コミュニティ形成と住民意識
その他のタイトル Analyzing consciousness of the people of Suita in terms of community formation
著者 中道 実, 滝本 佳史
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 12
号 1
ページ 183‑232
発行年 1980‑12‑20
URL http://hdl.handle.net/10112/00022879
コミュニティ形成と住民意識
中 道 実 ・ 滝 本 佳 史
は じ め に
1960年代後半以降,市民意識に関する調査研究が盛んである。特に市民意識の系としての,あ るいはそれを基礎とする自治意識やコミュニティ意識の把握解明ないし形成論議が「新しい地域 社会」形成の模索と軌を一にして多くの自治体や研究者,特に都市社会学者によって展開されて きた。
これにはおよそ2つの社会的状況が介在しているものと判断される。 1つは昭和30年代以降の 高度経済成長の下において,技術革新の進展を動因とした「産業化」および先進資本主義諸国に おいて典型的にみられたそれと相即不離の関係にある「都市化」が進行し,社会的には組織の
「大規模化・官僚制化」が徹底してきたことであるもこのような社会変動の過程は,都市一農村 を問わず日本全体をおおったが,特に地域的には都市を中心に,都市に集約的に展開されたもの であったoそして, この過程はそこに住む人々に対して, さまざまな影響を与えたのである。即 ち「工業化による分業の発展や専門化の進展は,大多数の人間の部分化や機械化をもたらし,都 市化は人々を静態的・固定的な安定した村落社会からひきずり出し,流動的・競争的な動態的都 市社会にのみ込み,不安と緊張にさらし出す。また,組織の数の増加と共に,組織の規模も拡大 し,個人はその中の単なる一部分として没個性的に業績主義の原理に基づいて運営され,巨大組 織にくみ込まれていっ」 たのである。これらに共通するのは,人間の部分化と没個性化・非人格 化であり,従って昭和30年代以降の激しい社会変動は,伝統的な人間のあり方を変え,次第に人 々を大衆社会化状況にさらすことによって,人々の自己疎外を強めていく過程でもあったoのみ ならず,急激で広範な産業化,都市化,官僚制化の進展は,伝統型の地域共同体秩序を崩掘させ,
非流動的な基礎社会としてのかつての都市や農村をそのままでは存在させ得ず, 「より大規模な 社会, つまりメガロボリスを中核とする都市化社会の中に吸収していった%換首すれば都市闘 外延部の拡大を主軸とした「全般的都市化」の事態の進行がもたらされたのである。このような 都市化社会の形成と人間疎外状況の発生が不可避的に随伴する地域社会の解体現象は,あらため
1) 倉田和四生著『都市化の社会学』法律文化社, 1977年,四1 284頁。
2) 倉田和四生「都市化とコミュニティの間題」都市問題研究,第23巻第7号, 1971年, 14 16直。 3) 高梱勇悦「日本社会の変動とコミュニティ」 (国民生活センクー細『現代日本のコミ,.̲,::.テdJII品
困店,所収) 1977年, 38頁。
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関西大学『社会学部紀要』第立巻第1号
て地域社会のもつ現代的意義を問いなおさせることになったo特に,都市社会学の領域において 展開された「第一次集団的価値の再発見」という研究テーマは, 「大衆社会的規模で拡大・深化 する都市化過程にあって惹起する問題的状況, とくに個別社会問題として表現される人間疎外状 況にどう対応しうるかの課題」に接近したものであり,地域社会的脈絡を現代的に再評価するこ とに焦点が合わされたものであったo ここで問われたのは,人間疎外状況下での「人問性回復の 生活基点」 「精神的・情緒的安定の場」として再生されるコミュニティの系としての地城社会的 脈絡であり, 「消極的・否定的意味合いでの」自然回帰的な地城共同体の系としてのそれではな かった0。ここに, 「新しい地域社会」の理念としての「コミュニティ」概念が「現代の都市化 現象の国家的規模での拡大と深化の過程を前提として,その変動の状況においてこそ存在意義を
もつもの」 として新しい理論的装いをこらして発想されてきたのである。
第2は昭和30年代を通しての産業優先主義にたった経済成長政策が産業基盤整備を先行させ.
