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高等学校英語教員の資質向上のための研修制度の在り方に関する研究 [ PDF

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1.論文の構成 序章 研究の目的と方法 第 1 節 問題の背景と研究目的 第2節 研究対象と研究方法 第3節 先行研究の検討と知見 第 1 章 高等学校英語教育の目標 第1節 学習指導要領の目標 第 1 項 学習指導要領の変遷 第 2 項 現行の学習指導要領の目標 第 3 項 求められる英語力の数値目標 第 4 項 生徒と高等学校英語教員の英語力の現状・ 課題 第 2 節 高等学校英語教員に求められる資質能力 第1項 教職としての資質能力 第 2 項 英語教員としての資質能力 第 2 章 高等学校英語教員の養成課程・採用の制度的課 題 第 1 節 教員養成課程の制度的課題と解決策 第 1 項 教員養成課程の制度的課題 第 2 項 教員養成課程の改善策 第 2 節 英語教育改革・教職課程・採用の乖離 第3章 高等英語教員研修の現状と課題 第 1 節 教員研修の法的根拠 第 2 節 法定研修の内容と問題点 第 3 節 英語教員集中研修 第 4 章 外部専門機関と連携した英語指導力向上事業 第 1 節 英語教育推進リーダー中央研修の概要 第2節 推進リーダーによる研修の概要 ~山口県英語教員指導力向上研修を例に~ 第 5 章 高等学校英語担当教員に対する研修の実施状況 第 1 節 研修の阻害要因 第 1 項 教員を取り巻く状況 第 2 項 高等学校英語教員の抱える課題 第 2 節 研修の促進要因 第 1 項 中・高等学校英語教員が受けたい研修 第2項 高等学校英語教員が自己研鑽として行っ ている活動 第 3 項 指導に影響与える要素 終章 本研究の成果と課題 第 1 節 本研究の成果と今後の課題 2.論文の梗概 序章 研究の目的と方法 1989 年改訂の学習指導要領以降、高等学校の英語教育 では一貫して「コミュニケーション能力の育成」が目標 に掲げられるようになった。2003 年の「英語が使える日 本人の育成のための行動計画」で、国民全体に求められ る英語力に関する数値目標が初めて示され、現職英語教 員全員に対して概ね 10 日間の集中講座の実施、平成 20 年には高等学校学習指導要領が改訂され、英語を用いて 授業を行うことを基本とするとされた。しかし、2007 年 度の調査では公立高等学校 3 年生で英検準 2 級程度以上 の英語力を持つ生徒は全体の約 30%、2013 年度の調査で は 31%と、6 年間でほぼ横ばいであった。 金谷(2005)は、英語教育における「英語教師」の影 響の大きさを指摘し、英語教師の役割、能力・資質、教 員養成・採用・研修等の事例研究の必要性を唱えている。 また、学習指導要領改訂の効果が教師のせいで出ていな いと指摘。言語活動についても、教師の英語によるコミ ュニケーション能力が低く、表面的な擬似コミュニケー ションで終わっている授業が少なくなかった、と分析し ている。 これらの状況を受け、2013 年 5 月「教育再生実行会議 第三次提言」及び「第二期教育振興基本計画」、同 6 月「日 本再興戦略(改訂 2004 年)」、同 12 月「グローバル化に 対応した英語教育改革実施計画」、2014 年 2 月~9 月「英 語教育の在り方に関する有識者会議」、同 9 月『今後の英 語教育の改善・充実方策について~グローバル化に対応 した英語教育改革 5 つの提言~』、2015 年 8 月中教審教 育課程企画特別会「論点整理」など、数多くの英語教育 改革に関する提言や施策が打ち出されている。 本研究では、高等学校英語教員の資質能力向上に関す る制度的課題と、それらを解決するために示された提言 や英語教育強化事業を、資料収集を通じて概観した上で、

