大学の外国語学習者における動機づけに関する実態調査
陳 恵貞*1 1.問題と目的
外国語を勉強する動機について、人はさまざまと思われる。どんな動機であるかはともあれ、
ひとつ外国語を習得するには、並大抵の努力と時間を費やさなければならないのは事実である。
そして指導側はいかに熱意を持って、サポートしていくのも学習者にとっては勉強し続ける大 きな励みになるであろう。余程強い自己達成動機を持って、自ら勉強し続けられる学生たちを 除いて、指導側にとっては、単なる言語の伝授だけではなかなか学習者の興味を引き、勉強を 持続させるのは難しいであろう。そのために、学習者の動機を把握することは第一ステップで あろう。本研究では本学で中国語を勉強している一部の大学生に質問紙調査を通して、その実 態を把握し、適切な指導やサポートを探っていくことを目的とする。
そもそも人間の動機というのは、一体どこから生まれて来るものか?人間の行動にどのよう な影響を及ぼすのか?どこまで持続できるのか?動機の起因や影響力などの要因は実に一連複 雑な情緒と脳の活動である。動機づけは一種の複雑な心理現象であり、古くから研究されては いたが、そのメカニズムは徐々に解き明かされていく。「動機づけ」の定義として、「動機が人 の行動を喚起し、方向づけ、統合する内的要因であることは一般に一致している」と記されて いる(Edward J. Murray, 1964)。古くからさまざまな動機づけ理論を研究されてきた。そして、
複数の要因を連動しながら人間の行動に影響を及ぼすという視点から、At㎞80n(1964)の達成 動機づけ理論は代表的であろう。At㎞80nは、人間の達成動機づけを「達成傾向」と「失敗回 避傾向」の2つ変数に分け、定式化を試みた。
達成傾向 = 達成欲求 × 主観的な成功確率 × 成功の誘因価
ここでの「達成欲求」は、難しいことを成し遂げようとする傾向を意味し、「主観的な成功確率」
は、成功する見込みとし、「成功の誘因価」は成功のときに感じた誇りの感情を指す。
失敗回避傾向 = 失敗回避欲求 × 主観的な失敗確率 × 失敗の誘因価
ここでの「失敗回避欲求」は、失敗を避けようとする傾向を意味し、「主観的な失敗確率」は、
失敗する見込みとし、「失敗の誘因価」は失敗したときに感じた恥の感情を指す。
Atkinsonの理論によれば、達成傾向から失敗回避傾向を差し引いた変数の関数によって、達成 行動が起こる。つまり、達成傾向が高くて、失敗回避傾向が低いと達成動機が高まり、達成行 動が起こる。反対に言い換えれば、達成傾向が低くて、失敗回避傾向が高いと達成動機が阻害
*1
セ語コミュニケーション学科され、達成行動が起こらないであろう。この理論によれば、学生たちが一連の学習行動の中で、
いかに外国語が難しいという先入観を取り除き、難しいと感じながらも、失敗回避傾向を抑え、
達成傾向を高めることを促進する必要があると示唆した。失敗回避傾向について、ここで特に 言及したいのは、日本人の特質というものである。目本人の「恥」という文化を多く研究なさ れてきた。外国語を学習するに際して、多くの日本人学生がよく「恥ずかしいから、発音でき ない」、「人見知りが激しいから会話ができない」という「恥の意識」がある。
また、「苦手意識」も強い。「6年間も英語を習ったのにしゃべれない」という「苦手意識」
の過剰で、ますます外国語を敬遠してしまうケースはそうである。それと逆に西洋人の明るい 性格といい意味での「自信過剰」には対照的である。例えば、私は十数年前に、アメリカへ行 った時、受けたカルチャーショックである。私はあるアメリカの友人に「日本語ができますか?」
と聞いたところ、彼女は自信満々と Of course! と答えた。私はその自信に惹かれて、興味 を注がされて、更に「どのぐらいしゃべれるか?」と聞くと、彼女は自慢そうに「ありがとう」、
