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学校教育研究科 教育内容・方法開発専攻    文化表現系教育コース(美術)

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(1)

平成24年度 修士課程学位論文

「美術科のかたち」の混迷と指導再考に向けた視点案出

     兵庫教育大学大学院

学校教育研究科 教育内容・方法開発専攻    文化表現系教育コース(美術)

   M11!89F岩成 昭則

(2)

目 次

  はじめに1・・…  .・.......。.............  1 序 章

  第1節 研究の背景と動機・・・・・・・・・…    3   第2節 研究の目的と方法・・・・・・・・・・…  . 一 一  8

第1章体美的表現活動の有用性と課題

  第1節  rパターンアート表現(1)」 実践内容及び結果・・・・・・…  11

    第1項実践内容H・・H・… H・・・・・・・・…

    第2項作品事例分類による考察・・・・・… 1・・・・…

    第3項実践結果考察・・1・・・・・・・・・・・・・・… 

  第2節 「靴のデザイン」による縦断的調査・・・・・・・・・・…

    第1項縦断的調査内容・・・・・・・・・・・・・・・・・…

    第2項縦断的調査結果・1・・1・・・・・・・・… 1…

    第3項 縦断的調査における考察・・・・・・・・・・・・・・…

第2章  「美術科のかたち」の混迷

  第1節 描画活動における意識の混迷・・・・・・・・・・・・・…   50     第1項 造形美術教育に関する意識調査(中学校3校)・・・…  一・ 50      1) 調査内容・・・・・・・・・…  .・.......... 50      2)調査結果・・・・・・・・・・・…   ・ .  53      3)描画に対する苦手意識の実態・…  1・・・・・・・…   55     第2項 造形美術教育に関する意識調査(F中学校)・・・・・・…   59      1) 調査内容・・・・・・・…  .............. 59      2) 調査結果・・・・・・…   ・ ・.一  60      3) 描画に対する苦手意識の実態・・・・・・・・・・・・…   61   第2節 美術科の成り立ちにおける混迷・・・・・・・・・・・・・…  63

第3章 認知的視点による造形美術教育   第1節 認知的枠組みとボトムアップ   第2節 トップダウン型表現活動1・

  第3節ボトムアップ型表現活動・・

・トップダウン処理・・・・・…

■   ●    ●    ●    ■    ●    ●    ●    ●    ●    ●    ■    ●    ■    ●    ・    ●

■   ・    ■    ●    ●    ■    ●    ●    ・    ●    ●    ●    ・    ●    ●    ・    ●

69 71 72

第4章 描画に関する実践調査とその検証

  第1節  rパターンアート表現(2)」による実践調査内容及び結果・…   73     第1項  rパターンアート表現(2)」による実践調査内容…  1・・ 73

(3)

  第2項 「パターンアート表現(2)」による実践調査結果と考察・…  74 第2節 rパターンアート表現(3)」による実践調査内容及び結果 ・…  77   第1項 描画に対する意識(F中学校第1学年)・1 ・・ ・    77   第2項 「パターンアート表現(3)」による実践調査内容・・・・…  79   第3項 「パターンアート表現(3)」による実践調査結果と考察・…  85 第3節 「パッケージデザイン」による実践調査…   ・I  92   第1項 描画に対する意識(F中学校第3学年)・・・・・・・…    92   第2項 「パッケージデザイン」による実践調査内容・・・・…   94   第3項 「パッケージデザイン」による実践調査結果・・・・…   104

終章 ・・・…  H H・・・… !32

参考文献・引用文献

著者50音順・・・・・・・・・・…  ...........。... 135

(4)

はじめに

 図0−0−1は中学1年生よる作品事例(制作 時間2時間)である。指導内容は同一形■の連 接(形をつなぐ描画)を軸にした描画活動で あり、「並べる」、「繰り返す」など単純で明 快な活動を取り入れることにより、生徒の意 欲喚起と描画表現の魅力確認の利点を期待

し取り組んできた内容である。他の指導者か らは表現手段の制約と自己表現や創造力の 抑圧を懸念する意見を聞くこともあり「作業!」

的とする指摘もある。しかし、これまでの指 導経験から、多様な表現が作品に見られる(第

図0−0−1生徒作品

4章参照)ごとや生徒の集中する姿に学習活動の充実を感じ、単調で画一的な表現活動であ るからこそ成立する表現活動の魅力や、創造的表現を喚起する要素が内包されると確認で きた。そのことからこのような描画表現が生得的造形活動を内包することを推測し題材化 を検討してきた。生得的活動は造形遊びにおける学習活動として認知されているが、中学 生の指導として二のような描画活動の整合性や必要性の是非は検証・研究は十分積み重ね

られてきたとは言い難く、この活動の優位性・劣位性について調査・研究の必要があった。

この指導事例は単純で明快な描画活動であることから、苦手意識や意欲の欠如、また、表 現停滞の傾向が強まる中学生に有効的な手立てとして期待できる。しかし、「児童生徒の本 来の造形活動力を抑圧するもの」と見なされ否定される見解があることも事実である。こ れは美術科の指導観における一つの課題ではないだろうか。20数年における実践の中にお いても「削る」、「みがく」、「(のこぎりで)切る」、「(釘を)打つ」などの単調で画一的な活 動に見られる没頭、集中、なにより生き生きとしたその表情を見る度に学習としての有用 性の見落としを懸念してきた。ほぼ全員の生徒が意欲的に活動することは、完成目標が明 確な作品制作ではなかなか見られず、こういった活動による表現に対する苦手意識の払拭 を期待できる。しかし教科書をみてもこういった活動を主体に検討された題材は少なく、

指導方略として少ないことが現状といえるだろう。ただ、こういった指導観の掘り下げは 美術教育史の中で繰り返し行われ、改善されてきたことでもある。美術教育のパイオニア:モで あるチセックは、生き生きと「落書き」を行う子どもの姿などから「子どもの絵」を発見 した。それまでは「落書き」は矯正される時に処罰の対象となる行為であった。当時のr 般的な大人の認識では落書きを「子どもの表現」と解釈することは難しかったのである。

それは認知の差異であった。宮脇は『4本足のニワトリ 一現代と子どもの表現』(宮脇、

i最匂」に3角形の連接による描両活動を行う.