生活関連社会資本投資を立ち遅れさせたため,生活基盤•生活環境の破壊を放匠し,地域住民の 変動社会での生活的適応を困難化したことである叫産業化・都市化の進行に伴なう都市化社会 の形成によって解体し一元的状況を呈してきた都市と農村は,最早かつてのような一方ではイエ やムラの重圧から脱出をはかる場としての都市,他方では都市問題を還元,潜在化させる湯とし ての農村, といった意義および両者の相互依存関係を喪失していった。特に,多くの脱農転入者 を含む都市住民はイニやムラの解体によって帰村ルートをたたれ. 「準拠集団」としての意味を もつ家郷を失なったのである。その代償に人々は都市に「生産(労慟)の場」としてのみならず 彼らの究極的な生活拠点=「生活の場」としての機能を期待し,その意義付与に志向することに なる。しかし,ひとたび人間の住生活にかかわり, 「生活者」に必要不可欠な「居住地」として 捉えなおされた都市は,生活基盤が不備で生活環境の劣悪な自然的・物理的空間,ないし生活環 境施設体系として,また,地域性,共同性の崩壊した社会的空間ないし,社会環境体系として露 呈せざるを得なかった7)0 都市住民の多方面にわたる生活要求がここに顕在化し都市的諸問題の 解決模索過程を通じて組織化されていく。こうして,都市における「生活の場」の確保の志向は,
住民をして彼らの直面する生活環境条件の悪化を媒介にした生活圧迫や生活破纏の事態進行を認 識させ,それらの間題解決のための伝統的な共同体的結束とは異質の新しい地域的結合を提起さ せたのみならず,問題解決ルートの改善・開拓努力を通して自治体改革を視野に入れた新しい市 民意識ないしは自治意識, コミュニティ意識の形成を促していったのであるo従って,この新し 4) 奥田道大「都市的状況とコミュニティ研究一都市社会学における研究の展開と課題」都rli問題研究,
第23巻第7号, 1971年,孤 35頁。
5) 松原治郎「コミュニティ形成の論理」市民,第13号, 1973年3月, 19Jf.。
6) 松原捨郎「地方自治の変質と住民運動」 (松原治郎編『住民参加と自浩の革新』学腸書房,所収)
1976年, 8頁。
7) 高橘勇悦著『都市化の社会心理』)II島書店, 1979年, 14tvl5頁。
潟横勇悦「日本社会の変動とコミュニテし」 (国民生活セソクー紺,前1掲書.所収) 40 41頁。 古屋野正伍「現代日本のコミ...ニテrーその実鴎と問題点ー」 (国民生活セソクー編,前掲密,所収)
6 1頁。
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い住民意識は住民が現に居住している都市を「労働と生活の統合的な場につくりなおそうとする 姿勢のなかに求められる」8)ものであり,それは解体した伝統型の共同体的秩序を都市のなかにど う回復するかの回帰的なものとしてではなく,社会の構造的変化を背景として現出した人間疎外 状況と生活破壊に有効に対処しうる新しい「生活価値」をどう創出するかにかかわるものとして 捉えられる9)。 ここに全体社会の都市化の流れという社会変動の過程で, ほとんどその内容を崩 壊させていた地域性と共同性が新しい意味を付与されて再生され, 「地域社会という生活の場に おいて,市民としての自主性と権利と貨任とを自覚した住民が,共通の地域への結びつきの惑情 と共通の利害意識をもって,共通目標にむかう行動をとろうとするその態度のうちに見出され る」10)現代型コミュニティとしての「新しい地域社会」建設志(,,Jを発現させてくることになるの である。
I 市民意識研究の主題
「新しい地域社会」形成に対応する市民意識研究の主題発見は1960年代後半以降のこととされ る">。事実, この頃から地方自治体レペルでの「市民意識調査」が急増し,主として都市社会学 者の関与する各地方都市,大都市およびそれの周辺地域での市民意識調査研究成果の累積化も進 行している。
この間, とかくルーズに,多義的なままに使用されていた市民意識概念の意味内容が明確化・
特定化されてくる。近江哲男は従来わが国で市民意識とよばれてきたものの意味内容を次の5つ に分類しているo即ち, (1)都市共同体の構成員としての意識一正統的概念(2)市民社会の一員とし ての意識ー西欧近代社会の社会意識(3)地方自治体(市)の住民としての自治意識ないし市政関与 意識(4)愛市精神あるいは地域社会帰属意識(5)市民性・市民気質・市民惑情である。 (1)の都市共同 体の構成員としての意識は,その原型を中世北欧型の「自由都市」に求め得,「市民により自治的 に運営される 自由な 都市」における「個人的意志束縛の伝統的諸制約から解放された,法的 平等と自衛の原理に立つ 市民"としての意識をさすo したがって,この原型的意味は宗教的・
ギルド的連帯の基礎の上に成立する自治的な個人の誓約団体としての都市共同体の成員であると いう自覚であり,「公共世界に奉仕する個人の自主的・規範的精神」および共同の秩序を共に守り 団結によって自衛を保っていく共同体成員相互の間の社会連帯の意識である。 (2)の市民社会の一 員としての意識は,近代市民社会形成の過程で,幾世紀の永きにわたり保持• 長養されていた市 民意識,即ち「公共世界を自らの対象と仰ぐ自主的な生活惑情」, 自律的な規範への同一化梢神 8) 高橋勇悦「地域社会と人問」 0こ橋幸, 石川晃弘, 高橋勇悦藩『社会学』新曜社, 所収) 1976年,
193頁。
9) 奥田道大「コミ...ニティ形成と住民」 (奥田道大,副田議也,謁橋蜀悦著『都市化社会と人閥』日本 放送出版協会,所収) 1977年, 56頁。
10) 松原治郎「コミ...ニテd形成の論理」21頁。
11) 奥田道大「社会的性格と市民意識」 (倉沢進編『都市社会学』社会学雌座第5巻, 所収)東京大学出 版会, 1973年, 204頁。
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が,新しい社会経済的諸条件と環境,および宗教改革などの諸要因にはぐくまれて,個々の都市 枠から国民全体ないしはヨーロッパ全域にまで再生,拡大,一般化され西欧近代社会の「市民社 会化」として結実していったものと理解される。 「封鎖的な家族結合や同族結合の枠を超えて,
