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構造拘束的な体験様式と心理的距離に関する研究

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構造拘束的な体験様式と心理的距離に関する研究

著者 高沢 佳司

著者別名 TAKASAWA Keiji

その他のタイトル Structure‑Bound Experiential Manner and Psychological Distance

ページ 1‑117

発行年 2016‑03‑24

学位授与番号 32675甲第380号 学位授与年月日 2016‑03‑24

学位名 博士(学術)

学位授与機関 法政大学 (Hosei University)

URL http://doi.org/10.15002/00012938

(2)

構造拘束的な 体験様式と心 理的距離に関 する研究

人間社会研究 科 人間福祉 専攻

博士課程 高 沢 佳司

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- 1 -

目 次

第1章 先 行 研 究 の 概 観 と 問 題 点 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1

第1節 体 験 過 程 理 論 の 概 観 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 第1項 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 第2項 構 造 拘 束 的 な 体 験 の 特 徴 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 第3項 フ ォ ー カ シ ン グ : 技 法 の 提 案 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・3 第4項 空 間 づ く り(Clearing Space / Clearing a Space)の 利 用 ・ ・ ・ ・4 第5項 気 が か り と の 心 理 的 距 離 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・5 第6項 空 間 づ く り と 主 体 感 覚(自 己 効 力 感)・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・6

第2節 先 行 研 究 の 問 題 点 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・7 第1項 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 測 定 尺 度 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・7 第2項 心 理 学 的 概 念 に よ る 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 再 定 義 ・ ・ ・ ・ ・8 第3項 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 は ネ ガ テ ィ ブ 表 象 へ の 心 理 的 距 離 を 近 く す

る か ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・8

第2章 問 題 点 の 解 決 に 関 わ る 理 論 的 背 景 と 予 測 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・10

第1節 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 測 定 可 能 性 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・10

第2節 反 す う に よ る 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 説 明 可 能 性 と そ の 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・10 第 1 項 反 す う ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・11 第 2 項 反 す う の 悪 影 響 (1)抑 う つ 気 分 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・11 第 3 項 反 す う の 悪 影 響 (2)ネ ガ テ ィ ブ な 認 知 ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・12 第 4 項 反 す う の 悪 影 響 (3)抑 う つ の 発 症 か 持 続 か ・・・・・ ・・・・13

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- 2 - 第 5 項 認 知 的 制 御 能 力 の 欠 陥 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・14

第 3 節 心 理 的 距 離 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・15 第 1 項 解 釈 水 準 理 論 の 基 本 的 前 提 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・15 第 2 項 解 釈 水 準 理 論 の 萌 芽 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・15 第 3 項 解 釈 水 準 理 論 と 表 象 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・16 第 4 項 表 象 の 抽 象 度 と 心 理 的 距 離 の 双 方 向 的 因 果 関 係 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・18 第 5 項 心 理 的 距 離 の 多 次 元 性 お よ び 相 互 関 連 性 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・18 第 6 項 脳 機 能 と 心 理 的 距 離 お よ び 解 釈 水 準 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・19 第 7 項 解 釈 水 準 や 心 理 的 距 離 が 自 己 制 御 の 成 功 に 及 ぼ す 影 響 ・ ・・ ・20 第 8 項 心 理 的 距 離 が 感 情 制 御 に 及 ぼ す 影 響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・21

第 4節 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 と ネ ガ テ ィ ブ 表 象 へ の 心 理 的 距 離 と の 関 連 お よ び 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・22 第 1 項 接 近 回 避 研 究 に お け る 感 情 価 と 態 度 , お よ び そ の 背 景 ・ ・ ・ ・22 第 2 項 態 度 と 心 理 的 距 離 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・23 第 3 項 解 釈 水 準 と 接 近 回 避 行 動 の 連 動 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・23

第 5 節 第 2 章 の ま と め と 本 研 究 の 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・24

第3章 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 測 定 お よ び 心 理 学 的 概 念 へ の 置 換 ・ ・ ・ ・27

第 1節 研 究 1: 構 造 拘 束 度 尺 度 の 作 成 お よ び 妥 当 性 ・ 信 頼 性 の 検 討 ・ ・27 第 1 項 問 題 と 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・27 第 2 項 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・28 第 3 項 結 果 お よ び 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・30 第 4 項 研 究 1 の 総 合 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・40

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- 3 - 第 2 節 研 究 2: ネ ガ テ ィ ブ な 反 す う に よ る 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 説 明 可

能 性 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・41 第 1 項 問 題 と 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・41 第 2項 調 査 1・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・42 第 1 号 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・42 第 2 号 結 果 お よ び 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・43 第 3項 調 査 2・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・43 第 1 号 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・43 第 2 号 結 果 お よ び 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・44 第 4項 調 査 3・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・45 第 1 号 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・45 第 2 号 結 果 お よ び 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・45

第4章 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 と 心 理 的 距 離 と の 関 連 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・46

第1節 問 題 と 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・46

第 2 節 研 究 3:構 造 拘 束 度 と 感 情 価 ご と の 表 象 へ の 心 理 的 距 離・・・・・ 48 第 1 項 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・48 第 2 項 結 果 お よ び 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・49

第 3 節 研 究 4:構 造 拘 束 度 と 距 離 ‐ 感 情 価 の 連 合 強 度・・・・・・・・・ 52 第 1 項 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・52 第 2 項 結 果 お よ び 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・54

第 4 節 研 究 5:構 造 拘 束 度 と ネ ガ テ ィ ブ 表 象 の 活 性・・・・・・・・・・ 56 第 1 項 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・56 第 2 項 結 果 お よ び 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・57

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- 4 - 第 5 節 研 究 6: 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 が 距 離 ‐ 感 情 価 の 連 合 強 度 に 与 え る

影 響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 58 第 1 項 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・59 第 2 項 結 果 お よ び 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・60

第 6 節 研 究 7: 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 が ネ ガ テ ィ ブ 表 象 の 活 性 に 与 え る 影 響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 63 第 1 項 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・63 第 2 項 結 果 お よ び 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・64

第 7 節 研 究 8:Experiential manner as a mediating factor between clearing a space and self-efficacy.・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 65 Method ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・70 Results ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・72 Discussion・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・74

第5章 総 合 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・77

第1節 本 研 究 の 結 果 の 概 観 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・77

第2節 体 験 様 式 を 測 定 す る 尺 度 開 発 と そ の 意 義 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・78

第3節 反 応 ス タ イ ル に よ る 体 験 様 式 の 説 明 可 能 性 と 再 定 義 ・ ・ ・ ・ ・ ・80

第4節 エ ビ デ ン ス に 基 づ い た 構 造 拘 束 度 と ネ ガ テ ィ ブ 表 象 へ の 心 理 的 距 離 と の 関 連 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・82

第 5 節 本 研 究 に よ る 貢 献 と 今 後 の 展 開 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・85

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- 5 - 引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・88

謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・102

付 記 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・104

要 旨 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・106

付 録 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・117

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1

第 1 章 先 行 研 究 の 概 観 と 問 題 点

第 1 節 体 験 過 程 理 論 の 概 観

体 験 過 程 理 論 は , 体 験 様 式 , 空 間 づ く り , 主 体 感 覚 等 の 主 要 な 概 念 を 取 り 扱 う 理 論 で あ る 。 第 1 節 で は , 体 験 過 程 理 論 に よ っ て 捉 え ら れ る 現 象 や 概 念 を 提 示 し つ つ 先 行 研 究 を 概 観 し , 第 2節 で は そ の 問 題 点 を 述 べ る 。

第 1 項 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式

哲 学 と 統 合 失 調 症 患 者 の 観 察 か ら , あ る 出 来 事 の 体 験 が 精 神 健 康 に 影 響 を 及 ぼ す と 仮 定 し , 出 来 事 自 体 の 内 容 よ り も , む し ろ そ れ を ど の よ う に 体 験 す る の か に つ い て 体 験 過 程 理 論(theory of experiencing)の 観 点 か ら 研 究 が な さ れ て き た(e.g., Gendlin, 1964)。あ る 出 来 事 を「 ど の よ う に 体 験 す る か 」と い う 側 面 に つ い て は 体 験 様 式(experiential manner)と い う 変 数 に よ っ て 説 明 さ れ て い る 。 Gendlin(1964)に よ れ ば , 体 験 様 式 は 2 つ に 分 類 さ れ , そ れ ぞ れ が 精 神 健 康 に 異 な る 影 響 を 与 え る と い う 。一 つ 目 は「 構 造 拘 束 的 な(structure-bound)体 験 様 式 」 で あ り ,「 ネ ガ テ ィ ブ な 体 験 内 容 が 反 復 し 暗 黙 の 機 能 が 停 止 し て い る 様 式 」 と 定 義 さ れ る(Takasawa & Ito, 2008; 高 沢 ・ 伊 藤, 2009a)。 具 体 的 に は , ネ ガ テ ィ ブ な 思 考 や 感 情 状 態 が 繰 り 返 さ れ る「 反 復 性 」(repetition),そ の 反 復 に 対 し て 対 処 不 能 に な っ て い る 状 態 を 示 す 「 傍 観 性 」(remaining on the sidelines) の 概 念 か ら 構 成 さ れ ,「 反 す う 」(rumination: Nolen-Hoeksema, 1991)あ る い は「 ネ ガ テ ィ ブ な 反 す う 」(伊 藤・上 里, 2001)と 同 じ 現 象 を 捉 え る 概 念 で あ る 。 し た が っ て , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 と は , 反 す う と 同 様 , 反 応 ス タ イ ル に 含 ま れ る 概 念 で あ る と 考 え ら れ る 。も う 一 つ は「 過 程 進 行 中(in process)の 体 験 様 式 」 で あ り ,「 体 験 過 程 が 象 徴 と の 絶 え ざ る 相 互 作 用 の も と に 自 己 の 中 で い き い き と 作 動 し て い る 」 様 式 と 定 義 さ れ る(末 武, 1986)。 具 体 的 に は , 過 去 に ネ ガ テ ィ ブ な 出 来 事 を 体 験 し て も そ れ が い つ ま で も 思 考 に 上 っ た ま ま に な ら ず , 現 在 の 出 来 事 に 反 応 し 続 け る 体 験 の 様 式 で あ る 。

