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昭和のテレビ, 世代の認識と時代背景

佐 藤 正 明*

The History of Television in the Showa Period and the Response of Contemporary Y outh to Showa Television Programming

Masaaki Sato

喜草

本稿は, 役代の認識と テレビ観についての 意識と , その テレビの 捉えかたについて, [" テレ ビジョンと私Jと いう テー ?の もとに傾向を探ってみた。 その 世代とは, 生 れたとき, 既にテレビが当

然の ように存在した世代であり, Jlつ放送 が完全にカラー 化 された時代に誕生 し, 文字通 り, テレビと 共に育って来た世代な対象に, その 役代が共通 にイメー ジしている事柄や テレビ像を務理し, マスメデ ィ アの 3::'1告となった テレどとの 付き合いかたや利用の 仕方, そして考え方などを時代背景に熊 らし, !笠 代が身に付 けている テレビ、観の 考察を試みた。

は じ め に

昭和28年のテレビジョン, 本放送開始から38 その間, 昭和3 4年の皇太子ご成婚や, 昭和 39年の東京オリンピックなど, 大きな出来事を 迎えるた びに大きく成っていったテレビ放送,

そして 今やマスメディアの王者に成長したテレ ビジョンであるが, その壁史はまだ僅か38年と 短い。 しかしこれほどまでに浸透したテレビジ ョン放送というものを考えてみる場合, 世代に よる認識の違いは興味あるものであり, 整理し てみる 必要がある。 ここで考える世代とは, 大 きく 2 分してみれば, 初めて生活の中にテレビ が出 現した世代と, 他方, 生活の中に既にテレ どは存在し, 特別な物では無かった世代とな る。

本稿では, その後者の世代を中心に, 特に 今 回は, テレビジョン放送がNHK, 民放とも全 面カラー放送になった 昭和 46年から 47年に生れ た女性180人を対象に, 昭和の時代, その一世 代のテレビ認識とテレビ感の考察を試みた。

*本学助教授

視聴覚数苦手

(343 )

1.

昭和46年, 47年当時のテレビと時代 者景(カラー放送へのステップ)

昭和35年 9月に始まった放送のカラー化は,

昭和39年の東京オリンピックのカラー中継で大 きく 前進することになる。 -B王子均のカラー放 送時間を見ても, 昭和36年 4月には, NHK総 合テレビの場合 1 時間であったものが その後 は急激にふえてし、く。 民放のカラー放送化も進 み, 昭和 4 4年 4月の番組編成では, ゴールデン アワ一時の平均カラー化率は50%を超え, カラ ー放送があたり 前になりつつあった。 そして序 々に, その後も 各テレビ局でのカラーイヒが促進 され, カラー放送開始から10年後の 昭和初 年,

大阪で 6ヶ 月間開催されたエキスポ' 70のカラ 一生中継で, 更に放送のカラー化と, カラーテ レビの購入に拍車がかかった。 特に生中継され たカラー映像は, 全国的なカラーテレどブーム を引き起こす引き金となった。 表lでも明らか なように, テレビ受像機( 白黒)の生産数をみ ると, 昭和 45年をピークに減産に転じ, 一方カ ラーテレビの生産は 昭和 4 4年� 45年に33%の増 加となり, 特に大きな伸 びを示している。 同時

(2)

文化女子大学研究紀要 第23集

表i テレビ受像機とラジオの生産

単位:千台

生白産 黒 テレビ

カラー テレビ ラジオ生産

生産

昭和40年 4, 060 98 22, 937 昭和41年 5, 074 520 25, 298 I

昭和42年 5, 681 1, 282 28, 180 昭和43年 6, 266 2, 735 30, 189 I

昭和44年 7, 284 4, 834 34, 090 昭和45年 6, 089 6, 399 32, 618 昭和46年 5, 378 6, 872 28, 091 昭和47年 4, 650 8, 388 26, 833 昭和48年 3, 681 8, 758 24, 484 昭和49年 3, 751 7, 323 21, 931 昭和50年 3, 152 7, 473 16, 364 昭和51年 4, 572 10, 531 19, 626 昭和52年 4, 710 9, 632 19, 933 昭和53年 4, 567 8, 549 18, 781 昭和54年 4, 212 9, 365 15, 421 昭和55年 4, 296 10, 909 16, 623 昭和56年 2, 948 11, 630 16, 192 昭和57年 1, 732 11, 423 14, 956 昭和58年 904 12, 372 13, 499 昭和59年 1, 036 14, 961 13, 589

にこのカラ ーテレビ続伸の影には, メ ーカ ーの 大量生産への努力と, 消費者サイドからの突き あげによる結果, 通産省による業界への指導な どもあったからである。 それは 昭和 45年 9月,

