社
会系教
科教育学会
『社会系教科教育学研究』
第13
号 2001
(pp.61-70)
行為の反省過程としての歴史学習
一高校地理歴史科世界史B小単元
「北米植
民地における魔女狩
りと民衆意識」の場合一
The Organization of History Lessons as the Process of Reflective Monitoring' of the
Behavior : In the Case
of the Unit
‘Wi七ch-hunting
case
and the People's Consciousness
in the Colonial New England
≒n the Senior High School Subject
“World History
(B)
”
梅
津
正
美
(鳴
門教
育大
学)
平
井
英
徳
(熊本
県立松
島
商
業
高等
学
校)
I
問題意識
−なぜ
「行為の反省」
を原理とす
る
歴史学習が必要か一
筆者は
,学校教育における歴史学習を,厂
歴史
を通
じた現在理解
」を意義
とする匚
社会科歴史学
習
」と
して性格
づけた
い
O
「 ̄
歴史を通
じた現在理
解
」は
,3つの
内実
をもつ。第
1に,社会構造の
理解
,第
2に
,社会
形成の主体
と
しての人間理解
,
第3に
,社会
問題の理解
,である。
しか
し一方で,
歴史授
業の構成や実践
レベル
での子どもの認識形
成の実際は
,研究者な
り実践者が保持
している
Γ社会と人間の関係の捉え方とその分か
り方の論
理
」
,すなわ
ち社会認識論によ
り異なっていよう。
筆者は
,これまでに有
力な
「 ̄
社会科歴史学習」
論を
,内在する社会認識論に着
目して,大き
く2
つの類型において整理
している
。
第工
の類型は
,匚
行為の解釈」を原理とする歴
史学習論である
。この類型では
,厂
社会」と匚
個
人
」の関係を,
「個々人の意
図的
・目的的な行為
によ
り社会が構成
される
」と考
える。こう
した社
会認識論を基盤に
,一般に,学習内容は,歴史を
生きた人間の
目的追及活動
(行為)と社会的意味
を紿に構成
され
,学習過程
・方法には
,行為の追
体験
と意味連
関の解釈が採用
される
。そ
して,学
習を通
じて育成がめ
ざされる人間像は
,社会が
あ
らか
じめ保持
している匚
価値
(公共善)
」を受容
し
,それに基づいて行為できる匚
社会化された
生
活者
」である。
「’
小学校学習指導要領
・社会
」に
依拠
した歴史学習や
安井俊夫氏の
中学校歴史教育
実践1
)
が
,この型の典型例
である。
第2の類型は
,匚
社会
(構造)の分析」を原理
とする歴史学習論である
。この
類型では
,匚
社会
」
と冂
固
人
」の関係を,匚
社会は
,超個人的なシス
テム
であり
,個人の諸行為に影響
し,これ
を制御
している
」と考
える。こう
した社会認識論
を基盤
に
,学習内容は
,特定の
時空間に
ある社会構造
を
説明す
る理
論
(仮説
)
を紿に構成
され
,学習過程
・
方法には
,事象の分析が
採用
される。そ
して,学
習
を通
じてめ
ざされる人間像は
,科学的社会
(歴
史)認識能力と探求技能
を保持
した匚
合理的
・批
判的な社会科学者
」である。森分孝治
氏の匚
概念
探求学習論」2
)
や原田智仁氏の匚
理論批判学習
」3
)
が
,この型の典型例である。
一般に,両類型は
,二元論的
・相互批判的に把
握され
てきた
。第工
の類型に対しては
,匚
授業者
が選択
した歴史上の人物を通
じて
一元的価値観
を
注入
している
」
,匚
子
どもに社会構造の把握が十分
にできていな
い
」な
どの批判がなされ
てきた
し,
その裏返
しとして第2の類型に対
しては
,厂
科学
の論理が先行
して
,子どもの認識の論理が軽視さ
れ
ている
」
,匚
個人に対する社会構造の拘束
力が強
調され
るため
,子どもに決定論的歴史認識
を形成
しやす
一方で
い
,両類型は
」といった批判がなされ
,前者が
「 ̄
行為にね
てきた。
ざす社会的
しか
し
価値
」
,後者が匚
社会構造」と社会認識の視
点は
異にするが
,いずれ
も匚
安定的な社会の存在」を
前提に成立す
る学習論として共通項
を保持
してい
るのである。
これ
に対
して,筆者は
,厂
社会」
(特に
「現代社
― 61
会
コは
,匚
多元的な価値基準の存在」を前提に
,
厂
状況に応
じてゆ
らぐ社会
」と
して捉えている。
私たち匚
生活者
」は
,政治
的
・経済的
・社会的
・
文化的に
あらゆる営み
をする行為者4
)
と
して社会
に存在
している
。しか
し,その行為の決定は,必
ず
しも認識の
合理性や
一貫
した価値
判断に
よらず
,
自己の
時々の
生活
目標や問題関已
ヽ
と社会が
自己に
課
して
くる諸条件に照
らして
,関与す
る社会を選
択
した
り
,比重を変えた
りしなが
ら,状況に応
じ
て為
していよう
。ここに言う厂
社会」と匚
個人」
の関係性の捉え方は
,
「社会は個人の行為や価値
観
を規
制す
るが
,その
一方で
,個
人の
行為に選
択
・
利用され
,変化
していく」という相互作用的な関
係性の見方に立
っている。5
)
匚
ゆ
ら
ぐ社会
」における行為の決定には
,自己
の掲げる行為目標への不安や他者の行為
とのぶ
っ
か
り合いによって常に葛藤が伴うため
,こうした
不安や葛藤から逃避
しよ
うとする者は
,小
さな自
己に対
して大きな社会が提示する
一元的な価値基
準に
自己の行為
を準拠
させ
てい
くか
,個々の
行為
を状況の
中で合理化
してい
くことに安住
していく
が
,その
ことに
よって,自己を規制す
る社会構造
や社会的価値基準に対す
