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臨床神経 indd

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157 2013.  はじめに  腕神経叢疾患は,それに隣接する部位の障害である 頸髄・頸神経根疾患,末梢神経疾患に比べるとはるか に頻度が低い疾患群である。それに加えて,腕神経叢 疾患の診断は一般に難しいと考えられている。その理 由として,臨床症候においては頸椎症での髄節性の障 害や,時には末梢神経障害としばしば紛らわしいこと, 画像での異常もとらえにくいこと,電気生理学的にも 末梢神経近位での障害になるので局在が一般にとらえ にくいと考えられていることなどが挙げられる。  本稿では,このように診断が難しいと一般に信じら れている腕神経叢疾患において,電気生理学的検査が 実は高い局在診断能力を有していて,非常に有用であ ることを示すのを主たる目的とする。類似の総説も参 考としていただきたい1,2)。    腕神経叢の解剖  腕神経叢疾患を理解するためには,その解剖の理解 が不可欠である。電気診断の専門医は,図 1 に示す ような腕神経叢の解剖がすべて頭の中に入っていて, かつ,上肢各筋の筋節と末梢神経支配3),及び,感覚 神経伝導検査に用いられる各神経の対応皮節を熟知し ていなければならない。髄節と末梢神経が決まれば, 腕神経叢において神経幹・神経束レベルでそれぞれど こを経由するかは自動的に決定される。このような神 経解剖の知識を踏まえて,臨床的な運動・感覚障害の 分布を詳細に検討するだけで,正しい診断が示唆され ることも多い。  脊髄から出た前根と後根は椎間孔内で合して脊髄神 経となり,直ちに前枝と後枝に分岐する。腕神経叢 は C5 から T1 までの 5 本の脊髄神経前枝から由来し, 近位から順に神経根レベル(root:正確には根では なく脊髄神経前枝),神経幹レベル(trunk),分枝レ ベル(division),神経束レベル(cord),終末神経幹

腕神経叢障害

園 生 雅 弘

要旨 腕神経叢障害の評価にはその解剖の理解が不可欠であり,それを踏まえた臨床症候 の詳細な検討が出発点となる。電気生理学的検査では感覚神経伝導検査の有用性が特に高 く,複数の神経を調べることで,C6∼T1 由来の腕神経叢成分についての局在診断が可能で ある。運動神経伝導検査では C8/T1 が評価できる。針筋電図検査は臨床症候以上の情報が 期待できる場合に適応となる。頸部傍脊柱筋の針筋電図は,頸椎頸髄疾患と腕神経叢疾患 の鑑別に有用である。胸郭出口症候群(TOS)では母指球萎縮を主徴とする稀な true neurogenic TOS だけが真の疾患概念として確立されており,T1 優位の下神経幹障害が神経 伝導検査で証明できる。その他放射線性・腫瘍性腕神経叢障害,胸骨正中切開術後 C8 腕神 経叢障害においても電気診断が有用である。神経痛性筋萎縮症では,臨床的・電気生理学 的に,腕神経叢障害で説明困難な多発性単ニューロパチーの分布を証明することが診断に 寄与する。

Key Words : brachial plexopathy, sensory nerve conduction studies, needle EMG, thoracic

outlet syndrome, neuralgic amyotrophy 特集「臨床に役立つ神経筋電気診断」

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(terminal nerve)の 5 つのレベルに分けられる4)。また, 腕神経叢障害を,鎖骨上部(supraclavicular),鎖骨後 部(retroclavicular),鎖骨下部(infraclavicular)に分 けることも行われるが4),一般に鎖骨上部の障害が多 い。鎖骨上窩は Erb 点として電気生理学的にもアク セスが可能であるが,ここは trunk ∼一部 root レベ ルと,腕神経叢ではかなり近位に位置している。  腕神経叢の各レベルから,図 1 に示したような様々 な末梢神経が分岐する。これらのうち,腕神経叢の近 位で分岐する(early branching)神経の評価は局在診 断上有用な場合がある。これには,根レベルで分岐す る長胸神経,肩甲背神経,上神経幹から分岐する肩甲 上神経などがある。ただし,長胸神経,即ちそれが支 配する前鋸筋は,C5∼C7 の 3 神経根に由来し,単一 根の障害では異常を呈しにくいので,実際には病変局 在にあまり役立たない。最も近位で分岐する枝と言え るのが,脊髄神経後枝であり,これは,傍脊柱筋への 運動枝と項部∼背部正中付近の皮膚への感覚枝から成 る。このため,後述のように,傍脊柱筋の筋電図は, 頸椎・頸髄疾患と腕神経叢障害の鑑別に用いられてい る。また前枝からの最初の枝は,交感神経幹に向かう 白交通枝だが,腕神経叢領域では第 1 胸神経のみに 存在し頭部への交感神経の節前線維を含む。この障害 で Horner 徴候が出現する。従って,腕神経叢障害で Horner 徴候が見られれば,最近位の T1 前枝まで障 害されていることが示唆される。  腕神経叢疾患評価に用いられる電気生理学的検査  腕神経叢疾患の診断に用いられる電気生理学的検 査 と し て は, 神 経 伝 導 検 査(nerve conduction study;

