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腎代替療法実施患者の感染モニタリングと新規の腎移植免疫抑制薬候補化合物に関する研究

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5 のTh1/Th2/Th17 サイトカイン産生量に影響を及ぼさなかった。一方 VK2 は、 健常者PBMC からの IL-4 産生量を増加させた(p=0.04)が、その他のサイトカイ ン産生量には影響しなかった。VK1 は Treg 率に影響を与えなかったが、VK2 は 100 mM で健常者 PBMC 中の Treg 率を有意に低下させ(p=0.04)、また透析患 者PBMC 中の Treg 率を低濃度から用量依存的に有意に低下させた(p<0.05) (図 2)。 第三章 植物由来アルカロイドの Tetrandrine およびその類縁体の T リンパ球 抑制効果に関する検討 Tetrandrine(Tet)および国内医薬品の有効成分であり Tet の類縁体である Isotetrandrine(Iso-Tet)の、T リンパ芽球性白血病 MOLT-4 細胞およびその薬物 耐性株であるMOLT-4/DNR 細胞の増殖に対する効果を評価した。同様に、健常 者および透析患者 PBMC の T 細胞マイトジェン応答性増殖抑制効果を検討し た。また、MOLT-4 細胞および MOLT-4/DNR 細胞の活性化 NF-B (p-NF-B)発 現に及ぼす効果を、ウエスタンブロット法で解析した。さらに、Tet と Iso-Tet を 含む7 種の類縁体の構造活性相関を検証した。

Tet および Iso-Tet は、MOLT-4 細胞と MOLT-4/DNR 細胞に対して、細胞増殖

抑制効果を示した。どちらの細胞に対しても Iso-Tet の方が強い効果を示した。

同様に、健常者および透析患者のPBMC の T 細胞マイトジェン応答性増殖に対

し、Iso-Tet は Tet より強い抑制効果を示した。また、透析患者の PBMC は健常

者のPBMC と比較して、両化合物の細胞増殖抑制効果に対する感受性が低かっ

た。

Tet と Iso-Tet は共に、MOLT-4 および MOLT-4/DNR 細胞の NF-B と p-NF-B

発現を抑制したが、この効果もIso-Tet の方が強かった (図 3)。Iso-Tet と Tet の

化学構造における絶対配置の違いが、T 細胞増殖抑制効果に違いを与えているも

(6)

6 7 種の類縁体を用いた構造活性相関解析の結果、C12 位および C7 位の置換 基はT 細胞増殖抑制効果に寄与し、特に C12 置換基の寄与が大きいことが示さ れ た 。 ま た 、 monobenzylisoquinoline 構 造 を 持 つ 化 合 物 と 比 較 し bisbenzylisoquinoline 構造を持つ化合物の方がリード化合物として優れていた。 一方、2 つの酸素原子を含む 18 員環マクロ環状構造の存在は T 細胞増殖抑制効 果に寄与し、P 糖タンパク質高発現による薬物耐性を回避する過程にも関与し ていると考えられた。2 分子の benzylisoquinoline ユニットの一方のエーテル酸 素原子の芳香環上の結合位置の違いは、T 細胞増殖抑制効果にさほど寄与しな い。以上得られた構造活性相関の知見を活かしてアナログを合成することによ り、より有望な新規免疫抑制薬候補化合物を提案できるものと思われた。 【総括】透析患者およびCKD 患者の末梢 T リンパ球中の ATP 値がこれらの患 者における易感染性のバイオマーカーとなり得ること、および本情報に基づい てテーラーメード療法を実施すれば同患者における感染症での死亡率を低減で きる可能性を示した。VK2 および Tet の類縁体は、腎移植時に用いられる既存 の免疫抑制薬の代替えもしくは併用薬として有望であり、今後更なる検討を重 ねることにより臨床への応用が期待できるものと結論した。

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7

略語一覧

ATP : adenosine triphosphate アデノシン三リン酸 CD: cluster of differentiation 分化抗原クラスター CKD : chronic kidney disease 慢性腎臓病

Con A: concanavalin A

eGFR : estimated glomerular filtration rate 推算糸球体濾過値 FBS: fetal bovine serum

FDA : Food and Drug Administration アメリカ食品医薬品局 GIO : glucocorticoid-induced osteoporosis ステロイド性骨粗鬆症 IL-6 : interleukin-6