る反省性が次第に失われ
ていっているのが現状では
なかろうか
。
こうした社会観の
もと
,筆者は
,社会科授業を
通
じて育成
した
い人間像に
,日常生活に
おいて状
況の
中で選
択
した自己の行為
を常にチェック
し
,
再方向づけ
していこうとする匚
行為のモニタリン
グ能力
」
「換言すれば
,匚
行為のメタ認知能カ
コ
をもった匚
反省的な生活者
」モデルが必要である
と考える
O
「反省的な生活者
」を育成するための
学習原理が匚
行為の反省
」である
。この学習原理
は
,ミク
ロな行為とマク
ロな社会
を相互作用
関係
にあるもの
と
して捉
える社会認識論を基盤にする
ことか
ら
,従来二元論的に捉えられ
てきた匚
行為
の解釈
」と厂
社会の分析
」を授
業レベルで有効に
結び付ける視座
を提供
しよう
。またそれ
は,生活
者の行為に影響す
る社会構造や社会的価値が歴史
にね
ざ
して形成
され
てきていることを考慮すれ
ば
,
特に
「 ̄
社会科歴史学習
」おいて有効であろう。
以上の問題意識に基づき
,本小論は
,匚
行為の
反省過程と
しての歴史学習」の授業構成論を明示
し
習
,それ
を
フィー
に
基
ル
ドに
づ
く教
提
示す
材
開
発例
る
こ
を高等
とを
目的
学校
とす
世界
る
史学
。6
)
皿
授業構成論
1.内容構成論
内容構成のための
基本的な考察課題は
,特定の
時代における
「生活者の行為
」と
「社会」の匚
相
互作用関係
」の具体的な構成の仕方にある
。これ
に対する筆者の概念操作は
,次の通
りである
。
特定の
時代における匚
生活者の行為と意識の
あ
り様
」を,
「社会構造」と
「文化」との
「 ̄
相互作
用関係
」として構成する。匚
社会構造」は
,社会
集団
・社会階層
,経済組織
,政治制度
,法律体
系,
科学技術
などを要素とするシステム
化
され
た制度
・
装置群とそれ
らの相互連関のパタ
ーンである。
「 ̄
文化
」とは,一定の人々の経験知として共有さ
れた価値観
・規範
,基層信仰
,慣習などを要素と
す
る特定の社会の独
自の性格
を形成する領域であ
る
。また,
「相互作用関係」の具体的構成は,次
の
ようである
。まず
,歴史主体である
「生活者」
を
,多様
な人種
・民族集
団や
,女性と男性
,若年
者と老齢者
,中産層
と貧
困層
,エ
リー
ト層
とノン
・
エリ
ー
ト層など多様
な社会集団
・社会階層に属す
る人間か
ら選
択
し構成する
。歴史内容は,多様
な
生活者が
「 ̄
社会構造
」と
「文化」が生み
出す諸条
件の規定性や統制の
もとで
,それ
らを選択的に利
用することによって
,状況に応
じて生み
出
した複
数の異なる行為の形態
とその意味
を明らかに
し
,
さらに複数存在する行為の葛藤
・せめぎあいを通
じて
,生活者を取
り巻
く厂
社会構造
」や厂
文化」
が
どの
ように安定化
した
り
,あるいは逆に流動化
したのか
を把握
していけるよう構成する
。
内容構成の
基本枠組み
となる
「生活者の行為
」
と匚
社会
」との関係性
をモデル
化
して示
したもの
が
図
1である。
学習主題の選択は
,主題が
こう
した内容構成の
基本枠組み
を満たす
とともに
,現代社会において
も生活者の
行為と価値観の葛藤
・対立にね
ざして
類似の
問題状況
を提起
しており
,子
どもがそう
し
た問題状況と対峙することで自分の
行為基準を揺
さぶ
のである
られ
,問題解決への指
ことを基準に行うこととする
向性を高め
O
ていけるも
一62
−
社
会
構造
図
1.
「生
活
者の
行
為
」
と
「社
会
」の
関係
モ
デル
2。学習過程論
学習過程は
,基本的には次の7段階をふむもの
とする
。①特定の時代
を生きた
多様な生活者の行
為内容
,およびその行為の基盤となる意識や価値
観を追体験的に解釈する
。②個別
・複
数の行為
内
容と意識
・価値観
を比較
・対照す
る。③
生活者を
取
り巻
く匚
社会構造
」と厂
文化」の連関パター
ン
を分析す
る
。④個別
・複数の行為内容
を,当該時
代の
「社会構造
」と匚
文化」の連関パター
ンに位
置付
け
,行為
を生み
出
した諸条件を解読する
。⑤
学習者
自身の
当該時代の生活者の行為に対する評
価内容
と評価基準を構成する
。⑥学習者自身の評
価内容
と評価基準を他の学習者の見解とのせめ
ぎ
あいを通
じて批判的に再構成する
。⑦
現在み
られ
る行為
と社会の
関係性をめ
ぐる類似の諸問題の解
決に向けて必要な新たな価
値基準
を選択的に導
くO
この
7段階は
,
I:
厂
歴史に
おける行為
・社会
構造
・文化の相互作用関係の事実認識過程」
(①
②③④
)→
H
:
匚
学習者自身に
よる歴史的行為の
評価基準の再構成の過程
」
(⑤⑥
)→Ⅲ
:
匚
現在
を生きる生活者と
しての
自己の行為の再方向づけ
の過程」
(⑦)へ
と展開する匚
行為の反省過程」
としての歴史学習過程である。
3.学習方法論
学習過程
Iの学習方法は厂
探究法
」である
。そ
の適用過程は
,生活者の行為や意識の
あり様
を彼
らの
手紙
・手記
・物語あるいは
日常物質資料な
ど
を通
じて帰納的に叙述する過程か
ら
,その
ような
行為が展開
した原因
・根拠
を問う発問と資料
を用
意
し
,その
回答を厂
社会構造」と厂
文化」の特質
か
ら子どもに判断させ引き出
してい
く過程へ
と展
開
して
い
く
ことに
な
ろ
う
Oその
場合
に
,学
習過
程
Iを構
成す
る
学習
段階①
②
は
特
に
,生
活者の
状
況
に
おけ
る行
為
とその
背
後
に
ある意
識
を子
どもが
共
感的
に理
解
して
い
く必
要
かお
る
。その
た
めの
具
体
的な
学習
