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拡大再生産表式における 蓄積基金について

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Academic year: 2021

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拡大再生産表式における 蓄積基金について

高倉泰夫

1.問題の設定

前稿(〔8.〕)では拡大再生産表式におけるI〟とに即して蓄積基金の形成 と支出の機構を分析した。そこでは資本家群を一方的購買者である部類Aと 一方的販売者である部類Bとに二分して両者の間での蓄蔵貨幣の形成と支出

とが均衡していさえすれば良いとして他の条件は考慮しなかった。本稿では 部類Aでのこれまで蓄積してきた蓄積基金の支出と部類Bでの蓄積基金の形 成との間での均衡の条件を再検討する。そして,本稿でのその再検討が信用 論の新たな展開に寄与しうると考えている。

この再検討の出発点は,前稿では特定化しなかった一定の蓄積年数を蓄積 基金の形成の分析に導入するということである。そのように蓄積年数を仮に 一定とするならば,蓄積基金の形成額が年々増減を繰り返すという事態は全く 生じ得ず,それは拡大再生産の年々の進行に伴ない増加していくことになる。

これは実際の資本蓄積を過度に単純化しているとも考えられるが,しかしそ のような仮定を設けることによって蓄積基金の形成の構造をより一層明らか にすることができるのである。

なお,前稿と同様に本稿でもまず両部門の資本の有機的構成と蓄積率およ び貨幣の流通速度を一定とする。ここでは,労働者は蓄蔵貨幣の形成を行な わないものとし,また減価償却基金は考察の外部においておく。以下,Ⅰ部 門およびⅡ部門のMc およびMv について考察を行なう。

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i)  Mcについて

まず,IMcの考察から始める。そこでは部門内転態が行なわれるだけで あるから他部門との商品流通は生じ得ない。

蓄積基金の形成が一定期間において行なわれると仮定すると,蓄蔵貨幣の 形成を行なっている部類B中のそれが完了した資本家群は, liI頁次蓄蔵貨幣の支 出を行なう資本家群Aへと転化していく。ここで蓄積基金が形成される年数 5年と仮定してみる。すると,部類Bの資本家群をBl, B4, に分け ることができる。ここでは,図‑1に見ることができるようにB5Blの販 売を,つまり最終年度分の蓄蔵貨幣の形成を行なうとともに,同時にAとし て,それまで蓄干責してきたBt5̲1+Bt5̲4およびBlの支出を行なうと想 定している。

なお,図‑ 2のょっに ,Aは前年度までの部類 Bでの蓄積基金を今年度支 出すると想定することもできるが,その場合は図‑ 1で分析する蓄積基金の

部類B

B4  B B B Bt  Bl  Bf  Bl  Bf B1 Bf

Bf BI

Bf

図 ‑

部類A

‑1… 

υd ua

一一一rιι'b

T ι  

B5=A  Bf  Bfl  Bt5̲2 

Bt5̲3 

Bf4 

※ 部 類Bの白ヌキの部分は今年度実現されるべき商品資本を示している。

部類 AではBfが実現されるべき商品資本部分であるとともに,Bfl  以下の部分とともに商品に対する購買手段としても現われる。それゆ ,Bf 1Mcにおける内部転態的部分として処理されることになる。

(3)

‑2

部類A 部類B

7i 

' ? ι  

‑2 

4

p a

‑ ‑

' ' ' b

︐ ︐ ︐ ル ︐ ︐

︐ 砂

B B B3  B B

※ここでは,図‑ 1Blにみられるような同一資本家群が購買者としても販売者と しでも現われるという一見奇妙な事態は避けられるが,本稿で主張している部類A での購買手段の不足という問題はより強〈現われることになる。しかし,それは叙 述を錯綜させることになることから本稿では図ー1の場合をとりあげている。

形成が支出を下廻るという困難がより一層顕著となるだけであるので,図‑

1のように B5は今年度中にAに転化するとして分析を進める。

‑1のように資本家群が,それぞれ均等に蓄積基金の形成を行なうこと は,蓄積年数一定という仮定から,部類Bの資本家群の一定部分が年度を追っ て次々に部類Aの資本家群へと転化しなければならない,ということから生じ ている。さもなければ,部類Aの資本家群の蓄積基金の支出量は蓄積率に応じ て年々増加する筈のところが,増減を繰り返すことになる。とすれば,その ような想定のもとでは以下に見るような蓄積基金の形成額が支出額に及ば ないという事態が,ある年度においては解消され得ても他の年度においては より一層激しいものとして現われることとなるのであるから矛盾を解決する 方法としては採用できない。

