コンサートホールにおける後期音の方向分布と音に包まれた感じの関係 [ PDF
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(2) Fig.2 Signal conguration of the sound elds used in experiment (L=lateral, F=frontal, B=back and V=overhead). Fig.1 Arrangement of loudspeakers in an anechoic chamber.. Table 1 Seven soundelds in each experiment.. 下同様), 前方後期音エネルギ率 F Elate , 後方後期音レ ベル BElate 並びに 上方後期音エネルギ率 V Elate を (1) 式のように定義した。これらは全後期音エネルギに対 する各方向成分の割合である。. ÁZ ! p2!L (t)dt p2 (t)dt 80 Á Z80! Z ! 2 F Elate = p!F (t)dt p2 (t)dt 80 80 ÁZ ! Z ! p2!B (t)dt p2 (t)dt BElate = 80 80 ÁZ ! Z ! p2!V (t)dt p2 (t)dt V Elate = LElate =. Z. !. 80. ける実測結果 7)8) を示している。ここで、各方向別後. (1). 期音エネルギ率は合計が 1 になるように基準化したも " " " " " , V Elate , GElate =F Elate +BElate )。 のである (LElate. 実 験 で 用 い た 7 音 場 は 、既 存 ホ ー ル に お け る 実 測. 80. 値 (平均値および変化幅) を参考にしながら、各方向. (側方、後方、上方) のエネルギの割合が等しい刺激 ここで、p(t), p! (t) は、各々無指向性マイクロフォ. ン, 双指向性マイクロフォンの出力音圧である。. No.1(LElate =BElate =V Elate =0.30) に、前方以外のエ ネルギの割合を 3 段階に変化させた刺激 No.2∼7 を加 えたものである。. 実験は、C80 の値を-3dB, 0dB, +3dB の 3 段階に変. 2.3 被験者. 化させた 3 つの実験から成る (実験 1:C80 =-3dB, 実験. 2:C80 =0dB, 実験 3:C80 =+3dB)。刺激は、直接音、 6 本の初期反射音 (t = 0∼80ms, LE=0.17) 並びに 4 方向からの後期音 (t = 80∼! ms) から成り、直接音、 初期音並びに前方後期音エネルギ率 (F Elate =0.10) は. 被験者は建築環境学を専攻している 22∼26 才の学生. 8 名であり、実験 1∼3 とも同一人である。実験に先立 ち、被験者には教示文及び概念図を用いて音に包まれ た感じの説明を行うとともに、数個の刺激による練習 を行った。実験では 7 個の音場のすべての組み合わせ. 全刺激で一定である。また、全ての実験において刺激. (21 対) を刺激対とし、各人に同一刺激対を 8 回ずつ判. の呈示音圧レベル (Binaural SP L) は約 63dB、残響時. 断させた。. 間は 1.8 秒で一定である。刺激音場の構成を Fig.2 に 示す。. 3. 結果と考察 得られた回答から Thurstone Case V に基づく心理. 刺激音場は、いずれの実験においても方向別エネル ギ率を Table 1 に示すように設定した 7 個とした。. 的距離尺度を構成した。モデルの適合度の検定を行っ. 各実験音場の測定値は Fig.3 に示すとおりである。図. た結果、有意水準 1%で事実に適合していた。一致性の. 中のグレーの丸印は、参考として既存の 6 ホールにお. 検定の結果は有意水準 5%で一致していた。. 43-2.
(3) Fig.3 Distribution of directional late energy ratio used in experiment and measured in concert auditoria. 距離尺度の算出結果を Fig.4 に示す。ここで、刺激. No.2∼7 の音場は、LElate , BElate , V Elate のいずれか 1 つが等しい場合、他の 2 つのエネルギ率の大小関係が 逆になるように設定されている (Fig.3)。例えば、刺激. No.2 と刺激 No.3 は、LElate が 0.25 で等しく BElate と V Elate の大小関係が逆になっている音場である。 まず、LElate が等しく BElate と V Elate の値が逆に なっている 2 つの音場 (刺激 No.5, 7(LElate =0.10)、刺 激 No.2, 3(LElate =0.25)、刺激 No.4, 6(LElate =0.60)) を比較してみる。実験 1∼3 のいずれにおいても、両刺 激間の尺度値の差は小さく (0.68 以下) 有意な差は認め られない。このことは、後方後期音と上方後期音の LEV への影響度合いにはほとんど差がないことを示してい る。次に、BElate が等しく LElate と V Elate の値が逆 転している 2 つの音場 (刺激 No.2, 4(BElate =0.05)、刺 激 No.6, 7(BElate =0.20)、刺激 No.3, 5(BElate =0.55)) を比較してみる。BElate の値が小さい刺激 No.2, 4 お よび刺激 No.6, 7 の場合には、両刺激間に明らかな差 があるものの (1.10∼3.01)、刺激 No.3, 5 間には、いず れの実験においても有意な差は認められない。すなわ ち、後方後期音エネルギ率が大きい場合、側方後期音 と上方後期音の LEV への影響度合いに差はない。同 様に、V Elate が等しく LElate と BElate の値が逆転し ている 2 つの音場 (刺激 No.3, 6(V Elate =0.10)、刺激. No.4, 5(V Elate =0.25)、刺激 No.2, 7(V Elate =0.60)) を 比較しても、V Elate の値が 0.60 と大きい場合には差が. Fig.4 Psychological scale of LEV in three experiments.. 認められず、側方後期音と後方後期音の影響度合いに 差がないといえる。 以上のような傾向を、各方向別後期音エネルギ率の. 43-3.
