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経営事務論に関する一考察 (1) : 近代的事務管理 論への接近

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(1)

経営事務論に関する一考察 (1) : 近代的事務管理 論への接近

その他のタイトル A Note on the Office Management and Control (I)

著者 中辻 卯一

雑誌名 關西大學商學論集

6

1

ページ 57‑71

発行年 1961‑04‑10

URL http://hdl.handle.net/10112/00021700

(2)

経営事務論に関する一考察田

I

経営学の近年の急激な発達の中にあってもなおかつ看過され

て来たのが事務部門であろう︒しかし︑それもようやく最近に

なって注目されるようになって来た︒しかるにそれが花道でま

ずスボット

. .  

ライトを浴びてあらわした姿の大部分は︑﹁事務

の機械化﹂︑﹁ビジネス・オートメーション﹂というような︑む

しろ観客の注視を集めるが如き艶姿であったため︑かえって表

面的装飾にのみ気をとられ︑その演ずる役割の基本的演技の顧

みられる機会が失われがちとなった︒しかし︑基本的演技の研

究を基盤にもって仕上げた俳優の舞台でなければ︑長期上演が

そのためにまず考えられねばならないことは︑ 不可能な如く︑近代的経営に於ける事務の性格を科学的かつ根本的に探究することからはじめた研究に基づくものでなければ︑正鵠をうることが出来ず︑その場限りの処方箋におわってしまい︑われわれが現に解決を迫られている多くの経営事務上① の実際問題を本格的に解決することが出来ない︒

その性格上︑表舞台に姿を現わす存在でなかった事務部門

も︑﹁事務の機械化﹂という形においてではあるにせよ︑一躍

脚光を浴びたこの機会に︑経営学の正面に同列にならぺて︑本

格的研究にとりかかり︑その中に貫かれている︱つの論理を解

明するにはT度よい時期であると考える︒

(3)

58 

山何故いままで事務部門が︑むしろ百花爛漫たる錦の春の 有様の如き経営学のなかにあって︑徒花の如き存在しか示さな

かったか︑という理由と︑

②しかるに︑それが最近の如く︑﹁事務の機械化﹂という 如き衣装をまとっているとはいえ︑注目されるに至ったか︑と

いう原因である︒

そして︑そこに探知せられる事務の機能そのものが︑歴史的 に成熟し︑そして現実的に積極的な働きを示して重要性を増大 し︑学問的対象として軽視出来ない性格を帯びるに至った事実 を背景とし︑事務そのものに対する的確な理解から出発して︑専 門的学問体系としての近代的経営の﹁事務の理論﹂が展開され

② ねばならない︒

︵註︶①通商産業省編の﹁わが国ォートメーションの現状﹂の﹁ビ

ジネス・オートメーション」の部に於ても、「…•••ここ数年

の事務用機器の発達普及は︑経営事務の合理化に具体的な物

的基礎を与え︑それがビジネス・オートメーショソという形

で︑経営事務全般の合理化の強い推進力となっていることが指摘されうる︒むしろその意味ではわが国企業の経営事務の︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑合理化の現状は︑機械に先行され︑それに引きずられて行わ︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑

れている面があり、そこに若干の問題なしとしないが、·…••

3 5 3

経営事務論に関する一考察山

②岸本英八郎著﹁経営と技術革新﹂

3 4 )

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何故いままでの事務は軽視されていたか︒

いままで事務が軽視されて来たことは︑わが国に於ける﹁事 務﹂という言葉の概念の不明確さにその特色を示している︒わ が国に於ては︑一般に︑﹁事務﹂という言葉が︑広く常識的に︑

暖昧な意味に︑たとえば単に生産に対して事務とか︑技術に対 する事務とか︑事務室内部の書記的作業というような漠然とし た用いかたや︑いわむる読み︑書き︑算盤というような範囲の 狭いものと考えられる程度に不明確に使われて来た︒

