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日本と韓国における子どもの遊び文化比較研究

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Academic year: 2021

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(1)

著者 権 惠京

雑誌名 東京家政大学生活科学研究所研究報告

巻 20

ページ 17‑24

発行年 1997‑06

出版者 東京家政大学生活科学研究所

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009830/

(2)

AComparative Study of the Culture of  Children s Play in Japan and Korea

権 恵京

KwoN, HYE KYuNG

序 章

1.研究動機

 1990年代に入ってから日本では「国際化」と いう言葉が盛んに言われるようになった。「国 際化」とは,政策的なものではなく,ある意味 では日常生活の中で自然に身にっくものだと思 われるが,単一民族である日本や韓国のような 国では「国際化」という言葉を聞いただけで,

頭が何かの意識を整えようとする不自然さが生 じている。日本は,経済大国と言われ,実際世 界どこへ行っても日本の製品や技術の浸透がす

ぐ目にっく。これはすでに日本の経済は世界の 中では「国際化」されていることだと考えられ

る。

 ところで,韓国でも1993年これまでの軍事政 権が幕を閉じ,新しい文民政権が樹立した。ちょ うど日本の「国際化」ムードと足をそろえるよ うな形になったのだ。韓国では「世界化」とい う言葉を新しい政策の表に出し,様々な分野で の「世界化」の動きが見られるようになった。

 「国際化」と「世界化」。それぞれ持ってい る言葉のニュアンスは少しずっ違うかも知れな いが,両国が求めている根本的なものとは,国 民の目を外に向けさせ他国と協力し,理解し合 うことではないだろうか。特に,日本と韓国は アジアの中でも一番近い隣国であり,長い歴史 の中ではお互いに人的・物的交流も盛んに行わ れたことがある。しかし,近代に入っては,日

本による韓国の植民地時代を背景に,両国の

「交流」は消極的になりっっあったという反省 が求められている時期に来ているのではないか と思う。そこで,日本と韓国の間に「国際化」

を進めて行くために必要とされることは何だろ うかと考えたとき,それは教育であると考えた のである。特に両国が持っている「文化」は大 変共通しているものが多く,それを教育の中か ら見出すことは大変重要なことではないかと思

う。

 日本の大手書店には,韓国関係の書籍がかな りの数おいてある。しかし,多くの書籍の中で,

韓国の教育や子ども文化に触れている本は意外 と少ない。同じく,韓国の大手書店にも日本の 経済や近代歴史に関するものは多く見られるが,

教育や子どもの文化に触れている本は少ないの が実状である。子どもの文化の中で子どもの遊 び文化が持っ意味は大きい。特に,日本と韓国 の子どもの遊び文化は共通点,類似点,相違点 など様々な面から両国の子どもの文化が読み取 れるのではないかと考えられる。

 したがって,日本と韓国の両国における子ど もの遊び文化を比較研究することによって,両 国の子どもの遊び文化をより深く理解するため に本研究を始めた。

2.研究目的

韓国では古くから儒教の思想を元に,子ども に対する厳しい教育が行われてきたと言われて

(3)

いる。子どもの教育は教育機関によるものはも ちろんだが,家庭の中での儒教の思想による子 どもの教育は今でも引き継がれている。教育機 関による教育,又,子どもの文化が引き継いで いるものよりは,どちらかと言うと,家庭や社 会の暮らしの中で自然対体で受け継いだものの 方が多いと思う。実際,現在のような幼児教育 機関の誕生は古い昔のことではない。子どもが 集まり集団活動をしはじめ「幼児教育」という ものの関心が高まったのもこうした子どもの文 化を守り,よい文化をずっと長く引き継いで行

きたいからではないだろうか。

 本研究は,そのようなことを踏まえて,遊び 豊かな韓国人の生活文化の中で,子どもの遊び はどのような存在だったのか。また,地震のあ る環境気候の違いから生まれる日本の子ども の遊び文化にはどんなものがあるのか,その遊 びを比較分析することによって,両国の子ども の遊び文化を理解し,21世紀の幼児教育に役立 てたいのが目的である。

