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RbLaTa 2 O 7に関する第一原理バンド計算
松嶋 茂憲・植田 泰平
*
・猪原 由香*
・小畑 賢次First-principles band calculation of RbLaTa
2O
7crystal
Shigenori MATSUSHIMA, Taihei UEDA * , Yuka Inohara * , and Kenji OBATA
Abstract
The electronic structure of RbLaTa
2O
7is calcu lated usin g the gen eralized grad ient app roximation (GGA), th e modified Becke-Johnson exchange potential (MBJ), and the PBE0 method. The valence band and the bottom of the conduction band of RbLaTa
2O
7mainly result from the interaction between Ta 5d and O 2p states. In addition, Rb 4p and La 4f states appear below the valence ban d and in the conduction band, respectively. The experimental band gap of RbLaTa
2O
7is better reproduced by the MBJ method in comparison with the GGA and PBE0 methods.
Key words: RbLaTa
2O
7, Ab initio calculation, Energy band, Density of states
1.
緒 言層状ペロブスカイト型構造を持つ
RbLnTa
2O
(Ln = La, 7Pr, Nd, Sm)は、Ta- O
結合の原子軌道の重なりが大きい た め 、 酸 化 チ タ ン よ り も 大 き な バ ン ド ギ ャ ッ プ を 持 つことが知られている [1]。この特徴を活かして、犠牲 試 薬 を 必 要 と し な い 水 の 光 分 解 触 媒 と し て 注 目 さ れ て き た 。 光 触 媒 の 物 性 は 固 体 電 子 構 造 と 密 接 に 関 わ っ て い る た め 、 そ の 明 確 化 が 第 一 に 不 可 欠 で あ る 。 特 に 、 価 電 子 帯 と 伝 導 帯 が ど の よ う な 原 子 軌 道 の 組 み 合 わ せ から構成され、その間のエネルギーギャップ(いわゆる バンドギャップ)が幾らかであるのかについて情報を得 ることは非常に重要である。
RbLnTa
2O
7(Ln = La, Pr, Nd, Sm)に関する第一原理バ ン ド 計 算 は 、 一 般 化 密 度 勾 配 法 (generalized gradient approximation, GGA)の枠内で、 Machida
らによって実施 されている [2]。しかしながら、GGA法では絶縁性固体 の バ ン ド ギ ャ ッ プ が 低 く 見 積 も ら れ て し ま う 。 そ の 原 因 の 一 つ は 、 第 一 原 理 バ ン ド 計 算 で 使 用 さ れ るKohn- Sham
方程式の交換・相関ポテンシャルに 電子の自己相 互作用が 含まれるためである[3, 4]。Tran とBlaha
は、Becke-Johnson
交換ポテンシャル を改良し、sp 電子系絶縁 体 や 半 導 体 の 正 確 な バ ン ド ギ ャ ッ プ を 見 積 る こ と に 成 功 し た (
modified Becke
-Johnson exchange potential, MBJ
法と呼称する)[5]。MBJ法は、GGA法と同程度の 計 算 負 荷 で あ る に も 関 わ ら ず 、 正 確 な バ ン ド ギ ャ ッ プ の見積りができる ことが特徴である。Adamo とBarone
は、Perdew-Burke-Ernzerhof
によって開発された交換相関汎関数(PBEと称す)を拡張し、交換汎関数に一定
の割合で
Hartree-Fock
(HF)交換積分を混合した(PBE0法と称す)[6, 7]。HF法では、 交換ポテンシャルにおけ る電子の自己相互作用が存在しないため、
PBE
交換相関 汎関数とHF
交換積分を混合することで、 バンドギャッ プの改善が期待できる。但し、HF法では2
電子積分が 存在するため、計算コストがGGA
法やMBJ
法と比較し て桁違いに大きくなるため、大規模な系への適用は難し いことが知られている 。本研究では、RbLaTa2
O
7を計算対象として取り上げ、GGA
法,MBJ 法およびPBE0
法による第一原理バンド 計算を実施し、理論的なバンドギャップや価電子帯 と伝 導 帯の特 性を 明らか にする こと を目的 とす る。 さ らに 、MBJ
法では、スピン-軌道相互作用を考慮し、バンドギ ャ ッ プ や 価 電 子 帯 と 伝 導 帯 の 構 造 に 与 え る 影 響 を 調 べ た。2.
計 算 方 法RbLaTa
2O
7は空間群P4/mmm
に帰属され、各原子が占有する
Wyckoff
位置は、それぞれRb
は1d,La
は1c,
Ta
は2g,O1
は1a,O2
は4i,O3
は2g
である(ICSD-81870)[8]。この値を出発データとして、第一原理分子
動力学法プログラム(CASTEP)を用いて空間群P4/mmm
を 維 持 し た 状 態 で 、 格 子 定 数 と 原 子 座 標 を 最 適 化 し た[9]。CASTEP
計 算 で は 、 ウ ル ト ラ ソ フ ト 型 擬 ポ テ ン シ ャ ルと してOTFG80
を 使 用し 、カ ットオ フエ ネル ギー は630 eV
とした [10]。k点メッシュはMonkhorst–Pack
法で
7x7x2
とし、10 点のk
点をサンプリングした[11]。
第一原理エネルギーバンド計算は、バンド計算法の中
*専攻 科生産 デザイ ン工学 専攻
30
北九州工業高等専門学校研究報告第52
号(2019年1
月)Fig. 1 RbLaTa
2O
7の結晶構造で 最 も 精 度 の 高 い
Full-potential Linearized Augmented Plane Wave plus local orbital(FLAPW+lo)法により実施
した [12]。FLAPW法では、一電子結晶ポテンシャルをMuffin Tin( MT)球を中心とした球形領域と格子間領域
に分割して計算を 実施する 。MT球内の基底関数には原 子状波動関数,格子間領域では平面波を用いた。MT半 径(
R
MT)はRb, La, Ta, O1~O3
に関して 、それぞれ2.50, 2.50, 1.82, 1.57 a.u.