方法には
,匚
行為の
物語の
読み
取
り」が
通
常
よ
く用
い
られ
るが
,
さらに厂
ロー
ル
プレイ
」
匚
シ
ミュ
レー
シ
ョン
」と
いった体験
的
・活動
的な
方法の
選
択
も
有効
で
あ
ろ
う
。
学
習過
程
H
・Ⅲの
学習
方法
は匚
討論
」
であ
る
。
討論
は
,歴
史
的過
去
お
よび現
在の
行
為
と
問題
と思
わ
れ
る
事態の
評価
基準
を互
いに
表
出
し
,意
見の
せ
め
ぎ
あい
を通
じて子
ども
自身が
行
為の
評価
基準
を
再構
成
して
い
くの
に
有効
な
方法
で
あ
ろ
う。
Ⅲ
授業構成の実際
上述の授
業構成論に基づ
く教材
開発例
と
して
,
高校地理歴史科世界史
B小単元
「北米植
民地に
お
ける魔女狩
りと民衆意識」を以下に提示する。
1.授業計画
(1)小単元の学習
目標
知識
目標
次
の知識内容を理解する。
「北米のイギ
リス植
民地に
おいて
,ヨー
ロッパ
よりも遅く魔女狩
りが広がった背景には
,対フラ
ンス戦争の激化やインディアンの
襲撃
,疫病流行
な
どの
諸事件
,植
民地の社
会制度や社会集
団関係
,
それ
らに起
因す
る不安定な民衆意識があった
。そ
のなかで
一般の
民衆は
,自らの判断に疑問を持ち
なが
らも,魔女狩
りを許容
していった
。
」
能
力目標
魔
女狩
りと当時の
一般
民衆との関わ
りを現代に
投影することを通
じて
,自己の
日常的な行為と社
会との関わ
り方を反省的に吟味
できる
。その
こと
によって現在の社会の
中に問題
点を発見
し
,克服
の方策
を自分な
りに展望できる
。
(
2)小単元の計画
(4時間構成)
パー
トI:ニュー
イングラン
ド植民地の魔女狩
り
事件と社会
(2時間
)
パ
ー
トⅡ
:魔女狩
りと民衆の
関わ
り
(1時間)
パー
トⅢ
:現代の魔女狩
りと私たち
(1時間)
(3)大単元における位置
本小単元は
,大単元
「アメ
リカ独
立革命への
道」
― 63
( 7時 間構成) に,以 下 の通り 位置づ け られる。
① 北米 の植 民地化 と13植民地 の成立 ( 1時 間)
② ニュ ーイ ングラ ンド植民地 め魔女 狩り事 件 と
社会 ( 2時 間)
③ 魔 女狩 りと民衆 の関 わり( 1時間)
<第1時>
④
⑤
⑥
ぐ
魔 女 狩 り 事 件 と 私 た ち ( 1 時 間 )
ア メ リ カ 植 民 地 の 反 抗 ( 1 時 間 )
ア メ リ カ 独 立 革 命 け 時 間 )
4) 小 単 元 の 展 開 過 程
匚教 授 計 画 書 ( 試 案 )」 と し て , 以 下 に 示 す 。
れ パート口
教 師 の 指 示 ・ 発 問 ・ 説 明 教 授 ・ 学 習 活 動 資料 生 徒 の応 答 ・ 学 習 内容 導 入 0 学 習 の 視 点 と 学 習 課 題 の 確 認 O。 導 入 0-1. 人 間 の 行 為 と 社 会 と の 関 係 を , 今 君 た ち が 着 用 し て い る 制 服 を 例 に 考 え て み よ う。 君 た ち の 中 に は, 自 分 な り の 解 釈 に し た が っ て 制 服 を 改 造 し て い る 者 も い る。 そ の 背 景 に は メ デ ィ ア の 発 達 に よ っ て , 都 会 の 流 行 が 情 報 と し て 全 国 に 発 信 さ れ て い る こ と も 影 響 して い る で あ ろ う。 日 本 の経 済 的 発 展 に よ っ て , 学 校 で の 服 装 に費 用 を で き る だ け か け ま い と し た 制 服 の 意 義 も 徐 々 に失 わ れ つ つ あ る 。 ま た同 様 に, 制 服 に よ り 学 校 と い う 集 団 と し て の 秩 序 を 保 と う と す る 意 識 も, 個 性 尊 重 と い う 意 識 の 広 が り の な か 揺 ら い で い る。 こ れ を 資 料 1 の 図 に 従 っ て 考 え て み る と, 制 服 の 着 用 と い う 「 行 為 」 は , 国 民 の 経 済 水 準 や 学 校 制 度 な ど 社 会 の し く み ( 社 会 構 造 ) と 道 徳 主 義 や 集 団 主 義 な ど 日 本 的 な 価 値 観 ( 文 化 ) に 支 え ら れ 維 持 さ れ て き た が ,「 メ デ ィ ア の 発 達 , 安 価 な 衣 服 の 供 給 , 就 学 率 の上 昇 」 な ど の 社 会 の し く み の 変 化 と 厂個 人 主 義 ・ 個 性 の 尊 重 」 な ど の 価 値 観 の 変 化 が, 従 来 の し く み や 価 値 観 と 葛 藤 を お こ し, そ の 葛 藤 の も と で の 君 た ち 自 身 に よ る 行 為 の 選 択 と し て 「 制 服 の 改 造 」 が 行 わ れ て い る と 考 え るこ と が で き る。 こ の よ う に, 行 為 は社 会 構 造 や 文 化 に 規 制 さ れ な が ら も , 逆 に 社 会 構 造 や 文 化 を 主 体 的 に 読 み 替 え た り , 変 化 さ せ た り す る 場 合 が あ る ので あ る。 歴 史 上 の 事 件 や 出 来 事 も, 実 は 生 活 者 の能 動 的 な 行 為 の 選 択 が , そ の 原 因 ・ 経 過 ・ 結 果 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ し て い る と考 え る こ と が で き よ う。 