイドのベタメ タゾンの配合薬)内服など、さまざまな対処法を組み合 わせて治療していきます。ステロイド外用薬は、ベリー ストロングからストロンゲストクラスのものを使用しま す。また、治療中は手足に負担をかけない生活を心がけ ることが大切で、特に3週間は圧をかけないように注意 します。少し改善がみられると、ジョギングなどを始め て症状が悪化してしまう患者さんもいるので、継続した 指導が必要です。

 「中等症~重症」になった場合は、「軽症」に軽快する まで抗がん薬治療を休薬し、その後、一段階減量して再 開します(図6-3)。手足症候群は抗がん薬の用量に依 存するため、休薬することで症状は10日~2週間で改 善されていきます。皮膚障害が原因による抗がん薬治療 の減薬・休薬はできる限り避けたいところですが、手足 症候群の治療には休薬が原則となります。

 <解説:清原祥夫 先生>

症のコントロールが良好に保てるようになったら減量や 間歇投与を考慮します。

 アダパレンは、尋常性ざ瘡の外用治療薬でステロイド 外用薬と並行して使用します。皮疹が改善しステロイド を離脱した後にも、予防的にアダパレンを用いることも あります。

●乾燥性皮膚炎 

 乾燥性皮膚炎については、十分な保湿が基本です。保 湿剤には、ヘパリン類似物質、尿素製剤、ワセリンなど の種類があります。ヘパリン類似物質は保湿力が高く、

尿素製剤は不要な角質を除去するといった特徴がありま すが、使い心地や経済性など患者さんの好みがあるた め、効能よりは患者さんが継続できるものを使用するこ とが望ましいと考えます。

●爪囲炎 

 爪囲炎は難治性で痛みや出血があり、患者さんのQOL を著しく低下させるため、速やかに皮膚科医による専門 的な治療につなげる必要があります。滲出液がある場合 は、洗浄、消毒、ガーゼ保護を行い、腫脹に対しては吉 草酸ベタメタゾンとクーリングを行います。細菌感染を 起こしている場合は、ミノサイクリンを短期的に投与し ます。肉芽形成がある場合では、ストロングクラス以上 のステロイド外用薬の塗布を行います。また、液体窒素 による凍結療法を行うこともあります。

 外科的処置としては、部分抜爪、テーピング、人工爪 形成術(つけ爪)などがあります(図6-2)。テーピン グは患者さん自身が行える処置として効果的です(Q 7参照)。

●手足症候群 

 手足症候群は進行が早く、「軽症」が気づいたすぐ後(数

ですが、爪に合った切り込みを入れるのが難しい患者さ んに対しては、スパイラルテーピング法がお勧めです。

 スパイラルテーピング法は、肉芽が形成されている指 先の爪郭の近くから、らせん状に粘着テープを巻きつけ る方法です(図7-2)。両側に肉芽が形成されている場 合は、逆側からも同じように巻いていきます。テープは 共に伸縮性のある布製のものを使用します。

 日常的な爪の保護としては、爪はスクエアオフにカッ トし(図7-3)、深爪やバイアス切りをしないようにす るほか、足に合った靴を履く、靴下を履くなど足全体を 保護するように指導します。

<解説:西島安芸子 先生>

 爪囲炎は日常生活に支障が出やすく、治療とともに日 ごろのセルフケアがとても重要になります。特に肉芽が 形成されると爪に食い込み、爪郭に強い痛みや出血が生 じます。こうした肉芽への加圧や刺激などを除去し、苦 痛を軽減するためには、テーピングが効果的です。

 テーピングには、スパイラルテーピング法とウィンド テーピング法があります。ウィンドテーピング法は、粘 着テープに爪が入るくらいの切り込みを入れ、その部分 に爪を通してテープを貼り、爪甲と側爪郭を引き離す方 法です(図7-1)。両端に肉芽がある場合に適した方法

痛みの軽減につながるケア方法を 指導する

図6-2 肉芽形成に対する外科的処置例 図6-3 マルチキナーゼ阻害薬による手足症候群の治療例

図7-1 テーピングの方法(ウィンドテーピング法)の手順 清原祥夫先生 ご提供 ナース専科×日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 タイアップセミナー(2017年8月27日開

催).清原祥夫先生 ご講演資料.より

ナース専科×日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 タイアップセミナー(2017年8月27日開催).西島安芸子先生の演習を撮影 図7-2 テーピングの方法(スパイラルテーピング法)

清原祥夫先生 ご提供

参照

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