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虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わる

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― 141 ―

Ⅰ.はじめに

 子ども虐待は年々増加傾向である。平成23年度も児童相 談所で対応した相談件数は59,862件(速報値)1)となり、

児童福祉施設に保護される子どもも少なくない。虐待によ る障害を負い継続的な医学的管理が必要となった子ども、

あるいは、長期的に濃厚な医学的管理が必要であるにもか かわらず、家族の養育能力が低く医療ネグレクトとして保 護された子どもは、児童福祉施設や障害児施設等へ入所し ている2)3)。子どもが保護された施設では多職種のチーム アプローチにより、子どもの権利を守り、健やかな成長を

願い、発達課題、身体状況、精神状況、家族状況にあっ たケアが提供される4)。虐待を受けた子どもへのケアは、

長期にわたる非虐待的かつ愛情のある環境調整が重要であ る5)

 しかし、虐待を受けた子どもは心理面や発達面への深刻 な影響から「他者への攻撃性」「身体的訴え」「社会性の 問題」などの行動上の問題を抱えることが多く6)7)、今日 の児童養護施設における重要な課題となっている8)。佐藤 ら9)は、「被虐待児に心理的なケアを行い、人間関係を 形成しようとすると、激しい行動化や情緒的問題を生じ、

施設職員の不安や無力感などを生じさせる」と指摘してい る。このような問題を抱える子どもとの関わりに困難感を もつ施設スタッフも多い。また、虐待を受けた子どもと家 族の絆を結びなおす家族再統合10)も重要な課題の一つであ る。松宮11)は、被虐待児の親のメンタルヘルスの問題を指 摘しており、被虐待児の親との関係構築の難しさを挙げて いる。これらの被虐待児と家族が抱える特有の問題により 困難感を抱く施設スタッフが多く、施設職員の早期離職12)

も指摘されている。

 多職種によるチームアプローチは、被虐待児や障害児 のような複雑な背景を抱える事例に対して効果的かつ効率 的にケアを提供できる。その一方で目指す方向性やゴール の共有の難しさ、専門性や価値観の相違による職種間の緊 張や対立13)が指摘されている。医学的な管理を必要とする 被虐待児の支援チームは、社会的対応をする児童相談所や ソーシャルワーカー、治療的対応をする医師、看護職や心 理職14)、日常生活ケアをする看護職や福祉職が混在する チームである。社会的対応と治療的対応をする専門職は、 ケースカンファレンスにおけるゴール設定場面に参加して いるが、日常生活ケアをするダイレクトケアスタッフ(以 下、スタッフ)は交代制勤務でありカンファレンスへの参 加も難しい。スタッフは情報共有の難しさを抱えつつ、特 別な配慮が必要である虐待の背景がある障害をもつ子ども とその家族に対して日常的に関わり、対応しなければなら ない。

 よって、本論文では、日常生活ケア場面においてダイレ クトケアスタッフが直面するチームアプローチにおける困 難を明らかにし、その困難を解決する方策の示唆を見いだ すことを意図した。

Ⅱ.研究目的

 本研究の目的は、児童福祉施設において、虐待の背景が ある障害をもつ子どもに関わるダイレクトケアスタッフが 日常生活ケア場面において感じる困難を明らかにし、チー ムアプローチの示唆を得ることである

Ⅲ.研究方法 1.対象

 児童福祉施設に勤務する看護師4名、保育士1名、社会福 祉士1名を対象とした。

 対象施設の管理者、およびスタッフの所属長に、研究主 旨を理解・同意の上、研究参加可能なスタッフを選出依頼 した。

2.方法

2−1.データ収集

 データ収集では、「印象に残っている被虐待児のケー ス」「そのケースに関わっている専門職」「ケースのケア で困難に感じた場面」「ケースへのケアについて多職種と 連携・協働することで困難に感じたこと」の項目を含む質 問紙の記載を依頼した。面接時に、質問紙の項目に沿いな がら半構造化面接を行った。面接の内容はメモ、または、 承諾を得られた参加者はICレコーダーに記録した。 2−2.データ分析

 データは以下の手順で分析した。

1)質問紙の記載内容と面接記録を文脈が損なわれない程 度にまとめ、簡略化した。

2)ケース毎にスタッフが困難を感じた場面を取り出して ケース個人が特定できないように状況を再構成した。 3)被虐待児と家族の特徴6)7)9)、健康上の配慮、チーム

医療の困難に関する細田の研究14)を参考にして整理 し、サブカテゴリーとした。これらをさらに抽象化し カテゴリーとした。

3.倫理的配慮

 本研究は、研究対象者の所属施設の倫理審査の承認を受 けて実施した。

 対象者への保護として、発言内容による勤務への支障は 生じないこと等を文章にて提示し、同意を得た。

 語られたケースについては、ケースが特定できないよう にケースの詳細に関する個別のデータは収集せず一般化し て提示し、研究対象者が困難に感じた場面や状況について は、個人が特定できないように再構成して提示した。

Ⅳ.結果 1.概要

 研究対象者が語った被虐待児は数ヶ月以内に関わった3 ケースであった(表1)。

 ケースAは、幼児期の女児で医療処置を要する慢性疾患 があり、医療ネグレクトにより長期入所していた。ケース Bは、学童期の男児で医療処置を要する慢性疾患があり、 身体虐待により長期入所していた。ケースCは、学童期の 男児であり運動機能障害と知的障害があり、母親のメンタ ルヘルスの問題に起因するネグレクトにより長期入所して いた。

2.スタッフが対応に困難した場面や状況

 語られた被虐待児3ケースについて、ケース毎にスタッ フが日常生活ケアで困難に感じた具体的な場面や状況を示 した。

1)ケースA

<場面1>

 母親がAさんの誕生日のお祝いで来棟した。しかし、A さんが母親の面会を喜ばず母親に抱っこされても表情がな

かった。他のスタッフもいるのに、受持ち看護師であった 研究対象者に助けを求めるように見つめてきた。

 このような場面に際してスタッフは、子どもとの絆を深 めようと来院した母親の気持ちも大事にしたいし、母親に 対する複雑な子どもの気持ちもわかる、こういう時に、受 持ち看護師でもある自分が、スタッフとしてどのような行 動をとればいいかわからなかった、という困難を感じてい た。

<場面2>

 ケアや処置の時に「◯◯さん(研究対象者)がいい」 と、お気に入りのスタッフを指名し、意が通らないと駄々 をこねる。他のスタッフのケアを拒否し自分が指名された 時にどのように対応したらよいか困ってしまった。  このような場面に際してスタッフは、テスティング行動 は被虐待児特有の行動であることを共有しているものの、

「将来を考えて過度なわがままは許してはいけない」とい う他の専門職もいる、親ではない自分にどこまで甘えさせ ていいのかわからなかった、という困難を感じていた。

<場面3>

 Aさんは慢性疾患、内部障害のために易疲労がある。保 育活動中に保育士や他児と院内外を散歩中に疲れた様子で 座り込んでしまっていた。他児に先に行かれてしまってい る場面に遭遇した。

 このような場面に際してスタッフは、他児と同じペースで はついていけない体力であるAさんの病気や障害、安静度 について、チームカンファレンスで話し合っていたが共有 できておらず、保育士は、被虐待児だからこそ保育の場面 では他児と同じ対応が必要であると考えていることがわか り、職種が違うと捉え方が異なっていたので、どのように その場で伝えればいいか困った、という困難を感じていた。 2)ケースB