と し た 。 平 面 波 の カ ッ ト オ フ はR
MT*K
max= 7.0
とした。状態密度に対する計算では、第 一ブリルアン・ゾーン(Brillouin zone, BZ)内で 56
のk
点を選択した。3.
結 果 及 び考 察実験で得られたRbLaTa2
O
7の格子定数 は、a = 3.882,c
= 11.1053 Å
である。構造 最適化によって、a = 3.901, c = 11.2759 Åと わ ず か に 増 加 し た 。 実 験 値 と 理 論 値 の 差 は 1.6%未満で、両者の 一致は非常によいことがわか った。
Fig. 2には、 GGA計算から得られたRbLaTa
2O
7の全状態密度(total density of states, TDOS)と原子ごとの状態密 度(
partial density of states, PDOS
)を示している。-8.92
~-8.48 eVのエネルギー領域は
Rb 4p状態,-5.52~0 eV
はTa 5d状態とO 2p状態間の結合 的相互作 用に伴う 価電 子帯に主に帰属される。2.43 eV以上は伝導帯に帰属され
Fig. 2 GGA
計 算 か らのRbLaTa
2O
7の状態密度Fig. 3 MBJ
計算か らのRbLaTa
2O
7の状態密度D O S / s ta te s eV
-1a to m
- 1Energy / eV
D O S / s ta te s eV
-1a to m
- 1Energy / eV
北九州工業高等専門学校研究報告第
52
号(2019年1
月)31
るが 、伝導帯 底付近は
Ta 5d状態 と O 2p状 態間の反 結合
的相互作用で形成され ている。4.20 eV付近に最大値を持
つ
La 4f
状態が観察される。バンドギャップは2.43 eV
と見積もられるが、この値は実験値よりも小さい。これは、
前 述 し た よ う に
GGA法 で は 電 子 の 自 己 相 互 作 用 を 回 避
できないことに由来する。Fig. 3には、MBJ法から得られたRbLaTa
2O
7のTDOSと原子ごとのPDOSを示 している。
GGA計算と比較 して、
価電子帯幅が
0.18 eV
狭くなっているものの、状態密度の 形状には目立った変化は見られなかった。しかしながら、MBJ
計算から得られるバンドギャップは3.73 eV
であり、実 験値3.9 eVと ほ ぼ一 致するこ とが わかっ た
[1]。 この
ようなバンドギャップの理論値の改善は、光学物性の予 測において重要である。また、エネルギーギャップの大きさは、スピン-軌道 相 互 作 用 を 加 味 す る こ と に よ っ て 変 化 す る 可 能 性 が あ
る。
Fig. 4
には、二次摂動法によりスピン-軌道相互作用を 取 り 入 れ た
MBJ計 算 で 得 ら れ た 状 態 密 度 図 を 示 し て
い る。ス ピン -軌道 相互作 用の 付加す るこ とによ って 、Rb 4p
状態およびLa 4f
状態を示す状態密度ピークがより複 雑に分 裂し ている ことが わか る 。バ ンド ギャッ プは 、 スピン-軌道相互作用の考慮することで
0.2 eV
減少する のみであった 。Fig. 4
スピ ン-軌 道相互 作用を 考慮し たMBJ計算 か ら得ら れたRbLaTa2O
7の 状 態密 度Fig. 5 PBE0計算 からのRbLaTa
2O
7の状態密度Fig. 5には、PBE0法から得られたRbLaTa
2O
7のTDOSと原子ごとの
PDOS
を示 している。GGA
法と比較し て、価 電子帯の形状は類似しているものの、その幅が0.36 eV増 加した。また、バンドギャップは5.11 eVとなり、実験値 を上回ることがわかった。これは、HF
法には相関効果が 含まれていないためと考えられる。4.
結 言本研究では、 構造最適化されたRbLaTa2
O
7結晶に関す る第一原理バンド計算を実施し、以下の知見を得た。1) RbLaTa
2O
7の格子定数および原子座標は、構造最適化前後においてよく一致した。
2
)RbLaTa
2O
7の価電子帯および伝導帯の底は、Ta 5d
状態とO 2p状態間の相互作用で構成され、伝導帯 にはLa 4f状態が強く局在化した。3
)GGA
法,MBJ
法,PBE0
法の中で、RbLaTa
2O
7の実 験的な光学バンドギャップ はMBJ法によって最も よく再現された。[References]
[1] M. Machida, J. Yabunaka, and T. Kijima, Chem.
Mater., 12, 812 (2000).
Energy / eV
D O S / s ta te s eV
-1a to m
- 1D O S / s ta te s eV
-1at o m
-1Energy / eV
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北九州工業高等専門学校研究報告第52
号(2019年1
月)[2] M. Machida, K. Miyazaki, S. Matsushima, and M. Arai, J. Mater. Chem., 13, 1433 (2003).
[3]
常田 貴夫,“密度汎関数法の基礎”,講談社,2012.
[4]
押山 淳,天能精一郎,杉野 修,大野かおる,高田康民,岩波講座“計算科学”,岩波書店,