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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

東日本大震災で被災した地域における長期滞在型ス クールカウンセラーとしての活動の実際 −こころ のサポートに取り組むうえで大切にしていること−

著者 渡部 友晴

雑誌名 教育実践開発研究センター研究紀要

巻 23

ページ 251‑255

発行年 2014‑03‑31

その他のタイトル The reality of school counselling programed long‑term in Tohoku

URL http://hdl.handle.net/10105/9840

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1.はじめに

筆者は2011年5月から宮城県・岩手県で緊急派遣ス クールカウンセラー(以下SCと表記)として活動し、同 年9月からは岩手県に常駐して長期滞在型のSCとして勤 務している。沿岸部のある地域を担当し、その中の主に 小学校を月1回から週1回のペースで巡回している。そし て日常の関わりを大切にしながら、子どもたちのこころ のサポートにあたっている。

本稿では、現地の子どもたちのこころの回復がどのよ うに進んでいるのかについてまとめるとともに、筆者が 学校で活動するうえで心を砕いてきたポイントについて述 べたい。それにより、これからも続いていく心理支援や、

あるいは今後起こりうる災害における心理支援に向けて、

何らかの知見を提供できればと考えている。

2.子どもたちのこころの回復

髙橋(2009)や冨永(2012)は、災害後に起こりやす いストレスについて、大きく3つに分けて説明している。

もちろん現実にはそう簡単に分かれるとも限らないが、

便宜上その分類にしたがって、子どもたちのこころの回 復についてまとめる。

2.1.災害のショックや恐怖によるストレス

(トラウマ反応)

災害はひとのこころに大きなショックや恐怖をもたら す。それによる反応をトラウマ反応と呼ぶ。嫌なことを思 い出したり夢に見たりするため(再体験)、身構えて神経 が過敏になり(過覚醒)、そのことに関連するものには触 れないようにしてこころの安全を守ろうとする(回避・マ ヒ)。つまり、これは誰にでも起こりうるあたりまえの反 応なのである。

こうした反応は、一般的には時間が経つにつれて軽減 していくものである。実際に子どもたちと面談していると、

「津波の夢を見ることはあるけれど、回数は減った」「怖 い夢だけれど、そんなにリアルな感じではなくなった」な どという話を聞くことがある。だがその一方で、「震災か ら2年くらい何もなかったのに、急に眠れなくなった」など という訴えもある。また、普段は平気だが、何らかのきっ かけで思い出して不安になったりする子どもは多い。たと えば、節目の時期、地震の揺れ、津波注意報、サイレン の音、テレビの映像、重機の振動など、さまざまなもの がきっかけになって、反応がぶりかえすことがある。

2.2.大切なひとやものをなくしたことによるストレス

(喪失反応)

震災で家族や友達を亡くした子どもたちがいる。子ど ものこころは大きく揺らぎ、怒りや悲しみ、時に絶望す らも体験することがある。

そこからのこころの回復の時期やプロセスには大きな 個人差がある。自分の体験に向き合い、それを語ったり 表現したりしながら、こころの中に収められるようになっ た子もいる。最近になって初めて、亡くなった家族のこ とを口にするようになった子もいるし、まだそのことに触 れようとしない子もたくさんいる。まるで何事もなかった かのように過ごしている子もいる。もちろん、必ずしも自 分の体験に触れなければいけないというわけではなく、

たとえ表現しなくても、こころの整理を静かに進めてい る子どももいるかもしれない。

2.3.生活の変化によるストレス(生活ストレス反応)

災害は子どもたちの生活環境にも大きな変化をもたら す。多くの子どもたちが今もなお仮設住宅や親戚宅など で暮らしている。他の地域に引っ越した子どももいる。

長時間のバス通学を強いられることもある。家族の職業 の変化や経済的困窮の影響を受けたりもする。仮設校舎 を使ったり、他校を間借りしたりして授業を行っている学 校もある。校庭に仮設住宅が建ち並んでいる学校も多い。

宅地造成など、目に見える復興が進んでいる地域も

長期滞在型スクールカウンセラーとしての活動の実際

-こころのサポートに取り組むうえで大切にしていること-

渡部友晴

(岩手県巡回型スクールカウンセラー)

The reality of school counselling programed long-term in Tohoku Tomoharu WATABE

(School Counselor in Iwate-prefecture)

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あるが、まだまだ長い道のりであることに変わりはない。

また依然として更地のままで、復興の見通しが立ちにく い地域もある。

こうした環境の中での生活によるストレスは、知らず知 らずのうちにボディブローのように効いてくるだろう。スト レスはただ続いていくというよりも、蓄積していくイメー ジで捉えたほうがよいのかもしれない。