人間が更に広い大きい社会関係を求める際に慟く結合形式」としての近代市民社会を形成し,そ れを支えてきた「市民的結合」は,中世北欧都市の創出した社会結合の形式と直結するとは断定 しがたいとしても,前者が後者の高度に具体化されたもの,都市共同体の枠を超えて普遍化され たものと理解することなしに, 18世紀以降にみる市民社会の開花を正当に把握することは困難だ からである12>0従って, (2)を市民社会の一員としての意識と解しうるとすれば,これと(1)の都市 共同体の構成員としての意識は「その実質的内容一つまり,個人の主体性・自主性,市民的権 利と義務の認識,市民相互の平等と連帯など一―•についてはほとんど合致している」ことになり,
両者の内容の差異は後者の場合, 「都市共同体構成員が共有している特権の保持という,閉ざさ れた性格をもつのに対して,前者の場合には「市民社会あるいは人類に対して開かれた性格」を
もつという点に帰着することになるといえるだろう13)。
(3)の地方自治体(市)の住民としての自治意識ないし市政関与意識という意味で用いられる市 民意識は, (1)の都市共同体の構成員としての意識につながるものであり,自主的・自律的規範意 識を基礎にした公共世界への奉仕の精神,市民的義務の積極的遂行態度,市民的権利の自覚など を基本的側面としてもつo換言すれば市民の共同による地域社会の福利増進をはかるための市民 的連帯をテコにした市政への主体的関与と自覚的関心の行動・態度・意識をさすものである。 (4) の愛市精神ないし地域社会焔属意識には,自治意識に裏づけられたものと,それとは原理的には 無謁係な,単なる情緒的なものとがあるが,前者の湯合にそれは最も強固に発現される。 (5)の市 民性,市民気質,市民感情としての市民意識の用語例は,農村住民と対比される都市住民一般に 共通な態度特徴とか個々の特定の郡市の住民に共通なそれを指す場合によく見受けられるもので あるo前者については従来アーバニズム理論の展開およびそれの批判的研究を通じて都会人の社 会的性格に関する実証的研究の蓄積がなされてきており,後者については0 0市民の市民性,生 活態度,慣習等々に関する,いわば市民気質ともいうぺき特定市民的性質が地方自治体レペルで の把握対象化されてきている。しかし,このような「都会人の社会的性格ないし,特定都市住民 の気質的特徴」としての市民意識の使用例は,市民意識の本来的概念内容を無限定的に拡大する
ものといえようHl。
以上のような市民意識概念の怠味内容を検討する作棠を試みた上で,近江哲男は,わが国にお ける市民怠識の実態を経験的に把握するためには, (2)(4)の市民意識を問題にすぺきであると主 張する。 (1)の都市共同体の構成員としての意識である市民意識を除外するのは,仮りにそれが学
12) 近江哲男「市民意識調査の方法と問題点」都市問題,第以巻第7号, 1963年, 2Q,..,23頁。 13) 倉沢進「市民意識の開発と方法」都市問題,第62巻笛7号, 1971年 17 18頁。
14) 倉沢進「都市の住民意識と住民組織」 (岩井弘融,加藤一郎,柴1B徳衛,八十凸義之助編『財政と行 政』都市閥題識座3,所収) 1966年, 296302頁。
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問的,思想的に最も重要であるとしても厳密な意味におけるそれをわが国民に問うことは無理だ からであり, (5)の市民性,市民気質,市民感情も漠然とした無限に広範な分野を包括し,何か特 定の具体的な事柄に関して取りあげられるにとどまらざるを得ないが故に,やはり,市民意識調 査の主題からはずされるぺきであるという15)。
市民意識の経験的研究に関するこのような戦略的立場は,倉沢進によって更に明確化される。
且Iち,彼は市民性,市民気質,市民感情を市民意識と呼ぶこと自体,言葉の濫用であるとして,
これを市民意識研究から排除すると共に,都市共同体の構成員としての意識という用例での市民 意識は, 「西欧に固有の歴史的所産であって,異なった歴史的過程を歩んできた日本の社会と文 化の下では,特に重要な意味を担いうるとは考えられない」が故に,わが国における市民意識研 究の主題とはなりえないとするのである。彼によれば「都市共同体の構成員としての意識」は,
この意味で歴史的概念であり,近代市民社会の成立の過程で「次第に都市共同体の壁をこえて」
「抽象化され, 特定の地域社会への帰属や, その地域社会における行動の様式とは,一応切り離 され」「市民社会のニートスにまで高められた」市民社会の一員としての意識である市民意識こ そ正当的概念であるという。この観点に立つ時,市政関与意識ないし自治意識は,市民意識のサ プ・システムとして捉えられ, 「市民社会の基礎的構成単位である自治体の一員としての意識」
として位置づけられることになる。同様の性格づけは,愛市精神ないし地域社会帰属意識にも連 なる。それには「自分の生れた都市だからとか,先祖伝来の墳墓の地であるからといった理由で,
特定の市に対して愛着心とか情緒的一体惑を覚えるもの」としての特殊主義的な愛市精神ないし 地域社会帰属意識と, 「特定の市に対する愛着心というよりはそこがどこであれ,たまたま自分 が住むことになった地域社会を人々と協力してよくしてゆくことが市民としての義務であり,そ してそれによって良い生活環境を享受するのが市民としての権利である」との考え方に支えられ たものとしての普遍主義的な愛市精神ないし地域社会帰属意識の 2つのクイブがあるが,正当的 概念である市民社会の一員としての意識,およびそれの系としての自治意識と結びつくのは後者 であり,それのみが市民意識ないし自治意識を促進し,また,これらに支えられると理解される からである。この意味で,市民意識や自治意識形成の模索は,普遍主義的な愛市精神ないし地域 社会帰属意識の開発を重要な戦略目標に設定しうることになる18)。
こうして,市民意識の正当的概念とされる「市民社会の一員としての意識」を中核とし,それ の形成と「新しい地域社会」との対応を脈絡づけていく視点が定まってきたo しかし,この湯合,