<場面1>

 慢性疾患のフォロー先の病院受診に付き添った。その 時に、慢性疾患に対して手術による治療と自己注射による 毎日の処置が必要となり、本人と家族の意思決定が必要と なった。しかし、今すぐ家族とは連絡がとれない状況で あった。本人に説明し、本人が理解し納得して治療を選択 できるような支援も必要であった。

 このような場面に際し、健康に過ごすために手術や治療が 必要となり、今後の方針を考えなければいけなくなったため 受持ち看護師として、子どもの健康上の問題に対応しなけ ればならず、どこまで子どもの健康に関することに主体的 に関わってよいかわからなかった。児童相談所の担当者と も相談するべきだろうか、また、どのように本人に説明す るのがよいのかわからなかった、という困難を感じていた。

<場面2>

 Bさんは他児の外泊日前後になると気持ちが不安定にな る、ということがあった。

 このような場面に際してスタッフは、被虐待児特有の 不安定さなので、担当である自分がゆっくりかかわって安 心させてあげたいが、他児のケアもありゆっくり関われな い、という困難を感じていた。

<場面3>

 Bさんは、スタッフの目の届かないところで小さい子ど もをつねるなど、被虐待児特有の困った行動をしていた。  このような場面に際してスタッフは、被虐待児特有の行 動上の問題に対するケアや対応を統一しなければいけない が、スタッフ間で話しあいをもつ時間がとれず、不統一な 対応となってしまっていた、と困難を感じていた。

<場面4>

 Bさんの家族状況は児童相談所が把握し当該施設へ連絡 がある。しかし、家族の状況の変化について、外部機関 との連絡窓口である指導員は知っていたが、スタッフに伝 わっていなく、家族からの電話に適切に応えられず、家族 に不信感を抱かせてしまった。

 このような場面に際してスタッフは、家族状況の変化 がある場合には、ダイレクトケアスアッフも含めて情報を 共有し家族状況を理解しておくべきであったが、適時に情 報を得ることが難しく、急な電話への対応に困ってしまっ た、という困難を感じていた。

3)ケースC

<場面1>

 Cさんの母親が連絡なく突然来院した。母親にはメンタ ルヘルスの問題がありほとんど面会はない。しかし、連絡 なく突然来院することがある。Cさんは母親の姿をみてと ても喜んだ。しかし、母親はCさんには関わらず、すぐに 帰ってしまった。

 このような場面に際してスタッフは、来院したという ことは母親の精神面が落ち着いている時であるので、この チャンスを活かし、母親の気持ちが離れすぎないようにし たい、しかし、まれにしか来院しないので、実際の場面で 意図的に関わることが難しい、長期入所になっているの で、親子の距離を近づける役割をとることも必要であるが、 誰がどのようにするのか決まっていないので、いざとなる と困る、という困難を感じていた。

3.虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わる際にダイ レクトケアスタッフが感じる困難

 スタッフが感じた困難な場面や状況を、類似した内容 でまとめ集約し7つのサブカテゴリーに整理した。その後 に、細田のチーム医療の要素14)を参考にし、チーム内にお けるスタッフの態度に着目して『ダイレクトケアスタッフ が虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わる際に感じる 困難』として2つのカテゴリーに分類した(表2)。  カテゴリー1は、【ケース個別の課題に対して最善のケ アを提供しようとする際に生じる困難】であった。これに

は、“親子の絆をつないでおくために、親子の距離や関係 性を推し量りながら親子それぞれに異なる配慮をしなけれ ばならない”、“子ども個々の健康問題に対する配慮をしな ければならない”、“発達課題への支援とトラウマやストレ スへの配慮の両立が難しい”、が含まれた。スタッフは、 虐待の背景があり、かつ健康上の配慮が必要な障害のある 子どもとその家族に対して、それぞれの専門性を活かした 最善のケアを提供しようしていた。しかし、日常生活ケア 場面でその場での対応や判断を求められたこと、具体的な 対処が見つからないことや、専門職間の価値が対立したこ とに葛藤や緊張を感じていた。

 カテゴリー2は、【ケース個別の課題を適時に共有でき ないことによる困難】であった。これには、“状況に応じ た判断が求められても、チームでの合意がなく判断、意思 決定できない”、“チーム内での自分と子どもとの関係性、 距離感が難しい”、“困った行動や社会性への支援に関する 専門職間の価値観のずれ”、“ケアの一貫性が保ちにくく、 容易にケア内容がずれていく”が含まれた。スタッフは日 常生活ケアにおいて、チームメンバーとの協働を求められ ている。チームメンバーとしての役割を自覚、意識するか らこそ葛藤や緊張を感じていた。

Ⅴ.考察

1.虐待の背景のある障害をもつ子どもに関わる際にダイ レクトケアスタッフが感じる困難

 【ケース個別の課題に対して最善のケアを提供しようと する際に生じる困難】は、細田14)が指摘している、専門職 として独自のアセスメントとケアを実践しその場で専門職 であろうとする「専門職志向」と、その場その状況に応じ て患者中心であろうとする「患者志向」によって、個人内 で生じる緊張や価値の対立であると考えられた。事例の場 面は、被虐待児が抱える心理・行動的な問題、家族の再統 合の問題に、健康問題への配慮が加わっていることが特徴 である。スタッフは、これまでの経験や自己の価値観、専 門職としての価値観と照らし、向き合いながらその子と家 族の権利を守る最善のケアを提供しなければならない。若 井15)は、児童福祉施設(乳児院)における専門職の意欲に 影響する要因として、“専門性が発揮できる職場関係”、“子 どもおよび家族との信頼関係を築くことができた喜び”を 含む「役割遂行ができた達成感の獲得」の重要性を示唆し た。よって、役割遂行に必要な専門職としての経験の積み 重ねにより価値観を明確にし、日頃のケアを振り返りなが ら実践を通してスキルを磨くことが必要であろう。

連絡先:池邉 敏子 [email protected] 1)千葉県看護協会看護師職能委員会

Chiba Nursing Association

2)千葉科学大学 新学部設置準備室

New Faculty Establishment and Planning Office, Chiba Institute of Science

(2012年10月1日受付,2012年12月25日受理)

 日常生活ケアを専門とするスタッフは、被虐待児の心理 的ケアの専門性は問われない立場である。非心理職が期せ ずして心理的ケアが必要な場面に直面することにより、ケ アの重要性を改めて認識すると考えられた。高田16)は、児 童福祉施設における心理職と福祉職の役割認識と現状認識 を調査した結果、心理職は「個別的心理支援」と役割認識 し、「心理職の役割が未確立である」と現状認識している こと、福祉職は「包括的生活支援」と役割認識し、「福祉 職としての専門的アイデンティティの未確立と模索」と現 状認識している、と報告した。そして、相互理解と専門性 を活かした質の高い連携の必要性を述べつつも、両者の協 働は「今後の課題である」と報告した。また、鎌田ら17)

は、「個別的な関わりが重要視される児童に対して、集団 処遇しかできない人数体制があり、施設職員はその現状に 大きな葛藤がある」と報告し、「葛藤を共有できる集団の 形成や、葛藤を肯定的に意味づけする支援の必要性」を示 唆した。

