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自由貿易地帯構想 とイギ リス

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(1)

一 ヨーロッパ共同市場構想への 「対抗提案」

決定過程,1956年 (4)

益   田 実

目次

序章 「対抗提案」― Counter lnitiative"― の起源 第 1章  ク ラーク作業部会 の作業 開始 まで :56年 1月 〜 2月

(以上,法 経済論叢第 21巻 2号 掲載。)

第 2章  ク ラーク作 業部会報告の完成 まで :56年 3月 〜 4月 (以上,法 経済論叢第 22巻 2号 掲載。)

第 3章  自 由貿易地帯構想― Plan G"― の誕生 :56年 5月 〜 7月 (以上,法 経済論叢第 23巻 2号 掲載。)

第 4章  閣 僚 レベ ルでの合意形成へ の過程 :56年 8月 〜 9月 (以上,本 号掲載。)

第 5章  自 由貿易地帯構想 の発表 と反応 :56年 10月 〜 11月 結章 FTA交 渉 の開始 に向けて

1

7月 末 に提 出されたマ ク ミランとソーニクロフ トによる Plan Gの採 用 を提言する閣議覚書 は,閣 議での議論 に先立ち, 8月 1日 まず経済政 策委員会 (EPC)の 場 において議論 された。

EPCに 対 してマク ミランは 「将来の通商政策」と題す る覚書 も別途提 出 していた。その中でマ ク ミラ ンは,オ ース トラ リア との小麦貿易 問

を中心 とした対 コモ ンウェルス通商問題, ヨーロ ッパ共 同市場 間

(2)

題,国 内農業への長期的な所得保障問題の三つの相互に関連 した問題 について近い将来に包括的な政策決定が求め られると指摘 していた。そ の上で彼 は,今 後の検討 日程 として,対 ヨーロッパ通商問題 については 9月 末 ワシン トンで世界銀行総会後 に開催予定のコモ ンウェルス蔵相会 議で何 らかの説明 をする,オ ース トラリアとの通商交渉 もそれ までに再 開す る,そ のためには少 な くとも9月 第 1週 には EPCで の詳細 な検討 が必要であ り, 8月 中には官僚 による経済運営委員会 (ESC)で 各省庁 の見解 をまとめた追加報告 を作成する必要があると主張 していた

EPCで はまず,マ クミラン提案の上記 日程 は特 に異論 もな く承認 され た。ついで先 に提 出 された EI作 業部会作成報告書 を骨子 とす る二つの 閣議覚書 (CP(56)191お よび 192。第 3章 第 9節 参照)に ついて全般的 議論がなされた。 まず発言 したのはソーニクロフ トで,彼 は農業分野 を 除外す る OEEC諸 国による自由貿易地帯 とい う Plan Gの 概略 を説明す るとともに,大 陸の通商ブロック形成の動 きは (フランスの非協力的姿 勢 のために失敗す るか もしれないが)「強固な政治的感情的支持」を得て いる,他 方,オ ース トラリアに代表 される帝国特恵修正 を求める動 きも 強 ま りつつある, ヨーロ ッパでの通商上の主導権 と帝国特恵の双方 を喪 失す ることを回避するには,イ ギ リスは今 イニシアチブを示 さな くては な らない と力説 した

引 き続 く議論の中で閣僚達 は,ソ ーニクロフ トの求めるイニシアチブ の一般的な必要性 は支持 したが同時にい くつかの問題点 も指摘 した。す なわち,農 業分野 を除外す る自由貿易地帯 に参加 した として も,事 後 に 農業分野の包合の圧力が生 じることは必至ではないか ? そ の ような圧 力 に抵抗 しなが ら同時に国内農業 を保護 し, さ らにコモ ンウェルス諸国 か らの対 イギ リス農産物輸出,特 に小麦 と肉類の輸出増大の機会 も提供 する余地 はないのではないか ? イ ギ リス国内産業界への影響 の慎重な 検討が必要ではないか ? と いった ものである

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これ らの疑 間 に対 しては, 自由貿易地帯形 成 に よる ヨー ロ ッパ市場 の 拡大 と成 長 そ の ものが コモ ンウェルス産 原材 料 へ の需要 増大 の効 果 を持 つ ので はないか,西 ヨー ロ ッパ諸 国 との競争 に打 ち勝 つ こ とはイギ リス

産業の長期的な将来のためにはいずれ不可避ではないか, といった反論 が なされた。 また現在 ヨーロッパの進路 は不明瞭であ り,イ ギ リスによ る決定的なイニシアチブの提示 は大 きな政治的影響力増大 を期待で きる のではないか,そ して, 自由貿易地帯形成の持つ政治的な意義 を強調す れば,自 由貿易地帯参加への予想 される反発 一 帝国特恵の信奉者,労 組,特 定産業 な どか らの 一  に 対抗で きるのではないか といった指摘

もなされた

結局, 8月 の夏期議会休会 を控 えていることもあ り, この時点では間 題点 を掘 り下げる本格的議論 はお こなわれず,マ クミランの提案 によ り, 自由貿易地帯構想へのコモ ンウェルス,合 衆国, ヨーロッパ諸国の反応 がいか なる もの となるか,EI作 業部会 中間報告 を送付 して各 国駐在高 等弁務官 もしくは大使 に よる評価 を求めること, 8月 末 には ESCで 官 僚 レベルの検討 をお こない, 9月 第 1週 に追加報告の検討 をす ることの みを決定 した。ただ しマク ミランは, 自由貿易地帯形成 は容易ではない が,「我が国の経済的地位,政 治的地位 を長期的に維持す る手段 としては それにかわる選択肢 は存在 しない」と付 け加 えることも忘れず,彼 とソ ニクロフ トの選好が Plan Gの 採用 にあることを明 らかにしていた

翌 日開催 された閣議で この決定は追認 され,CP(56)191お よび 192 については,当 面閣議での議論 は延期する,そ の間,意 見のある閣僚 は 蔵相 と商相 に各 自見解 を送付す るもの とす る とだけ決定 された

。 さら に 8月 9日 には首相 と主要閣僚 による通商政策についての臨時間僚会議 において も, 9月 末の コモ ンウェルス蔵相会議で Plan Gに ついて説明 す ることがで きるように 9月 初 めに閣議での検討 を再開す ることが再確 認 された

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2

閣僚の中で最初 に意見書 を提 出 し,Plan Gへ の反対意見 を開陳 したの は,マ ク ミランの前 に蔵相 を務め,55年 中メ ッシナ提案に対 して消極的 な姿勢 を示 していた国璽尚書バ トラーであった。

8月 9日 バ トラーはマク ミラン宛 に 「連合王国の通商政策」 と題する 長文の覚書 を送付 し,同 時に,イ ーデ ン,ソ ーニクロフ ト, ヒューム,

ヒース コー ト=ェ イモ リ,植 民相 レノ ックス =ボ イ ド (Alan Lennox―

Boyd,the Colonial Sёcretary)に も同報 したl109。

バ トラーは,Plan Gに ともない予想 される問題 として,完 全雇用政策 への影響,国 内農業保護への影響,ポ ン ドの国際通貨 としての地位への 影響,な し崩 し的な大陸 との政治的統合の進展の危険, コモ ンウェルス 諸国 との連帯 を弱める危険の五つの点 を指摘 していた。

完全雇用 については,イ ギ リス産業界への保護の喪失は特 に ドイツと の競争 を激化 させ,完 全雇用政策に打撃を与えるのではないか,そ して それは国内政治上の好 ましくない影響,す なわち保守党への支持の減少 をもた らすのではないか, というのが彼 の懸念 であったm)。