このように部類Bの中の各資本家群が均等に蓄蔵貨幣の形成を行なうとす れば,蓄積率をαとすると例えばB!=(l+α)3B3となる。つまり ,B!> 

>B; となる。 B5においても同様である。今年度のB5= Aにおいては,

蓄積基金の支出額はB5=Bl+BIlBl2Bl3 Bt~ のである。これに 対して,部類Bの各資本家群Bl,,B4における今年度の蓄積基金の形成

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額は ,Bl+BlBl+BIである。図‑ 1に見るように ,Bl=Bl=Bl=BI  であるから ,B?はさておき ,BI>Bt~l=Bt- l , Bl>Bt~2=Bt2 で、あり , Bl 

および、 B/ も Bt~3 や Bt~4 よりも大きい。つまり,

Bl Bl Bl BI B1 BtBt~ Bt~2 Bt~3 十 Bt~4=A (1) 

となって ,B5=Aとしての蓄積基金の支出額はその年度の部類Bの各資本 家群の行なう蓄蔵貨幣の形成にはつねに及ばないことになる。このことは,

Mcにおいて部類Bでの商品の販売額に対して部類 Aの購買額が及ばない ことを意味しており IMcにおける内部転態が成立しないこととなる。こ の懸隔は,蓄積率αが大きくなればなるほど大きくなる。

つまり,蓄積年数一定といっ仮定を導入するとき ,rMcの内部転態を成 立させるためには部類Aの資本蓄積が部類 Bの商品販売量に対応するように 増大する必要がある。しかし,部類Aの資本家群の蓄積基金額はそれまでの 年々の蓄積率によって規定されているのであるから,部類Aにおける購買力 の増加には別の要因が付加される必要がある。それは部類Bの各資本家群か らの部類Aの資本家群に対する信用である。もちろん,本稿では再生産表式 そのものにおいて信用論を展開せよと主張しているのではなく,信用論自体 の展開に際して再生産表式において信用が必要とされた部分との接合が可能 であると主張しているのである。

このrMcにおける信用としては商業信用と銀行信用とが考えられる。そ の際,固定資本と流動資本との相違に留意して展開することも考えられるが,

本稿では蓄積年数一定といっ仮定を置いているためにその区別は以下の分析 では明示的には採り入れられていない。ただ,商業信用については流動資本 を,資本信用については固定資本を重点的に考えるということは可能で、あろう。

まず,商業信用によって部類Bの資本家群から部類 Aのそれへと商品が販 売される場合を考えてみる。この場合,問題は商業流通のみに限られている ので今年度は貨幣そのものの流通なしに蓄積基金の形成額と支出額との差額 分の商品販売が行なわれることになる。そして,部類Aの資本家群は今年度 は一方的な債務者であるが,次年度は部類Bの資本家群として商業信用を与

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える側へと廻ることになる。ここで与えられる信用の量は(1)の(左辺ー右辺) である。与える側の資本家群の Bl,B4は,いずれもがそれを行ないう

部類Aの資本家群は次年度においては,今年度の Blと同じ位置に現われ ることになる。そして,次年度はそこでの部類Aの資本家群に対して商業信 用を与えることになる。つまり,前年度の債務を一年(あるいは四年)にわ たって商業信用の供与者として返済していくことになる。このように,ある 年度において一方的債務者として現われる部類Aの資本家群は多年にわたる 流れの中で見てみると,債務者と債権者の役割を交替していっている。その とき,部類Aと部類Bとの間での商品流通において,部類Aと部類Bとの問 で部類Aにおけるそれまでの債権と今年度発生する債務との相殺が行なわれ ているというのがより実際的であろう。そして,その差額が部類Aにとって の一方的債務として残ることになる。このょっな債務の残存量を規定してい くのは年々の蓄積率である。この債務の残存量は年々増加していくが,年々 部類Aの資本家群が部類Bに廻るのであるから再生産過程は円滑に進行して いく。なお,商業信用によって(1)にみる購買手段の不足を補うときには,今 年度における商品の価値実現のみが問題となっていて,それまでに蓄積され た蓄蔵貨幣は手つかずに残されている。しかし,図ー1の部類 Bでの斜線部 分も債務の残存量により有価証券に置換される部分が出てくる。

