Instagram における迷惑行為問題視の程度を規定する要因 —賞賛獲得欲求・注目欲求と公的自意識に着目して— 2014HP128 佐藤 愛里華 目的・方法 本研究は,Instagram の利用に関連したトラブルについて概要を紹介し,Twitter における 迷惑投稿内容と炎上経緯の特徴との比較を行う。またInstagram における複数の状況下での 迷惑行為に対しどの程度問題視しているか,その問題視の程度を規定する要因について賞 賛獲得・注目欲求及び公的自意識に着目し,検討を加える。 研究 1
【目的・方法】Instagram における迷惑行為の特性を把握する為,Instagram と Twitter の迷 惑投稿内容と炎上経緯について事例をもとに,特徴比較を行う。 【結果】各々の特徴の相違点としては,①行為内容と行為者が特定されているかいない か,②「繋がり」機能の差,③「悪さ自慢」,「ユーモアの履き違え」が多いのか,「見栄 え重視」,「リア充自慢」が多いのか,④行為者の男女比の内訳,⑤行為者が主に一人であ るか複数人であるかの5 点が挙げられ,共通点としては,①本当に投稿しても良い内容で あるかを深く考えず軽い気持ちで上げてしまうこと,②個人情報に繋がる投稿をそれと知 らずSNS に対して行ってしまう事の 2 点が考えられる。 研究 2 【仮説】賞賛獲得欲求・注目欲求と公的自意識とInstagram における迷惑行為投稿問題視の 程度に影響を与える。
【方法】Instagram 利用者 131 名を対象に,Google forms を通して回答を行なった。ⅰ)フェ イスシート,ⅱ)Instagram に関する項目,ⅲ)Instagram の投稿に関する項目,ⅳ)注目欲求に 関する項目,ⅴ)公的自己意識に関する項目,ⅵ)賞賛獲得欲求に関する項目で構成された。 【結果】クラスター分析の結果,迷惑行為内容は全部で9 群に分けられた。「賞賛獲得欲求」 は,「撮影3 群」に限り弱い負の影響を,「注目欲求」は,「撮影 1 群」,「撮影 3 群」,「非公 開1 群」,「公開2 群」,「公開3 群」それぞれに弱い負の影響を与えていることが示された。 「公的自意識」は,「撮影2 群」,「撮影 3 群」,「非公開 2 群」,「公開 2 群」,「公開 3 群」そ れぞれに弱い正の影響を与えていることが認められた。 総合考察 研究 1 では, Instagram と,主に Twitter に関するトラブルの事例を比較検討し,特徴の 違いや傾向が明らかとなった。研究2 では仮説は一部支持され,“みんなの人気者になりた い”,“注目の的になって褒められたい”という欲求が強いほど問題視程度は弱まり,他者か らの評価に敏感な人ほど問題視程度が高まる傾向があることが示唆された。
同じ対象を応援するファンへの嫌悪 ―「同担拒否」はなぜ起こるのか― 2015HP004 青木香保里 問題・目的 同じ対象を応援するファンに対する嫌悪はなぜ起こるのか。本研究では,ファンが同じ 対象を応援するファンに対して嫌悪感を抱く要因(「同担拒否」の要因)に「自身の応援動 機によるもの(対象への恋愛感情・独占欲)」と「他者の応援行動の介入によるもの(対象へ の貢献度・知識量の認識,ファンの迷惑行為,ファン同士の心的距離)」の二つの側面があ ると予測し,それぞれが嫌悪に与える影響を検討した。 また,対象が 1 人である場合と複 数人である場合とで上記のそれぞれの要因と同じ対象を応援するファンへの嫌悪の関連に 差がみられるかの検討も行った。 方法 ファンとして応援している対象がいる,15 歳から 65 歳の男女 150 名(男性 24 名,女性 126 名,平均年齢 22.61 歳,SD = 6.88)に対して,Google forms を用いたアンケート調査を 行った。アンケートは,(1)フェイスシート,(2)応援している対象に関する質問,(3)貢献度 (ファン歴,お金,時間)・知識量を尋ねる質問,(4)恋愛感情・独占欲を尋ねる質問 20 項目, (5)同じ対象を応援するファン全体への印象 15 項目・(6)親しいファンへの印象 13 項目・(7) マナーの悪いファンへの印象 13 項目・(8)にわかファンへの印象 13 項目で構成された。 結果・考察 分析の結果,対象への恋愛感情・独占欲は,対象が 1 人・複数人である場合ともに同じ 対象を応援するファンへの嫌悪につながることが示唆された。 また,貢献度・知識量の認識と同じ対象を応援するファンへの嫌悪の関連は,にわかフ ァンに対してより顕著にみられた。