国内農業についてバ トラーが危惧 したのは, コモ ンウェルスの一部へ の ヨーロ ッパ に対 して工業製品特恵マージンの減少への補償 をするため に,あ るいは ヨーロ ッパ の農業輸出国か らPlan Gへ の支持 を得 るため に,国 内農業への保護が縮小 されることによる保守党への支持の減少の 可能性 であった。当時政府 は農業法改正 による農民への長期的な所得補 償政策見直 しのための交渉 をお こなっていたが,バ トラーの見解では次 回総選挙の勝敗 は 「農業選挙区に依存」 してお り,Plan Gの 公表は 「 滅的」 な政治的結果 となると考 えられたのであるl121。

ポ ン ドヘの影響 についての懸念 とい うのはすなわち,49年 秋以降ア ト リー労働党政権下でイギ リス政府 に正式 に採用 され,引 き続 くチャーチ

(5)

ル政権以降 も,戦 後保守党政権の基本的対外経済政策の基盤 となってい た,そ してバ トラー個人 も蔵相在任 中に深 くコ ミッ トしていた, one world philosophy"(とバ トラーはこの文書で表現 していた)へ の悪影響 であった。 one world"政策は,IMG=GATT体 制 に基礎 をお く単一の 国際貿易 ・決済 システムの中で,イ ギ リスを中心 とす るポ ン ド決済圏で あるス ター リング地域の結束 を維持 したまま,ポ ン ドの対 ドル交換性 を 回復 し,国 際通貨 としての強いポ ン ドの地位 を構築す ることを目指す政 策であ り,Plan Gに よる大陸諸 国 との特恵的基盤 での通商 関係 の強化 は,長 期的には世界 を複数の貿易 ブロックヘ と分裂 させ,こ の政策 を阻 害す るのではないか とバ トラーは懸念 したのであるC131。同様の懸念 は相 前後 してイ ングラン ド銀行総裁か らもマ クミランの もとに寄せ られてい

過度の統合進展への懸念は,い わゆる 「 滑 りやすい下 り坂」( slip―

pery slope")論 ⑮ と言うべきものであり,メ ッシナ構想は直接には共

同市場形成という経済統合のイニシアチブであるが,そ の基本的動機は

政治的なものであり,究 極の目標は超国家主権的な政治統合であるとい

う認識に基づき,Plan Gにより共同市場と関わることによリイギリスが

そのような過度の統合に巻き込まれる危険があるのではないかという主

張であった ゛ ° 。これはその具体的可能性というよりも,理 念としての連

邦主義的統合への嫌悪感に基づ くものというべきであり,コ モンウェル

スの盟主であり,ア メリカとの特別な関係を保有 し,大 西洋同盟の中心

に位置すると自認するイギリスの 「 世界的大国」たる地位への自尊心に

由来するものであった。そのような自尊心はPlan Gの提唱者たるソ ー

ニクロフ トやマクミランにおいて も変わるところはなかったのである

が,彼 らは大陸の統合運動を自らの指導下に制御できると (楽観的に)

考え,ま たそうしなくては長期的なイギリスの大国たる地位の維持は困

難になるという (悲観的な)見 方をとったのに対 し,バ トラ ーは,統 合

(6)

へ の圧力 は,特 に ヨー ロ ッパ の政治的統合 を強 く支持す るアメ リカな ど 外 部 か らの影響 を受 けた際 に抵抗不 可能 に まで高 まる危 険が あ る と (悲 観 的 に)考 え,無 用 な リス クを犯す こ とな くともイギ リスの大 国た る地 位 には影響 しない と (楽観 的 に)考 えたのであ る。

そのような長的的なイギリスの地位への楽観視は,帝 国特恵への信頼 にもあらわされ,帝 国特恵は崩壊 しつつあ り,新 たな通商政策によるそ の代替が必要であるというソーニクロフ トらの議論に対 してもバ トラー は疑間を呈 し,多 くのコモ ンウェルス諸国が嫌悪するであろうPlan G の採用はむしろコモンウェルスの政治的結束を弱め,そ してイギリスの 世界的地位 にも悪影響があるのではないか と現状維持 を提言 してい た ゛ の

最後にバ トラーはこれも55年 に蔵相 として彼がメッシナ提案に最初 に接 した際以来抱いていた,そ もそも共同市場は形成 される可能性が高 いのかどうか疑間であるという懐疑的見方を示 し,ス パークやベイアン のような人物が政治的に大 きくコミットしていることがメッシナの成功 を保証するものではない,フ ランスの対応は怪 しいものだ し,エ アハル トの反応からいってもドイツが真剣にコミットしているかは疑わしいと 述べ,そ のような不安定な推測に基づ き,Plan Gの ような,い ったん提 示 したらヨーロッパ側からの批判を受けることなくしてイギリス自ら取 り下げることのできない構想にコミットする,彼 の表現で言えば,「ルビ コン河を渡 り我が国の利害をヨーロッパに集中させコモンウェルスとの 紐帯を弱体化 させる傾向のあるこの新たな政策分野に踏む込む」前に,

「 極めて慎重な考慮をおこなう必要がある」 と述べていた l181。

首相 イーデ ンがこの問題 に積極的関心 を示 していない状況で,バ ト

ラーという最重要閣僚か らの直接かつ詳細な Plan Gへの反対論の提示

は,マ クミランに危機感を持たせたようであ り,彼 は閣僚間の支持拡大

のための個人的な働 きかけをおこなった。 8月 12日 には, 7月 段階で

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は 閣内 で も最 も強硬 な反対 論者 で あ った教 育相 エ ックルズ に対 して, E P C に お い て, P l a n   G は 単 なる経済面 の イニ シアチ ブ を示 す に とどま

らず,国 内外 に与 える 「劇的」 な政治的アピール としてのメリッ トもあ ることを強調する文書の作成 ・提 出を依頼す る書簡 を送 り,そ の支持 を とりつけることに成功 していた"。

一方,バ トラー覚書への直接の反論はソーニクロフ トによってなされ た。 8月 23日 彼 はバ トラーに書簡 を送 り (首相 その他主要閣僚 に も同 報),指 摘 された問題点 に逐次反論 した。

まず完全雇用については,そ の維持のためには需要水準の維持が必要 であるが,そ のためには主要 な競争国である ドイツとの政策協調が求め られ,Plan Gは その機会 を提供す る,さ らに,完 全雇用 にはイギ リス産 業側の柔軟性 も必要であるが,大 陸市場での競争機会の増加 はむ しろこ の点での改善要因 となる,そ して,個 別産業 について見 ると過去 10年 間 にイギ リス国内で起 きた産業 と雇用 の分布推移 は十分大 きな ものであ り,Plan Gに よるヨーロ ッパ向け関税 の漸減が比較 して特 に過大 な変動 をもた らす とは考 えられない,関 税操作 による個別産業の保護は困難に はなるが,それは競争相手 となるヨーロッパ諸国において も同様である, と反論 された。農業 については,Plan Gの 採否 に関わ らず ヨーロッパ に おける農業貿易拡大の圧力は存在する し,Plan Gの 提示 により新たに国 内政治上困難 な農業開放へ の コミッ トメ ン トを受 け入れる必要 はない, それに他の ヨーロッパ諸国 も一定の保護は必要 としているので理解 は得 られる, と指摘 された。ポ ン ドの国際的地位 については,対 ヨーロッパ 貿易 の増大 はむ しろポ ン ドの決済通貨 としての利用拡大 をもた らす はず である し,自 由貿易地帯の形成 はヨーロッパ との間の関税数量規制の廃 止 を意味す るのであ って も貿易規制の増大 で はない,ま たイギ リス と

