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説 唱 と小 説 の 問 一 鼓 詞 と 『海 遊 記 』 一

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〈研 究 ノ ー ト〉

説 唱 と小 説 の 問

一 鼓 詞 と 『海 遊 記 』 一

廣 田 律 子

中国 漸江 省 の麗 水 を中心 に伝 承 され てい る鼓 詞 は 陳夫 人 へ の願 か け や願 も ど しの場 で 説 唱 され,陳 夫 人(陳 靖姑 ・陳 十 四)と い う女神 へ の信 仰 を背 景 に出来 上 が っ た芸 能 で あ る。

そ の 内 容 は 陳夫 人 の 冒 険 諺 で あ るが,そ れ まで に人 々 に親 し まれ て きた 種 々 な語 り物 の エ ッセ ンスが ふ ん だ ん に盛 り込 まれ て い る 。す ぐに気 づ くの は 『西 遊 記 』 「封 神 演 義 』 『香 山宝 巻 』 等 との類 似 点 で あ る 。類 似 点 を挙 げ る と,一 つ には,主 人公 や そ の敵 が 修 行 を積 み,法 術 を得,捕 り物 の宝 具 を得 る とい う こ とで あ る 。二 つ にr動 物 の精,植 物 の 精,虫 の精 ・・器物 の 精 ・菩 薩 等 の所 有 物 等 が 変 じて妖 怪 とな り,人 を騙 した り害 した りす る が,結 局 妖 怪 は 主 人公 に退 治 され る とい うこ とで あ る。三 つ に,主 人公 が 地獄 巡 りを し, 死 者 を生 き返 らせ る とい う こ とで あ る。四 つ に,主 人 公 は観 音 との縁 を持 ち, 度 々助 け られ る とい う こ とで あ る。 五 つ に,戦 い に際 して,登 場 人 物 が種 々 に変 身す る とい うこ とで あ る 。六 つ に,敵 が 子 供 の供 犠 を要 求 す る とい う こ とで あ る。 七 つ に,仏 が 登 場 人 物 の所 業 に応 じて期 限 をつ けて 罰 を与 え る と い う こ とで あ る。八 つ に,登 場 人 物 が 最後 に は神 や 仏 に封 神 され る とい う こ とで あ る。 九 つ に,神 や仏 が 夢 枕 に立 つ こ とで 意 志 を伝 え る とい うこ とで あ る。 以 上 の類 似 点 か ら,鼓 詞 が 人 々 の 嗜好 を敏 感 に取 り入 れ て成 立 してい る こ とが 分 か る。 今 回 この 鼓 詞 と鼓 詞 を文 学 化 した 『海遊 記 』 との 内容 の比 較

説唱と小説の間一鼓詞と 『海遊記』一一99

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を行 う こ とで,口 承 文 芸 と読 み 物 の異 同 を明 らか にす る こ と を本 論 の 目的 と した い。

まず1991年 に調 査 を行 っ た際 鼓詞 の 演 者 の黄 景 農 氏 が 唱 い,麗 水 文 化 庁 の唐 宗 竜 氏 が 記 録 整 理 した 『陳 十 四 夫 人 伝 』(陳 靖 姑 地 方 神 研 究 会 資 料 之 二

『夫 人 詞 』 日本 民 俗 研 究 会 ・上 海 民 俗 学 会 等 合 編1995年 所 収)を テ キ ス トと してa鼓 詞 の あ らす じを簡 単 に ま とめ て 以 下 に紹 介 す る 。

まず 『陳 十 四夫 人 伝 』 第 一 冊 を以 下 に ま とめ る。 なお()内 の頁 は テ キ ス トの 頁 で あ る。

第 一段 陳 十 四 の誕 生(pp.33‑41)

① 観 音 の二 本 の抜 髪 蛇公 蛇 婆 の 由来

② 観 音 の指 の血 陳 十 四 は正 月14日 に生 まれ た

観 音 を信 奉 す る母 葛 氏 は観 音 の 指 の血(赤 い雨 に な った)を 飲 んで 陳 十 四 を生 む 。父 陳 上 元 は法 師。

③ 陳 十 四 は林 聞善 の い い なず け にな る。

第二 段 陳 上元 の誕 生 祝 い(pp.42‑50)

① 陳 十 四 は八 歳 か ら十 二 歳 まで刺 繍 を勉 強 す る。

② 十 二 歳 か ら観 音 を信 奉 す る。

③ 陳 上 元 の 誕 生 日 に,兄 嫁 の 林 氏 が い ざ こ ざ を起 こ した の で,陳 上元 は怒 っ て,陳 十 四 の祀 って い る観 音 の 像 を壊 す 。陳十 四 が 父 を罵 っ た た め に, 玉 皇 は陳 十 四 の寿 命 を三 年 減 らす 。

④ 陳十 四 は改 め て観 音 の像 を作 って も ら う。

第 三 段 法 通 は 南 蛇 を退 治 す る(pp.50‑58)

① 観 音 は盧 山 の 師 に蛇 妖 退 治 の役 目 を言 い つ け る。

② 盧 山 の 師 は蛇妖 退 治 の役 目 を陳上 元 に夢 で 知 らせ る 。

③ 長 兄 法通 は父 か ら方 術 を学 ん で,次 兄 法 清 と一緒 に父 の代 わ りに蛇 妖 退 治 の た め に南 広 廟 に行 く。

④ 法 通 は蛇妖 の 生 け賛 に され た金,祝 の少 年 少 女 を助 け る。

100国 際 経 営 論 集No.272004

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⑤ 法 通 は方術 を施 して,蛇 妖 を捉 え る準 備 を整 え る。

第 四段 金 姓 と祝 姓 の謝 恩の祝 宴(PP.58‑66)

① 法 通 は南 広 廟 で蛇 公 蛇 婆 を捉 え る。

② 蛇妖 は法 通 が 金,祝 の 家 に招 か れ た機 会 に乗 じて,見 張 り役 の法 清 か ら 清 水 を も らっ て飲 み,逃 げ る。

③ 法 通 は方術 を施 して蛇 妖 と戦 うが,法 清 に方 術 を破 られ て し ま う。

④ 法 通 は蛇妖 に捉 え られ る。

⑤ 法 通 は家 に送 る血 書 を書 く。

第 五段 陳十 四 は法 を学 ぶ(PP.66‑75)

① 法 清 は兄 の血 書 を持 って家 に帰 る。

② 陳 十 四 は法 を学 び,兄 を助 け る た め に盧 山 に行 こ う と決 心 す る。

③ 蛇 婆 は 陳十 四 に化 け て,法 を学 ぶ た め に盧 山 に行 く。

④ 観 音 は 陳上 元 と林 百花 に六 年 の罰 を与 え る 。

⑤ 陳 十 四 が 盧 山へ 行 く途 中,観 音 に遣 わ され た 竜 女 が 陳 十 四 を助 け,蜘 蛛 と蜆 の妖 怪 を逐 い払 う。

⑥ 蛇 婆 は一 足 先 に盧 山 を出 て,師 か ら宝 を与 え られ る(鉄 の傘 な ど)。

第 六 段 洞 門 を出 て宝 を取 り替 え る(PP.76‑83)

① 陳 十 四 は火 焔 を抜 けて盧 山 に着 く。

② 観 音 は岩 石 の 下 に と じ込 め られ た 陳十 四 を助 け る。 同 時 に盧 山の 師 に妖 精 を見 分 け られ る もう一 つ の 目 を付 け て や る。

③ 師 は陳 十 四 に法 を伝 え る。

④ 観 音 は天 地 を ひ っ くりか え し死 罪 の罪 を犯 した陳 十 四 を助 け,三 年 の寿 命 を減 らす こ とに留 め る。

⑤ 陳 十 四 は盧 山 を出 る と き,師 に神 娘 とい う号 をつ け て貰 いr宝 を与 え ら れ る(紙 の馬 な ど)。

⑥ 陳 十 四 は 陳十 四 に化 け た蛇 婆 に追 い つ い て,宝 を取 り替 え る。

説 唱 と小 説 の 間一 鼓 詞 と 『海 遊 記 』‑101

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⑦ 陳 十 四 は兄 の た め に仇 討 ち を し よ う と した が,黄,衰 の二 人 の神 将 の お 告 げ に よ り,先 に漸 江,福 建 に散 在 して い る妖 魔 退 治 に 出発 す る こ とに