対象に費やすお金・時間に関しては,対象が 1 人であ る場合において,多く費やしていると認識しているほどにわかファンへの嫌悪感を生起さ せ,対象への知識量に関しては,対象が複数人である場合において,多く知識があると認 識しているほどにわかファンへの嫌悪感を生起させることが示唆された。 なお,ファン歴 と同じ対象を応援するファンへの嫌悪に関連はみられなかった。 マナーの悪いファンに対しては,対象が 1 人・複数人である場合ともに同じ対象を応援 するファン全体を想定した時よりも嫌悪感を強く生起させることが示唆された。 さらに,親しいファンに対しては,対象が 1 人・複数人である場合ともに同じ対象を応 援するファン全体を想定した時よりも嫌悪感が軽減されることが示唆された。 本研究の結果を踏まえ,同じ対象を応援するファンへの嫌悪は,ファンが何を自己の内 集団・外集団とみなすのかと関連が深いと考えられる。具体的に,親しいファンは自己の 内集団とみなすため嫌悪感を抱きにくいが,それ以外の同じ対象を応援するファンは外集 団で嫌悪感を抱くというような,ファン個人の基準のようなものが存在すると考えられる。
部活動における達成目標が活動への関心と内発的動機づけに及ぼす影響過程の検討 2015HP009 土居 智里 問題・目的 部活動では,過剰な上下関係がしばしば問題となる。また,人間関係に問題がなくても,情緒 的消耗感によって,部活動を続けることが苦痛に感じられることがある。 本研究では,他者とかかわりながら活動する部活動において,プレイヤー(選手)の部員が競 技への高い内発的動機づけと関心をもつために,周囲がどのように働きかけたらよいかを検討す ることを目的とした。本研究では,中谷(1996)のモデルを参考に,部活動入部時の達成目標が 内発的動機づけや競技への関心の上昇に影響を与える過程について,他者からの称賛・励ましや 被受容感に着目して検討した。 方法 体育会系の部活動に選手(プレイヤー)として所属している,または所属していた,18歳 から24歳の男女129名(男性38名,女性91名,平均年齢:20.45歳,SD = 1.46)を対象に,Google Formsで作成したアンケート調査を行った。質問内容は,(1)フェイスシート,(2)部活動の練習やミ ーティングに関する項目,(3)達成目標尺度,(4)他者からのフィードバックに関する尺度,(5)他者 からの被受容感に関する尺度,(6)部活動における内発的動機づけと競技への関心に関する尺度で 構成されていた。 結果・考察 分析の結果,入部時の競技熟達目標は,直接的に内発的動機づけや競技への関心の上昇と関連 がみられなかった。入部当初は「上達したい」という思いを強く持っていても,競技を続けるう ちに上達の行き詰まりなどを感じることで内発的動機づけや競技への関心が低下する者もいるた めに,直接の関連は認められなかったと考えられる。競技評価目標についても,「称賛・励まし」 のフィードバックや「他者からの被受容感」との関連は見られず,仮説は支持されなかった。競 技評価目標はきわめて内面的なものであり,他者からはその程度が分かりづらい。したがって, 競技評価目標の程度は必ずしも他者からの「称賛・励まし」や「被受容感」に関連しなかったと 考えられる。共分散構造分析の結果,社会的責任目標については,「他者からの被受容感」の影響 を受けながら,内発的動機づけや競技への関心の変化に正の影響を与えていることが明らかにな った(χ²(2) = 4.334 , p = .115 ; GFI = .978 ; AGFI = .965 ; CFI = .978 ; RMSEA = .095,AIC = 1816.081)。 部のルールを守り,他の部員に対して親切にすることで周囲との関係を円滑にする「社会的責任 目標」をもつ部員は,監督・コーチや他の部員から好かれ,受容されやすいのではないか。その 結果,他者から気にかけられるようになり,「称賛・励まし」のフィードバックを多くもらうよう になると考えられる。