「おいしい」と「さよなら」と答えた。あまりにも発音があやしかったので、「その他にできる 日本語は?」と聞くと「もうないよ。3つもできるのよ。」と真面目な顔で、誇らし気に答えて くれた。これは我々東洋人には冗談でもなかなか言えないものであろう。何故なら、我々東洋 人は謙遜が美徳としてきたからである。当時、私は日本に来て、すでに8年間が経ち、生活上 の会話がとりあえず不自由とは感じなかった。しかし、「日本語ができますか?」と聞かれると
「少しならできます」と答えるし、「日本語は上手だね」とか褒められたときには、必ず「まだ まだです」と答える。このアメリカの友人にはただ3つの日本語ができたのに、その自信に満 ちた顔は、いまだに鮮明に覚えている。当時はショックだったが、いまは本当に羨ましく思う。
これこそ高い達成傾向の持ち主で、きっと外国語の学習には向いているだろうと思っていた。
そして、もう一つ日本人の特質と考えられるのは、「集団意識」の強さである。これは諸外国 の人々に驚かすほど不思議な力が存在していると言えるほどすごいものである。戦時中の団結 力、戦後の廃塊から引き起こした奇跡によって、いまの先進国の日本がある。一方、みんなと 同じことをする、同じものを持つ傾向、その中の一つは流行やブームに弱いことである。いつ か街中に同じブランドの品々に驚いた外国人の如く、また、海外でブランド品を買い集める日 本人の姿に驚かせたもののようで、こういったところにも日本人の集団性が見られた。いまだ に続いている韓流ブームもその一例である。教育現場でも基礎教育の時期から、同じ持ち物・
同じ行動をすることが要求される。多くの日本人学生がそのなごりのせいか、外国語を勉強す る際にも「友たちが習うから、なんどなく習う」、「友たちがやめたから、わたしもやめた」と いう風に人によって流されてしまうケー一・・スも多く見受けられる。
以上あげた3つの日本人の特質は、場合によってAtkn80nの理論による「失敗回避傾向」
の因子になりかねないであろう。いかに、これらの特質を克服し、「達成傾向」に変えていく、
自ら外国語を学習する楽しさを発見し、いわゆる内発的動機づけを見出すことが大事である。
さらに高い達成動機を保っことは日本人大学生の外国言語学習における最大な課題になるかも しれない。
冒頭にあるように外国語を勉強する動機について、人によっては理由が異なると思われるが、
一所懸命に外国語を勉強する学生をみて、その動機の可能性を考えてみよう。例えば、その国 に興味があり,行ってみたいから、その国の言葉を覚えようとしたかもしれない。或いは、外 国語をしゃべれると格好いいと思われるので、勉強しようと思ったかもしれない。また、将来 の仕事に役に立つと思うから、学ぼうと思ったかもしらない。更に、親に言われたから、仕方 がないから、勉強しているかもしれない。最初の動機はさまざまであろうか、その実態を把握 するため、本学の大学生に対して、アンケート調査を行うことにした。
H. 方法
調査対象:本学の大学1年から4年生が対象で、すべて中国語の授業を受けている学生である。
被験者数は192名である。
調査時期と方法:2003年度7月に前期の最終授業中であった。回収率は100%であった。
方法としては、質問紙法を用い、無記名回答をしてもらった。
調査内容:自作の質問紙で、まずは中国語の学習経験や学習期間を尋ねた。それから、選択方 式で、中国語を専攻として選ぶかどうかについて、中国語を学習する動機について(複数 の選択肢から選択し、順位をつける)、どのように中国語を勉強し続けるように工夫してい るかについて(この項目も複数の選択肢から選択し、順位をつける)、中国語のテストの有 無と方法について、中国語を勉強し続ける期間の予想(予定)についてなど尋ねた。また、
自由記述で、.「いままで、一番面白くて、印象に残っている語学の勉強方法」と「一番効率 よく、自分に合っている語学の勉強方法」にっいて尋ねた。
皿. 結果と考察
調査の結果と考察は、質問紙の順で、以下の通りである。