な る。

「陳 十 四 夫 人 伝 』 第 二冊 を以 下 に ま とめ る。

第 一段 神 娘 は姉 妹 を救 う(pp.84‑88)

① 神 娘 は戦 乱 中 に首 を括 って 白骨 にな っ た 陳 十五 を復 活 させ る 。二 人 は姉 妹 の 契 を結 ぶ 。 陳 十 五 は催 生 夫 人 に な る。

② 神 娘 は黒松 嶺 で蜘 蛛 の精 を斬 る。

③ 神 娘 は茅 山 の 陳二 郎 に挑 戦 を受 け,法 の優 劣 を争 う。神 娘 は負 か した陳 二郎 と兄 妹 の 契 りを結 ぶ 。

④ 神 娘 は南 京 で 蟹 の精 を五 疽 神 に封 じ,遠 方 へ 送 る 。

⑤ 神 娘 は江 南 の 竜 虎 山 で張 天 師,李 天 師 に歓 待 を受 け る。

第 二段 王 志 忠 は旅 商 人 と して旅 立 つ(pp.88W95)

① 杭 州 城 内 の 金 持 ち の息 子 王志 忠 は両 親 の言 い つ け 通 りに,絹 販 売 の ため に四 川へ 旅 立 つ 。

② 王志 忠 の 妻 葛 氏 は夫 と別 れ が た く,金 の か ん ざ しを印 と して夫 に持 たせ

る 。

③ 豚 の妖 怪 が和 尚 に化 け て,王 志 忠 か らお布 施 を も ら うふ りを して,黄 苓 の枝 と王 志 忠 の持 って い た金 の か ん ざ し を取 り換 えて しま う。

第 三段 葛 氏 は妖 怪 に魅 入 られ る(pp.95‑104)

① 豚 の妖 怪 は王 志 忠 に化 け て,王 の 家 に行 く。葛 氏 は金 のか ん ざ しを確 認 して か ら豚 の妖 精 を部 屋 に入 れ る。

② 王志 忠 は旅 の 途 中 で,四 川 が 大 火 に遇 っ た の で行 っ て はい け な い と聞 か され,家 に帰 る。

③ 真 の 王志 忠 は偽 の王 志 忠 と家 で激 し く戦 う。

④ 両親 も息 子 の 真 偽 を見 分 け られ ない 。 真 の王 志 忠 は殴 られ て家 か ら追 い 出 され,隣 人 が 王 志 忠 に法 師唐 五 郎 を紹 介 す る。

102国 際 経 営 論 集No.272004

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第 四 段 唐 五 郎 は夢 を論 じる(PP.104‑123)

① 唐 五 郎 は夢 を見 た こ とを妻 に話 す 。妻 は夢 判 断 を して不 吉 な兆 だ とい う が,唐 五 郎 は改 め て夢 判 断 を して,め で た い兆 だ とい う。

② 唐 五 郎 は あ わ て た た め 妻 の 靴 を穿 い て,夜 中訪 ねて きた王 志 忠 を家 に入 れ る。

③ 唐 五 郎 は妻 にお茶 を出せ と言 う と,妻 は冗 談 で家 に何 もない と答 え る。

④ 唐 五郎 は顔 を洗 うお湯 が欲 しい と言 うが,妻 は起 きず に,祭 壇 にあ る紙 を焼 い て体 をあぶ って清 め る よ うに と答 え る。 この 後 この清 め方 が 決 ま り とさ れ る。

⑤ 唐 五郎 は,祭 壇 に祀 る神 兵 をつ れ て家 を出 た が,妻 は彼 を呼 び戻 して靴 を換 え させ る。 神 兵 も祭 壇 に戻 っ て し まい,こ の 後 法 師 が い った ん 家 を 出 た ら戻 っ て は い け な い とされ る。

⑥ 唐 五郎 が 一 人 で王 の家 に行 くと,妖 怪 に と ら え られ て 吊 し上 げ られ て し ま う。 ひ ど く殴 られ た唐 五 郎 は王 志 忠 に天 師府 へ 救 い を求 め る よ う に と 頼 む 。

⑦ 王 志 忠 は途 中神 娘 に逢 い,神 娘 は唐 五 郎 を助 け て妖 怪 を退 治 す る。

第五 段 狐 の精 が 訴 え る(pp.123‑129)

① 都 か ら派遣 され た萢 三 府 は役 人 と して温 州 に赴 任 す る。 途 中 で妻 の張 氏 が亡 くな る。

② 狐 の精 が 若 い 美 人 に化 け,亡 き夫 の兄 弟 達 に家 か ら追 い 出 され た と,萢 三府 に嘘 の 訴 え をす る。

③ 萢 三府 は狐 の 精 に惑 わ され る。狐 の精 は 自分 が 賎 しい 身分 の者 で役 人 の 萢 三府 に相 応 し くな い と媚 び つ つ も一緒 に な る。

④ 萢 三府 は狐 の 精 を夫 人 と して 温州 まで つ れ て行 く。

⑤ 狐 の精 の崇 りで 萢 三 府 は ひ どい病 気 にか か る。

第六 段 道 中散 在 して い る妖 怪 を退 治 す る(pp.129‑143)

この段 は妖 怪 が 列 挙 され て お り話 が筋 と して ま と ま って い ない 為,内 容 別 に 説唱と小説の間一鼓詞と 『海遊記』‑103

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分 類 して み る 。

① 妖 怪 の 名 称 と類 別

妖 怪 は全 部 で 三 十 四 あ り,以 下 に 分 類 す る 。 人 類 一 吊死 鬼(t死 した 者)(p.142)

獣 類 六 白 馬 鬼(p.129)狐 狸 精L(p.131)白 猴 精(p.131)白 羊 精 (p.132,134)瑚 獅 精(p.132)白 鼠 精(p.136)

鳥 類 六 老 鵡 精(烏)(p.131)白 鵠 精(鳩)(p.131)鵬 鵡 精(p.133) 雄 鶏 精(p.135)山 錐 精(き じ)(p.141)鶏 姻 精(雌 鶏)(p.142)

虫 類 ・両 棲 類 五 蠕 蟻 精(あ り)(p.132)黒 蜂 怪(p.132)蛤 膜 精(蛙) (p.135)娯 舩 精(p.141)補 蛇 精(毒 蛇)(p.142)

魚 類 二 目魚 精(p.135)鯉 魚 精(p.135) 植 物 一 苑 菜 精(ひ ゆ な)(p.135)

器 物 五 掃 箒 鬼(竹 箒)(p.129)竹 篁 鬼(竹 竿 〉(p.134)銅 鋸 怪(p.137) 灯 蓋 鬼(油 皿)(p.137)旅 擁 鬼(竹 で 編 ん だ 網 杓 子)(p.137)

其 の 他 八 三 塔 鬼(p.129)水 間 鬼(水 門)(p.129) 肚 痛 映 鬼(p.130)断 舌 鬼(p.130)楡 銀 鬼(p.132) 楡 戌 鬼(p.137)

② 地 方 の 伝 説 と の 関 わ り

山 の 名 称 の 由 来114+尖(p.133)老 鼠 梯(p.136) 紅 菟 菜 の 由 来(p.36)

腹 痛 の 民 間療 法 の 由 来(p.130) 大 橋 の 支 柱 の 由 来(p.129) 紅 花,,,.の由 来(p.130) 鶴 鳴 井 の 由 来(p.139)

多 くの 城 門 の 名 称 の 由 来 等 の 由 来 伝 承 が 数 多 く語 られ る 。

③ 妖 怪 退 治 の そ の 後

妖 径 の 大 部 分 は 珠 滅 さ れ る が, 104国 際経営論集No.272004

石 獅 子(p.130) 大 脚 鬼(p.134)

と くに神 と して封 じ られ た り,命 を助 け られ

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る例 もあ る 。

吊 死 鬼 を 地 姑 仙 娘 と して 封 ず る 。(P.142) 楡 戌 鬼 を楡 戌 神 と して 封 ず る 。(P.138)