座席行動を規定する要因の検討 -授業意識,公的自己意識,欲求,成績との関連から- 2015HP019 服部加奈 問題と目的 本研究は,座席行動を規定する要因および座席行動と成績との関連性を検討することを 目的とした。これらを検討するにあたって,小教室(30~40 名)と大教室(100 名以上)の 2 場 面を設け,それぞれの教室で違いがみられるのかについても検討した。 方法 大学 1 年生から大学 6 年生までの男女 196 名(男性 49 名,女性 146 名,その他 1 名)が, Google Form で作成した個別回答式の質問紙調査に回答した。質問紙は,(1)フェイスシー ト,(2)座席行動調査,(3)授業を受ける際の教師・他学生からの評価に対する意識に関する 項目,(4)授業に対する意識に関する項目,(5)座りたい座席位置と座りたくない座席位置に 関する項目,(6)公的自己意識に関する項目で構成されていた。 結果と考察 質問紙を回答した大学生 196 名のうち,小教室の授業について回答したのは 95 名,大教 室の授業について回答したのは 101 名であった。本研究では,x(左右),y(前後),x+y(前列 中心からの距離)の 3 つを,座席行動を表す値として分析に用いた。成績は,最も良い成績 を 5,最も悪い成績を 1 と指標化し,分析を行った。 小教室における分析の結果,否定的な意識と公的自己意識は座席行動(前後・前列中心か らの距離)と正の関連,肯定的な意識と成績は座席行動(前後・前列中心からの距離)と負の 関連,教師からの賞賛されたい欲求は座席行動(左右・前後・前列中心からの距離)と負の 関連,他学生からの拒否されたくない欲求は座席行動(前後)と正の関連があった。 大教室における分析の結果,否定的な意識と座席行動(前後・前列中心からの距離)は正 の関連,肯定的な意識と教師および他学生からの賞賛されたい欲求は座席行動(左右・前 後・前列中心からの距離)と負の関連,成績は座席行動(前後・前列中心からの距離)と負の 関連があった。 これらの結果から,座席行動を規定する要因が,小教室と大教室で異なることが示唆さ れた。この違いは,授業を受講している際の周りの環境や状況が大きく関わっているので はないかと推測された。また,座席行動を左右,前後,前列中心からの距離から検討した ところ,学生は,大教室において座席位置の左右をより認識していると考えられた。
ストレス要因へのコーピング方略が主観的ウェルビーイングに及ぼす影響 2015HP025 細川優衣 問題と目的 本研究では, ストレス要因ごとに適切なコーピングをとることで, ストレス反応を低め, 主観 的ウェルビーイングを高めるという一連の影響過程を明らかにすることを目的とした(Figure1)。 また, 現代社会で精神的健康が注目されている背景から, 精神的健康につながるストレス対処 能力向上の実現を目指した。そのために, ストレス場面ごとの適切なコーピングの組み合わせも 併せて検討した。扱うストレス場面は対人場面と課題場面で, 扱うコーピングは回避型コーピン グと接近型コーピングであった。対人場面においては回避型コーピング傾向, 課題場面において は接近型コーピング傾向が高い方がストレス反応が低く, 主観的ウェルビーイングも高いと予測 した。 方法 18 歳から 30 歳の男女 221 名(男性 50 名,女性 171 名,平均年齢:21.4 歳,SD =2.23 )を対象 に, Google Form で作成した質問紙調査で行った。質問紙は, ⑴フェイスシート, ⑵コーピング方 略尺度, ⑶ストレス反応尺度, ⑷主観的ウェルビーイング尺度から構成されていた。 結果と考察 対人場面における回避型コーピング傾向とストレス反応との関連を検討した結果, 回避型オー ピング傾向はストレス反応に負の影響を与えていることが明らかになった。また, 課題場面にお ける接近型コーピング傾向とストレス反応との関連性を検討した結果, 接近型コーピング傾向の 高群は低群よりもストレス反応が小さいことが明らかになった。また, ストレス反応と主観的ウ ェルビーイングとの間には有意な負の相関が見られた。Figure1 の因果モデルは対人場面の回避型 コーピングのみで支持された。適切なコーピングの組み合わせを検討した結果, ストレス反応が 最も低かった組み合わせは「対人 A 場面での回避型コーピング低群×課題場面での接近型コーピ ング高群」であった。さらに, 主観的ウェルビーイング得点が最も高かった組み合わせは「対人 A 場面での回避型コーピング高群×課題場面での接近型コーピング高群」であった。これは, 対 人 A 場面では回避型コーピングはストレス反応の低さにつながらないが, 主観的ウェルビーイン グの高さと関連するとつながるという興味深い結果が明らかとなったことから, 対人場面での回 避型コーピングの有効性が示唆された。 以上から, 対人場面での回避型コーピングの対人場面でストレスを感じた際には, 回避的なコ ーピングをとるという姿勢がストレス反応の緩和に繋がると示唆された。さらに, 主観的ウェル ビーイングも高めることが分かり, 対人場面における回避型コーピングの有効性を主張すること が出来ると考えられる。また, コーピングをその場で使い分ける柔軟性も精神的健康に必要であ ることも示唆された。 Figure1. コーピング方略がストレス反応の程度, 主観的ウェルビーイングに影響を与える因果モデル