そうしたストレスによる反応の一例を図1に示す。この ように、ストレス反応はからだ、行動、気持ち、考え方 に分けてとらえるとわかりやすい。また矢印で示したよ うに、反応が互いに影響し合い、時には悪循環を引き起 こすこともある。

こうした反応はわれわれの生活のなかで一般的に起こ ることであり、すべてを震災と関連づけて考える必要は ない。とはいえ、震災による生活環境の変化が長期にわ たって続くことを考えると、これらの心身の反応が出や すい状況であることは間違いないであろう。

3つのストレスの時間経過による変化のイメージを図 式化したものが図2である。

このように、トラウマ反応は、一般的には時間経過と ともにだんだん弱くなっていくが、何らかのきっかけに よって一時的にぶりかえすことがある。喪失反応につい ては図示するのが難しいが、回復したり戻ったりを繰り 返しながら、ゆるやかに回復していくようなイメージでと らえられる。生活ストレス反応は、時間経過とともにだ んだんと積み重なっていくように考えられる。

3.スクールカウンセラーとして大切にしていること

ここでは、筆者がSCとして活動するうえで大切にして いることを何点か述べる。災害後に特化した点や、地域 性に応じた点ももちろんあるが、これらは災害後のSC活 動に限ったことではなく、いわゆる通常のSCとしての活 動にも共通する部分が含まれていると考えている(渡部、

2013a)。

3.1.空気になじむこと

筆者が担当する地域では、小学校に継続的にSCが 入るのは初めてであった。つまり子どもも教員も、SCと いうものに触れることじたいが経験のないことであった。

そして筆者は現地の人間ではなく、よその土地からやっ てきたSCであった。

そこで筆者は、まずはその場の空気になじむことに心を 砕いた。「空気になじむ」というのは象徴的な意味でとらえ られることが多いが、筆者は何か物理的な意味もあるよう に感じている(もちろん科学的な根拠は何もないが)。

そのために、たとえば初めて行く学校へは、少し早め に着くようにして、学区を車で走ってみたり、校舎のまわ りを歩いてみたりする。子どもの面談をするときや、保 護者向けの講演をするときなども、相談室や講演会場に 早めに入っておくようにする。イメージとしては、自分の 細胞のひとつひとつを、その場の空気の成分にコミット させていく感じである。

われわれはよく、その場にそぐわない人のことを「異 分子」と呼んだりすることがある。非科学的な話である が、人間はもしかしたら細胞レベルで相手の存在を感じ ているのかもしれない。それで場の空気になじんでいな い人に対して違和感を持ったりするのではないか。

空気ということに関連していえば、たとえば職員室な どで、その学校が醸し出す空気感のようなものを十分に 感じようと努めることもあるし、面談中なども相手の呼 吸に自分の呼吸のタイミングを合わせる(文字通り、息を 合わせる)こともある。いずれにせよ、こうした非言語 的な要素も大切にすることは、学校現場にスムーズに溶 け込んでいくうえで大切なことであると考えている。

3.2.敷居を下げること

以前、他の地域で教員をしている方がおっしゃってい た。「見ず知らずのカウンセラーに、子どもたちがこころ を開くはずがない。」

確かにその通りである。

そういった初対面の状況でも、子どもがこころを開く ことができるのが、カウンセラーの専門性だ、とでも言 えればかっこいいのかもしれないが、そこまでの自信は 筆者にはない。

だから、というわけでもないが、子どもたちとの関係 づくりには、人一倍、力を注いでいる。休み時間などに 図1.ストレス反応の例

(静岡県臨床心理士会(2010)をもとに作成)

<からだ>

・寝つきが悪い、眠りが浅い

・食欲がない

・頭痛、腹痛

・だるい

・肩こり、腰痛

<行動>

・落ち着かない

・はしゃぐ

・怒りっぽい

・引きこもる

・子どもっぽくなる

<気持ち>

・こわい、不安

・イライラ

・やる気が出ない

・気分が落ち込む

・何も感じない

<考え方>

・集中できない

・考えがまとまらない

・忘れっぽくなる

・急にその時のことを思い出す

・自分を責める

図2.3つのストレスの時間経過による変化のイメージ

渡部 友晴

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一緒に遊んだりもする。邪魔にならない範囲で授業にも 顔を出す。体育の授業や部活動などは、「見学」するだ けでなく、可能であれば「参加」するようにしている。

こうして、「カウンセラーの先生」ではなく、「いつも一 緒に遊んでくれる渡部さん」でいることが、子どもたち にとっての敷居を下げ、いざという時に気軽に相談でき る存在であることに役立っている。