糊 獅 の 足 を一 本 断 ち切 っ て 命 を許 す 。(P.133)

三 尾 の 鯉 の 精 は,二 尾 を殺 し て 一 尾 を生 か す 。(p.133)

三 羽 の 鵬 鵡 は 二 羽 を 斬 り,一 羽 は 逃 げ て 山 に化 け る 。(p.133) 八 頭 の 豚 の 妖 怪 を 六 頭 殺 し,二 頭 を 逃 が す 。(P.122)

④ 陳 神 娘 以 外 の 神 々 の 名 称

関 王,薬 王,桃 花 娘 々,縞 公 大 帝(p.131),茶 欄 土 地(p.133),麗 陽 星 帝, 平 天 聖 母(p.139),城 陸,土 地(p.140)の 神 々 が 登 場 す る 。

⑤ 廟 と神 像

神 娘 の 言 い つ け で 廟 が 建 て ら れ,神 娘 を は じめ とす る神 像 が 作 られ,妖 精 を 鎮 め る 。 そ して 子 授 か り を 求 め る 人 々 の 信 仰 の 対 象 と な る 。(P.131,132,139, 143}

第 七 段 虞 秀 英 が 妖 怪 に魅 入 られ る(pp.143‑150)

① 虞 員 外 の 独 り娘 虞 秀 英 は 器 量 が よ く,文 才 もす ぐれ て い る 。

② 王 員 外 の 三 男 の 飼 っ て い る 猟 犬 が 月 の 宝 を呑 ん で 白 犬 精 に な る。

③ あ る 夜,美 男 子 に化 け た 白 犬 精 が 虞 秀 英 の い る 二 階 に や っ て 来 る 。 秀 英 は 旨 い 言 葉 に騙 さ れ て,妖 怪 に魅 入 ら れ る 。

第 八 段 虞 の 家 で 妙 法 を 施 す(pp.15}170)

① 虞 秀 英 の 病 気 を治 療 す る た め に,虞 員 外 に招 か れ た 法 師 六 人 が 庁 堂 で 賑 や か に 法 事 を 行 う 。

② 舟 に 乗 っ て い た 神 娘 は 占 い で 白 犬 精 の こ とが 分 る と,舟 を下 りて,虞 の 家 に 行 く。

③ 虞 員 外 は 神 娘 に助 け て 下 さ い と懇 願 す る 。 虞 員 外 は 神 娘 に教 え られ た 通 り に,も ら っ た 三 枚 の 神 符 を家 に貼 っ て お く。 白犬 精 は た ん す の 中 に 隠 れ る 。

説唱 と小説の問一鼓詞 と 『海遊記』‑105

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④ 神 娘 は 「水 肚 隔 」 の訣 で,手 を清 め る水 を破 れ た野 菜 の か ご に入 れ て, 宙 に 吊 してお く。 神 娘 が か ご を宙 に 吊す 訣 を収 め る と,法 師 た ち は び し

ょね れ に な る。

⑤ 庁 堂 の地 面 を乾 か す た め に,神 娘 は 自分 の神 衣 を地面 に敷 い てか ら,法 師 た ち に各 々 の 神 衣 を そ の 上 に敷 か せ る 。 神 娘 が 「倒 水 訣 」 をす る と, 下 の神 娘 の神 衣 は ぬ れ ず,上 の法 師 の神 衣 は濡 れ る。

⑥ 虞 員 外 は神 娘 の言 い つ け に よ り,鉄 の鍋,菜 種 油,柴,一 ・両 五 銭 の銀 塊 を用 意 す る。 神 娘 は 「雪 山 究 」 で 冷 ま した油 か ら銀 塊 をつ か み 出 して 見 せ て か ら,さ らに銀 塊 を鍋 に入 れ る。 神 娘 は 「起 火 訣 」 で油 を熱 く した の で,銀 塊 をつ か も う と した 一 人 の 法 師 の手 が 鍋 に触 れ る な り,火 傷 す る。神 娘 は,「 女 よ り も劣 って,こ れ は法 を よ く学 ば な い せ い だ」 と法 師 を嘲 笑 す る 。

⑦ 神 娘 は 白犬 精 を退 治 してか ら,後 山 の穴 に逃 げ込 ん だ妖1蚤の子 を鎮 め る た め に,自 刀 を穴 の 中 に挿 してお く。 この穴 は 白刀 洞 とい わ れ る。神 娘 は虞 秀 英 と姉 妹 の契 りを結 び,嬰 児 の生 まれ る時刻 を定 め る定 生 夫 人 に 封 じる。

⑧ 神 娘 は法 師 た ちが いや が らせ をす る と予 知 し,霊 牌(札)を 一 つ の石 牌 坊 に化 け させ,自 分 の ベ ッ ドは庁 堂 の 中央 の 梁 に高 く吊 して お く。

第 九 段 神 娘 は ベ ッ ドを宙 に 吊 し,法 師 た ち は神 娘 のベ ッ ドを探 る (pp.170‑195)

法 師の 悪 巧 み に神 娘 は対 抗 し,こ とご と く法 師が 敗 れ る様 子 が描 かれ る が, こ こ は略 す 。

そ の後,神 娘 は餓 鬼,公 鴨怪,麻 布 鬼,白 羊 精 な ど を退 治 す る。 神 娘 は双 港 埠 頭 の岸 に あ る 高 山 に馬 氏 天 仙 を祀 る夫 人 廟 を立 て る。(馬 氏 天 仙 は神 娘

と姉 妹 の契 りを結 んだ麗 水 の 女 神)

第 十 段 温 州 で 三府 を助 け る(pp.195‑203)

① 神 娘 は青 田県 の馬 氏 天 仙 と同 じで あ っ た夫 人 廟 の 縁 日の 日取 りを変 え

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る。

② 神 娘 は廟 を立 て る ため に,金 の鉢 に入 れ た砂 を撒 い て風 水 を定 め る(方 位 を鑑 定 す る)。 青 田 の 人 々 に嘲 笑 され た神 娘 は機 嫌 を悪 く し,撒 き出

した砂 は 青 田人 の 目に入 る。 神 娘 は青 田の 人 々 に 目の痛 み を止 め る方 法 や 目の不 自 由 な芸 人 の語 り物(金 書)を 教 え る 。神 娘 が石 の亀 の背 に八 卦 をつ け てか ら,青 田 の石 の亀 に よっ て風 水 を定 め る こ とが 長 く伝 え ら

れ る。

③ 役 人 の萢 三 府 は妻 に した化 け狐 に魅 入 られ,ひ どい病 気 に な る。(第 五 段 の続 き)温 州 に来 た神 娘 は役 所 の下 男 に迎 え られ て,化 け狐 を退 治 す

る。神 娘 は萢 三 府 と兄 妹 の契 りを結 ぶ 。

④ 瑞 安 県 の 飛 雲 渡 に い た蜆 の精 は,神 娘 に殺 され た親 類 の仇 を討 つ た め に, 舟 頭 に化 け て,神 娘 を川 の 中 に落 す 。 東 海 の 竜 王 の命 令 に よ り,大 す っ ぽ んが 神 娘 を助 け,神 娘 は蛙 の 精 を退 治 す る。

⑤ こ の時 か ら,飛 雲 の 川 を渡 る人 々 は皆 川 の神 を祀 る。 川 祭 りは神 娘 の 決 め た決 ま りで,唐 代 か ら今 まで 伝 え られ る 。

第 十 一 段 金 員 外 が 亡霊 を祀 る(pp.203‑209)

① 平 陽県 金 村 の金 員外 の 妻 珠 は難 産 で母 子 と も冥 土(地 府 〉 に落 ち る。

② 神 娘 は,泣 き沈 んで 亡 霊 を祀 って い る金 員外 を助 け よ う と,珠 翠 を復 活 させ よ う とす る。

③ 神 娘 が七 昼夜 煉 丹 して も,珠 翠 を復 活 させ る こ とが で きない の で,天 上 か ら借 りて きた換 魂床 に寝 て,神 娘 の魂 は冥 土 に行 く。