Twitter 上でのファン行動 ―自己愛傾向と仮想的有能感に着目して― 2015HP044 加藤千捺 問題・目的 本研究の目的は,ファン態度と普段のファン行動,および Twitter 上でのファン行動につい て,自己愛傾向との関連を検討すること,さらに,ファン態度と Twitter 上での攻撃的・排他 的行動における,仮想的有能感の関連について検討を行うことであった。本研究では,ファ ンの交流の場として効果的に機能している Twitter 上でのファン行動を取り上げ,その構造を 把握するとともに,自己愛傾向とファン態度との関連について,媒介関係を仮定し,その影 響過程を検証した。 方法 2018 年 11 月上旬に,Googleforms で作成した質問紙を実施した。①特定のファン対象をも つ人,②Twitter を利用している人,を対象とした。15 歳から 29 歳の 157 名(男性 16 名,女 性139 名,無回答 2 名,平均年齢 20.68 歳,SD = 2.35)を有効回答とした。質問紙は,(1) フェイスシート,(2)ファン対象に関する項目(名前,性別,職業,ファン歴,知名度),(3) ファン行動に関する項目,(4)ファン態度に関する項目,(5)Twitter 上でのファン行動に関 する項目,(6)自己愛傾向尺度,(7)仮想的有能感尺度,で構成された。 結果・考察 相関分析の結果,自己愛傾向とファン態度に関連が見られなかったため,媒介関係は確認 できなかった。自己愛傾向とファン行動およびTwitter 上のファン行動との関連について検討 した結果,自己愛傾向はファン行動には影響を与えていなかったが,Twitter 上のファン行動 には影響を与えていた。これは,他者の評価に敏感であるという自己愛傾向の特徴が,他の ファンを意識する状況であるTwitter 上で表れたためであると考えられる。また,ファン態度 と,ファン行動および Twitter 上でのファン行動との関連について検討した結果,熱狂的な態 度が,ファン行動および Twitter 上でのファン行動を決定づけていることが明らかとなった。 Twitter 上での攻撃的・排他的行動には,熱狂的な態度と仮想的有能感は独立して影響を与 えている可能性が示唆された。他者軽視を伴う仮想的有能感では,“他人を寄せ付けたくな い”,“自分と他のファンを一緒にしてほしくない”,といった拒絶的な思考が強い場合に,調 整効果が見られる可能性があるだろう。また,仮説探索分析の結果,Twitter 上での攻撃傾向 は,普段の積極的なファン行動によって説明されることが明らかとなった。
日本人が苗字に抱くアイデンティティ −潜在的自尊心と自己受容との関連性− 2015HP055 小池香音 問題と目的 本研究は苗字に対する愛着や帰属感を測定する苗字アイデンティティ尺度(苗字 ID)を 使用し,苗字 ID と潜在的自尊心と自己受容,さらに名前アイデンティティ(名前 ID)と の関連を検討することを目的とした。研究 1 では苗字 ID が高い人ほど潜在的自尊心が高 いと推測した。研究2 では苗字 ID と名前 ID がそれぞれ場面別の自己受容に関連があると 推測した。また,苗字ID と名前 ID は互いに影響し合うが,苗字 ID は苗字のめずらしさ に影響され,名前ID は名前のめずらしさに影響を受けないと考えた。さらに,苗字 ID の 高い人ほど選択的夫婦別姓制度への態度が肯定的であると予測した。 方法 研究 1 18 歳から 59 歳の 142 名(男性 24 名,女性 118 名,平均年齢 23 歳,SD = 6.93) を対象に2017 年 12 月 7 日から 12 月 23 日にかけて Google Forms を用いて個別回答式の 質問調査を行った。質問紙は3 つの尺度(ひらがな一覧版ネームレターテスト(HTNLT), 苗字 ID,名前 ID)および独自に作成した改姓歴の有無などの質問 5 項目で構成された。 研究 2 237 名(男性 64 名,女性 161 名,不明 12 名)を対象に 2018 年 9 月 30 日から 10 月 4 日にかけて Google Forms を用いて個別回答式の質問調査を行った。質問紙は 4 つの 尺度(苗字 ID,名前 ID,場面別の自己受容尺度,選択的夫婦別姓制度への態度尺度)お よび独自に作成した苗字のめずらしさなどの質問7 項目で構成された。 