Gendlin (1964)に よ れ ば , 体 験 が 構 造 に 拘 束 さ れ て い る 状 態 は 単 一 の 思 考 が 繰 り 返 さ れ る と い う 意 味 に お い て , 精 神 病 や 夢 に お け る 精 神 状 態 と 類 似 し て い る と い う 。 薬 物 に よ っ て 幻 覚 を 体 験 し て い る 最 中 も こ れ と 同 様 と い わ れ る 。 ま

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2 た ,別 の 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 例 と し て ,抑 う つ 状 態 が 挙 げ ら れ る 。つ ま り , あ る 程 度 持 続 的 に 過 去 を 否 定 的 に 振 り 返 り 自 己 没 入 を 起 こ し て い る 場 合 が こ れ に 相 当 す る(Geiser, 2010)。ネ ガ テ ィ ブ な 内 容 の 思 考 が ,変 化 の 可 能 性 も 乏 し い ま ま に 繰 り 返 さ れ る の が 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 で あ る と い え る 。

第 2 項 構 造 拘 束 的 な 体 験 の 特 徴

Gendlin (1964)は , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 を 記 述 し た 6 つ の 特 徴 を 紹 介 し て い る 。6 つ の 特 徴 は お 互 い に 重 複 す る 箇 所 も あ る と さ れ る が , 概 念 の 定 義 的 な 特 徴 を 把 握 す る 上 で は 貴 重 な 記 述 で あ る 。 多 く は 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 vs.過 程 進 行 中 の 体 験 様 式 と い う 対 比 を 用 い て 記 述 さ れ る 。

(1) 即 時 性(Immediacy of Experiencing): 現 在 の 刺 激 に 対 し て 感 情 的 反 応 が 遅 延 せ ず に 表 出 さ れ る 場 合 は 過 程 進 行 中 で あ り ,そ う で な い 場 合 は 構 造 に 拘 束 さ れ て い る(e.g., 楽 し い 出 来 事 を 経 験 し て も ,他 人 事 の よ う に ,楽 し い と 感 じ な い)。

(2) 現 前 性(Presentness): 現 在 の 状 況 へ の 反 応 様 式 に よ っ て 現 前 性 の 有 無 が 規 定 さ れ ,現 在 の 状 況 を 十 分 に 感 じ ら れ る な ら ば 過 程 進 行 中 の 体 験 様 式 で あ る が ,新 し い 状 況 で あ っ た と し て も 繰 り 返 し の パ タ ー ン の よ う に 感 じ ら れ る 場 合 は 体 験 が 構 造 に 拘 束 さ れ て い る 。

(3) 新 鮮 な 詳 細 の 豊 か さ(Richness of Fresh Detail): 出 来 事 が 新 鮮 味 を も っ て 多 様 に 詳 細 を 感 じ ら れ る な ら ば(i.e., 物 事 の 多 く の 側 面 を 認 識 で き る な ら ば)過 程 進 行 中 の 体 験 様 式 で あ る が , 繰 り 返 し の パ タ ー ン の よ う に 単 一 の 意 味 や 感 情 し か 感 じ ら れ な い 場 合 は 体 験 が 構 造 に 拘 束 さ れ て い る 。

(4) 凍 結 性(Frozen Wholes):あ た か も そ こ に 単 一 の ス キ ー マ が 存 在 す る よ う に , 新 し い 刺 激 を 拒 み 続 け る 体 験 様 式 は 構 造 に 拘 束 さ れ て い る 。

(5) 反 復 的 対 変 容 的 体 験(Repetitive vs. Modifiable): 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 に お い て は ,単 一 の ネ ガ テ ィ ブ な 解 釈 の み が 繰 り 返 さ れ る 。一 方 ,過 程 進 行 中 の 体 験 様 式 に お い て は 物 事 の 多 面 的 な 解 釈 ,あ る い は 新 た な 解 釈 が 可 能 で あ る 。

(6) 適 度 な 潜 在 的 機 能(Optimal Implicit Functioning):言 語 化 さ れ て い な い が , そ の 背 後 で 情 報 処 理 が 活 発 に 行 な わ れ て い る 状 態 が 過 程 進 行 中 の 体 験 様 式

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3 で あ る 。逆 に ,刺 激 を 受 け て も そ れ に 対 し て 言 語 化 さ れ な い 水 準 で の 情 報 処 理 が ほ と ん ど 起 こ ら な い こ と を 仮 定 す る の が 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 で あ る 。 (注 : こ こ で の 潜 在 的(Implicit)と い う 用 語 は 「 前 言 語 的 」, あ る い は 「 言 語 化 さ れ て い な い 」 と い う 意 味 で 用 い ら れ て い る 。 我 々 が 何 か を 発 言 す る 際 , 言 語 化 さ れ た 情 報 以 上 の も の を 考 え た り 感 じ た り し て い る は ず で あ る が ,そ の 全 て を 言 語 化 す る 訳 で は な い 。同 時 に ,言 語 化 さ れ た 以 上 の 情 報 処 理 が 行 な わ れ て い な い 訳 で は な い 。Gendlin の 主 張 は 抽 象 的 で は あ る が ,潜 在 的 機 能 を 「 言 語 化 さ れ な か っ た 部 分 の 情 報 処 理 」 と し て 再 定 義 す る こ と に よ り , こ こ で 用 い ら れ て い る Implicit の 意 味 は 明 確 化 が 可 能 で あ る 。 た だ し , こ れ は あ く ま で も 哲 学 領 域 の ,か つ Gendlin が 想 定 し た「Implicit」に 基 づ い た 定 義 で あ る こ と は 強 調 さ れ る 必 要 が あ る 。「 意 図 的 な 統 制 が 介 在 し な い 」 と い っ た , 心 理 学 一 般 で の 「 潜 在 的 」 の 意 味 と は 異 な る 。)

第 3 項 フ ォ ー カ シ ン グ : 技 法 の 考 案

言 語 化 さ れ て い な い 部 分 の 思 考 を 言 語 化 す る(i.e., 潜 在 的 機 能 を 促 進 す る)こ と が , 治 療 に お け る 人 格 変 容 に と っ て 重 要 で あ る と し , フ ォ ー カ シ ン グ と い う 技 法 が 6 段 階 式 で 詳 細 に 紹 介 さ れ た(e.g., Gendlin, 1981)。こ の 6 段 階 式 の 方 法 で は , 2 ~ 6 段 階 目 の 作 業 は 潜 在 的 機 能 を 促 進 す る た め の , 1 段 階 目 の 空 間 づ く り は そ の 後 の 作 業 が 滞 り 無 く 進 み や す い よ う 準 備 を 行 う た め の 段 階 と さ れ た 。

(1) 空 間 づ く り(clearing a space): 広 い 空 間 を イ メ ー ジ す る な ど , 現 在 な 気 が か り な 出 来 事 か ら 距 離 を 取 る よ う に す る 。

(2) フ ェ ル ト セ ン ス(felt sense): 気 が か り な 出 来 事 は ど の よ う な も の か に つ い て , や や 抽 象 的 に 考 え る(e.g., 気 が か り は 何 か ?)。

(3) 取 っ 手 を つ か む(getting a handle on it): 気 が か り は ど の よ う に 表 現 さ れ る か , や や 具 体 的 に 考 え る(e.g., 気 が か り は 「 嫉 妬 」 で あ る)。

(4) 共 鳴 さ せ る(resonating the handle): 命 名 さ れ た ハ ン ド ル(ラ ベ ル)は 正 し い か ど う か 確 認 す る(e.g., 「 嫉 妬 」 で よ い か ?)。

(5) 尋 ね る(asking): 気 が か り は 何 を 意 味 す る か 再 び 抽 象 的 に 考 え る(e.g., 「 嫉 妬 」 は , 取 り 残 さ れ た よ う な 感 じ が あ る こ と を 意 味 し て い る)。

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4 (6) 受 け 取 る(receiving):5 で の 意 味 を 確 認 す る(e.g., 「 取 り 残 さ れ て い る 」 で