3.研究方法

(1)文献による「子どもの遊び」の検証  「子どもの遊び文化」の意味を明らかにし,

両国が持っ文化の背景になる歴史的,社会的減 少を文献を中心に検証する。

(2)観察記録による子どもの遊び文化の検証  観察記録を行った目的は,現在の子どもの遊

びの様子を観察することによって子どもの遊び 文化に関する理解を深めるためである。観察対 象と回数にっいては次のようである。

(3)実地調査による韓国の子どもの遊びと日本の 子どもの遊びに関する比較分析

 本調査は,1993年,韓国ソウル市S短期大学 2年生120名を対象に「子どもの頃記憶に残る 遊び」について記入式の調査を行ったもので,

それを整理し,日本の子どもの遊びと比較分析

した。

第1章子どもの遊び文化に影響を及ぼす要因

 一般的に幼児期の子どもは遊びたいという本 能的な欲求を持っているので誰かに強要されな くても自ら遊びを見っけ作り上げていくことが できる。一方,そのような子どもの遊びもいろ いろな研究結果によると子どもの内面的な要因 や外部の条件に影響され思う存分遊べなくなる ことがあると言われている。

 本章では,特に自然発生的な遊びを中心に,

その子どもの遊びを廻る環境との関わりの中で 子どもたちの遊びに影響を及ぼす要因とは何か について明らかにしていきたい。

1.年齢

 子どもは精神的又は身体的に成長していくに 連れ段々と発展した遊びを作り上げていく。年 齢が高くなるにしたがって仲間や集団を中心と した社会的遊びの頻度が増加していく。又,遊 びの時間も長くなり,単純なルールから徐々に 複雑なルールを自ら作り,遊びに多くのハンディー をっくっていく。遊びによっては,高度な技術 を要する遊びもあり,遊び仲間から技術を学ん だり,やり方を教えてもらわないと遊びに参加 できないようなものもある。

 このように,子ども自ら遊びそのものに興味 が深まり,誰かに教えてもらったり,上手な子 の遊び方を見て真似て自分の遊びに取り入れよ うとする意欲が出るのは4歳から5歳の子ども に多く見られる。子どもの遊びが子ども自身の 力によって伝承される時期であると考えられる。

(1)出生一3歳

 この時期の子どもは主に感覚遊び,運動遊び のような遊びを盛んに行う。出生後3ケ月位た っと赤ちゃんは,自分の体そのものが遊びの対 象にしている事が多い。自分の体を触ったり,

じっくり見っめたり,指しゃぶりをしたり,な どおもちゃのように探求していく。しかし,ま だ,この年令の赤ちゃんは他人との関わりをもっ

(4)

た遊びではなく,単独での遊びが多いので子ど も同士での遊びの伝承は難しい。

 このような年齢の子どもにも時期により必ず 現れる遊びがある。それは,1歳や2歳の赤ちゃ んが伝承したのではなく,その年齢の赤ちゃん の発達にあわせて母親や祖母が教えてくれたも のである。子どもを育てる母親は自分の国の一 番すばらしい文化を子どもに伝えようとしてい る。母親の掛け声に答える赤ちゃんの遊び姿は 単純で同じ行動の繰り返しであることが多い。

韓国における乳児期の伝承遊びを例に検証して みることにした。

 韓国では建国神話(檀君神話)があり,国を 作った檀君という人物の子孫であることを誇り に思っている。神話ではあるが韓国の国民は国 の先祖である檀君の十の教えを守り続けてきた のである。それを「檀童治基十戒訓」といい,

檀君の子孫である我々はその教えにより人間の 基本となる人間性形成に努めてきた。ここでの

「十戒訓」とは,ものごとの判断能力のある4 歳や5歳からの幼児期を対象にしたものではな く,2歳にもなっていない乳児期の子どもを対 象にしたものである。

第1訓暑。}暑。}(ブラブラ)