1.学習経験について、大学入学する前に、中国語を勉強した経験の有無を尋ねたところ、被 験者192名中勉強した経験ないのは179名で、経験あるのはわずか13名である。被験者 のうちの93%は、中国語学習の未経験者であった。勉強期間について尋ねると、その内4 年間週に1時間を勉強したのは1名、最も長いである。次は2年間週に2時間は2名と1 年間週に4時間は1名、そして、2ヶ月間週に30時間の短期集中コースは1名、それか ら、3ヶ月間週に2時間は1名と1ヶ月間週に2時間は2名と1ヶ月間週に1時間は3名 である。その他、この年に数回を勉強したのは1名と一回限りの1名で計13名である。
2.大学に入学してから、どのぐらい中国語を勉強したかと質問したところ、割り出したのは 勉強期間4ヶ月の1年生が142名(73%)で、勉強期間1年間4ヶ月の2年生が26名(14%)
で、勉強期間2年間4ヶ月の3年生が21名(11%)で、勉強期間3年間4ヶ月の4年生が3
名(2%)であった(Fig. 1)。被験者のうちの73%は1年生で、大学入学するまでは中学校 と高校で少なくとも6年間英語を第一外国語として勉強してきたものと思われる。大学入 学した時点で、中国語の授業を受けたときは第2外国語として勉強したといえよう。
そして、週に何時間を勉強しているという質問に対し、週に1時間を取っているのは66 名(34%)、週に2時間は14名(7%)、週に3時間は36名(19%)、週に4時間は72名(38%)、
週に5時間は4名(2%)であった。これは、被験者の中では、中国語の学習は1時間で抑え ている興味を示さないタイプ、或いは、4時間とたくさん取っていて、大変興味を持って いるタイプであった。実に中国語に対する学習の態度は両極端であることを示し、大変興 味深い結果となった。
Fig.1 学年別と人数の内訳(n=192)
口 1=1年生(142名),73%
■
2=2年生(26名),14%口
3=3年生(21名),11%■ 仁4年生(3名),2%
3.中国語を専攻として選びますかと質問したところ、専攻として選んだのは51名(27%)、非 専攻は49名(26%)、まだ分からない(まだ決めていない)のは、92名(47%)であった。調 査時点では、73%の被験者が1年生で、勉強してからまだ4ヶ月しか経ていない内に専 攻を決めていないのは大多数ではないかと当初からの予測とおりとなった。
4.中国語を学習する動機とその理由について、聞いた。選択肢として以下の7項目である。
①中国という国に興味があった。 ②中国語に興味があった。 ③将来に役立ちそう。
④英語が嫌いだから、なんどなく中国語を選んだ。 ⑤親に言われたから。⑥簡単そうだ から。⑦その他、具体的な理由。そして、「複数可、順位を付けて」と指示した。結果は Graph 1の通りである。
Graph 1中国語を学習する動機(nニ192)
順位
0 50 1go 口9 200
田
1中国という国に興味があった■ 2中国語に興味があった口 3将来に役立ちそう口
4英語が嫌いだからなんどなく中国語
■
5 親に言われたから
田
6 簡単そうだから 7 その他
Graph 1から、一目瞭然で判ったのは項目②の「中国語に興味があった」と項目③の「将 来に役立ちそう」がすべての順位において高い頻度を示していることである。そして、順 位1には項目⑤の「親に言われたから」と項目⑥の「簡単そうだから」が欠けていること である。また、項目①の「中国という国に興味があった」という項目に対して、それこそ 頻度は高くないものの、すべての順位において安定していることである。次にはTable l の結果で、詳しい内訳をみてから考察するとしよう。
Table l中国語を学習する動機とその理由の各項目の順位と頻度
項目① 項目② 項目③ 項目④ 項目⑤ 項目⑥ 項目⑦
順位1 27 67 66 7 0 0 27
順位2 22 55 53 6 1 6 11
順位3 23 25 19 3 4 0 0
Table 1に示しているのは、各項目のそれぞれの順位と頻度(選んだ学生の人数)であ る。まず、項目②の「中国語に興味があった」がすべての順位の中で一番頻度が高いこと は、学生たちはみんな中国語自体に語学として評価し、興味があることを示していると言 えよう。また、微妙な差で二番目の項目③「将来に役立ちそう」では、中国語の将来性を 評価していることが分かった。
