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動詞 を多用するのはなぜか:

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(1)

日本人

E

n.学習者が

be

動詞 を多用するのはなぜか:

言語学的アプローチ

W

h yJapanese'EFLLeamersMisusebe?:ALinguisticApproach 野地美幸

Miyuki,Noji Abstract

TherearesomelinguisticdifferencesbetweenbeanditsJapanese

counterpartdaTheycan beconsidered astacitlycausing吉ome badeffectsonJapaneseEFLlearnerstbelcarnlng

T

hrougha

comparadvestudyofJapaneseandEnglish,thepresentstudy providesananswertothequestionofwhyJapaneseEFLleamers misusebe.

キーワー ド

be

日英語比較研究

comparativestudyofJapaneseandEnglish

誤用

misuse

日本人

E

FL学習者

JapaneseEFLleamer

言語学linguistics

0.

は じめに

英語入門初期 の学生が、あるいはまた何年 も英語 を勉強 しているは ずの学生が、

Iwrotethisletter

と言うべ きところ

Ⅰ里室

wi tethislettcr

と言って しまった り、あるいは Ⅰ些担. . .と言って考え込んで しまう

疑問文は常 に ( 対応 する平叙文 に

be

動詞が含 まれていな くて も)

Areyou…

?で否定文は

Yoもarenot

. . . .英語教育 に携 わっている人 であれば少なか らずこう した

be

動詞の誤用 に遭遇 していることで

19

(2)

あろう。本稿では、 このようなつまずきの原因を言語学的観点から 探 ってみようと思 う。

日本人が日本語を流暢に話せても日本語に関 して明示的な知識を 持ち合わせているか というとそうではない。我々の頭にある言語知 識はあ くまでも暗黙の知識である。 しか しなが ら、上記の問題は、

「日本語を母語 とする学生が 「英語を学んでいることと決 して 無縁ではないであろうOつ ま り、英語のbe.と日本語の 「だ」ある いは 「ですの用法に全 く違いがなければbe動詞の学習はもっと スムーズに行われているはずである。そこで、beと 「だ」の間にど のような隔た りがあるのかを明 らかにし、be動詞学習を暗黙のうち に疎外 している言語的要因を探 ってみたい。

1. 「きれいだ」 と‑「美 しい」

(1a)beautifuIを 「きれい」を用いて訳せば確かにbeは 「だ」に対 応するが、 「美 しい」を用いた場合 「だ」が後続することはな く、

したがってこの場合beは訳 しようがない : (1) aM

t

Myokoisbeaut血1

b.妙高山はきれいだ。

C. *妙高山披美 しいだ。

「きれい」は (国語学、あるいは学校文法でいう)形容動詞であ り、

「美 しい」は形容詞だか らであるl)0 「だ」の代わ りに 「である」

を用いても状況に変わ りはない。では 「です」を用いたらどうなる であろうか :

(2) a. 妙高山はきれいです。

b.妙高山は美 しいですO

(2)のように 「ですは形容動詞 と形容詞の両方の場合 に使用可能 である。このことか らbeを 「です」 と対応させて訳 しておけば間 鹿は解消するかというと、そう簡単ではない。 「です」の過去形は

「で した」であるが、形容詞の場合

( ( 2 b )

)「ですを 「で した」に

置 き換えることはできない :

(3)

(3) a. 妙高山はきれいで した。

b・妙高山は i*美 しいで した/美 しかったです)0

英語の場合 と異な り日本語の形容詞は過去形を持つ、つまり活用す る。 したがって形容詞に後続する 「です」は純粋に丁寧語であって、

英語のbcに相当する繋辞 とは見なせない.

「だ」や 「ですに関する形容詞 と形容動詞の違いは日本語教育 という観点か ら眺めても面 白い。英語母語話者は しば しば次のよう な誤用をするという(奥津(1993:80)):

(4) *妙高山はとても美 しいだから、一度登 りたい。

cf.妙高山はとても美しいですから、一度登ってみて下さい。

美 しい」は形容詞なので丁寧語の 「です」 と結び付 くことはあっ ても 「だ」 と共起することはない。(4)の誤用もまたbeを 「だ」や

です」 と直結させることによって生 じる問題である。

以上をまとめると、(i)形容動詞には 「だ 「だった 「です」

で した」を付けることが可能で、 これらはみな繋辞 として機能 し ている、(ii)形容詞にも 「です」をつけることが可能であるが、 こ の場合紫辞ではな く、丁寧語に過 ぎない、 したがって、(iii)形容動 詞を用いた日本語文にはbeに相当する語が存在するが、形容詞を 用いた日本語文にそうした語は存在 しないことになる2)0

2.bcと 「だの統語的差異

だ」や 「だった」、 (形容動詞 と接続する) 「です」や 「でした」

が繋辞であるとして、次に間産になるのはこれ らが英語の繋辞be 全 く同じであるのか、違いがあるとしたらそれは何か、 ということ である。本節ではこの問題を取上げてみよう。

2.