今 日 か ら し ば ら く, 1692 年 に 北 米 植 民 地 ニ ュ ー イ ン グ ラ ン ド の セ ー ラ ム村 で 起 こ っ た 魔 女 狩 り 事 件 を, 生 活 者 と 行 為 と 社 会 構 造 ・ 文 化 相 互 関 係 性 と い う 視 点 か ら 考 え て い こ う 。 0-2. ま ず, セ ー ラ ム村 で 起 こ っ た 魔 女 狩 り 事 件 の 概 要 を, 確 認 し て お こ う。 O− 3.「 セ ー ラ ム村 の 魔女 狩 り 事 件 」 を主 題 に , 次 の 3つ の 問 い を 軸 に学 習 を 進 め て い こ う。 A . ヨ ー ロ ッパ にお い て 魔 女 狩 り の 犠 牲 に な っ た 人 は , 数 十 万 と も 数 百 万 と も い わ れ る が , そ の 時 期 は1600 年 を 中 心 と す る 約 百 年 間 で あ っ た。 ヨ ー ロ ッパ で 魔 女 狩 り が 終 わ っ た 時 期 に, な ぜ 北 米 植 民 地 で 魔 女 狩 り が 猛 威 を ふ る っ た の だ ろ う か 。 B . セ ー ラ ム村 の 魔 女 狩 り 事 件 に は, こ れ を 恥 ず べ き 事 件 と す る 見 方 と , 勇 気 と良 心 の 勝 利 と み る 見 方 の 二 つ が あ る。 君 た ち は, ど ち ら の 立 場 で こ の事 件 を 評 価 す る か。 C. 当 時 の 北 米 植 民 地 の民 衆 と 魔 女 狩 り 事 件 と の 関 わ り 方 を 比 較 の材 料 に し て , 私 た ち の 日 常 的 な生 活 行 為 と 社 会 構 造 や 文 化 と の関 わ り 方 を 検 討 し て みよ う 。 現 在 の私 た ち の 社 会 に 問 題 と な る よ う な 状 況 が あ る の だ ろ う か 。 な ぜ そ れ は問 題 と 言 え る の か 。 そ う し た 問 題 の 吟 味 や 解 決 に む け て 私 た ち は ど の よ う な 見 方 や 考え 方 を も つ 必 要 が あ る のか 。 T . 説 明 す る T. イ ン タ ー ネッ ト ・ サ イ ト を 利 用 し て , 事 件 の 概 要 を 説 明 す る 。 T . 小 単 元 全 体 の 学 習 課 題 を 提 示 す る 1 2 1692 年 に, マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 植 民 地 の セ ー ラ ム 村 で は , 数 人 の 少 女 た ち の悪 魔 憑 き の発 作 と魔 女 告 発 を き っ か け に , 魔 女 と し て200 人 以 上 が投 獄 さ れ , う ち 処 刑 さ れ た者 は20 人 に 及 ん だ 。― 64
ノヾ I 卜 I 1 生 活 者 の 行 為 と 意 識 の 解 釈 及 び 比 較 A . ヨ ー ロ ッ パ で 魔 女 狩 り が 終 わ っ た 時 期 に, な ぜ 北 米 植 民 地 で は魔 女 狩 り が 猛 威 を ふ る っ た の だ ろ う か 。 1 . セ ー ラ ム村 の 魔 女 狩 り 事 件 に 関 与 し た 主 な 人 々 の 行 為 や 意 議 につ い て , 気 づ い た こ と や 疑 問 に 思 っ た こ と を 指 摘 し な さ い 。 卜1. 最 初 の魔 女 裁 判 に 関与 し た 人 々 の 行 為 や 意 識 を , ロ ー ル プ レ イを 通 じて 考 え て み よ う 。 1-2. テ ィ チ ュ ー バ だ け が な ぜ 自 分 を 魔 女 だ と認 め た の だろ う か 。 1-2-1.テ ィチ ュ ー バ と他 の二 人 の 容 疑 者 の 異 な る 点 は何 か 。 1-2-2.テ ィ チ ュ ーバ 固 有 の条 件 が, 他 の二 人 と 異 な り , 自分 が 魔女 だ と 認 め た こ と と関 係 が あ る の だろ う か。 1-3. ベ テ ィ ら 少女 た ち は, 確 信 も な い の に なぜ 魔 女 の告 発を 続 け た の だ ろ う か 。 1-3-1.ベ テ ィ ら は , な ぜ 村 で 禁 止 さ れ て い る オカ ルト 遊 びを 続 け て い た の だ ろ う か 。 1-3-2.少 女 た ち は な ぜ 魔 女 告 発 を はじ めた のだ ろ う か。 T . パ ー ト I の 課 題 提 示 T . 発 問 す る P . ロ ー ル プ レ ィ の指 示 P . ロ ー ル プ レ ィ を 行 う T . 発 問 す る T . 発 問 す る P. 予 想 す る T . 発 問 す る P . 資 料 を 基 に 答え る T . 発 問 す る T . 発 問 す る P . 資 料 を 基 に 答え る T . 発 問 す る P . 資 料 を 基 に 答え る 3 4 ・ 裁 判 の後 , オ ズ ボ ー ン は 獄死 , グ ツ ド は 最 後 ま で 罪 状 を 否 認 し 処 刑 , テ イ チ ュ ー バ だ け は 自 白 と 容 疑 者 の 告 発 に よ り , キ リ ス ト 教 の 味 方 に 転 じ た と 認 定 さ れ , 処 刑 を 免 れ た。 ・ テ イチ ュ ー バ は カ リ ブ 出 身 の 黒 人 奴 隷 で , 呪 術 信 仰 に た けて い た。 ・ 日 頃 か ら 差 別 さ れ , 呪 術 も 使 い , い か に も 魔 女 に 疑 わ れ や す い テ イ チ ュ ー バ に と って , 自 白 と 告 発 し か 生 き 延 び る 術 が な か っ た の で は な い か 。 ・ 日 頃 の 単 調 な 生 活 の 中 で の , 好 奇 心 や 不 満 の 捌 け 囗 と し て 禁 じ ら れ た 遊 び に興 じ た ので は な い かo ・ 禁 じ ら れ て い た オ カ ル ト 遊 び を し て い た こ と を 告 発 に よ り カ モ フ ラ ー ジ ュで き る と 考 え た ので は な い か。 ・ こ れ ま で に な い 注 目 さ れ る こ と の 快 感 を 味 わ って い た ので は な い か。 < 第 2 時 > 1 ノマ 卜 I 2