そして、順位1には項目⑤の「親に言われたから」と項目⑥の「簡単そうだから」が欠 けていることについて考えてみよう。学生たちはご自分の意思で中国語を学ぶことを決め、
親の言われたままではないことが分かった。また、軽い気持ちで「簡単そうだから」学ぼ うとするではなく、真剣さをうかがうことができよう。或いは、中国語が難しいという先 入観があって、けして「簡単そうだから」とは言えないゆえに、こういう結果になったか
もしれない。その真意を更に確認する必要があるであろう。
更に、項目①の「中国という国に興味があった」という項目に対して、頻度は高くない ものの、すべての順位において3番目を占め、安定していることについて考えてみる。こ れは、学生たちは、中国語が語学として興味を持ち、そして中国語の将来性に賭けていて、
その次に、近い国である中国にもともと親しみを感じ、興味があったということになろう。
また、順位1の三番目に並んでいる項目⑦の「その他」を選んだ学生27名が意外と多 い。詳しく内容を見ていくと、実にさまざまな理由があった。その実例を以下にあげてみ ることにしよう。事例の後ろに括弧が付いている数字は頻度を表している。括弧のないも のは1名のみと表している。
・先生が英語以外にも何か勉強しておいたほうがいいとおっしゃったから。
・様々な言語に興味があり、どのように言葉がなりたっているのか知りたかったから。
・学んでみて、楽しかったから。
・英語以外の外国語を習ってみたかったから。(2例)
・海外の語学学校で、中国人の友達ができて、中国語で話をしてみたいと思ったから。
・ 中国人の友人がいるから。(2例)
・淑徳大学で学べる言語の中で、歴史のあるものだと思った。
・ 中国に行く機会が度々あるから。
・フォン先生にひかれて。
・必修だったから。(4例)
・必修でやったら面白かったから。(2例)
・ カルチャーショックから。
・漢字だから学びやすいと思った。
・中国という国自体、マーケットの主要な国になってきているから。
・高校で勉強していて持続したかったから。
・ 中国人がいい人だから。
・語学力をつけたかったから。
・中国の人と話しをするため。
・友達がやろうとしたから。
・中国に行った時、ほとんど話せなかったから。
・留学生に中国人が多いから、交流を持ちたい。
この中で説明する必要があるのは、「必修だったから」と「必修でやったら面白かったか ら」を分けて記入するわけである。まず、『必修』というのは、すべての被験者ではないが、
一部の被験者は言語コミュニケーション学科の学生で、一年生の前期だけに必修科目とし て「中国語概論」という基礎の授業があるためである。そして、分けて記入したのは、「必 修だったから」という理由で書かれたのは、いやがっていて無理やりにやらされていると
いう心境の可能性もあると考えられるからである。実際に一例のみだが、「やらされている って感じがつよくて、いやだった」とはっきり記入している学生がいった。つまり、「必修 だった」と記してあるのは、マイナス傾向という可能性を除くことができないということ である。無記名なので、それらの真意を確認することができないため、「必修でやったら面 白かったから」というプラス傾向の2例と分けて記入したわけである。確かに「強制」要 因、いわゆる自由に選ぶことができないことや束縛感があることによって、自己決定感が 得られない不安定な状態になると内発的動機づけを阻害する要因になりかねないことが考 えられる。特に反抗的な感情が生じると強い心理的な葛藤になり、回避的な行動に発展し てしまうケースも考えられるであろう。内発的動機づけの負の方向性に関する研究
(陳,1993;上淵,2004)にも取り上げた。
5.どのように中国語を勉強し続けるように工夫しているかについて聞いたところ、以下の選 択肢から選ぶように指示した。
①毎日勉強するようにしている。②目標を定めて、頑張るようにしている。