消費者団体は, 輸出価格と盟内販売価格の格差 に抗議して買い控えを決議, これを受けて通産

省、が, 各社に値下の行政指導を行なう結果にな り, 値下が実行された。 そのような経過もあ り, カラ ーテレビは順調に普及していくことに なる。 又ラジオも白黒テレビ同様, カラ ーテレ ビに仲され, 昭和 45年を境に, その生産は減っ ていった。

昭和 46年10月, NHK総合テレビは, 番組改

定と共に, 100%のカラ ー放送化を成し遂げる。

続く翌 47年には民放も, 全面カラ ー放送化に踏 み切り, 本格的な全面カラ ー放送の時代となっ て行く。

2.

受信契約数の増加

受信契約数の増 加の傾向を 表2 のNHK, テ レビ放送受信契約数で見ると 次のようである。

昭和 40年には7 4 %のテレビ普及率であった が, 45年には78.3%へと上 昇している。 そのう ち, カラ ーテレビの普及率は, 昭和 43年に7.9

%であったものが, 昭和 45年には33.6 %とな り 2 年 後 の 昭 和 4 7 年 3月 に は , 契 約数 11, 79 4, 279でカラ ーテレビは50%を超し つい に白黒テレビの契約数を上回ることになった。

昭和 50年 1月には, カラ ーテレどの契約数は 2000万件を突破する。 この年のテレビ普及率は 全世帯の約80%であるが, カラ ーテレビの普及 は全世帯の8 4%となっている。 つまり全契約数 の8 4%はカラ ー契約ということになる。 昭和50 年, このとき, 今回の調査対象世代は 3� 4才 で, テレビをある程度, 意識を 持って見始める 頃の年齢である。

3.

媒体月IJ広告費の推移

テレどが始まった年, 昭和28年のテレビ広告 費はl億円, ラジオは 45億円, そして 新聞は,

320億円であった。 表3 の媒体別広告費を見る と, テレビの広告費の伸 びが, 非常に顕著であ る。 特に 昭和30年代は, 神武景気と呼ばれた好 況に始まり, 好調な輪出や, さかんな園内消費 需要にささえられ, その好景気は 昭和39年まで 持続した。 特に 昭和3 4年から36年の経済成長は 著しく, 15%以上の成長が続いた。 そんな好景 気の中, 他人消費は大きく伸 び, 特に耐久消費 材の 家庭電化製品の普及が促進された。 この 家 庭電化製品は, 電気 洗濯機, 電気釜, 電気掃除 機, 電気 冷蔵庫, テレビ, ミシンなどであり,

著しく主婦の 家庭内労働を 軽減するものであ

(3)