次に,資本信用によって(1)の(左辺一右辺)の差額が賄われる場合を見て みる。ここでは商業信用における貨幣資本節約ではなく,資本信用によって 資本の量的限界を止揚していくことが想定されることになる。この資本信用 による場合では,部類Bにおける蓄積基金が部類 Aに対して貸付けられるこ とが想定される。もちろんIMcにおける蓄蔵貨幣のみでなく,他の部分や他 の部門における蓄蔵貨幣が貸付けられることも考えられるが,ここでは単純化 のためにIMcの部類Bにおける蓄積基金が部類Aに対して配分されるとしよう。

この資本信用の場合では,先の商業信用の場合に今年度の商品流通のみが 問題であってそれまでに蓄積された蓄蔵貨幣自体は問題とならなかったのに 対して,その蓄蔵貨幣によって(1)における購買手段の不足が賄われることに

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なる。そのことによって,部類Bの資本家群は W ‑ Gが可能となり蓄積基金 の形成を行なうことができる。それゆえ,この場合には蓄蔵貨幣の配分が先 行している必要がある。この配分は直接的な貸付けの形態をとる場合もあれ ば,有価証券という形態をとる場合もありうる(高倉 (865ページ)。いず れにしても,資本信用によって拡大再生産の均衡条件が維持される場合には,

金融市場と拡大再生産との関係が浮かび、上がってくることになる。

このように資本信用によって蓄積基金の不足が補われる場合も,商業信用 の場合と同様に部類Aの資本家群は,次年度には部類 Bのー資本家群として 資本信用を供与する側に廻ることになる。

なお,商業信用の場合とはいくらか異なって資本信用の場合では商品流通 では貨幣が登場すると考えられる。このことは部類Aの資本家群が次年度に Blとして蓄積基金の形成を行なう場合に,債務の返済者であると共に信用 の供与者として同時に現われることが考えられないといつことを示している。

なぜならば,次年度Blとして蓄積基金の形成を行なうためには,部類AI 対して生産手段の販売を行なわなければならないが,部類Aはそのための購 買手段を信用によって供与しなければならないのに対して ,B1にはそのた

めの貨幣が存在しないからである。つまり,部類Aの資本家群に対する資本 信用は,ここでの限定された条件のもとではB2̲B4の資本家群より供与さ れると考えなければならない。このようにして,部類 Aの資本家群は次年度 にはB1(そして B2B3, B4)として再度五年間にわたる蓄積基金の形成 を行なっていくことになる。

ここで商業信用による場合には貨幣節約が行なわれるのと異なって,資本 信用の場合には年々の貨幣量が蓄積率に対応して増加していくことが必要で ある(貨幣の流通速度一定の仮定による)。拡大再生産表式では貨幣不足は発 生しないと想定している(高倉 (863ページ)。すなわち年々拡大していく 商品流通のために必要な貨幣は基本的には,信用制度自体の中から生み出さ れると考えることになる。でなければ,早晩蓄蔵貨幣が有価証券に置換され ていく中で貨幣供給源としてはその掴渇が生じることになる。そのような貨 幣が中央銀行券であるか預金通貨であるか,あるいは金貨幣の増加であるの

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かは本稿の課題ではないが,そのような信用制度の存在による流通貨幣量の 増加を前提しない限り拡大再生産表式の年々の円滑な進行は考えられ難いで あろう。あるいは,金本位制を前提とするならば成長率 (Wt+l/Wt)に応じた 金生産量の増加を考えることも可能で、はある。ともあれ,ここではどのよう な源泉であれそのような貨幣量の増大のみが存在すればよいのである。

なお,ここでは資本信用を部類Bのみより与えられるとして展開したが,

その限定を外してもやはり今年度の部類Aの資本家群は次年度において B1

としては資本信用の供与は不可能で、ある。このよつな限定を外せば,金融市 場と現実資本の蓄積の関係は社会全体の視点から考察されることになる。

ii)  MvIIMcについて

拡大再生産の均衡条件は 1(V+Mk+Mv)=II (C+Mc)であるが,こ こでも考察を容易にするためにそれを 1Mv= IIMcと単純化して考察する。

ここでは,商業流通のみでなく一般的流通も分析対象に含まれる。ここでも IMvIIMcのそれぞれについて蓄積年数は5年とする。 IMvについては 資本の有機的構成 (C/V)を各部門で一定とした想定に応じて機械的に仮定 したものである。