 児童福祉施設において、心理職とダイレクトケアスタッ フが協働する方策については未確立の段階であるが、予測 できる困難をあらかじめ抽出し、協働で対応策を検討する 作業を通して、専門性を高め、スキルを磨くことは可能で あろうと考える。

 【ケース個別の課題を適時に共有できないことによる困 難】は、自分が直面した場面に関して適切な職種が支援す べきといった「職種構成志向」14)と、チームでの合意がな い中で個人判断による実践はできない、と考える「協働 志向」14)により生じた緊張であると考える。増沢18)は、

「施設の援助者関係̶良好なチームを目指して−」という 論文の中で、「虐待の受けた子どもが抱える問題の深刻さ により、援助者の中に『火種』、すなわち、子どもに対す る負の感情や、スタッフ間・職種間の競争意識、過度な自 信、支配傾向、自分の関わりのせいで子どものケアがうま くいかないと思いこむようなスタッフの被害感がある」と 指摘しており、ケース個別の課題を適時に共有する難しさ を支持すると考える。

 上記より、スタッフは日常生活ケアにおいて虐待の背景 がある障害をもつ子どものケアに関連する重要な場面に期 せずして遭遇し、自身の専門性、チームの中での役割、役 割分担や協働の有り様に向き合うこととなり、心的な緊張 状態が高まり困難と感じていると考察した。

2.日常生活ケア場面における多職種チームアプローチの 特徴

 本研究で取り上げた場面は、日常生活ケア場面として、

重要であるが緊急ではない出来事として日常の中に埋もれ やすく、スタッフが感じる困難が外在化されにくいと考え る。また、シフト性の勤務であることや、職種による教育 背景の違い、所属の違いによる命令系統・情報伝達ライン

も異なることにより、チームとしての情報の共有や、ゴー ルの明確化、共有そのものにも課題がある。草野19)は、医 療におけるチーム形成に際してチームリーダーの重要性を 指摘しているが、本場面からはリーダーの存在も浮かび上 がらず、チームリーダー不在があった。これらは、「日常 生活ケア」という治療的介入ではない多職種チームアプ ローチの特徴であると考えられた。

3.虐待の背景がある障害をもつ子どもの日常生活ケア場 面におけるチームアプローチへの示唆

 虐待の背景がある障害をもつ子どもの日常生活ケア場面 においてスタッフには、自身の専門性が問われることや、

ケース個別の課題の共有の難しさに向き合うことで感じる 困難があった。これらの困難には、日常生活ケア場面の特 徴が影響していると考えられた。日常生活ケア場面で多様 なニーズをもつ対象をチームでケアするには、「上級実践 看護者(日本における専門看護師)の実践能力が重要であ る」20)という、米国の在宅高齢者への学際的な多職種チーム アプローチの報告があり、実践の示唆になると考えられた。

 よって、これまでの検討から個々の被虐待児とその家族 の特性や課題にそって、考えられる困難場面を想定して具 体的な役割分担や対応の方向性、行動を検討し、専門性を 高め、スキルを磨き、上級実践看護師等によるリーダーが チーム形成を支援しながらチームとして機能を高める実践 が示唆された。

Ⅵ.結論

 虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わるダイレクト ケアスタッフがチームアプローチの際に感じる困難には、

ケース個別の課題に対して最善のケアを提供しようとする 際に生じる困難と、ケース個別の課題を適時に共有できな いことによる困難があった。

 スタッフは、日常生活ケアにおいて期せずして場面に遭 遇し、自身の専門性、価値、チームの中での役割・位置づ け、役割分担や協働の有り様に向き合うこととなり、心的 な緊張状態が高まり困難と感じていた。

 困難場面を想定し、具体的な行動をチームで話し合いな がら、個々の専門的なスキルを磨くことや、チームとして の機能を高めていく必要性が示唆された。

Ⅶ.おわりに

 本研究は、研究対象者が6名で職種も限られていたため 一般化の限界はある。しかし、日常生活ケア場面で遭遇し やすく、かつ外在化しにくい場面や状況が語られたと考え る。よって、このような事象を浮き彫りにすることができ たのではないかと考える。本研究の結果を題材にして、各 施設、各ユニットでの話し合いが促進され、一人ひとりの ケアが深まることを期待する。

虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わる

ダイレクトケアスタッフがチームアプローチの際に感じる困難

Difficulty of team approach caring for children with abused and handicapped

in child welfare facility

市原 真穂

1)

・池邉 敏子

2)

Maho ICHIHARA and Toshiko IKEBE

千葉科学大学紀要 6.141‑146.2013

【報告】

 本研究の目的は、児童福祉施設において虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わるダイレクトケアス タッフ(以下、スタッフ)が、日常生活ケア場面において感じる困難を明らかにし、チームアプローチの示 唆を得ることである。看護師、保育士、社会福祉士6名に面接し得られた3ケース8場面を基に、スタッフが感 じる困難を、被虐待児とその家族の特徴、健康問題、チーム医療上の困難の視点で整理、分類した。その結 果、「ケース個別の課題に対して最善のケアを提供しようとする際に生じる困難」と、「ケース個別の課題 を適時に共有できないことによる困難」が抽出された。

 スタッフは日常生活ケアの場面で困難に直面することにより、専門性、チームの中での役割、チームとの 協働の有り様に向き合うことになり、心的な緊張状態が高まり困難を感じると考えられた。困難場面を想定 し、具体的な行動をチームで話し合いながら専門的なスキルを磨くことや、チームとしての機能を高めてい く必要性が示唆された。

(2)

― 142 ―

発達段階 入所形態と その理由 家族 身体状況

施設内の チームメンバー

幼児期 措置による長期入所 医療ネグレクト 祖母、母親 慢性疾患による 内部障害

医師、看護師 保育士 指導員(社会福祉士)

臨床心理士 ケース A

学童期 措置による長期入所 身体虐待、ネグレクト 両親、兄弟 慢性疾患による 内部障害 医師、看護師 保育士 指導員(社会福祉士)

臨床心理士 教員

ケース B

学童期 契約による長期入所 ネグレクト 母親 運動機能障害 知的障害 医師、看護師 保育士指導員(社会福祉士)

理学療法士 作業療法士 言語療法士 臨床心理士 教員

ケース C

Ⅰ.はじめに

 子ども虐待は年々増加傾向である。平成23年度も児童相 談所で対応した相談件数は59,862件(速報値)1)となり、

児童福祉施設に保護される子どもも少なくない。虐待によ る障害を負い継続的な医学的管理が必要となった子ども、

あるいは、長期的に濃厚な医学的管理が必要であるにもか かわらず、家族の養育能力が低く医療ネグレクトとして保 護された子どもは、児童福祉施設や障害児施設等へ入所し ている2)3)。子どもが保護された施設では多職種のチーム アプローチにより、子どもの権利を守り、健やかな成長を

願い、発達課題、身体状況、精神状況、家族状況にあっ たケアが提供される4)。虐待を受けた子どもへのケアは、

長期にわたる非虐待的かつ愛情のある環境調整が重要であ る5)