3.3.子どもたちの活動に実際に参加し、五感で感じる こと

上記のこととも共通するが、子どもたちの活動にはで きるだけ実際に参加し、その体験を五感で感じるように 努めている。

たとえば、運動会のダンス練習では、一緒に踊るよう にしている。筆者もだいたい完璧に踊れるようになった が、その分、次の授業では疲れが出た。見ると子どもた ちも疲れ気味で、中には集中力を欠く子もいる。これだ け激しく踊ったら疲れるだろうということが想像でき、子 どもの行動の背景にいろいろな可能性を想定することが できた。

また夏の時期には、水泳の授業がある。できるだけプー ルサイドに行き、子どもの様子を注意深く観察するように した。そして可能な限りは、一緒に水に入るようにした。

すると、たとえば水温が2℃低いと、水はものすごく冷た く感じるものだということがわかる。そうすると震え出す 子どもや水から出たがる子どもが続出する。またプール の後はどっと疲れが出る。見ると子どもたちもぐったりし ている。

こうして、震災の影響を考える前に、まずは生理的な 反応を念頭に置いておくことは、子どもたちの行動の意 味を考えるうえで、とても役に立つことであった。

3.4.また話したいと思ってもらうこと

たとえ相談したいことがあったとしても、自ら喜び勇ん で相談に来る子どもはまずいない。たいていは誰かに勧 められて、たとえ自ら希望してきたとしても多少の躊躇を しながらおずおずとやってくる。

そこで筆者は、特に最初の面接のときに大切にしてい ることが2点ある。ひとつは、SCと話せてよかった、と いう体験をもってもらうこと。もう一点は、子どもの日常 生活にとって何かプラスになるものを提供すること。そう することによって、次回もまた来たいという気持ちを持っ てもらいたいと考えている。そのために、できるだけ子 どものペースで好きなことを話してもらうように心がける。

子どもにとって話しやすい話題のツボを注意深く探って いくようなやりとりを重ねることもある。またメンタルト レーニングの方法を伝授したりもするし、時には勉強や 運動のコツを教えたりもする。

初回から自らの体験を語ることのできる子どももいる が、多くの場合はそこまで話が進まない。だがそこで無

理に核心に触れようとするのではなく、「またSCに話をし に来てもいいな」という感覚を持ってもらうことを優先し たいと筆者は考えている。必要なときにSCを利用しても らうための土台づくりである。

3.5.子どもの発達段階に合わせて、必要な知識を伝え ること

先に述べたように、ストレスがかかった状況にあると き、こころやからだに何らかの反応があらわれるのは、

誰にでも起こるあたりまえのことである。だが子どもたち はそのことを知らない場合もある。自分だけがおかしく なってしまったのではないかと不安になることさえある。

今までは大丈夫だったのに急にそうした反応が起こった 場合、それはなおさら強いものになる。

したがって、子どもたちにそうした反応に対する正確 な知識を伝え、その対処法を教える意味は大きい。そ れにより子どもは必要以上に不安にならずに済み、また 自分自身でそうした反応に対処することができるように なっていく。

なお筆者は、特にトラウマ反応について子どもに説明 する場合、「ドラえもん」と「ネズミ」の例を用いて説明 することが多い。ドラえもんがネズミに耳をかじられ、そ のためにネズミが怖くなり、ネズミの夢を見て飛び起きた り、ネズミが部屋の隅を走っただけでひどく驚いて逃げ 回ったりする、というストーリーは、小学校1年生でも知っ ている。また中学生には、「再体験」「過覚醒」といった 用語も併せて伝えることがある。自分の心身に起こって いることが、名前がつくほど一般的なことだと知ることも、

生徒たちに安心感を与えるようである。そのほか、リラク セーション法についても、「顔じゃんけん(阿部、2013)」

などゲーム形式のものをとり入れることも有効である。

このように、発達段階に応じて、子どもにとって受け 入れやすい方法を常に工夫しながら伝えていくことが大 切である。

3.6.長期的な視点をもって寄り添うこと

震災で多くの子どもたちが大切な家族や友達を亡くし ている。その悲しみの大きさははかり知れない。先に述 べたように、そこからの回復のプロセスや時期は人それ ぞれであり、大きな個人差がある。