1

.どんな述語 と共に用いられるか

英語には、beに後続 し得 る要素 として、形容詞句(adjectivalphrase, AP)の他 に、 名 詞 句 (nounphrase,NP)、 前 置 詞 句 (prepositional phrase,PP)、動詞句 (verbphrase,VP)、文 がある(下線部はそれぞれ

21

(4)

の句の主要部

pead)

を示す):

(5) a・ NobodywasLp些些些Ofthisdanger b・ meyarelNPPOlice̲̲m印 that

I

metyesterday]

C・ Johnislpp垂lovewithherl

d・ Wh athealwaysdoesislvp幽 TV

】 ・

e・ OurbasicaimislTPiQeradicatehunger] f・ Thefactislc,迦

I

don‑tliketosw叫 ・

(5a,b,C,d)

はそれぞれ

AP,NP,PP,V

Pの例であ り、 ( 5C ,りは文の例 である

3)0 (5e

,i )は同 じ文で もそのステイタスが異な り、厳密には ( 生成文法 とい う言語学の分野では)それぞれ T

P(tensephrase)

,CP ( c

omplementizerphrase)

として分析 される。

では 日本語の場合は どうであろうか。 「だ」 と共起 する要素 とし ては、形容動詞句

(adjectivalnounphrase,

ANP

(

1を参照) )に限 ら ず、名詞句、後置詞句

仲ostpositionalphrase,PP)

、文がある . ・

(6) a

私 は

A

仰水泳が重量】だ.

lb・

それは 【 N P覆すことので きない重宝】だ

C.

その手紙は 【 p p裕子塵旦 】だ。

d.

彼 が引 っ越 したのは【 T P少 しでも会社 に近 くなるよう旦】

だった

C

問題は【 c p彼女がそこへ辿 り着ける金]だ。

(5)

との対比か ら明 らかなように、主要部 が英語では句の最初 に来 るのに対 して 日本語では最後 に来 る。この語順の違いは英語が主要 部 先 頭 言 語

peadinidallanguage)

で 日本 語 が 主 要 部 末 尾 言 語

(headfinallanguage)

であることに起因する。カ ッコで示 した句が ( 5 )

では

be

郡 司に後続 し、

(6)

では 「だ」に先行 しているが、 これも同 じ理由が関係 している。

(6)

のカ ッコ内の主要部 に関 しては、わか りに くい点のみ補足す

ると

、(6d)

の 「に」は学校文法では連用形の語尾 として扱われてい

るが、英語の t oに相 当す る ( つ ま り不定詞節 ( 叩 )の主要部 にあた

る)要素 と考え られ る

。(6d)

のカツコの部分 を不定詞節 としたのは

(5)

ThkeZaWa(1987)の主張に基づ.くものであるが、彼は 「に」を 「だ」

の不定形 (つ ま り英語で言えばbe)とする点で異なっている。 これ は Martin(1975)や奥津(1978)における、 「に」は 「だの異形態だ とする説((7))に通 じるものである:

(7) 街は 【街が 静かだ】 なった ⇒ 街は 【 静かに卜 なった

では、 ここではなぜ 「に」を 「だ」の不定形ではな く17の主要部 とするかであるが、それは、仮に 「だ」の不定形だとすると 「に」

が動詞 と結合 し得ることが説明できな くなるからである : () a 紀子は【本を借 りに】図書館へ行ったo

b・ 武は公園へ 【散歩をLに】出かけた。

(8)が示 しているように目的節 に動詞が現れた場合 (6d)と同様 に

「に」が必要 となる。(6d)の 「に」が繋辞であるとする立場を採れ (6d)(8)の 「に朋 IJの語 ということになって しまうが、 「に」

が TPの主要部 になっていると考えれば両者に 「にが現れること が系統的に説明される。また、この結果や目的を表す 「に」は後置 詞の 「にと同様 に扱われることがあるが(eg.影山(1993:86))、奥 (1978)等で論 じられているように範境 としては区別するべきであ ろう。 しか し、 日本語に着地点(goal)を表す後置詞句の主要部 とし ての 「に」 と結果や 目的を表す不定詞節の主要部 としての 「に」の 両者を認めるここでの立場 か らすると、英語でもまた着地点を表 す前置詞句の主要部 (to)が結果や目的を表す不定詞節の主要部 とし て用いられることを、人間の認知 という観点から単なる偶然 として ではな く捉えられる (あるいは既に捉えられている)かも知れない。