昭和の テレビ, 世代の認識と時代背景

表2 テレビ放送受信契約数

契 約 数 カラー契約数 世 帯 数 テレビ普及率 カラー普及率

昭和40年 18, 224, 213 24, 656, 891 74.0%

昭和41年 19, 246, 542 25, 520, 079 75.4%

昭和42年 20, 270, 487 26, 403, 437 76.8%

昭和43年 21, 220, 733 1, 688, 897 27, 115, 293 78.2% 7.9%

昭和44年 22, 087, 548 3, 995, 800 28, 205, 976 78.3% 18.9%

昭和45年 22, 818, 567 7, 662, 636 29, 146, 288 78.3% 33.6%

昭和46年 23, 520, 254 11, 794, 279 30, 027, 454 78.3% 50.2%

昭和47年 24, 433, 463 15, 630, 946 30, 853, 005 79.1% 64.0%

昭和48年 24, 924, 985 18, 335, 615 31, 907, 780 78.1% 74.0%

昭和49年 25, 753, 396 20, 543, 694 32, 627, 792 78.9% 80.0%

昭和50年 26, 544, 758 22, 262, 448 33, 310, 006 79.6% 84.0%

昭和51年 27, 058, 881 23, 309, 448 33, 911, 052 79.8% 86.0%

昭和52年 27, 733, 219 24, 427, 429 34, 380, 314 80.6% 88.0%

昭和53年 28, 393, 682 25, 293, 365 34, 858, 696 81.5% 89.0%

昭和54年 28, 931, 692 26, 011, 397 35, 350, 173 81.8% 90.0%

昭和55年 29, 262, 991 26, 485, 928 35, 830, 857 81.7% 90.5%

昭和60年 31, 509, 288 29, 454, 146 38, 133, 297 82.6% 94.0%

昭和43年以降の契約数は, 普通契約とカラー契約の合計

り, その結果, 家事に関しても, 時間の余裕が 生れ, 生活にもゆとりが 持てるようになってき た。 そして その時間は, 当然、テレビの説聴にも 向けられ, 多くの情報がテレビを通じて入って くるようになった。 特に経済発展の為の消費を さ そうCMは, テレビでの効果が大きく, テ レビを有効な広告媒体として活用したのは, 家 電関連メーカーや, 食料品や医薬品, 化粧品メ カーであった。 表 4 のテレビ広告費業穂別構 成比の 昭和35年でもわかるように, 電気機器の 構成比が17. 4%と, その後の構成比にくらべて 大きい。 これは, まずテレビジョンを売り込む ことから始め, そして そのテレビを通して, こ れからの商品の宣告をして消費を伸ばしていこ うというものであった。 売り込みのためには宣 伝が 必要であり, その宣 伝の方法についても,

従来のような, ありきたりの商品説明ではな (345 )

く, 生活に夢を与えるような商品情報を流して いくというものであった。 新しい生活という宣 伝により, 又好景気に助けられ, 洗濯機, 冷蔵 庫は, 昭和39年の世帯普及率で80%近くに達す ることとなった。 その後は食料品関係の宣 伝競

争となり, チョコレート, ガム, 清涼飲料水と 続き, 更にインスタントコーヒ…, インスタン トラーメンなども良く宣 伝された。 インスタン トラーメンが普及を始めたのは, 昭和35年から 41年にかけてであり, ちょうどこの時期は, こ の業界が積極的にテレビのコマーシャルを利用 し始めた時期であり, テレビコマーシャルの効 果の高さが証明された。 もちろんこの背景に は, 戦後の生活スタイルの変化, 特に外闇映画 や海外情報や雑誌など, さまざまな 新しい情報 により洋風化された生活スタイル, 所得水準の 向上と世帯の分化, そして 更なる余暇時間の獲

(4)

文化女子大学研究紀要 第23集

表3

媒体耳目広告費

実質国民総生産 総広告費

昭和28年 146, 649 491 昭和38年 343, 602 2, 982 昭和39年 388, 756 3, 491 昭和40年 689, 919 3, 440 昭和41年 763, 249 3, 831 昭和42年 845, 670 4, 594 昭和43年 953, 185 5, 321 昭和44年 1, 070, 345 6, 238 昭和45年 1, 175, 914 7, 560 昭和46年 1, 231, 040 7, 868 昭和47年 1, 341, 473 8, 782 昭和48年 1, 459, 769 10, 768 昭和49年 1, 441, 665 11, 695 昭和50年 1, 476, 547 12, 375 昭和51年 1, 555, 018 14, 568 昭和52年 1, 637, 517 16, 427 昭和53年 1, 721, 334 18, 457 昭和54年 1, 811, 367 21, 133 昭和55年 1, 897, 872 22, 783 昭和56年 1, 794, 624 24, 657 昭和57年 2, 039, 082 26, 272 昭和58年 2, 101, 127 27, 820 昭和59年 2, 254, 958 29, 155

得などの条件の中で, 手軽で便利なインスタン ト食品などが利用され, 食品関連が伸びるとい う背景があったことは事実であるが, やはりテ レビによるコマーシャノレの影響が大きく作用し たということである。

ラジオ

45 171 170 161 169 195 233 291 345 388 428 496 554 602 704 811 908 1, 061 1, 169 1, 264 1, 330 1, 425 1, 501

(単位:億円) テレビ

新 開 雑 誌

320 25 899 1, 120 169 1, 081 1, 297 195 1, 110 1, 233 192 1, 247 1, 337 211 1, 509 1, 611 255 1, 745 1, 884 298 2, 042 2, 250 348 2, 445 2, 653 418 2, 954 2, 681 445 2, 841 3, 024 478 3, 522 3, 721 572 3, 917 3, 945 626 4, 208 4, 092 670 5, 093 4, 550 797 5, 847 5, 068 877 6, 535 5, 702 951 7, 508 6, 544 1, 119 7, 833 7, 086 1, 281 8, 389 7, 572 1, 450 9, 055 7, 333 1, 565 9, 620 8, 369 1, 739 10, 307 8, 468 1, 857

-テクニグス ・ ステレオ .アイロン

・クレンジングクリーム . スノ4ーグ 洗剤

・カップ。ヌードノレ .リボンシトロン コマーシャルについて, その中でも 表 彰され

たものを大雑把に 昭和 47年から 49年まで、を拾っ てみると, 次のようである。

昭和 49年 ・味噌

昭和 47年 ・カラーテレピ ・ パナカラー - ペプシコーラ

昭和 48年 ・ライオン歯磨

- チョコレート -タイヤ -クレラップ。

・エアコン

(5)