間 違 い な い か)。

第 4 項 空 間 づ く り(Clearing Space / Clearing a Space)の 利 用

フ ォ ー カ シ ン グ の 6ス テ ッ プ を そ の ま ま 行 う の で は な く ,第 1 ス テ ッ プ の 空 間 づ く り だ け を 取 り 出 し て 相 談 者 へ と 適 用 す る 試 み が 事 例 報 告 の 形 で 報 告 さ れ た 。 例 え ば 増 井(1984)は , 不 安 が 強 く 幻 覚 様 の 症 状 を 訴 え る 患 者 に 対 し , 嫌 な 感 覚 を 箱 に 入 れ て 距 離 を 取 ら せ る よ う イ メ ー ジ 導 入 を 行 っ た 結 果 , 患 者 の 不 安 感 と 幻 覚 様 症 状 が 軽 快 し た 。さ ら に ,「 感 情 と 距 離 を 置 い て 見 ら れ る よ う に な っ た 」 と い う 言 語 報 告 が な さ れ た 。 同 じ よ う に 空 間 づ く り を 行 い , ネ ガ テ ィ ブ な 感 情 が 低 減 し た 例 は ,McGuire (1982 / 83), Grindler (1982 / 83),Kanter (1982 / 83), 弓 場(1985)に よ っ て 報 告 さ れ て い る 。McGuire は 夫 に 対 し て 激 し い 怒 り の 感 情 を 表 出 す る 女 性 の 事 例 を 取 り 扱 っ て い る 。 こ の 事 例 で は 夫 が 川 岸 に 居 て , 自 分 が 船 の 上 か ら そ れ を 眺 め て い る 状 況 を イ メ ー ジ さ せ る こ と で , 空 間 的 な 距 離 を プ ラ イ ム し て い る 。 そ の 直 後 の 怒 り の 強 さ は プ ラ イ ム の 前 よ り も 激 し く な く な っ た と い う 報 告 が な さ れ て い る 。Grindler の 事 例 で は ,緊 張 や 不 安(状 況 的 に は , 母 親 か ら の 非 難 に 対 す る 恐 怖)を 訴 え る 女 性 へ と 空 間 づ く り を 導 入 し , 嫌 な 感 覚 か ら 距 離 を 取 ら せ る こ と に 成 功 し た 。 結 果 的 に こ の 相 談 者 は 母 親 か ら の 非 難 を 恐 れ な い よ う に な っ た 。Kanter の 事 例 で は 明 確 に 感 情 の 種 類 は 特 定 さ れ て い な い が , 癌 患 者 に 対 し て 空 間 づ く り を 導 入 し た 結 果 , 疲 労 感 ・ 仕 事 や 家 族 の こ と 等 の 嫌 な イ メ ー ジ を 体 の 外 に 置 く よ う な イ メ ー ジ が 形 成 さ れ ,

「 重 さ が な い 感 じ 」 と い う 言 語 報 告 が な さ れ た 。 弓 場 の 事 例 で は , 問 題 に つ い て の イ メ ー ジ を さ せ た 後 , 入 れ 物 に 入 れ る と い う イ メ ー ジ を 導 入 し 空 間 づ く り を 行 っ て い る 。そ の 結 果 ,「 ス ー ッ と す る 」と い う リ ラ ク セ ー シ ョ ン 様 の 言 語 報 告 が な さ れ た(弓 場 の 事 例 の 参 加 者 は 12 歳 の 女 児 で あ り , 大 人 の よ う に 詳 し い 言 語 報 告 が で き な か っ た も の と 推 測 さ れ る)。

空 間 づ く り を 集 団 実 施 す る 試 み も 行 な わ れ た 。 大 学 生 に 対 し て 紙 面 上 で 教 示 に し た が い 空 間 づ く り を 行 わ せ , 自 由 記 述 に よ る 感 想 を 求 め た と こ ろ , 悩 み 事 と の 距 離 が 置 け た 等 の 報 告 が 見 ら れ た(伊 藤, 1991,1994a)。 ま た 類 似 の 手 続 き に よ り 教 育 現 場 に お い て 空 間 づ く り を 行 っ た 例 も 報 告 さ れ て い る(伊 藤, 1994b,

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5 1995; 笹 田, 2002; 妹 尾, 1988)。

第 5 項 気 が か り と の 心 理 的 距 離

フ ォ ー カ シ ン グ 中 に 起 こ る 問 題 と し て , 人 に よ っ て は ネ ガ テ ィ ブ な 感 覚 あ る い は 自 伝 的 記 憶 が 想 起 さ れ , 単 な る 過 去 の 経 験 の 繰 り 返 し と な る こ と が 挙 げ ら れ る(e.g., 福 盛, 2000)。 こ の 問 題 は , フ ォ ー カ シ ン グ の 教 示 自 体 が 曖 昧 な 対 象 に 注 意 を 向 け さ せ る も の で あ る た め に 引 き 起 こ さ れ る も の と 考 え ら れ る 。 こ の よ う な ネ ガ テ ィ ブ な 体 験 の 繰 り 返 し は 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 で あ る 。 第 1 項 ~ 第 2 項 で 述 べ た よ う に , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 が ネ ガ テ ィ ブ な 反 す う に 含 ま れ る た め , フ ォ ー カ シ ン グ を 行 う こ と に よ っ て 逆 に 精 神 的 健 康 を 害 し て し ま う 恐 れ が あ る 。

気 が か り と の 心 理 的 距 離 に よ っ て , 自 己 か ら 近 い , あ る い は 遠 い と 感 じ る こ と が あ る(Cornell, 1991)。 近 い ・ 遠 い と い っ た 距 離 は 仮 想 的 距 離(hypothetical distance)と し て 再 定 義 で き る(see Bar-Anan, Liberman, Trope, & Algom, 2007)。 あ る ネ ガ テ ィ ブ な 思 考 が 浮 か ぶ 頻 度 に よ っ て 距 離 が 規 定 さ れ て い る た め で あ る 。 よ り 高 次 の 概 念 と し て は 心 理 的 距 離 に 包 含 さ れ る 。Cornell (1991) は , ネ ガ テ ィ ブ な 体 験 が 近 い 状 況 や 遠 い 状 況 を 提 案 し て い る 。 ネ ガ テ ィ ブ な 対 象 が 非 常 に 近 い 状 態 に あ る 個 人 は , 他 の こ と を 考 え ら れ な い ほ ど 強 く 頭 に ネ ガ テ ィ ブ な 体 験 に 関 す る 思 考 が 浮 か ぶ 。 ま た , 現 在 の 身 体 感 覚 や 感 情 に 注 意 を 向 け さ せ て も , そ れ が 容 易 に 失 敗 す る 。 こ の こ と か ら 近 い 状 況 に あ る 個 人 は 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 に 陥 っ て い る と み ら れ る 。 ま た , ネ ガ テ ィ ブ な 思 考 を 制 御 で き な い 点 で は ,現 象 的 に は 反 す う に 類 似 し て い る 。こ れ を 支 持 す る 知 見 と し て , 福 盛 ・ 村 山(1994)は 体 験 と の 間(心 理 的 距 離)が 近 す ぎ る 場 合 の 例 に 「 問 題 に が ん じ が ら め に 縛 ら れ て い た よ う な 感 じ が し た 」,「 問 題 が つ い て ま わ る 感 じ が し た 」 な ど を 挙 げ て い る 。 一 方 , 非 常 に 遠 い 状 況 に あ る 個 人 は , 特 に そ の 時 点 で 気 が か り が 頭 の 中 に 浮 か ば な い 。 し た が っ て 構 造 に 拘 束 さ れ て い な い , あ る い は 反 す う が 起 こ っ て い な い 状 況 と い え よ う 。 同 様 の 結 果 は 福 盛(2000)に よ っ て も 報 告 さ れ て い る 。

高 沢・伊 藤(2009b)に よ っ て ,空 間 づ く り の イ メ ー ジ 操 作 と 対 象 へ の 心 理 的 距 離 と の 関 連 が 検 討 さ れ て い る 。 参 加 者 は 対 象 が 外 に 出 て い る 状 態 , 箱 に 入 っ て

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6 い る 状 態 , さ ら に 箱 に 蓋 が さ れ て い る 状 態 を イ メ ー ジ し , そ れ ぞ れ の 心 理 的 距 離 を 評 定 し た 。 そ の 結 果 , 箱 と 対 象 と の 空 間 的 距 離 に 応 じ て 心 理 的 距 離 も 遠 く な る こ と が 示 さ れ た 。こ の 結 果 は ,「 対 象 が 川 の こ ち ら 側 に あ る か ,向 こ う 側 に あ る か 」(e.g., McGuire, 1982 / 83)の 操 作 に よ っ て も 同 様 で あ っ た 。 つ ま り , 空 間 づ く り で 用 い ら れ る イ メ ー ジ に よ っ て 対 象 と の 空 間 的 距 離 を 操 作 す る こ と で , 心 理 的 距 離 を 増 大 さ せ て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。

第 6 項 空 間 づ く り と 主 体 感 覚(自 己 効 力 感)

空 間 づ く り に よ る 介 入 を 報 告 し た 事 例 研 究 か ら , 症 状 や 感 情 の 統 制 へ の 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る 。 し か し な が ら , 空 間 づ く り を 行 っ た 結 果 と し て ど の よ う な 心 理 学 的 変 数 が 変 動 し て い る の か は ほ と ん ど 明 確 化 さ れ て こ な か っ た 。 吉 良 (1992, 1994, 1998)は こ の 点 に つ い て の 説 明 を 試 み て い る 。吉 良(1992)は ,悩 み や 気 が か り に 対 し て 空 間 づ く り を 行 っ た 結 果 , 個 人 は 主 体 感 覚 を 得 る と し て い る 。 主 体 感 覚 は 「 体 験 に 伴 う 主 体 性 ・ 能 動 性 の 感 覚 」 と さ れ る(吉 良, 1998)。

例 え ば 何 ら か の 気 が か り を 抱 え て い る 個 人 は , そ の 気 が か り な 出 来 事 に 対 し て 対 処 不 能 感 や 無 力 感 を 訴 え る こ と が 多 い 。 そ の 結 果 , 全 く 同 じ よ う な 無 力 体 験 が 常 同 的 に 反 復 さ れ る 。 こ の 反 復 的 な 体 験 は 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 に 含 ま れ る (吉 良, 1994)。 そ の よ う な 状 況 を 変 化 さ せ る た め , 主 体 感 覚 を 活 性 化 さ せ る 必 要 が あ る と し て い る 。 特 に 空 間 づ く り に よ っ て も た ら さ れ る の が 主 体 感 覚 で あ り , 仮 に 空 間 づ く り の 状 態 が 達 成 さ れ て い れ ば こ の 主 体 感 覚 を も た ら す 事 が で き る と し て い る(吉 良, 1994)。 こ の よ う な 主 体 感 覚 は , よ り 一 般 的 に は 自 己 効 力 感 に よ っ て 説 明 可 能 で あ る 。Bandura (1977)に よ る と ,自 己 効 力 感 と は「 あ る 結 果 を 生 み 出 す た め に 必 要 な 行 動 を ど の 程 度 う ま く 行 う こ と が で き る か に 関 す る 確 信 」 で あ る 。 本 研 究 で は 主 体 感 覚 を 自 己 効 力 感 と し て 定 義 す る こ と と す る 。