・
社
会
構
造
1-4.魔女 裁 判 で 村 の 混 乱 が 続 くな か , メ ー ザ ー 牧 師 は, な ぜ 徹 底 し た 魔 女 の発 見 と処 罰 を 主 張 し て い る の か。 1-5.テ ィ チ ュ ーバ は自 分 が 魔 女 だ と 認 め た た め, 処 刑 を 免 れ た。 魔女 を 認 め れ ば 処 刑 さ れ ず に済 む のに, レ ベ ッ カ ・ ナ ー ス は , 自 分 の 裁 判 で な ぜ最 後 まで 否 認 し 続 け た の だ ろ う か 。 1-6.陪 審 員 ト マ ス・ フ ィ ク ス は, な ぜ ナ ー ス へ の 無 罪 評 決 を 覆 え し た のか 。 1-7.総 督 ウ ィ リ ア ム・ フ ィ ップ ス は, 最 終 的 に は 魔女 裁 判 の 中 を 決 定 して い る。 総 督 は , 魔 女 な ど い な い と 確 信 を も って 裁 判 中 止 を 決 定 し た の だ ろ う か。 2。 事 件 が 起 こ っ た17 世 紀 末 の マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 植 民 地 社 会 はど のよ う な特 質 を もつ 社 会 だ っ た の か。 2-1.北 米 の英 領 植 民 地 の特 色 を 考 え て み よ う。 ま ず 移 住 の動 機 は何 だ ろ う。 1620年 の 事 件 を 思 い 出 し て みよ う 。 2-2.北 米 のフ ラ ン ス植 民 地 の 場 合, 毛 皮 取 引 を 目 的 とす る一 時 的 な 居 住 で あ っ た 。 こ れ に対 し て , イ ギ リ ス 植 民 地 の 産 業 ・ 居 住 形 態 は ど の よ う な も の だ ろ う 。 世 界 史 資 料 集 (『 新 詳 世 界 史 図 説 』 浜 島 書 店, p.130.) 図 表 2 「 イ ギ リ ス の 北米 植民 地」 を 参 考 に答 え な さ い 。 2-3.マ サ チ ュ ー セ ッ ツ は1691年 にプ リ マ スを 併 合 し て い る が, こ の 時 期 ま で 併 合 が 遅 れ た の は宗 教 的 理 由 か ら で あ る。 プ リ マ ス の 宗 教 的 特 色 と は何 か 。 世 界 史 資 料 集 図 表 3 「 ア メ リ カ植 民 地 の 成 立」 を 参 考 に答 え な さ い 。 2-4.マ サチ ュ ー セ ッ ツ に お け る 自 治 制 度 はど の よ うな も の だ ろ う か 。 南 部 の カ ウ ン テ ィ 制 度 と比 較 し て み よ う 。 世 界 史 資 料 集 図 表 2 を 参 考 に 答 え な さ い 。-65 一
T 。発問する
T . 資 料 を 基 に
答え る
T .発問する
P. 資料 を 基 に
答え る
T 。発問す る
P. 資料 を 基 に
答え る
T.発問す る
P. 資料 を 基 に
答え る
T。発問する
T.発問す る
P.答える
T.発問す る
P . 資 料集 を 基
に答え る
T。発問 する
P . 資 料集 を 基
に答え る
T。発問 する
P . 資 料集 を 基
に答え る
5 年表 料 の 表 資 集 図詐
彭
駭
料 の 表 資 集 図 ・ キ リ ス ト 教 に対 す る 強 い 信 仰 心 と, 北 米 植 民 地 社 会 の 中 核 の 村 で あ る と の自 尊 心 が 作 用 し て い る。 ・ 自 分 の良 心 に 従 っ た。 ・ 神 は正 し い 者 を 救 っ て く れ る と 信 じ た。 ・ 被 告 が 魔 女 だ と は 思 え な い が , こ こ は 裁 判 長 に 従 っ た 方 が 得 策 だ と 考 え た。 ・ 自 分 の 信 条 に 従 っ た と い う よ り も , 社 会 的 地 位 や 威 信 の あ る 人 の 意 見 を 勘 案 し た り , 社 会 的 情 勢 を 見 極 め な が ら, 裁 判 中 止 を 決 定 し て い る。 ・宗 教 的 自 由 を 得 る た め。 ・ 自 営 農 民 と し て 家 族 単 位 で 移 住 し , 定 住 す る 者 が 多 か っ た。 ・ ピ ュ ー リ タ ン の 分 離 派 に 属 す る。 北 米 に移 住 し た ピ ュ ー リ タ ン に は, 移 住 後 も イ ギ リ ス 国 教 会 か ら 離 脱 し な い 人 々 ( 会 衆 派 ) と 離 脱 し た 人 々 ( 分 離 派 ) と が い た が , マ サ チ ュ ー セ ッ ツ の 場 合 は 会 衆 派 が 中 心 で あ っ た。 ・ 教 会 を 中 心 と す る 直 接 民 主 政 方 式 に よ る 寄 り 合 い 制 度 で あ っ た。と 文 化 の 連 関 ノ ヾ 夕 I ン の 分 析 2-4.マ サ チ ュ ーセ ッツ にお け る 自治 制 度 は ど の よ う な も の だ ろ う か。 南 部 の カ ウ ン テ ィ 制 度 と 比 較 し て み よ う 。 世 界史 資 料 集 図 表 2を 参 考 に答 え な さ い。 2-5.ア メ リ カ 最 古 の 大 学 で あ る ハ ー バ ー ド 大 学 が 設 立 さ れ た 目 的 は 何 か。 