当然のことながら,地域社会は市民意識の現実的体験の場,あるいは表出の組織的媒体として位 置づけられ,従って,それとのかかわりが居住経験や定住意志の有無にかかわらず, 「より限定 された個別的•特殊的な対応(特定の関心や問題状況にみあう賑りでの.ァソシェーシ a ナルな 対応)」を要件にするものとして捉えられることになる")。 ちなみに倉沢は地域社会という湯を
15) 近江哲男,前掲論文, 25頁。
16) 倉沢進「市民意識の闘発と方法」 16 20頁。 17) 臭田道大「社会的性格と市民意識」幻5頁。
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関西埓『社会学部紐罠』第U巻第1号
とると,市民社会の一員としての市民意識の系である自治意識ないし市政関与意識が重要な意味 をもってくるとし,それの大都市社会における高揚の方策を, 「住民の自治体ないし地域社会に 対する愛着心や,情緒的一体惑に基礎をおかない」,すなわち「00市に対して関心をもち,愛 着をもつ故にではなく」,従って「偏狭なローカル・アクッチメソトを離れて,市民社会の市民 として, どの地域社会に住もうと,そこに永住の意志の有無にかかわらず,その地域社会を自発 的共同によって向上せしめようとする態度」としての市民意識形成の方向に求め,それの成立主 要条件を住民相互間の共通利害の認識と,その利害をめぐる連帯の意識にみるのである18)0
このように,西欧市民社会の規範としての市民意識の強調は,地域とは関連するが「特定の地 城」にはとらわれない普遍的な広がりをもつ価値普遍的な態腐としての,また市民の連骰と自発 的共同による地域社会福祉の向上への努力態底を内容とする市民意識の重視へと導いていった。
これは「大衆社会の中で疎外された住民の自己回復をめざす」ID>規範意識としての市民意識追求 を志向するものであり,ここに市民意識研究の主題は. 「望ましい」規範としての市民意識を都 会的状況の中でいかにして確立し,その崩芽をどこに見出していくかを問うことに醤かれること になったといってよいo事実,この主張の論拠は, (1)移動性や定着性は市民意識と関係がないこ と, (2)地域社会との結びつきの少ない居住歴の浅い人々の方が,また新来住市民の中では一般米 住者より団地居住者の方が,市民意識が高いこと, (3)団地居住者は地域集団への参与が高いこと.
(4)しかしながら,集団への参与が市民意識を高める原因とはいえないこと,等の調査ファインデ ィソグズをベースとしているのであり,このことによってローカル・アクッチメソトによること なく,大都市の新来住市民層に,地域社会的連帯による福祉の向上への意欲覚醒が可能であるこ
とが主張されているのである10)。
このような「地元意識の要素を排除した市民意識」 「特定の地域社会とは原理的には無関係な 市民意識の発見は,産業化・都市化の展開のなかで,人間生活を包括的に充たす空間領域として の近代型コミュニティにおける地域性と共同性が著しく後退してきたという現実を直視し,地域 社会を新たに市民意識の「現実的体験の場,あるいは表出の組織的媒体」として捉えなおし,そ こに共同性の要件を再構鎖しようとする意図があった。それは「新しいコミュニティの形成基盤 を,まずもって住民の意識と態度のなかにもと」め,コミュニティを支える価値態度としてのコ
ミュニティ意識を「池元意識の要素を排除した市民意識」に代替させていることから必然的に婦 結されるものであったといってよい81)0即ち, 「心理や態度の次元でコミュニティを捉えようと する試みは,その1つの婦結として地域性をコミュニティの要件とはしないという見解をもたら す」aa》ことにつながり,「特定の地域社会とは原理的にはかかわらない俎識や態度の共同性にボイ
18) 倉沢進「大都市社会における自油意識成立の条件」都蔵,第14巻第11号, 1970年, 17 19頁。 倉沢進著『日本の都市社会』福村出版, 197~民 公8253頁, 262264頁。
19) 松村直道「自袷意戦と政恰的鎌調心」 (松原治郎編,前掲害,所収) 87頁。 20) 倉沢進署,蘭掲召, 263264頁。
21) 倉沢進「コミュニティと住民生活」地域活動研究,鍛8営第2号, 1970年, 6 7真。
22) 園田恭ー「 地域社会 と 共同社会 ーコミュニテA厩念の再検討を中心に一」社会学評論, 第¥.
コミュニティ形成と住民意識(中道・謹本)
ソトを合わせた」23)市民意識と地域社会との新しいかかわりが求められることになるからである。
市民意識研究の主題は,産業化・都市化の全体社会規模での展開にあって.かつての地域共同 体秩序が崩域し,近代型コミュニティにおける地域性と共同性が解体してきたという現実把握を 出発点とし,新しい地域社会の形成理念をいずれに求め,その成立可能性をどこに求めるかの実 践的課題に置かれてきたと要約できる。これまで,我々が検討してきた意識や態度の共同性の再 規定に焦点を合わせた立場は,市民社会的価値規範意識を市民意識およびそれの相互交替的なク ーム化されているコミュニティ意識のモデルとして想定し,モデルと実体との乖離ないし符合に 関する現実的評価から新しい地域社会形成,即ち現代型コミュニティ創出の客観的可能性を捉え ようとするものであった。しかし, 「ひとつの脈絡あるいは湯」にすぎない地域社会とのかかわ りを強調するこの立場は,徹底して喪失・解体化された伝統型の地域共同体秩序を対極におく,
新しい地域的秩序の構築,換言すれば新しい意味の地域性の確立をも視野に入れた地域社会形成 論によって止揚されていくことは避け得なかった。この点を最も鋭く指摘したのは奥田道大であ る。彼によれば. 「都市住民の社会意識頻型としての市民意識形成は,地域共同体をモデルとし た地域共同体意識(伝統型住民意識.地城埋没意識)との区別を前提にした発想」であり,そこ で創出の客観的可能性を探られる地域社会,即ち現代型コミュニティは「喪失・解体化の対象と なる地域共同体とは対極をなすモデルである」というo とすれば,価値普遍的な意識態度として の市民意識がかかわりをもつ「地域社会」と奥田のいう「コミュニティ」とは斌味内容を異にす るということになるo即ち両者の間には一方での地域性(居住性)の欠落,他方でのそれの含意 といった対比が存在するということである。この観点から,奥田は,地域社会的脈絡の枠内で市 民意識を再編成し,地域性(居住性)を原理的に内在する市民意識としてのコミュニティ意識を 規定する。従って.この場合,コミュニティ意識は地域共同体意識(伝統型住民窯識,地域埋没 意識)と同次元尺度上の対極に配列されることになるoここに共同性に焦点を合わせた西欧市民 社会的な価値普遍的・開放的市民意識論を批判的に摂取し共同性と地域性を再統合したところで,