空 間 づ く り が な ぜ 主 体 感 覚 の 活 性 化 を 起 こ す の か に つ い て , 吉 良(1994)は 一 つ の モ デ ル を 提 案 し て い る 。 こ の モ デ ル に よ る と , 空 間 づ く り に よ っ て 構 造 拘 束 的 な 体 験 に 陥 る 頻 度 が 減 少 し , そ の 結 果 気 が か り な 対 象 に 対 す る 主 体 感 覚 が 増 す と し て い る 。 し か し な が ら , こ の モ デ ル で は 心 理 的 距 離 と 体 験 様 式 と の 関 連 に つ い て は 詳 述 さ れ て い な い た め , 本 研 究 で は 以 下 の 補 足 的 説 明 を 加 え な が

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7 ら 論 じ る 。 前 述 の と お り 空 間 づ く り は 気 が か り な 対 象 と の 心 理 的 距 離 を 取 る 方 法 で あ る(高 沢 ・ 伊 藤, 2009b)。 ま た , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 に お い て は ネ ガ テ ィ ブ な 思 考 が 頭 に 浮 か ぶ 頻 度 が 高 く , ネ ガ テ ィ ブ な 対 象 が 近 い と 感 じ ら れ る (e.g., Cornell, 1991)。

第 2 節 先 行 研 究 の 問 題 点

第 1 項 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 測 定 尺 度

個 人 が ど の 程 度 , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 に 陥 っ て い る か を 測 定 す る 尺 度 は 現 在 の と こ ろ 見 受 け ら れ ず , こ れ ま で の 事 例 研 究 に お い て は 観 察 者 の 報 告 が 散 見 さ れ る に 留 ま っ て い る 。 し か し な が ら , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 は 言 語 化 が 可 能 (e.g., 徳 田, 2000)で あ る た め , 質 問 紙 法 に よ っ て い く つ か の 質 問 項 目 に 回 答 を 求 め , 得 点 化 す る こ と は 可 能 で あ る と 思 わ れ る 。 も し 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 に 陥 っ て い る 程 度 が 測 定 で き れ ば , 他 の 変 数 と の 相 関 関 係 を 算 出 す る こ と 等 に よ っ て 理 論 的 検 証 を 容 易 と す る で あ ろ う 。 さ ら に , 後 述 の 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 再 定 義 や 操 作 的 定 義 化 を 可 能 と す る で あ ろ う 。第 3章 第 1 節 に お い て 作 成 さ れ た 尺 度 に つ い て , 妥 当 性 ・ 信 頼 性 の 検 証 を 行 っ た 。

第 2 項 心 理 学 的 概 念 に よ る 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 再 定 義

構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 は 哲 学 か ら 発 生 し た 概 念 で あ り , 抽 象 度 が 高 く ど の よ う な 現 象 を 捉 え て い る か そ の 定 義 自 体 か ら は 捉 え る こ と が 困 難 で あ っ た 。 心 理 学 的 な 実 験 操 作 の レ ベ ル ま で 具 体 化 し よ う と し て も , あ る い は 概 念 と 精 神 健 康 度 と の 関 連 を 明 ら か に し よ う と し て も , 概 念 や 現 象 が 不 明 確 な ま ま で は 不 可 能 で あ る 。 し た が っ て , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 が 心 理 学 的 概 念 に お い て は ど の よ う に 捉 え ら れ , ど の よ う な 現 象 を 示 し て い る の か を 明 ら か に す る 必 要 が あ る 。 そ れ に よ っ て , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 操 作 的 定 義 も 可 能 と な る で あ ろ う 。 こ れ ら の 問 題 を 解 決 す る た め に , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 を 反 映 す る 文 章 や 表 現 を 収 集 し , 質 問 項 目 を 仮 に 作 成 し て 質 問 紙 調 査 を 行 っ た 。 調 査 デ ー タ を 因 子 分 析 に か け , 因 子 構 造 を 確 認 し た 後 , ネ ガ テ ィ ブ な 反 す う 特 性 や そ の 他 の 精 神 健 康 度 と の 関 連 を 検 討 し た 。 こ れ に つ い て は , 第 3章 に お い て 結 果 の 提 示 と 議 論 を

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8 行 う 。 さ ら に , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 操 作 的 定 義 を 得 る こ と は , 第 4章 に お け る 実 験 操 作 の 根 拠 と な る で あ ろ う 。

第 3 項 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 は ネ ガ テ ィ ブ 表 象 へ の 心 理 的 距 離 を 近 く す る か

空 間 づ く り と 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 と の 関 連 は ,ど の よ う に 生 じ て い る の か 。 こ れ ら の 2 つ の 概 念 を 繋 ぐ 変 数 は 心 理 的 距 離 で あ る 。空 間 づ く り は 対 象 と の 心 理 的 距 離 を 増 大 さ せ る こ と は 既 に デ ー タ か ら 明 ら か と な っ て い る(高 沢 ・ 伊 藤, 2009b)。し か し な が ら ,構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 と ネ ガ テ ィ ブ 表 象 へ の 心 理 的 距 離 と の 関 連 は , そ の 可 能 性 の み が 指 摘 さ れ る に 留 ま り , 客 観 的 な 方 法 論 に よ る 根 拠 が 提 示 さ れ て い な い 。例 え ば ,Cornell(1991)で は「 近 い ・ 遠 い 」と い う 表 現 を 用 い て あ る ネ ガ テ ィ ブ な 思 考 が 頭 に 浮 か ぶ 頻 度 を 示 唆 す る に 留 ま っ て い る 。 ま た , 福 盛(2000)で は フ ォ ー カ シ ン グ 中 に ネ ガ テ ィ ブ な 内 容 の 発 言 が 報 告 さ れ る 程 度 に 応 じ て 「 近 い 」 あ る い は 「 近 す ぎ る 」 距 離 と し て 評 定 し た が , こ の 評 定 は 参 加 者 自 身 に よ る も の で は な い た め 測 定 方 法 に 疑 問 が 残 る 。 こ の よ う に 先 行 研 究 を 概 観 す る と , 体 験 様 式 と 心 理 的 距 離 と の 関 連 の 検 討 に お い て も 方 法 論 的 な 問 題 を 抱 え た ま ま で あ り , 検 証 が 不 十 分 で あ る 。 さ ら に , ネ ガ テ ィ ブ 表 象 が 「 近 い 」 と す る 態 度 が 生 じ る 過 程 に ど の よ う な 変 数 が 介 在 し て い る か 不 明 確 で あ り , 理 論 的 な 説 明 は な さ れ て い な い 。

そ こ で 、 反 す う と ネ ガ テ ィ ブ 表 象 と の 近 さ に つ い て 人 格 特 性 、 お よ び 実 験 的 操 作 に よ っ て 相 関 関 係 ・ 因 果 関 係 の 検 証 を 行 う こ と が 必 要 で あ ろ う 。 も し ネ ガ テ ィ ブ な 情 報 を 鮮 明 に イ メ ー ジ し 続 け た 場 合 は 、 ネ ガ テ ィ ブ 表 象 を 「 近 い 」 と 感 じ る が 、 逆 に そ う い っ た 情 報 か ら 注 意 を 逸 ら す 場 合 は そ の よ う な ネ ガ テ ィ ブ 表 象 が 近 い と す る 態 度 は 生 じ な い と 予 測 さ れ る 。

こ れ ら の 議 論 を 通 し て 心 理 的 距 離 が 体 験 過 程 理 論 の 重 要 な 変 数 で あ る こ と の エ ビ デ ン ス を 得 、 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 と 心 理 的 距 離 に よ る 新 た な モ デ ル を 提 示 す る こ と が で き よ う 。 そ れ は 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 と 心 理 的 距 離 と の 相 関 関 係 ・ 因 果 関 係 の 特 定 と い っ た 理 論 的 発 展 だ け で は な く 、 実 践 活 動 へ の 示 唆 、 お よ び 技 法 の さ ら な る 発 展 に 関 す る ア イ デ ィ ア を も 提 供 で き る と 考 え ら れ る 。 具 体 的 に は 、 心 理 的 近 接(も し く は 接 近 行 動)と 具 体 的 表 象 、 お よ び 心 理 的 遠 隔(も

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9 し く は 回 避 行 動)と 抽 象 的 表 象 と い っ た 自 動 化 さ れ た 認 知 プ ロ セ ス が タ ー ゲ ッ ト に 関 す る 情 報 処 理 に 介 在 す る の で あ れ ば 、 従 来 の 空 間 づ く り が 単 に 心 理 的 遠 隔 を プ ラ イ ム し て い た に 留 ま る の に 対 し 、 タ ー ゲ ッ ト に 対 す る 回 避 行 動 を プ ラ イ ム し た り 、 あ る い は 抽 象 的 表 象 を プ ラ イ ム し た り す る 方 法 で 、 新 た な 空 間 づ く り の ス タ イ ル を 提 案 す る こ と も で き よ う 。

以 上 の よ う に 、 体 験 過 程 理 論 の 発 展 と 実 践 方 法 の さ ら な る 精 緻 化 へ と 繋 げ る よ う な 一 連 の 研 究 が 望 ま れ る 。第4章 で は 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 が ネ ガ テ ィ ブ 表 象 へ の 心 理 的 距 離 を 規 定 す る か ど う か ,デ ー タ に 基 づ い た 客 観 的 な 検 証 を 行 う 。

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第 2 章 問 題 点 の 解 決 に 関 わ る 理 論 的 背 景 と 予 測