そ れ は何 を 意 味 して い る か。 2-6.魔女 と して 告 発 さ れ た 人 も, 告 発 し た人 も す べ て女 性 で あ る 。 こ の こ と は 植 民 地 社 会 に お け る女 性 の 地 位 や 立 場 につ い て 何 を 意 味 し て い るか 。 2-7.セ ー ラ ム事 件 が 起 こ っ た1692 年 頃 , 新 大 陸で は ど の よ う な事 件 が 起 こ っ て い る のだ ろ う か 。 2-8.英 領植 民 地 の民 衆 に と って, フ ラ ンス軍 以 上 の脅 威 が あ っ た。 自営 農 民 が 多 か っ た こ と と も 関 係 が あ る が , そ れ は何 だ ろ う か。 2-9. イ ン デ ィ ア ン・ フ ラ ンス 軍 の 襲 撃 以 外 に も, 大 航 海 時 代 に ス ペ イ ン人 が 新 大 陸 に 持 ち 込 ん だ 伝 染 病 も流 行 し て い た。 そ の 伝染 病 と は 何 だ ろ う 。 世 界 史 資 料 集p.Ill の 図 表 2 「 ア メ リ カ 大 陸 に も た ら さ れ た も の」 を 参 考 に 答 え な さ い。 2-10.世 界 史 資 料 集p.130 図 表 3を も う一 度 み て みよ う 。 163 6年 に ロ ード アイ ラン ド植 民 地 を 設 立 し たロ ジ ャ ー・ ウ ィ リ ア ム ス は ク エ ーカ ー 教 徒 に も 信 仰 の 自 由 を 与 え る べ き だ と 主 張 し た こ と に よ り マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 植 民 地 か ら追 放 さ れ, ロ ード ア イ ラ ン ド 植 民 地 を 建 設 し た。 こ の 出 来 事 か ら , マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 植民 地 の 宗 教 的 雰 囲 気 とし て ど の よ う な こ と が 考 え ら れ る か 。
T 。説明する
T .発問する
P.答える
T. 発問する
P. 資 料 集 を 基
に答 える
T. 発問する
P . 年 表 を 基 に
答え る
T. 発問する
P . 予 想 し て答
え る
T. 発問する
P 。 資 料集 を 基
に答え る
T 。 資 料集 を 基
に説明 する
T.発問 する
P . 予 想 し て答
える
4 年表 料 の 表 資 集 図齟
知
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・ 牧 師 の教 育 を 目 的 に 設 立 さ れ た 。 ・ 北 米 植 民 地 に お い て は , キ リ ス ト 教 信 仰 が 極 め て 重 要 視 さ れ て い た 。 ・ 男 性 中 心 の 社 会 で , 女 性 の 立 場 が 弱 か っ た。 ・ フ ラ ンス と の 植 民 地 戦 争 で あ る ウ ィ リア ム王 戦 争(1689 ∼97 ) が 起 こ っ て い る。 ・ 先 住 民 の イ ン デ ィ ア ン が 土 地 を 奪 わ れ た 恨 み か ら, フ ラ ン ス に 味 方 し て イ ギ リ ス頷 を 襲 って い た。 ・ 天 然 痘 ・ マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 植 民 地 は, キ リ ス ト 教 信 仰 が 重 き を な し て い た 地 域 で あ り , 自 分 た ち の 信 仰 ・ 教 条 か ら 逸 脱 し て い る 者 を 許 さ な い と い う, 宗 教 的 に不 寛 容 な地 域 で あ っ た。 < 第 3 時 > ノヽ冫 1 卜 Iミ
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3. ヨ ー ロ ッ パ で 魔 女 狩 り が 終 わ っ た 時 期 に, な ぜ北 米 植 民 地 で は魔 女 狩 り が 猛 威を 振 る っ た の だ ろ う か 。 3-1.17世 紀 末 の マ サチ ュ ー セ ッ ツ植 民 地 の 社 会 構 造 と 文 化 の 特 徴 を ど の よ う に 整 理 す る こ と が で き る だ ろ う か 。 資 料 1 の モデ ル図 を 参 考 に し て ま と め て み よ う 。 3-2.マ サ チ ュ ー セ ッ ツ植 民 地 社 会 の 社 会構 造 と文 化 の 特 質 に 照 ら し て , 事 件 に 関 与 し た 人 々 の 行 為 の 意 味 を 改 め て 考 え て み よ う。 そ れ ぞ れ の 行 為 の 意 味 に は, 共 通 点 が あ る だ ろ う か。 ま た , 相 違 点 が あ る だ ろ う か。 そ の よ う な 共 通 点 や 相 違 点 を 見 出 し た あ な た の 根 拠 は何 か 。 3-2.最 初 の 問 い に 戻 ろ う 。 ヨ ー ロ ッパ で 魔 女 狩 り が 終 わ っ た 時 期 に , な ぜ 北 米 植 民 地 で は 魔 女 狩 り が 猛 威 を 振 る っ た の だ ろ う か 。 T . 発 問 す る T . 発 問 す る P . モ デ ル 図 を 活 用 し て 答 え る T . 発 問 する P . 答 え る T . 発 問 す る P . 答 え る 1 ・ ( 社 会 構 造 ) 教 会 を 中 心 と し た 自 治 , 自 営 農 民 が 多 数 を 占 め る 社 会 構 成 , 男 性 中 心 の 社 会 ・ ( 文 化 ) キ リ ス ト 教 信 仰 の 重 視 と そ れ に基 づ く宗 教 的 不 寛 容 さ ・ 魔 女 告 発 を し た ベ テ ィ ら 少 女 た ち , 自 白 し た テ ィ チ ュ ー バ は, 立 場 こ そ 違 え 村 で は 社 会 的 弱 者 で あ っ た 。 