このあた りは今後の課題 としよう。

話をもとに戻 して、(6e)の 「か」について臥 学校文法では終助 詞 として扱われているが、生成文法ではCPの主要部 (すなわちC

(補文化辞))として分類されている。これに関 しては筆者の知 る限 り特に異論は出されていない。

以上、 日本語の 「だ」 と共起 して述部をなす要素の中身について

2 3

(6)

見て きた.ではそうした要素の種類について英語のbeの場合 と比 較 してみよう。 「だが形容詞句 と共起 しないということは前節で 考察 したが、その他の違い として挙げ られるのは、 まず第‑に、

日本語には(6a)のタイプが存在 し、英語には存在 しないことである。

これは形容動詞 という範噂がそもそも英語には存在 しない、つまり 英語母語話者の心的辞書の中に形容動詞は含 まれていない、ことか

ら生 じる違いである。

二番 目の相違 としては、英語には(5d)のタイプが存在するが、日 本語には存在 しないことが挙げられる。次の文を考えてみよう : (9) a 太郎が 【W伝言を残 し】忘れた。

b・*太郎が忘れたのは【W伝言を残 し】だ。

影山(1993)によれば、 日本語の動詞 と動詞の結合による複合動詞は 語桑的なもの (我々の心的辞書の中で1つの語桑項 目と見なされる もの)と統語的なもの (心的辞書の中では別々の語秦項 目であ り、

文形成の仕組みにしたがって結合されるもの)とがあ り、 「残 し忘 れる」のようなものは統語的複合語に分類される。詳 しい分類基準 や分析 については影山

(

9a)の 「伝言を残 し忘れた」は 「(1993)を参照 してもらうことに して、当面残 し忘れる」 という動詞が 「伝 を目的語 として取 っているのではな く、 「伝言を残 しで動詞 句 をなすことを理解 して頂 きたい。(9a)に対応する疑似分裂文が (9b)であるが、この文は非文である。動詞句が 「だと共起 しない ことを意味する。 したがって確かに(5d)のタイプが存在 しないこと になるが、これはおそらく日本語が勝者言語(agglutinatiVelanguage) であることと関係 している。つま り、 日本語の動詞は接辞的性質を 持つか らであると考えられる。(9b)の 「残 しは何か適切な要素に 付かなければならないが、 「だに付いたとすると例えば 「太郎が 伝言を残 しだ」のような文を形成 したのと同 じ状況が生ずる した がってこの場合 「だは 「残 し」が付加 しうる適切な要素ではない ため非文 となる。

日本人に対する英語教育 という観点からすると、最初に指摘 した

(7)

差異は問題 にな らない

。(6a)

のタイプがない ということは覚 える必 要がないか らである。逆 に英語母語話者が 日本語を学ぼうとする際 には苦 しむことになるであろう。 これに対 して・ 、

2

つ 目の差異は英 語教育上何 らかの配慮が必要 と言える。(

9b)

が非文になること、言 い換えれば

(5d)

のタイプが 日本語に存在 しないことは、 この種の文 は理解 しに くいという潜在的問題 を抱えることになるか らで ある

.

ただ し

、(5d)

がなぜ良 くなるかを説明するのは難 しい し、 また教育 上決 して建設的ではない。む しろ

、(56)

で見たように不定詞節 は可 能であ り、実際

(5d)

と共 に

(10)

も可能であるので

、(10)

の ような 文で

to

が随意的になるというように触れた方が良いであろう :

(10) Wh athealwaysdoesistowatchTV・

以上、繋辞が含 まれる日英語の文について比較検討を行 った。

2.2.be

と 「だ」の役割

本節では

be

と 「だ」が英語 と日本語の中でそれぞれ担 ってい る役 割を明 らかに し、その違いか ら英語教育の面で必要 となる教育的配 慮を探 ってみたい。

英語で

be

動詞 は必ず しも繋辞 とは限 らない。存在や様態の変化 表わす本動詞

(mainve

r b)としても用いられ る :

(ll)a.

T

hebagisonthetable b.