結果と考察 分析の結果,研究 1 では苗字 ID と HTNLT で測定した潜在的自尊心に直接的な相関関 係は認められなかった。研究 2 では苗字 ID と苗字で呼ばれる場面での自己受容に関連が 認められ,名前 ID と名前で呼ばれる場面での自己受容に関連があることが明らかとなっ た。また,苗字 ID と名前 ID が有意な正の相関関係にあり,苗字 ID は苗字のめずらしさ に影響を受けるが名前 ID は名前のめずらしさに影響を受けないことが明らかとなった。 苗字 ID と選択的夫婦別姓制度への態度には有意な関連は認められなかった。 本研究では苗字ID が自己への感情及び名前 ID とどのように関連するかを調査すること を目的とした。研究 1,2 の結果より,苗字 ID と名前 ID は互いに影響しあっており,そ れぞれが場面別の自己受容と関連を持つことが明らかとなった。
状況や関係による自称詞の使い分け ―文化的自己観および規範意識に着目して― 2015HP065 圓尾まどか 問題・目的 本研究は,文化的自己観および周囲からの自称詞使用への関心度に着目し,日本特有の自称 詞の使い分けに及ぼす影響について検討することを目的とした。これまで,日本語の自称詞使 用に関しては,自己の発達や対人関係の文脈で研究が行われてきた。本研究の特徴として,自 称詞使用に対する周囲からの指摘経験などの環境的要因によって使用する自称詞が異なる可能 性を考え,周囲からの自称詞使用への関心度に注目した点が挙げられる。さらに,先行研究で はほとんど扱われていない,他者の自称詞使用に対する意識についても新たに検討を加えた。 具体的には,改まった場面での他者のくだけた自称詞使用に対する寛容さが異なると予測し, 文化的自己観および周囲からの自称詞使用への関心度が他者の自称詞使用に対する意識に及ぼ す影響を検討した。 方法 18 歳から 25 歳の男女 209 名(男性 57 名,女性 152 名,平均年齢 21.07 歳,SD = 1.39)を対 象に,Google Form で作成した個別回答式の質問紙調査を実施した。質問紙は,(1)フェイスシ ート,(2)自称詞の使用状況,(3)他者の自称詞使用に対する意識,(4)周囲からの自称詞使 用への関心度,(5)相互独立的―相互協調的自己観尺度(高田・大本・清家(1996))で構成さ れていた。 結果・考察 文化的自己観および周囲からの自称詞使用への関心度に着目し,自称詞使用傾向および他者 の自称詞使用に対する意識に及ぼす影響を検討した。男性において,文化的自己観による自称 詞使用傾向への影響が認められ,誰に対しても「ぼく」を多用する人は,同輩以下に「おれ」 を使用する人に比べて,相互独立性が低く相互協調性が高いことが示された。周囲からの自称 詞使用への関心度による自称詞使用傾向への影響は,男女ともに認められなかった。さらに, 他者の自称詞使用に対する意識についても検討したところ,自称詞使用傾向の違いによる有意 な影響は認められなかった。しかしながら,他者のくだけた自称詞使用に対する否定的感情と 相互協調性,周囲の TPO への敏感さとの間には,それぞれ正の相関関係があることが新たに 明らかとなった。したがって,自身が誰に対してどのような自称詞を使うかに関わらず,周囲 からの評価やその場にふさわしいか否かをどの程度重視するかによって,他者の自称詞使用に 対する意識が異なるのではないかと考察された。
過去のライフイベントの提示が喚起させるノスタルジア ―ポカリスエットのCMを用いて― 2015HP100 奥田春花 問題と目的 ノスタルジアを喚起させる商品や広告は,過去のある時代を感じさせるかつての商品や メッセージをそのまま使うものと,過去のある時代を感じさせる新商品や新しいメッセー ジに分けられている。本研究の目的は,分類の3つ目として過去のライフイベントが挙げ られるか,つまり,過去のライフイベントを表現する広告が視聴者のノスタルジアを喚起 させるかを,CM視聴を組み込んだ調査を通して検討することであった。また,ノスタル ジアの程度に影響を与えうる要因についても検討を加えた。 方法 Google Formを用いて質問紙調査を行った。刺激動画を最後まで見たと答えた151名(男 性:58名,女性:93名,平均年齢23.28歳,SD = 6.22)のデータを用いた。 質問紙は,(1)フェイスシート,(2)刺激動画(『ポカリスエット「踊る始業式」篇60 秒』),(3)ノスタルジア尺度,(4)共感度尺度,(5)CMに対して,(6)受け取ったメッセー ジ,(7)ライフステージ,(8)類似性という構成であった。 