③中国の友達がいる。④中国の番組や映画をみるようにしている。
⑤特に何もしていないが、とにかく興味がある。⑥親友の影響。⑦テストがあるから。
⑧その他、具体的な理由。そして、「複数可、順位を付けて」と指示した。結果は Graph 2の通りである。
Graph 2中国語を勉強する工夫(n=192)
50 100 150 200
ロ1.毎日勉強するようにしている
■2.目標を定めて頑張るようにしている
ロ3.申国の友達がいる
囚4.中国の番組や映画をみるように している
■5.特に何もしていないが、とにかく
興味ある 團6.親友の影響
留7.テストがあるから
ロ8.その他
順位1にある項目⑤「特に何もしていないが、とにかく興味がある」が一番多く。次は 項目②の「目標を定めて、頑張るようにしている」、またその次は項目⑦の「テストがあ るから」となっている。順位2では、やはりこの3項目は頻度が多いが、大差は見られな いように思われる。項目⑥の「親友の影響」は思わぬ少ないところに止まった。次は
Table 2の結果で、詳しい内訳をみることにしよう。
Table 2 中国語を勉強する工夫についての各項目の順位と頻度
項目① 項目② 項目③ 項目④ 項目⑤ 項目⑥ 項目⑦ 項目⑧
順位1 6 45 5 16 76 3 32 8
順位2 8 17 6 13 24 3 25 7
順位3 ・0 7 4 7 4 3 5 2
Table 2では、順位1にある項目⑤「特に何もしていないが、とにかく興味がある」とい う項目がこの表の中で頻度76を示し、群を抜いて一番多い。これは、特に1年生の被験者 の中で、中国語を勉強してまた4ヶ月しか経っていないので、新鮮感が溢れている時期にい ることと考えられる。ちなみに、当初予想した項目⑥の「親友の影響」が日本人学生の特質 であることも同じ理由で思いもかけず少ないところに止まったと考えられる。項目⑥につい ては、さらに上級生のデータが必要だと思われる。
順位1で2番目に続いている項目②の「目標を定めて、頑張るようにしている」という項 目は、実は語学学習を持続させて、内発的動機づけを高まる因子である。これは、質問3で
「中国語を専攻として選びますか」という質問の結果から、専攻として選んだのは51名、
非専攻は49名、まだ分からない(まだ決めていない)のは、92名であった。つまり、192 名の被験者のうち、非専攻の49名と「まだ分からない」の92名を合わせて141名(73%)が 極めて不安定な未知数であった。ゆえに、項目②は「内発的動機づけを高まる因子」として 認められなかったと考えられる。この質問を専攻生のみに限定すれば、異なる結果になるで あろう。
順位1で3番目に続いている項目⑦の「テストがあるから」というのは、外発的動機づけ を高まる因子である。この項目は順位2では実は1番多く選ばれたものであった。確かに、
テストがあると、勉強せざるを得ない状況になり、勉強する動機づけには無視できない効果 があった。
6.中国語のテストについて、日頃小テストがなくでも、自ら進んで勉強ができるか否かと聞 いた。被験者のうち160名(83%)が「できない」と答え、わずか17%の32名が小テス トなしでも自ら進んで勉強できると答えた。やはり、小テストの効果が絶大だと評価せざ るを得ない。語学の勉強は一時的なものでなく、ステップ・バイ・ステップで日々の積み 重ねと努力が必要とするものなので、こうした外発的な動機づけによって、前へと引っ張 っていく助力も欠かせないであろう。
7.日頃の「小テスト」と「期末テスト」にっいて、どちらが自分に合っているかと聞いたと ころ、以下の4っの選択肢から選んでもらった。
①日頃の小テストと期末テスト両方あり。②日頃の小テスト有り、期末テスト無し。
③日頃の小テスト無し、期末テスト有り。④日頃の小テストと期末テスト両方無し。
結果はFig.2のとおりである。
項目②の「日頃の小テスト有り、期末テスト無し」は一番多くの54%(104名)を占 め、過半数を占めていることが分かった。そして、項目①の「日頃の小テストと期末テス