 「f乍榮」の意は「肉体や螂尚を働かせて仕事をすること。またその仕事。 (新村、2008)であり、本来不定的な表現と は言えないが、ここではr生徒の篇1」造性につながらない活動」の意味で使川する。

={7ランツ・チセック膿(1990)カタログにおける表現

      1

(5)

1998)の中でr大衆の質が制度を左右する」としてr『大衆の出来上がった確信』が個人の 今後をどれほど左右し、またいかに抜け出せないかを語っている」(宮脇、/998,P.21)と、

人の認識による価値観の強固性をあげるとともに、チセックの啓蒙が大衆の認識の変容を うながし、造形美術教育の教育観を変移させた功績を称えている。人々の認識は常に変移 していく。造形美術教育においても価値観の変容は顕著であり、教育観の対立や分裂・混 乱を繰り返して混迷と停滞をもたらせている。そのことから考えれば、学習に対する認魚 的視点に基づく問題分析を行わなければ指導観の混迷と停滞の解消は難しいのではないだ ろうか。平成20年版学習指導要領において発想や構想の能力と創造的な技能の育成、美術 文化についての理解するカ、言語活動の充実、資質や能力に合わせた表現形式の配慮とい った指導内容が示された。また、図画工作科との連携の必要性も高まり、幅広い視野をも って指導観を形成する必要が生まれてきている。そのことは美術科の意義や役割といった

「美術科のかたち」の方向性を再考する時期にあることを示唆している。しかし、「心的能 力の育成よりも、知識の実質的内容の習得を重視する教育」(新村、2008)である実質陶冶 の指導観と、「知識の実質的内容の獲得よりも、その獲得過程で形成される心的能力という 形式的側面の育成を重んずる教育」(新村、2008)である形式陶冶的指導観の不分立の関係 性は指導の視点を複雑にし「美術科のかたち」の混迷を招いている。様々な論争を経てそ の姿を消した臨画教育の写実・再現性表現活動の中にも形式陶冶としての指導がないとは いえない。この不分立の関係性による問題の複雑さは、形式陶冶的な視点による指導観の 構築を妨げ、中学生の表現特徴、特性や美術の認知状況の検証の遅延を引き起こしたと考

える。そのため本研究では、単調で画一的な描画活動の実践による検証を起点とし題材の 有用性を検証するとともに、「美術科のかたち」の混迷となる問題の所在を考察し、教育観

と指導方略の再考の視点を提示することを考えた。

(6)

序章

第1節 研究の背景と動機

  研究動機は、先述したとおり単調で画一的な表現活動の有用性についての検証であり、

同一形の連接・配列・集積・反復による描画表現であるrパターンアート表現」が内包す る教育効果の可能性を期待し、その有用性の検証と美術科おける教育観の整理、改善や問 題解決の視点の検討の必要性を感じたことにある。また、「指導観における認識の差異」、「描 画に対する苦手意識の混迷」、「描画表現に対する認識差異」といった美術科における教育 観や指導観の問題から「パターンアート表現」の必要性が生じており、この3点を以下に まとめ本研究の背景にある視点として示す。

 「指導観における認識の差異」は「はじめに」の中に記述した内容であり、美術科にお ける生得的な造形活動に対する認識の問題である。

 筆者は造形遊びとの関連性も視野に入れながら、「削る・みがく」、「つなぐ・並べる・繰 り返す(描画活動)」といった表現活動について5年以上、生徒の反応や成果を確認してき た。「削る・みがく」の活動は、石材め切削・研磨による正球制作を指し、主に第1学年を 対象に基礎的学習として実施していた。もともとのきっかけは、技量不足による制作の断 念や制作時間の長時間化を問題と感じ、問題解消の手立てとして考えたことによる。段階 的学習と制作の充実感・達成感の体感を重視しての導入だった。これも作業と見られる活 動であったが、他の題材には見られない集中力や没頭する様子などあり、造形活動として の有用性を強く持つと考えるようになった。「削る・磨く」活動が持っ独特の充実感は生徒 を歓喜させ、学習経験として生徒の中に印象深く残ることが推測できた。平成22年(2010)

の第3学年3学期に「これまでの好きな題材」として「どんなものを作ったか?」を確認 した4ところ118名中31名(3!%)であった。他の項目のrデッサン19%」、r粘土6%」、r版画 8%」、「工作8%」、「絵具を使った表現13%」、「観賞12%」、「その他3%」と比較しても記憶に 残る内容であることが確認できた。他の指導者との題材検討の中でも「生徒は磨くことに 夢中になる」とする見解に共感を得ることは多いが手法・技法の学習との見解にとどまり、

その活動の有用性に着眼した指導方略を聞くことがない。生徒が没頭できるがその教育効 果についてはあまり検討されていない活動であり研究対象として考えるようになった。本 研究の題材である「パターンアート表現」は単調で画一的な表現活動であり、生徒の創造 性に対する制約や制限があり、生徒の自己表現を抑圧する要素が懸念される。しかし、実 践してみるとそこに多様な表現も見ることができた。生徒が没頭し、熱中する表現活動で あり、それ以前は制作に取り組めなかった多動性傾向の生徒が制作に取り組む事例も見ら れ、単に生徒の自己表現や創造力に乏しい制約的な活動とは言えない生徒の反応が確認で きた。近年、没頭とその有用性に関する研究としてチクセントミハイの「フロー理論」が