 しかし、虐待を受けた子どもは心理面や発達面への深刻 な影響から「他者への攻撃性」「身体的訴え」「社会性の 問題」などの行動上の問題を抱えることが多く6)7)、今日 の児童養護施設における重要な課題となっている8)。佐藤 ら9)は、「被虐待児に心理的なケアを行い、人間関係を 形成しようとすると、激しい行動化や情緒的問題を生じ、

施設職員の不安や無力感などを生じさせる」と指摘してい る。このような問題を抱える子どもとの関わりに困難感を もつ施設スタッフも多い。また、虐待を受けた子どもと家 族の絆を結びなおす家族再統合10)も重要な課題の一つであ る。松宮11)は、被虐待児の親のメンタルヘルスの問題を指 摘しており、被虐待児の親との関係構築の難しさを挙げて いる。これらの被虐待児と家族が抱える特有の問題により 困難感を抱く施設スタッフが多く、施設職員の早期離職12)

市原 真穂・池邉 敏子

も指摘されている。

 多職種によるチームアプローチは、被虐待児や障害児 のような複雑な背景を抱える事例に対して効果的かつ効率 的にケアを提供できる。その一方で目指す方向性やゴール の共有の難しさ、専門性や価値観の相違による職種間の緊 張や対立13)が指摘されている。医学的な管理を必要とする 被虐待児の支援チームは、社会的対応をする児童相談所や ソーシャルワーカー、治療的対応をする医師、看護職や心 理職14)、日常生活ケアをする看護職や福祉職が混在する チームである。社会的対応と治療的対応をする専門職は、

ケースカンファレンスにおけるゴール設定場面に参加して いるが、日常生活ケアをするダイレクトケアスタッフ(以 下、スタッフ)は交代制勤務でありカンファレンスへの参 加も難しい。スタッフは情報共有の難しさを抱えつつ、特 別な配慮が必要である虐待の背景がある障害をもつ子ども とその家族に対して日常的に関わり、対応しなければなら ない。

 よって、本論文では、日常生活ケア場面においてダイレ クトケアスタッフが直面するチームアプローチにおける困 難を明らかにし、その困難を解決する方策の示唆を見いだ すことを意図した。

Ⅱ.研究目的

 本研究の目的は、児童福祉施設において、虐待の背景が ある障害をもつ子どもに関わるダイレクトケアスタッフが 日常生活ケア場面において感じる困難を明らかにし、チー ムアプローチの示唆を得ることである

Ⅲ.研究方法 1.対象

 児童福祉施設に勤務する看護師4名、保育士1名、社会福 祉士1名を対象とした。

 対象施設の管理者、およびスタッフの所属長に、研究主 旨を理解・同意の上、研究参加可能なスタッフを選出依頼 した。

2.方法

2−1.データ収集

 データ収集では、「印象に残っている被虐待児のケー ス」「そのケースに関わっている専門職」「ケースのケア で困難に感じた場面」「ケースへのケアについて多職種と 連携・協働することで困難に感じたこと」の項目を含む質 問紙の記載を依頼した。面接時に、質問紙の項目に沿いな がら半構造化面接を行った。面接の内容はメモ、または、

承諾を得られた参加者はICレコーダーに記録した。

2−2.データ分析

 データは以下の手順で分析した。

1)質問紙の記載内容と面接記録を文脈が損なわれない程 度にまとめ、簡略化した。

2)ケース毎にスタッフが困難を感じた場面を取り出して ケース個人が特定できないように状況を再構成した。

3)被虐待児と家族の特徴6)7)9)、健康上の配慮、チーム 医療の困難に関する細田の研究14)を参考にして整理 し、サブカテゴリーとした。これらをさらに抽象化し カテゴリーとした。

3.倫理的配慮

 本研究は、研究対象者の所属施設の倫理審査の承認を受 けて実施した。

 対象者への保護として、発言内容による勤務への支障は 生じないこと等を文章にて提示し、同意を得た。

 語られたケースについては、ケースが特定できないよう にケースの詳細に関する個別のデータは収集せず一般化し て提示し、研究対象者が困難に感じた場面や状況について は、個人が特定できないように再構成して提示した。

Ⅳ.結果 1.概要

 研究対象者が語った被虐待児は数ヶ月以内に関わった3 ケースであった(表1)。

 ケースAは、幼児期の女児で医療処置を要する慢性疾患 があり、医療ネグレクトにより長期入所していた。ケース Bは、学童期の男児で医療処置を要する慢性疾患があり、

身体虐待により長期入所していた。ケースCは、学童期の 男児であり運動機能障害と知的障害があり、母親のメンタ ルヘルスの問題に起因するネグレクトにより長期入所して いた。

2.スタッフが対応に困難した場面や状況

 語られた被虐待児3ケースについて、ケース毎にスタッ フが日常生活ケアで困難に感じた具体的な場面や状況を示 した。

1)ケースA

<場面1>

 母親がAさんの誕生日のお祝いで来棟した。しかし、A さんが母親の面会を喜ばず母親に抱っこされても表情がな

かった。他のスタッフもいるのに、受持ち看護師であった 研究対象者に助けを求めるように見つめてきた。

 このような場面に際してスタッフは、子どもとの絆を深 めようと来院した母親の気持ちも大事にしたいし、母親に 対する複雑な子どもの気持ちもわかる、こういう時に、受 持ち看護師でもある自分が、スタッフとしてどのような行 動をとればいいかわからなかった、という困難を感じてい た。

<場面2>

 ケアや処置の時に「◯◯さん(研究対象者)がいい」 と、お気に入りのスタッフを指名し、意が通らないと駄々 をこねる。他のスタッフのケアを拒否し自分が指名された 時にどのように対応したらよいか困ってしまった。  このような場面に際してスタッフは、テスティング行動 は被虐待児特有の行動であることを共有しているものの、

「将来を考えて過度なわがままは許してはいけない」とい う他の専門職もいる、親ではない自分にどこまで甘えさせ ていいのかわからなかった、という困難を感じていた。

<場面3>

 Aさんは慢性疾患、内部障害のために易疲労がある。保 育活動中に保育士や他児と院内外を散歩中に疲れた様子で 座り込んでしまっていた。他児に先に行かれてしまってい る場面に遭遇した。

 このような場面に際してスタッフは、他児と同じペースで はついていけない体力であるAさんの病気や障害、安静度 について、チームカンファレンスで話し合っていたが共有 できておらず、保育士は、被虐待児だからこそ保育の場面 では他児と同じ対応が必要であると考えていることがわか り、職種が違うと捉え方が異なっていたので、どのように その場で伝えればいいか困った、という困難を感じていた。 2)ケースB

<場面1>

 慢性疾患のフォロー先の病院受診に付き添った。その 時に、慢性疾患に対して手術による治療と自己注射による 毎日の処置が必要となり、本人と家族の意思決定が必要と なった。しかし、今すぐ家族とは連絡がとれない状況で あった。本人に説明し、本人が理解し納得して治療を選択 できるような支援も必要であった。

 このような場面に際し、健康に過ごすために手術や治療が 必要となり、今後の方針を考えなければいけなくなったため 受持ち看護師として、子どもの健康上の問題に対応しなけ ればならず、どこまで子どもの健康に関することに主体的 に関わってよいかわからなかった。児童相談所の担当者と も相談するべきだろうか、また、どのように本人に説明す るのがよいのかわからなかった、という困難を感じていた。