IL-10 : interleukin-10

Iso-Tet : isotetrandrine イソテトランドリン

MTT : 3-(4,5dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide, yellow tetrazole

PBMC : peripheral-blood mononuclear cell 末梢血単核細胞 PHA : phytohemagglutinin

PMA: phorbol-12-myristate-13-acetate

QOL : quality of life クオリティ・オブ・ライフ S-Cre : serum creatinine 血清クレアチニン SD : standard deviation 標準偏差

Tet : tetrandrine テトランドリン

TNF- : tumor necrosis factor 腫瘍壊死因子 Treg : regulatory T cell 制御性 T 細胞

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11

このように本研究で目指した患者免疫能の新たな検査法や新規免疫抑制薬開

発の成果は、腎移植療法までを見据えたCKD 患者の治療や予後の改善に貢献で

(12)

12

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13

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15

CKD 患者は CKD 診療ガイド 2012 に従って、推算糸球体濾過値(eGFR:

mL/min/1.73m2) の値によ り eGFR 60-45 mL/min/1.73m2 G3a 群、45-30

mL/min/1.73m2G3b 群、30-15 mL/min/1.73m2G4 群、15 mL/min/1.73m2

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16

性剤を加えて細胞を溶解させ、細胞内のATP 量をルミノメーターによって定量

した(図3)。

図3 末梢血中の CD4 陽性細胞の ATP 量測定法

5.統計解析

末梢血中のCD4 陽性細胞の ATP 値と、被験者の S-Cre 値、年齢、および eGFR

値との相関性は、Pearson 検定、Kendall 検定および Spearman 検定を用いて解

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20 図9 CKD 患者における末梢 CD4 陽性細胞の ATP 値と eGFR との関係 3.糖尿病の既往と末梢 CD4 陽性細胞中の ATP 値との関連 最後に、透析患者およびG3b、G4、G5 群の CKD 患者を、それぞれ糖尿病性 腎症の既往の有無によって2 群に分け、両群間で末梢 CD4 陽性細胞の ATP 値 を比較検討した(表3)。いずれの群においても、糖尿病性腎症の既往が有る患者

と既往の無い患者群間で、ATP 値に有意な差は認めなかった(Mann Whitney U

検定)。

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22

していた。Dounousi らは、尿毒症の病態や血液透析療法が、腎機能を低下させ

る酸化ストレスレベルを増加させること、および血漿中の 8-イソプロスタン濃

度や血清中の総抗酸化物質量(total antioxidant status)と eGFR に相関があるこ

とを指摘している25) 末期腎疾患患者の免疫細胞は、貧血、カルシウムのリン酸化、代謝異常、栄養 失調、酸化ストレス等の、尿毒症に関連する種々の危険因子に曝されている。炎 症性サイトカインの一種であり、Th1 由来の免疫反応を抑える作用のある IL-10 は、末期腎不全患者でダウンレギュレーションされる一方、炎症を亢進させる IL-6 や TNF-の産生量は末期腎不全患者で増加する26)。つまり、今回ATP 値の 高値を示していたG5 群の CKD 患者のような末期腎不全患者においては、免疫 細胞が尿毒症原因物質により酸化ストレスを受けて、CD4 陽性細胞のダウンレ ギュレーションが阻害されていたことでATP 産生量が亢進していたと考察する。 また、CD4+naiveT 細胞率と S-Cre 値との間には負の相関があり、Th2 および Th17 細胞は末期腎不全患者群において発現率が高い27)。さらに、エフェクター メモリーT 細胞率やセントラルメモリーT 細胞率は S-Cre 値と正の相関がある と報告されており、これらの知見からも、腎機能の低下が T 細胞の機能に影響 を与えることがわかっている27) 本章で対照とした健常者群の年齢は、透析患者やCKD 患者群に比べて低かっ た。しかしながら、腎移植患者における免疫抑制薬の薬力学的パラメーターは年 齢と相関しないことが報告されている28)本章では、各被験者において末梢CD4 細胞中のATP 値と年齢との間に相関が認められなかったことから、健常者群と 患者群間のATP 値の比較において年齢の差は影響しないものと思われる。 第五節 小括 透析患者とCKD 患者は、健常者に比べて末梢 CD4 細胞中の ATP 値が低値を 示す傾向にあり、免疫能が低下して易感染状態である可能性が示された。特に、 ステージがG3a の CKD 患者は、健常者より末梢 CD4 細胞中の ATP 値が有意 に低値を示した。一方透析患者やステージの進行した末期腎不全患者では、尿毒 症に由来する代謝産物や透析による免疫細胞の刺激がATP 値に影響するため、