そこで大切なポイントになるのが、喪の作業(モーニ ングワーク)である。すなわち、亡くなった人を偲び、

その存在をこころの中に確かに感じられることで、その 喪失を少しずつ受け入れられるようになると考えられる。

そうしたプロセスは、行きつ戻りつして進んでいく。し たがって、そこで大切なのは、変わらぬスタンスで誰か が寄り添っていることである。自分の体験に触れたい、

語りたいとき、あるいは何らかの形でそれを表出すると き、誰かがあたたかくそばに寄り添っていられる体制を、

長期的に整えていきたいと考えている。

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3.7.表現する機会を保障すること

災害から間もない頃、つまり体験がまだ生々しい時期 は、子どもたちにその体験に触れさせることや表現させ ることは、望ましくないことである。それは新たなショッ クを生むだけでなく、無理に触れることへの抵抗により、

体験をこころの中に押し込めてしまい、それが回復を阻 むことになってしまうからである。

一方で、発災から3か月ないし半年が過ぎ、中長期対 応を考えるうえでは、必要に応じて、むしろ体験に向き 合ったり表現したりすることが重要なポイントになる。日 常生活のなかでも、災害の話題を必要以上に避ける必要 はなく、もちろん配慮は必要であるが、自然に触れてい くことができる時期になる。むしろそれを避け続けてし まうと、必要以上に辛さをこころに押し込めてしまうこと にもなりかねない。

そこでたとえば、震災から一年後などの節目の時期に、

「一年をふりかえって」といったテーマの全校文集を作る とりくみが行われることがある。こうした表現活動を行う ことにより、子どもたちがこころの整理をし、体験をここ ろの中におさめられるようになることが期待される。もち ろん、そこに触れたくない子どもへの対応をはじめ、こ うした表現活動を行ううえではさまざまな配慮が必要で ある(渡部、2013b)。

また、語り継ぐという視点も重要である。自らの体験 を教訓として、後の世代や他の地域に伝えていく。震 災が辛い体験であったことには変わりはないのだが、こ うして人の役に立ったりつながりができたりすることによ り、体験にポジティブな要素を加えていくことができるか もしれない。それにより、体験の受け止め方が少しずつ 変わっていくことが期待される。

こうした表現活動は、SCが主体となって行うのではな く、学校が中心となる活動を、必要に応じてSCがサポー トしながら行うのが望ましい。それは、日々を共に過ご してきた教員が行うからこそ、子どもたちは安心して自 分のこころに向き合うことができ、それを表現すること ができるからである。

もちろんこうした表現活動を必ず行わなければならな いというわけではなく、子どもたちの様子や学校の実態 に合わせて、柔軟に考えていく必要がある。たとえば、

余震が続き子どもたちの不安が高まっているときに、表 現活動を行うことはかえって危険である。まずは十分な 安全安心感をもてるような活動を行うことが望ましい。

いずれにせよ、震災の話をタブーにすることなく、子ど もたちが表現したいときにそれを受けとめられる態勢をと とのえておくことは大切である。

3.8.脇役であること

学校における主役はもちろん子どもたちである。そし て教育活動における主役は先生たちである。SCは時々 来るだけの脇役にすぎない。その点をわきまえておく必

要がある。

子どもが今まで誰にも言っていなかった悩みをSCにだ け打ち明けてくれることもある。子どものこころについて 深く理解することもできるかもしれない。ストレスについ て授業で子どもたちに上手に伝えることもできるだろう。

だが多くの場合、その翌日、SCはその学校にいないの である。SCがいる時はいいけれど、いない時はダメ、と いうのでは、真に子どもの役に立っているとはいえない。

したがってSCが志向するのは、先の例でいえば、子 どもが担任の先生にその悩みを打ち明けられるようにな ること、子どものこころの理解について教員らと共有す ること、教員らがこころの授業を行えるようにサポートす ること、なのである。おいしいところは先生方に持って いってもらう、といったスタンスが重要であるように思う。

3.9.子どもの成長する力を信じること

何度も述べているように、災害という大変なことがあっ た後に、こころとからだに何らかの変化があるのは当然 のことである。それを病理と見立てて専門的な関わりを 行うという立場もあるかもしれない。

しかし学校という教育の場で子どもにかかわるうえで は、むしろそうした反応を抱えながらも日常生活を続け ている子どもを支えることが重要であるように思う。学 校に通い、授業を受け、友達と遊ぶ。そういった適応 をいかにサポートしていくか、という点にエネルギーを注 ぐ必要がある。さまざまな反応に対しては丁寧に対応し ていきながら、子どものもっている健康な部分を大切に していきたい。

もちろん他機関との連携は大変重要であるし、日常生 活が立ちゆかなくなるような重い反応がある場合にはす みやかに医療機関等につなぐ必要がある。

その一方で、子どもは時として驚くような成長をみせ、

困難を乗り越えていくことがある。その成長の力を信じ ることを、SCとしての関わりの根っこに常に置きたいと考 えている。

3.10.24/7カウンセラーであること

昔、大学で習った臨床心理学の授業では、「カウンセ ラーは、街でクライエントに会っても、こちらから挨拶し たりはしない」と教えられた。それが、一般的な、ある いは都会モデルでの心理臨床のセオリーなのであろう。