4学期米テストに質問項自を設定して調査したもの

(7)

取り上げられr焦点の絞られた高い集中力をもって活動に没頭しているときの楽しい経験」

を意味するrフロー」状態と指導効果の向上の関係性についての研究が進められている5。

「パターンアート表現」の活動中にみられた熱中、没頭が「フロー」に該当すれば、画一 的であっても指導効果の向上として教育意義も考えられる。そう考えると「パターンアー

ト」の意義や役割は大きいととらえることができる。「作業的」で「楽(らく)」であり、「何 も考えなくてもできる」、「生徒の創造性が表れない表現活動」に類似した考察には個性的 表現の重要性に視点を置く教育観の影響が強くあると考察できるが、作品制作に視点が置 かれていることは否めず、この認識差異形成の要因を掘り下げなければ価値観の訂正と共 有は成立しないと考える。教育観には「心的能力の育成よりも、知識の実質的内容の習得 を重視する教育」(新村、2008)とする実質陶冶と「知識の実質的内容の獲得よりも、その 獲得過程で形成される心的能力という形式的側面の育成を重んずる教育」(新村 第6版、

2008)とする形式陶冶があり、指導の方向性の指針となるとらえ方がある。現在、造形美 術教育においては「美術の(ための)教育」ではなく「美術による教育」として人間形成に 主体が置かれる傾向が強い。このことは実質陶冶ではなく形式陶冶の傾向にあるといえる。

しかし、美術科における2つの教育観の優位性の明瞭化は難しく、実質陶冶・形式陶冶そ れぞれに整合性をもつ指導の言及も容易ではない。そこには2つの教育観の不分立の関係 がもたらす問題があり、どちらか一方に傾倒して指導しているつもりでも、もう一方の教 育観が内在しているのである。実質陶冶的と判断できる臨画教育や写実・再現的表現活動 の中の「真似る」という活動が形式陶冶としての活動ともいえることなどその関係性は複 雑であり、教育観に合わせた活動内容の分類を明示することは難しい。そういったことか ら表現活動と教育観の関係性や生徒の表現特徴、特性などに対する考察は不十分なのが美 術科の現状としてみえるのである。そして、「認識の差異」が認知を要因とする以上、認知 の視点をもたなければ問題解決には至らないと考える。

 また、「描画に対する苦手意識の混迷」は、青年期前期に形成されると考えられる苦手意 識とその背景にある描画に対する認識の問題に関する内容である。一般的に児童期の終わ りから青年期前期に向けて、描画に対する苦手意識の確立と消極性の高まりは指摘されて おり、課題とされてきた。予備調査においても半数を超える生徒が描画に対する苦手意識 をもっていることが確認できている。この苦手意識に対する問題の解消を目指して実践、

研究は繰り返し行われてきたに違いないが、有効な手立てを持つことができたかは疑問で ある。前村は『現代美術教育論』(宮脇、1985)の中で9歳前後の子どもたちの多くに見ら れる問題を「客観的な判断が一定程度進歩してくるために、自分の描きたいもの作りたい

ものと、自分の持っている表現手段とのギャップに気づくようになり、表現活動への意欲 を減退させることになるのである」(前村、1985,P.42)と解説し、「児童中心主義的美術教 育(形式陶冶的教育)」において手立てが見られないことと青年期に移行する段階における 描写力の技法習得の必要性を述べて。いる。成長するに従って強まるこのような意識に対す

;静岡大学教育学部附属浜松叫1学校で実践事例研究が行われている。

      4

(8)

る研究はこれからも繰り返し行われるだろう。そして、意識調査により、描画に関する苦 手意識に内包される複雑な状況を知ることができた。それは授業に対する楽しさとして「絵 を描くのが楽しい」と記述するが、描画に関する質問項目では「苦手、とても苦手」と回 答する事例だった。」見矛盾すると思えるこの調査結果は、描画活動と写実表現に対する 認識の差異や多様性を示唆しているように思う。このことから教科と描画に関する意識を 掘り下げていく必要を感じた。そして、認知の視点による問題の見直しから生徒が必要と する造形活動を追求し、指導再考を行いたいと考えた。

 描画表現に対する認識の差異は「社会・指導者と生徒間に存在する感性の相違」でもあ り、「大人と子供の価値観の相違」とも言える。青年期前期に限定されない事象ではあるが、

指導の在り方について問題提起となる内容であり、研究主題に共通するものとして取り上 げる。昭和55年(1980)頃に話題となった「4本足のにわとり」図0−0−2はその代表事例で

^巾雪 目印{ (牛王 n中里

  図O−0−2{本足のにわとりσ)絵

あろう。「4本足のにわとり」を描く大学生がいることが注目され新聞によって取り上げら れたことをきっかけにして、生活環境の変化や教育の在り方、観察や発想の脆弱性が問題

とされ話題となった事象である。「子どもの自由な表現」の教育観からすれば4本足を描い たことを「子どもの表現」の豊かさとしてとらえるべきであるが、「間違い」として「2本 足」に訂正させる心情が働いてしまうことも否定できない。つまり表現に「正解」を求め てしまう指導と児童生徒の積極的な描画を期待する指導観が混在する。そういった「四本 足のにわとり」に潜む教育観の問題について宮脇は著書『4本足のニワトリ 一現代と子ど もの表現』(宮脇、1998,p.8)の中でrもし、もしもだが、四本足のニワトリの絵を描いた ときに、『なぜニワトリの足は四本なの』と先生に聞かれ、『二本より四本、それより六本、

一一尠{の方が速く走れるから』と答えられる状況であったらと思うと、教員という職業の 重みの意味と凄さを感じる」と述べ、体験不足や環境変化との因果関係のみならず、教育 観における問題性としての見解を示す。児童生徒の表現として放任すれば「知識の習得」

