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山田秀三「アイヌ語地名を歩く」の教材化(2) ―指導資料作成の試み―

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Academic year: 2021

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(1)Title. 山田秀三「アイヌ語地名を歩く」の教材化(2) ―指導資料作成の試み ―. Author(s). 谷口, 守. Citation. 国語論集, 17: 150-158. Issue Date. 2020-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11231. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 3. 8. 6. 4. 5. 7. 山田秀三「アイヌ語地名を歩く」の教材化(2). 口. 守. ( 79 ). 谷. −150−. ―指導資料作成の試み―. 1. とだろう。ヤウンモシリ /北海 道の地名の多くが、そこに先住した はじめに 過 日 、稿 者 が作 成 を試 みた教 材「 アイヌ語 地 名 を歩 く」 は、山 アイヌ民 族の独 自の言 語 、アイヌ語に由 来す ることの学習を通 して、 田 秀 三 著の 「甲乙丙」の三部構成である。 若い学習者に多文化共生社会を考えてもらいたい。 「 甲 」は、山 田 秀 三 著『 北 海 道 の地 名 』という 、北 海 道 の地 名 の語 本 稿 は、同 教 材 の指導 資 料 (稿 者 ・以 下 資 料 または指 導 書 )を作 源 をまとめた専 門 書 の序 文 で、評 論 か随 筆 に分 類 さ れる文 章 であ 成 しよう とす るものである。日 頃 、授 業 のために活 用 してばかりの る。あらす じを短 く書 くと、筆 者 が少 年 期 にアイヌ語 地 名 に魅 力 指 導 書 だが、はじめて作 る側 の立 場 になって、そのご苦 労 を垣 間 見 を持ち、自身へと至る北海道地名研究史を概観し、その地名の多く る思 いであった。また、作 るにあたって評論文「「である」ことと 「す る に地 形 の意 味 があり、歴 史 的 地 名 でもあるアイヌ語 地 名 を大 切 に こと」」(丸山 真男 著)(稿者 ・以 下「である~」)の指導 書を参考にさ してもらいたいという文章である。 「乙丙」は 『北海道新聞』のコラムで、 せていただいた。 「である~」は、長きにわたって高等学校教科書の現 「ソー」(滝) に関す る随 筆二 作である。 「乙」は、筆者が古 い地図で 代 文 定 番 教 材 に位 置 す る評 論 であり、入 手 できた平 成 二 十 (二 ○ 見た 「オソウシ」という地名から、札幌市内の 「ソー」を見つけ出す話 ○八)年の 「桐原書店」の資料 に、次のようにある。 本教 材が最 初に発表されてから、約 五十 年の歳 月が流 れて である。また 「丙」は、同じ 「オソウシ」という地名 から北海 道古 宇郡 いる。とあり、現在令和二(二○二○)年からでは、約六十年の の 「ソー」(滝)を見つけ出す話である。 歳月が流れていることになるだろう。 多 くの高 校 生 にとって日 頃 何 気 なく触 れる地 名 に語 源 があるこ 稿者の勤 務 校では、 「である~」の資料を 「第 一学習社」(以下「第 と、ましてや北海 道にアイヌ語に関係 したり由 来したりする地名 (稿者 注・以 下「アイヌ語地名」)が散 在す ることは、身近 にあって未 一」) 、 「大修館書店」(以 下「大修」) 、 「桐原」、 「数 研出 版」(以下 知なるものの発見に相違ない。学習者は、その知られざる 「アイヌ語 「数研」) の四社から手に入れることができた。これらは作成年や、 背 景 となる学 習 指 導 要 領も異 なるが、それだけ長 い時 間 の改 訂 を 地名 」の語義 解読 概 史を 「甲」で読 み、人 名や 抽象 的内容などを難 経て、より多くの国語教育 関係者の目に適う、指導 書の模範になっ 解 に思 う かもしれない。しかし 「乙丙 」で、 「アイヌ語 地名 」を自分 の ていると考えられる。四社の資料を並置した比較を以下で示す。 足で歩いて探 し、独自の方法でその由来を考えるという文章を読む ことは、まるで宝探しの旅に同行しているようでおもしろく感じるこ 2.