それには種々の原因が考えられるだろう︒

永い間︑事務は︑購買︑生産︑阪売︑そして財務など︑経営 本来の活動のうちに包含されつつ︑しかもそれらと何等区別さ れることなしに︑同時的︑一体的に行われてきた︒かかる状態 のもと︑人々は事務という所在をはっきりと意識せず︑もちろ ん事務がこのような経営諸活動と本来の性格を異にする別個の

(4)

経営事務論に関する一考察田

機能だということを認識するということはむしろなかった︒そ

こでは他の機能︵製造︑販売︑財務等︶の範疇と︑事務という

観念の範疇とに対する的確な認識のメルクマールがあたえられ① ておらず混同して把握されていた︒

ゆる企業活動が相対的に無意味であるという生産第一主義によ

る経営の長い先入主︑或はまた︑事務が企業利益の創出の積極

的なファクターでないこと︑しかも消極的なファクターとして

も努力を払う割にはそれに要する時間や努力に対してその金銭

的効果が僅少である︑という如く︑事務費用に対する正確な情

報をもたず︑或いはまた︑事務管理の改善について科学的手法

の発展が十分でなかったこと等の理由によるものである︒

それ故︑多くの人々にとって︑事務は第二次的な関心事にす

ぎず︑経営者はこの重要な領域を鮮明な焦点に集中しようとは

しなかった︒︵かって事務が有形な使用出来る製品を直接生産

しないために﹁必要悪

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﹂であるという誤解を② 

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昭 ︑

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︱ ‑六 │

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しかるに︑最近何故その﹁事務﹂も多くの注視を集めるよう

過去五十年間に︑工業生産物︵アメリカの︶はほぼ七00*

増加した︒その同じ期間に︑工場労働者の数はたった八0%増

加しただけであるに対し︑事務関係者の増加数は約四五0

あることは注目すべき点である︒他の方法でこれらの数字を示

すと︑工場労働者と事務員との比率が︑五0年前にほぼ

1 1 0

増加の傾向は各種の統計がその事実を示しはするが︑われわれ ②  は八対一に変った︒このような事務量︑事務員︑事務費用等の ①  0 年には十二対一に変り︑今日その比率

(5)