これらの患者では ATP 値の個体差が大きかった。なお年齢、S-Cre 値、eGFR

値、および透析歴は、ATP 値には影響を与えないものと思われた。

これらの結果より、末梢CD4 細胞中の ATP 値は、透析患者や CKD 患者の易

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24 第二章 健常者および透析患者の末梢血単核細胞の T 細胞マイトジェン応答性 増殖に対するビタミンK1 および K2 の抑制効果 第一節 序論 腎不全患者は生命を維持する上で、生涯継続した血液透析を回避するには、も う一つの腎代替療法である腎移植を行う以外に選択肢はこれまでのところない。 腎移植では、移植後の急性拒絶反応発症を予防するために、免疫抑制薬物療法が 必須となる。 しかしながら、現行の免疫抑制薬物療法下においては、拒絶反応が発生する症 例も少なからず見られる。また、過剰免疫抑制からなる日和見感染症やその他の 重篤な副作用が、臨床上の大きな課題となっている。これらの課題を解決する手 段の一つとして、新たな免疫抑制薬の開発が行われているが、その多くは分子標 的薬や抗体薬が主であり、さらなる未知の副作用や、強力な免疫抑制作用に基づ く日和見感染症や悪性腫瘍の発現がより一層懸念される。 そこで申請者は、腎疾患患者や腎移植患者等の治療に用いられている既存薬 の中から、免疫抑制効果を有しあるいは既存の免疫抑制薬の効果を増強する可 能性のあるVK 類に着目し、本章の研究を実施した。 PBMC に対する抑制効果が報告されている VK3 は肝毒性の副作用があるため 医薬品としては用いられていないが、VK1 や VK2 の PBMC 増殖抑制作用が認 められれば、免疫抑制効果を期待したこれら薬物の臨床応用の可能性も見出さ れる。 本章では、VK1 および VK2 の免疫抑制効果を健常者および透析患者の PBMC を用いて評価した。また、PBMC 抑制作用の機序を明らかにするために、健常 者および透析患者のPBMC から放出される Th1/Th2/Th17 の 7 種のサイトカイ ン量に対するVK1 および VK2 の効果を検討した。さらに、制御性 T 細胞(Treg) に対する影響を確認するために、各種特異抗体で染色した T 細胞をフローサイ トメトリー法にて解析した。 第二節 方法 1.試薬

(25)
(26)

26 を用いて、550 nm で吸光度を測定した。 4.PBMC 培養上清中の Th1/Th2/Th17 サイトカイン濃度の測定 PBMC 懸濁液を、5 g/mL の Con A と一連の濃度の VK1 または VK2 の存在 下で96 時間培養した後、培養上清を採取してサイトカイン測定まで-80 ℃で保 存した。 培養上清中に分泌された 7 種類の Th1/Th2/Th17 サイトカインの濃度を、 Human Th1/Th2/Th17 サイトカインキットを用いたビーズアレイ・フローサイ トメトリー法で測定した。 5.PBMC 中の CD4+細胞、CD4+CD25+細胞、およびCD4+CD25+Foxp3+細胞の 測定 Con A の存在下で VK1 および VK2 で 96 時間処理した PBMC を、リン酸緩 衝生理食塩水(PBS)で 2 回洗浄した。次いで、FITC マウス抗ヒト CD4 抗体試 薬10 L および APC マウス抗ヒト CD25 抗体試薬 10 L を添加した。これらの 細胞懸濁液を暗所にて37 ℃で、20 分間静置させた。その後、細胞を PBS で洗 浄し、1 mL の PBS で再懸濁した。Human Foxp3 緩衝液 A1 mL を蒸留水で 10 倍に希釈し、細胞懸濁液に加え、室温暗所で10 分間置いた。細胞を PBS で洗

浄し、10 倍希釈した Human Foxp3 Buffer A で希釈した Human Foxp3 Buffer B

(27)

27

(28)
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30 IL-2

IL-4

(31)

31 IL-10

(32)