(3) 三宅義 藏 A5版 277~328頁( 頁) 平成 (2018)年. 少 少 1. 学習指導の展開例〈C〉 3半 (6時間) 観点別評価規準例 1 1教材の研究 教材としての 「である~」〈K〉 1 要旨〈F〉 半 (二○○字 一○○字). 評論(三) 単元の解説〈A〉 単元の目標(三つ) 教材活用のヒント. 52. 半. 30. 学習指導のねらい 〈B〉. 頁数. 36. 学習指導計画表〈C〉 (5時間) 1出典解説 筆者略歴〈E〉 出典〈D〉 原文の加除・訂正〈D〉. 評論Ⅳ 単元のねらい 〈A〉 単元の構成. 20. 2本文研究. 1 1 5. 1. 半 半. 頁数. ねらい 〈B〉 本文のキーワード 授業の前に 〈J〉. 半 少 半. 4 半 少 1 1. 2. 評論(五) (単元に関する記載なし). 46. 授業の展開例〈C〉 (7~ 時間) 作者解説〈E〉 大学入試出題歴 本文との異同〈D〉 出典〈D〉 もうひとつの授業 生徒活 動型 授 業. 頁数. 「「である」ことと 「する」こと」指導資料比較 第 一 学 習 社『 高 等 学 校 現 代 文 大修館『精選現代文B 新訂版 桐原書店『探求 現代文 改訂 数研出版『現代文【3】 教授資料 B 指導と研究 第6分冊』 指導資料3』 版 指導資料 第二分冊 Ⅰ 3第二章 随想・評論』 部②』 執筆者記載なし 田口道昭 小山秀樹 B5版 A5版 145~180頁( 頁) 261~306頁( 頁) 平成 ( 2008)年 平成 ( 2008)年. 少. 半 少. 本江真澄 A5版 179~223頁( 頁) 発 行 年 記 載 なし(教 科 書 は平 成 (2015)年2月刊行) 頁数. 評論(五) 単元の解説〈A〉 単元のねらい 単元の主な学習目標 (五つ) 単元の構成 教材のねらい 〈B〉 少. 教材の主な指導目標(七つ) 少. 学習指導の要点 4. 1 1半 1 半. ( 80 ). 45. 教材の研究 学習指導の展開例〈C〉 ( 六 時 間) 出典〈D〉 作者解説〈E〉 大意 要旨〈F〉 (百字 二百字). −151−. 20. 10. 27.

(4) 構成〈G〉 ( 第一~八段落) (展開図)〈H〉 表現 指導のポイント (問と答)〈I〉 語句の解説〈J〉 作品解説〈K〉 参考資料(3つ)〈L〉 参考文献…7冊〈M〉 学習(解答例)〈N〉 言葉と表現(解答例) 〈N〉. 2 2半 1. 構成〈G〉 ( 第一~八段落) 構成展開図〈H〉 語句の解説〈J〉 発問例と解答例 〈I〉 板書例〈O〉 [脚問] の解説〈I〉 [学習のポイント] の解説〈N〉. 1 2. 3 3. 3. 半 3 少 1. 構成展開図〈H〉 ( 第 一 ~五 段 落 ) 要約〈F〉 200字要約〈F〉 語句の解説〈J〉 授業展開例 (発問と解説)〈I〉 板書例〈O〉 学習の手引き 〈N〉 重要語・ 慣用句〈J〉 写真説明 3発展 テーマ解説〈K〉 参考資料(6つ)〈L〉 参考図書… 冊〈M〉. 1 1 少. 1 1 少. 2 5. ( 81 ). 15. ). 他であってないもの 教材・ 学習指導のねらい 〈B〉 他でなくてあるもの 写 真 説明. 「グループ発表を中心に した生徒活動型授業」 要旨〈F〉 (二○○字 一○○字)半 構成表〈G〉 1 ( 第 一 ~十 段 落 ) 図解〈H〉 2 指導の留意点(3つ) 半 授業研究 (板書例〈O〉 脚 注 問 の解 説 ・発 問 例〈I〉 語句解説〈J〉 読解のカギ 〈K〉 3 参考資料( 4つ)〈L〉 6 参考文献〈M〉 2 (教師用・生徒用) てびきの解説〈N〉 2 (確認 学習 発展 小論アクセス) 他であってないもの 単元〈A〉 他でなくてあるもの 本文のキーワード 大学入試出題歴 もうひとつの授業. −152−. 1 8 3半 2研究資料 筆者の研究〈E〉 略歴 略年譜 代表作 出典〈D〉 解説〈K〉 参考 ブックガイド 〈M〉 他であってないもの なし 他でなくてあるもの 教材活用のヒント 観 点別 評 価 規 準 例. 18. 28. 稿者注・ 上記の 「頁数」 で、 「半」は一頁の半分、 「少」は半分にも満たない行数を指す。 〈A〉~〈O〉のアルファベットは稿者による。. 他であってないもの 板書例〈O〉 他でなくてあるもの 大意 表現. 22. 18.