I

think,therefore

I

am.

(12) Johnwanttobeadoctor

(lla)

は 日本語で も 「だ」 を用いて表現することが可能であるが、

(llb)

は不可能で、 「あ る」 「いる」等の動詞 を必要 とするo この 違いは、

be

には

exist

の ような本動詞 ( 非対格動詞)の用法がある のに対 し

)

、 「だ」はそれ 自体本動詞 にはなれない、 したがって 必ず述語 を必要 とする、か らであろう。 また

(12)

be

は 日本語で は 「( 〜に)なる」が対応す るが、 これもまた 「だ」 に本動詞 とし ての用法がないか らであろう。

英語の

be

はまた、進行相や受動態 を表わす際 にも用い られ る。

25

(8)

日本語では、進行相 には

〜て いる

が、そ して受動態 には

〜ら

れ る

が 用 い られ、 「だ」 が使用 され ることはない。進行相の

be

や受動態の

be

はお そ らくどの教科書で も繋辞の

be

を学習 した後に ある程度時間的間隔 を設 けてそれぞれ学習す るよう配慮 がなされて いることであろう。 この ように

be

を繋辞の

be

、進行相 の

be

、そし て受動態の

beと混乱 を避 けて別個 に学習 するとい う点 に関 して異

論はないであ ろう。 しか し、 この

3

種類の

be

は常 に振 る舞いを異 にす るわけではな く、否定文、疑問文、付加疑問文等の形成 に関し ては同 じよう. に振る舞 う :

(13)'a.Maryishappy.

b・MarylSnOthappy・

C・ IsMaryhappy?

d・ Maryishappy,lSn'tshe? (14) a・Billissleeping・

b.Billisnotsleeplng.

C. IsB山slecping?

d.Billissleeping,lSnlthe? (15) a・ Theplanwas丘Xed・

b.TheplanwasnotfiXed.

C・ Wastheplanfixed?

d.Theplanwas触 ed,wasn'tit?

これは、pol

lock(1989)

chomsky(1995)

等の知見 に基づ く生成文 法の観点か らすれば、(

16)

に示すように、be が時制文 ( 否定文を含 む)では 主語の右隣へ ( 正確 には TPの主要部の位置へ)、 ( 主節 の)疑問文ではさ らに主語の前の位置へ ( 正確 には

CP

の主要部の 位置へ)̀ 、移動す ると仮定 することによ り捉 え られ る :

(16)lc,ClT

P主語

T (not)belvp・]]] 汁‑ I

(ii) (i)

(13a,b),(14a,b),(15a,b)

の文は

(i)

の操作 によ り派生 され る。(

13C),

(9)

(14C),(15C)の文は (i)と(ii)の操作により派生される.そ して(13d), (14d),(15d)の文は、カンマまでの前半部分はそれぞれ対応するa 文と同じ方法で派生され、後半部分は(i)の後で (例えばis+not isnTtに変える)縮約 (contraction)が施され、さらに(ii)の操作 を適用 することにより派生される5)Oこのように、繋辞のbe,進行相のbe そして受動態のbcの統語的共通性は(16)によって説明される。

また教育的観点か ら見れば、(16)は文の難易度を測るI 1つの客観 的尺度 として利用可能である。例えば、(13,14,15)に含 まれる各文 の学習効率を考えた場合、学習の優先腰位はそれぞれa>

b

>C>

d

の順番 となる̀)。 したがって、その順序で提示 してい くのが望 まし いと言えよう。

以上、beが繋辞 としてだけではな く本動詞 としても機能 している こと、そして進行相や受動態でも用いられることを 「だと比較 し なが ら見て きた。 日本語にはないこの be動詞の用法 が学習者 に

様々な文でbeが用い られる」 という感覚を生 じさせ、結果 とし be動詞の多用に繋がっている可能性がある.

では、 日本語の 「だ」.は繋辞 としてだけ機能 しているのであろう か。答えはそうではない。 「だ」が日本語の中で果た しているもう

‑つの役割を簡単に見て行こう :

(17) A:わたしは昨日ラーメンを食 竺た。

B:僕はウナギ豊。

(18)A:どの魚が美味 い 1?