<場面2>

 Bさんは他児の外泊日前後になると気持ちが不安定にな る、ということがあった。

 このような場面に際してスタッフは、被虐待児特有の 不安定さなので、担当である自分がゆっくりかかわって安 心させてあげたいが、他児のケアもありゆっくり関われな い、という困難を感じていた。

<場面3>

 Bさんは、スタッフの目の届かないところで小さい子ど もをつねるなど、被虐待児特有の困った行動をしていた。  このような場面に際してスタッフは、被虐待児特有の行 動上の問題に対するケアや対応を統一しなければいけない が、スタッフ間で話しあいをもつ時間がとれず、不統一な 対応となってしまっていた、と困難を感じていた。

<場面4>

 Bさんの家族状況は児童相談所が把握し当該施設へ連絡 がある。しかし、家族の状況の変化について、外部機関 との連絡窓口である指導員は知っていたが、スタッフに伝 わっていなく、家族からの電話に適切に応えられず、家族 に不信感を抱かせてしまった。

 このような場面に際してスタッフは、家族状況の変化 がある場合には、ダイレクトケアスアッフも含めて情報を 共有し家族状況を理解しておくべきであったが、適時に情 報を得ることが難しく、急な電話への対応に困ってしまっ た、という困難を感じていた。

3)ケースC

<場面1>

 Cさんの母親が連絡なく突然来院した。母親にはメンタ ルヘルスの問題がありほとんど面会はない。しかし、連絡 なく突然来院することがある。Cさんは母親の姿をみてと ても喜んだ。しかし、母親はCさんには関わらず、すぐに 帰ってしまった。

 このような場面に際してスタッフは、来院したという ことは母親の精神面が落ち着いている時であるので、この チャンスを活かし、母親の気持ちが離れすぎないようにし たい、しかし、まれにしか来院しないので、実際の場面で 意図的に関わることが難しい、長期入所になっているの で、親子の距離を近づける役割をとることも必要であるが、 誰がどのようにするのか決まっていないので、いざとなる と困る、という困難を感じていた。

3.虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わる際にダイ レクトケアスタッフが感じる困難

 スタッフが感じた困難な場面や状況を、類似した内容 でまとめ集約し7つのサブカテゴリーに整理した。その後 に、細田のチーム医療の要素14)を参考にし、チーム内にお けるスタッフの態度に着目して『ダイレクトケアスタッフ が虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わる際に感じる 困難』として2つのカテゴリーに分類した(表2)。  カテゴリー1は、【ケース個別の課題に対して最善のケ アを提供しようとする際に生じる困難】であった。これに

は、“親子の絆をつないでおくために、親子の距離や関係 性を推し量りながら親子それぞれに異なる配慮をしなけれ ばならない”、“子ども個々の健康問題に対する配慮をしな ければならない”、“発達課題への支援とトラウマやストレ スへの配慮の両立が難しい”、が含まれた。スタッフは、 虐待の背景があり、かつ健康上の配慮が必要な障害のある 子どもとその家族に対して、それぞれの専門性を活かした 最善のケアを提供しようしていた。しかし、日常生活ケア 場面でその場での対応や判断を求められたこと、具体的な 対処が見つからないことや、専門職間の価値が対立したこ とに葛藤や緊張を感じていた。

 カテゴリー2は、【ケース個別の課題を適時に共有でき ないことによる困難】であった。これには、“状況に応じ た判断が求められても、チームでの合意がなく判断、意思 決定できない”、“チーム内での自分と子どもとの関係性、 距離感が難しい”、“困った行動や社会性への支援に関する 専門職間の価値観のずれ”、“ケアの一貫性が保ちにくく、 容易にケア内容がずれていく”が含まれた。スタッフは日 常生活ケアにおいて、チームメンバーとの協働を求められ ている。チームメンバーとしての役割を自覚、意識するか らこそ葛藤や緊張を感じていた。

Ⅴ.考察

1.虐待の背景のある障害をもつ子どもに関わる際にダイ レクトケアスタッフが感じる困難

 【ケース個別の課題に対して最善のケアを提供しようと する際に生じる困難】は、細田14)が指摘している、専門職 として独自のアセスメントとケアを実践しその場で専門職 であろうとする「専門職志向」と、その場その状況に応じ て患者中心であろうとする「患者志向」によって、個人内 で生じる緊張や価値の対立であると考えられた。事例の場 面は、被虐待児が抱える心理・行動的な問題、家族の再統 合の問題に、健康問題への配慮が加わっていることが特徴 である。スタッフは、これまでの経験や自己の価値観、専 門職としての価値観と照らし、向き合いながらその子と家 族の権利を守る最善のケアを提供しなければならない。若 井15)は、児童福祉施設(乳児院)における専門職の意欲に 影響する要因として、“専門性が発揮できる職場関係”、“子 どもおよび家族との信頼関係を築くことができた喜び”を 含む「役割遂行ができた達成感の獲得」の重要性を示唆し た。よって、役割遂行に必要な専門職としての経験の積み 重ねにより価値観を明確にし、日頃のケアを振り返りなが ら実践を通してスキルを磨くことが必要であろう。

表1 語られたケースの概要

 日常生活ケアを専門とするスタッフは、被虐待児の心理 的ケアの専門性は問われない立場である。非心理職が期せ ずして心理的ケアが必要な場面に直面することにより、ケ アの重要性を改めて認識すると考えられた。高田16)は、児 童福祉施設における心理職と福祉職の役割認識と現状認識 を調査した結果、心理職は「個別的心理支援」と役割認識 し、「心理職の役割が未確立である」と現状認識している こと、福祉職は「包括的生活支援」と役割認識し、「福祉 職としての専門的アイデンティティの未確立と模索」と現 状認識している、と報告した。そして、相互理解と専門性 を活かした質の高い連携の必要性を述べつつも、両者の協 働は「今後の課題である」と報告した。また、鎌田ら17)

は、「個別的な関わりが重要視される児童に対して、集団 処遇しかできない人数体制があり、施設職員はその現状に 大きな葛藤がある」と報告し、「葛藤を共有できる集団の 形成や、葛藤を肯定的に意味づけする支援の必要性」を示 唆した。

 児童福祉施設において、心理職とダイレクトケアスタッ フが協働する方策については未確立の段階であるが、予測 できる困難をあらかじめ抽出し、協働で対応策を検討する 作業を通して、専門性を高め、スキルを磨くことは可能で あろうと考える。

 【ケース個別の課題を適時に共有できないことによる困 難】は、自分が直面した場面に関して適切な職種が支援す べきといった「職種構成志向」14)と、チームでの合意がな い中で個人判断による実践はできない、と考える「協働 志向」14)により生じた緊張であると考える。増沢18)は、

「施設の援助者関係̶良好なチームを目指して−」という 論文の中で、「虐待の受けた子どもが抱える問題の深刻さ により、援助者の中に『火種』、すなわち、子どもに対す る負の感情や、スタッフ間・職種間の競争意識、過度な自 信、支配傾向、自分の関わりのせいで子どものケアがうま くいかないと思いこむようなスタッフの被害感がある」と 指摘しており、ケース個別の課題を適時に共有する難しさ を支持すると考える。