(5) 単元のねらい 教材のねらい 学習指導・授業の展開例(~時間) 出典・原文との異同 作者(筆者)解説・略歴 要旨(百字・二百字) 構成(段落構成) 構成 展 開 図 発問例と解答例 語句の説明 作品解説 参考資 料 参 考文 献 学習の手引き解説 板 書例. また、抽 象 的 な文 章 を読 んで、論 の展 開 を捉 えて筆 者 の主 張 を 見つけると共に、その主 張の理 由付けとなる論拠を明らかにしたい。 上 記 のことを通 じて、現 代 の日 本 が一 つの文 化 ではなく、複 数 の 文化で構成される社会であり、多数が優 先さ れ少 数が劣勢となる ことのない共生社会でもあることを理解させたい。 単元の目標(本文). ① 抽 象 的 な文 章 と具 体 的 な文 章 の関 係 を考 えながら 読 み進 め、対応する箇所を理解する。 ②論の展開を捉え、主張と論拠の関係について理解する。 ③ 筆 者 の主 張 を現 代 社 会 の枠 に広 げて、われわれの社 会 が 「多 文 化 共 生 社 会 」であることを理 解 し、それに対 す る自 らの考 えをまとめる。. 1 単元のねらい(解説) 「1単 元 のねらい」は、 「2教材 のねらい」の内 容よりも抽 象 的 にな るように注意した。稿者が思うに、基本的に二教材以上が集まって、 何 か共通のテー マに基 づいて一単元として意 味 をなすと考える。例 えば、単元「評論(1)」では二項対立の文章を学ぶために、その対比 が明 確 な二 つの評 論 文 を設定 した、のよう な類 である。各 社 見てい くと、 「第 一」と 「大 修」は他の評論文と二教材で一単元を設定 して いる。 「桐原」は一教材で一単元を設定 しており、 「単元のねらい」は あるが、 「 教 材 のねらい」は設 定 していない。 「数 研 」は単 元 を設定 し ているものの、 「 ねらい」があるのみで、それが 「 単 元 」のものなのか、 「教材」のものなのか不明である。 以 下で 「第 一 」と 「 大 修 」の 「 単 元 の目 標 」のう ち、参 考 にしたもの. ( 82 ). 上記の四資料の掲載内容を大まかに以下のように捉えた。 A B C D E F G H I J K L M N O 以 下でこれらに倣 って、右 の内 容 を含 む教 材「 アイヌ語 地 名 を歩 く」の指 導 資 料 作 成 を試 みたい。その際、以 下 の 「本 文 」とは指 導 資 料そのものであり、 「解説」とはその補足事項である。 1 単元のねらい(本文) 本単元では、抽象的な文章と具 体的な文章という複 数の構成か らなる教材を読み、それぞれ対応す る箇所を学習者に理 解させた い。前 者 を先 に、その次 に具 体 的 な後 者 を読 んで一 般 的 な記 述 を 見つける帰納法的な読み方が学習に効果的だろう。. −153−.