④ 閻魔 王 は観 音 の 肉親 で あ る 陳十 四 を迎 え て,珠 翠 を助 け たい な ら,ま ず 冥 土 を 回 っ て見 る よ う に勧 め る。

⑤ 神 娘 は監 霊 官(冥 土 の役 人)に 案 内 され て冥 土 を回 る。

第 十 二段 冥 土 の地 獄 を回 る

第 十 三段 立 腹 して血 河 の か め を ひ っ く りか えす(pp.209‑234)

第 十 二段 と第 十 三 段 の 内 容 は神 娘 と監 霊 官 との 問 答 の 形 式 で 書 か れ て い 説唱と小説の問一鼓詞と 『海遊記』‑107

(10)

て,各 地 獄 に落 ち る よ う にな った理 由 が述 べ られ て い る。

地 獄 は全 部 で 十 八 あ り,席 香 地 獄 ・仏 灯 地 獄 ・舗 銭 地獄 ・対 経 地獄 ・香 台 地獄 ・蹴 舌 地 獄 ・燗 河 地 獄 ・鉄 遥 地獄 ・滑 油 地 獄 ・茶 牢 地 獄 ・以 上 第 十 二 段 に,刀 山 地獄 ・孟 婆 地獄 ・斬 手 地 獄 ・田螺 地獄 ・解 鋸 地 獄 ・碓 磨 地獄 ・鴛 鴛 地獄 ・血 河 地 獄 ・以 上 第 十 三 段 に入 れ られ て い る。

鼓 詞 の演 者 は,一 つ の 地獄 を通 るた び に,冥 土 の百 鬼 の た め に祭壇 の前 で 紙銭 を焼 く。

席香 地獄(pp.209‑211)

① お香 を焚 くこ との忌

② 台所 の忌 仏 灯 地 獄(p.211)

仏 灯 に関 す る忌 舗 銭 地 獄(pp211‑212)

紙 銭 を焼 くこ とに関 す る忌 対 経 地 獄(pp.212‑213)

読 経 に関 す る忌 香 台 地 獄(p.213)

神 娘 は万 丈 の高 い香 台 の上 か ら,福 州 の 家族 の あ りさ ま を見 る。

蹴 舌 地獄(p.214)

告 げ 口 や仲 を裂 くこ とをす れ ば,冥 土 で 舌 が 引 き延 ば され,来 世 で こ とば が 不 自由 に生 まれ変 わ る。

燗 河 地着訣(pp.214‑215)

冥 土 の川 の上 に六 つ の橋 が か け て あ る。仏 は金 の橋,銀 の橋 を渡 り,精 進, 修 行 す る者 は鋼 の橋,鉄 の橋 を通 る。 悪 人 が 石 の橋 木 の橋 を通 ろ う とす れ

ば,橋 の端 で 守 る牛 頭,馬 面 が悪 人 を橋 の 下 の火 の穴 に落 す 。

橋 の 下 にい る銅 の 蛇,鉄 の す っ ぽ ん は悪 人 の魂 や体 を丸 呑 み に して,来 世 に家 畜 に生 ま れ変 わ らせ る 。

108国 際経営論集No.272004

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鉄 遥 地 獄(pp216‑217)

俗 世 の 人 た ち は 親 孝 行 す べ き だ と戒 め る 。 滑 油 地 獄(pp.217‑218)

油 の つ い た手 を 水 で 洗 っ て は い け な い 。 茶 牢 地 獄(pp.218‑219)

お 茶 の 葉 を 地 面 に捨 て て は い け な い し,お 茶 の 葉 を 炉 に 入 れ て 着 物 を乾 か して もい け な い 。

刀 山 地 獄(pp.220‑221)

牛 肉 を食 べ て は い け な い 。 孟 婆 地 獄(p.221‑222)

孟 婆 の 授 け る孟 婆 湯 を飲 む と,何 も か も忘 れ て し ま う。

斬 手 地 獄(PP.222‑224)

助 産 婦 が 助 産 し て 汚 れ た 手 で 神 仏 の 前 に 灯 を 点 け た りす れ ば,神 仏 に 対 し て 不 敬 な こ と に な る か ら,斬 手 の 関 所 を 通 ら な け れ ば な ら な い 。 豚 を殺 す 者

も同 じ理 由 で 斬 手 の 関 所 を通 ら な け れ ば な ら な い 。

助 産 婦 と豚 殺 しは 臨 終 に線 香 を 包 む 赤 紙 を指 に か ぶ せ て お き,斬 手 の 関 所 の 役 人 に 指 に か ぶ せ て お い た 赤 紙 を ぬ い て 渡 せ ば,無 事 で す む 。

田 螺 地 獄(pp.224‑225)

田 螺 の 肉 を食 べ て は い け な い 。 解 鋸 地 獄(p.226)

夫 婦 を離 縁 さ せ て か ら,再 婚 の 媒 酌 を す る 者 は,冥 土 で 鋸 で 体 が 二 つ に 分 け ら れ る 。

碓 磨 地 獄(p.227)

お 金 を も ら う た め に,訴 状 に 嘘 を 書 い て 人 を お と しめ る 者 は,冥 土 で 碓 磨 に 引 か れ て 粉 々 に な り,来 世 に 生 ま れ 変 わ れ ば,体 が 麻 痺 した 者 に な る 。 鴛 鳶 地 獄(pp.227‑229)

理 由 も な く再 婚 して は い け な い 。 再 婚 した 女 の 夫 た ち が 冥 土 で 言 い 争 わ な 説唱 と小説の間一鼓詞 と 『海遊記』‑109

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け れ ば,そ れ で い い 。 血 河 地 獄(pp.230‑233)

① 血 染 の着 物 に関 す る忌

② お産 をす る女 に対 す る忌

③ 神 娘 は血 河 鉦 をひ っ くりか えす

神 娘 は 自分 の母 も血 河 紅 に坐 る だ ろ う と思 う と悲 し くな り,勝 手 に翻 天Rq を唱 えて,三 つ の血 河 鉦 を ひ っ く りか えす 。

④ 神 娘 は玉 皇 に処 罰 され る

閻魔 王 は神 娘 の こ とを玉皇 に上 奏 し,玉 皇 は神 娘 の寿 命 を さ ら に三 歳 減 ら して二 十 七 歳 で 天 上 に昇 る よ う に処 罰 す る。

第 十 四段 家 に帰 っ て父 親 を助 け る(pp.234‑239)

① 神 娘 は珠 翠 母 子 を復 活 させ て か ら,珠 翠 と姉 妹 の契 りを結 んで 護 夫 人 に 封 じる。

② 神 娘 は難 産 で苦 しんで い る李 十 三 と,ひ どい 天 然 痘 に か か っ た林 九 姑 を 災 難 か ら救 う。李 十 三 を送 子 夫 人,林 九 姑 を管痘 夫 人 に封 じる。

③ 神 娘 の次 兄 法 清 は お金 が 欲 しい た め に,病 気 を伝 染 させ る法 事 を して, 近所 の人 た ち を苦 しませ る。 彼 だ けが 病 気 を なお す 薬 を も って い る。神 娘 は家 に帰 る途 中 で,法 清 の 兵 馬 に 出合 う と,す ぐに法 角 を吹 い て,法 清 の 兵 馬 を祭 壇 に帰 らせ る。 近所 の 民 衆 は無 事 平 安 と な る。

④ 神 娘 は家 に帰 っ て,母 を喜 ば せ,背 中 の腫 物 で六 年 も苦 しん で きた父 を 助 け る。観 音 は神 娘 の孝 行 ぶ りを見 る と,善 才 童 子 を遣 わ して,陳 上 元 の背 中 に刺 して お い た金 の鉤 を取 り出 させ る。

⑤ 神 娘 は二 階 で 精 進 料 理 を供 えて観 音 にお礼 をす る。

第 三 冊 の あ らす じを以 下 に ま とめ る。

第 一 段 南 広 で南 蛇 と戦 う(pp.24Q‑245)