昭和の テレヒ\世代の認識と時代背景

-保険

・ニッカウイスキ

表 彰されたコマーシャルの内容も分野も多岐 に渡り, 世相としても消費拡大の様子が見え る。 またこれらのコマーシャルには, 音楽がつ きものであり, そのため 更に覚え易く, また繰 り返し効果のため浸透もはやく, CMの効果は 音楽とともに 更に高まった。

このようtこ, テレビコマーシャノレは, さまざ まな形で全閣に影響を与え, 消費を促がし, 生 活を変化させていき, 消費を讃える方向へと広 告は走っていった。 このような勢いで, 土段々大 きくなったコマーシャルは, その制作技術の向 上と共に, また 昭和 40年代の放送のカラー化に 伴い, 一層世の中に浸透していくことになる。

そしてテレピ広告費は, 昭和3 4年には238 寵円 となり, 媒体別構成比も9 .9 %から16 . 4%に上 昇し, 162億円のラジオを追い越してしまった。

そしてこのテレビ広告費は, それまで広告費の ほぼ半分を占めていた 新聞にもせまり, ついに 昭和50年には, 常に広告媒体費のトップの肢を 占めていた 新聞を追い抜いてしまった。 尚 その ときの媒体構成比は総広告費に対して, テレビ 3 4%, 新開33.1%, ラジオ 4 .9 %, 雑誌5 .4%,

DM屋外 その他22 .6 %であった。

4. 媒体としてのテレビの特性と利用

媒体としてのテレビの特性を見るにあたり,

ここでは 表 4 を見ながら広告費の業種別構成比 を参考にして見ることにする。 前項目で, 昭和 47年から50年に 於いて 表 彰されたコマ…シャル の内容を示してみたが, 一番構成比率が高いの は, どの時代でも, 食品・飲料となっており,

昭和 40年以降は, それに 次いで化粧品, 洗剤,

薬品が常に上位に位置している。 これらを宣 伝 するための媒体としてのテレビの特性と長所,

そして その短所についても 次のように理解する ことができる。

特性

1) もともとテレビ放送 そのものの放送内容 は, 他のラジオや映画, 新聞などの 従来の媒体 と比べて, 機能範囲も広く, llつ極めて多様な ものである。 テレビは視覚 (映像), 聴覚 ( 音

声)の再方で訴えるため, 強い印象を与えるこ とができる。 加えて同時性という強い特徴があ り, そのフレームに閉まれた 表現部は, 人を引 き付けるものがある。 特にカラーの場合は, そ の色彩により, 強い訴求力が期待できる。 研究 によると, カラーの場合は白黒に比べて30%以 上強い効果があると報告されている。 前述のよ うな特性により消費文化の中でメディアのトッ プに立ったテレビは, 消費礼讃の空気の中に 更 に 新しい商品知識を 次々と送り込み, 豊かな生 活への願望を誘い, ますます消費意欲を刺激し ながら、 その存在感を高め, 媒体としての優位 性を特徴付けていくこととなる。

2) テレビ視聴可能な時間帯には, 常に多く

表4

テレど広告費業種別構成比

昭和32年 昭和35年 昭和40年 昭和45年 昭和50年 昭和55年 昭和58年 食品 - 飲料 19.1% 21. 9% 28.7% 24.7% 29.1% 28. 1% 28.7%

17.3% 11.4% 16.9% 10.2% 7.9% 8.7% 8.9%

化粧品 - 洗剤 10.1% 9.2% 11. 3% 10.7% 10.4% 11. 6% 11. 0%

衣料・ 見回品 6.5% 7.6% 4.0% 2.7% 3.1% 3.6% 3.7%

電 気 機 器 19.0% 17.4% 7.1% 7.5% 5.0% 5.7% 5.2%

家庭用品 ・機器 1. 7% 1.6% 4.1% 5.2% 5.7% 5.2% 5.6%

サ ービス ・娯楽 4.0% 1.0% 3.3% 5.3% 6.4% 6.5% 5.9%

(347 )

(6)

文化女子大学研究紀委 第23祭

の視聴者を, テレビの 前に予想することができ

る。 NHKの調査によると, 毎日のように (週 6 � 7 臼)テレビを見た人は85%としづ数字で ある。 1 日のうちでは王子臼平均で91.8%の人が 1 回はテレビを見ており, その平日 1 日の平均 視聴時間はおよ そ 3 時間とし、う数字が報告され ている。 また余暇にすることで好きな事は, と いう問については 1 番がテレビを見ること (69.3%) 2 番は 新聞を読む ( 45.2%), 3 番が ごろ寝をすることは2.6%)のように, テレビ を見るということは, 極めて日常的な行為とな っ て い る こ と が わ か る 。 ( 昭 和 5 9 年 1月の NHK調査より。 複数回答)