60 

はかかる現象的な面だけではなく︑このような急激な増加を生

じた多くの原因のうちにこそ事務が注目されざるをえなくなっ

た重要な理由のあることを見極めねばならない︒それらの原因③ のうち特に目立ったものとして次の如きものが考えられる︒

その一っは︑生産の多様化とそれに伴なう生産工程の拡張で

ある︒例えば︑一般に二十種類の製品を造ったり買ったりする

ときは︑たとえその二十種類の製品の全部の合計の価額がそれ

まで製造していたり︑購入していた一種類だけの製品の価額よ

り大きくなくとも︑一種類だけを取扱っていた場合に比べてニ

十倍もの書類事務を必要とするものである︒

また︱つには︑法律︑とくにビジネスに関連する法律が非常

に増加したことである︒私企業に対する政府官庁の活動が増大

し︑それにともなって多くの官庁機関等の要請をみたすため︑

事務の作業量と人員数が倍増した︒このことは次の一例でも示

される︒すなわち︑五0年前の企業の給料支払手続と現在のそ

れとをいま頭のなかだけで比較してみてもその事務手続の如何

に増加したかが理解出来る︒今日最も小さい組織が︑控え部分

に十欄以上のものをもった支払給料記入帳を使用する︒その控

え部分には︑支払期間︑超過勤務時間︑超過賃金率︑超過額︑

正規の賃金率︑会社内での集団保険︑そして総支払額が書かれ 経営事務論に関する一考察山

る︒それから社会保険控除額︑災害保除料︑源泉所得税が書か

れ︑入院加療控除額︑恩給年金︑会社貸付金控除額︑種々の控

除額が差引かれ︑そしてその残りがやっと各人が家へ持ち帰り

得る額である︒これらはすべて必要なものである︒しかし半世

紀前の給料支払では︑従業員は簡単な支払帳の適当な記録だけ

で毎週末に現金を受取った︒それ以外には何も必要でなかっ

た︒現在のこの複雑な給料支払帳の数字の各々がまた他の所で

集められ︑計算せられ︑記録されて他の数字︑他の形をあらわ

すのでそれだけ事務作業は増加する︒

また︱つには︑企業経営にスピードが重視させるようになっ

てきたためである︒それは経営者が︑企業競争に対処するため

と生産部面のオートメーツョソに歩調をあわせるため︑出来る

だけ早く必要な情報を入手しなければならなくなったことに主

最後にもう一っ︑特に重要なことは︑事務はマネジメソトに

とって︑二面性の一面を形成する極めて重要な手法であること

である︒経営管理を効果的に行うためには︑完全で有用な︑し

かも迅速性をもった種々の型の情報を必要とする︒その情報の

処理こそ事務である︒近代的経営管理技術は︑効果的な事務の

裏つけを切実に要求し︑事務の洪水を招来しようとしている︒

(6)

経営事務論に関する一考察山︵中辻︶ 以上の如く︑近代的経営に於ける経営規模の拡大と複雑さの増大︑業務星の増大︑管理技術の向上とその内容の複雑化は︑必然の結果として︑事務の種類と複雑性の倍加︑事務星の激増とその質の高度化をもたらし︑いまやその積極的な︑効果的な処理なしには︑経営の総合的管理︑業務諸活動は︑経営目的逹成のために十二分に役立つことが出来なくなってきた︒それ故︑事務は稜極的な意味で経営になくてはならぬ重要な機能であるということが認識されると共に︑再検討の課題が与えられるようになってきたのである︒

このことは反面事務費の増大としても無視出来ないものがあ

らわれてきたので︑その面からもその節約に経営者が注目する

ようになって来たのも当然なことである︒しかし︑これは事務

費そのものの増大にも原因するが︑また別に最近の競争激化に

よる各企業の原価切下げの努力が︑この分野で残された未開拓

地である事務費に向けられることになったともみられる︒ま

た︑売上高の増加が困難となり︑またそれが直ちに利益の増加

になるとはかぎらない現状に於て︑事務費の減少は︑消極的な

がら利益の増加となる上に︑売上高の増加が一時的である場合

が多いのに対して︑事務費の節約は永続的な効果があるからで④ 

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②少し古い文献では、レッフィソゲル(W•H.

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(7)

62 

図表1 F.M•Knox,

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18701955年におけるアメリカ合衆国の総人口 全従業員数 事務作業者数および事務作業者数の全従業員数にたいするバ ー セ ソ テ ー ジ

カロリ人メ総ア国

図表2

全 作 業 員 事務作業員

1955  163, 916, 000  60,183,770  7,932,978  13.1  1950  151, 230, 000  55,835,340  6,866,374  12.3  1940  131,950,000  45,166,083  4. 612,356  10.2  1930  123, 080, 000  48,829,920  4,025,324  8.2  1920  106, 970, 000  41,614,248  3,111,836  7.5  1910  92,410,000  38,167,336  1,718,458  4.5  1900  76,090,000  29,073,233  1,068,993  3.7  1890  63,056,438  22,735,661  801,505  3.5  1880  50,262,382  17,392,099  518,439  3.0  1870  39,904,593  12,505,923  305,502  2.4 

18991955年における上質紙の生産(トン)

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山城章他共著﹁近代経営と事務管理﹂︵日本事務能率協会︑

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書 類 用 紙

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1955  1954  1953  1952  1951  1950  1949  1939  1929  1919  1909  1899 

1,175,000  1,053,000  1,033,542  1,051,193  1,093,378  957,909  805,515  594,594  607,590  325,183  198,213  112,707 

135,000  125,000  130,904  132,097  160,889  138,236  119,819  83,897 

1,040,000  928,000  902,638  919,096  932,489  819,673  685,696  510,697 

経営事務論に関する一考察山︵中辻︶

(8)