NCS),即ち,運動神経伝導検査(motor nerve con

duc-tion study; MCS)と感覚神経伝導検査(sensory nerve

conduction study; SCS),針筋電図,体性感覚誘発電位

(somatosensory evoked potential; SEP)などが考えられ る。これらについて概説する。

 1.運動神経伝導検査(MCS)

 MCS では,次述の SCS と異なり,頸椎・頸髄疾患 でも腕神経叢疾患でも,軸索障害があれば複合筋活動 電 位(compound muscle action potential; CMAP) 振 幅の低下がみられ,両者の鑑別には使えない。また, MCS では慢性期に軸索本数=運動単位数の減少が あっても,神経再支配によって代償されるので CMAP 振幅は正常となる可能性がある。従って,軸索障害の 検出力においては MCS は SCS に劣る。MCS で通常 用いられる正中神経 短母指外転筋(abductor pollicis brevis; APB) は T1 筋 節 に, 尺 骨 神 経 小 指 外 転 筋 (abductor digiti minimi; ADM)は C8 筋節に相当して

おり5),橈骨神経 示指伸筋(extensor indcis; EI)も

図 1 腕神経叢の解剖 (文献 2)より許可を得て引用)

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159 2013. C8 筋節で,通常の MCS で検索可能な髄節は限られ ている。このように種々の限界はあるが,MCS は侵 襲の少ない手法であり,遠位刺激での CMAP 振幅低 下があれば,痛い針筋電図を行うまでもなく軸索障害 を証明できるので,最初に行う検査のひとつとして選 択されてよい。MCS では Erb 点の刺激も可能である が,腕神経叢での障害を局所性の遅延や伝導ブロック によって証明できるのは例外的な場合にとどまる。そ の他の近位筋 CMAP も Erb 点刺激などによって記録 できるが,一般には徒手筋力テスト以上の情報を与え ることは少ない。  2.感覚神経伝導検査(SCS)  SCS に関連して重要なこととして,腕神経叢は後根 神経節より遠位にあるので,腕神経叢障害では感覚神 経に関しては遠位側軸索が障害される,いわゆる節後 性障害となる。このため,腕神経叢障害では,SCS で の感覚神経活動電位(sensory nerve action potential; SNAP)の振幅低下がみられる。これに対して,頸椎 症 性 脊 髄 症(cervical spondylotic myelopathy; CSM) はもちろん,椎間板ヘルニアなどによる頸椎症性神経 根症(cervical spondylotic radiculopathy; CSR)でも, 障害部位はほとんどの場合後根神経節よりも近位側で ある(節前性障害)。従って,後根神経節細胞と遠位 側軸索には異常は来さず,SNAP 振幅も正常である(こ のことが CSR と手根管症候群(CTS)が合併しやす いという double crush 仮説が成立しない最大の根拠 となる6,7)。このように SCS では腕神経叢疾患と頸椎・ 頸髄疾患の鑑別が可能である。また,SCS では,次述 の容易に調べられる神経によって,C6∼T1 の 4 つの 髄節を調べることができるのも利点となる。  SCS の組み合わせによって,腕神経叢疾患の局在診 断を行うという手法は,Cleveland Clinic の Wilbourn, Ferrante らによって,比較的最近開発されたものであ り4,5,8),腕神経叢疾患の評価において最も有用な手法 となる。図 2 に示すように,外側前腕皮神経(LAC), 浅橈骨神経,正中神経の母指・示指・環指記録,尺骨 神経,内側前腕皮神経(MAC)の 7 神経が用いられ るが,病変部位によってこのうちの必要ないくつかを 選んでもよい。SNAP 振幅の左右差が主要な評価ポイ ントであり,一般に健側の 50%以下の振幅となった 場合を有意な異常と解釈する。  3.針筋電図  針筋電図(同芯針筋電図)は有用な検査法だが,痛 みが強いのでその適応は慎重に判断すべきであり,徒 手筋力テストで障害分布が十分明確な場合には施行の 必要はない。針筋電図検査が適応となるのは徒手筋力 テスト以上の情報が得られる場合であり,これには以 下のようなケースが考えられる。1)筋力低下が真に 支配神経の軸索障害によるのか,錐体路性の筋力低下・ ヒステリー・痛みで力が入れられないなど他の原因に 図 2 腕神経叢障害評価に用いられる神経伝導検査(文献 2)より許可を得て引用)  感覚神経伝導検査 (SCS) では外側前腕皮神経 (LAC,逆行法 ; C6),橈骨神経浅枝 (逆行法 ; C6/7),正中神 経刺激母指記録 (逆行法 ; C6),正中神経刺激示指記録 (C7),正中神経刺激環指記録 (C8),尺骨神経 (我々 は順行法 ; C8),内側前腕皮神経 (MAC,逆行法 ; T1) を組み合わせることで,腕神経叢障害の局在に貢献す る。運動神経伝導検査 (MCS) では,正中神経刺激短母指外転筋 (APB) 記録 (T1),尺骨神経刺激小指外転筋 (ADM) 記録 (C8) を施行する。