まず ,IIMcについて見てみよう。 IMcと同様にIIMcにおいても蓄積年 数を一定とした場合に蓄積基金の不足が部類Aの側に生じる。 (1)に示される のと同じ不足がIIMcにおいても生じている。それゆえIIMcの部類Bから の信用によってその蓄蔵貨幣の不足が補われることも同様に考えられる。し かし,ここではIMvとの労働者による購買が介在する部門聞の流通が商品 の価値実現のためには必要で、あるから, Mcでの商業信用のような資本家 間での貨幣節約は想定し得ない。ここでは部類Aでの購買手段の不足が資本 信用によって賄われる場合のみが適合する。 IMvについても同じく部類A とBとが存在することになるが,労働者による購買が行なわれるのであるか ら,同じくここでも蓄蔵貨幣量の不足には資本信用のみが対応しうることに なる。なお,ここでは Mv部分についても資本信用概念で包括しているが,

それは蓄積年数を単純化のために全て一定としたために生じたことである。

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ともかく C部分のみでなく V部分についても資本信用によって賄われると想 定することは十分に可能で、ある。ただ,証券市場との関連を考えるときには,

McあるいはIIMcにおける蓄蔵貨幣の配分に株式等の有価証券が介在す ることが考えられるのに対して ,IMvIIMvにおける不足額については多 くの場合は信用制度による蓄蔵貨幣の直接的配分が行なわれると考えるのが 妥当であろう。

あるいはここで, MvIIMvにおける蓄積年数を0年と置くならば,

部類ABとの区別は消失し Mvに対する蓄蔵貨幣の形成は全く行なわれな いことになる。そして蓄積年数がl年以上であればそこには部類ABとの 区別が生じ,かつ部類Bの各資本家群の数はその蓄積年数によって規定され ることになる。 またそのょっな各資本家群 (B1,Bn) におけるそれ ぞれの蓄蔵貨幣の形成量は各部門の資本の有機的構成によって決定される。

Mv= IIMcという部門聞の均衡条件が成立すればよいのであるから,各部 門の各部分では独立に蓄積年数の決定が行なわれうることになる。それゆえ,

MvIIMcのそれぞれにおける蓄積年数は相違していても本文での展開 を左右することはない。なお,この蓄積年数の多少は両部門の資本の量およ びその有機的構成と関連している。

ここで先の仮定に戻ると,ごこでは部門間流通を考えることになるので Mcでの部類AおよびBでの分析とは異なった展開となる。つまり IMv の部類Bより部類 Aに与えられた信用から生じる貨幣はIIMcの部類Bの蓄 積基金の形成に吸収されることになり, またIIMcの部類Bより部類Aに配分

図一 3 ↓ 

音~lriA 音~lñB

1 MU ↓  W.. 労働者

w→蓄積基金の形成へ

nMc 部 類A 音~lJi B

↑  ←一一二了一

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された蓄蔵貨幣は rMvの部類Bでの蓄蔵貨幣の形成に吸収されると考える ことで,部門聞の貨幣流通は支障なく行なわれることになる(図ー3)。両部 門における部類Bでの蓄蔵貨幣としての貨幣の沈澱は以上の場合にのみ可能 である。

ここでは rMcIIMcにおける蓄蔵貨幣の配分が証券市場にかかわると 考えられるのに対して ,IMvについては銀行信用を通じた蓄蔵貨幣の直接 的配分が行なわれることが考えられる。

なお ,IIMvについても IMvと同様の機構で考えられる。この場合にも労 働者に対する賃金支払が組み込まれているので購買手段としての貨幣が登場 する必要があることから商業信用による蓄積基金の不足分の充当は考えられ ない。ここでは部門内転態であるので,図ー3における IMvIIMcとを IIMvに置き換えれば同様に貨幣は部類Aと部類Bの資本家群の聞を流通し ていくことになる。また,資本信用の供与者を部類Bに限定しないで他の部 分での蓄蔵貨幣の配分が行なわれるとしても同様の結果が得られることになる。