 赤ちゃんを抱っこし,ブラブラといいながら 左から右へ,右から左へ揺らしながら遊ばせる。

東西南北へと揺らすことは赤ちゃんが宇宙の中 に光を与える太陽のようなものであることを意 味している。

第2訓Al甘人レ9せ号(シサンシサンダ

ルグン)

 赤ちゃんにお乳を飲ませる時,片方の手で赤 ちゃんの背中を軽く叩きながら「シサンシサン ダルグン」とうたう。赤ちゃんはいっのまにか 眠ってしまうのであろう。言葉の意味は,子ど もが生まれたことのお先祖様に対する感謝の気 持ちと,子どもが大きくなったら,やはりお先 祖様を大事にしなければならないとの意味であ

る。

第3訓王司E司(ドリドリ)

 赤ちゃんが首の筋肉を使えるようになったと きの遊びである。お母さんと赤ちゃんが向かい 合って顔をあわせながら「ドリドリ」と声をか けると首を左右に回す遊び。4節音なので繰り 返し言う。人間は人間として守らなければなら ない道理があることを教えている。

第4訓噌智(ゼムゼム)

 第3訓のように向かい合って,「ゼムゼム」

と声をかけながら赤ちゃんが両手で「ニギニギ」

をするようにする。「ニギニギ」は人間の正し い行動とは何かを教えると同時に手の平を刺激 することによって,心身の活性化をもとめたも のである。

第5訓芒z}芒ス】(コンジコンジ)

 赤ちゃんの左手は「ぱ一」,右手は「グー」

をした形で人差指だけを出し,左手の内側を尖 っく遊び。指の使い方が身につく遊びである。

「コンジ」とはもっとも望ましい人間の行動を とることを意味し,左手は「天」を,右手は

「地」を現している。

第6訓遇叫司穀碧(チルラビホルポル)

 おんぶをしたときに赤ちゃんのお尻を軽く叩 きながら聞かせる言葉である。言葉の意味は,

「病気はすべて跳んでいけ」という意味でお尻 を軽く叩くリズムとお母さんの背中に耳を当て ている赤ちゃんはお母さんの響く声に安心感を 感じるのである。

第7訓智茜晋(チャクチャクン)

 遊びは両手を「パチパチ」させることで,

「チャクンチャクン」というお母さんの掛け声 で,音がする自分の「手の楽器」に喜ぶ赤ちゃ んとの遊びである。言葉の意味としては,人生 はあせらずに着々と忍耐強く生きていくことで あるという意味。

第8訓碧P} Nロ}音E}(ソムマソムマ ヨン

(5)

ダ)

 赤ちゃんが自分・一・…人で立てるようにゆっくり 手をはなしながら言う掛け声である。言葉の意 味は一人で立てるようにこれからも世の中では 人間が一番優れものなので誇りをもって生きな

さいという教えである。

第9訓ol糾号号(オファドンドン)

 お母さんの両腕に赤ちゃんを斜めに寝かせ上 下に降って上げる遊び。「オファ」とは,調和 や団樂の意味を持っていて,赤ちゃんがやさし い心を持てるようにという教えである。

第10訓ス}せx}智(ジャジャンジャジャン)

 赤ちゃんを寝かせる時の掛け声。胸を軽く叩 いて上げることによって,お母さんが側にいる という安心感を与えゆっくり寝かす。言葉の意 味は,自然にやさしく育ってくれることの願い の言葉である。

 以上で韓国の幼児期における伝承遊びについ て述べたように,乳幼児期においてはお母さん と赤ちゃんとの間における大人から赤ちゃんへ のメッセージを含んだ遊びが多く見られること がわかった。それはきっと,お母さん自身が引 き継いだ文化を赤ちゃんに伝えようとする母か らの愛情の現れではないかと思う。

(2)3歳一6歳

 子どもは3才になるとある目的意識を持って 遊ぶようになる。それまでは,何も目的方向も 決まってなく,ただ走っていた子供たちが,よ り早く走りたい,又は,走っていって何かを早 くとってきたいなど目的と持っようになる。そ こで,鬼ごっこや木登りや幅跳びなどの伝承遊 びが現れる。集団を作り,社会性が育つ環境が 必要な大事な時期である。自分以外に他人がい るという認識から伝承遊びのルールも少しずっ 身にっけていくのである。