ヨーロッパ全体の国際競争力 を増大 させ ることによ り世界規模 での貿易 自由化 をむ しろ促進 させ る効果があ り, one world"政策 に対立す るも

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のではない, とされた。社会政策の調和や超国家主権的統合への圧力に ついては,確 かにそうした圧力は増大するであろうが,Plan Gは 「先験 的に」そのような統合の進展を受け入れるものではないとされた。コモ ンウェルスとの関係については,ヨ ーロッパの安定や ドイッの台頭抑制

はコモ ンウェルスにとって も利益であ り,イ ギ リスはそのためにもリー ダーシップを発揮すべ きであるとされた。共同市場成功の可能性 につい ては,イギ リスによる積極的な支援 に与りむしろ成功の可能性は高まる,

Plan Gがない場合にあ りうるのは部分的な共同市場の形成 という中途 半端で混乱 した状況である,イ ギリス抜 きでの共同市場の失敗 も成功 も

どちらもイギリスにとっては望ましくないとされていた゛の。

8月 23日 にはマクミランの依頼に応えたエックルズの覚書が EPCに 提出されたもその内容は,世 界規模での高度な技術に依存 した産業競争 の激化の中でイギリスが単独で達成できることは限られてお り,大 陸諸 国に対 してリーダーシップを発揮 し, リソースを共有することな くして 一流国としての地位は維持できないし,そ うしなければ西ヨーロッパは ドイツかソ連に支配される危険がある,「イギリスの対外影響力の再生 のための行動 として Plan Gを採用 しなくてはならない」として,Plan G の長期的な政治的効果を重視することを求めるものであった。農業につ いては,西 ヨーロッパ諸国はむしろ農業の除外に安堵するであろうし, イギリスが西ヨーロッパにおいてリーダーシップを発揮するという政治 的利益のためであれば, コモンウェルス諸国も多少の犠牲は受け入れる はずであ り,国 内農業に不利益な譲歩を求められる危険はないと述べ ら れていた。そしてイギリス産業への打撃については,関 税によって例え ば自動車産業を永遠に守ることはできないのであ り,む しろできるだけ 早 く大陸との競争にさらされる方が望ましいとされていた゛ い

(9)

3

8月 1日 の EPC決 定 を受け, 8月 22日 を回答期限 として,OEEC諸 国,合 衆国, コモ ンウェルス諸国駐在のイギ リス大使 ・高等弁務官に対

して,Plan Gに対する各駐在国の予想 される反応 を問い合 わせ る書簡が 8月 3日 付 で発送 された

この問い合 わせへの回答 は 8月 中旬 にほぼ出そろった。 まず,OEEC 駐在 イギ リス代表エ リス =リ ースか らは,Platt GはOEECを 強化 し,

6カ 国 に よる差別 的通 商 ブ ロ ック形 成 を防止 す る効 果が期待 され, OEEC諸 国の大半 は Plan Gを歓迎す るであろうとの楽観的な観測が届 ぃた1231。

個 々の OEEC諸 国駐在大使達か らの回答 も,オ ランダ,イ タリ ア,デ ンマークとぃった農業輸出国については,農 業の除外 について不 満が示 されるであろうとの指摘がなされていたが,全 体 としては, フラ ンス を除 くメ ッシナ諸国について も,そ れ以外の国々についても, 自由 貿易地帯形成 によ り,イ ギ リスを含む OEEC諸 国が,共 同市場 と制度的 協力 関係 を構築することの政治的意義が評価 され,個 別の通商上の利害

を超 えた支持が獲得で きるだろうとい う回答が得 られていた僻)。

ただ,イ ギ リス政府 として特 にその反応 を重視 していたフランスにつ いては,駐 フランス大使 ジェップによ り賛否両論の反応が想定 されてい た。政治的には,Plan Gは ドイツの西側への拘束 を強めるもの として支 持 される可能性 もあるが,同 時に共同市場 にかわる代替選択肢 として と らえられ,共 同市場への支持 を弱めるもの として反発 を受ける可能性 も ある とジェ ッブは指摘 していた。 また経済的側面 について も, フランス 国内の共同市場支持者達 は,フ ランス経済が共同市場 による競争激化 に 対応 した ものではないことを認め,特 別の配慮 を他 の 5カ 国に要求 して いるが,Plan Gは ,フ ランス産業界 をさらに過酷 な経済競争 にさらす も の として反発 を受けるか もしれない とジッェッブは述べていた。農業の

(10)

除外については,イ ギリス農業市場への参入拡大を求める勢力か らは批 判を受けるであろうが,同 時にフランス国内の農業保護派からは,む し ろ歓迎されるかもしれないと指摘 されていた。いずれにしても, フラン スの反応 は単純 に好意的な もの となる とは全 く想定 されてお らず, ジェッブは, 自由貿易地帯へのフランスの参加を確保するためには,フ ランス以外の 11カ国が結束 して,共 同で 「ビス トルをつ きつける」必要 す らあるかもしれないと述べていた ゛ 9。

コモ ンウェルス諸国の中で も,そ の予想 される反応が特 に重要であっ たのは,当 時通商交渉が進行 中であったオース トラリアであるが,キ ャ ンベ ラの高等弁務官か らは,オ ース トラリア政府 か らは Plan Gに対 し て消極的賛成 しか期待で きないであろうとい う回答が寄せ られた。農業 を除外す ることにより実際にはオース トラリアにとってほとん ど不利益 は生 じないのだが,現 状での小規模 な対 イギ リスエ業製品輸出へ の打撃 です ら批判 される可能性があ り,短 期的にはポ ン ドヘの信頼 は揺 るがな いであろうが,Plan Gの 政治的な意図が長期的なヨーロッパヘの接近強 化 と解釈 されれば, コモ ンウェルスの連帯への信頼が揺 らぐ可能性があ る と高等弁務官 は指摘 していた°

また駐米大使 メイキ ンズ (Sir Roger Makins)から寄せ られた合衆国 政府 の予想 される反応 についての回答 も,EI作 業部会 中間報告 の想定 を楽観的す ぎると指摘 し,ア メ リカ政府か らは 「積極的支持」も,「積極 的反発」も示 されないであろうとす るものであった。 メイキ ンズはまず, Plan Gに よるヨー ロ ッパ域外 か らの工業製品輸 出へ の恒常的差別状態 の形成は,第 一に合衆国を対象 とした ものになるはずであ り,ア メリカ 産業界 の大半はその点 に不満 を抱 くであろうと述べていた。その上で彼 は,国 務省 はヨーロッパ統合の進展 に寄与するもの としてある程度の支

持は示すだろうが,ア メリカ政府全体から見て,Plan Gにはその差別的

性質を上回るほどの政治的魅力はなく,共 同市場に対するような強固な

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支持は得 られないであろうとし,最 悪の場合,帝 国特恵 。国内農業保護 ・ 対米貿易差別の全てを維持 しようとする計画であると解釈 される危険も あると指摘 していた。ただし彼 も,農 業を除 く自由貿易地帯形成がイギ リス として可能な対 ヨーロッパ経済協力の限界であることを強調すれ ば,ア メリカ政府の理解は得 られるかもしれないと述べ,イ ギリス政府 として特に必要 と考えるならPlan Gの追求は可能であろうと述べてい た。またメイキンズは,56年 は大統領選挙の年であ り,11月 までアイゼ ンハヮー政権が真剣な検討はおこなわないものと考えるべ きであるとも 指摘 していた 9)。