(6) を列挙する。 「第一」「単元の主な学習目標」(全5つより抜粋) 3 対 象 を分 析 す るための概 念 (思 考 の枠 組 み)を理 解 し、論 の展開を正確に把握する。 5 筆 者 が示 した概 念 を借 りて、自 分 の生 活 や 現 代 の状 況 に ついて考 え、まとめることにより、分 析 、思 考 、批 評 の方 法 を 学ぶ。 「大修」「単元の目標」(全3つ) 1 抽 象 的 ・概 念 的 な用 語 や 表 現 を理 解 し、そのよう な表 現 と具 体 的 な現 実 との対 応 を考 えながら読 み進 める努 力 を 身につける。 2 緻 密 な論 理 の展 開 や 、柔 軟 な発 想 と視 点 のおもしろさ を 味わう。 3 筆 者 の主 張 を自 らの問 題 としてとらえ、自 分 の考 えをま とめる。 本稿では、 「教材「アイヌ語地名を歩く」」以外の教材と単元を想 定するわけではない。しかし、もし設定するならば、 「多 文 化 共 生 社 会 」に関 した複 数 の文 章 で構 成 す る教 材 と単 元 を組 みたい。よって そこを見越 して 「1単元のねらい」を 「2教材のねらい」よりも抽象的 なものにした。 なお、細 かいが、目 標 の主 語 をどう す るかを考 えた。つまり、授 業者を主語とするならば指導目標、学習者を主語にするならば学 習目標になる。ここでは 「第一」「大修」に倣って学習目標とした。. 抽 象 的 な文 章 と具 体的 な文 章 が対 応 す ることを意 識 して. 2 教材のねらい (本文) 教材の主な指導目標 ①. ( 83 ). 読み、筆者のアイヌ語地名探求法を理解させる。 ② 「古くからの地名を大切にして戴きたい」という筆者の主張 とその論拠の関係を理解させる。 ③ 「 アイヌ語 地 名 」一 つひとつに語 義 があ り、多 年 にわたる 人 々 の思 いが凝 縮 した文 化 の一部であり、われわれが生 活 す る社会が多文化共生社会であることを理解させる。. ①抽象的な文章と、対応する具体的な文章の関係を考える。 抽象的な文章である 「甲」を読み、学習者は聞き慣れない人名や 語 句 に戸 惑 い、難 解 に感 じることだろう 。ところがその後で具 体 的 な文 章 である 「乙 丙 」を読 み、筆 者 と共 に地 名 解 という 宝 探 しの旅 に同行しているように楽しく読めるに違いない。そこでの方法に対応 する抽象的箇所を、先に読んだ 「甲」から探し、見つけ出してもらい たい。 ②主張と論拠の関係について理解する。 筆 者 の主 張 は、 「甲 」の文 章 末 の 「古 くからの地 名 を大 切 にしてい って戴きたい」である。なぜならそれは、 「アイヌ語地名」が 「先輩の汗 の滲 んでいる地 名 の地 方 色 こそがその土 地 土 地 の誇 りで」あり、 「ア イヌ時代から開拓時代を通ってきた歴史的地名」だからである。 筆者は、 「一般和人の知らない言葉の地名なので」「旅行者たちも 関 心 を持 ったよう 」に、その語 義 に 「 す っかり魅 せられてしまった」。 学習 者には 「甲」の読 解を通じて、筆者の主 張へ展開する道筋と、そ の論拠を学習させたい。 ③「 アイヌ語地 名 」の学 習 から 発展 して考えたことや、自 分 の住 む 国が 「多文化共生社会」であることを理解する。 本文を読んで、学習者の中には、普 段あまり意識しないで使用 し ているであろう 地 名 に意 味 があるという「 発 見 」に驚 きを覚 える者 がいるかもしれない。この 「 発 見 」を通 じて、北 海 道 や 東 北 北 部 のア. −154−.