① 南広 の蛇 妖 は蛇 の誕 生 日に少 年 少 女 の い け に えが な い とい って,良 民 を 害 す る。

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② 陳 十 四 は長 兄 の仇 を討 つ ため に蛇妖 退 治 の兵 馬 を出 す 。神 娘 の知 らせ を 受 け取 っ た姉 妹 た ちが 応 援 に来 る。

③ 蛇公 蛇 婆 は蛇 の子 孫 や娯 舩 な どの 三 千 六 百 の兵 を出 す 。

④ 神 娘 の姉 妹 た ち,盧 山 の 師,茅 山 の 師,三 尊 天 師,都 監 元 帥,萢 三府, 王 志 忠,陳 二 郎 らは皆 兵 を率 い て参 戦 す る。

⑤ 玉 皇 は太 白星 の 願 い に よ り,神 娘 を助 け る天 兵(関 公,托 塔 李 天 王,嚇 ロモな ど)を 出す 勅 命 を太 白星 に渡 す 。

⑥ 天 兵 の威 力 に頼 っ て,神 娘 は蛇公 を殺 す 。 観 音 さ まの 助 け で,神 娘 は 一・

丈 二尺 の 蛇 婆 を五 尺 切 り落 と した が,七 尺 の蛇 頭 は都 に飛 んで い く。

第 二段 陳 十 四 が 嫁 ぐ(pp.246‑254)

① 焼 か れ た 蛇 の骨 の灰 が 蚤,蚊,蝿 な どの 害 虫 に化 け る。 端 午 節 に 菖 蒲, 宝 剣,雄 黄 酒 で 南 蛇 の邪 気 を払 う。

② 神 娘 は法 通 を復 活 させ る。

法 水 と究 文 で 粉 々 にな っ た法通 の 骨 をつ な ぎa神 娘 は さ らに煉 丹,招 魂 を行 って 法 通 を復 活 させ る。

③ 法 通 の行 方

神 娘 は紙 のか ごを作 って,法 通 を あ る所 に送 って落 ち 着 か せ,法 通 は書 写 をす る者 とな る。

④ 神 娘 は林 兄 嫁(法 通 の妻)の 媒酌 を して 陳二 郎 と再 婚 させ る。 再 婚 は神 娘 の 決 め た決 ま りで,今 まで伝 え られ る。

⑤ 蛇 婆 は都 の宮 中 に入 って,皇 后 と妃 た ち を食 べ て か ら,自 ら皇 后 に化 け る。

⑥ 神 娘 は父 母 の 命 に従 って嫁 に行 く。

⑦ 新 婚 後 の 三 日 目に,神 娘 は林 家 で盧 山 の将 軍 の た め に法事 を行 う祭 壇 を 設 け る。

第 三段 蛇 退 治 の た め に都 に赴 く(pp.254‑261)

① 皇 后 に化 け た蛇 婆 は病 気 を装 っ て,陳 十 四 の心 肝 を薬 に して欲 しい と君 説唱と小説の間一鼓詞と 『海遊記』‑111

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主 に ね だ り,君 主 は 陳 十 四 を都 に呼 びつ け る勅 命 を出 す 。

② 神 娘 は都 に赴 い て蛇 妖 を退 治 す る。

③ 神 娘 は蛇 婆 に食 わ れ た皇 后 と妃 た ち の骨 を探 し出 して か ら,煉 丹 して彼 女 た ち を生 き返 らせ る。

④ 神 娘 は君 主 の賜 る 栄典 に あず か り,平 天 聖 母 に封 じ られ る。県 令 に封 じ られ た夫 は林 青 天 と民 衆 に称 え られ る。

第 四段 陳 十 四 は 天上 に昇 る(pp.261‑271)

① 蛇妖 の魂 の崇 り とひ どい 旱越

深 く埋 め られ た 蛇妖 の魂 が 地 下 か ら逃 げ て,空 で雨 を遮 って 良民 を害 す る。

② 神娘 の雨 乞 い

神 娘 は民 衆 の た め に,身 ご もっ た胎 児 を取 り出 して,雨 乞 い の 法 事 をす る。 神 娘 の雨 乞 い で糠 雨 が 降 り出 した が,空 で 雨 を遮 る 二 人 の 雷公 が 神 娘 に斬 られ る。

③ 玉 皇 は神 娘 の寿 命 を さ らに三 歳 減 らす 。

雷公 を斬 っ た罪 で 三 歳 減 ら され る と,神 娘 は二 十 四才 で天 に昇 る こ とに な る。

④ 蛇妖 の魂 が神 娘 の胎 児 を害 す る。

神 娘 は鯉 に化 け させ た胎 児 を,養 魚 池 に化 け させ た 銅 の鉢 で 養 育 す る 。 林 兄 嫁 に化 け た 蛇妖 の魂 が林 家 に行 って,毒 気 で銅 の鉢 にい る鯉 を血 の 水 に化 け させ る 。

⑤ 神 娘 は盧 山 の 師 に 雨乞 い を頼 む。

玉 皇 は神 娘 に頼 まれ た盧 山 の 師 の懇 願 に よ り,福 州 城 に大 雨 を降 らす 。

⑥ 神娘 の二 人 の息 子 の行 方

神 娘 は胎 児 を取 り出 す 時 に,頭 巾 を被 らな か った の で,急 に頭 痛 が す る。

産 婦 が 頭 巾 で頭 を包 む 決 ま りが伝 え られ る。神 娘 は煉 丹 して,蛇 妖 の魂 に よっ て害 され た息 子 を生 き返 らせ て,走 馬,霊 通 と名 づ け る。走 馬 を 112国 際経営論集No.272004

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狩猟 の神,霊 通 を芝居 の神 と して あ る所 に送 る。

⑦ 神 娘 は二 十 四歳 で天 上 に昇 る。

天 上 に昇 っ た神 娘 は,犬 の 心 肝 を借 りて,俗 世 の 道 端 の 白骨 を生 き返 ら せ たが,助 け られ た者 が恩 を仇 で 返 した た め,神 娘 は彼 を元 の 白骨 に戻 す 。神 娘 に助 け られ た犬 は 夫 人 に感 謝 す る 。神 娘 は これ か らは俗 世 の畜 生 だ け を救 いs人 間 を救 う まい と誓 う。

俗 世 の女 はお 産 をす る 時 に,閨 房 で 「刀 頭 香 」(点 した お香 を庖 丁 の背 に乗 せ て お くこ と)を 点 して お か な け れ ば な らな い。この よ う にす れ ば, 催 生 夫 人 が俗 世 に遣 わ され る 。

⑧ 陳 十 四 は玉 皇 に謁 見 して神 に封 ぜ られ る。

玉 皇 は 陳十 四 を平 天 聖 母 に封 じ,陳 十 五 を護 国老 夫 人 に封 じる。 陳十 四 の 父 母,夫,兄 弟(法 通,法 清),息 子(走 馬,霊 通)は 皆神 に封 ぜ ら れ る。 陳十 四 の 六 姉 九 妹,及 び王 志忠,陳 二 郎,萢 三府 も神 に封ぜ られ る。

⑨ 陳 十 四 は天 門 の外 で,よ く修 行 す れ ば,天 堂 に上 が れ る とい う一 首 の詩 を書 い て俗 世 の 人 に知 らせ る。

⑩ 俗 世 の君 主 の 聖 旨 に よ り,漸 江 省,温 州府,福 建 省 には夫 人 を祀 る夫 人 宮 が 建 て られ る。

⑪ 陳 林 の二 つ の家 の 主 人 は財 産 を貧 しい 人 に分 け て か ら,天 上 に昇 っ て 神 に封 ぜ られ る。

鼓 詞 の最 後 の部 分 に以 下 の よ うに唱 わ れ る。

読 書 入 は この 物 語 を聞 い て か ら,木 版 を作 り,『 海 遊 』 とい う本 が 世 間 に伝 え られ る 。三 冊 の 『海遊 記 』 は,終 始 女 神 に謝 恩す る。

こ こか ら人 々 の信 仰 と祭 祀 の 場 で唱 わ れ,芸 人 に よっ て 口頭 で伝 承 され て い る鼓 詞 が 文 人 に よ って書 き記 され 本 に な っ た こ とが わ か る。こ の 『海 遊 記 』 に関係 す る物 と して,乾 隆 十 八 年(〇 七 五 三 年)に 文 天 堂 で刊 行 され た もの