としての側面を失うことになり、児童生徒の表現に関する認識と形式陶冶的教育観がなけ

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れぱこの表現は「間違い」として否定されることになる。このことは造形美術科における 実質陶冶と形式陶冶の対立でもあり、これら教育観の2方向性がもたらす問題の難解きを ここでも示している。熊本大学の調査「球体の認識と表現一『四本足のにわとり』に関す る研究一 」(黒川、1975)によると、「4本足のにわとり」を描いた中学生は7%(937名中 64名)であり、その出現率は幼児と変わらず、女子においては年齢とともの増加傾向を示し たことが報告されている。そして、「4本足のにわとり」を描いた中学生36名に対して行っ た追跡調査によると52.6%生徒が「うっかりかいた」としており、足の本数に認識を持って いたことがわかっている。また、「安定感がでるので」と答えた生徒や「四本足でもかまわ ない」、「四本足がかきやすいと思った」と考える生徒も見られることに生徒の表現に対す る認識の幅広さや指導者側との認識に差を感じる。造形活動には「知らない」からこそ表 出する斬新な表現性も存在する。そう考えると表現活動にはどのような認識を持つことが 理想なのか混乱する。しかし、「4本足のにわとり」が示すように表現活動には多様な認識

とその差異がもたらす問題が内包されている。そして、その状況を整理・把握しながら指 導を行う必要がある。そうでなければ4本足を訂正するだけの指導となってしまい知識偏 重学習を行うことになる。

 また、図0−0−3は手のデッサンと生徒が落書きとして描いた絵である。写実表現力を持 ち、自己の表現スタイルが確立している生徒であり、デッサンを描いたことに触発されて 独自のアニメ・マンガ表現的キャラクターを加えている。まったく違う表現が重なりあう 部分があり、異質な表現の密接した混在表現が注目される。2回描いている中の2枚目のデ

ッサンであり、1枚目の区分けのある2つの表現から描画に慣れた段階であることが推察で きる。この密接した表現は、デッサンにおける表現様式と

1枚[      2枚[

  図O−O−3手のデッサンに加えられた1−1己表現(13才女子)

 自己表現様式の価値観が同等、もしくは自己表現の方が優位と考えられる。デッサンに は練習の要素もあるが、目的を持って制作するという点では作品性も存在する。ここまで の描写力から考察すれば自己表現としての価値も発生する。そこに落書きを重ねる事は、

(10)

生徒にはどちらも描画による表出であり、区分けの意識は無いといえる。この事例は、生 徒が求め生き生きと取り組める習得内容と、指導者が設定した指導内容との差を示す事象 の一端であり、美術科における描画の意義再考として取り扱える事例といえる。

 美術教育のパイオニアとされるチセックは、子どもの生得的な創造性を伸ばそうとする 創造主義的な表現活動の先駆者である。落書きする子どもの様子に、学校の授業で見せる 姿・表現との相違を発見した。チセックの実践活動について石崎は著書『フランツ・チセ

ックの美術教育諭とその方法に関する研究』(石崎、1992,p.4)の中で「子どもへの抑圧を 排除することによって子どもの創造性を引き出すことをめざし、また、児童・青少年の子

どもたちが作り出した作品に対して、ひとつの美術領域としての価値を認め、そこには大 人とは違った独白なものが存在することを主張した」と見解を示す。見落としていた価値 観の発見により、現在の造形美術教育の意義に変容が起こったのである。草稿「描出とし ての造形」(チセック、1990,pp.174−236)の中に落書きに関する記述がある。そこには「今 日、子どもの芸術と呼ばれているものは、当時全く存在しなかった。学校では、子どもの 落書きは許されないばかりか、罰せられた。(中略)こうした悪さをやめさせるのに藤の鞭 を使うのが一番だった」(チセック、!990,p.174)とあり、この時代の社会全体の意識がう かがわれる。当時の社会背景や大人たちが持っていた意識が子どもの表現を否定していた

ことと同様に、現在の美術科指導者として生徒の表現特徴の見落としを行ってはいないか、

もしかすると生徒の表現を押しっぶしてはいないか懸念される。つまり、青年期前期に表 出する生徒本来の表現特徴を見逃している可能性があり、そういったことは指導者と学習 者の表現における認識の差異であり、その一端を図0−0−2・0−0−3に見るのである。各指導 者も事象として認識があるが、取り扱いつらく掘り下げていくことは容易ではない。しか し、r美術科のかたち」の混迷がもたらす指導観の大きな変容や小中連携を踏まえた新一たな 教育観の必要性が生まれている現状である。美術科の在り方や役割を追求し直し、指導再 考を必要とする時期にある以上生徒の状況の把握に努めることは当然といえよう。

 以上の3点が動機の中心となった事象である。これらは描画活動の本質に対する疑問で あり、解決に努めることで生徒の表現特徴との適合性の検討につながり美術科の教育観を 構築する研究につながることが期待される内容である。美術科の本来あるべき役割、意義 が何か追求し、目指すべき、また、あるべき「かたち」は何かを考えるための問題と考え る。筆者は保護者に「先生、おれは鷲峯の山(勤務校区に近い代表的な山)だったら見ない でも描けるぞ。小学校の時さんざん描いたからな〜。」とうれしそうに話された経験がある。

研究に取り組んでいると、ふと思い出す話である。その保護者が小学生時はどう思ったか はわからないし、その時の児童全員がこのような受け止め方をするとも思えない。が、地 域の同じ風景を何度も描かされることが後に「誇り」になるのならそれも造形美術教育の 役割なのだろう。そんな話ひとっとってみても指導者として「気が付いていない」、「掘り 下げていない」造形美術教育の役割や意義があると思えてくる。微力ながら、本来の、ま だこれからの「美術科のかたち」を掘り下げることに努めたい、そう考え研究を進めるの

(11)