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た,逆に慢性期には,筋力や CMAP 振幅は正常化す るが,この場合でも随意収縮時の動員減少と運動単位 電位(motor unit potential; MUP)の巨大化によって, 異常をとらえられる可能性がある。  傍脊柱筋は,前根後根が合した後に最初に分岐する 脊髄神経後枝支配なので,針筋電図で傍脊柱筋に脱神 経(denervation)があるか否かが,CSR・CSM と腕 神経叢障害との鑑別に有用な所見として用いられて いる。ただ注意点・限界として,CSR でも傍脊柱筋 の denervation は必ずみられるとは限らないので,脱 神経があれば頸椎・頸髄疾患であると言えるが,ない からそうではないとは言えないこと,後方からの脊椎 手術後は評価できなくなることなどが挙げられる9,10)。 安静がとりにくい場合があることも限界として挙げら れるが,側臥位で頸を前屈してもらえば,筆者の経験 では多くの被検者で安静時活動の評価は可能である。 ただし,残存する随意収縮 MUP や終板棘波と線維自 発電位との鑑別に十分習熟することが必須である。脊 髄神経後枝からの傍脊柱筋への支配は,隣接椎体から ずっと下方へと延びて行くので,表層では障害レベル との対応が付け難い。しかし,椎弓に隣接する多裂筋 (multifi dus)を調べることで,椎体レベルに一致した 障害を証明できる11)。これについて,頸椎ではそのよ うな対応は付けにくいという意見もあるが12),筆者は, CSR の多くの例では,多裂筋に刺す方法で予測され るレベルに脱神経を見出すことができると感じてい る。  4.体性感覚誘発電位(SEP)  SEP が腕神経叢障害の局在に有用ではないかとい う観点での研究はかつて多数なされたが,節後性障害 である腕神経叢障害では,超急性期を除けば,遠位ま で Waller 変性が及んで末梢由来 SEP 成分の振幅低下  1.胸郭出口症候群(TOS)  TOS は腕神経叢疾患の代表と考えられるかもしれ ないが,実際には稀な true neurogenic TOS のみが真 の疾患である。それ以外の disputed neurogenic TOS については存在が疑問視されている。従って,一般に TOS の診断の付けられている患者は,別の疾患であ