彼 ら は, 告 発 や 自 白 と い う 方 法 に よ り , 日 頃 の 不 満 や 不 安 に対 す る ス ト レ ス の 捌 け 口 や 自 己 主 張 の 場 を 得 て い た と思 わ れ る。 ・ メ ー ザ ー と ナ ー ス は , 事 件 に お け る 立 場 は 異 な る が , 彼 ら は 植 民 地 社 会 の 秩 序 や キ リ ス ト 教 信 仰 に , 自 己 の 行 為 の 規 範 を ぶ れ る こ と な く置 い て い る。 ・ ス タ ウ ト ン, フ ィ ス ク, フ ィ ッ プ ス は , 魔 女 裁 判 を 司 る責 任 あ る 立 場 に あ り な が ら, 植 民 地 社 会 に お け る 立 場 や 権 力 関 係 と 自 己 の 信 念 と の 間 で 葛 藤 し , 行 為 の 決 定 が 揺 らい で い る。 ○ 植 民 地 社 会 は , 教 会 中 心 , 白 人 男 性 中 心 と い っ た 硬 直 し た 内 部 構 造 を 持 っ て い た 上 に , 外 的 に は 食 料 難 , 伝 染 病 流 行 , 継 続 す る 戦 争 な ど 不 安 要 因 を 抱 え て い た。 そ う し た 中 で , 民 衆 は , 不 満 の 捌 け 口 や 自 己 主 張 の 機 会 を 求 め て い た と 考 え ら れ る 。 魔 女 告 発 の連 鎖 は, そ う し た共 同 体 の ス ト レ ス の受 け 皿 と な り 拡 大 し て い っ た 。 民 衆 は, 魔 女 裁 判 の 結 果 を 全 面 的 に は 受 け 入 れ て い な か っ た が , 社 会 的 地 位 の 高 い 人 が 言 っ た こ と に は 従 っ て お こ う と い う 考 え が , 魔 女 狩 り を さ ら に拡 大 さ せ た。−66
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ノ・ぐ I 卜 n 4 行 為 に 対 す る 評 価 及 び 再 構 成 B. セ ー ラ ム 村 の 魔 女 狩 り 事 件 に は, こ れ を 恥 ず べ き事 件 と す る 見 方 と, 勇 気 と 良 心 の 勝 利 と す る 見 方 の二 つ が あ る。 君 た ち は, ど ち ら の立 場 で こ の事 件を 評 価 す る か。 4-1.「 恥 ず べ き 事 件」 と 評 価 す る 人 は, そ の理 由 を 述 べ な さ いo 4-2. 匚勇 気 と良 心 の 勝 利」 と 評 価 す る人 は, そ の 理 由 を 述 べ な さ い。 T . パ ー ト n の 課 題 提 示 T. 発 問 す る P. 討 論 す る T. 発 問 す る P. 討 論 す る ○ こ の 事 件 で は, 村 全 体 が 精 神 的 な 混 乱 状 態 に 陥 り , 一 部 の 権 力 者 や 狂 信 者 の 言 動 に, 本 来 は 理 性 的 で あ る は ず の 多 く の人 々 が か ら め 取 ら れ, 適 切 な 判 断 力 を 失 っ て し ま っ て い た。 そ し て , 社 会 的 弱 者 や 共 同 体 の 中 で 異 質 な 者 と み な さ れ た 人 に , 魔 女 の 嫌 疑 が 多 く か け ら れ た。 こ の 事 件 は , ま さ に 人 間 の 弱 さ を さ らけ だ し て い る よ う に思 う。 ○ 住 民 自 身 が 自 ら の 手 で 事 件 を 終 息 に 導 び い た の で あ り , 裁 判 所 は 自 ら の 過 ち を 認 め, 被 害 者 に 損 害 賠 償 ま で 行 っ て い る 。 人 間 は 自 ら の 手 で 理 性 を 取 り 戻 す こ と が 出 来 る こ と を 示 し た の で あ る 。 人 間 に 理 性 と良 心 を 信 頼 し た い。
<第4 時 >
ノマ 1 卜 Ⅲ5
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C 。 当 時 の北 米 植 民 地 の民 衆 と 魔 女 狩 り と の 関 わ り 方 を 比 較 の 材 料 に して , 私 た ち の 日 常 的 な 生 活 行 為 と 社 会 構 造 や 文 化 と の 関 わ り 方 を 検 討 し て み よ う 。 現 在 の 私 た ち の 社 会 に問 題 と な る よ う な 状 況 は な い の だ ろ う か。 な ぜ そ れ は問 題 と 言 え る の か。 問 題 だ と す る な ら ば , そ う し た 問 題 の 吟 味 や 解 決 に む けて 私 た ち は社 会 に 対 す る ど の よ う な 見 方 や 考 え 方 を もつ 必 要 が あ る の か。 5-1.セ ー ラ ム 村 の 魔 女 狩 り 事 件 が 示 して い る問 題 と 類 似 し た 問 題 が , 私 た ち の 社 会 に も あ る か 。 問 題 点 は ど こ に あ る の か。 5-2.そ う し た 問 題 の 吟 味 や 解 決 に む けて , 私 た ち は 社 会 に 対 す る ど のよ う な 見 方 や考 え 方 を も つ 必 要 が あ る のか 。 T . パ ー ト Ⅲ の 課 題 提 示 T. 発 問 す る P. 討 論 す る T . 発 問 す る P . 