である。

第2節研究の目的と方法

 本研究は「単調で画一的な描画活動に内在する創造性・発想喚極性などの有用性につい ての検証と、美術科における指導方略に必要な認知的視点についての提案」である。「パタ ーンア』ト表現」指導方略としての有用性と課題の検証。また描画に関する生徒の表現特 徴、特性の検証と苦手意識の詳細に潜む認知の混乱の確認。そして指導混迷の要因となる 問題の所在の考察と整理。指導構造を認知構造に置き換えたときの問題改善性とその効率 性の確認とそのことによる認知的視点の必要性と有用性の提示。これらを通して「美術科 のかたち」の混迷に向けた指導の在り方とその視点を示すことを目的とする。

 なお、美術科における表現活動は多岐にわたり、全活動牽網羅することは難しいと考え、

本研究においては研究・調査対象を描画活動と限定した。

 研究の方法は次の通りである。はじめに単調で画一的な表現活動となる「パターンアー ト表現」実践事例と事例作品から推察される優位性、有用性の抽出を行う。これを検証事 項とし、第1学年を対象にした実技による2回の実践調査を設定し確証化を図る。また、「パ ターンアート表現」の応用性と表現能力の定着性の検証として、第3学年を対象に「靴の デザイン」による縦断調査を行う。この調査では先の「パターンアート表現」において学 習した内容と習得した知識・能力の第3学年における表現活動に与える影響と表現停滞傾 向に対する有用性の検証を行う。同時に一「(テーマ設定内での)自由発想表現」の条件設定 による比較調査から検証される「パターンアート表現」の優位性を検証する。そして、そ の検証結果も含む、「自由発想表現」と「パターンアート表現」のそれぞれの構造と特性に 内在する情報処理システムの構造性に着眼し、表現活動に対する認知的視点を持ったカテ ゴリーと一してボトムアップ型表現活動とトップダウン型表現活動を設定する。そしてこの 視点による検証で描画活動の認知的構造による問題整理とその解決に向けた検証・考察に つなげる。次に意識調査に基づき、生徒の描画に対する苦手意識に内在する認知的混迷と 美術科の指導観の成り立ちによる混迷に着眼し、問題の所在を考察する。そしてそれらの 問題が認知的視点不在に関係することを指摘し、その必要性を述べる。また、認知システ ムについて説明し、「パターンアート表現」活動や描画活動の構造との関係性を示し、表現 活動の類別を行い検証の視点の詳細化と焦点化を図る。そして、それらの視点から「パッ ケージデザイン」による実践調査を用い、「パターンアート表現」の題材としての有用性と 表現活動の構造性に対する、認知的視点による表現活動解釈の意義を検証し導き出す。そ

の検証された有用性により「美術のかたち」の混迷に対する指導の視点としての整合性を 示し、指導再考の一助となる視点として提示する。

 第1章では、「パターンアート表現(1)」による実践事例から作品事例の分類と考察を示 す。次に「靴のデザイン」による縦断的調査により生徒の表現停滞傾向性とその事例に対 する「パターンアート表現」の有用性の確認、学習内容の応用性、また、「自由発想表現」

(12)

との比較から考察できる優位性の確認を行う。r靴のデザイン」による調査においてrパタ ーンア』ト表現」、「自由発想表現」の条件設定を行い、実技による実践調査と意識調査を 行う。調査内容は生徒の意見、表現にもとづく、双方の表現の優位性と劣位性、特にrパ ターンアート表現」の表現停滞傾向に対する有用性に対する検証となる。優位性・劣位性 を視点に分類・整理を行い、次調査の調査項目としてもまとめる。rパターンアート表現」、

「自由発想表現」のそれぞれの活動の特性や関係性から「ボトムアップ型表現活動」、「ト ップダウン型表現活動」を設定し表現活動のカテゴリー化を図り、新たな視点で表現活動 の構造性検証につなげる。第2章では形式陶冶・実質陶冶の不分立性による問題に翻弄さ れる「美術科のかたち」に着眼し、生徒の認識と美術科の成り立ちにみられる混迷を取り 上げ、指導再考の必要性とボトムアップ・トップダウン型表現活動の視点の必要性を述べ る。生徒の認識については、予備調査を含め3回の意識調査を行い、生徒の苦手意識の混 乱状況をとりあげ認知的視点で教育観の問題を指摘する。美術科の成り立ちにおける混迷

については、文献、学習指導要領内容より指導観の変容や不均一性を取り上げる。

 第3章では、認知システムの詳細を述べ、その構造説明を行う。ボトムアップ型表現活 動、トップダウン型表現活動の構造を認知構造と照らし合わせ、関係性を解説するととも

に特性を定義づける。そして、表現活動をボトムアップ型表現活動とトップダウン型表現 活動に分類し詳細な内容を確認し視点の明瞭化を示す。第争章では3章までの結果や考察 の検証として、調査内容を再構成して実践調査を行う。第1学年においては「パターンア ート表現」による有用性確認、また第3学年においてはrパッケージデザイン」によるボ

トムアップ・トップダウン型表現活動の比較調査を設定する。「パターンア』ト表現」では 実技による実践と調査用紙による調査活動を設定する。「パッケージデザイン」も同様の方 法となる。意識調査については一覧表にまとめ意識の変容などを整理する。終章では調査 結果の内容をまとめ、「パターンアート表現」の題材としての有用性とボトムアップ型表現 活動とトップダウン型表現活動の優位性・劣位性をまとめ、美術科のこれまでの教育観に 対する新しい視点として考察をまとめる。

(13)

【実践調査概要図】

H22,12月〜 実施 H24−5月〜 実施 H24,8月〜 実施

一二汽へ......◆

表現(1)ノ     〆ノ

 ■一I一札一・ 岬 .・…  .・

    :調査項[の抽出:

       \、

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: 調査項[の検証  :

証)