長所

・繰り返しによる訴求効果があげ易い。

・視聴者は, テレビ画面と向い合うという対 面性のため, 視聴、者の参 加意識が高まり,

内容の理解を早める。

・商品の具体的なデモンストレーションがし 易い0

・全国的にも地域的にも, ネットワークの利 用で, 市場の選択に関して融通伎が高い0 . あらゆる客層をカパーするのが容易であ

る0

・全閣のほぼ全世帯にテレビが普及してい る0

・ 従来には無かった 新しい 表現の方法が可能 である。

以上, 媒体としてのテレビの特性と長所の主な 点として挙け寺てみたが, 反面テレビには適さな い点もある。 言い換えれば, 媒体としてのテレ ビの短所ということになるが, それは 次のよう である。

短所

・訴求カは非常に強いものがあるが, テレビ は, その提示するメッセージに時間的制約 を受ける。 この部分は, 新聞と相反する部 分である。 新聞ならばス ペース, 場所, 提 示時間, 頻度など, かなり柔軟な展開が可 能である。

・多数の視聴者は常にテレビの 前に居るが,

提示側は, 必らずしも希望する時開や, 希 望 番 組 が 手 に 入 る と は限ら な い 。 ま た CMの内容などは, 放映されるとすぐに消 滅してしまい, 内容の詳細を{云えること や, 比較をすることや, 見直すことは不得 意である。

・訴求効果が高い反面, 訴えかたが不快で、あ ったり, 方法を誤まると不信感が増す結果 となる。

・番組及 びCF制作に掛る費用の負担が大き し、。

tJ、上, 主な特性を挙げてみたが, テレビの 持 つ同時性, 表現力, 訴求性は常に大きな影響力 を 持って存在している。 しかし その効果的なメ ディアと自然、に付き合い, うまく利用してきた 世代は, 映像情報を巧みに取り込み利用してい る。 たとえばビデオの利用である。 従来は, 映 画館へ足を運ばなければならなかった映画も手 軽にレンタルできるため, よく利用されてい る。 もともとテレビに, 娯楽とし、う要素が期待 されていることは, テレビが始まった当所から 今日まで変っていない。 これは, 一般の調査で も, 又 今回の調査でも明らかである。 特に映像 から得られる情報は広い範聞の文化であり, 内 外の文化に手軽に接することができるというこ とは, 今の世代の特権でもある。 そんな環境の 中に育ってきたテレピ世代の映像感覚は, 無意 識のうちに非常に敏感なものに仕上がっている が, 冷静さも欠いていない。 こんなテレど観を 持っている彼女達の具体的なテレビ像を 次に探 ってみた。

5.

若い世代が捉えるテレビ像

1) テレピ世代

テレどが広告費で, 今まで媒体の 1 伎であっ た 新聞を抜き, マスメディアの王様になろうと する直 前に生れた世代を対象に, その世代のテ レビ感と, テレビの捉えかた, あるし、はイメー ジしているものの共通点をさぐり, 時代とテレ ビ、の考察を試みた。 世代とテレビを捉えてみる

(7)

昭和のテレビ, 世代の認識と時代背景

表5

放送時間のカラー化

NHKテレビ 日本テレビ TBSテレビ フジテレビ テレビ草î1lFl テレビ東京

昭和35年 37分 1時間45分 4 分

昭和36年 l 待問 2時間42分 6 分

昭和37年 l時間 3時間 4 分

昭和38年 1時間22分 2時間28分 4 分

昭和39年 1時間31分 3時間12分 4 分

昭和40年 l時間50分 211寺間 4 分 4 分

担召手官41壬ド 2時間20分 2時間53分 16分 22分

昭和42年 5時間06分 4 待問44分 1時間10分 1時間15分 1時間20分

昭和43年 6時間41分 3時間39分 2時間55分 1 時間51分 1時間45分 46分

昭和44年 8時間55分 6時間51分 5時間40分 3時間28分 3 待問29分 3時間34分 日平均のカラー放送時間, 放送局名は現社名で表示

場合, テレビは, 昭和28年の本放送開始後, 今 日でわずか38年と, まだ その歴史は浅いので,

対象を 2 つに大別してみた。 それは, 生れてか らテレビに出会った世代と, もうひとつは生れ たとき, すでにカラーテレビが 家の中に存在 し, 特に何の疑問も 持たずに, テレビと共に育 って来た世代である。 今回は その後者を対象 に, テレビと共に育って来た世代のテレビ観を 探ってみた。 昭和 46年, 47年生れの女性180名 を対象とし テーマに添って記述をしてもらう 方法を取った。 尚この女性達は, 文化女子大 学 短期大 学部国際文化 学科の 学生で, 一年間, テ レピ発達史論を受講した 学生である。 そして そ の出身地域については, 関東地方78 .3%, 中部 地方12.8 %, 東北地方5.0%, 中園地方1.7%,