住民の生活基盤である総体としての地域社会への主体的対応に強調点をみていく市民意識.即ち
「主体的な地域社会灯、識」の形成という課題設定が市民意識研究に提起されてくることになった のであるm。
n 市 民 意 識 分 析 モ デ ル の 展 開
既述のように,産業化あるいは大衆化が人々の孤立化,原子化を進行させ,都市化が既存の伝 統的な地域共同体の秩序を解体していくなかで、人々は地域社会の諸条件が自らの生活にとって いかに重要なる役割を果すかを認識するに至ったo孤立化,原子化,あるいは巨大な機構の歯車 化は人々に近隣の人間的接紬の裸まりによる情緒的アスピレーション(共惑)を求めさせ,個別
ヽ14巻第4号, 1963年, 55頁。
23) 奥田道大「社会的性格と市民怠識」211頁。 24) 同上, 211212頁。
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の利害や個々の立場にたちながらも共通の湯を可能にしてくれる地域性を墓盤にした合意(コン センサス)を追求させることになったo更には,生活の個別利益を充足していくためには地域社 会の社会的資顔や生活環境施設を共同に利用せざるを得ないとの利害の共通性を認識することに
よりその拡充を求めて,利益共同的なコミュニティの形成を自覚化させたo こうして地域社会が
「人間の生活行動や意識の拠りどころ」として,また「人間性回復の場」 「精神的安定の拠りど ころ」 「利益共同体」といった表現で示される「積極的な価値を与えられて再発見されて」きた のであるH)o
このように,地域社会の構造的変容を起点とし,それに活性化の基礎を得たコミュニティ研究 は,住民という意識主体の内実の意味なり変化の方向なりを探りつつ,それを「構造的変容の直 線的反映」としてよりはむしろ「変容の方向への先行的指標」として捉え,それに「今後に予測 される問題状況への示唆としての位置を与えていくことになったoここに住民の「意識(と行動)
の実体をコミュニティ形成の客観的可能性との内的関連において規定」し,そのための意識類型 化や属性分析が独自の課題としてすすめられていくのである18)0 とくに, 1960年代後半以降,都 市圏外延部の拡大とスプロール化という事態の進行によって著しい変貌を遂げ,地域住民生活と 自治をめぐる問題が集中的に発生した都市郊外地域を対象に,社会意識の主体の内実を問い,新 しい地域社会形成を模索する調査研究が急増してきているが,それらは「地域社会の意図的改変,
すなわち開発や新しい地域社会の形成をおし進める前提」としての市民意識調査であり,それに 関する「地減社会の構成員としての住民の意識を問う作業が重要な位置を占め」ていたm。
市民意識躙査における課題意識の一定性は,現実に存在している住民意識の多種多様性,住民 の地域生活実態の混様性,地域生活環境問題の特有性にもかかわらず,調査主題を通住民的,比 較地域的に共通性の豊かなものにする。質問紙の構成からいえば「地域問題にかかわって,近隣 交際からはじまって,次第に自らを組織化させていこうとする住民態度に焦点」があてられ,そ れは「一方では地方行政や政治への態度の変化となり,自袷への意識の昂揚につながり,他方で は自分の住んでいる地域への愛着や定着の意識を強め」ていく形を捉えようとするものになる。
これによって, 「個々の住民の主体的態度の形成,組織化および地域社会への認識や合意形成へ の高まり」と,それを基盤とするコミュニティ形成の態度への収敏が跡づけられていくのであ る鱈>。
このような,個々の住民の意識の中にコミュニティ形成の構えを見出していこうとする市民意 識研究ほ,それを操作的に把握するための分析軸の発見とそれに基づく住民意識のモデル(顛型)
化をこれまで推進してきたo このうちで典型的なものは,モデル(類型)設定の分析軸を地域社 会への認識性(意識性)と主体性(実蹟性)に求めるものであり,そこから 4つの意識モデルを
謳) 松原涵郎著『コミ...ニティの社会学』東京大学出版会, 1釘昭ら 56 59頁。 磁) 奥田道大「祉会的袖格と市民意識」幻~畑頁。
ZT) 訟原檎郎著,詢期り,鱒頁。
濾) 肩上, 81)1(, 84買。
コミュニティ形成と住民意識(中道・・滝本)
設定する形をとっている29)。
この考え方の出発点となったのは,都市化・流動化の進行するなかで,開かれた地域社会への 志向をふくむ普遍主義的な市民意識に支えられた自治・市政関与意識の昂揚の必要性を主張し,
その可能性を見出そうとするために,松原治郎・倉沢進ほかが自治省の委託により, 1969年に東 京周辺地域で実施した「自治意識調査」で採用した図式である。ここでは,伝統的な共同体意識
(強)一西欧的な市民社会意識(強)と自治体意識(強・有)ー自治体意識(弱・無)の2つの軸 をくみあわせて①本格的市民R伝統的地域人③観念的市民④伝統的無関心の 4つの意識類型が析 出されている。手法的には,第1軸上の測定のために,伝統的地域行事への態度,共同体的「村 仕事」への参加態度,伝統的な地域集団への参加態度,市民意識(個人の尊厳や自由など)の形 成を捉える数問の質問群などから構成された尺度が,第 2軸に関しては,地域生活関心の拡がり,
地域社会への積極的・消極的態度,市政のあり方への態度,市の仕事への協力度などを測る質問 群から構成された尺度が使用された10)。この図式によれば,大都市周辺部で大多数を占めるのは,