高等学校英語教員の資質向上のための研修制度の在り方に関する研究

キーワード:高等学校英語教員,資質能力向上,教員養成課程,採用,現職教員研修 教育システム専攻 油利 圭子

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高等学校英語教員の養成・採用・研修の問題点を明らか にし、改善・充実の方向性を検討する。 また、英語教育の実態に関して、「英語教育実施状況 調査(2016)」等の大規模なアンケート調査による豊富な 量的データと個別の教育委員会の事例研究や担当者への 聞き取りを通じ、研修制度に関する問題の所在を詳細に 明らかにし、今後の教員研修制度の在り方を検討する。 第1章 高等学校英語教育の目標 本章では、高等学校英語教育の目標と生徒及び高等学 校英語教員に求められる資質能力を概観し、整理した。 まず、学習指導要領の目標は、昭和 44 年改訂以降徐々 に文法シラバスからの脱却が図られ、平成元年度改訂で 「コミュニケーション能力」という文言が初めて記載さ れた。現行の学習指導要領でも「コミュニケーション能 力を養う」ことを目標としている。 次に、「第二期教育振興基本計画」(2013 年)において、 今後 5 年間の英語力成果目標として、生徒は高等学校卒 業段階で英検準 2 級~2 級程度の割合が 50%、高等学校 英語教員は英検準1級、TOEFL550 点、TOEIC730 点程度の 割合が 75%と設定された。併せて、高等学校卒業時に、 生涯にわたり「聞く」「話す」「読む」「書く」の 4 技能を 積極的に使えるようになる英語力を身に付けることを目 指している。 また、英語教員に求められる資質能力については、中 央教育審議会等の各提言によると「いつの時代にも求め られる資質能力」(不易)と「これからの時代の教員に求 められる資質能力」(易)に二分され、英語教員としての 資質能力については、久村・酒井(2010)は「英語教員 特有の資質能力は、英語(運用)力と英語教授力で構成 される」としている。(表1参照) 第2章 高等学校英語教員の養成課程・採用の制度的課 題 本章では、高等学校英語教員の養成課程・採用の制度 的課題を概観し、整理した。 まず、養成課程の課題について、中央教育審議会「今 後の教員養成・免許制度の在り方について(答申)」(2006 年)では、「大学における教員養成」と「開放制の教員養 成」の原則について、教員免許制度についても、教員免 許状が保証する資質能力と現在の学校教育や社会が教員 に求める資質能力との間に乖離が生じてきていると指摘 され、2008 年度より教職員大学院制度が発足、2007 年 6 月の教育職員免許法改正で教員免許更新制度が導入、 2009 年から実施されている。 しかし、「教職課程の質的水準の向上」については、 学部卒業段階で、教員として必要な資質能力を確実に身 に付けさせ、学校現場に送り出すことが、本来、教職課 程に期待される役割であり、そのことが国民や社会の要 請に速やかに応えることにつながるものと考える、とし ながらも達成できていない。 中・高等学校教員免許状(外国語(英語))取得の過 程認定を受けている大学・学部 135 機関を対象に実施さ れた文部科学省委託事業「英語教員の英語力・指導力強 化のための調査研究事業 平成 27 年度報告書」(東京学 芸大学)の分析から、現在は扱いが少なく、必要度が相 対的に低いと思われている「教科に関する科目」の内容 について、「小中高連携」「4技能の指導(読むこと・書 くこと)」「外国語活動における学習評価」の 3 点が挙げ られており、現在行われている英語教育改革の目標であ る「小中高連携」と「4技能の指導」の必要性が教育課 程には反映されておらず、現在行われている英語教育改 革と認識の差があることが分かった。 表1.英語教員に求められる資質能力 出典)「英語科教育の基礎と実践」、「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」(2015 年)(抄)、「これからの学校を担う教員の資質能力の向上について」(2015 年)(抄)をもとに筆者作成