九州地方1.7%, 近畿地方0.6 %となっている。

テ…?については, rテレビジョンと私」と いう題で, その記述内容については特に指示せ ず, テ…マについて思う所を自由に記述をして もらった。 この世代を選んだ訳は, 1.のカラ の時代で、述べたように, 昭和 46年, 47年は,

NHKと民放が放送を完全にカラー化した年で、

ある。 つまりこの世代は, 生れたときから にカラー化された映像を見て脊って来ている世 代ということである。 もちろん それより以 前の

(349 )

放送でも, 放送のゴールデンタイムは既にカラ ー化されており, 各局ともプログラムのかなり の部分はカラー放映していた。 表5 で、わかるよ うに, 民放では日本テレどがカラー化に一番積 極的であった。 いずれにしろ, 今国対象とした のは 前述のように, 完全カラー放送の時代に育 ってきた世代で、ある。

2) 共通のことば(テレビの表現)

ここでは, rテレビジョンと私」というテー

?で、脅かれた内容から, その共通点をピックア ップし, 世代の 言葉とテレビ観 (役割)をまと めてみた。 最初はテレビをどのように捕えてい るか, その傾向を探り, 次にテレビの功罪を探 ってみた。

「テレビ、の捉えかたJ(調査1991年l月25日)

<I情報源である

②テレビは生活の一部で 必要不可欠な 必需品

①生れたとき, すでにテレビがあった

④湾岸 戦 争関連の記述

⑤子供の壌のアニメ劇のテレビ視聴体験 ([何もする事が無いとき, 暇なときに見る

⑦ファッション(流行)をもたらす

③テレビの パーソナノレ化(個別jテレビで視聴)

⑨影響力が強い

⑬テレビがついていると安心する

(8)

文化女子大学研究紀要 第23築

⑪テレビは見るが, 新聞は読まない

⑫テレビはき弘、

⑬与えられるばかりでなく考えて見る 必要性

⑬テレビと共に生活して行きたい

⑬番組を選ぶ 必要性

以上が, テレどについて抱いているイメージの 共通項目の代 表であるが, ③までの記述が群を 抜いて多かった。 項目は, 意見の多いIi煩に説べ たが, やはりこの世代は, テレビ文化の中に生 れ育って来たため, テレビは重要な唯一の情報 源であり, 生活の一部で日常生活の 必需品とい う意見が最も多かった。 続いて生れたときにテ レビがあったとの記述が 3 番目であった。 これ はテーマをfテレビジョンと私」と指定したた め, テレビと私について改めて考えて見ると き, 生れたときにテレどがあったとし、う記述に 結びイすし、たことが理由として大きいと思われ

る。 なぜならこの世代の両親はテレビが無い時 代に生れて来たため, 折に触れ親や祖父母か ら, Iテレピが始まったころは」との話を聞く ことがあるとの記述も多くあったことから理解 で、きる。

④番目に多かった記述は, テレビの捉えかた とは少し異なるが, 湾岸 戦 争に関しての記述で あった。 γ度当時は, 連日のように湾岸 戦 争に ついての報道が行なわれており, その関連の記 述があったことは当然と考える。 その捉えかた は, 妙に遠くて近い 戦 争であり, まるでテレビ ゲームを見るような気分でもあり, 又お茶の間 で ご飯を食べながら, リアルタイムでミサイル の発射を見ているなど, 本当に 戦 争が行なわれ ているのだろうかと, ふと思うような気 持にな ったとし寸意見や, この湾岸 戦 争で, 戦 争の恐

怖より, テレピのこわさを知ったとし寸意見が

表6 成長と番組の傾向

ン ポよ キ ン し

ツ。ヒつム

キうい一 ンぼとル ポ遊ん一 けとさパ らマ母ン ひマおロ イ デ

ジ ん

,寸

や ヤ犬ハち

キ の イ一 の アサ日ア イ 一ス少ッリ 女 コ一 デJダス

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ンンプつ使ク

ヤ ラ ル み法ン キ フ アひ魔ピ

ヘスト テン トップ テン ドラマ

映 碩

ドキュメンタリー ニュース

ユユースス テーション

ドラマ

(9)