「いわゆる近代的なものの考え方をもち, 政治に関しても国政レペルでは積極的な意見をもちな がら,自分の住む地域社会の事柄についてはほとんど関心をもたない」観念的市民のクイプであ るが,望ましく,従って開発の目標とされるのは, 「市民意識に支えられた,そのサプ・システ ムとしての自治意識ないし市政関与意識をもつ人々」であり, 「生活上の共同関係にある他の住 民との間の利害の共通性を認識し,生活上の共同の利益をめざして自発的に連帯し,自律的に,
すなわち自分たちの取り決めた方式に従って,地域社会の諸問題を解決していこうとする態度」
をもつ本格的市民のクイプである。しかし,現実にこのクイブの住民はごく少数にすぎないSl)o
従ってここから,近代西欧社会の生み出した価値や思考様式に行動の基準をおき,自治体住民と して自治参加の意識をもった自己主体化を実現していく方途が模索されることになる。
1970年代に至り,全国的な住民運動の昂揚という状況を背景に,それを地域社会形成の脈絡に おいて住民意識と対応させようとする立場が自己主体化の戦略的焦点として登湯してくる。
住民の主体化の方向をコミュニティ意識形成の方途として,居住性に根ざした市民意識形成と いう脈絡の中で捉えようとしたのは,日本地減開発センクーによる八王寺市躙査で住民意識の項 を担当した松原治郎・奥田道大等であったo とくに奥田はこの考え方に沿って,倉沢等の自治意 識に関する調査枠組を発展させた地域社会意識の分析枠組として,行動体系における主体化ー客 体化,意識体系における普遍化ー特殊化の2つの分析軸を設定し,それらの組み合わせにおいて,
①地域共同体⑨伝統型アミノー③個我④コミュニティの各モデルを構成したo各モデルの析出に さいしては,一つの質問によって 4つの選択肢のどれを選ぶかの手法が操用されているが,その 中で選択を期待されるのは,主体化ー客体化の極において表現される選択肢,即ちコミュニティ
29) 同上.86頁o
30) 同上.町 88頁。
31) 倉沢進「市民意識の開発と方法」20,...公頁。
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應 紐 『 社 会 学 鑽t要』第閾唇第1号
・モデルである。このモデルの地域へのかかわりは住民主体の生活甚盤の創出として位悦づけら れ,その過程での住民相互の連帯関係,行政に対する主体的対応を特徴としている。この場合.
地域住民運動過程が住民意識の態様との関連づけに仮説的に導入され,両者の動態的対応による 地域社会形成の手がかりが模索されるのである82)。
八王寺調査の分析枠組は,松原・倉沢等の自治意識の調査枠組が特定の地域にとらわれない普 遍性をもつ市民意識の形成を探究しようとするのに対して,都市化・流動化の進行による地域共 同体的属性の徹底した喪失・解体化の中から地域社会創出の客観的可能性を追求するため,市民 意識と地域社会との新しいかかわり,即ち主体的な地域社会意識としてのコミュニティ意識を.
地域共同体意識と同次元上の対極に位置づけようとするものであったが,これを大都市近郊にお ける住民意識分析のためだけではなく,地方都市における住民意識分析のためにも適用しようと したのは.同じく国民生活セソクーによる金沢市調査である。この調査は「現代日本の都市社会 にみられる住民の連帯意識ないし連帯行動の実態」を明らかにし, 「社会的現実のなかにコミュ ニティの胎動」を探ろうとするものであり,このねらいを達成するために(1)地域的連帯として,
いかなる形態・内容のものが存在するか(2)さまざまな地域的連帯は質的・理念的にいかなる相違 を示し,かついかなる相互の関連性をもつか(3)これらの連帯を構成する社会的契機は何であるか (4)連帯が地域の住民生活や市行政におよぼす機能・影響は何か(5)これらを通して,新しいコミュ ニティの成立可能性をどこに求めることができるかの基本的視点を設定している18)。この共同研 究でコミュニティの中心的な構成要素をなす地域的連帯の検討を担当した中村八朗は,作業を進 めるにあたり,奥田によって提起され,実証的適用を経ている分析枠組を継承し,類似の図式を 用意する。それはコミュニティの要件としての地域的連帯性の有無をあらわすクテの軸と. 「都 市共同体の構成員としての市民」が備えている諸属性の中から自発性をとりあげ,その有無をあ らわすヨコの軸から構成されるが,この両軸の交叉によって(連帯性+,自発性+〕 〔連帯性+,
自発性一〕 〔連帯性ー,自発性+〕 (連帯性ー,自発性ー)の4つの住民意識類型がつくられる。
そして,住民がどのクイプに近い意識をもっているかの経験的確定は.連帯性を近隣交際につい ての質問に対する,自発性を世間体を気にする体面意識についての質問に対する回答によって測 定し,それらの各 2区分されたものをクロスさせる方法によって行なわれるo各類型はそれぞれ コミュニティ・クイブ,地域共同体クイプ,個我クイブ、マス・クイブと命名されているが,
(連帯性ー,自発性一〕をアノミー・モデルと呼ばず, マス・クイブと呼ぶのは. 「アノミーが 社会蜆範の喪失を意味する」のに対して. (自発性一〕は近所の手まえを気にする.つまり社会 規範を無視していないことを意味し,このクイブが「社会規範を無視するほどの自主性には欠け ながらも連帯性には乏しいクイブ」を内容とするところから.この命名に適語性を見い出せるか 32) 奥田道大「コミュニティ形成の論理と住民意識」 (韻村英一,鵜銅但成, )II野重任編『都市形成の論
理と住民』所収)東京大学出版会, 1971年,1師 175頁。
33) 古屋野正伍「調査の視点・方法・対象」 (国民生活セックー編,前掲乱所収) 117118頁。
コミュニティ形成と住民意識(中道・滝本)
らである。ここでコミュニティ成立の基礎をなすのは,自発性という市民的属性を備えた地域的 連帯性を体現する住民クイブ, したがって共同体的連帯性ではなく,市民的連帯性である。この 視点から,中村は連帯性の有無や形態・内容の分析と,それが地域生活の諸側面とどのような関 連をもつかの検討を分析の焦点に据えていく84)0
社会学者たちによって従来説かれてきた住民意識類型論の特徴は,住民の現実の意識がどの類 型にどれだけ布置されうるかを捉えるだけでなく,地域社会の都市化・流動化の進行に対応して.