(3)6歳一12歳

 この時期の子どもたちは遊びの種類も多様で

自分たちで遊びを開発していく時期である。以 前よりも勝ち負けを争うような遊びが盛んに行 われる。遊びそのものも,それをこなせる能力 や技能などが求められる遊びが多くなってくる。

単純な「石蹴り」でもハンディーを多く設け,

距離の感覚や運動的な技能を求められるのであ る。特に,同じ遊びでも参加メンバーの構成に よって自分たちでルールを変えていける年齢な ので一っに決まった遊びではなくなることが多 い。この時期の子どもに伝承遊びが一番広がり やすいのではないかと考えられる。

2.性

 子どもの遊びには,遊びの道具やおもちゃ,

友達構成によって男児が好む遊びと女児が好む 遊びが異なる場合が多く見られる。最近行った 幼稚園の観察ではママごとコーナーに男の子達 が多く参加していること.に気づいた。それも何 もしない亭主関白を演ずる男の子ではなく,お 料理をしたり,お茶を出したり,買い物に出か

ける父親役の子がふえてきているのである。し かし,一般的な伝承遊びをみると,ゴム飛びや お手玉遊びなどは,ほとんど女の子が,石蹴り や,戦争ごっこ,木登りなどは男の子がやって いる。もちろん男女共通して遊べる鬼ごっこや,

かくれんぼもある。ただ,遊びが次の世代の子 どもに伝わるときは,やはり男の子の遊びは男 の子に伝わり,女の子の遊びは女の子に伝わる のである。

 最近韓国では女の子の遊びの中に男の子の遊 びがよく見られるようになった。儒教の文化を 持っている韓国ではやはり後継ぎである男の子 を大事にしてきたのだが,近代に入って女性の 社会進出とともに核家族化が進むようになった。

女性が子どもを一人か,2人しか生まなくなっ てきたので,一人だけならできれば男の子を望 む場合が増えてきていたのである。1997年2月 11日,韓国の日刊紙「朝鮮日報」の報道による と,今年小学校に入った就学児童の男女比率は,

男子が女子に比べ10%少ないと明らかにした。

(6)

つまり,日本では男の子が女役のママごとをし ているように,韓国では女の子が普段男の子が 遊ぶような過激な遊びに参加するようになって いる。昔の伝承遊びは誰がどの役で遊びをすす めるのかがはっきりしていたが,性による伝承 遊びの区別は段々と少なくなっていくだろうと 予測される。

3.知的能力

 子どもの遊びと子どもの知的能力との関係は 多くの研究結果からも指摘されていることでは あるが,伝承遊びの中でも同じ事が言えると思 う。特に,既製品のおもちゃで単純な遊びで終 わってしまうのではなく「1.年齢」でも述べ たように知的能力が発達することによって子ど

もの遊びは段々と高度な遊びに展開していく。

したがって,伝承遊びの中でよく見かけられる のは,年齢層がある程度決まっている場合が多 いことである。年齢の低い子どもが集団の中に 入って一緒に遊んでいる姿をよく見かけられる が,実際遊びの中を分析すると,年齢の低い 子は実際は自分より年上の子どもの指示に,た だ従っていることが多い。「ガキ大将」になる のは集団の中でも力もあって,遊びをリードし ていく能力がある子である。それは,自分より 年上の子どもに,遊びを学び,習得した上で,

自分たちの遊びに取り入れリードしていく必要 があるからである。特に伝承遊びにおいては,

大人に教わるのではなく,子どもたち同士の伝 承なので子どもの知的能力と深い関係があるこ

とは否定できない。

4.自然環境

 子どもの遊び文化に影響する要因として,自 然環境というのは,もっとも大事なものである。

なぜなら,自然環境はその国の文化を生みだす 基本的な要因であるからである。近代に入って からは,機械によって大量に生産されるおもちゃ があり同じおもちゃで同じ遊びをするようになっ ているが,子どもの遊びには既製品のおもちゃ