4

EI作 業部会中間報告 を補完す るもの として EPCに より作成が求め ら れた追加報告は,8月 3日 以降,EI作 業部会の構成 を若干拡大する形で 改組 して ESCの 下 に設け られた 「ヨーロ ッパ との よ り緊密 な経済的協 力関係 についての小委員会」 (ESC Sub―Committee on Closer Economic Associadon with Europe)(ES(EI)小 委員会)に よ り検討 されていっ た。第一回会合 ではさらなる検討課題 として,以 下の ような点が指摘 さ れた。 まず,農 業の Plan Gか らの除外 は,関 係諸国の反応次第で修正 を 迫 られる可能性 もあ り,農 業分野で ヨーロッパ においていかなる通商面 での協力が可能か を検討すべ きである とされた。 また EPCで はコモ ン ウェルス農産物の対英輸 出拡大のための方策検討 も求め られてお り, こ の点 もPlan Gに ついての追加報告 とは別途,検 討報告すべ きであると された。その上で,Plan Gそ の ものについては,閣 僚の一部か ら示 され た危惧 を払拭するために,完 全 な政治的統合 に至 ることを目指す もので はないことを強調する必要があると確認 され, さ らに 日程の問題 につい て,閣 僚達が原則的に Plan Gに 同意するな らば,コ モ ンウェルス諸国 と

(12)

の協 議 を開始 し,秋 には議会 で構想 を正式 に公表 し,次 いでイギ リス産 業界 と協 議 をす る, そ の後 年 末 に完成予 定 の O E E C 第 1 7 作 業部会 (第

3 章 第 7 節 参 照) に よる共 同市場 と O E E C 諸 国 の協 力 関係 の あ り方 に つ いての報 告 の検 討 とか らめ る形 で OEECに 詳細 案 を提示 す る, とい

う手順 とすべ きで あ ろ う とされ た 1 2 8 1 。

追加報告書で特に強調すべ きとされた Plan Gとヨーロッパ統合運動 の関係については,外 務省により分析がおこなわれた。 8月 半ばに ES

(EI)小委員会のために作成された外務省西欧局覚書は,当 面はPlan G により急速に過度な政治的経済的な統合へ と至る危険はないが長期的に はそういう傾向が生 じることは否定できず,大 西洋同盟 とコモンウェル スの双方での中軸的地位 というイギリス外交の基本路線を維持するため には,Plan Gと並行 してコモンウェルス諸国への経済的な補償をおこな うとともに,合 衆国に対 しては政治的協力の増大によって対応すべ きで あると指摘 されていた の

。より具体的には,Plan Gによる経済的なヨー ロ ッパヘの接近 を補完す るために,ア メリカの参加す る機構である NATOの 持つ大西洋横断的な協力機関としての機能を政治的方面にも 拡大するべ きであるという提案であ り,こ れは,56年 前半,Plan G形成 過程 と並行 して進行 していた大西洋官僚委員会 (AOC)で の検討で示 さ れていた外務省の主張 と同 じものであった ゛ °

。Plan Gの持つ差別的性 質をアメリカ政府に受け入れさせ,イ ギリスを他のヨーロッパ諸国と区 別するアメリカとの特別な関係を維持するには,ポ ンド交換性回復や ド ル製品輸入 自由化の促進 といった経済面での保証だけでは不十分である というのが,外 務省の考えであった ゛ D。

ES(EI)小 委員会による追加報告書は8月 31日付で ESCに 提出され,

9月 3日 ESC内 の臨時委員会 (GEN.549)で の議論を経て細部を修正

された後,EPCに 提出された。追加報告書は,Plan Gの政策的側面につ

いての追加的検討 と関係各国駐在大使 ・高等弁務官か らの回答について

(13)

の検 討 を主 な内容 とし,五 つ の課題 に分 けて検討 と提言 をお こなってい た。

第一 に検 討 され ていた の は,「産業保護喪失 の イギ リス経済へ の影響」

で あ り,全 体 的 には,市 場規模 の拡大 に よる輸 出機会 の拡大,そ れ に と

もなうヨーロッパ域外との競争力向上という利益に対して,競 争増大に よる特定の国内産業への打撃という不利益があげられていたが,具 体的 な影響は個々の業界の柔軟性に依存するものであり,予 測困難であると されていた。市場規模の拡大については,51‑55年にOEEC諸 国が 32%

の工 業生産成 長 を遂 げたの に対 して イギ リスのそれ は 17%で しか な かった点が指摘 され, ドイツに牽引 される大陸市場 の高い成長率が, 2 億 5千 万人の人口 とい う物理的な規模 の拡大 に加 えて自由貿易地帯形成 の大 きな魅力 とされていた。バ トラーが懸念 した完全雇用 については, 追加報告書 は,自 由貿易地帯形成 により直接影響 を受けるのは労働人口 の 3分 の 1程 度であろうと推定 し,特 に大 きな打撃が予想 される産業 と して一部の機械 ・化学産業 をあげていたが,大 半の産業 については予想 は困難であ り,い ずれにして も市場拡大 によ り経済成長が持続する限 り は産業 と雇用 の調 整 は大 きな問題 とは な らないで あ ろ う と述べ てい a。

農業分野への影響 も報告書の第一部で言及 され,Plan Gと は別 にヨー ロッパ に対 して長期的な農業面での譲歩 を提示するとい う可能性 につい ては,コ モ ンウェルス諸国 と国内農業 に配慮する限 り,対 応の余地 はほ とん どない とされていた。当面,OEECで の農業貿易拡大のための議論 についてイギリス政府は今後 も支持 を継続す ると一般的な形で表明す る しかないであろうが,あ くまで も具体的対応が要求 された場合 は,イ ギ リス政府 として国内農業生産 を過剰 に刺激す るつ もりはない とまでは表 明 して もよいのではないか とい うのが,小 委員会の提言であった1331。

第二に検討されていたのが,「Plan Gのポンドヘの影響と戦後の対外

(14)

経 済政 策 の基 本路線 との両立 可 能性 」 であ り, まず イギ リスが抱 え る問 題 と して,イ ギ リス の対 OEEC貿 易 は貿 易 全 体 の 25%で しか な い が メ ッシナ諸 国の場合 は 75%を 占めてい るこ と,帝 国特 恵 の存在,ポ ン ド の 国際通貨 としての性格 ,イ ギ リスの対外債務 の大部分が ポ ン ド建 てで あ る こ と (世界 の全 ポ ン ド保有 は 41億 ポ ン ド,植 民地 は 13億 ポ ン ド,

自治領 諸 国 は 12億 ポ ン ド,OEEC諸 国 は 2億 8千 万 ポ ン ド,国 際機 関 が 4億 7千 万ポンド,そ の他 8億 5千 万ポンドという内訳であるが,イ ギリスの金 ドル備蓄は8億 5千 400万ポンドでしかない)と いった特殊 要因が指摘 されていた。そのような条件下での戦後イギリス対外経済政 策の主要 目的は,世 界規模での最大限の貿易 ・金融の自由化,ポ ンドの 強化 と交換性回復,帝 国特恵の維持,IMF=GATT体 制の遵守であ り, 政治的には, ヨーロジパにおける超国家主権的統合への参加の回避, コ モンウェルスとの紐帯の強化,対 米政治 ・軍事同盟に不利益 をもたらさ ないような経済政策の調整が要請され, ドル地域 と非 ドル地域の間の経 済的分裂を回避することが重要な目標であるとされていた。その上で, 追加報告書は,Plan Gは地域的閉鎖的通商ブロックの構築を目指す もの ではなく,既 存のポンドを強化するという政策の継続であ り逆転ではな い,Plan Gによリイギリス経済の成長がもたらされれば,ポ ンドの地位 は強化 され,交 換性回復は妨げられないし, one world"政策の下での 対 ドル地域貿易差別の除去,世 界規模の貿易 自由化政策へのコミットメ