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次に、採用については、同報告書の都道府県・市区町 村教育委員会 832 機関に対して行われた調査によると、 採用の時点で、高等学校(英語)の教員志望者には高度 な英語力を持ち、英語で授業を行える力を持つ教員が求 められている。 しかし、英語力について、養成段階では、教職課程に おいて習得すべき「教科に関する科目」20 単位、または、 「教科又は教職に関する科目」16 単位(高校一種)にお いて、「英語学」「英米文学」「英語コミュニケーション」 「異文化理解」の「英語コミュニケーション」の授業で 取り扱いがあるのみで、英語力の向上は個人任せになっ ている。また、採用後の初任者研修での英語力向上に関 する内容の取り扱いが少ないという課題と併せて鑑みる と、外部検定試験での一定の成績や留学経験を教育実習 受け入れや免許状取得、教員採用試験募集の要件に加え ることが高等学校英語教員の英語力の保証に有効である と考える。 一方、外部検定試験では 4 技能を総合的に評価するこ とが難しく、さらに、実践的コミュニケーション能力の 育成に必要な英語力を保証するために、現在教員採用試 験において多くの県市が 1 次・2次試験で実施している 実技試験(リスニング、スピーチ・プレゼンテーション、 ディベート・ディスカッション、英語面接・インタビュ ー、その他(スピーキング、リーディング、資料の朗読、 ALT とティーム・ティーチング、短い英文を読み、その 内容をもとに簡単な会話を行う、英作文、模擬授業)等) も必修とすることで、総合的に高等学校英語教員の英語 力を評価・保証することができると考える。 第3章 高等英語教員研修の現状と課題 1988 年教育公務員特例法改正で初任者研修、2002 年 教育公務員特例法改正で 10 年経験者研修が制度化され、 現行の初任者研修と 10 年経験者研修の研修実施内容に ついては、「英語教員の英語力・指導力強化のための調査 研究事業 平成 27 年度報告書」の教育委員会調査より、 「授業力向上」に多くの時間が割かれており、ここから も英語力向上が教員個人任せとなっている傾向が明らか になった。 平成 15 年度から平成 19 年度までの 5 年間に、全ての 英語教員が、実践的コミュニケーション能力育成のため の指導力向上を図る研修を受けるよう計画され、概ね 10 日間の研修を現職の約 6 万人に実施したが、成果が出て いるとは言いがたく、江利川(2009)はこの研修は都道 府県ごとに差があり、その研修内容が授業実践に即効性 があるものではなかったことを指摘している。 第4章 外部専門機関と連携した英語指導力向上事業 2014 年から「外部専門機関と連携した英語指導力向上 事業」が始まり、英語によるコミュニケーション能力を 有し、グローバル化に対応した人材の育成を強化するた め、英語教育に携わる者の指導力の向上を図ることを主 目的とした概ね 4 年間の英語教員集中研修が実施されて いる。 高等学校では、各県で選抜された中核英語教員計 150 名が 10 日 48 時間の中央研修終了後、必要な要件を満た した研修参加者を「英語教育推進リーダー」として文部 科学省が認定。中央研修受講者と各教育委員会が連携し た地域での復伝研修を通して、年間約 1 万 5 千人規模の 教員がこの事業による計 14 時間の研修を受けることを 目指している。 2014 年度の中央研修参加者の約 9 割が「授業のほとん ど又は半分以上を英語で行っている(行おうと思ってい る)」と意欲を示したが、2015 年度時点での英語による 授業の実施率は 50%未満であり、「中高の英語指導に関 する実態調査 2015」(ベネッセ教育総合研究所)による と、53%の教員が研修成果を日々の教育活動に生かせてい ないと回答している。 第5章 高等学校英語教員に対する研修の実施状況 高等学校英語教員に対する国内研修は 2013 年の 56.7%から 2015 年の 77.6%へ大幅に増加の一方、研修 成果の波及効果は教員個人任せで、教員のモチベーショ ンの維持・向上や授業実践の継続的な改善のための制度 作りが課題であると言える。 阻害要因について、2013 年の「OECD 国際教員指導環 境調査」によると、参加への障壁としては業務スケジュ ールの問題や業務多忙、費用や支援不足を挙げる教員が 特に多い。教員定数の配置改善など制度面での改善も同 時に検討することが必要であると考えられる。 英語教員の英語力が個人任せになっている状況の実態 について、英語教育関連の学会や研究会への参加、英語 関連の試験を受ける高等学校英語教員の割合は少ないが、 自己研鑽として「映画」「テレビ」「Web 視聴」を用いて 英語を学習している割合が高い。また、指導に影響を与 えている促進要因としては、「研修」「講演会・学会・研 究会」などの研修機会、「大学で受けた授業」「教育実習 で受けた指導」等といった「養成課程」の割合は低い一