 上記より、スタッフは日常生活ケアにおいて虐待の背景 がある障害をもつ子どものケアに関連する重要な場面に期 せずして遭遇し、自身の専門性、チームの中での役割、役 割分担や協働の有り様に向き合うこととなり、心的な緊張 状態が高まり困難と感じていると考察した。

2.日常生活ケア場面における多職種チームアプローチの 特徴

 本研究で取り上げた場面は、日常生活ケア場面として、

重要であるが緊急ではない出来事として日常の中に埋もれ やすく、スタッフが感じる困難が外在化されにくいと考え る。また、シフト性の勤務であることや、職種による教育 背景の違い、所属の違いによる命令系統・情報伝達ライン

も異なることにより、チームとしての情報の共有や、ゴー ルの明確化、共有そのものにも課題がある。草野19)は、医 療におけるチーム形成に際してチームリーダーの重要性を 指摘しているが、本場面からはリーダーの存在も浮かび上 がらず、チームリーダー不在があった。これらは、「日常 生活ケア」という治療的介入ではない多職種チームアプ ローチの特徴であると考えられた。

3.虐待の背景がある障害をもつ子どもの日常生活ケア場 面におけるチームアプローチへの示唆

 虐待の背景がある障害をもつ子どもの日常生活ケア場面 においてスタッフには、自身の専門性が問われることや、

ケース個別の課題の共有の難しさに向き合うことで感じる 困難があった。これらの困難には、日常生活ケア場面の特 徴が影響していると考えられた。日常生活ケア場面で多様 なニーズをもつ対象をチームでケアするには、「上級実践 看護者(日本における専門看護師)の実践能力が重要であ る」20)という、米国の在宅高齢者への学際的な多職種チーム アプローチの報告があり、実践の示唆になると考えられた。

 よって、これまでの検討から個々の被虐待児とその家族 の特性や課題にそって、考えられる困難場面を想定して具 体的な役割分担や対応の方向性、行動を検討し、専門性を 高め、スキルを磨き、上級実践看護師等によるリーダーが チーム形成を支援しながらチームとして機能を高める実践 が示唆された。

Ⅵ.結論

 虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わるダイレクト ケアスタッフがチームアプローチの際に感じる困難には、

ケース個別の課題に対して最善のケアを提供しようとする 際に生じる困難と、ケース個別の課題を適時に共有できな いことによる困難があった。

 スタッフは、日常生活ケアにおいて期せずして場面に遭 遇し、自身の専門性、価値、チームの中での役割・位置づ け、役割分担や協働の有り様に向き合うこととなり、心的 な緊張状態が高まり困難と感じていた。

 困難場面を想定し、具体的な行動をチームで話し合いな がら、個々の専門的なスキルを磨くことや、チームとして の機能を高めていく必要性が示唆された。

Ⅶ.おわりに

 本研究は、研究対象者が6名で職種も限られていたため 一般化の限界はある。しかし、日常生活ケア場面で遭遇し やすく、かつ外在化しにくい場面や状況が語られたと考え る。よって、このような事象を浮き彫りにすることができ たのではないかと考える。本研究の結果を題材にして、各 施設、各ユニットでの話し合いが促進され、一人ひとりの ケアが深まることを期待する。

(3)

― 143 ―

Ⅰ.はじめに

 子ども虐待は年々増加傾向である。平成23年度も児童相 談所で対応した相談件数は59,862件(速報値)1)となり、

児童福祉施設に保護される子どもも少なくない。虐待によ る障害を負い継続的な医学的管理が必要となった子ども、

あるいは、長期的に濃厚な医学的管理が必要であるにもか かわらず、家族の養育能力が低く医療ネグレクトとして保 護された子どもは、児童福祉施設や障害児施設等へ入所し ている2)3)。子どもが保護された施設では多職種のチーム アプローチにより、子どもの権利を守り、健やかな成長を

願い、発達課題、身体状況、精神状況、家族状況にあっ たケアが提供される4)。虐待を受けた子どもへのケアは、

長期にわたる非虐待的かつ愛情のある環境調整が重要であ る5)

 しかし、虐待を受けた子どもは心理面や発達面への深刻 な影響から「他者への攻撃性」「身体的訴え」「社会性の 問題」などの行動上の問題を抱えることが多く6)7)、今日 の児童養護施設における重要な課題となっている8)。佐藤 ら9)は、「被虐待児に心理的なケアを行い、人間関係を 形成しようとすると、激しい行動化や情緒的問題を生じ、

施設職員の不安や無力感などを生じさせる」と指摘してい る。このような問題を抱える子どもとの関わりに困難感を もつ施設スタッフも多い。また、虐待を受けた子どもと家 族の絆を結びなおす家族再統合10)も重要な課題の一つであ る。松宮11)は、被虐待児の親のメンタルヘルスの問題を指 摘しており、被虐待児の親との関係構築の難しさを挙げて いる。これらの被虐待児と家族が抱える特有の問題により 困難感を抱く施設スタッフが多く、施設職員の早期離職12)

も指摘されている。

 多職種によるチームアプローチは、被虐待児や障害児 のような複雑な背景を抱える事例に対して効果的かつ効率 的にケアを提供できる。その一方で目指す方向性やゴール の共有の難しさ、専門性や価値観の相違による職種間の緊 張や対立13)が指摘されている。医学的な管理を必要とする 被虐待児の支援チームは、社会的対応をする児童相談所や ソーシャルワーカー、治療的対応をする医師、看護職や心 理職14)、日常生活ケアをする看護職や福祉職が混在する チームである。社会的対応と治療的対応をする専門職は、

ケースカンファレンスにおけるゴール設定場面に参加して いるが、日常生活ケアをするダイレクトケアスタッフ(以 下、スタッフ)は交代制勤務でありカンファレンスへの参 加も難しい。スタッフは情報共有の難しさを抱えつつ、特 別な配慮が必要である虐待の背景がある障害をもつ子ども とその家族に対して日常的に関わり、対応しなければなら ない。

 よって、本論文では、日常生活ケア場面においてダイレ クトケアスタッフが直面するチームアプローチにおける困 難を明らかにし、その困難を解決する方策の示唆を見いだ すことを意図した。

Ⅱ.研究目的

 本研究の目的は、児童福祉施設において、虐待の背景が ある障害をもつ子どもに関わるダイレクトケアスタッフが 日常生活ケア場面において感じる困難を明らかにし、チー ムアプローチの示唆を得ることである

Ⅲ.研究方法 1.対象

 児童福祉施設に勤務する看護師4名、保育士1名、社会福 祉士1名を対象とした。

 対象施設の管理者、およびスタッフの所属長に、研究主 旨を理解・同意の上、研究参加可能なスタッフを選出依頼 した。

2.方法

2−1.データ収集

 データ収集では、「印象に残っている被虐待児のケー ス」「そのケースに関わっている専門職」「ケースのケア で困難に感じた場面」「ケースへのケアについて多職種と 連携・協働することで困難に感じたこと」の項目を含む質 問紙の記載を依頼した。面接時に、質問紙の項目に沿いな がら半構造化面接を行った。面接の内容はメモ、または、