ト両方あり」が意外と多く27%(53名)を占めている。項目①と項目②を合わせて、つ まり、81%(157名)の被験者が「日頃の小テスト」を支持しているという結果になっ た。これは語学を学習する際において、一番良いと思われているようである。
そして、項目③の「日頃の小テスト無し、期末テスト有り」は12%(23名)である。
これは従来の授業において通常一番多くとられるやり方と思われるが、項目①と項目②と 比べてみると極端に少ないような印象が感じられた。
最後に、項目④の「日頃の小テストと期末テスト両方無し」はわずか7%(12名)であ る。つまり、項目①、②、③を合わせると93%の被験者はテストをしてほしいと大変積 極的な態度で中国語の授業をとり、テストをいやがることもなく、懸命に勉強している受 講生の姿がみえてくるという結果になった。
Fig2 小テストと期末テストについて(n=192)
④
③23各12%
國 1小テストと期末テストあり
■■ 2小テストあり期末テストなし 口 3小テストなし期末テストあリ
囚 4小テストと期末テストなし ②104名.54%
8.この先、中国語を勉強し続ける期間として、どのぐらい予想(予定)しているかについて 聞いた。選択肢として、またその結果は以下のとおりである(Fig. 3参照)。
①半年間(5名、3%) ②1年間(12名、6%) ③1年間半(10名、5%)
④2年間(6名、3%) ⑤2年間半(4名、2%) ⑥卒業するまで(70名、37%)
⑦一生続ける (33名、17%) ⑧全く予想がつかない(52名、27%)。
一番多くの答えは項目⑥の「卒業するまで」で、37%の70名である。意外に多かっ たのは、項目⑦の「一生続ける」の33名(17%)である。一年生の被験者が多い中、
学習経験がわずか4ヶ月の学生たちが中国語に対して、一生勉強し続けるという高い学習 動機の基で、今後果たしてどのくらい勉強し続けているのか、大変楽しみである。更に、
追跡調査ができることならば、確かめることができたら、より面白い研究になるであろう。
これは次の研究課題としよう。
Fig.3勉強し続ける期間の予定(n=192)
⑧52名27
⑦33名,17
名,6%
10名,5%
6名, 3%
⑤4名,2%
⑥70各37%
園①半年間(5名)
■②1年間(12名)
■③1年間半(10名)
ロ④2年間(6名)
■⑤2年間半(4名)
園⑥卒業するまで(70名)
■⑦一生続ける(33名)
ロ⑧全く予想がっかない(52名)
9.「いままで、一番面白くて、印象に残っている語学の勉強方法を教えて下さい。」と質問し たところ、以下にピックアップしてまとめた。事例の後ろに括弧が付いている数字は頻度 を表している。括弧のないものは1名のみと表している。
・映画をみたり、音楽を聴いたりして、でてきた表現を覚える。(39)
・その国のビデオやアニメを見て勉強する。(7)
・ネイティブの人と会話する。(24)
・ネイティブの先生に教わること、先生と直接会話する。(7)
・先生と会話をしながら、単語の発音、文法を学ぶ。身近の話題をつかう。(4)
・その国ではやっている歌を聞いて、歌詞を書き、訳す。(11)
・ラジオを聴いて一緒に繰り返していた。リスニングに役立った。
・グループや組をつくって、実際にその国の言語を使って話してみる。(2)
・発音をリズムに乗せて、うたうように練習する。(2)
・絵カードを見ながら、その絵の内容の文章を含むシチュエーションのテープを聴く。
・何回も後に続いて読み続ける。(2)
・比較的簡単な言葉で書かれている新聞や本を読むこと。(2)
・テレビ講座を見る。(5)
・時制や文法から入るのではなく、文章や会話から自然に学ぶ。
・おもしろい例文を作ったり、繰り返し説明したり、ユニークな先生の影響は大きい。
・テストに向けて、家でずっとCDを聴いていたら、 母まで中国語を話しはじめた。耳 から覚えるのは簡単なやり方だと思う。
・ とにかく明るく笑顔で話す。
・バイドの中国人の子に中国語を教えてもらった。遊び感覚で楽しかった。.