るか,さもなくば心因性のことが大多数である14)。こ

れは米国で大きな論争となった問題であり15,16),その

詳細については別稿を参照していただきたい14,17)。

 True neurogenic TOS は臨床的には母指球の萎縮を 必発の徴候とする運動優位の疾患であり,初発症状・ 主訴も手の巧緻運動障害や筋萎縮である。このため, CTS や平山病と間違えられる可能性がある。感覚障 害は前腕内側から手の尺側にかけて他覚的感覚低下を 認めることが多いがそれを欠くこともあり,頸部・肩 痛,手のしびれ感などの感覚系の訴えは自覚症状と しては少ない。この疾患の本態は,腕神経叢の下神経 幹の T1>C8 成分の障害であり5),臨床的にも T1>C8 筋の筋力低下・筋萎縮を呈する。Morley の腕神経叢 圧迫試験,Adson,Allen 手技などの TOS の種々の誘 発試験は参考にはなるが,感度特異度とも高くはない。 特に,Roos の 3 分間上肢挙上負荷テストは最も有用 とする研究者も多いが,健常者や CTS 患者での偽陽 性率も非常に高いことが報告されている18,19)。

 True neurogenic TOS の電気生理学的所見として は,SCS で MAC が最も強く障害され,次いで尺骨神経, 正中神経環指記録が障害される。MCS では正中神経 (APB)の方が尺骨神経(ADM)よりも強く障害される。 この定型化されたパターンは非常に特徴的で,自験全 例で認められており(図 3)10,14,17),NCS のみで確定 診断可能である。かつて,TOS において,尺骨神経 MCS の Erb 点∼上腕間での伝導遅延が証明されるの

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161 2013. で診断に役立つという報告がなされたが20),後にその 論文で呈示されていた波形が改竄された偽物であった ことが判明しており21,22),今日ではこの所見は認めら れていない。  2.放射線性と腫瘍性の腕神経叢障害  放射線性と腫瘍性の腕神経叢障害は,同一の基礎疾 患をベースに起こるので,鑑別が問題となる。乳癌は どちらの原因としても多くみられるが,肺癌は腫瘍性 が多く,放射線性は少ない。臨床症候では,腫瘍性で は痛みが多い,Horner 徴候がみられやすいなどが参 考となる4,23,24)。障害分布からの両者の鑑別は難しい が,腫瘍性は下神経幹障害が圧倒的に多いのに対し, 放射線性では下神経幹障害がやはり多いものの,上神 経幹や外側神経束から初発する例もみられる4)。電気 生理学的には SCS 異常は高頻度で,局在に寄与する が,両者の鑑別にはあまり役立たない。MCS での伝 導ブロックが放射線性でみられる場合がある。針筋電 図でのミオキミー発射は放射線性に特徴的な所見であ り,鑑別に有用である23,24)。その他,神経叢障害であ るにも関わらず,放射線性では傍脊柱筋に異常がみら れる例がかなりあることも参考となる4)。  3.胸骨正中切開術後 C8 腕神経叢障害  開心術や大動脈瘤手術などの胸骨正中切開術後に尺 側手指のしびれを生ずる例がある。しばしば圧迫によ る肘部尺骨神経障害を来したものと解釈されがちだ が,これが第一肋骨骨折などに伴って,腕神経叢の最 近位の C8 神経根のみが障害された病態であることが Levin らによって示された5) 。本邦では我々の報告が あるのみだが25),おそらく多くの例が尺骨神経ニュー ロパチーと考えられて見逃されているものと思われ る。臨床像も電気生理学的所見も尺骨神経麻痺に酷似 するが,肘部での遅延はみられない。伝導検査で正中 神経刺激環指記録の SCS にも異常があること(図 4), 針筋電図で C8 レベルの後骨間神経支配筋である,短 母指伸筋,示指伸筋などに異常がつかまることが診断 のキーとなる25)。  4.神経痛性筋萎縮症(NA)  NA は腕神経叢疾患と一般に考えられて来たもので あり,便宜上ここで扱うが,障害分布が単純な腕神 経叢での局在では説明できないことが多く,最近で は多発性単ニューロパチーと考える意見が強まってい る26∼28)。臨床的には突然発症する強い肩∼上肢痛を初 図 3 True neurogenic TOS 症例の神経伝導検査所見(本誌の文献 14)より引用)