ントは継続できる,と 述べていた ゛ →

第二に検討されたのは,「Plan Gによりさらなるヨーロッパ との経済

的政治的統合へ と追いや られるか否か」 という問題であ り,組 織面では

自由貿易地帯運営のためには超国家主権的組織は必要ないが,イ ギリス

の自由貿易地帯参加 によリヨーロッパ諸国か らはイギリスの リーダー

シップの下でのヨーロッパ統合の推進を求める傾向が強まるだろうし,

アメリカからの統合参加への圧力増大 も予想 されると報告書は認めてい

(15)

た。 しか し, ヨーロツパ諸国 もコモ ンウェルス との紐帯 を喪失す ること によるイギ リスの国際的地位 の低下 には利益 を見 いだ さないはずである し,他 の ヨーロッパ諸国 と同列の地位 に甘ん じることによリアメリカに とっての同盟国イギ リスの重要性の認識の低下 を招いてはな らない と報 告書 は指摘 し,統 合へ の圧力 をかわすための ヨーロッパ,ア メリカ双方 に向けての具体的な対応 を提案 していた。 ヨーロッパに対 しては,産 業 コス ト平等化のための社会政策の調整要求が フランスか ら出た場合 は, 少な くとも形式的な対応で フランスの体面 を満足 させ る一方で,OEEC

を通 じて各種 ヨーロッパ機関の議会的機構 を統合整理す るとい う提案 を 提示す ることにより大陸諸 国を満足 させ る,ア メリカに対 しては,基 本 的にはイギ リスが 自由貿易地帯参加 により経済力 を強化 し, ドイツとの 競争 に対抗す ることが,ア メ リカに とっての同盟国 としてのイギ リスの 価値 を高める最良の方法であるが,よ り具体 的には NATO理 事会での 政治問題の協議の拡大 な どによって も英米協力の拡大 は可能である とい

うのが報告書の提案であった8つ

第四に検討されたのが,「コモンウェルス,ヨ ーロッパ,合 衆国政府の

予想される反応」であり,す でに触れた8月 初めの問い合わせ回答を要

約したものであった。まずコモンウェルス諸国については,ス タ ーリン

グ地域内諸国に関しては,オ ース トラリアについては小麦輸出,ニ ュ ー

ジーランドについては肉輸出について,可 能な範囲での 一定の補償的措

置が求められるであろうがそれは対応可能であり,そ の他諸国には基本

的に通商上の大きな不利益は生じず問題も生 じないであろうと指摘され

ていた。対照的にスターリング地域に属さないカナグについては,報 告

書は強い批判が予想され,北 米 ドル地域からの輸入への差別的数量規制

の撤廃が代償 として要求 されるであろうと述べていた。 ヨーロッパ諸国 について,メ ッシナ諸国では ドイツ,オ ランダ,ベ ルギー,ル クセンブ ルク,イ タリアはイギ リスの ヨーロッパ接近 に満足 し,農 業の除外 など

(16)

の留保を最終的に受容するであろうとされ,フ ランスは共同市場にも自 由貿易地帯にも進んで参加はしないであろうが,必 要ならばフランス抜 きでも自由貿易地帯を形成するとして他国が結束すれば参加は拒めない であろうとされた。その他の OEEC諸 国については,ス カンディナビ ア諸国も最終的には参加するであろうし,ス イス,オ ース トリアも同様 であろうとされた。農業の除外については,デ ンマーク,オ ランダ,イ タリアについて問題が生 じるであろうが,乗 り越えがたい障害となるこ とはないであろうとされ,報 告書第一部にもあったように別個に農業間 題についての交渉に協力する姿勢を示せば大 きな譲歩なしですむであろ うとされていた。アメリカの姿勢については,駐 米大使か らの報告その ままに,Plan Gは中間報告で想定 したほどの歓迎はされないが許容はさ れるであろうとされ,Plan Gが,イ ギリスとして可能な唯一のヨーロッ パ統合への貢献策であること,世 界規模での貿易自由化に資するもので あ り, two worlds"構築を目指す ものではないことを強調する必要が あるとされていた ゛ ω 。

最後に検討されたのが,「 採用の場合の今後の日程 と提示方法」であ り, 対外的にはまずコモンウェルス蔵相会議で説明 し,10月 中コモンウェル スとの協議を進め,そ の後で最終的な閣議決定をおこなう, 9月 末以降 OEEC第 17作業部会で自由貿易地帯構想検討作業 も開始されるが,こ れに積極的に参加できるように閣議決定を間に合わせるべ きであるとさ れていた。さらに報告書は同時に合衆国政府 との間で官僚 レベルで試行 的な協議を開始することが望ましいとしていた。国内的には,産 業界 ・ 労組 ・農業団体 とは非公式の協議をすすめ,11月 初めまでには必要な情 報を獲得 し,そ の時点で Plan G採否の最終決定をおこなうべ きである

とされていた゛ つ

(17)

5

9月 3日 の ESC臨 時委員 会会合 にお いて追加報告書 は了承 され, ESC委 員長名 による,検 討の際に重視すべ き点 をまとめた覚書 を添付 し て EPCに 提 出された。ESCが 閣僚 に対 してまず注意 を喚起 したのは, Plan Gが長期的なコミッ トメ ン トであるとい う点であったが,よ り短期 的かつ具体 的注意点 としては以下の点が指摘 されていた。す なわち, コ モ ンウェルスの反応 (わずかな特恵の喪失 もすでに不安定 にな りつつあ る帝国特恵 を危険にさらすか もしれない),対 ドル地域 向け貿易障壁削 減の継続の必要性 (カナダと合衆国は one world"政策への コミッ トメ ン トに疑念 をいだ くか もしれない),ポ ン ド債務保有国に対す るポ ン ド ヘのコミッ トメン トの明示,野 党 も含めた国内団体 との充分 な事前協議 の必要性 (産業への保護喪失は,経 済的 とい うよりも特定の分野 ・地域 での政治的問題 となる可能性がある)な どである。農業 に関 しては, 8 月 1日 の EPCで の議論では,Plan Gと ともに対 オース トラリア通商交 渉,国 内農業保護の問題 を合 わせて検討す ることが要請 されていたが, ESCは ,オ ース トラリアに関 しては小麦輸入枠保証で合意形成 は可能で ある し,国 内農業 について も大幅な生産増大 を保証 しないのであれば問 題 は生 じないであろうか ら,Plan Gの採否の決定の際に考慮する必要は ない と勧告 していた。ただ し,今 後 Plan G交渉過程で農業面での譲歩 へ の圧力が高まって もイギ リスには譲歩の余地がほとんどないことは理 解 してお く必要がある とも指摘 されていた。Plan G採用 の際の対外 的 な提示の方法 については, フランスがいかなる反応 を示すか,交 渉成功 の可能性が どの程度の ものになるか次第で望 ましい対応 は変わって くる と指摘 されていた。 フランスの妨害 によ りPlan Gが失敗す る可能性 を 重視す るならば,大 規模 なイニシアチブとして対外的に公表す るよりも OEEC作 業部会 で の検 討が進捗 して 自由貿易 地帯成功 の可 能性 が高

(18)

まってから政府 としての姿勢を明示する方が望ましいのではないかとい うのが ESCの 提言であった。閣僚達があ くまでも明確 なイギリス政府 のイニシアチブとして公表することを望むならば,ESCも その選択肢を 排除はしていなかったが,そ の場合には 11月初めまでにおこなうべ き であ り,時 間を節約するためにもコモンゥェルス蔵相会議前にコモ ン ウェルス諸国に対 して Plan Gの骨子を説明するべ きであろうとされて いた゛ い 。