意識類型間にどのような移行が可能であり,また期待されるかを解明しようとする意図が共有さ れている点にあるo松原・倉沢によって提示され,後に倉沢によって修正された意識分析のモデ ルは市民意識を基礎とする自治意識の開発と方法の探究を課題とするが,その焦点には特殊主義 的な共同体意識から普遍主義的な西欧的市民意識への移行と,自治体とのかかわりにおける付与 的・受動主義的役割意識から獲得的・業綬主義的役割意識への変容が据えられており,類型間の 移行を促進する要因として学習や社会教育のほか, 「住民生活上の具体的な問題を手がかりとし た住民活動・住民運動・住民要求」などが,仮説的に挙示されている81)0住民の価値の主体化と 普遍化の方向をコミュニティ意識形成の方途として把える奥田道大は,コミュニティにかかわる 新しい価値指向の側面が地域生活過程,運動的過程との動態的対応において把握されうることを 主張し, 「地域生活過程の矛盾に起点をもつ住民運動展開の諸階梯を射程にした,住民意識の変 容と連続に関する」調査枠組の重要性を説える。そのモデルは,仮説的に全体社会のドラスティ
ックな変動過程による共同体規制の崩壊・解体化に伴なって「伝統型アノミー」が一般化し,都 市化の拡大と深化による諸問題の発生とそれらの処理・解決過程を通じて,西欧市民社会的な価 値普遍的,開放的市民意識である「個我」が析出されてくるものとして構成されている。 この
「個我」意識の析出はコミュニティ意識の前段階に位置づけられ, 問題はこれが「住民の生活構 造に内的に意味づけられた価値として認識され」新しい地域連帯の創出にかかわる主体的な地域 社会意識へと充実されていく方途を探るにある。この湯合,コミュニティ形成の価値側面である 主体化と普遍化は,単なる与件としてではなく,住民運動過程において獲得されていくものとし て仮定されているところに特徴がある印。コミュニティの基礎に市民的連帯性を据えてモデルを 構成した中村八朗は,それの経験的適用の結果,最も望まれているコミュニティ・クイブ,最も 望まれざるマス・クイブ,その中間に置かれる共同体クイプ,個我クイプという想定が必ずしも デークによって裏づけられなかったところから,そのモデルの準拠枠としての有効性に擬問を抱 いたoそこで,生活環境破攘行為に対する反対運動への参加度を具体的指顧とする〔抵抗性〕を 導入して, 4つの顛型をそれぞれ抵抗度の強・弱に 2分し,それによって新たに 8つの顛型を設 定する。そして,これに拠ったコミュニテ4問題の経験的検討を通して抵抗性の弱I,ヽグルーブは
34) 中村/\朗「地域連帯の諸顛型とその分析」 (国民生活センクー編,前掲書,所収) 173 190頁。 35) 倉沢進「市民意識の開発と方法」公〜 頁。
36) 奥田道大「コミュニティ形成の論理と住民怠識」(磯村,鵜飼, JII野編,前掲書,所収) 173,‑.,175頁。
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庫 埓 『 社 会 学 部 紀 要 』 第 噂 第1号
いずれのクイブを問わず近隣依存度が高く,近隣以外のものに依存し得ないのが現実であること.