 21 歳男性,右手筋萎縮を主訴とし,自覚的な感覚症状は欠いていた。筋力低下は徒手筋力テスト(MMT)で, APB が 3,ADM,第一背側骨間筋,第一深指屈筋が 4 だが他は 5 であった。前腕内側に触覚・痛覚の低下を認め た。患側 (右)健側 (左)の波形を各神経で並べて提示した。T1 支配の正中神経 MCS と MAC の SCS が最も強 く障害され,C8 支配の尺骨神経 MCS・SCS,正中神経刺激環指記録 SCS の障害がこれに次ぎ,C6・C7 支配の正 中神経刺激母指・示指記録 SCS は障害されていない。以上より,T1>C8 の下神経幹障害と診断された。

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発症状とし,それが 1∼2 週持続して,軽快する頃に 筋力低下が自覚される。一般にこのような特徴的な病 歴によって診断可能と一般に考えられているが,CSR やわが国で多く報告されている頸椎症性筋萎縮症でも 類似の病歴を呈することがあり注意を要する10,29,30)。  NA で障害され易い神経には腋窩,肩甲上,長胸, 筋皮,前骨間,橈骨,後骨間神経,脊髄副神経,正中 神経の円回内筋への枝などが挙げられる26∼28)。電気 生理学的には針筋電図による脱神経の証明が主たる手 段となり,徒手筋力テストと併せて,障害分布を明ら かにするのに有用である。筋節でも腕神経叢でも説明 できない分布を呈していれば,NA を示唆する所見と なる。傍脊柱筋に脱神経がないことも NA を支持する 有力な所見となるので,診断に迷う症例では施行が推 奨される(前述のように頸椎症でも傍脊柱筋に脱神経 がないことはあるので十分条件とはならないが)30,31)。 NA は臨床的にも電気生理学的にも運動優位の疾患で あり,SNAP 異常はみられない場合が多いが,認めら れれば遠位の病変が示唆されるので有用な所見とな る。外側前腕皮神経の異常の頻度が高いことが報告さ れている26)。伝導ブロックが証明されて障害部位を局 在できた例が報告されているが32∼34),これは一部の 例に限られ,多くの例では軸索障害しか検出できない。  文献 1) 野寺裕之 : 筋・末梢神経電気診断技術向上委員会ミニモノ グラフ 電気診断に必要な末梢神経解剖.臨床神経生理学 35: 117 122, 2007. 2) 園生雅弘,東原真奈 : 腕神経叢障害の電気診断.脊椎脊髄 ジャーナル 26: 23 30, 2013. 3) 角谷彰子,園生雅弘 : 脊椎・脊髄の症候と診断 神経筋電気 診断.Clinical Neuroscience 30: 1123 1127, 2012.

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図 4 胸骨正中切開術後 C8 腕神経叢障害症例の神経伝導検査所見(文献 25)より許可を得て引用)  54 歳男性,大動脈解離に対する胸骨正中切開術後より右尺骨神経麻痺様の症状が出現した。患側支配手内筋 の筋力低下と環指小指の感覚障害が出現した。患側 (右)健側 (左)の波形を並べて提示した。C8 支配の尺骨神 経 MCS・SCS と正中神経環指記録 SCS が障害されているが,MAC の SNAP は保たれていた。針筋電図では尺 骨神経支配筋だけでなく,C8 由来橈骨神経支配の短母指伸筋にも脱神経を認めた。以上より,後根神経節より 遠位の腕神経叢 C8 根部に局在診断された。

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163 2013.

1998.

10) 園生雅弘 : 神経叢疾患と脊椎脊髄疾患の鑑別.脊椎脊髄 ジャーナル 18: 441 449, 2005.

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15) Roos DB: Thoracic outlet syndrome is underdiagnosed. Muscle

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図 1 腕神経叢の解剖  (文献 2)より許可を得て引用)
図 4 胸骨正中切開術後 C8 腕神経叢障害症例の神経伝導検査所見(文献 25)より許可を得て引用)  54 歳男性,大動脈解離に対する胸骨正中切開術後より右尺骨神経麻痺様の症状が出現した。患側支配手内筋 の筋力低下と環指小指の感覚障害が出現した。患側  (右)健側  (左)の波形を並べて提示した。C8 支配の尺骨神 経 MCS・SCS と正中神経環指記録 SCS が障害されているが,MAC の SNAP は保たれていた。針筋電図では尺 骨神経支配筋だけでなく,C8 由来橈骨神経支配の短母指伸筋にも脱神経を

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