昭和の テレピ, 世代の認識と持代背景

見られた。

5 番目に多かったのは幼稚園から小 学校時代 にかけて見たアニメ劇についての記述である。

表6 でも明らかなように, 具体的に記述のあっ た番組名を整理してみると, すべて幼稚聞から 小 学校の頃に見た番組ばかりであり, その中で も, フジテレビの「ピンポン パンJ, Iひらけポ ンキッキJ, 日本テレビの「ロン パールームJ NHKの「お母さんといっしょjを除けばすべ

てアニメ番組で, その記憶も彩かで, 番組名も 具体的である。 その後中 学, 高校時代について は, 歌番組やドラマ, 映画, ニュースなどの 表

現で, 具体的ではない。 もともと幼児期におけ る子供の感受性は, 物事を そのまま疑いもせず に素直に受け入れる年代である。 従がってこの 填接するものは, その影響力も強力であるの で, タイトル等も具体的に 又内容についてもよ く記憶されていたということである。 これは,

逆に幼児期に出会う番組がし、かに大切であるか ということを示している。

それにしても, 一部ではあるが, 以 前の鉄腕 アトムのように, しっかりしたストーリーの中 での 戦いのひとコ?というようなものは無くな り, ただ派手なアクションと 戦いのためだけの 内容の薄いストーリーの展開で, 番組中%以上 が 戦いのシーンなどとし、う最近の子供向アニメ は, その年代と影響され易いことを考えると残

念な傾向である。

6 番目は暇なときはテレビという記述であ る 。 一昔 前はラジオがBG Mがわりであった が, 今やテレビがBG Mのように使われ, 時間 があまると何となくスイッ チONされ, 積極 的に消されないままテレビで時聞を過 ごすとい う記述も多く見られた。 特に朝などは, 時計が わりのテレビという傾向が強いようである。

次に多かったのは, テレビの全国ネットによ る情報 伝達の同時性と即時性が そのまま形にな ってしまったような内容で, ファッション (流 行)を 持たらすとし、う記述であった。 これは昔 も 今もテレビから得る情報が, かなりウェイト を占めているようである。

( 351 )

8 番目はテレビの パーソナル化という点であ るが, チャンネル 争いなどとし、う 言葉は, もは や死語になってしまった。 テレビの生産は, そ の需要と技術の向上と共に飛躍的に伸び,

かな生活環境の中で 2台目テレビを可能にして いった。 このテレビのノミーソナル化は, 個人の ニ…ズの多様化とし、う時代の要求と, テレビの 入手伎が合致し, 容易に受け入れられていっ た。 今後も増々この額向は強まると思われる。

以上のように, 記述の多かった15 項目をまと めてみたが, この世代のテレビの捉えかたにつ いて, 次のように 表現できる。

テレどは生れた時から存在し, 今や生活の 必 需品であるが, 特別な存在では無い。 多くの情 報はテレビから得ており, 新聞はほとんど見な い。 まさにテレビと共に成長して来た。 情報と いうものは活字だけでは不十分で, 映像が 加わ ることにより, 主題の回りが見え, 雰臨気が見 え, そして 更に主題がはっきりと見える。 テレ ビにより世間は広がったが, コミュニケーショ ンの内容はテレビの影響を受け, 会話の範屈は 狭くなった。 テレビは偉大なる知識の箱である ことは事実であるが, 自分に 必要なものを選ん で見ることが 必要であり, 考えを 持って見るこ とが 必要である。 とまとめることができる。

次にテレビ‘の捉えかたに続き, 具体的なテレ ビの良い点, 悪い点についての記述をまとめて みた。

良い点

①情報源として ( 同時性)

②娯楽を与えてくれる

③共通の話題により, コミュニケーションに 役立つ

④感動を与えてくれる

①映像、と一体のニュースは 判断しやすい

⑥料理番組など, 具体的でわかり易い

⑦活字で見えない所が見える

上記 ①~⑦が代 表的な記述であった。 特に情報 源として, とし、う指摘と娯楽の提供, コミュニ ケーションに役立つとの記述が多く, 日常の中 に深く入りこみ, 利用されている様子が伺え

(10)

文化女子大学研究紀要 第23集

る。 この結果は, 昭和63年にNHKが行なった

放送意向調査「テレビの役割」でも同じような 傾向であり, それはもはや, テレビは日常性,

総合性の高い情報メデ4アであり, 社会認識の メディアとしては, 新聞よりも適しており, 情 報の入手ばかりでなく, 情報の中に社会の周辺 も見え, 世の中の仕組の理解に役立つものであ るということである。