説 唱 と小 説 の 問一 鼓 詞 と 『海遊 記 』‑113

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が,近 年 葉 明 生 に よ って発 見 され,民 俗 曲芸 叢 書 の 中 に 「海 遊 記 』 と して紹 介 され て い る。

は た して明 の 乾 隆年 間 に出版 され た とさ れ る 『海遊 記 』 とそ の も とと され る鼓 詞 とは全 く同 じ物 な の で あ ろ うか 。 知 識 人 に よ って文 学 化 され世 に出 回 っ た小 説 と,信 仰 の場 で語 られ 口頭 で 伝 承 され続 け て い る鼓 詞 の異 同 を明 ら か にす る こ とで,そ の性 格 の違 い を明 らか に しよ う と考 え る。

次 に 『海遊 記 」 明無 根 子 作 葉 明生 校 注(民 俗 曲芸 叢書 財 団 法 人 施 合 鄭 民 俗 文 化 基 金 会 二 〇 〇 〇年)の 要約 を以 下 に ま とめ る。

上 巻 を以 下 に ま とめ る 。

(一)張 世 魁 夫 婦 は災 難 に遭 う(pp.60‑62)

① 観 音 は 閾 山 の巫 の教 を広 め る た め に,自 分 の 一本 の髪 の毛 を海 中 に 捨 て て,白 蛇 に化 け させ る。

さ ら に,自 分 の 切 った 爪 を人 間 に変 じ させ,善 人 の家 に誕 生 させ る。

後 に,こ の人 が 閻 山 で 法 を学 んで か ら,蛇 母 を退 治 して,巫 教 の法 門 を 広 め る。

② 知 府 に任 命 され た張 世 魁 は妻 を連 れ て 赴任 す る途 中 で,妻 が 烏虎 妖 怪 に捉 え られ る。

③ 太 白金 星 の指 図 に よ っ て,世 魁 は 闊 山 に行 って,九 郎 法 主(許 真 君) か ら法 を学 ぶ 。

④ 沙 王 の助 け で,世 魁 は妻 を救 い 出 して,一 緒 に 闘 山 に行 って,護 法 とな る。

(二)法 通 は廟 を壊 そ う と した た め に捉 え られ る。(PP.65‑67)

① 白蛇 が古 田県 の 海 中 で人 を害 す る の で,百 姓 は 「白蛇 聖 母廟 」 を建 て て祭 りをす る。

② 世 魁 に負 け て逃 げ た烏 虎 は 白蛇 を脅 迫 して夫 婦 とな る。

③ 白蛇 と烏 虎 の夫 婦 は童 子 童 女 の犠 牲 を村 人 に要 求 す る。

④ 陳諌 議 の 子法 通,養 子 の 海清 は法 天 聖 者 か ら法 を学 んだ後 に,百 姓

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の 苦 しみ を助 け る た め に旅 立 つ 。

⑤ 法 通 は 白蛇 の廟 を壊 そ う と した た め に,白 蛇 に捉 え られ る。

(三)靖 姑 は法 通 を救 助 す るた め に法 を学 ぶ(pp.fi9‑72)

① 法 通 の師,法 天 聖 者 は鐘 で法 通 を覆 っ て保 護 す る 。

② 陳 諌議 の 娘 靖 姑 は法 を学 ぶ た め に 闘 山 に行 く途 中 で,張 趙 二 郎 か ら お札 を貰 う。 また母 をお産 で な くした李 三 娘,家 族 が疫 病 で な くな っ た 林 九 娘 と姉 妹 の 契 りを結 び,一 緒 に間 山 に行 く。

③ 靖 姑 等 三 人 は 閾 山法 主 夫 人 か ら法 を学 ぶ 。

④ 法 主 夫 人 の 背 中の膿 を吸 い取 る こ とで靖 姑 は法 を得 る 。 (四)靖 姑 は廟 を破 って 法 通 を助 け る(PP.75‑77)

① 九 郎 法 主 は靖 姑 を大 柑 夫 人 に封 じ,李 三娘 を顕 応 李 夫 人 に,林 九娘 を護 応 林 九 夫 人 に封 じ,宝 具 を与 え る 。

② 白蛇 が 大 敗 して逃 げ,烏 虎 妖 怪 が 靖 姑 に殺 され る。

③ 靖 姑 は法 通 を救 い 出 して,生 き返 らせ る 。 (五)白 蛇 は悪 巧 み で王 吉 祥 を捉 え る(pp.79‑83)

① 法 通 と海 清 は 闊 山 に行 っ て法 を学 ぶ 。

② 靖 姑 は王 逞 と縁 組 み を結 ぶ 。

③ 白蛇 が 再 び洞 に戻 って,崇 りをす る。

④ 黄 三居 士 に願 わ れ て,靖 姑 は妖 怪 退 治 をす る。 この た め に靖 姑 は七 ヶ月 の胎 児 を早 産 させ 倉 に 隠 して か ら,白 蛇 と戦 う。

⑤ 白蛇 は悪巧 み で 靖 姑 の子(王 吉祥)を 盗 む。

⑥ 世 尊 は靖姑 の願 い に応 じて,そ の子 を取 り返 したが,そ の 子 を弟 子 と して留 め て,吉 祥 と名付 け る。

下 巻 を以 下 に ま とめ る。

(六)法 通 の妹 と弟 は 白蛇 を 困 らせ る(PP.85‑87)

① 白蛇 は 毛 山 の 八郎 法 主 か ら法 を学 ぶ 。

② 法 通 兄 弟 は閾 山 か ら家 に帰 る 。

説 唱 と小 説 の 間一 鼓 詞 と 『海遊 記 』‑115

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③ 黄 三 居 士 の願 い に応 じて,靖 姑 と海 清 は閻 山沙 王 の助 け に頼 っ て, 白蛇 に戦 勝 す る。

④ 白蛇 は西 海 へ 逃 げ て 身 を隠 す 。

(七)白 蛇 と海 清 は各 々 に変化 して法 の 戦 い をす る(pp.89‑93)

① 白蛇 は西 海 竜 王 の宮 殿 に身 を 隠す 。

② 靖 姑 は 白蛇 を追 い か けて 海 中 に入 り,竜 女 と姉 妹 の契 りを結 ぶ 。

③ 海 清 は色 々 の もの に化 けつ つ,色 々 の もの に化 け た 白蛇 と戦 う。

④ 逃 げ た 白蛇 は福 州 城 に行 って,輿 王 の 皇 后 を食 って か ら,自 ら皇 后 に化 け る 。 さ らに病 気 を装 って,靖 姑 の 心 肝 で病 気 を治 した い と興 王 に 願 う。

⑤ 輿 王 は願 われ た通 りr靖 姑 を宮 殿 まで 呼 び よせ る 。

⑥ 靖 姑 は法 を行 っ て,正 体 を現 した 白蛇 の 尾 を切 り断 つ 。

⑦ 靖 姑 は輿 王 の 願 い に応 じて,死 んだ 皇 后 を済 度 す る 。 (八)皇 女 は婿 を とる た め妖 怪 に遇 う(pp.96‑98)

① 靖 姑 の 息 子 王 吉 祥 は 父 の所 に行 く途 中 で悪 人 に遭 うが,靖 姑 は彼 を 救 い 出 す 。

② 白蛇 の尾 が 切 り捨 て られ て,妖 怪 とな り,興 王 の皇 女 を捉 え て食 お う とす るが,観 音 が 一片 の瑞 雲 で 皇 女 を覆 って保 護 す る。

③ 興 王 は告 示 を出 して,皇 女 を救 助 した者 を婿 にす る とい う。

④ 観 音 は張 大 法 とい う善 人 の樵 に夢 知 らせ して,皇 女 を救 い 出 す よ う に と言 う。

⑤ 大 法 は皇 女 を救 い 出 し,そ の婿 にな る。

(九)白 蛇 が 観 音 の御 所 に身 を寄 せ る(pp.101‑105)