     〆

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調査項〔の検証

■  一 叶i = 一出

 ミ■ 至

■  #

、・◆

造形美術教育に関する意識調査

     峠.、..、.、.一、」.㍊..,、  、..、.、一。.機一H 一I

   : 表現に対する苦手意識の検証

      美術科の成リニ虫ち・二       量る混迷

一・o..一、一、一メ紅

教育観における認知の混迷

H2へ8月〜 実施

rパッケージ デザイン」実良調査 rパターンアート表現」

条件実践調査

「自由発想表現」条件

 縦断的調査による 優位性・劣位性の検証

 比較調査による 優位性・劣位性の検証

 比較調査による 優位性・劣位性の検証

10

(14)

第1章 作業的表現活動の有用性と課題

第1節 「パターンアート表現(1)」 実践内容及び結果

 本研究で活用していく実践事例は平成22年(2010)に「パターンアート表現」6活動として 授業に取り入れたものである。内容は「同一形の連接・配列・集積・反復による描画活動」

であり、「つなぐ」、「並べる」、「繰り返す」といった生得的な表現活動が創造に関する有用 性を持つと考え導入を試みた。これまでには見られない生徒の取り組みの様子や多様な表 現に関心が高まり、平成24年(2012)に縦断的調査を行うなど研究を継続し検証を深めてき た実践事例である。以下、実施内容と結果について記述する。

第1項 実践内容

 「パターンアート表現」は連接・配列・集積・反復による表現特徴を強くもつ作品表現 方法として、また、造形美術教育や一般的な作品制作、商業デザインにおいて活用状況を 確認でき、その表現効果の高さがうかがわれる。指導活用例としては、黒木健(秋田県立高 等学校教諭)の実践「うじゃうじゃ絵」、初田隆(編著)(2012)『新!これだけは体験させた い 絵を描く材料』日本文教出版(実践事例p.5,p.8,)、古山浩一(2008)『楽しい万年筆画 入門』描画方法の紹介7を確認している。また、「イメージ生成手法」(金子、2003,p.55)

として「数量の過剰化」とする解釈、「繰り返しの性質」(Reas,Casey.LUST,C,M.、2011,

p.44−53)としてオプティカルアートやCG(コンピュータグラフィックス)などにも表現効 果として注目され、取り上げられている。もちろん表現効果だけに着目するのではなく、

活動が内包する教育的有用性に着目しており、以下の5点を表現活動の特性と考え、検証 の視点とした。

 ①オートマティズムによる描画でなく生徒がコントロールして描き進めることができ    る

 ②作品完成とする終着点がなく、作品完成段階を生徒の判断に任せられるため生徒のぺ    一スや表現能力に合わせて活動できる

 ③視覚的な表現効果を味わい、達成感を体感できる

 ④描画活動の感喜、活動のわかりやすさが苦手意識の解消や描画の多様性の気づきにっ    ながる

 ⑤表出した形の刺激により「見立て」など高次の表現に展開できる

①についてはジョンストンが行ったrスクリブルの発展」による描画表現活動との共通点

6授業では『ごちゃgo.h一。rt(ごちゃごちゃアート〕」と名付けて実施した。本論では順一形の『連接・配列・集積・

反復』による描画活動」の事例として扱っている。

7本研究の事例実践内容は主に、古山浩一(2C08〕『楽しい万年筆画入門』世出版社pp.50−65の描画方法を参考にしてい

る。

      11

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と相違点に対する考察による。ジョンストンは「11歳以後」として中学生以後の美術教育 の理念と実践を具体的に提唱した数少ない人物である。『思春期8の美』(ジョンストン、1958)

において「子供の世界観には大変に大きな変化が起こる。だから彼らの表現形式に変容が はじまるのは避けがたいことなのである」(ジョンストン、1958,p.28)と述べ、生徒自身 の表現様式への不安や失望、興味の欠如から表現の行き詰まりがあることを説明する。そ

して、生徒と生徒表現を理解した上で指導を行うことが創造性の向上につながることを主 張している。④で述べる「苦手意識の解消」についての見解はこの点に共通する。そして、

ジョンストンは実践の1つとしてスクリブルをもとにした描画活動を記載している。幼児 期に見られるなぐりがきの重要性を説明し、子どもから成人への時期に見られる描画表現 停滞の打破と想像力の回復における有効性を述べている。

 スグリンフリング[スクリブル]は彼の情緒を無意識のうちに開放する。そうしてスグリンフリング[スクリ ブル]の発展にしたがって彼は進歩的な方法についてのセンスを獲得する。これは、子供のイメージ・メイ キングの(作像活動〕から大人の創造活動へとっながっていく、橋渡しの時期を成す」(ジョンストン、1958,p.74−75)

 題材についての理念に共感でき、生得的表現活動からの高次の表現活動への発展という 視点において指導参考になった内容である。ただ、スクリブルの意図を生徒に理解させ、「情 緒の解放」の状態に持ち込むためには生徒・教師間の信頼関係や幅広い知識と経験・探究 が必要である。ジョンストンの意図をどこまで正確に理解し実践できるか問題であり、例 えば、なぐりがきの意図を生徒が理解できない場合は、指導者の指示に従った活動となっ てしまう。本実践は形の描写からの活動であり、「生徒の意志」で描き広げていく要素を強

く持つことになり、ジョンストンの題材とは、身体性と描画のコントロール性の相違をも つと言える。ジョンストンの意図は造形遊びの身体性に視点を置いた活動に類するもので あり、本事例実践は手のコントロールの楽しみと形の表出という表現効果への気づきに重 要性を置いたものになる。幼少期に感じる描画表現の喜びではなく、青年期前期に感じる 描画表現の喜びの体感を目標と考えている。

 ②については造形遊びとの共通点に対する考察である。作品完成としてのプレッシャー が少なく画用紙の矩形に対するレイアウトも生徒の判断に任せられるため目標を生徒自身 で設定できるなど表現に対する自由度が高い。