承諾を得られた参加者はICレコーダーに記録した。

2−2.データ分析

 データは以下の手順で分析した。

1)質問紙の記載内容と面接記録を文脈が損なわれない程 度にまとめ、簡略化した。

2)ケース毎にスタッフが困難を感じた場面を取り出して ケース個人が特定できないように状況を再構成した。

3)被虐待児と家族の特徴6)7)9)、健康上の配慮、チーム 医療の困難に関する細田の研究14)を参考にして整理 し、サブカテゴリーとした。これらをさらに抽象化し カテゴリーとした。

3.倫理的配慮

 本研究は、研究対象者の所属施設の倫理審査の承認を受 けて実施した。

 対象者への保護として、発言内容による勤務への支障は 生じないこと等を文章にて提示し、同意を得た。

 語られたケースについては、ケースが特定できないよう にケースの詳細に関する個別のデータは収集せず一般化し て提示し、研究対象者が困難に感じた場面や状況について は、個人が特定できないように再構成して提示した。

Ⅳ.結果 1.概要

 研究対象者が語った被虐待児は数ヶ月以内に関わった3 ケースであった(表1)。

 ケースAは、幼児期の女児で医療処置を要する慢性疾患 があり、医療ネグレクトにより長期入所していた。ケース Bは、学童期の男児で医療処置を要する慢性疾患があり、

身体虐待により長期入所していた。ケースCは、学童期の 男児であり運動機能障害と知的障害があり、母親のメンタ ルヘルスの問題に起因するネグレクトにより長期入所して いた。

2.スタッフが対応に困難した場面や状況

 語られた被虐待児3ケースについて、ケース毎にスタッ フが日常生活ケアで困難に感じた具体的な場面や状況を示 した。

1)ケースA

<場面1>

 母親がAさんの誕生日のお祝いで来棟した。しかし、A さんが母親の面会を喜ばず母親に抱っこされても表情がな

虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わるダイレクトケアスタッフがチームアプローチの際に感じる困難

かった。他のスタッフもいるのに、受持ち看護師であった 研究対象者に助けを求めるように見つめてきた。

 このような場面に際してスタッフは、子どもとの絆を深 めようと来院した母親の気持ちも大事にしたいし、母親に 対する複雑な子どもの気持ちもわかる、こういう時に、受 持ち看護師でもある自分が、スタッフとしてどのような行 動をとればいいかわからなかった、という困難を感じてい た。

<場面2>

 ケアや処置の時に「◯◯さん(研究対象者)がいい」

と、お気に入りのスタッフを指名し、意が通らないと駄々 をこねる。他のスタッフのケアを拒否し自分が指名された 時にどのように対応したらよいか困ってしまった。

 このような場面に際してスタッフは、テスティング行動 は被虐待児特有の行動であることを共有しているものの、

「将来を考えて過度なわがままは許してはいけない」とい う他の専門職もいる、親ではない自分にどこまで甘えさせ ていいのかわからなかった、という困難を感じていた。

<場面3>

 Aさんは慢性疾患、内部障害のために易疲労がある。保 育活動中に保育士や他児と院内外を散歩中に疲れた様子で 座り込んでしまっていた。他児に先に行かれてしまってい る場面に遭遇した。

 このような場面に際してスタッフは、他児と同じペースで はついていけない体力であるAさんの病気や障害、安静度 について、チームカンファレンスで話し合っていたが共有 できておらず、保育士は、被虐待児だからこそ保育の場面 では他児と同じ対応が必要であると考えていることがわか り、職種が違うと捉え方が異なっていたので、どのように その場で伝えればいいか困った、という困難を感じていた。

2)ケースB

<場面1>

 慢性疾患のフォロー先の病院受診に付き添った。その 時に、慢性疾患に対して手術による治療と自己注射による 毎日の処置が必要となり、本人と家族の意思決定が必要と なった。しかし、今すぐ家族とは連絡がとれない状況で あった。本人に説明し、本人が理解し納得して治療を選択 できるような支援も必要であった。

 このような場面に際し、健康に過ごすために手術や治療が 必要となり、今後の方針を考えなければいけなくなったため 受持ち看護師として、子どもの健康上の問題に対応しなけ ればならず、どこまで子どもの健康に関することに主体的 に関わってよいかわからなかった。児童相談所の担当者と も相談するべきだろうか、また、どのように本人に説明す るのがよいのかわからなかった、という困難を感じていた。

<場面2>

 Bさんは他児の外泊日前後になると気持ちが不安定にな る、ということがあった。

 このような場面に際してスタッフは、被虐待児特有の 不安定さなので、担当である自分がゆっくりかかわって安 心させてあげたいが、他児のケアもありゆっくり関われな い、という困難を感じていた。

<場面3>

 Bさんは、スタッフの目の届かないところで小さい子ど もをつねるなど、被虐待児特有の困った行動をしていた。

 このような場面に際してスタッフは、被虐待児特有の行 動上の問題に対するケアや対応を統一しなければいけない が、スタッフ間で話しあいをもつ時間がとれず、不統一な 対応となってしまっていた、と困難を感じていた。

<場面4>

 Bさんの家族状況は児童相談所が把握し当該施設へ連絡 がある。しかし、家族の状況の変化について、外部機関 との連絡窓口である指導員は知っていたが、スタッフに伝 わっていなく、家族からの電話に適切に応えられず、家族 に不信感を抱かせてしまった。

 このような場面に際してスタッフは、家族状況の変化 がある場合には、ダイレクトケアスアッフも含めて情報を 共有し家族状況を理解しておくべきであったが、適時に情 報を得ることが難しく、急な電話への対応に困ってしまっ た、という困難を感じていた。

3)ケースC

<場面1>

 Cさんの母親が連絡なく突然来院した。母親にはメンタ ルヘルスの問題がありほとんど面会はない。しかし、連絡 なく突然来院することがある。Cさんは母親の姿をみてと ても喜んだ。しかし、母親はCさんには関わらず、すぐに 帰ってしまった。

 このような場面に際してスタッフは、来院したという ことは母親の精神面が落ち着いている時であるので、この チャンスを活かし、母親の気持ちが離れすぎないようにし たい、しかし、まれにしか来院しないので、実際の場面で 意図的に関わることが難しい、長期入所になっているの で、親子の距離を近づける役割をとることも必要であるが、

誰がどのようにするのか決まっていないので、いざとなる と困る、という困難を感じていた。

3.虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わる際にダイ レクトケアスタッフが感じる困難

 スタッフが感じた困難な場面や状況を、類似した内容 でまとめ集約し7つのサブカテゴリーに整理した。その後 に、細田のチーム医療の要素14)を参考にし、チーム内にお けるスタッフの態度に着目して『ダイレクトケアスタッフ が虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わる際に感じる 困難』として2つのカテゴリーに分類した(表2)。

 カテゴリー1は、【ケース個別の課題に対して最善のケ アを提供しようとする際に生じる困難】であった。これに

は、“親子の絆をつないでおくために、親子の距離や関係 性を推し量りながら親子それぞれに異なる配慮をしなけれ ばならない”、“子ども個々の健康問題に対する配慮をしな ければならない”、“発達課題への支援とトラウマやストレ スへの配慮の両立が難しい”、が含まれた。スタッフは、 虐待の背景があり、かつ健康上の配慮が必要な障害のある 子どもとその家族に対して、それぞれの専門性を活かした 最善のケアを提供しようしていた。しかし、日常生活ケア 場面でその場での対応や判断を求められたこと、具体的な 対処が見つからないことや、専門職間の価値が対立したこ とに葛藤や緊張を感じていた。