第 1 章 で は 先 行 研 究 に お い て 未 解 決 の 問 題 を 洗 い 出 し た 。第 2 章 で は ,そ れ ら の 問 題 が ど の よ う な 理 論 的 背 景 に よ っ て 解 釈 可 能 で あ り 解 決 可 能 で あ る の か に つ い て 述 べ た 上 で , 本 論 の 目 的 と 予 測 を 述 べ た い 。

第 1 節 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 測 定 可 能 性

第 1 章 で 述 べ た よ う に ,構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 に 陥 っ て い る か を 測 定 す る 尺 度 は 現 在 の と こ ろ 見 受 け ら れ な い 。 し か し な が ら , 徳 田(2000)の よ う に 体 験 様 式 は 言 語 化 が 可 能 で あ る た め そ の 程 度 は 質 問 紙 に よ っ て 測 定 が 可 能 と 考 え ら れ る 。Gendlin(1964)が 述 べ た よ う に , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 に は 6つ の 定 義 的 特 徴 が あ る 。 そ れ ら に 該 当 す る 表 現 内 容 を 60 年 代 か ら 現 在 ま で の 文 献 の 中 か ら 収 集 し , 質 問 項 目 の 形 式 に し て 調 査 を 行 う 。 ま た , 基 準 関 連 妥 当 性 の 検 証 に は 精 神 健 康 度 と 幻 覚 様 体 験 の 頻 度 と の 相 関 係 数 を 用 い る 。 こ れ は Gendlin (1964)や Prouty (2004)が 指 摘 す る よ う に ,構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 は 統 合 失 調 症 , う つ , 幻 覚 の 症 状 を 反 映 し て い る た め で あ る 。 さ ら に 内 部 一 貫 性 を 示 す

Cronbachの α 係 数 を 算 出 し , 信 頼 性 の 検 討 を 行 う 。 こ の デ ー タ は 第 3章 第 1 節 , 尺 度 開 発 の 研 究 に お い て 紹 介 す る 。

第2節 反 す う に よ る 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 の 説 明 可 能 性 と そ の 背 景

Gendlinが1964年 に 体 験 様 式 と い う 概 念 を 紹 介 し て か ら , 概 念 自 体 に 対 す る 精 緻 化 は 長 い 間 行 わ れ ず に い た(吉 良, 1994)。そ の 結 果 ,体 験 様 式 と 他 の 変 数 と の 連 関 関 係 を 特 定 す る た め に 実 験 的 な 検 討 を 行 お う と す る 際 , 体 験 様 式 が ど の よ う な 心 理 学 的 変 数 に よ っ て 説 明 さ れ る の か , あ る い は 心 理 学 的 に は ど の よ う な 現 象 を 捉 え て い る 変 数 で あ る の か 不 明 確 な ま ま で あ っ た た め , 体 験 様 式 の 操 作 的 定 義 と は ど の よ う な も の か に つ い て も 曖 昧 な ま ま で あ っ た 。こ の 背 景 に は , 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 を 測 定 可 能 な 変 数 と し て 取 り 扱 う た め の 尺 度 が 開 発 さ れ て い な い こ と が 一 因 と し て 考 え ら れ る 。 さ ら に , 体 験 様 式 と は 哲 学 的 な 概 念 で あ り 抽 象 度 が 高 く , 定 義 的 な 特 徴 を 理 解 し て も や は り ど の よ う な 心 理 学 的 事 象 を 捉 え る こ と が 可 能 で あ る の か , 具 体 的 な 知 見 は も た ら さ れ て こ な か っ た 。 し

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11 か し な が ら ,体 験 様 式 の6つ の 定 義 的 特 徴 か ら ,構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 が ,反 応 ス タ イ ル 理 論 に お け る 反 す う(Nolen-Hoeksema, 1991)と 非 常 に 似 通 っ た 定 義 や 現 象 の 捉 え 方 を し て い る と 考 え ら れ る 。 第2節 で は 反 応 ス タ イ ル 理 論 を 概 観 し , 第3章 で は 構 造 拘 束 的 な 体 験 様 式 と 反 応 ス タ イ ル の 類 似 性 に 関 す る 実 証 的 な デ ー タ を 提 示 す る 。

第 1 項 反 す う

自 己 の 抑 う つ 気 分 や 症 状 , お よ び そ の あ り う る 原 因 や 結 果 に つ い て 考 え 続 け る 反 応 ス タ イ ル を 反 す う(Rumination)と い う(Nolen-Hoeksema, 1991)。反 す う 者 は 自 己 の 抑 う つ 気 分 が な ぜ 生 じ る か を 考 え る が , ほ と ん ど の 場 合 そ れ は 問 題 解 決 に は 結 び つ か ず , 何 の 対 処 行 動 も 起 こ せ ず に 彼 ら の 問 題 や 感 情 へ と 固 執 す る 。

一 方 , 抑 う つ 気 分 や そ の 結 果 か ら 注 意 を そ ら し , 熱 中 で き , ポ ジ テ ィ ブ な 強 化 と な り う る 楽 し い 思 考 お よ び 行 動 は 気 晴 ら し と 呼 ば れ る(Nolen-Hoeksema, 1991)。 具 体 的 に は ド ラ イ ブ や 映 画 で 楽 し ん だ り , 仕 事 に 集 中 し た り す る こ と で あ る 。 た だ し , 自 己 破 滅 的 で 危 険 な 行 為(e.g., 無 謀 な 運 転 , 深 酒 , 薬 物 , 攻 撃 的 行 動)は ,短 期 的 に は 気 分 を 向 上 さ せ る が ,長 期 的 な 視 点 か ら は 害 の あ る 行 動 で あ る た め 気 晴 ら し に は 含 ま れ な い 。

第 2 項 反 す う の 悪 影 響 (1)抑 う つ 気 分

反 す う 傾 向 の 個 人 差 を 測 定 す るRuminative Response Scale of Response Style Questionnaireが 開 発 さ れ(Nolen-Hoeksema & Morrow, 1991), 抑 う つ 気 分 や 症 状 と の 関 連 が 報 告 さ れ て い る 。 一 連 の 研 究 か ら , 反 す う 傾 向 の 高 い 人 は 抑 う つ 気 分 に 陥 る と , そ の 気 分 が 持 続 し , 症 状 を 発 症 し や す く な る こ と が 明 ら か に な っ て い る(Just & Alloy, 1997; Kuehner & Weber, 1999; Nolan, Roberts,

& Gotlib, 1998; Nolen-Hoeksema, 2000; Nolen-Hoeksema, Larson, & Grayson, 1999; Nolen-Hoeksema, Morrow, & Fredrickson, 1993; Nolen-Hoeksema, Parker, & Larson, 1994; Roberts, Gilboa, & Gotlib, 1998; Sarin, Abela, &

Auerbach, 2005; Segerstrom, Tsao, Alden, & Craske, 2000; Spasojevic &

Alloy, 2001)。

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12 反 す う と 類 似 の 概 念 と 抑 う つ の 関 連 も 検 討 さ れ て い る 。 例 え ば 「 自 己 の 問 題 へ の 固 執 性 」(Mor & Winquist, 2002; Siegle, Moore,& Thase, 2004),自 己 の ネ ガ テ ィ ブ な 側 面 に 注 意 を 向 け 続 け る「 ネ ガ テ ィ ブ な 反 す う 」(Siegle et al., 2004) も ま た 抑 う つ と の 有 意 な 相 関 関 係 が 見 ら れ て い る 。

反 す う が 抑 う つ 気 分 を 高 め る 悪 影 響 に つ い て は 実 験 的 な 証 拠 も 多 く 提 示 さ れ て い る 。特 に 抑 う つ 気 分 の 高 い 群 は 反 す う を 行 う と 抑 う つ 気 分 が さ ら に 高 ま り , 気 晴 ら し を 行 う と 抑 う つ 気 分 が 軽 減 し た 。 一 方 , 抑 う つ 気 分 の 低 い 群 で は 反 す う 後 , 気 晴 ら し 後 と も に 変 化 が な か っ た(Lyubomirsky, Caldwell, &

Nolen-Hoeksema, 1998; Lyubomirsky & Nolen-Hoeksema, 1993, 1995;

Lyubomirsky, Tucker, Caldwell, & Berg, 1999; Morrow & Nolen-Hoeksema, 1990; Nolen-Hoeksema & Morrow, 1993)。 同 様 の 結 果 は 臨 床 群 に お い て も 確 認 さ れ て い る(Donaldson & Lam, 2004; Lavender & Watkins, 2004; Watkins

& Baracaia, 2002; Watkins & Moulds, 2005; Watkins & Teasdale, 2001)。

第 3 項 反 す う の 悪 影 響 (2)ネ ガ テ ィ ブ な 認 知

反 す う は 過 去 ・ 現 在 ・ 未 来 の 判 断 や 記 憶 の 想 起 ・ 再 生 に も 影 響 す る 。 反 す う 群 の 参 加 者 は ネ ガ テ ィ ブ な 思 考 か ら 注 意 を 逸 ら す 群 よ り も , 最 近 の 自 分 の 生 活 で ネ ガ テ ィ ブ な 出 来 事 が 頻 繁 に 起 こ っ た と 報 告 し た(Lyubomirsky et al., 1998;

McFarland & Buehler, 1998; Pyszczynski, Hamilton, Herring, & Greenberg, 1989)。 ま た , 抑 う つ 気 分 の 高 い 反 す う 群 の 参 加 者 は , 最 近 起 こ っ た ネ ガ テ ィ ブ な 自 伝 的 記 憶(e.g., 家 族 の 諍 い ,経 済 的 苦 悩)を 報 告 し た の に 対 し ,抑 う つ 気 分 の 低 い 反 す う 群 や 気 晴 ら し 群 の 参 加 者 は , ポ ジ テ ィ ブ な 出 来 事 を 報 告 し た (Lyubomirsky et al., 1999)。さ ら に ,架 空 の ネ ガ テ ィ ブ な 出 来 事 を 呈 示 す る と , 抑 う つ 気 分 の 高 い 反 す う 者 は そ う で な い 者 と 比 べ て , よ り ネ ガ テ ィ ブ な バ イ ア ス の か か っ た , 歪 ん だ 解 釈(e.g., 成 功 の 可 能 性 を 極 端 に 小 さ く 認 識 , 失 敗 を 過 度 に 一 般 化)を す る 傾 向 に あ っ た(Lyubomirsky & Nolen-Hoeksema, 1995;