 ③、④は試行段階の生徒の反応と予想からの考察である。集積による表現効果の認識は 希薄であり、特にユ年生ではその傾向は強い。「描画=写実」と受け止めている生徒も多い と考え、描画表現に対する認識を改善する必要を感じた。「痕跡を残す」、「色彩の表出」に 対する感喜や驚きといった、描画活動が持つ根源の魅力を再確認することができる。

 ⑤については、生得的活動でありながら表現の発展性をもつことの説明となる。類似題 材として「点描表現」を考える。しかし、双方には創造性に関しては差異が考えられる。「点

目年齢区分に11犠があるが、ここでのr思春期はr青年期前期と同義である。

       12

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描表現」はハーフトーン・質感としての効果的技法にとどまるが、「パタ』ンアート表現」

は模様やプリントデザインなど用途拡大要素が強く発展性が高いと言える。

 これらの要素に注目しr描画活動に対する認識の見直し」やr苦手意識の改善」を重点 とした授業に取り組んだ。

・実践内容及び指導概要

① 実施学年 中学校第1学年123名

② 実施日時 平成22年(2010)12月〜平成23年(2010)3月

③ 実施場所 鳥取県倉吉市立A中学校

④ 題材名 rごちゃgoch−art(ごちゃごちゃアート)」(全15時間)

⑤ 指導目標

   ・描画表現の効果や楽しさを体験し、「描画」対する認識を変え、苦手意識の改善、

    表現への自信の向上につなげる。

   ・表出した形から発想を広げ自己表現の拡大を行う。

⑥指導上の留意点

      基本となる形の繰り返しに飽きて線が雑になってしまう可能性があり、線描      は丁寧にすることを指示する。集中力の途切れが見られた場合、基本となる形      を大きく描いたり余白をつくることで解消を図る。

指導概要

第1次 3角形・同一形で「つなぐ」、「並べる」、「繰り返す」描画表現に取り     組む(2時間)

第2次 基本形による連接・配列による模様づくり(6時間)

第3次 立体表現として紙コップヘの応用(2時間)

第4次テキスタイルデザインとしてT一シャツヘの応用(5時間)

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授業内容の概要

  ☆3角形・同一形で「つなぐ」、「並べる」描画表現に取り組み、多様な表現が生まれ   ることを確認する

   ・1時間目

   03角形で「つなぐ」描画表現に取り組む     ※3角形のっなぐ箇所、大きさの制約はない

   ○相互鑑賞により、3角形を「つなぐ」描画することだけでも多様な表現ができる   ことを

第  確認する

!  0ハッチングやコントラスト、模様で表現を高める 次

   ○相互鑑賞により表現の高まりを確認する。

   ・2時間目

   ○前時学習をふまえ、自分の描きたい形でrつなぐ」、r並べる」描画表現に     取り組む

    ※つなぐ箇所、大きさ、並べ方の制約はない    ○相互鑑賞により、進行状況と他の表現の確認を行う

第2 次

☆画用紙に自分の描きたい形で「つなぐ」、r並べる」描画表現に  取り組む

○基本形の種類や形は随時相談する

弟3 次

☆紙コップによる表現第2次の学習を発展させ独自の表現となるギフトボックス  デザインを行う。

第 ☆T一シャツの模様を考え、ペンで描いていく

次  ○「つなぐ」・「並べる」描画表現を基本として模様を描いていく4

 前年度から選択授業に取り入れ題材化の検討を行っていたが、学年単位の授業として取 り組んだのはこの年度が初めてであった。そのため指示不徹底など反省すべき点があり、

省察をここに記す。この「つなぐ」、「並べる」描画による表現に対する反応を確認しなが らの授業展開であったことと作品の質を高めさせようとする気持ちを捨て切れず保持して いたことから、制作に対するアドバイスに混乱をもたらした。生徒は同一形だけでは物足

りなくなり、多種の形の使用を考えるようになる。その時点で基本形の数の制限をすべき

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か迷った。結果、「同じ形の描画」と「複数の形での描画」と生徒の相談に応じながら指示 を行った。この点では同一形の「連接・配列・集積・反復」としての作業的表現活動と、

自由発想表現との関連性について検討不足であり指導方針の曖昧さを反省した。また、画 材としてネームペンの黒色を使用したが、他の画材の使用も考慮すべきであった。そして

T一シャツを支持体にしたテキスタイルデザインの段階では、生徒の自己表現の描写を希 望する生徒も表れ、既存のキャラクターや、生徒が好むT一シャツデザインの模倣も見ら れた。指示した描画活動の範囲内で自分の描きたい形を工夫する生徒もあり、「パターンア ート表現」の応用表現についての考慮が足りなかった。反省すべき点や検討課題も生まれ たが、この取り組みにおける描画への没頭性や表現の多様化が確認できた。没頭性につい ては、生徒の目配欄に「達成感の認識」に関する記述があったことや制作の様子による。

しかし、アンケートによる一斉調査ができなかったため、次年度以降の実践調査で確認を 繰り返した。本論では第4章の平成24年における実践調査から生徒の認識の詳細を示して

いる。表現の多様化については、重複する表現が少ない事と個性的表現が見られ、主だっ た作品を次へ一ジ以降に掲載する。ただ、「パターンア』卜表現」による多様な表現表出は 確認できたものの、苦手解消や表現力の習得・伸長などについてははっきりせず、検証の 必要性があった。そこで同生徒が3年次になった時点で第2節に示す生徒縦断的調査によ

りその検証を行った。

第2項 作品事例分類による考察

 掲載する事例作品はrパターンアート表現」第2次の活動におけるr平面表現」である。

作品の分類は筆者の主観的な判断によるものである。作品によっては多様な表現の重複も あるため、とらえ方次第で、1つの作品表現が分類項目の幾つかに該当する事例も生じるか と考えるが、厳密な区分けを目的とはしていない。分類の目的は、多様な表現性の説明と 次調査に向けた表現の傾向の確認である。「表現の多様性」と「表現に対しての指向性」を 確認することで指示・発問の内容構成の考察材料とした。