(7) 的 にイメー ジを作 れないため難解 に思 うだろうが、 「乙 丙」によって 詳 細 をまるで体 験 す るよう に感 じ、その理 解 の後 で 「 甲 」の一 般 的 記述に帰納するとわかりやすくなるだろう。 「 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 (平 成 年 告 示 )国 語 編 第 2章 国 語 科 の各 科 目 第 1節 現 代 の国 語 3内 容 (2)情 報 の扱 い方 に 関す る事 項 イ」では、 「個 別 の情 報と一般化さ れた情報との関係 について」書かれている。そこには、 個別の情報をもっているだけでは、情報を活用していることには ならない。それぞれの情 報 の共 通 点 を見 いだし、一 つの概 念 に まとめることで、一般化された情報を得ることが大切となる。 とある。まさにこのことは本教材と一致し、 「個別的な」「乙丙」だけ ならば、地 名 探 検 のお話 なのだが(これだけでも興 味深 い話 だが)、 それらの共通点から一般的な法則を見いだすことができれば、他で もどこでも通 用 す る、より普 遍 的 な地 名 解 読 法 に至 ることができ るだろう。 次に 「②「古くからの地名を大 切にして戴きたい」という筆者の主 張 とその論 拠 の関 係 を理 解 さ せる。」を本 文 の語 句 を用 いて見てい きたい。筆 者 は 「 甲 」を「 古 くからの地 名 を大 切 にしていって戴 きた い」という主 張で結ぶ。なぜなら 「 アイヌ語地 名」は、 「土地土地の誇 り」であり、 「歴史的地名」だからである。 「アイヌ語地名」の 「大部 分 は地形をいったものであ」り、 「そこにその地名がつけられた当時の元 来 の意 味 」があるのに、 「 消 えていったものが少 なくな」いため、何 と か 「大切にしていって戴きたい」という思いであろう。 そこでより重要なのは、 「アイヌ語地名」の大部分は地形の意味が 込 められている、という ことだ。意 味 があるからこそ、 「古 い徳 川 時 代 の旅 行 者 たちも関 心 を持 っ」て 「 地 名 の語 義 」を書 いてきたのであ り、筆 者 もその一 人 であった。そしてその中で筆 者 山 田 秀 三が独 自 の地 名 語 義 解 読 法 を編 み出 したという ことが、今 日 でも高 い評 価. −155−. ( 84 ). イヌ語 地名 はもちろん、自分 たちの住所 地名 にも、ひいては地 名全 般にも意味があると敷衍して考えることができるようになるだろう。 そして、できれば筆者 のよう に、自 分の興味がある地名の由 来を調 査してほしい。 さ らには、北 海 道 の地 名 の多 くがアイヌ語 由 来だと知 ることで、 北 海 道 の住 民 は大 和 民 族 が多 数 であるが、先 住 者 がアイヌ民 族 で あり、両 者 の文 化 が共 生 す る社 会 であることをあらためて理 解 さ せたい。 教材のねらい (解説) 「 教 材 の主 な指 導 目 標 」は、 「第 一 」にある名 称 である。 「主 な」と 付 ける理 由 は、他 にもあるだろう が特 に列 挙 したいのは、という 気 持ちの表れととりたい。上 記目 標は、 「単元の目 標 」に矛盾 せず、そ れよりも具体的 になるよう留意 した。また、それが学習目 標か、指 導目標かという点も考慮した。 「単 元 の目 標 」は、 「第 一」「大 修 」は学習 者 の目 標であり、 「桐原 」 「 数 研 」では存 在 しなかった。 「 教 材 のねらい」は、 「 第 一 」が 「指導目 標」、 「大修」が 「学習目標」、 「桐原」「数研」では設定していない。 それではまず 、 「 ① 抽 象 的 な文 章 と具 体 的 な文 章 が対 応 す るこ とを意 識 して読 み、筆者 のアイヌ語 地名 探求 法を理 解させる。」を 本 文 の語 句 を用 いて見ていきたい。 「 甲 」の文 章 の、 「 アイヌ語 地 名 の 大 部 分 は地 形 をいったもの」であり、 「 旧記 を渉猟 し」「現 地 に行 って 地 形 を眺 め」「もう 一 度 旧 記 、旧 図 を当 たり直 す と、ああこうだの かという ことに気 がつく」という 箇 所 と、 「 乙 」の方 法 が対 応 す る。 「丙」も 「乙」と同じく 「ソー (滝)」に関す る文章である。よって 「旧記 を渉 猟 」し、 「 数 多 く散 在 している」「 同 形 の地 名 の所 に行 って見 」て 「そこにその地名がつけられた当時の元来の意味があったらしいと考 える」方 法 と、 「丙 」の方 法が対 応す る。なかなか 「甲 」だけでは具 体. 30.