従ってコミュニティ提唱者は地域的連帯を重視し,その強化を求めるが「問題は地域的連帯性の 強化であるよりは,これらの層を過度な地域連帯から脱却し得るようにする」にあること,強い 抵抗性をもつグループではコミュニティ・クイブと共同体クイブが近隣の問題に,個我クイブと マス・クイブが近隣を超出する問題に志向する傾向をみせるが,抵抗性が欠ける場合には志向そ のものがほとんど欠如すること,強グループと弱グルーブの間では,クイブ如何にかかわらず政 治や行政に対する関心度において前者に高く後者に低いという一線が画せること,などのファイ ディソグズや指摘を提示し,コミュニティの要件としては連帯性,自発性より抵抗性に重要性が あることを発見すると共に, 「最近のわが国におけるコミュニティの提唱は,市民的連帯に基づ くコミュニティ・クイブ一般を求めるよりは,むしろ強・コミュニティ・クイブを求めるぺきで あり、共同体的連帯に基づく共同体一般の克服よりは,弱・共同体クイブの克服を説くべきであ ろうo強・共同体クイブの場合は弱・コミュニティ・クイプよりははるかにましである」との結 論を得ている87)。中村の分析枠組は,生活環境破壊や生活困難といった諸問題への対応・解決を めぐっての住民運動にコミットする地域住民の意識や態度のなかにコミュニティ形成の胚胎を求 める点で,それまでのコミュニティ提唱者の立場と共通点を有する。しかし「住民がいかなる価 値理念にもとづいてその運動をすすめるか,また運動への参加がどこまでその主体的な意思によ るものかによって,形成されるコミュニテ..,のあり方が大きく左右される」88)とのより明確な運 動と住民意識との対応関係を規定しようとの立湯から,類型設定の枠組に「運動要因」それ自体 をくみ入れ.コミュニティ成立にかかわる諸要因間の相互関連性をモデル内において捉えようと したところに独自性がある。この工夫によって,類型間の差異および移行と運動要因との相互規 定関係が同次元上において分析されうることになった。
これまで我々は社会学者によって提示されてきた代表的な住民意識類型論を採りあげ,類型設 定のための分析軸の意味内容,運動モデルとしての性格規定を中心に考察してきたoその結果,
それらの分析軸には近代西欧社会における市民意識を範とし.それを構成する要素を価値軸とし たコミュニテ..,の当為意識・規範意識が準拠点として設定されていること,そしてこれらの価値 側面は地域生活過程の矛盾を争点とする住民運動へのコミットの簾様により地域住民の意識や態 度に胚胎してくることが,それらの顛型論に共有されていると指摘してきた。しかし,このよう
な分析枠組に対して,コミュニティ意識にはその質・方向を内容とするコミュニティ・ノルム.
鷺•水寧を内容とするコミュニティ・モラールの 2 つの下位次元があり,両者を意識的に区別し ないで前者(歳範意識)だけによる分析では類型間の移行過編などの動態分析に適用することが 國餓であるとの立湯から,新たなるコミュニティ研究の分析枠組が鈴木広によって提唱された。
彼によれば,奥田が個我の広諏な形成から地域性の再生を展望するにあたり「時に個の論理を減 87) 中村I¥躙,前掲論文, 191214頁。
88) 古屋躊正伍「謁代日本のコミュニティーその実態と問題点」9 1句I。
コミ...ニティ形成と住民意識(中道・滝本)
殺する形で〈地域共同体〉の方向を逆行する場合があるが,それとは断絶したところで,コミュ ニティ・モデルヘと状況変革的に移行する運動過程,個我の社会化としてとらえねばならない」
という動態分析を志向しながら「現状においてはイリュージョンであるかもしれないが,その存 在の可能性を否定することこそ許せないのである」と言明せざるを得ないのは,その分析枠組が モラール分析なしの乎板なノルム分析に終始しているからであった89)0
鈴木のいうコミュニティ意識のモラール次元とは,自己利害と他者利害の整合・両立への信頼 としての相互主義一他者の利害との不整合・対立を容認して貫徹される自己中心主義の軸として あらわされ,ノルム次元は社会空間に関するパティキュラリズムとしての地域的封鎖性の意識一 社会空間に関するユニバーサリズムとしての地域的開放性の軸としてあらわされるo従って,こ の2つの軸を組みあわせれば,①地域的相互主義R地域的利己主義③開放的利己主義④開放的相 互主義の4類型が措定されることになる。このうち,コミュニティ意識の原型として性格づけら れるのは地域的相互主義であり,これが他の意識形態へ転化していく諸条件を明らかにすること,
いいかえれば各意識諸形態の検証と評価が研究の中心主題になっている。そして,この主題は各 意識諸形態が産業化・都市化の過程によって(1)成員構成における土着性と流動性, (2)生活機能要 件充足水準における豊富と貧困, (3)成員の生活構造と社会的統合における結束と溶解という 3つ の局面にひきおこされる個別の,および相乗的な変化との間にいかなる規則的連動関係を提示す るかの分析視角に基づいて追求されていくヽ0)。
以上のような,都市化・産業化の地域レベルでの社会変容過程において意識形態の移行を捉え ようとする分析図式を経験的に適用するにあたり,鈴木は周到な操作化の手続きを経るo即ち,
コミュニティ・モラールについては,それが統合• 関与,愛着・満足,関心・参加の3因子群か ら合成されていることを検証した上で,これら3因子を測定する数問の質問群に対する回答をウ ェイトづけ,それらを総和することによって,それの強弱を判定するという手続きを施し,コミ ュニティ・ノルムについては,奥田の分析軸を修正して,主体ー客体,平準ー格差,開放一閉鎖 の軸を設定し,それぞれの軸の対極を内容表現する質問群に対する回答から,モラール澗定の場 合と同様な操作化を施しているのである。ノルム次元の主体ー客体の軸は,臭田モデルにおける
「体制との構造的緊張関係の実践過程にあって, 住民自身に内在化され相互に共有される価値」
としての一体化一#濯lとのかかわりにおいて対象化された客体化の軸を, コミュニテd形成と の関連において規定しなおしたものである。また,平準一椅羞,開放一閉鎖の軸は奥田モデルに おける普遍ー特殊の軸を垂直次元と水平次元との2つに分解して設定されたo このようなノルム 分析軸の修正の背最には,奥田モデルが大都市近郊の流動性の高い地域社会を禍野に入れて用意 されたものであり,その有効性に一定の限界が認められる,またそれが住民逼動論をコミュニテ ィ形成に結びつけた構成になっているのに対して「一般のコミュニテ4形成が常に住民連動の形
39) 鈴木広纏『コミ...ニティ・モラールと社会移動の研究』アカデミア出版会, 197~民1718JCa 40) 同上, 10 18頁 18 20頁。
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