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・同一形による表現

 指示内容に他の表現要素を加えず「つなげる」、「並べる」、「繰り返す」による描写活動が 徹底された表現である。表現の変化が少ないことで、集積・テクスチャーとしての表現効果 が強まっている。

図1−2−1同一形による表現

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・同一形による表現に他の表現要素を加えた表現

 「つなげる」、「並べる」、「繰り返す」による表現にコントラスト、模様・柄を加えた事例。

形の表出の感喜だけでなく、視覚的な表現効果の感知をねらい指示をしている。

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図1−2−2 同一形による表現に他の表現要素を加えた表現

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・図式的・主観的表現

 顔や動物、また物語の展開も見られる表現が特徴的である。金子が図式的表現について述 べるrほとんどが『何が何々をしているところ』の表現となる」(金子、2003,p.97)、また、

「作者がその話の場面にいた場合は作者の姿も描きこまれる。描かれなくても、その場面に 入り込んだような気持ちになって描いている」(金子、2003,p.98)という文章がこれらの表 現を言い当てていると考え分類項目として設定した。「図式的」という用語は絵画表現の「発 達段階」として使われる言葉でもあるが、ここではr表現が幼い」としたとらえ方ではない。

視覚的な表現の追求ではなく、キャラクターの登場など主観的な表現のおもしろさが目立っ ている事例である。

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図1−2−3図式的・主観的表現

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・表現要素混在による高次の表現

 画面構成と表現効果の見通しを持ち、学習課題を表現目標にバランスよく取り入れた事例 である。矩形に対しての画面構成、柄・模様としてのまとまりに、これまでの経験、視覚的 なバランス、好みなど表現に関する知識と経験が生かされていると思われる事例である。活 動から無意識に表現が広がるのでなく、表現・構成について計画的な意図をもって表現を完 成させている。

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図1−2−4 表現要素混在による高次の表現

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・図と地(ネガポジ)が意識された割列

 地(ポジ)を利用することで形を表出させていることから図と地のバランスを意識した描 画である事例といえる。この効果に対する他生徒の反響は強く同表現を試みる生徒も多かっ た。制作中にネガポジの混乱が生じ計画の必要とする高次の表現であるが生徒が自発的に取

り組み表現できた。

図1−2−5図と地(ネガポジ)が意識された事例

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・規貝一」的な羅列による文様また、幾何学模様の事例

 規則性・法則性に沿って表現している事例である。この表現はあまり見られず中学1年生 の段階では文様や幾何学的な表現を好まない傾向があることを示唆する。

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図1−2−6規則的な羅列による文様また、幾何学模様の事例

第3項 実践結果考察

 以上の分類と生徒の反応から「パターンアート表現」における没頭・熱中状態の形成と表 現の拡がりを確認できた。このrパターンアート表現」での活動状況は、完成作品をイメー

ジしない描画活動から始まるものの、発想の喚起による作晶化に向かう高次の表現への拡が りがみられる。これはボトムアップ型からトップダウン型の表現活動へのつながりとみるこ とができる。詳細については第3章で述べるが本論でいうrボトムアップ型」はrボトムア ップ処理」の内容を指し、情報処理システムとしての人間の認知システムでの、表現の取り 扱い認識や概念形成の過程に視点をおいている。この場合、作品完成を意図せず行う描画活 動が該当する。このボトムアップ型の表現活動を繰り返し作品制作することで、各生徒の中 で作品表現としての認知的枠組みが構築されていく。また、「ボトムアップ型」に対して「ト ップダウン型」という語句を用いるが、これはrトップダウン処理」の内容が該当する。ト ップダウン型の表現活動とは構築された認知的枠組みに影響される表現活動を意味し、指導 者がもつ意図や目標が反映、影響する表現活動、また生徒自身がイメージをもって表現活動 を行う段階を示す。そしてここから「ボトムアップ型の表現活動」、「トップダウン型の表現 活動」のそれぞれを「ボトムアップ型表現活動」と「トップダウン表現活動」とし論述を進 める。「パターンアート表現」が内包するボトムアップ型表現活動は、作品事例から分かる ように、単純な描画活動でありながら多様な表現の可能がみられその有用性を期待させる。

また、このような表現をトップダウン型表現活動でここまでの表現をさせることができるか という疑問も生じてくる。テキスタイルデザインなどの題材では完成イメージを言語だけで 教授することは容易ではなく、参考事例から表現様式を読み取らせるなど模倣することにな

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ってしまう。トップダウン型表現活動では、課題に対する追求や工夫による表現・発想能力 の伸長が期待できる一方、発想が浮かぱず表現停滞傾向をもたらす要素も含む。そのことに 対して、「パターンア』ト表現」は本来生徒が持っている造形活動の「描く」楽しさや意義 を再確認しながら「作品制作を目的と十る活動」へ移行できることになる。それは、完全で はないが形式陶冶と実質陶冶の分化による指導の明確化が成立し、生徒が白身の表現状況に 合わせて制作を工夫できる状況を生む。これは形式陶冶から実質陶冶へ移行する、生徒の成 長に沿った指導内容の形成であり、2つの陶冶の分化・移行の学習構造は美術科の諸問題を 解消する可能性として期待できる。さらに描写活動に対する適合性や高次の表現への基盤と

なる可能性は、新しい指導方略の根拠につながると考えた。そこで、実践結果から活動の特 性を掘り下げ、実践としての優位性・劣位性の確認として縦断的調査を設定し、「パターン アート表現」と「自由発想表現」における描画活動に対する表現と意識について比較調査を 計画した。

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参照

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