 カテゴリー2は、【ケース個別の課題を適時に共有でき ないことによる困難】であった。これには、“状況に応じ た判断が求められても、チームでの合意がなく判断、意思 決定できない”、“チーム内での自分と子どもとの関係性、 距離感が難しい”、“困った行動や社会性への支援に関する 専門職間の価値観のずれ”、“ケアの一貫性が保ちにくく、 容易にケア内容がずれていく”が含まれた。スタッフは日 常生活ケアにおいて、チームメンバーとの協働を求められ ている。チームメンバーとしての役割を自覚、意識するか らこそ葛藤や緊張を感じていた。

Ⅴ.考察

1.虐待の背景のある障害をもつ子どもに関わる際にダイ レクトケアスタッフが感じる困難

 【ケース個別の課題に対して最善のケアを提供しようと する際に生じる困難】は、細田14)が指摘している、専門職 として独自のアセスメントとケアを実践しその場で専門職 であろうとする「専門職志向」と、その場その状況に応じ て患者中心であろうとする「患者志向」によって、個人内 で生じる緊張や価値の対立であると考えられた。事例の場 面は、被虐待児が抱える心理・行動的な問題、家族の再統 合の問題に、健康問題への配慮が加わっていることが特徴 である。スタッフは、これまでの経験や自己の価値観、専 門職としての価値観と照らし、向き合いながらその子と家 族の権利を守る最善のケアを提供しなければならない。若 井15)は、児童福祉施設(乳児院)における専門職の意欲に 影響する要因として、“専門性が発揮できる職場関係”、“子 どもおよび家族との信頼関係を築くことができた喜び”を 含む「役割遂行ができた達成感の獲得」の重要性を示唆し た。よって、役割遂行に必要な専門職としての経験の積み 重ねにより価値観を明確にし、日頃のケアを振り返りなが ら実践を通してスキルを磨くことが必要であろう。

 日常生活ケアを専門とするスタッフは、被虐待児の心理 的ケアの専門性は問われない立場である。非心理職が期せ ずして心理的ケアが必要な場面に直面することにより、ケ アの重要性を改めて認識すると考えられた。高田16)は、児 童福祉施設における心理職と福祉職の役割認識と現状認識 を調査した結果、心理職は「個別的心理支援」と役割認識 し、「心理職の役割が未確立である」と現状認識している こと、福祉職は「包括的生活支援」と役割認識し、「福祉 職としての専門的アイデンティティの未確立と模索」と現 状認識している、と報告した。そして、相互理解と専門性 を活かした質の高い連携の必要性を述べつつも、両者の協 働は「今後の課題である」と報告した。また、鎌田ら17)

は、「個別的な関わりが重要視される児童に対して、集団 処遇しかできない人数体制があり、施設職員はその現状に 大きな葛藤がある」と報告し、「葛藤を共有できる集団の 形成や、葛藤を肯定的に意味づけする支援の必要性」を示 唆した。

 児童福祉施設において、心理職とダイレクトケアスタッ フが協働する方策については未確立の段階であるが、予測 できる困難をあらかじめ抽出し、協働で対応策を検討する 作業を通して、専門性を高め、スキルを磨くことは可能で あろうと考える。

 【ケース個別の課題を適時に共有できないことによる困 難】は、自分が直面した場面に関して適切な職種が支援す べきといった「職種構成志向」14)と、チームでの合意がな い中で個人判断による実践はできない、と考える「協働 志向」14)により生じた緊張であると考える。増沢18)は、

「施設の援助者関係̶良好なチームを目指して−」という 論文の中で、「虐待の受けた子どもが抱える問題の深刻さ により、援助者の中に『火種』、すなわち、子どもに対す る負の感情や、スタッフ間・職種間の競争意識、過度な自 信、支配傾向、自分の関わりのせいで子どものケアがうま くいかないと思いこむようなスタッフの被害感がある」と 指摘しており、ケース個別の課題を適時に共有する難しさ を支持すると考える。

 上記より、スタッフは日常生活ケアにおいて虐待の背景 がある障害をもつ子どものケアに関連する重要な場面に期 せずして遭遇し、自身の専門性、チームの中での役割、役 割分担や協働の有り様に向き合うこととなり、心的な緊張 状態が高まり困難と感じていると考察した。

2.日常生活ケア場面における多職種チームアプローチの 特徴

 本研究で取り上げた場面は、日常生活ケア場面として、

重要であるが緊急ではない出来事として日常の中に埋もれ やすく、スタッフが感じる困難が外在化されにくいと考え る。また、シフト性の勤務であることや、職種による教育 背景の違い、所属の違いによる命令系統・情報伝達ライン

も異なることにより、チームとしての情報の共有や、ゴー ルの明確化、共有そのものにも課題がある。草野19)は、医 療におけるチーム形成に際してチームリーダーの重要性を 指摘しているが、本場面からはリーダーの存在も浮かび上 がらず、チームリーダー不在があった。これらは、「日常 生活ケア」という治療的介入ではない多職種チームアプ ローチの特徴であると考えられた。

3.虐待の背景がある障害をもつ子どもの日常生活ケア場 面におけるチームアプローチへの示唆

 虐待の背景がある障害をもつ子どもの日常生活ケア場面 においてスタッフには、自身の専門性が問われることや、

ケース個別の課題の共有の難しさに向き合うことで感じる 困難があった。これらの困難には、日常生活ケア場面の特 徴が影響していると考えられた。日常生活ケア場面で多様 なニーズをもつ対象をチームでケアするには、「上級実践 看護者(日本における専門看護師)の実践能力が重要であ る」20)という、米国の在宅高齢者への学際的な多職種チーム アプローチの報告があり、実践の示唆になると考えられた。

 よって、これまでの検討から個々の被虐待児とその家族 の特性や課題にそって、考えられる困難場面を想定して具 体的な役割分担や対応の方向性、行動を検討し、専門性を 高め、スキルを磨き、上級実践看護師等によるリーダーが チーム形成を支援しながらチームとして機能を高める実践 が示唆された。

Ⅵ.結論

 虐待の背景がある障害をもつ子どもに関わるダイレクト ケアスタッフがチームアプローチの際に感じる困難には、

ケース個別の課題に対して最善のケアを提供しようとする 際に生じる困難と、ケース個別の課題を適時に共有できな いことによる困難があった。

 スタッフは、日常生活ケアにおいて期せずして場面に遭 遇し、自身の専門性、価値、チームの中での役割・位置づ け、役割分担や協働の有り様に向き合うこととなり、心的 な緊張状態が高まり困難と感じていた。

 困難場面を想定し、具体的な行動をチームで話し合いな がら、個々の専門的なスキルを磨くことや、チームとして の機能を高めていく必要性が示唆された。

Ⅶ.おわりに

 本研究は、研究対象者が6名で職種も限られていたため 一般化の限界はある。しかし、日常生活ケア場面で遭遇し やすく、かつ外在化しにくい場面や状況が語られたと考え る。よって、このような事象を浮き彫りにすることができ たのではないかと考える。本研究の結果を題材にして、各 施設、各ユニットでの話し合いが促進され、一人ひとりの ケアが深まることを期待する。

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