Lyubomirsky et al., 1999)。 未 来 の 予 想 に 関 し て も , 抑 う つ 気 分 の 高 い 反 す う 者 は ポ ジ テ ィ ブ な 出 来 事 (Lyubomirsky & Nolen-Hoeksema, 1995), 問 題 解 決 (Lyubomirsky et al., 1999), 楽 し い 活 動(Lyubomirsky & Nolen-Hoeksema, 1993)へ の 期 待 が 一 様 に 低 か っ た 。 同 様 の 結 果 は 臨 床 群 で も や は り 見 ら れ , 反

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13 す う を 行 っ た 大 う つ 病 患 者 は そ の 他 の 方 略 を と っ た 患 者 よ り も , 彼 ら 自 信 や 未 来 に つ い て の ネ ガ テ ィ ブ な 思 考 が 増 大 し た(Lavender & Watkins, 2004; Rimes

& Watkins, 2005)。

第 4 項 反 す う の 悪 影 響 (3)抑 う つ の 発 症 か 持 続 か

反 応 ス タ イ ル 理 論 が 打 ち 出 さ れ た 当 初 は , 反 す う 的 反 応 ス タ イ ル が 抑 う つ 症 状 の 発 症 よ り も 持 続 期 間 を 予 測 す る も の で あ る と さ れ て い た (e.g., Nolen-Hoeksema, 1991)。 し か し な が ら , そ の 後 の 大 規 模 な 調 査 研 究 に よ り , 未 発 症 の 参 加 者 に お け る 反 す う 傾 向 は む し ろ 調 査 時 期 か ら 1 年 以 内 の 発 症 を 予 測 し , 症 状 の 持 続 期 間 と は 関 連 が な か っ た (Just & Alloy, 1997;

Nolen-Hoeksema, 2000)。 ま た , 大 う つ 病 の 基 準 に 当 て は ま る 大 学 生 に 対 し 調 査 が 行 わ れ た が , 反 す う 傾 向 は 症 状 の 持 続 期 間 と は や は り 関 連 が な く , 再 発 す る か ど う か も 予 測 し て い な か っ た(Lara, Klein, & Kasch, 2000)。さ ら に ,既 に 治 療 を 受 け て い る 大 う つ 病 患 者 に お い て も , 症 状 の 持 続 期 間 に 対 し て 反 す う は 予 測 力 を 持 た な か っ た(Arnow, Spangler, Klein, & Burns, 2004; Bagby &

Parker, 2001; Park, Goodyer, & Teasdale, 2004; Schmaling, Dimidjian, Katon, & Sullivan, 2002)。 つ ま り , 反 す う 傾 向 は 抑 う つ 症 状 の 持 続 期 間 へ の 予 測 力 は な く , 発 症 に 関 し て は 未 発 症 の 個 人 に 限 り 予 測 力 が あ る こ と が 明 ら か と な っ て い る 。 た だ し , 患 者 は 既 に 薬 物 療 法 や 精 神 療 法 を 受 け て お り , 反 す う の 影 響 力 が 弱 ま っ た 可 能 性 を 否 定 で き な い た め , 反 す う が 大 う つ 病 患 者 に お け る 再 発 を 予 測 し な い 点 に つ い て は 解 釈 に 注 意 を 要 す る(レ ビ ュ ー と し て, Nolen-Hoeksema, Wisco, & Lyubomirsky, 2008)。

反 す う の み で は 抑 う つ 気 分 や 症 状 の 持 続 期 間 を 予 測 で き な い が , ネ ガ テ ィ ブ な 認 知 ス タ イ ル や 非 合 理 的 な 思 考 ス タ イ ル と の 組 み 合 わ せ に よ っ て , 持 続 期 間 を 予 測 で き る と い う 。 例 え ば 未 治 療 の 患 者 に お い て , 反 す う と ネ ガ テ ィ ブ な 認 知 ス タ イ ル の 交 互 作 用 が う つ 病 の 期 間 を 予 測 す る と い う 報 告 が な さ れ て い る (Robinson & Alloy, 2003)。ま た ,既 に 治 療 を 受 け て い る 患 者 に お い て も 同 様 の 結 果 が 得 ら れ て い る(Ciesla & Roberts, 2002)。単 に 反 す う 傾 向 が 高 い だ け で は な く , ネ ガ テ ィ ブ な 認 知 を 持 っ て い る 個 人 は , よ り 抑 う つ 症 状 が 長 引 く と 考 え ら れ る 。

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14 第 5 項 認 知 的 制 御 能 力 の 欠 陥

抑 う つ 者 は ニ ュ ー ト ラ ル な 刺 激 に 対 す る 注 意 が 持 続 せ ず , す ぐ に 自 己 の 心 配 事 や そ の 他 の 無 関 連 な 対 象 に 注 意 が 奪 わ れ が ち で あ る(Ellis, Thomas, &

Rodriguez, 1984; Hertel & Hardin, 1990; Hertel & Rude, 1991)。 さ ら に , 抑 う つ 気 分 の 高 い 反 す う 者 は 課 題 へ の 集 中 が で き ず 成 績 も 悪 い が , 抑 う つ 気 分 の 低 い 反 す う 者 は こ の よ う な 注 意 の 欠 陥 が 見 ら れ な い こ と が 実 験 に よ っ て 示 さ れ て い る(Lyubomirsky, Boehm, Kasri, & Zehm, 2007)。 ま た , ニ ュ ー ト ラ ル 刺 激 の 再 生 に お い て も 抑 う つ 的 反 す う 者 は 抑 う つ 気 分 の 低 い 反 す う 群 , 統 制 群 , 気 晴 ら し 群 よ り も 成 績 が 悪 い(Hertel, 1998)。

さ ら に 反 す う 者 は ウ ィ ス コ ン シ ン カ ー ド 分 類 課 題 の 遂 行 時 に , 役 立 た な い 方 略 か ら 有 効 な も の へ と , 自 ら の 利 用 す る 方 略 を 切 り 替 え ら れ ず , 抑 う つ 気 分 を 統 計 的 に 統 制 し て も 同 様 の 効 果 が 残 る こ と が 分 か っ て い る(Davis &

Nolen-Hoeksema, 2000)。 同 様 に , 抑 う つ 的 反 す う 者 は 数 字 の ラ ン ダ ム 生 成 時 に , 効 率 の 悪 い 方 略 に 固 執 す る と い う(Watkins & Brown, 2002)。 抑 う つ の 程 度 に か か わ ら ず , 反 す う 者 は 注 意 の 配 分 を 要 す る 課 題 に お い て 片 方 の 方 略 を 抑 制 で き な い こ と も 示 さ れ て い る(Whitmer & Banich, 2007)。

抑 う つ 的 な 反 す う 者 は ネ ガ テ ィ ブ な 情 報 に 注 意 を 奪 わ れ が ち で , ネ ガ テ ィ ブ な 自 伝 的 記 憶 を よ り 想 起 し や す い こ と は , 主 に 顕 在 指 標 に よ っ て 確 認 さ れ て き た 知 見 で あ る 。 そ れ だ け で は な く , 注 意 の 研 究 や 潜 在 記 憶 研 究 の 流 れ に お い て も , 抑 う つ 的 な 反 す う 者 が ネ ガ テ ィ ブ な 情 報 を 抑 制 で き な い こ と が 示 さ れ て い る(Joorman, 2004, 2005; Siegle, Steinhauer, Thase, Stenger, & Carter, 2002)。 例 え ば ,ド ッ ト 検 索 課 題(dot probe task)に お い て ,自 己 評 価 に よ る 反 す う 得 点 が ネ ガ テ ィ ブ な 単 語 へ の バ イ ア ス を 予 測 し , 抑 う つ 得 点 を 統 計 的 に 統 制 し て も こ の 効 果 が 見 ら れ て い る(Donaldson, Lam, & Mathews, 2007)。

抑 う つ 者 は ネ ガ テ ィ ブ な 情 報 を 抑 制 す る 能 力 に 欠 陥 が あ り(Joorman, 2005),

そ の た め に ポ ジ テ ィ ブ な 情 報 を デ ィ ス ト ラ ク タ と し て 使 用 し な い 傾 向 が あ る (Wenzlaff, Wegner, & Roper, 1988)。 こ の 特 徴 は 抑 う つ 的 反 す う 者 に お い て も 見 ら れ る(Hertel & Gerstle, 2003)。抑 う つ 的 反 す う 者 は 気 晴 ら し 群 や 統 制 群 と 比 べ て , 気 分 を 回 復 さ せ る た め に ポ ジ テ ィ ブ な 自 伝 的 記 憶 を 想 起 す る の に 時 間 が か か り(Joorman & Seimer, 2004), そ も そ も ポ ジ テ ィ ブ な 記 憶 を 利 用 す る こ

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15 と へ の 動 機 づ け が 低 い(McFarland & Buehler, 1998)。 さ ら に , 抑 う つ 的 反 す う 者 は , ポ ジ テ ィ ブ な デ ィ ス ト ラ ク タ が 気 分 を 上 昇 さ せ る の に 有 効 で あ る こ と は 理 解 し て い る も の の ,そ れ を 実 際 の 行 動 に 移 す こ と が 困 難 で あ る(レ ビ ュ ー と し て, Nolen-Hoeksema et al., 2008)。