ではなく自然の中から遊び道具を見っけていき たいものである。

 韓国の遊びには「石」を用いる遊びが多く見 られる。日本を「木の文化」と言うなら韓国は

「石の文化」と言えるだろう。花こう岩地帯で ある韓国は石に対する愛着が他の国には見られ ないほど深いものがある。どこに行っても石が 転がっているし,種類や硬さ,色も様々である。

小石を集めるだけの遊びもよくある。きれいな かわいい石を集める子もいれば,いくら蹴られ ても割れない硬いものを集める子もいる。子ど もの遊びにも韓国の自然環境は大きく影響して いることを意味しているのだろう。小石が多く 柔らかい土が少ない韓国には,砂遊びや,泥ん

こ遊びが少ないのである。逆に四面が海に囲ま れている日本は砂遊びや泥んこ遊び,水遊び,

など自然を利用した遊びが発達しているのであ る。遊びの道具も自然の中から見つけるので日 本のように竹の木が多い国は「竹とんぼ」や

「竹馬」など「竹」を用いる遊びが多い。また,

日本の子どもの遊びによく登場する,鳥,さる,

きっね,猫などは韓国にはあまり出てこない。

特におさるさんや猫は韓国にあまりない動物な のでなじみがない。出るとしても,笑いものに されたり悪い役を演じる動物になるのである。

5.社会的経済環境

 個人の家庭の経済環境も考えられるが,子ど も達の集団遊びの変化を見るにはまず社会的な 経済環境を上げなければならない。伝承遊びを 見ると,その時代の国の経済環境がよくあらわ れていることに気づく。あやとり遊びや,ビニー ル袋を使ったり,空缶を用いる遊びがあったり する。ステッカーを集めるようになったこのご

ろの子どもたちはステッカーを用いる遊びを考 えていく。最近はパソコンのゲームソフトのケー スを集め,積み木遊びをしている子どもも見か けられる。その社会の経済がどのぐらい進んで いるのかによって,その副産物として生まれる

「物」により,子どもの遊び文化も変化してい

(7)

くのである。

6.教育環境

 教育環境は,子どもの教育を担う教育機関に よって大きく変化していく。特に近代において は,その国が求めている教育政策によっても子 どもの遊びに変化が現れるのである。ピアノさ えあれば幼稚園の認可が降りた時代もあれば,

遊びの空間として決まった設備を備えなければ 認可が降りない時代もある。子どもが自由に遊 ぶためにはどんな環境にどんな空間を必要であ

るのかが大変重要な事である。人数が多くて狭 ければ自由に物を広げて遊ぶことはできない。

どんな教具や教材を提供するのかによっても子 どもの遊びは変わってくる。

 近来韓国では,コーナー教育(コーナー別に 遊びを決めておく)が幼稚園の教育の中に広まっ ている。遊びと遊びの連携が難しく,壁や収納 ケースなどで仕切られている部屋には教具・教 材による遊びしか生まれないのが現状である。

そのため教師は毎日の仕事と,教材・教具を作 るために遅くまで残業をするケースが多いので ある。このような教育環境では子どもの遊びは 教師の準備した教具・教材に頼ってしまい,伝 承する遊びという意味からは子どもたちの遊び 文化はなかなか生まれにくい。子どもにとって の遊び文化とは,子ども自身が自分たちで作り 上あげたものであるからこその遊びに意義があ

るのではないかと思う。

第2章日本と韓国の子どものあそび比較分析

1.大地の遊びを通して

 子どもたちの遊び場はいっもきれいな公園や 芝生のところだけとは限らない。砂や泥の中で 遊ぶ子どもの姿はとても楽しそうにみえる。洗 濯機がなかった時代には母親に面倒をかけるこ