① あ る 日の 雷 雨 に乗 じて,白 蛇 の頭 と尾 が 空 で つ なが り,再 び洞 に戻 って崇 りをす る。

② 靖 姑 と海清 に撃破 され た 白蛇 は観 音 の御 所 に逃 げ て 身 を寄 せ る。

③ 観 音 は追 い か け て きた 靖 姑 に言 う。 「白蛇 が 人 を害 したが,今 す で

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に帰 依 した か ら,許 してや る」

④ 海 清 は巫 を もって釈 に挑 も う とす るが,観 音 に は か な わ な い。

⑤ 観 音 は 白蛇 を 白蛇 聖 母 廟 で 祀 られ る よ う に しJ動 け な い よ う にす る。

⑥ 観 音 は 「儒 釈 道 巫 の 教 え は,そ の 一 を も軽 視 して は い け な い」 とい う。 巫 教 を広 め るた め に蛇 を生 じさせ,そ れ に対 抗 す る 陳靖 姑 を も生 じ させ た と語 る。

⑦ 観 音 は玉 帝 に奏 上 して か ら,靖 姑 を都 天 鎮 国 大柑 夫 人 に封 じ,民 間 巫 法 の 主 と為 す 。 海 清 兄 弟 を蛮 師 護 法 二 郎 に封 じる。 最 後 に靖 姑 の一 家

は 天上 に昇 る。

鼓 詞 と 『海 遊 記 』 と もに 陳靖 姑 と蛇 との 戦 いが ス トー リーの 骨 子 と な って い る。 蛇 は 鼓 詞 も 『海 遊 記 』 も観 音 の抜 髪 か ら生 じた と され る。 陳 靖 姑 の方 は,鼓 詞 で は観 音 の指 の血 か ら,『 海 遊 記 』 で は観 音 の 爪 か らそ れ ぞ れ 誕 生 す る こ と にな って い る。 悪 の象 徴 の 蛇 もそ れ を退 治 す る善 の象 徴 の 陳 靖 姑 も 観 音 の分 身 で あ る とい え る。

こ こ に 自ず と観 音 との深 い 結 びつ きが前 提 に あ る とい え るわ けで あ る。 し か し,な ぜ 善 と悪 が 両 方 と もに観 音 か ら作 り出 され た の で あ ろ うか 。 そ の 疑 問 に答 え るべ く,「 海 遊 記 』 の作 者 は,最 後 の段 で 「仏 教 は巫 教 よ りす ぐれ るが,巫 教 もすす め る必 要 が あ る」 と説 明 を試 み て い る。 つ ま り,仏 教 の代 表 の観 音 が 蛇 を作 り,そ れ を巫教 の術 で 陳靖 姑 が 退 治 し よ う とす る こ とで 巫 教 をす す め た とい う こ とに な るの で あ る。 文 人 と して巫 と仏 に序 列 を考 え た の で あ る。

鼓 詞 で は観 音 は 専 ら陳靖 姑 の危 機 に際 して,救 い の手 を さ しの べ て い る。

例 え ば,第 一 冊 第 六 段 で観 音 は,盧 山 の 師 に よ って 岩 の 下 に 閉 じこめ られ た 陳靖 姑 を救 っ てい る。 また 同 じ く第 六段 に,陳 靖 姑 が天 地 を ひ っ く り返 した 罪 で 玉 皇 に死 罪 を命 じ られ た 際 観 音 は命 乞 い を して い る。 道 教 の神 々 や 道

説 唱 と小 説 の 間一 鼓 詞 と 『海 遊 記 』‑117

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士 との い ざ こ ざ に観 音 が介 入 して い る。 また 陳靖 姑 は観 音 の像 を祀 って信 仰 して お り,そ の こ と と盧 山 で修 行 す る こ とが 矛 盾 してい る とは鼓 詞 の作 者 は 全 く思 っ てお らず,敢 えて そ の 関 係 に序 列 を も うけ よ う とは して い ない 。道 仏 が 自然 に矛 盾 な く混 在 して い る とい え る。

『海 遊 記 』 で は,第 九 段 に お い て観 音 の 進 言 で 陳 靖 姑 は都 夫 鎮 国 大 柑 夫 人 に封 ぜ られ て い る。 鼓詞 で もや は り最 後 の段 で,陳 靖 姑 は平 天 聖 母 に封 ぜ ら れ てい る。 す べ て の登 場 人 物 が 神 に封 じ られ て 大 団 円 とな る の で あ る。神 と な る人 々 の 中 に姉 妹 の 契 りを結 ん だ女 性 た ちが 含 ま れ てい る 。鼓 詞 で は難 産 で 苦 しん で い た李 十 三 を送 子 夫 人 に,天 然 痘 にか か っ た林 九 姑 を管 痘 夫 人 に 封 じて い る。 『海 遊 記 』 で は,李 三娘 と林 九 娘 が 姉 妹 の契 りを結 ぶ が,李 三 娘 は そ の母 をお産 で 亡 くした と され,林 九 娘 は家 族 が 疫 病 で亡 くな っ た と さ

れ,そ れ ぞ れ顕 応 李 三 夫 人 と護 応 林 九 夫 人 に封 じ られ てい る 。

鼓 詞 の方 が そ れ ぞ れ 封 じられ た女 性 神 の神 格 が 明確 で あ る。 鼓 詞 で は難 産 の夫 人 が送 子 夫 人 に,天 然 痘 の夫 人 が 管痘 夫 人 に と,非 常 に分 か りやす い の に比 べ,『 海 遊 記 』 は そ の 家 族 が 難 産 で あ った り疫 病 で あ って,顕 応 ・護 応 と抽 象 的 な神 に封 じ られ て い る。 つ ま り,鼓 詞 の方 が語 りの 内 容 を 聞 くこ と で,お 産 の 時,病 気 の 時 に必 ず 自身 の信 仰 す る神 々 に出会 え る の で あ る。 鼓 詞 は信 仰 を基 盤 と して成 立 して い る の に対 して,『 海 遊 記 』 は文 人 が 頭 の 中 で編 んだ もの で あ る為 信 仰 的 な背 景 が 薄 らい で い る とい える 。

陳靖 姑 の 家 族 だが,鼓 詞 で は陳靖 姑 の長 兄 法 通 ・次兄 法 清 二 人 共 実 の兄 弟 と され る が,「 海 遊 記 』 で は長 兄 法 通 ・次 兄 海 清 の 内 海 清 は養 子 と さ れ る。

両 者 は,「 海 遊 記 』 で は蛮 師 護 法 二 郎 に封 ぜ られ,鼓 詞 で は雲 遊 神 に封 ぜ ら れ る。 二 人 の兄 の 内長 兄 は術 に優 れ た好 男 子 なの に比 して,次 兄 は 道化 で あ

り トラ ブ ル メ ー カ ー と して描 か れ てい る 。長 男 を重 ん じる実 際 の家 庭 事 情 が 窺 え る。

漸江 省 の村 々 に 陳靖 姑 が 祀 られ る廟 に行 く と,必 ず神 と して封 じられ た登 場 人物 の像 が 祀 られ て お り,陳 靖 姑 を中心 と して背 後 に二 人 の女 神 そ して脇

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の方 に兄 弟 達 が 並 ん で い る 。女 神 は複 数 で祀 られ て い る こ とが 多 い の だが, これ は現 実 の 女性 達 の 間で も講 組 織 が あ り義 姉 妹 の 関係 が結 ば れ,女 性 同士 の つ な が りが 強 く保 た れ て い るの で,人 間社 会 の 女 性 達 の 関係 が神 々の 世 界 に も反 映 され た もの と考 え られ る 。