結果と考察 分析の結果,CMの視聴で喚起されたのは全体としては活動的なポジティブ感情のみで あり,ノスタルジアを喚起させる商品や広告の分類の3つ目として,過去のライフイベン トが挙げられるとは言えない結果となった。しかし,類似経験が共感を媒介してノスタル ジアに影響を与えることや,高校特有のメッセージを強く受け取る人ほどノスタルジアの ポジティブ感情を抱くこと,ノスタルジアのポジティブ感情を強く抱く人ほどCMや商品 に対する好意度が高いことが明らかになった。 本研究では,過去の出来事の想起に伴うポジティブ感情を指す懐かしさではなく,ポジ ティブ感情とネガティブ感情を含むノスタルジアに着目してきた。しかし,センチメンタ ル感情との有意な関係が見られたのは共感のみで,メッセージの捉え方や好意度といった CM や商品の認知に関わる変数との関連は見られなかった。これらのことから,商品購買 を促すためには,ノスタルジアよりも懐かしさに注目して CM を作成することが効果的 であると言えるだろう。
被凝視体験の認知が自己評価へ与える影響の検討
2015HP109 佐々木千賀
問題・目的 本研究は,日常生活における被凝視体験(面識のない他者からの一方的な視線)が,視 線を向けられたという認知を通し,受け手の自己評価へ与える影響を検討することを目的 とする。対人場面における視線に関する研究はいくつか存在するが,会話場面や面接場面 でのアイコンタクト量が被験者に与える影響などを調査した実験的研究が多く,先行研究 で扱われていない一方的な視線に着目したという点が新しい。また,本研究においては被 凝視体験の認知を媒介変数とし,内向性や対人恐怖症など,個人がもとから有する人格や パーソナリティの影響を排除している点に社会的意義がある。先行研究では触れられてい ない被凝視体験の認知を媒介変数として取り上げ,被凝視体験と自己評価との関連につい て検討していく。 方法 2018 年 11 月に,GoogleForms を用いた調査フォームを作成した。調査対象者は 69 名 (男性 14 名,女性 55 名),平均年齢歳 20.3(SD =1.1)であった。構成は(1)フェイスシー ト,(2)被凝視体験に関する項目,(3)自己嫌悪感情尺度,(4)対人関係尺度,(5)対人恐怖心 性尺度であった。 結果と考察 被凝視体験と個人の自己評価の関係を見るために相関分析を行った結果,被凝視体験個 人の自己評価との間に弱い正の相関が認められた(自己嫌悪感から順にr=.317,.317,.312 p<.001)。被凝視体験を強く認知することと,自己評価が関連していることが示唆された といえるだろう。みられている,という意識が強まるほど,みられるという行為の要因が 行為者ではなく自分自身にあると捉え,自分自身に不安感を抱き,自信を失うのではない だろうか。またそのような経験,およびその認知が強い人ほど,初対面の人やグループの なかでなど,対人関係においてもネガティブに考え,自分が嫌な感じを与えているのでは ないかと不安な気持ちになりやすいと考えられる。グループでの課題達成において起こる先延ばし行動の検討: 個人課題での先延ばしとの比較から 2015HP110 佐藤綾美 問題と目的 本研究は,タスクの達成への取り組みを遅らせる「先延ばし行動」に焦点を当てる。政 府によって働き方改革が推し進められ,効率的な方法でタスクをこなすことが求められ る 中,必ず起こり得る先延ばし行動への対応も求められていよう。本研究では,先延ばし行 動を理解し,仕事の効率化に繋がる対策を提案することを社会的意義とした。自身の責任 で課題の達成を目指す個人課題達成場面に加え,グループの一員としてメンバーと協力し て課題の達成を目指す集団課題達成場面を設定し,2 場面における先延ばし行動の差を明 らかにすることを第一の目的とし,2 場面の先延ばし行動と自尊感情の関連を検討するこ とを第二の目的とした。 方法 18 歳から 26 歳の男女 260 名(男性 78 名,女性 180 名,不明 2 名,平均年齢:20.88 歳, SD = 1.44)を対象に,Google Form で作成した個別回答式の質問調査を実施した。調査は, (1)先延ばし行動尺度,(2)課題の重要度に関する項目,(3)自尊感情尺度の程度を問う 項目で構成されていた。 結果と考察 分析の結果,個人課題達成場面よりも集団課題達成場面の方が,先延ばし行動が抑制さ れていることが認められた。このことより,メンバーと共に課題の達成を目指すことによ って期限が共有され,取り組みへ積極性が増すことが示唆された。