九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
カーネル平滑化統計量に基づくノンパラメトリック 推測
森山, 卓
https://doi.org/10.15017/1931731
出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(数理学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式3)
氏 名:森山 卓
論 文 名: Nonparametric inference based on kernel smoothed statistics
(カーネル平滑化統計量に基づくノンパラメトリック推測)
区 分:甲
論 文 内 容 の 要 旨
本博士論文では、カーネル平滑化統計量に基づくノンパラメトリック推測について考察する。ノ ンパラメトリック推測はモデルの仮定に頑健であると言われるように、不特定の分布からのデータ を扱うことができる。経験分布関数やヒストグラム密度推定量は古典的なノンパラメトリック統計 量として知られるが、実現値の関数として連続でない。
カーネル型ノンパラメトリック統計量の起源は、ヒストグラム密度推定量の平滑化によりカーネ ル型密度推定量を導出した Rosenblatt (1956) にある。その後カーネル平滑化は幅広く応用され 様々な平滑化統計量が提案されたが、カーネル型統計量にはいくつかの問題が報告されている。推 定量の漸近収束のレートは平滑化パラメータに影響を受けてしまい、さらにそのレートは一般にパ ラメトリック推定量より遅い。
第2章ではハザード比のカーネル型推定について考察し、推定量の漸近二乗誤差の縮小について議 論する。ハザード比は生存時間解析やリスク管理における基本的な尺度の一つとして知られるもの である。本論文ではCwik and Mielniczuk (1989) の推定法を修正することにより、新たなカーネ ル型ハザード比の推定量を導出し、その漸近的性質を明らかにする。提案手法は生存時間解析にお いて中心的な役割を担う指数分布及びガンマ分布の場合に特に高精度な推定を与えるものとなる。
第3章では Rosenblatt (1956) により導入されたナイーブなカーネル型密度推定における境界 バイアス問題について議論する。実はナイーブなカーネル型推定においては、真の確率密度関数の 台は実数軸を覆うことが暗に仮定されている。仮定が成立しない場合、カーネル型密度推定量は境 界バイアスを持つ恐れがある。従って‘正確な’台が未知である場合は、予期せぬ境界バイアスに 注意する必要がある。
本論文の二つ目のテーマとして台が未知の場合の境界バイアス問題について検討し、確率密度関数 及びその台のノンパラメトリック同時推定法を提案する。提案手法は境界を検知し、予期せぬ境界 バイアスを回避する密度推定量を与えることができる。さらに、ある簡単な多次元の場合への提案 手法の拡張について議論し、予期せぬ境界バイアスを回避する同時確率密度関数の新たな推定法を 提案する。
第4章及び5章ではカーネル平滑化の統計的仮説検定への応用について考察する。一標本位置母 数問題における符号検定及びウィルコクソンの符号付き順位検定はdistribution-free であるが、離 散型検定であるが故に有意確率に関するある問題を抱えている。本論文ではこの問題を確認し、両 検定の平滑化検定を提案する。平滑化検定は有意確率に関する問題を解消することを示し、続けて 検定の漸近的性質の解明を行う。両平滑化検定は元の検定と Pitman の漸近効率の意味で一致し、
さらにカーネル関数および平滑化パラメータを適切に選ぶことにより、高次漸近的にモデルの仮定 に関し頑健(すなわち、distribution-free)となることが示される。このように平滑化検定は元の検 定の良さを引き継ぐものとなる。
加えて、二標本問題におけるメディアン検定及びウィルコクソンの順位和検定が有意確率に関する 同じ問題を抱えていることを示す。両検定は符号検定及びウィルコクソンの符号付き順位検定の二 標本検定版と見なすことができ、一標本検定の平滑化と同様の方法により有意確率の問題を解消す る平滑化検定を提案する。さらに二標本平滑化検定の局所検出力を導出し、有意確率の近似につい ても議論を行う。