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おこるべくして起こった事故

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Academic year: 2021

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消防科学と情報 原子力発電について、しばしば「フェイル・セ

イフ」という表現が使われてきた。日本流に言う と、「安全神話」ということになろうか。原発の無 謬性を説明するため、従来、原発には幾層もの安 全装置が装備されていると電力会社は説明してき た。原子炉建屋は「最大級の地震に余裕を見た設 計」であることが指摘され、その内部の燃料ペレ ットは第1から第5にわたる防護体制で保護され ているというのが、企業側の主張であった。とこ ろが、原発は安全という神話は、今回、無残にも 崩壊した。

「フェイル・セイフ」という考え方について、

すでに 10 年も前からその誤りを指摘してきた論 者がいる。アメリカ・エール大学の社会学者、チ ャールス・ペロー名誉教授である。この人に『ノ ーマル・アクシデント』というタイトルの著作が ある。今回の原発事故は、ペロー氏がこの著書で 展開した仮設が正解であったことを示している。

同氏が重視するのは、原発のもつ複雑な構造であ る。複雑系の原発設備では、「タイト・カプリング」

と呼ばれる仕組みが働くというのが、ペロー氏の 論点である。

「超緊密相互依存」とでも訳すべき表現である が、同氏の意見によると、原発はナットやボルト

など多数の部品から組み立てられたユニットを基 本にしている。ユニットが組み合わさってサブ・

システムが作られる。それが原発装置の基本を形 成するが、これには電源供給や汚水浄化タービン など多数の建屋が付属する。それらすべてを含ん で原発システムが出来上がる。

問題は、パーツやユニットなど、それぞれの部 品は完壁に作られてきたが、原発が複雑な装置で あるため、一カ所に発生した小さな不具合でもシ ステム全体に大きな影響を及ぼす可能性の出るこ とである。それぞれのパーツやユニットが相互に 依存する割合が緊密に正確に作られている分、脆 い部分も多くなる。電力会社では日本でスリーマ イル島やチェリノブイリの事故が発生することは ないと考えてきた。設備は、大地震にも十分耐え られる完壁な構造のはずであった。ところが、福 島第一原発の場合、原子炉を覆う建屋の外部に設 置された電源供給施設の耐震構造に問題があった。

設備は海に直面し、大津波ではひとたまりもなか った。その点で、原発に「フェイル・セイフ」は あり得ない。今回の惨事は、おこるべきして起こ った事故(ノーマル・アクシデント)であったと見 ることができる。

特集Ⅰ 東日本大震災(2)

☐ノーマル・アクシデント―

おこるべくして起こった事故

明治大学名誉 教授

中 邨 章

参照

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