B:

この魚豊。

(17B)(18B)の 「だ」はそれぞれ 「食べた 「美味 しいの意味で用 いられている。このように日本語では動詞や形容詞が文脈等から推 測できる場合 「だで代用される(詳 しくは奥津(1978)を参照)。英 語のbeにはこのような用法はない。この差異に関 しては、通常外 国語学習は受け身的にな りがちなので日本語をある程度意識 しない 限 り、大 きな問題 となることはないかもしれないが、割合 としては 少な くとも誤用につながる恐れがあるという意味で指摘 してお く。、

27

(10)

以上、beと 「だ」がそれぞれ英語 と日本語の中で繋辞以外にも担っ ている役割があるということを考察 した。

2.3.文のタイプ

本節では、beと 「だ」の繋辞 としての用法に限定 した上で、両者に 差異があるかを検討 してみたい。まず次の文を比較 してみよう : (19) a・ 和子は幸せだ。

b.和子は幸せか ? (20) a・ Maryishappy.

̀b・ IsMaryHappy?

(19a)の文に相当する疑問文は(19b)であるが、ことには 「だが現 れていない。これは実際現れていないのではな く音形を持っていな いだけだと考えられている。 というのは、 「である」の形では生じ 得 る((21a))、そ してまた (lb)の文を埋め込む と 「だ」が現れる ((21b))からである :

(21) a. 和子は幸せであるか ? b. 和子は幸だか】わか らない。

「だ」の省略可能性の問題はさておき、(19)(20)を比較 して明ら かに異なるのは、全節でも触れた主語 と助動詞の倒置の有無である。

英語では疑問文を形成する際に、beが (助動詞の1つ として)cp の主要部の位置 に来 る。 日本語ではそのような倒置は起 こらず、

「か」がその位置を占める ((6e)を参照) この違いは、繋辞文に 限ったことではないが、主語 と助動詞の倒置が日本語母語話者には 習得上負担 となる潜在的可能性 を持 ったものであることがわかる。

次に命令文を考えてみよう。日本語の形容動詞を用いた命令文に は 「だ」̀が現れないが、対応する英文ではbeが用いられる : (22)a.静かに (しろ/しなさい)0

b Bequiet!

2.1.節でみたように連用形の語尾 「に」 は toに相当する要素 と考え られる したがって命令文には 「だ」が用い られないと言えるので

(11)

はないだろうか。もともと 「だ」は命令形を持たないと言われるが、

その理由 としては意味的なものが考えられる。 命令 というのは通 常未来に言及するものである。実際(22b)be〜である」 とい う意味ではな くて一になる」 という意味を持っている。 したがっ 、(22a,b)の違いは、beb∝omeのような様態の変化を表す本動 詞 として用い られるのに対 し 「だ」にそのような用法がないという 違い (前節を参照)から生ずるものとして埠えられる

また、 「であるは 「であれ」のように命令形を持つことがある が、 この場合本来の繋辞 としての意味はな く〜になれ」 という意 味を持つ。 したがって、ここでも上記の意味的制約が関わっている

と考えられる。

3.何をどう表現するか

何をどういった語で表現するかに関しては、例えば物の名前は名詞、

その属性は形容詞、 といったように一定の傾向はあるものの、2 の任意の言語 を比較 した場合当然そこには違いが生ずる.またこ範 噂は同 じであってもカバーする意味領域が異なっていることもしば しばである。このような違いは、言語のアイデンテ ィテ ィーに繋が る個性を生み出す働 きをする一方で、外国語学習に際 しては大 きな 障害 となる。本節では、 この 「何をどう表現するか」に関連 して生

じるbeと 「だ」の隔た りを明らかにしたい.

英語の形容詞beautifulは日本語では形容詞 「美 しい」の他に形容 動詞 「きれい」を使 って表現可能であるということは1節で見たが、

この程度の違いはいわば誤差の範囲ではなかろうが )。次の例文を 見てみよう :

(23)a・Jbhn皇室inlovewithher b.ジョンは彼女 と恋愛中 (24)a・Helikemusicv叩 muCh

b.彼は音楽がとても好 き澄。 (25)a

T

hetaperecorder

室OutOforder

29

(12)

b.

そのテープレコーダーは故障 している.

(23)

の述部には前置詞句 が現われているが対応する日本語文には名 詞句が現われてお り、ステイタスの全 く異なる範晴が用い られてい る。つまり同 じ意味内容が英語 と日本語 とで適 った表現形式を持つ。

しか しなが ら、 この場合 も英語の

is

に対応 して日本語の 「だ」が存 在 しているので、

be

の誤用につながる恐れはあま りないであろう。

問題は

(24)

(25)

の場合である。英語では

be

が用い られない文が 日本語では 「だ」を使 って表現 されていた り

((24

) ) 、逆 に英語では

be

が用い られる文が日本語では 「だ」を用いないで表現されている

((25

) ) 。このような状況は決 して稀な状況ではない。そ して こうし た状況が一方では ( 一旦学習 した)

be

「だ」の結びつ きを弱め、

他方では一般動詞があって も

be

が入 り込む余地 を作 り出 して しま うのではないだろうか。

4.