悪 の 象 徴 の 蛇 だ が,鼓 詞 で は蛇 婆 ・蛇 公 の 蛇 夫 婦 と され,『 海 遊 記 』 で は 白蛇 ・烏 虎 の 蛇 と虎 の夫 婦 と され る 。 鼓 詞 で は蛇 婆 も陳 靖 姑 も盧 山で 修 行 を し,『 海遊 記 』 で は陳 靖 姑 は 閻 山 で 白蛇 は毛 山 で 修 行 す る と して い る 。盧 山 (間 山)と 毛 山(茅 山)共 に巫 術 の修 行 の 場 と して有 名 で あ っ た と考 え られ る が,『 海 遊 記 』 の 方 が 陳 靖 姑 と白蛇 を異 な る場 で 修 行 させ,対 立 を際 だ た せ て い る。鼓 詞 に も 『海 遊 記 』 に も共通 す る点 は,蛇 が村 人 か ら祀 りを受 け, 村 人 に供 犠 と して 少 年 少 女 を要 求 す る こ とで あ る 。人 々が 邪 悪 な妖 怪 も神 と

して祀 り,そ の 崇 りを免 れ る た め に人 身供 犠 を行 う とい う こ とは,『 西 遊 記 』 等 に も見 られ る物 語 の要 素 で あ る。種 々 な神 々が 祀 られ信 仰 され る実 態 を垣

間見 る こ とが で きる。

鼓 詞 には 実 際 に上 演 され る ご当 地 の 具体 的 な場 所 を意 識 的 に織 り込 み な が ら,陳 靖 姑 が動 物 の精 ・植 物 の精 ・虫 の精 ・器 物 の精 等 種 々 な妖 径 を退 治 し て,そ の地 に平安 が 訪 れ た とい う内容 が ふ ん だ ん に盛 り込 まれ て い る。 一 方

『海 遊 記 』 に は そ れ が な く,妖 怪 と して現 れ る の は 白蛇 ば か りで あ る 。 鼓 詞 は上 演 す る土 地 の 聞 き手 に配 慮 して い るが,小 説 は地 域 を限定 せ ず不 特 定 多 数 の読 者 を意 識 してい る とい え る 。

妖 蛇 の悪 巧 み の 中で,鼓 詞 と 『海遊 記 』 両 方 に見 られ るの が,皇 后 に化 け て 陳靖 姑 の 生 き肝 を求 め る とい う こ と と,陳 靖 姑 の息 子 を害 そ う とす る こ と で あ る。 妖 径が 人 に取 っ て代 わ る とい う内容 は,物 語 に は つ き もの で あ る 。 陳 靖 姑 の息 子 は鼓 詞 で は陳 靖 姑 が 雨乞 い を した た め に,『 海 遊 記 』 で は 蛇 と 戦 うた め に早 産 させ られ る と され る。 『海 遊 記 』 で は早 産 した 息 子 を倉 に 隠 す と され,鼓 詞 で は水 の 中 に隠 す とされ る 。

なぜ 早 産 す る必 要 が あ る の で あ ろ うか 。 鼓 詞 の 場 合 陳 靖 姑 が 早 産 で 胎 児 を

説 唱 と小 説 の 間一 鼓 詞 と 『海 遊 記 』‑119

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取 り出 す 時 に頭 巾 を被 らな か った こ とが も とで死 ぬ こ とに な っ た と され,ま た産 婦 が必 ず 頭 巾 を被 る とい う習俗 の は じ ま りと説 明 され て い る。 『海遊 記 』 の場 合 は,早 産 が 陳 靖 姑 の死 の原 因 とは な っ て お らず た だ 白蛇 と戦 うた め 早 産 した とな っ て い る。 鼓 詞 の 方 が 早 産 をす る意 味 の 深 度 が 深 い と考 え られ,

陳靖 姑 が現 実 に婦 人 達 に よ って子 授 か り子 育 て の神 と して信 仰 を受 け る こ と と深 い つ なが りを持 っ て い る 内容 で あ る。 ま た雨 乞 い の た め に早 産 す る とい う点 で も,天 気 を左 右 す る術 を施 す 点 で,生 産 に 関 わ る女 神 の神 格 も意 味 し てい る とい え る。

ス トー リー の 中 で 度 々死 者 を生 き返 らせ る法 術 を行 う場 面 が 出 て くる 。

『海 遊 記 』 で は 第 四段 で 陳 靖 姑 は法 通 を生 き返 らせ る 。 鼓 詞 で は数 多 くの 人 を陳 靖 姑 は生 き返 らせ る の だ が,中 で も難 産 で死 ん だ珠 翠 の例 は特 筆 す る に 値 す る。 地 獄 まで珠 翠 の魂 を探 しに行 くの で あ る。 こ こで は地獄 を巡 りな が ら,前 世 の罪 と地 獄 で の罰 が 日常 生 活 に絡 め て具 体 的 に示 さ れ る 。 つ ま り, 経 血 や お産 の血 で 汚 れ た着 物 を川 の上 流 で 洗 っ た た め,そ の水 が神 に供 え ら れ不 敬 を犯 した か ら血 の池 地 獄 に入 って い る の だ とい う具 合 で あ る。 地獄 を 語 る こ とで,生 活 の 中で の禁 忌 を伝 え,ま た種 々 な教 訓 を与 え て 聞 く人 々 の

日常 の 所 業 を改 め させ よ う とす る思 考 が 窺 え る。

こ う した教 訓 じみ た 思考 は文 人 の小 説 の 『海 遊 記 』 には見 られ ない 。 読 み 物 は面 白 さ を嗜好 す る一 方,地 獄 に行 って 帰 っ て来 る とい う よ うな部 分 は そ ぎ落 と して しま って い る。ほか に もた くさん の部 分 が そ ぎ落 と され て い るが, 鼓 詞 の 第 二 冊 第一 段 か ら十 四段 に か け て の 部 分 が 『海 遊 記 」 で は完全 に削 ら れ,取 り上 げ られ て い ない 。

この よ うに 陳靖 姑 の 大 冒険 潭,各 地 の妖 怪 を退 治 して人 々 を救 って 大 活 躍 す る部 分 が,鼓 詞 で は語 られ るの だ が,「 海 遊 記 』 で は無 視 され た の は なぜ だ ろ うか 。 実 際 鼓 詞 の語 りに耳 を じっ と傾 け,線 香 を点 し手 を合 わ せ て聞 き 入 って い る の は女 性 とそ の 手 に抱 か れ た子 供 が 圧倒 的 に多 い。 話 を作 り発 展

させ て 語 り伝 え て きた芸 人 は男 性 達 で あ った に しろ,当 然 聞 き手 の 女性 の 嗜 120国 際経営論集No.272004

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好 に配 慮 した 内容 が 語 られ る とい え る だ ろ う。一 方小 説 『海 遊 記 』 の方 は, 読 み手 は男性 の方 が 多 い の で は な い だ ろ うか。 蛇 との 戦 い のみ 残 して,そ の 他 の 女神 の 活 躍 す る場 面 は カ ッ トして しま った 理 由 は,そ こに所 在 す る の で

は ない か と推 測 す る。

小 説 『海 遊 記 』 と鼓 詞 の 最 大 の違 い は,受 容 す る側 に陳 靖 姑 に対 す る強 い 信 仰 的 な基 盤 が あ るか ど うか とい う点 にあ る とい え る。 鼓 詞 は祭 祀 の 中 で演 じ られ な け れ ば な らない の に対 し,小 説 は祭 祀 に 限定 して読 まれ る もの で は な い か らで あ る。 鼓 詞 は信 仰 心 を もった 聞 き手 の女 性 達 が い て こ そい きい き と存 在 す る芸 能 とい え る。 変 化 の激 しい現 代 に あ っ て今 後 鼓 詞 は どの よ う に 伝 承 され て い くの で あ ろ うか。 将 来 の 姿 は とい う点 で は い さ さか 心細 い 気 が す る。対 照 的 に文 学 化 され た 『海 遊 記 』 は古 典 とは な って も残 り続 け て行 く

で あ ろ う。

資料

『陳十 四夫 人伝 』(陳 靖姑地 方神研 究会資料之二 『夫人詞 』 日本民俗研究 会 ・ 上海民俗 学会等合編1995年 所収)

『海遊 記』 明無根子作 葉 明生校 注(民 俗 曲芸叢書 財 団法 人施合 鄭民俗文 化 基金会二 〇〇〇年)

この小 論 を この度 退任 され る大 場 恒 明先 生 に さ さげ させ て頂 きた い 。

説 唱 と小 説 の 間一 鼓 詞 と 「海 遊 記 』‑121

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