平成20年度 理数教育ステップアップ研修 実践記録
学習内容のつながりを意識しながら追究するための学習活動の工夫
− 中学校第3学年「関数 = y ax
2」の指導を通して −
( 実践者 十日町市立十日町中学校 山本 俊介 )
本単元「関数 y = ax
2」では,生徒は2学年までの「一次」から「二次」へと関数の学習の範 囲を広げていく。本実践にあたっては,このことに関連して 「生徒が既習の関数とのつながり , が十分にとらえられず,関数の学習の広がりを実感するに至っていない」という従来の指導での 問題点を指摘した。この解消を図るために,生徒が新しい関数 y = ax
2と出会い,追究を始める
, 。
単元の導入に注目し 既習の関数と関連づけながら追究するたの課題と学習活動の工夫を試みた 課題については,生徒が既習の関数の学習を想起できるように1・2学年時で用いた水槽モデ ルを使った。また,関数の特徴を追究する場面においては,イメージ図を用いて,対応表と具体 的事象場面での変化や対応の様子を関連づけて考察できるような活動を設定した。このことによ り,既習の関数の見方や考え方を生かしながら,新たな関数を追究する生徒の姿が見られた。
1 本単元における「理数の面白さや深く追究する楽しさなどを味わわせる」構想 ( )数学のつながりや広がりを実感すること 1
系統性の強い数学科の学習内容において 「今学習していること」が既習のどの内容とつながっ , ているかを生徒に実感させることはとても重要である。それは,このことにより,生徒が「今学習 していること」の意義に気づき,より深く追究する意欲へとつながるものと考えるからである。ま た同時に,つながりが見いだせた既習の内容を「今学習していること」に組み込み,自分のもつ数 学の広がりを実感することで,次のような追究へとつながることも期待できる。
・新たな発展の可能性を見いだし,さらに追究しようとする。
・得られた視点や追究方法で今まで学習したことを見直し,新たなつながりを見いだそうと追究 する。
本単元の指導にあたり,中学3年間で学習する関数のつながりを次の図のように捉えた。
〈1学年〉 〈2学年〉 〈3学年〉
一 次 関 数 二 次 関 数 一般の一次関数 (一般の二次関数)
特別な一次関数 特別な二次関数 に比例する関数 に比例する関数
x に比例する関数 x x
2反比例する関数 (有理分数関数の一種)
※片側方向の矢印は「とらえ直し ,双方向の矢印は「対比」を示している。」 括弧( )内は,中学校後の発展学習事項を含んでいるもの。
本単元では2学年での「一次」の世界から,さらに「二次」の世界へと関数の対象を広げていく
ことになる。その際,単に「二次」という新しさを見せるだけでなく,2学年で学習した一次関数
と比例する関数の「一般の場合と特別な場合」の構造と対比させながら追究を進め,同じ構造が二
次の世界にもあることに気づかせる。その上で,既習の関数の見方や考え方を活用しながら二次の 世界での関数の考察へとつなげていく。そして,1・2学年で学習した関数のつながりを踏まえた 上で,それぞれの関数を学習した意味を改めて見つめさせたい。また,上記のような関数のつなが りを明らかにした上で,新たな関数が存在する可能性にも目を向けさせ,数学のさらなる広がりへ の見通しをもたせ,高校数学での学習への橋渡しをしたいと考える。
( )数学の有用性を実感させること 2
身近な事象などを考察する際に,何気なく使っている見方・考え方は数学によるものが多い。
本単元の「関数」も,自然現象をはじめ様々な身のまわりの事象を考察する上では欠かせないも のであり,対象となる事象は数学の分野にとどまらない。例えば,3学年理科の「物体の運動」で は,本単元で学習する関数の見方や考え方を活用しながら物体の運動の様子を考察する。
本単元の学習にあたっては,身近な事象や自然現象等の中に見られる関数を考察することなどを 取り入れながら,数学が様々な事象の考察に活用されているという「数学の有用性」の一面に触れ させ,数学で追究することの面白さや楽しさにつなげたいと考える。
2 本単元の導入における指導の構想 ( )関数 = 1 y ax
2の導入時における問題点
関数 y = ax
2の導入時では,次のような流れで新しい関数である「関数 y = ax
2」の導入を図 っている。
具体的な事象 2変量の抽出 2変量関係の表・式による表現 関数 = y ax
2及びそれらの考察 の定義,特徴
※1 ※2
(図中の※印は以下に述べる問題点の所在の箇所を示している)
この導入時において,次の2点を問題ととらえ,指導のあり方を検討することにした。
①導入モデルに関わる問題点(※1)
教科書では,導入時のモデルとして,ボールや球を斜面で転がす実験モデルが多く用いられ ている。このモデルは,身近で関数 y = ax
2の顕著な事象ではあるが,導入モデルとしては,
次の点で検討が必要である。
・実際に実験を行うと誤差が生じるため,データがあらかじめ示されていること。また,そ のデータの分析から見える特徴を事象に戻して追究することが困難である。