(8) 地名」とは、どれくらいの 「歴史」があるか、昭 和三十二(一九五七) 年 の筆 者 の著 作 を引 いてみよう 。ここから山 田 研 究 の本 質 の一 部 を見ることができると考える。なお、傍線は稿者による。 これらの地名(稿者 注・東北 地方のアイヌ語由 来と考えられる 地 名 )が日 本 語 地 名 化 したのは、南 の地 方 を除 いては、奈 良 朝 から鎌 倉 時 代 初 期 が大 部 分 であったろう 。日 本 語 地 名 化 して からも、当 字や 発音 が変わってきたことは事 実である。原名 に しても、北海道とは相当な方言差はあったろう。日本語化する 過 程 の転 訛 は当 然 である。そして千 年 前 後 の変 遷 を経 た地 名 である。 と、アイヌ語 を使 用 していた人 々 が名 づけた、東 北 北 部 の地 名 が、 日 本 語 を使 用 す る人 々 の地 名 に変 わっていった過 程 から千 年 前 後 経たと述べている。また、昭和四十七(一九七二)年の著作 では、 『 日 本 書 紀 』の終 わりごろから『 続 日 本 紀 』にかけて、つまり飛 鳥 時 代 から奈 良 朝 の時 代 に、東北 の蝦夷の記録が多く残され ているが、そのほとんどはこの図 (稿 者 注 ・山 形 、秋 田 の県 境 か ら宮 城 の北 辺 を通 る線 より北 側 、アイヌ語 由 来 と考えられる 地名が現存する)の中が舞台なのであった。 と時代を遡って述べている。いずれにせよ 「歴 史的地名」の中には、優 に千 年以上 前から存在す るものがあると考えられる。これらについ ては、後稿「J 語句の説明」で詳細を述べたい。 次に 「③ 「アイヌ語地名」一つひとつに語義があり、多年にわたる 人々 の思 いが凝縮 していることと、現在われわれが生活す る社会が 「 多 文 化 共 生 社 会 」であることを理 解 さ せる。」を見 ていきたい。前 述 したよう に 「 アイヌ語 地 名 」の大 部 分 は地 形 の意 味 を込 めたもの である。例えば、 「札幌」は国内はもとより海外でも耳にしたり口に したりす る、最 も有 名 な 「 アイヌ語 地名 」の一 つだろう 。その語義 に、 ― poro ― pet 乾く・大き 諸説はあろうが、 「サッ・ポロ・ペッ( sat. 10. −156−. ( 85 ). を受ける所以であろう。 「甲」全体の、主張へと至る大まかな流れは以下のようになる。 1 北海道の多くの地名はアイヌ語語源であり、それが地方 色であり魅力でもある 2 仮名から漢字への表記によって地名が変えられていった 3 江戸から明治期の地名研究者等によってそれぞれ地名解 に違いがある 4 金田一と知里のアイヌ語研究の成果により地名解が改善 したが、未だ自信はない 5 多くのアイヌ語地名の語源は地形によるため複数の同形 があり、現地調査が有意義である 6 アイヌ語地名のような地方色のある歴史的地名を大切に していって戴きたい 「甲」の文章は六段落構成で、1で筆者が少年期にアイヌ語地名へ の魅力を持ち、2から5は自身へと至る地名研究史、6でアイヌ語地 名の思いへとつながる。筆者がアイヌ語地名に携わってきた人生が読 み取れよう。 「 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 (平 成 年 告 示 )国 語 編 第 2章 国 語 科 の各 科 目 第 1節 現 代 の国 語 3内 容 (2)情 報 の扱 い方 に 関する事項 ア」では、以下のようにある。 論 拠 とは、主 張 がなぜ成 り立 つかを説 明 す るための根 拠 と理 由 付 けのことであり、根 拠 のみならず 、主 張 が妥 当 な理 由 付 けに支えられていることを示すものである。 学習 者には筆者の主張にどのような根拠があり、なぜ成り立つのか を読み取らせたい。 また、本文 にある 「アイヌ時 代 から開 拓時 代を通 ってきた歴 史的 30. 9.