経営事務論に関する一考察山︵中辻︶

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は事務の定義に関して次の如く述べ 山城章稿前掲論文

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稿

大論叢創刊号︶

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かくしてわれわれは以上の点の考察を通じて理解される﹁近

代的な事務の概念﹂を先ず正しく認識し︑そして﹁事務の特

質﹂を的確に把握し︑それにもとづいて事務理論の研究を体系

的に進めて行かねばならない︒その基盤においてこそ近代的事

務管理も展開されうることになる︒

﹁事務にはインホメーションの口頭による伝達ならびに記録

およびレポートの作成がふくまれている︒これらは多くの項目

を迅速に要約して︑経営者の行うコントロールにたいし実質的

そして﹁その真の存在理由は所要のイソ

ホメーションを必要とする人に︑時をえ︑所をえ︑そして方法

をえらんで提供する助長的なサービス機能として貢献する点に① ある︒この点が根本である︒﹂と︒

また︑リトルフィールド

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が﹁事

力を行使することである︒﹂と説明して述ぺた点に注目して次

の如く述べている︒一事務は生産︑販売︑財務︑技術︑購買︑

人事︑および特定の企業に必要なその他の職能とは到底比べる

ことができないものであるということは少しく反省してみれば

すぐ理解できることである︒むしろ︑事務は以上の各職能を遂

行するに必要な一個もしくは一群の過程である︒その特殊の貢

献はそのおのおのを遂行する場合必要とする情報を提供するこ② 

これらの論者の説明にもある如く︑⑧ 

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である︒﹂が︑それだけで自己目的

をもつものではない︒すなわち︑事務はほかの仕事のために必

要なのであって︑事務自体のために行われるものではない︒記 ﹁事務活動は情報処理

録とか通信そのものにはなんらの価値もない︒事務は販売︑製

造などの第一線の仕事の背後にあってその活動を補助し︑促進

し︑結合し︑調整し︑また経営管理の仕事を効果的に行うため

(9)

6 

経営事務論に関する一考察山︵中辻︶④ の便益を提供する立湯にあるものである︒だから従来常識的に

書記作業とか︑あるいは事務室内部の作業であると理解して来

たのは︑きわめて現象的な側面を把握したものであり︑事務と

いう形式においておこなわれているところの事務そのものの本⑥ 質的な機能に触れていないものである︒経営活動において事務

が他の機能に対していかなる役割りを果しているかを認識する

ことが重要な問題なのである︒

① 

⑥ 

新しい事務組織を考え︑近代的な事務管理を展開するために

は︑この事務の特色を充分認識した上でなければならない︒す

なわち︑事務は組織体のあらゆる部分でおこなわれるものであ

り︑しかもそれが他に貢献することをその特性とするものであ

る故︑他の機能と異なり︑

まず如何にすれば効果的に他に貢献しうるか︑業務機

能︑管理機能︑経営機能との結びつきが最も合理的であり︑そ

れらに最もよく奉仕出来るようになるには如何にあればよい

か︑しかもそれが組織全体の目標に対して効果的であるように

するためには︑どのように経営全体の事務活動を調整すればよ⑦ いか︒という︑適切な情報の処理と提供が﹁経営活動に貢献すともに出来るだけ満足せしめうるような方法を考えねばならな ③  る性格を向上させる問題﹂が第一の重点であり︑

しかる後に﹁事務作業自体の能率化︑事務の作業管理の

ための科学的方法﹂が問題として取上げられるぺきである︒

近代的な事務は

山︵高度の経営管理に十分に利用し︑役立たせうるよう

に適切なインホメーショソを供給し︑曲要請されたサービス

を提供し︑企業内のその他の主要な機能における業務の履行を

支援する︒ことにあり︑

②しかもその事務活動を妥当な期間と妥当な努力︑そして⑧ 妥当な費用の支出で完遂する必要がある︒

⑨ 

経営事務の近代的な性格はこのような二つの課題をになった

ものである︒それ故︑この二つの課題を適当に配合し︑両方を 六四

参照

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論点ごとに考察がなされることはあっても、それらを超えて体系的に検討

人は何者なので︑これをみ心にとめられるのですか︒

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(注)