おわ りに

本稿では、be と・ rだ」の隔た りが

be

の学習の障害になっていると いう推測の下、具体的にどういった点が

be

の学習の妨げにな りう るのかを言語学的観点か ら明 らかにした。

be

動詞 というのは、. 沢山ある動詞のうちの

1

つに過 ぎないが、英 語でかかれた書物 を開けば必ず目にする、あるいは会話の中でも必 ず登場する、 したがってそれだけ我々の認知世界に深 く入 り込んで いる重要な単語である。その単語 をうまく使いこなせないというこ とは英語の運用面で大 きなハ ンデ ィを抱えることになる

本稿では このハ ンデ ィをな くすために

be

と 「だ」の隔た りを明

らかにして きた。 しか しなが ら、be と 「だ」の文法的差異を学習者

に教えることを奨励するものではない。それでは、森田

(1990)

が言

うように 「いたずらに対照語学的興味をかきたてる」だけとなって

しまうか らである。彼はまた次のように述べている : 「学習者は教

場 においてで きるだけ理論的思考を排除すべ きだということは、教

科書や教師も、文法上、理論的なことをいっさい捨てろということ

(13)

ではない。む しろ、学習者笹理屈や理論を拒否すればするほど、教 科書や教師には文法に対する理論的考え方が要求される。」本稿は む しろこの意味で、つまり、教師の文法に関する理論的考え方が深 まるように、そ してその考え方が教科書編成等で生 きるように、 と 意図 したものである。

l) 形容動詞は ¢)のように 「さ」を付ければ名詞になるといっ た点で形容詞的であ り

、( i i )

のように名詞を修飾する際に 「の

を必要 とするといった点で名詞的である。

(i) a きれいさ b.美 しさ C.*美さ

( i i )

a. きれいな景色

b.*美 しいな景色 C. 美の象徴

したがって Martin(1975)に従い "adjectivalnoun"と呼ぶのがふ さわ しいと考えるが、用語上の混乱を避けるため本稿では形容 動詞 という用語を用いることにする。形容動詞の形容詞的 .名 詞的性質に関 して詳 しくはShibatani(1990),Tsujimura(1996) 参照。

ちなみに、英語 (外国語)の形容詞が借用語 として日本語に 取 り入れ られた場合、 日本語の中では形容動詞 として扱われる ことになる(Shibatani(1990)):「ハンサムだ 「タフだ」等

先に見た(la)も形容詞が単独ではあるがAPとしてのステイ タスを持 ってお り(例えば、beaudfu1の代わ りにquitebeautiful を代 入することができる)、(5a)の類に入る.

存在文に現われるbcもこの用法に入る。 したがってbeに後 続する名詞は述語ではない(cf.(5b))o

付加疑問文の 「後半部分

で省略されている動詞句の部分に

31

(14)

関 しては、完全な文を生成 してから同一性(identity)の条件の下 消去するという考え方 と、最初はな くて文の解釈部門 で補わ れるとする立場がある

̀) 単純に、適用する操作の数が多い程難易度が増すとは言えず、

適用する操作の種類や単語の相違も問題 となる。 したがって前 提が異なれば比較の対象 とはな りえず、(16)は例えば(13,14, 15)の甲の順位づけには関与 しない0 、

°) 実際、益岡 ・田窪(1992)等の外国人向け日本語文法書では教 育的配慮から形容詞は (語尾が 「い」で終わる)イ形容詞、形 容動詞は 「だ」 と共に1語 と見な し (したがって語尾が 「だ で終わる)ダ形容詞、 として提示されている。

参考文献

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Martin,Sam uelE・(1975) A ReferenceGram marofJapanese,Yde UmiversityPress.

益岡隆志 ・田窪行則(1992)基礎 日本語文法 (改訂版)』,くろしお 出版.

森田良行(1990)『日本語学 と日本語教育』凡人社.

奥津敬一郎(1978)「ボクハ ウナギダ」の文法 :ダとノ』,くろし お出版.

Pollock,Jean‑Yves(1989)"VerbMoveme UniversalGram mar,anddie StructureofIP,''LinguisticInquiryJ20:365・424.

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参照

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