(9) い・川)」という意味 があることがわかれば、学習者の北海道の地名 に対 す る意 識 が変 わってくるのではないか。そしてその意 識 は、他の 地名はどういう意味からつけられたのかという推論へと拡がっていく だろう。 「 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 (平 成 年 告 示 )国 語 編 第 2章 国 語 科 の各 科 目 第 1節 現 代 の国 語 3内 容 (2)情 報 の扱 い方 に 関する事項 ウ」では、以下のようにある。 推論とは、ある事実を基に未知の事柄を推し量ることであり、 推 論 の仕 方 には演 繹 的 な推 論 と演 繹 的 ではない推 論 (帰 納、 仮説形式)がある。 本 文 の場 合 、 「甲 」の文 章 にある地 名 解 読 法 を基 に他 の地名 の語 義を推し量れば、演繹的推論となる。また、上記の①で示 したよう に、具 体 的 個 別 的 な 「 乙 丙 」から抽 象 的 一 般 的 な 「 甲 」を推 論 す れ ば、帰納的推論となる。ただし、地名の語源は諸説存在することが 多 いので、導 き出 さ れた結 論 が正 しいとは限らないことに注意 され たい。前述の要領解説の、 推論の仕 方には、様々なものがあることを理 解 し、その限 界に も留意して実際に使うことが求められる とは、正にそのとおりであろう。 また、 「高等学校学習指導要領(平成 年告示) 第2章各学科 に共通する各教科 第 1節国語 第2款各科目(3) 第1現代の 国語 1目標(3)」には(傍線は稿者による)、 言 語 がもつ価 値 への認 識 を深 めるとともに、生 涯 にわたって読 書 に親 しみ自 己 を向 上 さ せ、我 が国 の言 語 文 化 の担 い手 とし ての自 覚 をもち、言 語 を通 して他 者 や 社 会 に関 わろう とす る 態度を養う。」 とあり、同 解 説 には 「 我が国 の言 語 文 化 」について(傍 線 は稿 者 によ る)、 11. 30. 30. 我 が国 の歴 史 の中 で想 像 さ れ、継 承 さ れてきた文 化 的 に高 い 価値をもつ言 語そのもの、つまり、文化としての言語、また、そ れらを実 際 の生 活 で使 用 す ることによって形 成 さ れてきた文 化 的 な言 語 生 活 、さ らには、古 代 から現 代 までの各 時 代 にわ たって、表 現 し、受 容 さ れてきた多 様 な言 語 芸 術 や 芸 能 など と書 かれている。稿 者 は、これに、少 なくとも 『日 本書 紀』時 代 から 続く 「 アイヌ語 地 名 」も含 まれると考える。公益 財 団 法 人 アイヌ文 化振興・研究推進機構が北海道内の中学校などを中心 に頒 布して いる 『アイヌ民族 :歴史と現在―未来を共に生きるために― 』 を引 用する(傍線は稿者による)。 アイヌ民 族 が付 けた地 名 には、その地 域 で、長 い年 月 に渡 って 生 活 を営 んできた人 たちの知 恵 がこめられている。例えば、安 全 に暮 らす ための知 恵 として、 「 大 津 波 の時 に逃 げる場 所 」と か、 「川の危険な場所」などと地名にして、誰でも分かるように していた。(中 略 )それらの地 名 を残 すことで、アイヌ民 族 が長 年守ってきた知恵も後世に伝えることができる。地名は大切な 文化の一部なのである。 「アイヌ語地名」は、まさ に長い年月で培ってきた歴 史的地名であり、 「実際の生活で使用す ることによって形成されてきた」言語であり、 民 族 独 自 の知 恵 や 精 神 を後 世 に伝 える、アイヌ文 化 の一 部 である ことを学ばせたい。 そしてひいては、あらためて、日本が多民族国家であり、 「多文 化 共生社会」であることを理解させたい。. 12. −157−. ( 86 ).