また,自尊感情との関 連を確認すると,個人課題達成場面における先延ばし行動は積極的自尊感情,消極的自尊 感情と,集団課題達成場面における先延ばし行動は消極的自尊感情との有意な相関が認め られた。自分に対する評価が,先延ばし行動に大きく影響している可能性が考えられる。 全体のプロセスモデルの結果より,各場面の先延ばし行動には異なる要因が影響している ことが確認された。同程度の負担の課題に対し,達成する環境が異なれば,取り組むまで のプロセスに違いがあると明らかになったことは,大きな発見だろう。 今日では先延ばし行動は,課題の達成とは切り離せない一般的な行為であると認識され ている。しかし,グループを組んでメンバー同士で小さな目標や期限を立てて共有し,一 つひとつの課題を丁寧に達成することで,仕事の効率化を図ることが出来ると考える。
異性の言動に対する印象の検討 -ユーモアとハラスメントの弁別要因に着目して- 2015HP145 渡邊成美 問題・目的 本研究では,ユーモア感知に着目し,ユーモア受信者がユーモアかハラスメントか,ど ちらとして解釈するのかという視点から,異性の言動に対する印象を検討する。 具体的に は,ユーモアとハラスメントを弁別する要因として,受信者自身のユーモアに対する態度 と,相手との関係性,性別に着目し,検討を加えた。 方法 18 歳から 35 歳の大学生男女 193 名(男性 51 名,女性 141 名,平均年齢:20.76 歳,SD = 1.702 )を対象に,Google Forms で作成した,個別回答式のアンケート調査を実施した。 調査は,(1)フェイスシート,(2)ユーモアに対する態度尺度,(3)ユーモア測定尺度, (4)独自に作成したシナリオを用いた,異性の発言に対する印象,(5)シナリオ中発言へ の認識,を尋ねる項目で構成された。シナリオは親密度の高低,外見・内面の指摘場面を 設定し,計 4 場面において,それぞれ質問への回答を求めた。 結果・考察 分析の結果,仮説は支持されず,ユーモアとハラスメントを弁別する要因と特定するこ とはできなかった。ユーモアに関する態度と異性の言動に対する印象評定得点との間に相 関は認められなかった。また親密度に関して「ユーモアがあると感じる」項目においては, 内面・外見を指摘されたシナリオの両者において,疎遠な異性に言われた場合にユーモア と感じていなかった。「ハラスメント(パワハラ・セクハラなど)だと思う」という項目に おいては,内面・外見を指摘されたシナリオの両者において,親密な異性に言われた場面 のほうが,有意に得点が低く,ハラスメントだと感じていなかったといえる。以上におい てどれも平均値が低かったが,関係性の発展に伴い,親密度が高まることによ って,ユー モアは発信者の意図の通りにユーモアとして解釈される可能性が示唆された。 最後に回答者の性別に関して,男性は外見を指摘された場面ではユーモアがあると感じ, 疎遠な異性に内面を指摘された場面ではハラスメントだと感じていなかったことから,女 性よりも男性の方がユーモアとしての解釈を行いやすいと考えられる。本研究で作成した シナリオには「冷たい」というネガティブさを持つ言葉を入れていたり,男性が普段言わ れる機会が乏しい言葉を含まれていた。現実の現象を抽出するために,男女共に日常会話 に基づいた場面を設定することが今後の課題として挙げられる。
インターネットを通した購買における衝動買い傾向 ―商品カテゴリーとシステムに着目したウェブサイトの分類を通して― 2015HP148 山口奈留美 問題・目的 本研究では,商品カテゴリーと衝動買いを促すサイト上のシステム (レコメンドシステムや在庫表 示機能など) に着目して,インターネットを通して商品を販売するウェブサイトを分類することを第 一の目的とし,分類されたウェブサイト群によって利用者の衝動買い傾向に違いが現われるかを第二 の目的とする。 【研究Ⅰ】方法・結果 経済産業省の平成 29 年度電子商取引に関する市場調査で取り上げられている商品カテゴリーを参 考に19 ウェブサイトを選定し,商品カテゴリーとシステムを合わせた 121 の変数を用いて,データ ファイルを作成した。 クラスター分析を行っ た結果,4 つに分類された (Table 1)。 【研究Ⅱ】方法 研究Ⅰで得られた結果をもとにGoogle forms を作成しアンケート調査を行った。男女 209 名 (男性 72 名,女性 136 名,その他 1 名,平均年齢 : 23.34 歳,SD = 7.51) から回答を得られた。