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新規な生理活性機能を有する金属錯体の開発

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Academic year: 2021

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プロジェクト名:新規な生理活性機能を有する金属錯体の開発

プロジェクト代表者:藤原 隆司(科学分析支援センター・准教授)

1 研究の目的

金属錯体の中でも白金錯体は抗がん作用をもつ機能性金属錯体と して知られており、構造式が右図のcis-[PtCl2(NH3)2]の錯体について は、古くから「シスプラチン」として使用されている。作用の原理 としては体内に摂取した白金錯体がDNAに結合することでその転写 を防ぐためであると言われている。基礎的な構造としてはアミン系 配位子の他に適宜有機物を組み合わせた形となっている。近年は副 作用や毒性を押さえるため、様々な種類の化合物が開発されている が、新規な有機物を組み合わせない限り、新しい化合物群への展開 は困難である。そこで、本研究で新規な有機物として、白金と親和 力の強いイオウ原子を配位原子にもつ有機物(本学で主に開発され

たもの)である両性イオン型イオウ系配位子(略号:RL、Rがエチル基であればEtLと表記する)

を配位子に持つ錯体を合成する。得られた錯体の構造解析を行い、電気化学的性質などを調べる。ま た、得られた錯体をさらに化学修飾することによって、その機能を高め、あるいは変化することを目 指す。

2 結果と考察

白金錯体を合成するに当たり、白金は平面4配位構造をとる白金(II)イオンをベースに用いた。さら に窒素系配位子として、ジアミノシクロヘキサン(dach)、あるいはビピリジン(bpy)系のものを用いた。両 性イオン型イオウ系配位子にはアルキル基がエチルのもの(EtL)を用いた。いくつかの錯体が得られたが、

特にビピリジン系のものについては単結晶が得られたので、その構造を明らかにするため単結晶X線構 造解析を行った。いくつかの白金錯体に関してはカルベニウムジチオカルボキシラートの硫黄原子一 つがフリーに存在することがわかった(Fig1, 2,構

造解析結果)。ジアミノシクロヘキサン配位子との 組み合わせで合成した錯体については、現在のとこ ろ多数の錯体が混合した状態であり、単離は困難で あるが、質量スペクトルやNMRスペクトルの結果 からシスプラチンと同様の構造を有する両性イオ ン型イオウ系配位子がキレート配位した形の cis-[Pt(dach)(EtL)]2+の存在が示唆された。しかし、

Fig.1 [{Pt(dmbpy)(EtL)}2(-EtL)](ClO4)4 (1)

Pt Cl

Cl NH

3

NH

3

シスプラチン

S

R

2

N S R

2

N + -

両性イオン型イオウ系配位子

(Rは各種有機置換基)

(2)

現段階では単結晶が得られておらず、目下単離および単結晶生成の検討中である。

しかし、推定される構造は制ガン剤として用いら れているものと同様のシス構造を有するため、制ガ ン剤として機能しうるなら生体内で EtL 配位子の 解離がおこり、DNA への結合が生じると考えられ るが、制ガン作用については現在実験方法などを含 めて検討中である。

また、得られた錯体について各種の分光学・電気 化学的測定により、電子状態を調べた。酸化還元挙

動,電子状態や溶存状態の構造について考察した。特に酸化還元挙動に関しては配位子の2電子還元が 1段階ずつ進行し,いずれの酸化還元過程においても化合物そのものが分解,化学変化しないことがわかった。こ のことは制ガン剤としての機能ばかりでなく、その酸化還元挙動に変化をもたらせることが期待される。また、カ ルベニウムジチオカルボキシラートの硫黄原子は求核、求電子試薬のいずれとも反応しうるため、硫黄 原子への種々の有機試薬による付加反応を検討することで、錯体としての機能のみならず、薬剤としての 溶解性や生体内における反応性などの新たな機能付加が期待される。現在予備的実験として、反応混合物 についてクロマト法などで分離し、各種機器分析によって生成物の同定を行っているところである。

関連発表論文:Kato, M.; Hida, K.; Fujihara,T.; Nagasawa,A.,” Ferromagnetic Spin Ladder System:

Stack of Chlorido-Bridged Dinuclear Copper(II) Complexes with 2-Methylisothiazol-3(2H)-one”, European Journal of Inorganic Chemistry, 495-502 (2011). Nakayama, J.; Iguchi, K.; Fujihara, T.,

“Atropisomerism of the 1,3-cyclohexadiene Derivatives Induced by Steric Congestion”, Phosphorus, Sulfur and Silicon and the Related Elements, 185, 1131-1141 (2010).

獲得した外部資金:本研究の成果である合成した錯体の電気化学的な知見の一部を元に計画立案し、

申請を行った科学研究費補助金(基盤研究(C)無機・有機ハイブリッドナノクラスターの協奏的レ ドックス機能(平成23年度~平成25年度・代表者:藤原隆司・総額420万円)が採択された。

Fig. 2 [Pt(dmbpy)(EtL)2](PF6)2 (2)

Pt

参照

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