その場合であっても IMcの場合と同様に資本信用による蓄蔵貨幣の配 分が行なわれるときに,貨幣量の不足が生じてくるが,それもこの段階では

)と同様に事後的に中央銀行による信用か,あるいは銀行業による信用 創造によって賄われると考えることになる。

(1)  商業流通と一般的流通との区別については,川合 C)を参照されたい。

2.  信用の基本規定について

以上の分析のように,拡大再生産表式に一定の蓄積年数という条件を導入 するときに生じる部類Aの資本家群における蓄積基金の不足という事態に基 づいて『要綱』以来のマルクスの信用の基本規定を考えてみることができる (深町(J)。それは「流通時間の止揚」および「資本の量的限界の止揚」と いうこ様の信用の展開方向はこの蓄積基金の形成と支出の均衡の成立に際し

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60 

てどのような形式をもって部類Aでの蓄蔵貨幣の不足が賄われているかとい う点,そしてそのことによって拡大再生産における現実資本の均衡条件が達 成されるという点から統一的に理解することができょう。つまり生産上の要 求に応じて各部面へ信用が与えられていく場合に,商業信用あるいはそれに 対応する銀行信用のょっに蓄蔵貨幣が新たに購買手段へと転態することなし 商品が他の資本家群へ信用によって販売される場合と,既に形成されている 蓄蔵貨幣が新たな貨幣資本へと転化する場合とが考えられるのである。すな わちここでは,二様の信用の展開方向は各部面で の資本蓄積の動向において 統一的に理解されるといつことであり,そのことは資本蓄積に即した「利潤 率の均等化」に基づいて信用の二様の基本方向が理解されるということであ

る(高倉(10))

「流通時間の止揚」にせよ「資本の量的限界の止揚」にせよ本稿での表式 的表現においては部類Bの商品の実現に即しての表現となるために明確に表 わされ得ないが,二様の信用の基盤は,商品流通における貨幣資本の節約か,

あるいは資本循環 (GG')の拡大そのものというようにそれぞれに相違し ているのであり,それは第3部『総過程の諸姿態』段階では信用制度論およ びさまざまの信用論として具体化されることになる。

資本信用については,それが固定資本を基軸とする資本蓄積に有効で、ある と考えられることから,資本信用が蓄積率を上昇させることによってそれま での「均衡発展径路」から別箇の上方に存在する「均衡発展径路」への移行を 果たすことにもなる。その点で拡大再生産に対して商業信用が持つ効果と資 本信用が持つ効果とは相違してくることになる。それは手形割引市場と証券 市場とが拡大再生産に対して持つ効果が相違してくるということでもある。

以上の展開において,蓄積基金としての蓄蔵貨幣の形成量と拡大再生産表 式における蓄積部分としての現実資本の量とは当然一致していない。そして,

事前的にではなく事後的に拡大再生産表式を見るとき,そこでは拡大再生産 の均衡条件は維持されているが同時に債権・債務関係も発生している。拡大 再生産の年々の進行とともにこの債権の移転の場としての手形割引市場およ び証券市場も拡大していく。この過程で不変資本中の固定資本の比率が高ま

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ると仮定してみよう(2)そこでは資本蓄積は,減価償却と更新の差額の補填の 問題と絡むことになる(大島()および高倉()を参照)。後者の問題で も更新する側の資本家群において購買手段の不足が恒常的に生じている(高 須賀 (11)3篇)。この場合でも信用を考えざるを得ないのであり,償却と 更新の差額が全て固定資本へ転化するのではないとすれば,そこでも IF 門以外では資本信用以外の信用が登場する可能性がより強く存在する。

以上のように,拡大再生産表式においては,剰余価値の資本への転化のみ でなく更新部分についても,購買者側での購買手段の不足が常態化するので あり,その不足は「生産上の要求」に対応する信用によって補充されること になる。これらの諸要因と並んで,必要最低資本量が増大して蓄蔵貨幣の不 足をより厳しいものとし,同時に成長率が上昇する結果として実現されるべ き商品の価値額と購買者側での貨幣量との差が開くとすれば,そこでは証券 市場を通じる貨幣資本の配分がより重要なものとなっていくであろう。つま り購買者側での購買手段の不足が一層厳しくなる段階において,資本信用お よび証券市場の比重が急速に高まっていくことになる。その時,商品流通に 比べて金融的流通は相対的により大きく拡大することになる(西村()を 参照)。そして,それに対応して金融政策も変化していくことになる(4)