32

図 13 健常者 PBMC からの Th1/Th2/Th17 由来サイトカインの分泌量に対する

VK の効果

IL-17

(33)

33 IL-4

IL-6

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40

3.試薬

Tet は SIGMA 社より、Iso-Tet は Santa Cruz Biotechnology 社より、各々購入

した。Fangchinoline、Berbamine および Dauricine は、Wuhan ChemFaces

Biochemical 社より購入し た。 Cepharanthine と armepavine は 、Cayman Chemical Company より購入した。DMSO は和光純薬より、RPMI 1640 と FBS

は Gibco BRL 社より購入した。Con A は生化学工業社より購入した。Phorbol

12-myristate 13-acetate(PMA)は Sigma 社より、Anti NF-B antibody は Cell Signaling Technology 社より、Anti p-NF-B antibody は Santa Cruz Biotechnology

社より、また-actin antibody は Proteintech Group より購入した。

ヒトT リンパ芽球性白血病 MOLT-4 細胞株は、DS Pharma Biomedical 社より購

入した。MOLT-4/DNR 細胞は、Liu らの方法に従い、MOLT-4 細胞を低濃度から

高濃度のDaunorubicin(DNR)に 3 か月以上かけて段階的に暴露させて得た36,37) その他全ての試薬は、可能な限り特級品を用いた。 4.PBMC の分離培養法および細胞増殖判定法 第二章、第二節 3 で述べた方法に従って実施した。第三章、第三節 1 におけ るTet および Iso-Tet の IC50値を、第三章、第三節3 の構造活性相関解析のため のTet および Iso-Tet の IC50値として用いた。 5.MOLT-4 細胞および MOLT-4/DNR 細胞の培養法 各細胞株細胞を、10 %FBS、100,000 IU/L ペニシリンおよび 100 mg/L ストレ プトマイシンを含む RPMI-1640 培地に 1.5×105細胞/mL となるように懸濁さ せ、その198 L を 96 穴プレートの各ウェルに分注した。各ウェルの細胞懸濁

液に、2 L の Tet または Iso-Tet 溶液を添加し、5 %CO2存在下に37 ℃で 48 時

(41)

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キングした後、膜を個々のタンパク質に対する一次抗体存在下に 4 ℃で一晩イ ンキュベートし、さらに二次抗体存在下に室温で 1 時間放置した。タンパク質 バンドは、ECL または ECL Prime Western Blotting 検出キットを用いて検出し た。シグナルは、発光画像分析装置(version 1.52e, National Institutes of Health, USA; http://imagej.nih.gov/ij)を用いて解析した。

第三節 結果

1.MOLT-4 細胞、MOLT-4/DNR 細胞および健常者、透析患者の PMBC に対す

Tet および Iso-Tet の細胞増殖抑制効果

ヒトT リンパ芽球性白血病 MOLT-4 細胞の in vitro 増殖に対する Tet と Iso-Tet

の平均IC50値はそれぞれ4.43±0.22 M および 2.19±0.27 M であり、Iso-Tet の

方が有意に強い細胞増殖抑制効果を示した(p=0.0022)(図 17)。

図17 MOLT-4 細胞に対する Tet と Iso-Tet の増殖抑制効果(IC50値)の比較

(42)

42

得させたMOLT-4 細胞(MOLT-4/DNR 細胞)36)に対しても、同様にTet と Iso-Tet

は増殖抑制効果を示した。Tet と Iso-Tet の平均 IC50値は、それぞれ 3.62±0.22

M および 2.28±0.33 M であり、Iso-Tet の方が有意に強い増殖抑制効果を示し

た(p=0.0087)(図 18)。

図 18 MOLT-4/DNR 細胞に対する Tet と Iso-Tet の増殖抑制効果(IC50値)の比

(43)

43

次に、健常者 PBMC の T 細胞マイトジェン応答性増殖に対する、Tet および

Iso-Tet の効果を検討した。各化合物の平均 IC50値はそれぞれ1.92±0.22 M と

1.29±0.14 M で あり 、 Iso-Tet は Tet よ り 有 意に 強 い抑 制効 果 を 示し た

(p=0.0411)(図 19)。

図19 健常者 PBMC に対する Tet と Iso-Tet の増殖抑制効果(IC50値)の比較

(44)