第 3 節 心 理 的 距 離

心 理 的 距 離 に つ い て 既 に 広 範 な 研 究 が な さ れ て い る 。 そ の 中 で も 代 表 的 な 解 釈 水 準 理 論(Liberman & Trope, 2008; Trope & Liberman, 2010)を 紹 介 し , 心 理 的 距 離 と は 何 か , 心 理 的 距 離 と 共 変 す る 心 理 学 的 変 数 と は 何 か に つ い て 紹 介 す る 。

第 1 項 解 釈 水 準 理 論 の 基 本 的 前 提

解 釈 水 準 理 論 と は , 心 理 的 距 離(行 動 の 主 体 と 対 象 と の 主 観 的 な 距 離 感; Bar-Anan et al., 2007)と 解 釈 水 準 と の 連 関 を 広 範 囲 に 渡 っ て 示 し た 理 論 体 系 で あ る 。 具 体 的 な 情 報 は 「 近 い 」 と 判 断 さ れ , 抽 象 的 な 情 報 は 「 遠 い 」 と 判 断 さ れ る 。 ま た , 対 象 か ら の 距 離 が 近 い 場 合 は 具 体 的 に , 遠 い 場 合 は 抽 象 的 に 表 象 さ れ る 。 こ う し た 心 理 的 距 離 と 解 釈 水 準 と の 相 互 的 因 果 関 係 は , 実 験 的 に 根 拠 が 提 示 さ れ , 社 会 的 認 知 , 説 得 や 態 度 な ど の 分 野 に 示 唆 を 与 え て い る 。

第 2 項 解 釈 水 準 理 論 の 萌 芽

Trope and Liberman (2010)に よ る と ,Rosch (1975)に よ る カ テ ゴ リ 化 理 論 (Theories of categorization),Medin and Smith (1984)に よ る 概 念 形 成 (Concept formation),Vallacher and Wegner (1987)に よ る 行 為 認 証 理 論 (Action identification theory)が ,Liberman and Trope (1998)と Trope and Liberman (2003)の 時 間(依 存)的 解 釈 理 論(Temporal construal theory)を 生 み 出 し , そ の 後 解 釈 水 準 理 論 へ と 洗 練 さ れ て い っ た 。 本 論 の 中 核 的 理 論 で あ る 解 釈 水 準 理 論 を 紹 介 す る 前 に , そ の 歴 史 的 背 景 を 紹 介 す る 。

Rosch の カ テ ゴ リ 化 理 論(1975)に よ る と , 同 じ カ テ ゴ リ に 属 す る 個 々 の 具 体 物 は , カ テ ゴ リ を ど の く ら い 適 切 に 表 現 し て い る か(i.e., 代 表 性)に お い て 異 な る 可 能 性 が あ る と し て い る 。Rosch の 実 験 に お い て ,参 加 者(ア メ リ カ の 大 学 生)

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16 は 60 個 の 家 具 に つ い て ど れ だ け 家 具 を 代 表 す る 例 と し て ふ さ わ し い か 回 答 し た 。 最 も ふ さ わ し い 例 は 椅 子 で あ り , 最 も ふ さ わ し く な い 例 は 電 話 で あ っ た 。 同 じ カ テ ゴ リ 内 に お い て も 具 体 的 な レ ベ ル に お い て は 代 表 性 の 程 度 が 異 な る こ と を 示 し た 。 こ れ は , カ テ ゴ リ 内 に お い て 具 体 例 が 階 層 構 造 を 成 し て い る こ と を 示 唆 し て い る 。

Vallacher and Wegner (1987)に よ る 行 為 認 証 理 論 で は ,単 一 の 行 為 も 様 々 な 水 準 で 表 現 さ れ る こ と か ら , 行 為 自 体 に 階 層 構 造 が 存 在 す る こ と を 示 し た 。 例 え ば 「 兵 役 に 志 願 す る 」 と い う 行 為 は 「 国 の 安 全 を 守 る 」 と い う 抽 象 的 な 目 標 か ら「 書 類 に 記 入 す る 」と い う 具 体 的 な 手 段 ま で ,異 な る 水 準 で 表 現 さ れ う る 。 よ り 直 接 的 に 解 釈 水 準 理 論 へ と 影 響 を 与 え た の は ,Liberman and Trope (1998)と Trope and Liberman (2003)の 時 間(依 存)的 解 釈 理 論 で あ る 。こ れ ら の 研 究 は , 時 間 的 距 離(temporal distance)が 増 大 す る ご と に 人 間 の 判 断 が 抽 象 的 と な り , よ り 高 次 の 表 象 を 好 む よ う に な る こ と を 示 し た 。 具 体 的 に は , 高 次 表 象 に は 一 次 目 標 , 望 ま し さ , 理 由 , 評 価 な ど が 結 び つ い て お り , 低 次 表 象 に は 二 次 目 標 , 実 行 可 能 性 , 手 段 , 材 質 な ど が 結 び つ い て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。

時 間 的 距 離 の み な ら ず , 空 間 的 距 離(spatial distance)・ 社 会 的 距 離(social distance)・ 仮 想 性 距 離(hypotheticality)を 含 ん だ 4 つ の 距 離 次 元 に お い て , 距 離 と 表 象 と の 連 関 関 係 が 一 致 し て い る こ と を 示 し(Bar-Anan et al., 2007;

Bar-Anan, Liberman, & Trope, 2006), こ れ ら を 総 括 し た の が 解 釈 水 準 理 論 (Liberman & Trope, 2008; Trope & Liberman, 2010)で あ る 。

第 3 項 解 釈 水 準 と 表 象

自 己 と 刺 激 と の 心 理 的 距 離 が 増 大 す る に 伴 い , 刺 激 は 高 次 表 象(high-level representations)に よ っ て 処 理 さ れ る 。 一 方 , 心 理 的 距 離 が 減 衰 す る に 伴 い , 刺 激 は 低 次 表 象(low-level representations)に よ っ て 処 理 さ れ る 。情 報 が 高 次 表 象 に よ っ て 処 理 さ れ る こ と を 高 次 解 釈(high-level construal)と い い , こ れ に よ っ て 処 理 さ れ る 情 報 は 抽 象 的 で 一 貫 し て お り , 望 ま し さ を 喚 起 さ せ , よ り 高 次 の 目 標 ・ 価 値 や 使 用 意 図 ,Why type question (i.e., な ぜ そ の 行 動 を 行 う の か) に 関 す る 表 象 が 活 性 化 す る 。 情 報 が 低 次 表 象 に よ っ て 処 理 さ れ る こ と を 低 次 解

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17 釈(low-level construal)と い い , こ れ に よ っ て 処 理 さ れ る 情 報 は 具 体 的 で 状 況 依 存 的 で あ り ,実 行 可 能 性 を 喚 起 さ せ ,二 次 的 な 目 標 ・価 値 や 材 質 ,How type question (i.e., ど の よ う に そ の 行 動 を 行 う の か)に 関 す る 表 象 が 活 性 化 す る 。例 え ば , ゲ ー ム 機 を よ り 高 次 の 「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の た め の ツ ー ル 」 と 表 象 し た 場 合 ,二 次 的 な 価 値 で あ る「HDD容 量 」と い う 情 報 は 重 要 で は な い 。一 方 , ゲ ー ム 機 を よ り 低 次 の 「HDD 容 量 を ○ ○ テ ラ バ イ ト ま で 増 設 可 能 な ツ ー ル 」 と 表 象 し た 場 合 ,「 何 の 目 的 で 行 う の か 」と い う 情 報 の 価 値 は 相 対 的 に 減 衰 す る 。 表 象 の 水 準 の 高 低 を 決 定 す る の は 中 心 性(centrality)で あ る(Trope &

Liberman, 2010)。 高 次 表 象 に 属 す る 特 徴 が 変 化 す る に つ れ , 対 象 の 意 味 も 変 化 す る 。 一 方 , 低 次 表 象 に 属 す る 特 徴 の 変 化 は 高 次 表 象 の そ れ に 比 べ て 対 象 の 意 味 に 与 え る 影 響 は 小 さ い 。 換 言 す れ ば , 対 象 の 意 味 を 含 む 中 心 的 な 情 報 が 高 次 表 象 で あ り , そ れ 以 外 の 周 辺 的 な 情 報 を 含 む の が 低 次 表 象 で あ る 。

高 次 表 象 が よ り 抽 象 的 で 一 貫 し て お り , 典 型 的 で ス キ ー マ 的 な 情 報 を 伝 達 す る 理 由 と し て は , 無 関 連 な , あ る い は そ れ と 一 致 し な い 情 報 が 排 除 さ れ る た め で あ ろ う(e.g., Smith, 1998)。た だ し 高 次 表 象 は 低 次 表 象 と 比 べ て 漠 然 と し た , 曖 昧 な 情 報 だ け を 伝 達 す る わ け で は な く , さ ら に 付 加 的 な 情 報 を も 示 唆 す る 。 例 え ば 「 サ ッ カ ー を す る 」 と い う 行 動 を 「 楽 し む 」 と い う 高 次 表 象 に よ っ て 解 釈 す る と , サ ッ カ ー を す る こ と が 楽 し い も の で あ る と い う 付 加 的 な 情 報(e.g., 感 情 価)が 伝 達 さ れ る 。

