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ジャズにおける市民性について ―

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Academic year: 2021

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神奈川大学大学院経営学研究科『研究年報』第16号 2012年3月  141

 本研究の目的は、ジャズにおける市民性を見 出し、言説によって証明することにある。筆者 は、ジャズという音楽と市民という概念には、多 くの共通項があるものだと考えている。本論では、

ジャズを市民論の観点から考察するため、まず市 民論の考察から始める。人間が市民であるとすれ ば、そこには市民としての存在意義と果たすべき 役割が必ずあるはずである。その考察から、本論 では第1に市民としての当為を明らかにする。そ の市民論の考察を踏まえた上で、ジャズの市民性 についての考察へと展開する。そこから、ジャズ は市民性をもった音楽といえるのかという、本論 の主題について明らかにする。

 民主主義国家は市民という存在を前提として作 られており、同時に民主主義国家それ自体が人間 を市民とするためのシステムでもある。両者は 切っても切れない関係である。しかし、現代の日 本政治は「市民不在の政治」や「おまかせ民主主義」

という言葉で形容され、揶揄されている。それが 今日の日本の市民社会であり、日本政治が恒常的

ジャズにおける市民性について

共通する歴史性・精神性・機能性

The Jazz and Citizens

-Common philosophy of history, spirituality and functionality-

神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程

佐 野 恭 平

SANO, Kyohei

■キーワード

市民、自覚的市民、ジャズ、近代化

に指摘される課題である。そこには市民意識の希 薄化と、市民性の機能不全が内在している。それ を目の当たりにして、私は改めて市民について考 察せねばならないという必要性を感じるに至った。

 加えて、ジャズと市民の関係性について考察し てゆく。ジャズはアメリカにて黒人音楽として発 展し、民主主義国家を世界でいち早く具現化した アメリカを発祥とすることから、しばしば「民主 主義的な音楽」と形容されることも多い。そのよ うな民主主義的な性格を持つジャズであるからこ そ、民主主義の基礎を築く市民論からのアプロー チも可能であると考えている。なによりも民主主 義と市民は不可分な概念であり、それは本論の主 張であるジャズにおける市民性と多く重なる。ま た、ジャズは近代化した音楽である。ジャズはそ の歴史において「モダン・ジャズ」と自明的に「近 代」と名乗ることとなった。モダン・ジャズのそ の音楽的特徴は、演奏者個々人の自由な即興演奏 を可能とすることにあり、個人の表現の自由を前 面に押し出す音楽となったことにある。モダン・

■ 修士論文要旨

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142  神奈川大学大学院経営学研究科『研究年報』第16号 2012年3月

ジャズの音楽的特性は、市民特有の市民理念や市 民理性と共通の精神を有するものである。そのモ ダン・ジャズと市民論の構造には共通点があり、

多くの部分でオーバーラップするものと考えられ る。それを私は「ジャズの近代化」と呼ぶことと する。

 以上をもって、本論文は全4章で構成されてお り、各章の概要をまとめると以下のとおりとなる。

 第1章では、本論の概要と研究の動機、研究の 目的、研究の過程について述べる。

 第2章では、市民は普遍的な主権者としての身 分であることを前提とし、市民に与えられる市民 権の議論を提示する。市民権の議論は歴史的に見 ると、伝統的に2つの主義によって繰り広げられ ている。第1は、権利に主眼を置く「自由主義的 市民権」、第2は、義務に主眼を置く「市民共和 主義的市民権」であり、この2つの市民権の性質 について、その違いを把握する。その議論をもと に、市民権の獲得の歴史―つまり普遍的市民への 変遷の過程―について、その社会構造の変化の視 点から身分・階級・階層の3段階に分類した考察 と同時に、市民権の実質的行使可能性について考 察する。そこから、現代の当為としての市民像で ある「自覚的市民」という概念を提示し、2章を 結ぶ。

 第3章では、第2章で考察した市民論からジャ ズにアプローチをかけた考察へと展開する。ジャ ズの近代化について、まず音楽面での変化を「ジャ ズのモダニズム運動」という芸術運動の観点から の議論を提示し、本論で扱うジャズである「モダ ン・ジャズ」と「プレ・モダン・ジャズ」の概要 を示す。そこからジャズの近代化について、① 歴史性、②精神性、③機能性、の3つに分類する。

この3つの分類は、近代市民社会の成立過程とそ の後の市民論と重なるものと考えられる。①歴史 性については、ジャズの近代化という歴史的な変 革について、近代化される前のプレ・モダン・ジャ ズとの比較とその人間関係の変遷過程から考察す る。②精神性については、モダン・ジャズの演奏 スタイルについて、市民精神との共通点を探る。

③機能性については、モダン・ジャズにおけるプ レイヤー同士の共和的感覚が共同体にもたらす機 能について考察する。それら各々の市民的性質を 分析し、ジャズと市民性の整合性について考察す る。

 4章では、本論の結論を示す。また、筆者の個 人的な経験をもとにジャズにおける市民性につい て若干ながら提示し、本稿を締めくくる。

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