・実際にその国へ行く(語学留学、旅行)、その言語を母語とする人と話す。(9)
・ゲーム感覚で、たとえば単語のビンゴゲーム、かるたを作って遊んだり、歌に したり。
また、班ごとに分かれ、先生の出すクイズに答え、得点を競い合う。(4)
・記事で、2人1組でお互いに内容をまず相手に説明して、その後議論し合うという方 法。会話ができた。(2)
・自分が教える立場になって、使い方などを勉強して準備したこと。教職で模擬授業を した経験から。(2)
・ 日記を書くこと。それでチェックしてもらったり。
・中国語の授業でパソコンを使ってやるのがいい勉強方法だと思った。
・外国人とメール交換(文通)する。(4)
・先生の話や、その国について知ることが語学習得に役立ったと思う。(2)
・英語で劇をした。
・とにかく勉強する。覚えるために何度も書く、暗記する。
・ティーパーティーのように雑談しながら言葉を使う授業が、かまえずに気楽に会話で きた。
・友達と雑談する。(3)
・友達と辞書を引きながら筆談する。
・外国の美術館や動物園のパンフレットを読みながら勉強したこと。
・映画を見ながら聞き取り、空欄をうめて文を完成させる。
・絵を使って、会話として勉強する。
・1日中、日本語を使わないで、英語のみで会話をした。
・毎回はじめに、前回の復習をゆっくりとしてもらえる事。そして授業の間の息抜きと しての小話。
語学の勉強方法として、「映画をみたり、音楽を聴いたりして、でてきた表現を覚える(39 例)」と「ネイティブの人と会話する(24例)」が多く、次に「その国ではやっている歌を 聞いて、歌詞を書き、訳す(11例)」と「実際にその国へ行く(語学留学、旅行)、その言 語を母語とする人と話す(9例)」の4つが一番印象に残る方法である。
10.「いままで、一番効率よく、自分に合っている語学の勉強方法を教えて下さい。」と質問し たところ、第9問と類似した答えもあるが、ピックアップしてまとめた。事例の後ろに括 弧が付いている数字は勇渡を表している。括弧のないものは1名のみと表している。
・「効率よく」にはテスト勉強スタイルが二番かとは思いますが、私はなるべくネイティブ の人と関わることによって「勉強」的な概念をなくし、一番無理なくスキルupする方 法、他に、手紙やEメールのやりとりを英語ですることもかなり有効です。特に、ネイ ティブの人が相手だと、知らない間に表現や言い回しが身に付ついていることも多々あ りましたし、ネイティブの人以外でもお互いの間違いや使える表現を見つけられたり、
また文化をよく理解することもできるので一石二鳥だと思いました。
・映画や音楽、好きな歌を見つけて、表現や単語を覚える。(22)
・ネイティブの人と会話する。(22)
・ネイティブの友人をつくること。(5)
・CDを聴いて発音がうまくできるようにする。(3)
・1対1で会話する。間違えた発音を直してくれるから。(4)
・語学番組やできるだけ聴くようにする(CD教材を聴きながら通学)。(10)
・口に出して読む、書く、覚えること。(40)
・CDを聴いて、書き取りをする。(8)
・講義を受けて勉強した方がいい。
・時間をかけることが語学の勉強には必要不可欠だと思います。
・毎時間ずつ小テスト、復習を繰り返すこと。(3)
・テスト勉強をしっかりやること。(2)
・先生との雑談や会話。(2)
・問題集をくまなくやること。(3)
・文法をひたすら教えてもらう、基礎をかためてから。(3)
・文法でなく、会話から。(7)
・中国に行って学ぶ。(6)
・文をはじめて見た時に、同時に音も聞くこと。
・異なる教材に同じ単語が重複して出てくることで復習できること。
・教科書中心で、まず単語を覚え、それを使ってみて、使い方を覚える。(6)
・ そのことばでメール。
・楽しんで自らの意志で勉強する。
・日頃ふと思ったときすぐ調べてみる。(2)
・単語をコツコツと覚える。(6)
・勉強と思わないうちにやること。(2)
・授業で習ったことを、その日に家で復習する。(2)
・授業で、できるだけ覚えること。(2)
・メモをきっちりとって、テスト前に見ておくようにしています。
・熱心で厳しい先生のうまい授業を受け、毎回テスト、宿題がある。
・こまめに暗記して、理解してから次に進む。
・今までの授業のように先生と一緒に毎回復習しながら発声していると自然に身にっく からいいと思う。
・長文を読んで、だいたいの内容をっかみく分からない単語は後で調べる。
・毎日勉強する。(2)
・ 日記をその言語で書き、添削してもらう、授業中にとにかく話す。(2)・
・友人を巻き込んで、楽しみながら、協力しながらやる。