(10) 1 拙 稿「 山 田 秀 三「 アイヌ語 地 名 を歩 く」の教 材 化 」(『 国 語 論 集 』 北 海 道 教 育 大 学 釧 路 校 国 語科 教 育 研 究室 平成 三 十 一(二○一九)年三月)八五―一○○頁 2『地 名 アイヌ語 小 辞 典 』(知 里 真 志 保 昭 和 三 十 一 (一 九 五 六 ) 年 北 海 道 出 版 企 画センター 一 二 五頁 )によると、 「 ソー 」の 意味は、 「①水中のかくれ岩。②滝。③床(ゆか)。④めん(面); 表面一帯。」とあり、ここでは②の意。 3 本稿では、アイヌ語に関連のある地名を 「アイヌ語地名」と呼ぶ。 いわゆる 「アイヌ語 地 名 」である。アイヌ語 地 名と言っても、アイ ヌ民族が概ね江戸期以前に、普段生活の中で使用してきた地名、 主に和人(稿者注・いわゆる大和民族)が概ね江戸期以降にアイ ヌ民 族 から聞 いて漢 字 などを当てた地 名 、アイヌ語 に由 来 す る が、主 に和人が意 訳して付けた地 名などがあり、単 純 に区分け することは難しい。これらは児島恭子の研究に詳しい。 ― ― (沖・の・国)と云 4 注2 一 四 五 頁 に 「外国を re un mosir ― un ― mosir うに対して北海道アイヌは北海道を ya (陸・ の・国 )とよぶ; 内 地 本 土 。」とある。将 来「北 海 道 」をアイヌ語 と併記することがあるかと思い、こう記す。 5『 探 求 現 代 文 改 訂 版【 指 導 資 料 】第 二 分 冊 Ⅰ 部 ② 』(平 成 二 十 (二○○八)年) 6『 高 等 学 校 現 代 文 B 指 導 と研 究 第 6分 冊 』(出 版 年 記 載 なし) 7『精選高等学校現代文B 新訂版 指導資料3』(平成三十(二 ○一八)年) 8『現 代文 3 教授資料 第二章随想・評論』(平成二十(二 ○○ 八)年) 9 山田秀三『アイヌ語地名の研究 第三巻 山田秀三著作集(全 16. 四 巻 )』「東 北 と北 海 道 のアイヌ語 地 名 考 後 記 」(昭 和 五 十 八 (一九八三)年二月 草風館 九二頁)(初出は単著『東北と北 海 道 のアイヌ語 地 名 考 』 昭 和 三 十二 (一 九 五 七 )年 五 月 楡 書房) 山田秀三『アイヌ語地名の研究 第一巻 山田秀三著作集(全 四巻)』「アイヌ語種族考」(昭和五十七(一九八二)年 十二 月 草 風 館 一 ○ 一 頁 )(初 出 は単 著『 アイヌ語 種 族 考 』(ぷや ら新 書第 巻)(昭和四十七(一九七二)年 沖積舎(ぷやら新書刊 行会)) 山田秀三『北海道の地名』(昭和五十七(一九八二)年十二月 草 風館 一 ○一 頁 ) 『アイヌ民 族 :歴 史と現在― 未来 を共に生きるために― 改訂 版 』(平 成 二 十 (二 ○ ○ 八 )年 三 月 公 益 財 団 法 人 アイヌ文 化 振興・研究推進機構 三八頁). (たにぐちまもる/ 北 海 道 札 幌啓 成 高 等 学 校 ). −158−. ( 87 ). 10 11. 12. 48.

(11)

参照

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