表 象 の 中 に も 多 様 な 抽 象 の 形 式 が あ り ,対 象 を 包 括 す る カ テ ゴ リ で あ っ た り , 行 為 の 階 層 で あ っ た り す る 。 あ る 行 為 は よ り 高 次 の 抽 象 的 な 目 標 , あ る い は 低 次 の 手 段 的 な 二 次 目 標 と し て 解 釈 さ れ う る(Vallacher & Wegner, 1987)た め , 例 え ば 「 資 格 試 験 の 勉 強 」 は 「 就 職 活 動 に 有 利 に な る よ う に す る 」 と い っ た 理 由 , つ ま り 「 な ぜ そ れ を 行 う の か 」 に あ た る 高 次 解 釈 , あ る い は 「 参 考 書 を 読 む 」 と い っ た 具 体 的 手 段 , つ ま り 「 ど の よ う に そ れ を 行 う の か 」 に あ た る 低 次 解 釈 の 両 方 で 表 象 さ れ う る 。 高 次 解 釈 に よ る 表 現 に は , 低 次 表 象 に あ た る 事 物 の 詳 細(e.g., 材 質),手 段 的 , あ る い は 文 脈 的 ・ 状 況 依 存 的 情 報 が 含 ま れ ず ,む し ろ 一 般 的 な 意 味 や 感 情 価 に 関 す る 情 報 を 含 む 。 一 方 , 低 次 解 釈 に よ る 表 現 に は , 高 次 表 象 に 含 ま れ る 一 般 的 な 意 味 や 感 情 価 , 目 的 的 情 報 が 含 ま れ ず , む し ろ 事 物 の 詳 細 , 手 段 的 , 文 脈 的 ・ 状 況 依 存 的 情 報 が 含 ま れ る 。

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18 第 4 項 表 象 の 抽 象 度 と 心 理 的 距 離 の 双 方 向 的 因 果 関 係

我 々 は 自 己 と の 心 理 的 距 離 が 増 大 す る に つ れ , 対 象 を 高 次 表 象 に よ っ て 解 釈 し や す い 。 高 次 表 象 に よ る 解 釈 が 中 心 的 で 不 変 的 な 情 報 を も た ら す の に 対 し , 低 次 表 象 に よ る 解 釈 は 状 況 依 存 的 な 情 報 を も た ら す た め , 心 理 的 距 離 の 増 大 に 伴 い 低 次 表 象 は 利 用 可 能 で な く な る 場 合 が あ る た め で あ る 。

さ ら に , 高 次 表 象 に よ る 解 釈 が 対 象 と の 心 理 的 距 離 を 大 き く 感 じ さ せ る , 逆 の 影 響 関 係 も 見 ら れ て い る 。 高 次 解 釈 に よ っ て 一 般 的 な , 変 化 し に く い 情 報 が 利 用 可 能 と な る こ と で , 我 々 は 例 え ば 時 間 的 に 遠 い 過 去 の 経 験 と 現 在 の 知 識 を 統 合 す る こ と が で き た り ,物 理 的 に 遠 い 土 地 に つ い て 想 像 で き た り す る 。一 方 , 低 次 解 釈 に よ っ て は 限 定 的 で 文 脈 的 ・ 状 況 依 存 的 な 情 報 が 利 用 可 能 と な り や す く , そ の よ う な 情 報 は 対 象 が 近 い 時 に 利 用 価 値 が 高 い た め , 対 象 と の 心 理 的 距 離 は む し ろ 近 く 感 じ ら れ る 。

第 5 項 心 理 的 距 離 の 多 次 元 性 お よ び 相 互 関 連 性

Bar-Anan ら(2006, 2007)に よ る 一 連 の 研 究 に よ る と ,心 理 的 距 離 の 下 位 概 念 と し て 4 つ の 次 元 が 想 定 さ れ ,そ れ ぞ れ 空 間 的 距 離 ,時 間 的 距 離 ,社 会 的 距 離 , 仮 想 性 距 離 で あ る と さ れ る 。 こ れ ら の 4つ の 距 離 と , 表 象 の 抽 象 度 と が 連 合 を 形 成 し て い る 。例 え ばBar-Anan ら(2006)で は 抽 象 的 な 単 語 と 遠 い 距 離 の 単 語 , 具 体 的 な 単 語 と 近 い 距 離 の 単 語 が 容 易 に 分 類 さ れ , 逆 の 組 み 合 わ せ で 分 類 す る 際 に は 干 渉 が 起 こ る こ と を IATに よ っ て 示 し た 。同 様 の 連 合 は ,Picture-Word Stroop 課 題 に よ っ て も 再 現 さ れ て い る(Bar-Anan et al., 2007)。 遠 く 離 れ た 場 所 や 時 間 を 想 像 す る 際 , 我 々 は 具 体 的 な 情 報 を 利 用 し に く く , 逆 に 抽 象 的 な 情 報 は 利 用 し や す い 。 こ れ は 抽 象 的 情 報 , つ ま り 高 次 解 釈 に よ る 情 報 の 質 や 価 値 が 一 貫 し て い て 変 化 し に く い た め で あ る 。 こ の た め , 我 々 は 対 象 と の 距 離 が 近 い 時 に は 具 体 的 に 表 象 し , 遠 い 時 に は 抽 象 的 に 表 象 す る と い う 方 略 を 過 剰 に 学 習 し て い る 。 こ の た め , 顕 在 的 な 指 標 の み な ら ず IAT や Stroop 課 題 の よ う な 潜 在 指 標 に よ っ て も , 表 象 の 抽 象 度 と 心 理 的 距 離 の 自 動 的 な 連 合 が 観 察 さ れ る の で あ る 。

抽 象 度 と 距 離 の 連 合 の み な ら ず , 空 間 的 距 離 , 時 間 的 距 離 , 社 会 的 距 離 , 仮 想 性 距 離 の 4 つ の 距 離 の 次 元 同 士 も 連 合 が 形 成 さ れ て い る(Bar-Anan et al.,

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19 2007; Stephan, Liberman, & Trope, 2010)。 社 会 的 距 離 を 反 映 す る 指 標 と し て 空 間 的 距 離 の 測 定 が 用 い ら れ る こ と は よ く 知 ら れ て い る(e.g., Macrae,

Bodenhausen, Milne, & Jetten, 1994; Mooney, Cohn, & Swift, 1992 )。 ま た , 日 常 生 活 の 中 で 時 間 的 距 離 を 表 現 す る の に 空 間 的 距 離 が メ タ フ ァ ー と し て 用 い ら れ る こ と も あ る(Boroditsky, 2007)。Bar-Ananら(2007)に よ る と , 奥 行 き を 感 じ さ せ る 風 景 画 像 を 画 面 上 に 呈 示 し , 物 理 的 , 時 間 的 , 社 会 的 , 仮 想 的 距 離 の 近 い(遠 い)単 語 が 書 か れ た 矢 印 を 手 前(奥)に 配 置 し ,矢 印 の 位 置 を キ ー 押 し に よ っ て 特 定 す るStroop課 題 を 行 っ た 。 矢 印 に 印 字 さ れ た 距 離 と , 画 面 上 の 距 離 の 近 さ(遠 さ)が 一 致 し た 場 合 は 反 応 が 促 進 さ れ ,不 一 致 と な る と 干 渉 さ れ た こ と か ら ,心 理 的 距 離 の4つ の 次 元 は 同 一 の 意 味 を 成 す こ と が 示 さ れ た 。こ の 知 見 を さ ら に 拡 張 し た の がStephanら(2010)の 研 究 で あ る 。こ の 研 究 に よ る と ,例 え ば 社 会 的 距 離 を 操 作 す る こ と で , 対 象 と の 物 理 的 ・ 時 間 的 距 離 の 見 積 も り も 変 動 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た , 空 間 的 距 離 を 遠 く 操 作 す る と 社 会 的 距 離 も 遠 く 感 じ ら れ る と い う 逆 の 影 響 関 係 も 見 出 さ れ て お り , 他 の 研 究 に お い て も 実 証 さ れ て い る(e.g., Williams & Bargh, 2008, Study4)。 ま た , 仮 想 的 距 離 を 操 作 し 他 の 距 離 と の 連 動 を 検 証 し た 研 究 も 報 告 さ れ て い る(Wakslak & Trope, 2008, 2009)。 こ れ ら の 結 果 はBar-Ananら(2007)に よ る , 心 理 的 距 離 の4次 元 が 同 じ 意 味 を 持 つ と い う 知 見 を さ ら に 支 持 す る も の で あ る 。 総 じ て 心 理 的 距 離 と は4つ の 次 元 を 包 括 し た 概 念 で あ る と い え る 。

第 6 項 脳 機 能 と 心 理 的 距 離 お よ び 解 釈 水 準

心 理 的 距 離 の 下 位 概 念 同 士 が 同 様 の 意 味 を 持 つ に 至 る 基 盤 と し て , 社 会 的 距 離 と 時 間 的 距 離 の 処 理 に 関 わ る 脳 部 位 の 関 連 が 示 さ れ て い る(Mitchel, Ames, &

Gilbert, 2008)。 自 分 と 類 似 点 を 持 つ 人 や 現 在 の 自 分 は 腹 側 内 側 前 頭 前 皮 質 (ventral mPFC), 自 分 と 類 似 点 の 少 な い 人 や 未 来 の 自 分 は 背 側 内 側 前 頭 前 皮 質 (dorsal mPFC)の 各 領 域 で 処 理 さ れ る 。ま た ,低 次 解 釈 を 行 う 際 に は 腹 側 内 側 前 頭 前 皮 質 , 高 次 解 釈 を 行 う 際 に は 背 側 内 側 前 頭 前 皮 質 が 処 理 を 行 っ て い る (Amodio and Frith, 2006; Badre, 2008; Mitchell, Macrae, & Banaji, 2006;

Koechlin & Summerfield, 2007; Ramnani, & Owen, 2004)。 心 理 的 距 離 と 解 釈 水 準 と で 同 じ 神 経 基 盤 を 共 有 す る こ と に よ っ て , 両 概 念 の 関 連 の 基 礎 と な っ て

Table 9    Descriptive data
Fig. 5    Result of Structural Equation Modeling (SEM)
Fig. 6    本 研 究 に お け る IAT の ブ ロ ッ ク 編 成

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