様式第8号(第18条,第36条関係)
学位論文審査結果の概要 学位論文審査結果の概要
氏 名 Wahyu Bambang Widayatno
学位論文審査委員氏名
主査 阿布 里提 副査 官 国 清 副査 糠塚 いそし 副査 宮本 量 副査 鷺坂 将伸
論 文 題 目 Reforming/upgrading of biomass-derived oil overlow-cost catalysts
(低コスト触媒によるバイオマス由来油の改質及びアップグレード)
審査結果の概要(2,000字以内)
バイオマスガス化の際に副生するタールは配管の閉塞など安定運転を妨げるトラブルをよく発生さ せるため、バイオマスガス化プロセスの実用化には、タール量の削減技術の確立が不可欠である。ま だ、バイオマスの熱分解により得られるバイオオイルには酸性成分が多く、腐食性や粘性が高いなど の問題があるため高品質化が必要である。これらの課題を解決するためには多くの研究が行われてい るが、高価な触媒使用や低エネルギー転換率などの課題がある。本研究は、タールの改質及びバイオ オイルのアップグレード用低コスト触媒の開発を行ったものである。本論文は英語で書かれており全 部で 6章から構成されている。
第 1章では、バイオマス資源のエネルギー利用について、合成ガス及びバイオオイルはエネルギー 密度が高く、可搬性に優れていることが非常に重要な特性であることから、バイオマスガス化/バイオ オイル生産プロセスにおける現状及び課題解決に向けた取組についてまとめ、本研究の目的と意義を 記している。
第 2章では、現在検討されているバイオマスガス化過程に副生するタールの改質技術及びバイオオ イルのアップグレード技術について、様々な研究アプローチを比較検討し、それに基づく新しい効率 的な技術提言を行っている。
第 3章では、異なる条件でイタドリ由来バイオマスチャー試料を作製し、このイタドリチャーを触 媒に用いて、稲わらや杉等のバイオマスのガス化及びタールの水蒸気改質について比較検討を行って いる。その結果、イタドリバイオマスに含まれる微量のアルカリ金属及びアルカリ土類金属(Na, K, Ca, Mg)は反応細孔表面に in-situ自動生成して自己触媒作用をもたらし、これによりタールを水蒸 気改質するため、稲わらや杉などから得られたバイオマスチャーを用いた場合と比べて改質効率が増 加することを明らかにしている。また、この水蒸気改質特性はバイオマスチャーの製作温度と炭化時 間に強く依存し、約 100m2/gの比表面積を持つバイオマスチャーの触媒活性はもっとも高いことが 明らかにしている。
第 4章では、四種類の市販ハイシリカゼオライト「いわゆる HSZ-385(USY型), HSZ-890(ZSM-5 型), H-960と H-990(β型))を用いてバイオオイル中の含酸素化合物成分から炭化水素化合物への選 択的触媒変換を検討した結果、ゼオライト触媒中低温領域において酸性サイトが多いほどバイオオイ ル中の酸素除去効果もより多く寄与するため、β型の HSZ-960及び HSZ-980ゼオライトは炭化水素
への選択性的に転換する効率が高く、特に HSZ-980ゼオライトは芳香族炭化水素(PAH)への選択 性的に転換する効率が高いことを示している。また、異なる温度においてβ型 HSZ-960ゼオライト の安定性を評価した結果、600℃においてゼオライト表面にコークのガス化反応が促進されたため炭 素析出しにくく炭化水素の収率及び触媒の安定性も高くなっている。
第 5章では、バイオオイル中の含酸素化合物低減および高品質のバイオオイルの収率向上のために、
異なる Cu担持量で修飾されたβ型 HSZ-960ゼオライトと非修飾触媒との比較検討を行っている。そ の結果、少量の Cuで担持されたβ型 HSZ-960ゼオライト触媒は反応細孔活性表面積が増加し選択性 が著しく向上され、特に 0.50 wt%の Cu担持の場合はバイオオイル中の含酸素化合物のほとんどが炭 化水素系化合物へ転換する上、触媒を再生しないまま数回繰り返す使った場合も安定性が維持したと 説明している。また、Cu 担持量の増加によって、ゼオライト自身の酸性サイトは多量の金属カチオ ンの導入によりゼオライト酸性サイト構造及び細孔構造が変わったため触媒活性が低下したことが明 らかにしている。したがって、金属担持による触媒の相乗効果を得るために最適な担持量が存在する と結論付けられている。
第 6章は結言であり、本論文で明らかになった事項をまとめるとともに、今後の展望を述べている。
以上を要するに、本論文は様々触媒を用い、これまでにほとんど報告されていない地域特有のバ イオマス種の熱分解およびガス化実験を行うことで、バイオマスタールの改質及びバイオオイルのア ップグレードについて検討したものであり、ここで得られた知見は、現在のバイオオイル製造プロセ スの簡略化、バイオオイルの高品質化及び製造コストの削減に大きく寄与するものである。
よって本論文は博士(工学) の学位論文として合格と認められる。
学位論文の基礎となる参考論文 学位論文の基礎となる参考論文
(1) 題 名 Steam reforming of tar derived from Fallopia Japonica stem overits own chars prepared at different conditions(イタドリチャーを用いたタ
ールの水蒸気改質)
著 者 W.B. Widayatno, G. Guan, J. Rizkiana, X. Hao, Z. Wang,C. Samart, A. Abudula
公表の方法 Fuel, 132巻, 204-210頁に掲載 公表の年月 2014年 4月
(2) 題 名 Selective catalytic conversion of bio-oil over high-silica zeolites(ハイ シリカゼオライトを用いたバイオオイルの選択的触媒変換)
著 者 W.B Widayatno, G. Guan, J. Rizkiana, X. Du, X. Hao, Z. Zhang, A. Abudula
公表の方法 Bioresource Technology, 179巻,518-523頁に掲載 公表の年月 2014年 12月
(3) 題 名 Upgrading of bio-oilfrom biomass pyrolysis over Cu-modified β-zeolite catalyst with high selectivity and stability(高選択性と安定性を有する
Cu担持β型ゼオライト触媒によるバイオマス由来油のアップグレード) 著 者 W.B. Widayatno, G. Guan, J. Rizkiana, J. Yang, X. Hao, A. Tsutsumi,
A. Abudula
公表の方法 Applied Catalysis B: Environmental, 186巻,166-172頁に掲載 公表の年月 2016年 6月