(4) Table 2 The results of multiple regression analysis between perceived LEV and three directional late sound energy ratios, p<0.01 for C80 =-3dB, p<0.005 for C80 =0dB, +3dB.. LEV に対する寄与の度合いという視点から明確にす るために、LEV の尺度値を目的変数、方向別後期音 エネルギ率 LElate , BElate , V Elate を説明変数として 重回帰分析を行った。結果 (重相関係数、標準偏回帰. Fig.5 Standard regression coe!cients for three directional late energy ratios.. 係数) を Table 2 と Fig.5 に示す。重相関係数は実験. 1(C80 =-3dB) で 0.989、実験 2(C80 =0dB) で 0.990、実 験 3(C80 =+3dB) で 0.997 であり、回帰精度はいずれ. ずれの方向別後期音エネルギ率も LEV に影響を与える. も良好である。. が、全後期音レベルが小さい場合には、後方および上. Fig.5 より、いずれの実験においても、LElate の標準. 方後期音エネルギ率の LEV への寄与は非常に小さいこ. 偏回帰係数は BElate , V Elate に比べて大きく、LElate の. とがわかった。. LEV への寄与が最も大きいことがわかる。また、BElate. 以上のように、本研究によって後期音の方向特性と. 並びに V Elate の LEV への寄与は、LElate の 3∼5 割で. LEV の関係について明らかにすることができた。すな. ありほぼ同程度といえる。ただし、C80 =+3dB の場合. わち、LEV を検討する際には、後期音の到来方向のバ. には、BElate , V Elate の標準偏回帰係数は各々-0.004,. ランスを考慮する必要があることが示された。このよ. 0.200 であり、LEV への寄与は非常に小さい。. うな結果を音場評価手法の提案に結びつけるには、後. これらの結果から、全後期音レベルの大きさに関わ. 期音の方向分布の基準化や LEV の適正範囲などの検討. らず側方後期音エネルギ率の影響が最も強いこと、ま. が必要であると考える。. た後方並びに上方後期音エネルギ率については、ほぼ 同程度の LEV への影響があることが示された。特に、 後期音レベルがある程度大きい場合 (C80 =-3∼0dB) に. 参考文献 1) 森本政之, 藤森久嘉, 前川純一, “見かけの音源の幅と音に包まれ た感じの差異,” 日本音響学会誌 46, 449-457 (1990) 2) J.S.Bradley and G.A.Soulodre, “Objective measures of listener envelopment,” J.Acoust. Soc. Am. 98(5), 2590-2597 (1995). は、後方並びに上方から到来する後期音の寄与は無視 できないといえる。このことから、それらを含めた後. 3) M.Morimoto and K.Iida, “A new physical measure for psychological evaluation of a sound eld: Front/back energy ratio as a measure for envelopment,” J.Acoust. Soc. Am. 93, 2282 (1993). 期音の到来方向分布を考慮することの重要性が示唆さ れる。. 4) 羽入敏樹, 木村翔, 千葉俊, “反射音の空間バランスに着目した音に 包まれた感じの定量化方法,” 日本建築学会計画系論文集 No.520, 9-16 (1999). 4. 結論 本論文では、全後期音レベルを一定に設定して、側. 5) H.Furuya, K.Fujimoto, Y.J.Choi and N.Higa, “Arrival direction of late sound and listener envelopment,” Applied Acoustics 62(2), 125-136 (2001). 方、後方、上方の方向別エネルギ率を変化させた心理 実験を行い、コンサートホールにおける後期音の方向. 6) 比嘉規晶, 和久田晃子, 古屋浩, 藤本一寿, “後期音の到来方向が 「音に包まれた感じ」に与える影響 (その 2),” 日本建築学会大会 学術講演梗概集 (環境工学), 47-48 (2000.9). 分布と音に包まれた感じの関係について検討した。そ の結果、側方後期音エネルギ率は全後期音レベルの値 に関わらず LEV に大きく寄与すること、後方および上 方後期音エネルギ率の LEV への寄与は同程度であり、 側方成分の寄与よりも小さいことがわかった。また、全 後期音レベルが大きい場合には、側方、後方、上方い. 43-4. 7) 和久田晃子, 古屋浩, 藤本一壽, 穴井謙, “オーディトリウムにお ける後期音の到来方向分布,” 都市・建築学研究 (九州大学大学 院人間環境学研究院紀要) 1, 29-37 (2001.7) 8) 和久田晃子, 穴井謙, 藤本一寿, 古屋浩, “オーディトリウムにお ける後期音の方向分布特性,” 日本音響学会講演論文集 2001 年 秋, 1001-1002 (2001.10).
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英国のギルドホール音楽学校を卒業。1972
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