(2)  アメリカの事例についてはギルマン(1) 5章を参照されたい。

(3)  株式は株式会社への出資証書であるから債権とは異なる。本稿に即して言えば,部類 Aの資本家群が株式を発行して不足する購買手段を入手しでも,その資本家群は他の部 面の蓄蔵貨幣の形成者に対してその貨幣を返済する必要は生じないことになる。たとえば 部知Bの資本家群がその株式を所有すると想定しよう。彼らが次に部類Aの資本家群へ 転化するとき,その所有する株式はそのままでは購買手段として使用され得ないのは当 然であるからこの有価証券を他の資本家群に売ることによって貨幣を入手する必要が生 じる。

つまり,拡大再生産表式の均衡条件成立のために蓄蔵貨幣の配分を考える際に株式を 導入すれば,同時に証券市場が成立している必要があるのである。これに対して社債の 場合には返済が必要で、あるから,その償還期限が子容的年数に等しいかそれ以下の場合に は証券市場の存在は必らずしも必要ではないように見える。その場合,償還期限が蓄積

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年数を越えるときにはその流通市場が必要となる。しかし,ここで期限とは別の要因を 考えて,部類Bの資本家群のうち最も多く蓄蔵貨幣を所有する翌年度部類Aへ転化する資 本家群が社債を取得するとすれば,そこではやはりその流通市場が存在する必要がある。

このように特定化できない蓄蔵貨幣の所有者によって有価証券が所有される場合,そ こには流通市場が存在することが必要で、ありそのことによって部類Bの資本家群から部 Aのそれらへの転化も円滑に行われることになる。

商業信用については,資本家相互間では手形によって商品を購買することが可能で、あ ることから,手形の流通市場そのものが株式や社債の流通市場と同様に購買手段の入手 のために成立する必要はない。そして,手形における債務の返済期間は蓄積年数より短 いと考えられることから,商業信用についてはその流通市場を通じた購買手段の入手可 能性については問題は生じないと考えられる。それゆえ,手形割引市場は商業信用の銀 行信用による代位から銀行間市場として発生することになる(深町(2) 258‑274ペー ジを参照)。

(4)  ヒックスは次のように述べている。 r19世紀初期に存在したような,すぐれて商業的な 経済においては,為替手形の広汎な使用が全体系を短期利子率の変動に極端に敏感ならし めた。そのような条件においては全利子構造の尖端が短期率であったことはほとんど疑 いがない。長期率が通常それらの時代に安定しておったように思われるが,そのように 安定していたのは体系が短期率の変動にかくも敏感で、あったからであると実際主張して もよいであろう。しかし産業的および商業的事業の相対的重要性の変化と共に,そして また事業金融の方法のそれに対応する変化と共に,長期率は不可避的に重大性を増大し た。すでに(私の推測では)この世紀の初頭までには長期率は前よりはるかに多大の活 動をしなければならないようになってきていた。短期率の運動に重点を置いた定式化か ら長期率の運動に力点を置いたそれに変わることは,かくして事実の経過に対する理論 の全く当を得た適応に過ぎなかったJ (( )古谷訳206ページ)。

〔引用文献〕

1)  Gillman, Josef M., The Falling Rate 01 Profit, 1957西)11良一訳『利 潤率低下の理論」雄j軍社, 1968

) 深町郁繭『所用と信用一一貨幣・信用論の体系一一』日本評論者,1971

3)  Hicks, John R., A Contribution to  the  Theory 01 the Trade Cycle, 

(13)

1950,古谷弘訳『景気循環論」岩波書庖, 1965

(4 川合一郎『管理通貨と金融資本JJ(IT"川合一郎著作集JJ 6巻)有斐閣,

1982

西村閑也「金融資産の累積とインフレーションJ (川合一郎編『現代 信用論JJ(下)有斐閣, 1978年所収)。

大島雄一「固定資本の再生産と均衡発展径路一一競争概念としての組 蓄積率の定立一一J(平瀬巳之吉編「経済学・歴史と現代』時潮社,1974 年所収)。

高木彰「再生産表式論の研究」ミネルヴnァ書房, 1973

J 高倉泰夫「再生産と蓄蔵貨幣一一信用制度との関連において一一}'経 i斉論究JJ(九州大院)37 1976

i拡大再生産表式における磨損と更新についてJIT"経営と経 jJJ644 1985

(10J  i i競争」から「信用」への移行と金融市場」同誌65巻4 1986

(nJ  高須賀義博「再生産表式分析』新評論, 1968

〔追記〕 本稿は, 1987年度文部省科学研究費・総合研究(却による研究成果の一部である。

参照

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