とだが,楽しく遊んでいる子どもたちにとって は,何も気にしている様子は伺えない。洗濯機

がある今の時代でも,やはり汚れた服のまま遊 びから帰ってくる子どもに母親は嬉しそうな顔 はできないかもしれない。

 子どもたちはいったいどんな遊びをしていた のだろうか。大地の中で,子どもたちは石や棒 を拾い,絵描き遊びや地面取り,場所とりなど の遊びをしていたかもしれない。又石蹴りをし ていたかもしれない。

 韓国の子どもたちもこの石蹴り遊びには大変 興味をもっている。韓国の子どもの石蹴り遊び の地面に書いた図をみると,日本と韓国両国の 特徴がよく分かる。代表的なものからみると次 のようである。

*日本の場合

  (図1)  (図2) (図3)

*韓国の場合

  (図4)  (図5) (図6)

 日本の場合は「い・ろ・は・に」の文字を取 り入れている(図①)が,韓国だとハングルを 用いる石蹴り遊びはない。これは50音の文字で できている「いろはに」の詩が日常生活の中で よく耳にしているからかもしれない。しかし,

韓国の文字は,子音と母音の組合せで文字がで きるので,日本のように50音だけで終わるわけ ではない。したがって,いくらでも文字が作ら れるハングル文字は子どもの遊びには数が多す ぎるのである。もう一つ,「温泉マーク」入り の図(図②)。自然環境が子どもの遊びに浸透

(8)

していることを現している。韓国の太陽の図

(図⑤)のように,寒い冬の日に外で遊ぶ子ど もにとっては太陽のありがたさは大変貴重なも のである。③の図は,日本のかやぶき屋根を想 像させる物に見える。身の回りの実物が遊びの 対象となるのである。④の図は韓国の家の形に 見える。遊び方は「空」から後ろ向きに石を投

げ,枠に入ったところが自分の面積になるのだ が,そこを「空」と表現するのが面白い。この

「空」は単純な空ではなく「天国」を意味して いる。「天国」は死んだ後の世界を現している というよりは,いっも家を守り,中の人間の暮 らしを守り,死んだ後は天国に行けるようにと いう願いをいい,それが遊びに現れているので

ある。

2.遊びに伴うわらべ歌を通して

 韓国は日本に比べるとわらべ歌の数が大変少 ない。民謡のような大人の歌は盛んに歌われる にも関わらず,子どものわらべ歌の数は少ない。

しかし,数少ない韓国のわらべ歌には不思議に 思われるほど大人の世界の社会背景が現れてい

る。

 1970代後半まで韓国は経済発展に力を入れて いたので夜遅くまで飲食店はもちろん過消費を 押さえる政策が行われていた。その一っが12時 通行禁止令である。夜12時以降に歩いている人,

商売をしている人たちは警察に呼ばれる。その ような厳しい社会雰囲気がそのまま歌になり遊 びに入ったのである。「東門」とは,実際ソゥ ル中心部を囲んでいる4っの門のひとっである。

 次は言葉の遊びである。言葉の展開がそっく りで日本と韓国とほとんど同じリズムの歌であ

る。

(日本)

       

っうてんかくは たかいたかいは えんとっ

      

えんとっはながい ながいはへび

         e

へびはこわい こわいはおばけ

       

おばけはきえる きえるは電球

      

電球はひかる ひかるはおやじのはげ頭

(韓国)

       

おサルさんのお尻は あかい

      

あかいはりんご りんごはおいしい

      

おいしいはバナナ バナナはながい       

ながいは汽車汽車は早い

       e

早いは飛行機 飛行機はたかい たかいは白頭山

 形容詞や動詞の選択から言葉を連想していく 遊びである。強調しようとしているのは一番最 初と,一番最後のふたっであろう。日本の「お やじのはげ頭」は昔から侍のちょんまげ文化が 残っているからではないだろうか。「はげ頭」

が本当は恥ずかしいものではないからこそ子ど もの歌にあらわれたのではないだろうか。韓国 の場合だと,髪の毛も親からもらったものだち う意識が強くて男も女も皆髪を伸ばして結んで 生活していたものだ。だから,自分から,髪の 毛を切ったり,切られたりすることは,命と取