こうして 9月 初めの時点で,官 僚 レベルでの Plan Gに ついての 56年 初 め以来の基本的検討作業 はほぼ終了 し,以 後,閣 僚 レベルでの判断に

自由貿易地帯構想の採否 は委ね られることになったのであるが,最 も議 論 になったのは, コモ ンウェルス との関係お よび国内農業 との関係 (特 に前者)で あ り,コ モ ンウェルス関係相 ヒュームか らは Plan Gへの強い 反対論が展 開され,農 水食料相 ヒース コー ト=エ イモ リか らは国内農業 保護の保証が改めて要請 された。

9月 3日 , ヒュームはマクミランお よび他 の主要閣僚 に書簡 を送 り, コモ ンウェルス諸国は現在のような農業製品や原材料だけでな く将来的 には工業製品の対 イギ リス輸出増大 を求めているし,長期的にはカナダ, オース トラリア,ニ ュージーラン ドやアジア ・アフリカのコモ ンウェル ス市場 の輸 出市場 としての拡大 の見込みは高い として,Plan Gに よる ヨ‐ロッパ諸国に対 しての工業製品分野での特恵マージンの削減 ない し 消滅 は長期的な対 コモ ンウェルス通商関係 を損 なうものであると強 く抗 議 した。 また彼 は,ス パークらの 目的は政治統合 にあ り,Plan Gは その 圧力 を増大 させ,当 面 は農業除外で合意で きて もその後,農 業 を含 む 自 由貿易地帯形成への圧力が高 まることが予想 されるとも指摘 し,少 くと も,第 三国か らのイギ リス市場への肉類輸入への関税付加 と果物 などの 輸入制限強化 といった形で コモ ンウェルス諸国への農業貿易面での保障 措置が与 え られないのであれば,コ モ ンウェルス諸 国か らの Plan Gへ

(19)

の同意は得 られないであろうし,彼 としては Plan Gの採用 には反対せ ざるを得 ない と主張 したr391。

同 自,ヒ ース コー ト=エ イモ リもバ トラー以下主要閣僚 に対 して書簡 を送 ってお り, こち らは,国 内農業 は今後 も生産効率の増大が予想 され るので,農 民 に対 して所得水準 を保証するな らば,生 産水準の増加 を許 容せ ざるを得 ない と指摘 し,ヨ ーロッパお よびコモ ンウェルスか らのイ ギ リス市場への農産物輸入拡大 は不可能であると指摘 していた。 コモ ン ウェルスに向けた最大限可能な譲歩 は,今後意図的に小麦増産 をしない, 肉類 に対 しての関税 を増大するといった程度であ り,そ れ以上の追加的 農業譲歩 はない とい う点が Plan G採 用 の際の絶対 的条件 である と彼 は 主張 していた

9月 5日 に EPCに おいて約 lヶ 月ぶ りに閣僚達 によ りPlan Gについ ての直接 の議論がお こなわれた。会合ではまず,ソ ーニクロフ トにより 追加報告書の内容が説明 され,ヒ ュームはコモ ンウェルス に対 して どの ような経済的代償が提供可能か判明す るまでは判断 を留保す るとい う姿 勢 をとったが,他 の閣僚達 はコモ ンウェルス ・保守党 ・労組 に自由貿易 地帯形成の長期的利益 を納得 させ るのは困難であることは確認 したが, Plan G採用 によリイギ リスの経済的利益 は促進 され,そ れ以外 に同様の 可能性 を持つ針路 はない とい う点で合意 した。 この場 で Plan Gへ の反 対論 を説得す るために新 たに提示 されたのは, コモ ンウェルスの求める 経済発展 を実現す るための資本供給 も,イ ギ リスー国でおこなうのは困 難であ り,Plan Gに よるヨーロッパ経済の強化 によってこそ,イ ギ リス を通 じて ヨーロ ッパの資本 をコモ ンウェルス開発のために投資す ること が可能になるとい う議論であった。個 々の閣僚達か らでは,外 務担 当相 は自由貿易地帯参加 によ りさらなる統合へ と引 き込 まれる危険があるが その リスクは甘受 されねばな らない と指摘 し,労 働相 は労組の同意 を得 るための努力が必要である点 を指摘 した。 また農水相 は国内農業の生産

(20)

I I I

論 説

水 準 の維持 の約束 が必要 と指摘 したが,彼 らは全 員,原 則 と しての Plan Gの 採用 は支持 した。 マ ク ミラ ンも合衆 国 とカナ ダの合 意 を得 るため に は対 ドル地域貿易規制 の削減 が必要であ り,一 時的 に外 貨状況 は困難 を 増 す が,そ れで も Plan Gが 最 善 の針路 で あ る と主張 した。結 局,EPC

は ヒュー ムの留保 を認 めた上 で,Plan Gの 採用が望 ま しい と合 意 し,蔵 相 と商相 に正式 な閣議提 案 を求 め るこ ととした。 そ して コモ ンウェルス

蔵相会議前の事前連絡を蔵相がおこなうことも承認し, コモンウェルス ヘの補償措置としての輸入肉への課税の可能性についても検討すること

を合意した D。

6

こうして ようや くPlan Gの採否 をめ ぐる正式 な閣議 での議論が本格 的にお こなわれることになったが,そ の閣議 に対 して もヒュームは 9月

7日 付で覚書 を提 出 し,Plan Gの コモ ンウェルス蔵相会議での説明には 反対 しないが, コモ ンウェルス諸国には検討のための時間を充分 に与 え ることを要請 し,コ モ ンウェルスヘ の補償 が な され ないのであれば, Plan Gを 採用すべ きではない と主張 した。 コモ ンウェルス向けの具体 的補償措置 として彼が検討 を要請 していたのは,オ ース トラリアか らの 100万 トンの小麦購入保証,非 コモ ンウェルス諸国か らの輸入 肉類へ の 15%の 課税,コモ ンウェルス果実生産者へのイギ リス市場での数量保証, ワイ ンヘ の関税削減,カ ナ ダ製工業製品輸 出へ の保護 といった対応 で あった(2)。

ほぼ同時に,マ クミランもESCと EPCの 検討結果 をまとめた閣議覚 書 を提 出 し,閣 議 に対 して,Plan Gがイギ リス経済にとって有益か否か, 国内政治的に妥当か否か, コモ ンウェルス と合衆国の支持が得 られるか 否か といった点 についての判断を要請 していたが,同 時 に,進 行中であ

(21)

るスエ ズ 問題 の ため に現 時点 で政府 と して全 関心 を この問題 にむ け る こ とは不可能であ り, 当 面 は, P l a n   G へ の原則 的 な支持 とコモ ンウェルス 諸 国 に対 しての説 明 の許可 を求 め たい と述べ ていた 1 4 3 1 。