44 透析患者のPBMC の T 細胞マイトジェン応答性増殖に対する Tet と Iso-Tet のIC50値はそれぞれ3.03±0.28 M と 1.55±0.26 M であり、健常者の PBMC の 場合と同様にIso-Tet の方が有意に強い抑制効果を示した(p=0.0070)(図 20)。 なおTet の増殖抑制作用は、透析患者 PBMC に対する効果(IC50値:3.03±0.28 M)より健常者 PBMC に対する効果(IC50値:1.91±0.22 M)の方が有意に強か った(p=0.035)(データ未掲載)。

図20 透析患者 PBMC に対する Tet と Iso-Tet の増殖抑制効果(IC50値)の比較

2.MOLT-4 細胞と MOLT-4/DNR 細胞の NF-B の発現量や活性化に対する Tet

(45)

45

図21 MOLT-4 細胞(A)および MOLT-4/DNR 細胞(B)における NF-B およびリ

ン酸化NF-B(p-NF-B)の発現量に対する Tet と Iso-Tet の効果

写真はそれぞれ NF-B(左側)と p-NF-B(右側)発現の典型的な一例を示す。

-アクチンは対照として用いた。その下の棒グラフは、これら各転写因子発現量

の平均(SD)値(n=6)を示す。

*p<0.05, **p<0.05 and ***p<0.001(Bonferroni multiple comparison test による)

(46)

46

した。

Iso-Tet と Berbamine の化学構造は、C12 の置換基がメトキシ基(—OCH3)かヒ

ドロキシ基(—OH)かによって異なる(図 2)。MOLT-4 細胞、MOLT-4/DNR 細胞、

健常者PBMC、および透析患者 PBMC の増殖に対する Iso-Tet の平均(SD)IC50 値はそれぞれ 2.19±0.27、2.28±0.33、1.29±0.14 および 1.50±0.17 M であり、 一方Berbamine の IC50値はそれぞれ>10、>10、3.83±0.38 および 6.29±0.64 M であった。このように、検討した全ての細胞種に対して、Iso-Tet は Berbamine より強い増殖抑制効果を示した(図22、表 4-7)。なお Berbamine は、NF-B や p-NF-B の発現量に影響を及ぼさなかった(図 27)。 Tet と Fangchinoline の化学構造は、C7 の置換基がそれぞれメトキシ基(—

OCH3)とヒドロキシ基(—OH)である点で異なる(図 2)。MOLT-4

細胞、MOLT-4/DNR 細胞、健常者 PBMC および透析患者 PBMC の増殖に対する Tet の平均 (SD)IC50値はそれぞれ4.43±0.22、3.62±0.22、1.91±0.22 および 2.76±0.29 M であった。一方 Fangchinoline の IC50 値はそれぞれ 5.60±0.19、5.36±0.35、 1.83±0.29 および 2.38±0.28 M であり(図 23、表 4-7)、P 糖タンパク質高発現 による薬剤耐性を獲得した MOLT-4/DNR 細胞に対しては、C7 にメトキシ基を 持つ Tet の方が優れた細胞増殖抑制効果を示した(図 23、表 4,5)。しかしなが ら、MOLT-4/DNR 細胞における NF-B や p-NF-B の発現量に与える影響は、両 化合物間でほぼ同等であった(図27)。

Armepavine(図 2)は monobenzylisoquinoline であり、MOLT-4

細胞、MOLT-4/DNR 細胞、および透析患者 PBMC に対しては 10 M で細胞増殖抑制効果を 示さず、健常者 PBMC に対してのみ細胞増殖抑制効果を示したが、Tet や Iso-Tet と比較するとその効果は弱かった(図 24、表 4-7)。一方、MOLT-4 細胞と MOLT-4/DNR 細胞の NF-κB および p-NF-κB の発現量に対する影響は僅かであ った(図27)。 Tet、Iso-Tet、Fangchinoline、Berbamine、Cepharanthine は構造内に 18 員環 マクロ環状構造を形成しているが、Dauricine はマクロ環状構造を有していない

(図2)。Dauricine は、Tet や Iso-Tet と比較して、健常者 PBMC の増殖に対する

効果はほぼ同等であったが、MOLT-4/DNR 細胞増殖抑制効果は著しく弱かった

(図25、表 4-7)。MOLT-4 細胞と MOLT-4/DNR 細胞の NF-B および p-NF-B 発

現量へのDauricine の影響は、Tet と同等であった(図 27)。

Tet および Iso-Tet は、一方の benzylisoquinoline ユニットが C8、C7′間でエー

テル結合しているが、 Cepharanthine は C7、C8′間でエーテル結合している。

しかしながら、その細胞増殖抑制効果やNF-B および p-NF-B の発現量に対す

(47)