・伴なって変わる量を事例以外に見いだすことができず,既習の関数との関連を見いだしづ らい。
例えば,本校が使っている教科書では,各学年の関数の導入時に扱われるモデルは次の図の ようになり,3年時において既習の関数との関連が見いだしにくくなっている。
1学年 2学年 3学年
水槽モデル 水槽モデル 斜面での球の運動モデル
比例する関数 ・あらかじめ水が入っている場合
x
2に比例する関数 一般の一次関数・水が入っていない場合 特別な一次関数
3年間の関数学習のまとめとなる本単元では,既習の関数とのつながりを考えながら,本習 事項である関数 y = ax
2を捉えていけるような導入モデルが有効であると考える。そのために は,伴なって変わる数量が複数設定することができ,それらの数量の中には既習と本習の関数 を含むモデルを考えていく必要がある。
②対応表の分析における問題点(※2)
, 。 ,
関数 = y ax
2の変化や対応の様子は 既習の一次関数と異なる この相違点を捉えることで 関数 y = ax
2を新たな関数として認識し,さらに追究していこうとする意欲にもつながってい くものと考える。
①で述べたように, 関数 y = ax
2のデータはあらかじめ示されている場合が多い。そのた め,すでにまとめられた対応表の分析を通して,既習の関数とのつながり(共通点や相違点)
を捉えることになる。
対応表による分析は既習の関数とのつながりを見いだすために大変重要ではある。しかし,
まとめられた数値を追うだけの活動に終始するようでは,追究する関数の新しさを実感をもっ て学ぶまでには至らないと考える。そこで,具体的な事象場面での変化や対応の様子をイメー ジ図などで考察しながら,そこで見えてきたことと,対応表の分析を関連づけながら,既習の 関数とのつながりをより深く追究できるような手だてを講じる必要があると考える。
( )導入における問題点を解消するための手だて 2
上記の問題点を踏まえ,導入時における指導の流れを大まかに次のように考えた。
具体的な事象 2変量の抽出 対応表による2変量の変化,対応についての分析
多様な関数が 生徒による2変 具体的事象場面での 既習の関数の場合 見いだされる 量の抽出と考察 2変量の変化,対応 と比較しながらの モデルの提示 対象の決定 についての考察 分析
それぞれの場面での,構想は以下の通りである。
①課題における工夫
本単元の導入に当たっては,次のように水槽を通常においた場合(課題1)と,45°に傾け た場合(課題2)の2つを示し,それぞれの場合の「水面の高さ」を x ㎝ 「水が入っている部 , 分を正面から見た図形の面積」を ㎝ とし, と の関係を考察する。 y
2x y
〈課題1〉 〈課題2〉
縦が5㎝,横が15㎝,高さが20㎝ 直方体の水槽を45°傾けた状態で の直方体の水槽がある。この水槽に水を 水を入れるとき, と
x y
の関係は?入れるとき, と
x y
の関係は?(図)
傾けると
前時で課題1について考察し,本時はその結果をもとにして課題2を追究していく。考察す る対象は2つの課題で同じであるが 「傾ける」という条件変更をするだけで,既習内容には , ない新たな関数が見いだせることに,生徒の関心や興味を喚起することができると考える。ま た,課題1での考察結果と対比することで,難易度の高い課題2の考察の手がかりを生徒自身 が見つけ,追究の意欲が高まるものと考える。
②イメージ図を使った考察
課題の追究に当たっては, と x y の変化や対応の様子をイメージ図を描きながら考察する活 動を設定する。
具体的には,次のようなイメージ図をもとにしながら,適宜,図を描き加えたり,描き変え たりしながら考察することにする。
〈水槽を通常においた場合〉 〈水槽を傾けておいた場合〉
この場合,それぞれにおいて,表1のような視点等で考察することにより,イメージ図をもと に既習の に比例する関数や一次関数と関数 = x y ax
2の特徴を対比することができる。
, , ,
イメージ図を使った考察で 課題2の数量の変化が 課題1と異なっている点を把握しながら 数量の変化の様子を対応表にまとめ,分析を行うことにする。このことにより,具体的な事象場 面での考察が,対応表をより多面的に分析する上で有効な手がかりとなる。また,対応表の分析 で得られた特徴を具体的な事象場面にもどって考えることで,より理解が深まるものと考える。
この後,見つけた特徴を既習の関数のものと対比しながら整理し,共通点や相違点を明確にし た上で,関係を式で表し,新しい関数の定義へとつなげていく。
(表1)イメージ図による考察の視点と関連する対応表の分析
考察の視点 課題1のイメージ図より 課題2のイメージ図より
=1のときの 高さが2倍,3倍,…と変化す 高さが2倍,3倍,…と変化す x
面積との比較 るのにともなって,面積は2倍, るにともなって,面積は4倍,9 3倍,…と変化する (底辺は一 。 倍,…と変化する (高さ,底辺 。 定で,高さのみ変化するため) ともに変化する)
3倍 4倍 9倍
2倍