り替えるぐらいのっらいことであった。まさに,

はげてしまった頭は,自然に抜けたとしても口 にすることはできない言葉である。目上のお父 さんのはげ頭を楽しく歌っていることは,韓国 ではありえないことである。

3.遊びの道具を通して

 日本と韓国の子どもの遊びには共通した遊び の道具が用いられている。石や,ゴム紐や縄飛 び,輪ゴム,など日常生活の中で見うける日用 品が遊び道具の対象となるのである。その中で,

遊び名の道具がまったく同じで遊び方が日本と 韓国と異なるものがある。韓国のお手玉遊びは

「コンギ」といい,使われる道具は小石である。

日本のお手玉遊びに使われるものと同じ物は,

韓国では「オゼミ」といい,日本のドッジボー ルに似ている遊びであるのがわかる。道具が,

それも手づくりの物なのに同じ作りであること には驚きである。韓国の「コンギ」は現在では プラスチックになっているが,昔は小石を拾っ

(9)

てよく磨いたものである。「石の文化」である 韓国はこのように小石を遊びの道具によく使わ れたのである。大きさを決めるのも遊びがうま くできる一っのコッであったので,小石を選ぶ 子どもの目は真剣である。同じ遊び方なのに道 具が違い,道具は同じなのに遊び方が異なるの は長い歴史の中で,身近な物がわたりすぎてそ こから新たな遊びを作り出す子どもの力が伺え るのである。

2.今後の課題

 今回の韓国の子どもの遊びは外遊びを中心に 研究を進めてきた。しかし,遊びの現象として

「内遊び」も研究の対象にしなければならない と思う。これからの課題としてはいくっかの遊 びに焦点を当て,両国の請う痛点と相違を比較 分析することを試みたい。

参考文献

終 章

1.研究結果とまとめ

今回の研究では,次のような結果を見出すこ とができた。

(1)幼稚園・保育園での子どもの遊びと公園や 家庭訪問で見られた子どもの遊びは両国共に遊 びの形態が異なっていた。

 幼稚園や保育園の子どもの遊びは遊びの変化 が多く見られたが,それは,園内のプログラム により(おやつ時間,うがい時間,片づけ時間,

など決まった日程により)遊びが途切れること が多かったのである。園外での遊びでは遊びの リーダーによっての変化が多く見られた。伝承 遊びであれば特に何をどうして遊ぶのかがそこ で決まるので,メンバーの構成が遊びの形態に 大きく影響していることが明らかになった。

(2)韓国の子どもの遊びには, 教の教えや,

社会的背景が大きく作用していることがわかっ

た。

書名

1風土と教育

著者 出版社  出版年度 中谷かおる 教育開発研究所1992 2 {罐び・手遊び・リズムあそび 三宅邦夫 れいめい書房  1991 3 日本の子どもの遊び(上 かこさとし 青木書店

4 幼児と遊び    秋葉英則 ROJUN 5 群れ遊びのすすあ原田せきそうれいめい書房 6幼児の遊び百科 秋葉英則他ROJUN        f

7 韓国伝来遊びうたキム・スクキョンチョンメク 8 子ども世界の遊びと流行 深谷昌志 大日本図書 9 子どもの遊びと歌小泉文夫 草志社 10日本の中の韓国人民族カン・ヨンウ明石書店 11民族遊び教室活動韓国青少年開 図書出版人間

12 4歳児の遊び  才賀敬他ROUJUN

1979 1994 1990 1995 1989 1990 1986 1995 1994 1994 13大都市と子どもたち山本清洋  日本評論社   1992

14戦後の子ども史  中野光 15子どもの遊びと発達河崎道夫 16幼児の集団生活  畑谷光代 17保育原理2001  小川博久

金子書房 1995 ひとなる書房  1994 日本書籍

同文書院

1990 1991 18子ども・社会・文化内藤たかしサイセンス社 1991

(3)伝承遊びは,高度な技術を要求するものも 多く,そのため,外で遊べなくなった現代の子

どもたちにとっては遊びが伝承されにくくなっ ていることが共通点として明らかになった。

参照

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