47

表 4 Tet 類縁体の benzylisoquinoline alkaloid の MOLT-4 細胞に対する増殖抑

制効果(IC50値)

Data were analyzed using Bonferroni multiple comparison test. **p<0.01 and ****p<0.0001 as compared with Tet; ##p<0.01, ###p<0.001 and ####p<0.0001 as

compared with Iso-Tet.

Benzylisoquinoline alkaloid IC50 value (M)

(48)

48

表5 Tet 類縁体の benzylisoquinoline alkaloid MOLT-4/DNR 細胞に対する増殖

抑制効果(IC50値)

Data were analyzed using Bonferroni multiple comparison test. **p<0.01, ***p<0.01

and ****p<0.0001 as compared with Tet; ####p<0.0001 as compared with Iso-Tet.

Benzylisoquinoline alkaloid IC50 value (M)

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49

表 6 Tet 類縁体の benzylisoquinoline alkaloid の健常者 PBMC に対する増殖抑

制効果(IC50値)

Data were analyzed using Bonferroni multiple comparison test. *p<0.05 and ***p<0.001 as compared with Tet; ####p<0.0001 as compared with Iso-Tet.

Benzylisoquinoline alkaloid IC50 value (M)

(50)

50

表 7 Tet 類縁体の benzylisoquinoline alkaloid の透析患者 PBMC に対する増殖

抑制効果(IC50値)

Data were analyzed using Bonferroni multiple comparison test. **p<0.01 and ****p<0.0001 as compared with Tet; ####p<0.0001 as compared with Iso-Tet.

Benzylisoquinoline alkaloid IC50 value (M)

(51)

51

図 22 構造活性相関― i) C12 位置換基のメトキシ基とヒドロキシ基による違 い

(52)

52

図 24 構造活性相関― iii) monobenzylisoquinoline と bisbenzylisoquinoline 構 造による違い

(53)

53

(54)

54

図27 MOLT-4 細胞(a)および MOLT-4/DNR 細胞(b)の NF-B およびリン酸化

NF-B(p-NF-B)発現に対する Tet、Iso-Tet、Fangchinoline、Berbamine、Dauricine、 Cepharanthine および Armepavine の効果

写真は、NF-B(左側)と p-NF-B(右側)発現の典型的な一例を示す。-アクチ

ンは対照として用いた。その下の棒グラフは、これら各転写因子発現量の平均

(SD)値(n=4)を示す。

*p<0.05,and ****p<0.0001 as compared with the group of control.#p<0.05 and ##p<0.01 as compared with the group of stimuli (Bonferroni multiple comparison

(55)

55

第四節 考察

Iso-Tet は、ヒト T リンパ芽球性白血病細胞株の MOLT-4 細胞およびその DNR

耐性株細胞である MOLT-4/DNR 細胞の in vitro

増殖を有意に抑制した。MOLT-4/DNR 細胞は、MOLT-4 細胞を DNR 存在下に長期培養することによって、薬物

耐性の原因となるP 糖タンパク質を高発現させた細胞である36)P 糖タンパク

質を高発現した薬物耐性 T 細胞は臨床でも起こり得るため、本章では親株の

MOLT-4 細胞と合わせて本耐性細胞株に対する効果も検討した。T 細胞の性質を

有し薬物耐性を示す MOLT-4/DNR 細胞に対して Tet と Iso-Tet が増殖抑制効果

(56)

