ソール型案内デバイスを目的とした触感評価に関する研究
The Evaluation of Texture for the Wearable Sole Device
1w163127-4 山田 侑輝 指導教員 長 幾朗 教授
YAMADA Yuki Prof. CHOH Ikuro
概要: 本研究は、足裏が感じ得るテクスチャー刺激の有効性を評価した。研究するに至った経緯は以下の通り だ。まずは歩きスマホが社会問題となっていることに着眼し、その根本原因が案内系アプリの使用であることを つきとめた。そこで、五感などを活用した案内デバイスなどで代替可能であるのかを突き止めるに至った。先行 研究から、触覚を用いたデバイスが案内には適していると判断できたため、ハプティクス技術を応用した、足裏 へのテクスチャー刺激による手法が望ましいと考えられた。そして、この提案が果たして実際に有効であるのか を検証するため、凹凸マット5種類を用意し、被験者10人を対象に各凹凸の識別速度と誘導性の評価実験を行 った。最終的には、テクスチャーの要件や組み合わせ方など、主となるポイント4つを言及した。
キーワード:足裏テクスチャー、歩きスマホ、案内デバイス、ハプティクス技術、誘導性
Keywords: sole texture, texting while walking, guide device, haptics technology, guide ability
1.はじめに
近年、足裏に刺激を与え案内方向を知らせると いった案内デバイスが研究開発されている。これ により、歩くことに専念でき、歩きスマホなどに よる事故の防止・削減にもつながると予想される。
よって本研究では、それらのデバイス開発のた めの事前研究として、足裏で感じるテクスチャー の誘導性の如何と、どのようなテクスチャーが案 内に最適であるのかについて評価・検証する。
2.歩きスマホの社会問題化と原因について
2016年にポケモンGOがリリースされる以前か
ら、スマホの普及に伴い、歩きスマホ者もまた増 加傾向にある。
電気通信事業者協会が調べた歩きスマホをし てしまう理由においては[1]、地図・道案内、乗 り換え案内・路線検索などのアプリを使用するた めとの回答が最も多く、歩きスマホの主な原因は 案内アプリの使用であることが分かった。
よって、歩きスマホは社会問題となりつつある と言え、それを削減・解消するためには案内系ア プリに代わる、新たな案内ツールの開発が必要で あると考えられる。
3.先行研究・事例
先行研究では、五感それぞれに着目したデバイ
スがあるほか、本研究と類似点のあるソールに振 動装置を取り付けたスマートシューズなどがあ る[2]。
4.足裏に着目した理由と提案
足裏に着目した理由においては、まずは触覚と 視覚・聴覚・味覚・嗅覚を比較しながら、それら の欠点を挙げ、結果的に触覚による案内がベスト であるという結論に至ったためである。触覚にお ける部位の中でも、足裏がふさわしい理由につい ては、プラスワンで新たなデバイスを持ち歩く必 要がなく、体への負担が減らせると考えたためで ある。
そこで足裏の案内デバイスに目を付けたが、先 行研究で参照した通り、既に開発済みであった。
しかし、多くの足裏案内デバイスは振動を用いた ものばかりで、その性能は進むべき方向の右左折 だけを振動により提示しているものであった。例 えば、左折の場合だと複数ある左折方向の内、何 度方向への左折であるのかや、単に「止まれ」な どの指示もなされない。どうしても視覚による情 報に依存してしまい、結果的にスマホでの案内ア プリへと帰着することが予想される。
このような背景から、ある技術に注目した。
アクチュエーターと振動を用いてあらゆる触 感をディスプレイや空間上に表現できるハプ ティクスと呼ばれる技術だ[3]。
2 この技術をソールに取り入れることで85度方 向に右折などといった難しい指示が可能にな り、ユニバーサルデザインへの応用も期待でき ると考えた。しかし、その開発に至る前に、「右 左折」「止まれ」を示すテクスチャーはどのよ うなものが適切であるのか、それらの組み合わ せ(出す順番)はどのようなものであると分か りやすいのか、といったテクスチャーの要件を 検証しておく必要があると考えた。
よって、本研究では5種類の凹凸マットを使用 し、凹凸テクスチャーによる誘導性や有効性の評 価をするに至った。
5.テクスチャー評価と誘導実験、応用について 評価実験は二段階の実験Aと実験Bに分けて行 った。実験Aは各凹凸の識別速度を。実験Bはそ れぞれの凹凸に意味付けをし、その意味を基にゴ ールを目指してもらう誘導性の検証をした。
実験Aの結果からは、平らなものが最も感知し やすく、次に凹凸が大きいものが感知しやすいこ とが分かった。さらに、隆起の部分が無く、へこ みだけで構成されているマットは、凹凸の小さい マットに比べると、感知しやすいことが明らかと なった。また、全被験者が指先でなぞるように凹 凸の差異を識別していたことから、凹凸が大きい マットと平らなマット以外の凹凸は、足裏の平の 部分では識別できないことが分かった。
実験 B の結果からは次の四つが明らかとなっ た。
一つ目は、平らなマットと凹凸の大きいマット は比較的瞬時に区別がつき、これらを「前進」と
「止まれ」の組み合わせにするのはベストであっ たこと。
二つ目は、「平坦なテクスチャー」を挟んでか ら、その次に「意味を付したテクスチャー」へと 移行する形が望ましいということ。
三つ目は、「止まれ」と「右左折の凹凸」の組 み合わせでは誘導が難しいということ。
四つ目は、前後間隔を認識できなくなることで、
方向感覚が狂い、混乱状態に陥る可能性があるこ と。
これらの結果を、実際の開発では図5-1のよう に活かしたいと考えている。
図1.提案するソール型デバイスのイメージ(山
田, 2020)
踵の辺りに細長いテクスチャーを示す。これに より、方向感覚が分からなくなる可能性が減り、
頭の中での方向と、リアルな経路上の方向が一致 し、より確かな案内が可能になると思われる。
6.まとめ
以上から、足裏でのテクスチャー誘導における 重点は、「進んできた過去の道のりのテクスチャ ーを確認できること、また、それらを再現できる こと」であると言える。
しかし、本研究では三つの課題がある。一つに、
多種多様なテクスチャーによる検証実験を実施 すべきこと。二つに、リアルに断面が変化するテ クスチャーで検証できていないこと。三つに、よ り広範囲で実験を行う必要があること。範囲が狭 いことにより、被験者の共通した行動様式が検出 されにくい恐れがあるため。
これらの課題点はあるが、今回の研究で明らか となった結果を活かし、将来的には実際にハプテ ィクス技術を用いたソールを開発したい。
参考文献
[1] 一般社団法人電気通信事業者協会(2018)「「やめ
ま し ょ う 、 歩 き ス マ ホ 。」 に 関 す る 調 査」,<https://www.tca.or.jp/press_release/pdf/18 0323sumahochosa.pdf>(参照2020-1-14)
[2] Ducere Technologies(2014)「Redefining the
ecosystem of wearables 」 ,<
https://ducere.io/products.php>(参照2020-1-14)
[3]TELESCOPE Magazine(2017)「多様化する触感表現の 技
術」,<https://www.tel.co.jp/museum/magazine/intr actable/report02_01/03.html>(参照2020-1-14)