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方、「研究授業・公開授業」や「生徒の反応・成長」の割 合が高かった。この分析より、英語教育推進リーダーに よる研究授業・公開授業の実施などが有効であるととも に、CEFR や CAN-DO リストの各段階に対応した各科目の モデル授業のオンライン研修なども、学校の実態に合わ せた授業改善に大きな効果があることが見込まれる。 終章 本研究の成果と課題 本研究を通じ、2002 年に開催された「英語教育改革に 関する懇談会」での「中学・高校の生徒の英語力の飛躍 的な向上のためには、英語の教員の英語力を飛躍的に向 上させることが一番早い」との指摘に立脚し、生徒の英 語力の向上には養成・採用・研修拡充を通して英語教員 の英語力・指導力を向上させることが有効であるという 基本方針が多岐にわたる英語教育改革の根底にあるとい うことを概観することができた。 しかし、平成 27 年度のデータを分析すると、数値目標 とされている高等学校英語教員の英検準 1 級以上取得者 の割合と、生徒の英検準 2 級以上の割合には相関関係が なく(表 2 参照)、また、研修参加者の割合が 2013 年の 56.7%から 2015 年の 77.6%へと大幅に増加している一 方で、生徒・高等学校英語教員の英語力及び英語での授 業実施状況が横ばいであることから、「英語教員の英語力 を向上することで生徒の英語力を高める」という方策の 大前提自体の妥当性を再検討する必要があることが明ら かになった。今後、居住地域の属性や ALT の割合と生徒 の英語力の相関関係など生徒の英語力向上に寄与する因 子についての調査研究・分析を行うことが課題である。 表2.平成 27 年度各都道府県 「高等学校英語教員」と「生徒」の英語力の相関関係 出典)「平成 27 年度英語教育実施状況調査」(文部科学 省)より筆者作成 なお、平成 27 年度の調査で英検準一級以上を持つ高 等学校英語教員の割合が高水準であった福井県・香川県 によると、高水準の要因は、各県の取り組みや各個人の 自己研鑽に加え、外部検定試験を悉皆研修の一環とする ことで、受験者数が増加し、その結果、英検準 1 級以上 を取得している英語教員の割合が大きくなっていること が明らかとなった。 多くの企業がグローバル化を背景に、採用・昇格・昇 級に英語検定試験の要件化を視野に入れている潮流に倣 い、必要な要件を満たした研修参加者を「英語教育推進 リーダー」として文部科学省が認定している制度を拡大 し、「英語教師に求められる力」を基準化・認定化するこ とで、教員の質が確保・保障されると考える。 2004 年から、公益法人日本薬剤師研修センターが、薬 剤師が時代に即応した医療需要と社会的要請に応え、薬 剤師として必要な責務を全うするために、生涯にわたっ て研修等による自己研鑽に努める必要があるとし、その 研修実績の保証の1つとして認定証を発行している。全 国のあらゆる職域の薬剤師を対象に、研修成果を記録し、 それを客観的に認定するために「研修認定薬剤師制度」 を発足させた。 「成長する教員」の観点からも、時代の変化に対応し た教育活動を行い、教員が自己研鑽に努め、それらを客 観的に認定するような研修の制度化、研修を適切に評価 する制度や資格の基準化について検討する必要がある。 高等学校英語教員の「質の保証」のため、教職課程では 外部検定試験を利用した免許の基準化、経験や研修実績 の成果が客観的に評価・認定される教員免許更新時の認 定制度化など、教員養成・採用・研修・更新が有機的か つ効果的に結び付くような教職の資格認定制度枠組みの 整備についても今後検討する必要がある。 3.主要引用・参考文献 ・金谷憲編著(1995)、英語教師論、河源社・桐原書店 ・JACET 教育問題研究会(2015)、新しい時代の英語科教 育の基礎と実践、三修社 ・市川昭午(2015)、教職研修の理論と構造、教育開発研 究所 ・ベネッセ教育研究所(2015)、「中高の英語指導に関する 実態調査 2015」 ・東京学芸大学(2016)、「英語教員の英語力・指導力強 化のための調査研究事業平成 27 年度報告書」

参照

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