・実践、間違いながらも使っていって自分の物にしていく。
・その言語の子供がみるアニメを見ること。
・予習をたくさんすると覚えがいい。
・一番効率よく、自分に合っている語学の勉強方法として、「口に出して読む、書く、覚え ること(40例)」が最も多く、「映画や音楽、好きな歌を見つけて、表現や単語を覚える(22 例)」と「ネイティブの人と会話する(22例)」が次ぎ、「語学番組やできるだけ聴くよう にする(CD教材を聴きながら通学)(10例)」がある。
IV. まとめ
日本人学生が外国語を学習するに際して、Atkinsonの理論にある失敗回避傾向になる因子 として、日本人の特質として「恥の意識」と「苦手意識」と「集団意識」を取り上げた。しか し、本研究ではすべては検証できなかった。その理由として考えられるのは、まず、すべての 被験者は中国語を受けている学生だからである。その上、被験者の大半は言語コミュニケーシ
ョン学科の学生で、もともと語学に興味があり、得意であり、語学を専攻とする学生ばかりで ある。そのゆえ、「恥の意識」と「苦手意識」が検証できなかったと思われる。さらに、「集団 意識」については、質問5の項目⑥「親友の影響」では、合わせて9名が選んだが、少なから ず多少の影響が認められた。しかし、被験者のうち73%の142名が1年生であり、入学して から調査を行う時点まで4ヶ月しか経っていないので、「親友の影響」というのは、事実上無 理があったと考えられる。いずれサンプルが不適切であると言わざるを得ない。「恥の意識」と
「苦手意識」を検証するときには、外国語をうけていない他学部生;「集団意識」を検証すると きには上級生のデータが必要とする。
質問6により、日頃小テストがなければ、83%の160名の被験者は自ら進んで勉強するこ とができないと答えた。つまり、小テストに頼って勉強する動機を高める手段として利用して いるようである。質問7により、93%の被験者はテストをしてほしいと大変積極的な態度で 中国語の授業をとり、テストをいやがることもなく、懸命に勉強している学生の姿がみえる。
語学の勉強は一時的なものでなく、ステップ・バイ・ステップで日々の積み重ねと努力が必要 とするものと思われる。このように「テストがあるから、頑張って勉強する」という外発的な 動機づけをうまく利用し、前へと引っ張っていく助力も欠かせないものであろう。
最後に質問9と質問10で共通に見出しているカテゴリは、「ネイティブの人とのかかわり」
である。質問9では、「ネイティブの人と会話する(24例)」、「ネイティブの先生に教わること、
先生と直接会話する(7例)」、「バイドの中国人の子に中国語を教えてもらった。遊び感覚で楽 しかった。(1例)」、「実際にその国へ行く(語学留学、旅行)、その言語を母語とする人と話す
(9例)」である。質問10では、「ネイティブの人と会話する(22例)」と「ネイティブの友人 をつくること(5例)」である。これは、語学の勉強に印象的且つ効率的な方法として、より多 くのネイティブの人と出会うことを望み、語学の勉強を上達する手段として認められたものと 考えられる。近年、日本では国際化が進んでおり、特に日本在住の中国語話者が外国人のなか では最も多くみられる環境にいることは間違いない。このような恵まれた環境を活かし、ネイ ティブの人と出会い、意欲的に会話をするチャンスを増やすことによって、語学の勉強を上達 する近道になるであろう。また、且つ多く勉強方法の中で、「ネイティブの人と会話する」と多 くの学生に支持された。この活きた勉強法によって、授業で勉強したものを存分に活用し、知 らなかったことを教わって、更に調べて勉強するというような相乗効果によって、活きた語学 の世界へと踏み入れていく。これこそ、退屈することなく、長続きし勉強できるコツであろう。
いわゆる達成動機づけを高まる方法と言えよう。
今回の調査は中国語の学習者であったが、このような自ら達成動機づけを高めていく工夫は、
どんな言語の学習者においても同じと考えられる。しいて、グローバル化と称する今日の社会 では、語学の世界ではバイリンガルからトライリンガルと進化していく。そして、人間の達成 動機づけは、語学の勉強のみならず、どんなことにおいても積極的に自分自身の課題を取り組 む姿勢は必要であろう。一刻も早く学生たちに、ご自分自身に合った達成動機づけ方法を見つ かることを願い、本研究はそのヒントを与えてくれれば幸いである。
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