(1) 各ウェ ブサイト群に対して,衝動買い傾向と後悔の程度の 2 項目,(2) 普段の購買行動における衝動買い傾 向を尋ねる,Rook & Fisher (1995) による Buying Impulsiveness Scale を邦訳 (原田・吉澤・吉田 (2010) の引用による) した 8 項目を用いた。 【研究Ⅱ】結果・考察 衝動的購買行動尺度の因子構造を確認するため,最尤法プロマックス回転による確認的因子分析を 行った結果,8 項目すべてで 1 因子構造 (α=.74) であった。項目の合計得点の平均値を衝動的購買行 動得点とし,クラスターごとに衝動買い傾向得点との相関係数を算出したところ,クラスターA,ク ラスターB,クラスターD で 0.1%水準で中程度の相関が見られた。クラスターC については,衝動買 い傾向得点の記述統計量より,衝動買い傾向が低いと判断したため,その後の分析から除いた。衝動 買い傾向得点と後悔の程度との相関係数を算出したところ,クラスターA で 1%水準で弱い相関,ク ラスターB で 0.1%水準で中程度の相関,クラスターD で 1%水準で中程度の相関が認められた。そこ で,クラスターの3 群を独立変数,衝動買い傾向と購入後の後悔の程度を従属変数とし,それぞれ一 要因分散分析を行った。その結果,衝動買い傾向得点ではクラスターの主効果が 5%水準で有意であ り,多重比較を行ったところ,クラスターB がクラスターA とクラスターD よりも 5%水準で有意に 衝動買い傾向の得点が高かった。また,後悔の程度では,クラスターの主効果が 1%水準で有意であ り,多重比較を行ったところ,クラスターB がクラスターD よりも 5%水準で有意に衝動買い傾向の 得点が高かった。普段衝動買いをしやすい人はインターネットでも衝動買いをしやすいが,価格ドッ トコムでは衝動買い傾向が低いことが明らかになった。 オンラインショップ(医薬品・日用品) Qoo10(旧Gmarket) イトーヨーカドーネットスーパー オンラインショップ(家具) オムニ7 イオンネットスーパー Yahoo!ショッピング ヤマダウェブコム オンラインショップ(CD) Wowma! コジマネット オンラインショップ(ファッション) Amazon dinos 価格ドットコム 音楽配信サイト 楽天市場 ZOZOTOWN 動画配信サイト Table 1 クラスター分析結果 クラスターA クラスターB クラスターC クラスターD
現代青年における「親友」の条件 ―経験の共有と共感の観点から― 2015HP151 近藤菜月 問題・目的 本研究の目的は,現代青年における親友とは,共感と経験の共有により成り立つかとい う仮説を検討することであった。具体的には,これまで知り合いではなかった他者に対し て,共感し,経験を共有した場合,そうでない場合よりも親友と見なされると考えた。加 えて,個人特性として共感が高い場合において,他者のことを友人だと考えやすいと仮定 し,検討した。 方法 2018 年 11 月に,大学生を対象として 127 名(男性 30 名,女性 97 名,平均年齢 20.35 歳 SD = 1.31)に WEB アンケート調査を実施した。アンケートは (1)フェイスシート (2)シナ リオ(友人 A への好感度,共感や経験の共有,友人・親友の程度を計 10 項目) (3)友人の 人数 (4)友人構成要素(5 項目) (5)親友の人数 (6)親友構成要素 (7)共感性尺度改訂版 (EESR)(9 項目)で構成された。フェイスシートで尋ねた電話番号の下 1 桁の数字を用 い,異なる条件のシナリオを呈示した。具体的には,友人 A と共感することが多くあった と設定した「共感群」,友人 A と経験を共にしたと設定した「経験群」,の場合は双方を含 む「共感・経験群」を呈示した後に,友人 A に関する印象を尋ねた。 結果と考察 親友は,共感と経験の共有により成り立つとした仮説 1 は支持されなかった。現代青年 が他者のことを友人,親友と認めるように至るまで,共感と経験の共有は友人に至るまで には効果があっても,親友に至るまでには,それだけでは不十分である可能性が示唆され た。また,仮説 2 である「共感は友人・親友の数に影響を与える」は,一部支持された。 「友人の数」と「共有不全経験」因子との間に正の相関( r = .32 , p < .05 )が,「親友の 数」と「共有経験」因子との間に正の相関( r = .49, p < .05 )が認められた。自分が友 人だと感じている場合,相手も自分のことを友人だと感じているが,相手を自分が親友だ と感じていなくても,相手は自分のことを親友だと感じているのではないかと感じている 人が多い結果から,現代青年が他者との関係に慎重になっていることが示唆された。