9月 14日 の閣議で ヒユーム覚書 とマクミラン覚書 を下に,議 論がお こなわれた。 まず ソーニクロフ トが Plan Gの必要性 を説明 し,現 在,帝 国特恵見直 し要求がオース トラリアか ら出される一方で,大 陸には ドイ ツに支配 される強力 な排他的経済ブロックが形成 される危険があるが, Plan Gはこの状況 をイギ リスの,そ して コモ ンウェルスの利点に転 じる ために考案 された ものであ り,産 業界 も保守党か らも支持 は得 られるで あろうとされた。閣僚達か らは,Plan Gに 肯定的な意見 として,他 に長 期的な経済的安定 をもた らす代替選択肢 はない, 自由貿易地帯形成 とそ の中での リーダーシップの確保 によって しかイギ リスの大国 としての地 位の維持の確保 は望めず, このままでは合衆国の影響下 に minor part―

ner"と して引 き寄せ られる,イ ギ リスの地位 の強化 は コモ ンウェルス にとって も利益 となる, といった主張がなされたは)。

これ らの見解 に対 して, 8月 のバ トラーによる文書で指摘 されていた もの とほぼ同様の問題点 も閣僚達か ら指摘 された。 ドイツとの競争激化 は国内産業に打撃 を与 え完全雇用 を損 ない労組 を説得するのは容易では ないだろう,輸 入増加 に対応 した輸出拡大 をおこなう生産力増大 は短期 間には得 られず国際収支が悪化す る,そ れはス ター リング残高保有国の ポ ン ドヘ の信頼 を揺 るが し one wottld philosophy"からの逸脱 につ な がる可能性がある,ま た収支悪化 に対応するための政府介入の増加 は党 内の支持 を得 に くい,国 内農業の生産規模の維持 はで きて も将来の拡大 がで きな くなるのは農民か らの反発 を呼ぶだろう,こ れ らはみな保守党 への支持 を損なう危険な要素であ り, コモ ンウェルスに対 して極めて慎 重な打診 をお こなってか ら判断すべ きであるといった主張である

最 も強 く反対論 を述べたのはヒュームであ り,彼 の主張は,カ ナダ,

(22)

オース トラリア,ニ ュージーラン ドはイギ リスが ヨーロ ッパ に接近 して いると考 えれば合衆国への接近 を強めるであろう,イ ギ リスの世界大国 としての地位 はコモ ンウェルスの リー ダー としての地位 に依存 してお り, ヨーロッパ に接近す るのであればコモ ンウェルス との関係強化が同 時 に求め られる,そ のためにはコモ ンウェルス農産物の市場拡大のため の積極的提案が不可欠であ り,そ れが提示 されない限 り彼 としては判断 は留保 したい,と い うものであった。 こうした主張 に対 しては,閣 僚達 か ら次の ような指摘が なされた。確 か にイギ リスが ヨー ロ ッパ の リー ダーシップ獲得 を意図 して自由貿易地帯形成 を目指 していると認識 され ればコモ ンウェルス側か ら見ればイギ リス との関係の弱体化 は避け られ ない,し たがって この リスクと Plan Gの もた らす経済的利益 の比較 の 上 に採否 を判断をすべ きである, ヒュームが要求 しているコモ ンウェル ス向け補償の うち小麦購買量の補償 と肉類へ の関税強化 はオタワ協定内 で実行可能だが, コモ ンウェルス向け果実市場の確保 は困難である, と いった議論である146)。

最後 に発言 したマクミランは,賛 否両論 ともなお甲乙つけがたい, し か し OEEC作 業部会 での 自由貿易地帯構想 の検討作 業 においていつ ま で もイギ リスの姿勢 を明示 しなければ,そ れ自体が 自由貿易地帯形成へ の消極的回答 と解釈 される可能性がある, したがって遅 くとも年末 まで には最終的決定が必要であろう, と述べ るにとどま り,早 期の決定 を求 めるソーニクロフ トに比較 してよ り慎重 な姿勢 を示 していた )。

この段階でこれ まで と比較 して慎重 な姿勢 をマク ミランが採用 した背 景 には,夏 以来進行 中であったスエズ危機 に対 しての考慮があった。す でに 8月 28日 ,9月 11日 の閣議で首相 イーデ ンは外交的解決 よ りも軍 事的解決 を採用すべ きとの姿勢 を示 してお り,閣 内にはなお意見対立が あったが,マ ク ミラン個人 も当初 より軍事的解決 を支持 していた。 しか し,そ の際の外貨備蓄状況 に対する影響 と合衆国お よびコモ ンウェルス

(23)

諸国か らの支持の必要性 について大蔵省内か らは強い警告が寄せ られて お り,マ クミランはその点 を考慮 して,Plan Gの もた らす外貨状況への 影響 に敏感 になっていたのである0。

結局,閣 議 は翌週 さらなる議論 をす ることとし,そ の間, コモ ンウェ ルス蔵相会議での予備的な議論 は承認 し,蔵 相提案の書簡 をコモ ンウェ ルス諸国に送付することを決定 した

9月 18日 閣議は再度 Plan Gの検討 をお こなった。 まず発言 したのは 前 回の閣議 での検討 を欠席 していた植民相 レノ ックス=ボ イ ドであっ た。彼 は,植民地か らの原材料輸入 にはほとん ど特恵が存在 しないので, Plan Gに よ り現在 の植民地か らのイギ リス市場へ の輸 出にはほ とん ど 影響 はない と認めたが,メッシナ諸国の海外領土が共 同市場 に包含 され, それを通 じて 自由貿易地帯 にも参入 した場合,将 来の植民地か らのイギ リス向け工業製品輸出への保護が確保で きるか どうか懸念 され,長 期的 な植民地の産業化 に とって問題 となる可能性 があ る と主張 した。 さら に,Plan Gそ の ものについて も,ヨ ーロッパでの リーダーシップ追求 と コモ ンウェルスの リーダーシップの維持 とは両立不可能だ とは思わない が,成 功の可能性 は確実 とは言 えないであろうと警告 した。バ トラー も 反対論 を述べ,現 状で も輸入 は過大であ り外貨備蓄への脅威 となってい る し,ス エズに由来す る不透明感 もある,む しろ 目指すべ きはさらなる 世界規模 の貿易 自由化であ り, コモ ンウェルス諸国の反応 に照 らして再 検討 をお こなうまで Plan G採否の決定 をのばすべ きであると主張 した。

ヒュームの発言はこの閣議議事録 には記録 されていないが,コ モ ンウェ ルス諸国 との連帯の必要性 を強 く指摘 し,慎 重 な判断 を求める意見 は, 枢密院議長 ソールズベ リによって示 された

これ らの議論 に対 して,ソ ーニクロフ トか ら改めて Plan Gを擁護す る主張がなされた。 さらに,か つて 50年 代初 めに欧州審議会 を通 じて ヨーロ ッパ統合運動 に積極 に関与 していた大法官 キルマー (Lord Kil¨

(24)

muir,the Lord Chancellor)も , ヨー ロ ッパ との経 済協 力 緊密化 を支持 す る議論 には説得力が あ り,合 衆 国 に誤解 さる危 険,フ ラ ンスの姿勢 ,カ ナ ダ,オ ース トラ リア,ニ ュー ジー ラ ン ドの反応,一 部 国内産業 か らの 反発 ,労 組 の反応 な どの難点 もあ り,保 守党 内で も不満 の声 が上が るだ

ろ うが,こ れ らの反応 を想定 した上でなお Plan Gを採用すべ きである 主張 した。 またエ ックルズ も,Plan Gそ の ものがポ ン ドの地位 を守 ろう とい うイギ リスの決意 を示す最良の手段であ り,関 税や数量規制による 保護では完全雇用 は守れない と述べ,Plan Gを 支持 した6D。

マ ク ミランは,イ ギ リスの相対的経済的地位の低下は明 らかであ り, Plan Gはそれを逆転す る機会であると述べたが,同 時 に,現 時点ではス エズ問題によリポン ドヘの信頼が揺 らぎつつあ り,こ の問題の帰趨が明 らかになるまで数週間程度 は Plan G採否の決定 は回避すべ きであると 今回 も即時の意思決定 にはこだわ らない姿勢 を示 した6の