悪、い点

①考えなくなった

②集中力の不足

①創造力が低下した

④テレビが生活を変える

①コミュニケーションの機会が減った を情報操作

などが具体的に述べられた項目である。 活字か ら離れて行くことにより, 想像し, 創造するこ とが不得手になっているようである。 又王子行し て, 情報操作されているとし寸意識も, 持ち合 わせている。

6. 番組種類別放送時間の変化

表7 に商業放送における番組種類別放送時間 の変化を示した。 民放とし、う性格がら, 娯楽番 組の比重が大きいのは鎖けるが, 昭和50年当時 と最近の比率を比較してみると, 教養, 教育番 組の比率はほとんど変わらず, ただ報道番組の

比率が高くなり, その分娯楽番組のパーセンテ ージが減っている。 これは世の中の動きに連 れ, 情報源としてのニュース関連の番総などが 一般的に良く見られるようになって来たという ことである。 尚参考に 1 部NHK総合テレビの 比率を示した。 これは, 公共性の高い放送局と して, 報道番組に多くの時間を割L、ているのは 納得できる。 ともかく若い世代が, ニュース系 の番総も含めて, テレビを大切な情報源として し、る傾向と一致している。

お わ り に

テレビは時と人の流れと民衆の顔を見ること ができる。 つまり世界が見え, ベルリンの壁の 時のように歴史が見える。 そして成長過程で は, 多くの有益な疑似体験をさせてくれるすば らしいメディアであるが由に, 時として 現実を 現実と感じる感覚が薄れる点や, あるいは文化 を規制してしまう可能性や, あるいは映像の一 部を全部と錯覚してしまう危険性をよく認識し ていなくてはならない。 今回の記述による内容 については, 生活の中に根づき, 密着している テレビとの印象と共に, 必要な物をうまく選 び, 且つ大切な情報源として, うまく生活の中 で活用している様子が見える。 また視聴の傾向 としては, 学年が進むにつれ, 更に選んで視聴 するようになり, 又全体の視聴時間も減少の傾

表7 商業放送番組種類別放送時間比

(一部 NHK) 昭和46年 昭和49年 昭和52年 昭和55年 昭和58年 平成1 年 昭( N和H田K年 )

1、品

11. 4% 11.1% 11.6% 13.0% 14.4% 18.5% 43.7%

教 養 27.6% 26.2% 24.9% 24.6% 24.1% 24.0% 22.8%

工円会ぐ

8.4% 11.7% 12.4% 12.8% 12.5% 12.1% 12.0%

娯 楽 47.6% 47.8% 47.1% 46.4% 45.6% 43.4% 17.9%

スヰぞーツ 3.7% 2.6% 2.8% 2.2% 2.1% 1.1%

広 告 0.5% 0.5% 0.6% 0.4% 0.5% 0.6%

その他 0.8% 0.1% 0.6% 0.6% 0.8% 0.3% 0.3%

(11)

昭和の テレビ, 世代の認識と時代背景

向で, その利用の中味についても一応合理的な

判断をしているようである。 今後ふえていくで あろう衛星放送と, その電波のボーダーレス化 の時代を見すえ, 今後もメディアの王者として 発展し続けるであろうテレヒ、は, その寅任と自 覚を 更に強く 持つ 必要がある。 向時に視聴者側 も, 伝達が一方向で思策の時間を得にくいテレ ビに対しては, 常に思策をするとし、う意識と批

判精神を 持ち続けることが 必要であり, このこ とが, 今後の映像文化の発展に大きく貢献する ものと思う。 テレビの中に生れ育って来たt!t代 は, この辺りをごく自然に認識し 多角的, 艮 つ効果的な利用をテレビに対して普通に実行し ている様子が, 記述内容からよく理解できる が, 同時にテレビはあまり信用できないと思っ ている傾向も顕著である。 それは, 4 の媒体と してのテレビの特性と利用の中の短所の 3 番目

(353 )

の項目, あるいは 5 の世代が捉えるテレビ像 の中の2)の共通のことはの中の悪い点の⑥情報 操作とし、う 表現からも読み取れる。

これから 更に多くなる映像情報氾濫の時代に 於いては, 特に画面の中の情報は, 全部の中の 一部とし、う認識を常に 持って受け取ることが 必 要であろう。

参 考 文 献

-通産省機械統計 年報

-経済企画庁「国民所得統計 年報j -経済企画庁「国民経済計算 年報」

.電通・広告 年鑑

・電通・ 日本 の広告

・民間放送 30 年史: 日本民間放送連盟 ' NHK 年鑑: 日本放送協会

・放送50 年史: 日本放送協会

参照

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