九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
磁場を用いた中性子寿命精密測定装置の開発
角, 直幸
https://doi.org/10.15017/4059985
出版情報:Kyushu University, 2019, 博士(理学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式6-2)
氏 名 角 直幸
論 文 名 Development of a Detector System for Precise Neutron Lifetime Measurement using Magnetic Field
(磁場を用いた中性子寿命精密測定装置の開発)
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 川越 清以 副 査 九州大学 准教授 寺西 高 副 査 九州大学 准教授 吉岡 瑞樹
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
茨城県東海村大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質生命科学実験施設で行われている中性子寿 命精密測定実験では、冷中性子ビームをガス検出器に入射し、中性子崩壊から生じた電子を検出し ている。本論文では、主要な系統誤差を低減するために、ソレノイド磁場を用いた中性子寿命測定 の実現を目指した研究を行った。
本論文は全6章からなる。第1章では、中性子寿命が関連する物理を述べ、先行実験の概要とそ れらの問題点について述べている。第2章では、J-PARC での中性子寿命測定実験について詳細に 記述している。実験で使用している中性子源、ビームライン、測定器について記述し、初期取得デ ータの解析結果について報告している。第3章ではそのデータ解析で明らかとなった問題点につい て述べ、それらを解決するためにソレノイド磁場を用いた新規実験を提案している。また、シミュ レーションにより磁場を用いた場合の背景事象削減量を定量的に見積もっている。第4章では本実 験で用いる超伝導磁石および検出器であるタイム・プロジェクション・チェンバーの詳細について 述べている。タイム・プロジェクション・チェンバーは本実験のための特殊仕様であり、著者が中 心となって開発を行い、様々な放射線源を用いた性能評価から本実験に使用可能であることを結論 している。第5章ではモンテカルロ・シミュレーションによる感度見積もりが述べられている。現 実的な体系を実装したシミュレーションにより実データと同等のデータを生成し、実データと同等 の解析手法を用いることにより中性子寿命の入力値を正しく算出できることが示されている。また、
本研究で開発した実験装置群を用いれば、およそ1ヶ月間の測定で0.2%の測定精度に達することが できると述べられている。第6章でこれらをまとめて報告し、本研究で開発した装置群を用いてデ ータを取得すれば、より高精度で中性子寿命が決定できる旨を結論している。また将来の展望とし て、今後2年以内に初のデータ収集を予定している旨が述べられている。
角直幸氏はソレノイド磁場を用いた新しい中性子寿命測定実験のため、超伝導磁石の立ち上げも 含め、実験装置の設計・製作を主導した。特に、検出器の主要部分であるタイム・プロジェクショ ン・チェンバーの開発・性能評価は同氏がほぼ独力で成し遂げたものである。本論文は、本研究で 開発した装置群を用いることにより高精度での中性子寿命測定が可能となることを示したものであ り、その学術的意義は顕著である。
よって、角直幸氏は博士(理学)の学位を受ける資格があるものと認める。