しかしここでのSCとしての活動に、そんなセオリーは 通用しない。

スーパーで買い物をしていると、必ず誰かに出会う。

鮮魚コーナーの向こうのほうから「わたべさーん!」と叫 びながら子どもが駆け寄ってきたりする。ある学校の先 生が、別の学校で関わっている子どもの保護者である場 合も多い。筆者の住んでいるアパートの場所を知ってい る子どももたくさんいる(車が置いてあるので、わかって しまう)。

渡部 友晴

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こういう状況に、はじめは戸惑ったものだが、むしろ これをうまく利用しない手はない。

子どもたちの日常に近い存在になることができる。子 どもたちの生活に直に触れることもできる。コンサルテー ションと保護者面談を同時並行的に行うことができる。

もちろん、守秘についてはかなり慎重になる必要がある。

こうしてみてみると、仕事とプライベートの境目は曖昧 になってくる。そもそも、公私混同という概念じたいが それほど強く存在しないのではないか、と思うことさえ ある。

そこで最近では、「24/7(twenty four-seven)カウン セラー」という心構えで過ごしている。24時間、週7日、

いつでもカウンセラーである。面談中であろうがなかろ うが、常にカウンセラーとしての対応を心がけること。さ らには、仕事中にせよそうでないにせよ、自分の言動に 責任を持ち、誠実に対応すること。そうした日々の積み 重ねが、ひょんなところで役に立つこともあるのである。

4.おわりに

この原稿を執筆しているのは2013年1月末、東北は一 年でもっとも寒さの厳しい時期を迎えている。もうすぐ3 度目の3月11日が近づいてくる。こうした節目の時期にな ると、アニバーサリー反応(記念日反応、節目反応)と いって、一旦は収まっていた心身の反応がぶりかえすこと がある。そうした反応に対して丁寧に対応していきなが ら、子どもたちがこの3年間での自分の成長を確かに感 じられるように、そしてそれがこれから先を生きていくう えでの力となるように、学校の先生たちや周りの大人と 力を合わせながら、日々の取り組みを続けていきたいと 考えている。

5.文献

阿部昇(2013)全身じゃんけん・顔じゃんけん 一般社 団法人社会応援ネットワーク(編)こころのサポート映 像集.

静岡県臨床心理士会(2010)

 支援者のための災害後のこころのケアハンドブック 諏訪賀一(2013)日常性に向かって -長期派遣型カウ

ンセラーの視点から- 発達, 133, 31-38.

髙橋哲(2009)心のケアの今日的課題 杉村省吾、本 多修、冨永良喜、髙橋哲(編著)トラウマとPTSDの 心理援助 pp25-39, 金剛出版.

冨永良喜(2012)大災害と子どもの心 岩波書店.

渡部友晴(2013a)巡回型スクールカウンセラーによる心 理支援活動 小俣和義(編著)こころのケアの基本  pp.183-188, 北樹出版.

渡部友晴(2013b)災害後の心理支援としての表現活動  -東日本大震災で被災した地域の学校における「一

年をふりかえる」表現活動のとりくみ- 心身医学, 53, 653-659.

付記)本稿は、2014年1月8日、教育実践開発研究 センター主催で行った講演会(「東北の子どもたちは今

-スクールカウンセラーとしての活動の実際-」16:30 ~ 18:00)の内容を講師である岩手県巡回型スクールカウン セラーの渡部友晴氏ご自身に要約していただいたもので ある。

当日の講演会では後半部で、本学学生による東北教 育復興支援の一環である学習支援ボランティア経験の報 告会を合わせて行った。本学では、2011年より宮城教 育大学との連携に寄り、宮城県の被災地の学校で学習 支援を行うためのボランティア活動を推進し、9次派遣 まで行っている。今回の報告の中では、8、9次に宮城 県伊具群丸森町に派遣された大学院2回生浅田真琴さん と4回生白石卓也君によって小中学校での学習支援の様 子が語られた。

講演会後のアンケートでは、「生の写真と声がきけて、

現地の様子がよりリアルに伝わってきた。」「次回の活動 には是非参加してみたい」などが感想としてあげられた。

今後も教育大学のポテンシャルを生かした学習支援の活 動を通して、東北の教育復興支援の一助となることを願 うものである。

教育実践開発研究センター 教育臨床研究部門 市来百合子

参照

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