56 図 28 bisbenzylisoquinoline アルカロイドの構造式 C12 の置換基が異なる Iso-Tet と Berbamine の作用を比較することにより、 C12 の置換基の違いは T 細胞増殖抑制効果に強く寄与していることがわかった。 Li らは、Tet が Berbamine よりも抗炎症作用や免疫抑制作用において優ってい ると報告している39) また、C7 の置換基が異なる Tet と Fangchinoline の比較により、C7 の置換基 も T 細胞増殖抑制効果に影響を与えるが、C12 の置換基ほどの強い寄与はない ことが分かった。特にMOLT-4/DNR 細胞に対しては Fangchinoline の抑制効果 は弱く、薬物耐性の原因となる P 糖タンパク質を高発現する細胞に対しては、 C7 置換基の違いは増殖抑制効果に大きく関与すると考えられた。しかしながら、 NF-B および活性化 NF-B(p-NF-B)発現量に対する両化合物の効果は同等で あったことから、これらの化合物によるT 細胞増殖抑制効果には NF-B 以外の 機序も関与していることが示唆された。 monobenzylisoquinoline 骨格を持つ Armepavine の T 細胞増殖抑制効果は弱 いため、リード化合物として bisbenzylisoquinoline 構造が適していると考えら れた。 マクロ環骨格に 2 つの酸素原子を含む 18 員環構造を有する化合物は、環状 構造を持たないDauricine と比べて増殖抑制効果が優れていた。MOLT-4/DNR 細 胞に対するDauricine の増殖抑制効果が著しく低かったことから、18 員環マク ロ環状構造の存在が P 糖タンパク質による薬物耐性を回避する過程に大きく関 与していると考えられた。

(57)

57 ぐエーテル酸素原子の芳香環上の結合位置の違いは T 細胞増殖抑制効果に大き く影響しないものと考えられた。安田らは、健康成人男子にセファランチン®(タ マサキツヅラフジ抽出アルカロイド)100 mg を単回静脈内投与したときのセフ ァランチン®の血中濃度Cmax は、1464±364 ng/mL(mean±SE)を示したと報告 している 40)。この濃度は Cepharanthine 2.41 M に相当し、本研究における PBMC に対する Cepharanthine の IC50値(表 6,7)と近似しており、臨床でも到 達可能な濃度と思われた。 最後に、本章ではヒトT 細胞性白血病 4 細胞とその薬物耐性株の MOLT-4/DNR 細胞に対する各種アルカロイドの効果を比較検討したが、いずれの化合 物とも親株と耐性株に対する効果に大きな差がなかったため、その増殖抑制作 用機序にP 糖タンパク質は大きく関与していないことが示唆された。 第五節 小括

Tet の立体異性体である Iso-Tet は、MOLT-4 細胞や MOLT-4/DNR 細胞の増殖、

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59 健常者および透析患者の PBMC の T 細胞マイトジェン応答性増殖に対し、 VK1 は抑制効果を示さなかったが、VK2 は有意な増殖抑制効果を示した。作用 メカニズム解析のために、まず健常者および透析患者のPBMC から分泌される Th1/Th2/Th17 由来サイトカイン量を検討したところ、VK2 は健常者 PBMC か らの IL-4 産生量を増加させたが、その他のサイトカインの産生量には影響を及 ぼさなかった。一方VK2 は、末梢リンパ球中の Treg 率を用量依存的に減少させ た。この傾向は透析患者の末梢リンパ球においてより強く現れ、VK2 の T リン パ球抑制効果のメカニズムに Treg への作用が関連していることが示唆された。 以上のVK2 の作用は、通常投与量の VK2 で得られる血中濃度を大きく上回る 濃度によってのみ現れるため、例えばVK2 を副腎皮質ステロイド薬と併用する ことにより臨床応用が可能になるものと思われた。VK2 と副腎皮質ステロイド 薬の相乗効果によってステロイド薬の減量が期待でき、さらにはステロイド薬 が誘発する日和見感染症や骨粗鬆症のリスクを低減できる可能性が示された。 3) 植物由来アルカロイドのTetrandrine およびその類縁体の T リンパ球抑制効 果に関する検討

Iso-Tet は Tet に比べて、MOLT-4 と MOLT-4/DNR 細胞、および健常者と透析

患者のPBMC に対して、より強い増殖抑制効果を示した。また、Tet と Iso-Tet

は共に、MOLT-4 および MOLT-4/DNR 細胞の NF-B と p-NF-B 発現を抑制し

たが、この効果もIso-Tet の方が強かった。Iso-Tet と Tet の化学構造における絶

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図 1    ビタミン K1、K2、K3 の構造式
図 2  Tetrandrine (Tet)および類縁体の構造式
図 3 末梢血中の CD4 陽性細胞の ATP 量測定法
図 4  透析患者における末梢 CD4 陽性細胞の ATP 値と S-Cre 値との関係 rk = -0.118
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参照

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