議事 をまとめるにあたってイーデ ンは,オ ース トラリア,ニ ュージー ラン ドはアメリカに接近 してお り,ア ジアの コモ ンウェルス諸国の政治 的意図はイギ リス と一致 しない部分が多い, したが って コモ ンウェルス に基礎 を置 く経済力強化のための選択肢 は存在せず,Plan Gあ るいは何 らかの同種の政策 を採用せ ざるを得 ない と述べ, ヨーロッパ との関係強 化 を支持す る姿勢 をは じめて明確 に示 した。その上 で彼 は, 9月 10日 に訪英 した フランス首相モ レとの会談の際に,モ レが,か つてチ ャーチ ルが 1940年 に提案 した英仏合 同 (Anglo―French Union)提 案の再検討 を求めたことを閣僚達 に明 らかに し,次 回自らが フランスを訪問するま でに閣僚 レベルで この提案 についての対応 を決定す る必要があると述べ た。 さらにイーデ ンは,英 仏二国間の軍事,財 政,経 済面での緊密 な協 力 に加 えて,ベ ルギー,オ ランダ,ス カンデ ィナビア といった ヨーロッ パ諸国のコモ ンウェルス加盟の可能性 も,緊 急 に官僚達 に検討 させるベ きであると提案 した。結局,閣 議は,コ モ ンウェルス蔵相会議での Plan

(25)

自由貿易地帯構想とイギリス Gを 説明し協議をおこなうという前回の決定を再確認し,コ モンウェル ス諸国の反応を検討し,ス エズ問題の行方を待ってから最終的決定をお こなうと合意するとともに,官 僚達に首相提案の検討をおこなわせるこ とを決定した ゛ の 。

7

イーデ ンの英仏合 同 と大陸諸国の コモ ンウェルス加盟 とい う提案は, スエズ危機 による英仏接近の中で生 まれた全 くに唐突なものであ りは), 閣僚達 もまた官僚達 も大半が驚 くとともに直 ちに強い拒否反応 を示 し た。

閣議決定 に したがい直ちに大蔵省,タト務省そ して官房長官 ブル ックに よ り英仏合 同についての検討文書が作成 されたが,い ずれ も極めて消極 的な姿勢 をあ らわにするものであった。大蔵省 はフランス経済に成長の 可能性がない訳ではないが,現 時点では破綻 に近い状態であ り,経 済的 には英仏合同によリイギ リスは何 ら恩恵 を受けることな く背負い きれな い負担 を負 うだけであると指摘 した。外務省 は,英 仏合 同はアメリカ, コモ ンウェルス, ヨーロッパいずれ との関係 も損 なうが,特 にアメリカ との緊密 な軍事的 ・諜報的関係 を損 ない, また ドイツの西側陣営か らの 離反 を招 く危険 もある と述べ,他 の よりゆるやかな関係強化の手段 を追 求することを提言す るものであった。 ブル ックは, コモ ンウェルスに明 白な外 国を加盟 させ るのは困難であ り,ア ジアの コモ ンウェルス諸国の 脱退の危 険 もあると述べ ていた。 これ らの文書 は 9月 24日 には閣僚 と 官僚達 による臨時委員会 で検討 され,直 ちに,「フランスのみ との有機的 な協力関係」形成 には利益 はな く,「より広範 な西 ヨーロッパ諸国 との協 力関係 とい う枠組みで検討すべ きである」との結論が得 られ,9月 26日 には閣議で了承 された

(26)

9月 27日パ リでモ レと会談 したイーデンは,英 仏合同提案について 否定的な検討結果を伝 えた。モレはフランスはまだ不可避的かつ不可逆 的な共同市場形成へのコミットメントには留保的であると述べ,英 仏協 力 と6カ 国による統合 との間で躊躇 している姿勢を示 した上で,イ ギリ スのヨーロッパでのリーダーシップ発揮への期待は高 く,個 人的にはフ ランスのコモンウェルス加盟を希望 していると繰 り返 した。これに対 し てイーデンは, 9月 末のコモンウェルス蔵相会議でイギリス政府は自由 貿易地帯構想を提示する予定であ り, コモンウェルスからの支持が得 ら れれば計画はヨーロッパ諸国に対 して提示 されるであろうと述べ,当 面 は OEECの 枠組みでの経済的協力を目指すべ きであると述べた の

帰国後 イーデ ンは, 1 0月 初めに再度, 臨 時閣僚会議の席で,フ ランス, ベルギー,オ ランダ,ノ ルウェー といった国々との間で,Plan Gを補完 す る形で,   コモ ンウェルス加盟 も含めた何 らかの形での政治的協力関係 強化 の可能性 について検討す ることを要請 した。10月 以降 も官僚 レベ ルで検討 は継続 されたが,そ こで も官僚達の議論はコモ ンウェルス加盟

という極めて特殊かつ緊密な形での協力の提案には否定的なものであっ た ゛ つ

(詳細は後述第 5章 第4節 参照)。

8

9 月 末以降, 7月 に発足 した OEEC第 1 7 作業部会 による共同市場 と 他 の OEE C 諸 国の協力 関係, 特 に自由貿易 地帯形成 の可能性 について の検討作業の開始 も本格化す ることになってお り, 9月 初 めにロン ドン でマ ク ミラ ンお よびソーニ クロフ トとスパ ー ク,OEEC事 務総長 セル ジャンらとの間で会談が行 われ, 9月 24日 に第一 回会合 を開催 し,12 月 3 1日 にまでに報告書 を閣僚理事会宛 に提 出す るとい う日程が合意 さ れた。 また OEECと 欧州審議会の関係強化 も考慮すべ きである とい う

(27)

点で も意見の一致が見 られた。この会談の席でスパークは, 6カ 国間の 交渉進行状況について,モ レ政権 は好意的姿勢 を示 しているがなお不可 逆的決定には及び腰 であ り,例 外的に事後の脱退 を認める必要があるか もしれない し,社 会政策の調和 についてフランスの 面子 をたてる」必 要があるだろうと述べ,依然 として フランスが問題であることを指摘 し, 同時に 57年 の ドイツ総選挙 で統合へ の支持が減少す る危険 もあ り,早 期 に共同市場形成合意 を獲得する必要があると述べ ていた椰)。

OEEC第 17作 業部会 は 9月 24・25日 に第一回会合 を開催 したが,イ ギ リス代表 として参加 したブ レザー トンは,同 部会 フランス代表クラピ エ (Bernard clappier,フランス大蔵省対外経済局長)か ら,ス エズ問題 によ リフランス国民一般 にはヨーロッパ統合への支持が高 まっている が,10月 8日 に予定 される 6カ 国外相会議でフランスは加盟の絶対条件 として何 らかの形での植民地の包含 を求め,共 同市場発足後最初の四年 間で社会政策の調整が不充分であれば次の関税削減段 階には進 まない と 述べ るつ もりである,イ ギ リスの 自由貿易地帯参加 は ドイツに対す る重 石 を提供することにな リフランス国民の不安 をやわ らげ共 同市場成功の

可能性を多いに高めるであろう, といった情報を受け取っていた 6° 。ま た 9月 13・14日 に開催 されたイギ リス =ス カンデ ィナ ビア委員会 (UNISCAN)で ,デ ンマークからは自由貿易地帯か らの農業の除外に は反対する姿勢が示 されていたが,ス カンディナビア諸国は全体 として は,OEEC作 業部会での自由貿易地帯についてのイギリスの姿勢の早期 明確化を期待 し,イ ギリスの提示する路線を支持するという意向を示 し ていた ° 。

こうして,ス エズ危機が高まりなが らも,イ ギリス政府内では Plan G

についての閣僚 レベルでの議論が進捗 し,同 時に大陸諸国か らも自由貿

易地帯 という形でのイギリスのヨーロッパ経済協力への関与を期待する

声が聞こえて くる中で,コ モンウェルス蔵相会議で,Plan Gに関する他

参照

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