討 論 す る ( 予 想 さ れ る問 題 の 例 示 ) ・200 工年 7月 の参 議 院 議 員 選 挙 の 時 み ら れ た国 民 の 政 治 的 態 度 と 政 治 意 識 。 小 泉 内 閣 が 掲 げ る 匚構 造 改 革 論 」 は, 日 本 の 既 存 の政 治 ・ 経 済 の し く み や 平 等 主 義 ・ 集 団 主 義 な ど 日 本 的 価 値 観 に 根 本 的 な 変 更 を 迫 る 可 能 性 も 持 っ て る に も か か わ ら ず , 政 策 議 論 が 十 分 に な さ れ な い ま ま , 首 相 の 個 人 的 人 気 に 依 在 し た 選 挙 運 動 や 投 票 行 動 か み ら れ た こ と。 ・ 最 近 , 各 種 の 占 い や 新 興 宗 教 が 流 行 し そ れを め ぐ る ト ラ ブ ル が 多 発 し て い る 。 そ こ に は , 社 会 情 勢 の 不 安 定 な 中 , 多 く の 人 が 自 分 に 自 信 が 持 て ず , つ い メ デ ィ ア か ら の 情 報 や 集 団 意 識 に 促 さ れ て 無 批 判 に 信 仰 に走 って る 現 状 が あ る の で は な い か。 ○ 自 分 の 行 為 を 規 制 し て い る 社 会 の し く み ( 社 会 構 造 ) と 社 会 的 価 値 (文 化 ) を 批 判 的 に 吟 味 し て い く こ と。 ○ 自 分 の 行 為 選 択 の 仕 方 と 行 為 の 中 身 を批 判 的 に 吟 味 し て い く こ と。 ( 学 習 資 料 ) 1. 本 稿 理 論 編 図 1 「 生 活 者 の行 為 と 社 会 の 関 係 モデ ル」 を 使 用 す る。2. イ ン タ ー ネ ット サ イト:S 山 m Witch Museum (http//w ww.salemwitchmuseum.c om ) 3. ロ ール プ レイ 用 資 料
① 場 面 : マ サチ ュ ー セ ッ ツ州 セ ーラ ム村 の教 会 で の最 初 の魔 女 裁 判予 備 審 問 ② 年 月 日:1692 年 3月 1 日 (火 )
③ 登 場 人 物
立 場 氏 名 人 物 の 概 要 判 事 ジ ョ ン ・ ホ ー ソ ン 地 方 集 会 の 議員 で, 法 律 専 門 家 で はな い 。 被 告 テ イ チ ュ ーノ`ぐ バ ル バ ド ス出 身 の女 奴 隷。 使 え て い る パ リ ス牧 師 の娘 ベ テ ィ ら少 女 た ち に, 黒 魔 術 を 指 南 して い た。 被 告 セ ア ラ ・ オズ ボ ー ン 裕 福 な女 性 だ が, 一 年 以 上 教 会 に 行 って い ない 。 夫 の死 の 直 後 に 使 用 人 と 再 婚 。 被 告 セ ア ラ ・ グッ ド 貧 し い物 乞 い。 6歳 の 子 の 母 で , 妊 娠 中 。 原 告 兼 証 人 ペ テ ィ ・ パ リ ス 遊 び に興 じ て い た。9歳 の女 子 。 父 は牧 師 で, テ ィ チ ュ ー バ の主 人 。 仲 間 の 少 女 た ち と, 密 か に オ カ ル ト 原 告 兼 証 人 ア ビ ゲ イ ル ・ ウ ィリ ア ム ズ ベ テ ィ と同 居 す る 従 姉。 原 告 兼 証 人 5 ∼ 6名 の 少 女 ベ テ ィ, ア ビ ゲ イ ル と 共 に 被 告 3人 を 魔 女 と証 言 。 ④ 脚 本 判 事 : 誰が お 前を 苦 し め た のか 。 ベ テ ィ :父 や 聖 職 者 た ち か ら 「 あ な た た ちを 苦 し め て い る 者 の名 を あ げ て く れ」 と頼 ま れ て も, 最 初 は 思 い 出 し よ う が あ り ま せ ん で し た。 誰 が 自分 た ちを 陥ま せ た ので も な い。 た だ そ れ が 起 こ っ た と い う だ け だ っ た の で す。 で も, よ く 考 え て み る と。 そ れ は, テ ィ チ ュ ーバ と セ ア ラ・ グ ッド , そ れ に セ ア ラ ・ オズ バ ー ンで す。 判 事 : お前 は 子 ど も た ち を 苦 し め たこ と があ る か。 グ ッド : ぱ か ば か し い 話 だ よ 。 判 事 : お前 は 物乞 い の と き 何 か ぶっ ぶ つ 言 い な が ら家 々を 回 る よ う だ が , い っ たい 何 を 言 っ て い る の か。 グ ッド : あ ん た に そ れ を 言 わ な き ゃな らな い の な ら, 言 う よ。 そ れ は 私 の 戒 律 さ 。 判 事 : セ ア ラ ・ オ ズ ボ ー ンを こ こ へ 。 グ ッド : オ ズ ボ ーン ば あ さ ん だ よ 。 子 ど も た ちを い じ め て い る の は。 判 事 : お前 は 魔女 か。 オ ズ ボ ー ン: 魔女 ど こ ろ で は な く , 自 分 が 妖 術 を か け ら れ た み た い で す。 イ ン デ ィ ア ン のよ う な 真 っ黒 い も のが , 私 の首 をつ ね り, 頭 の 後 部 を つ か ん で 引 っ張 り , 家 の ド ア の と こ ろ ま で 連 れ て い き まし た。 判 事 : テ ィ チ ュ ー バ を こ こ へ。 子 ど も た ちが 言 って い る こ と は 本 当 か。 テ ィチ ュ ー バ : 本当 で す。 悪 魔 の 「 か た ち( 生 霊 )」 が, 私 に 子 ど も た ち を つ ね れ と命 じ た ので す。 ( ロ ール プ レ イ 用 資 料 は, マ リ オ ン・ L ・ ス タ ー キ ー ( 市 場 泰 男 訳 )『 少 女 た ち の 魔 女 狩 り ーマ サ チ ュ ー セ ッ ツ の冤 罪 事 件 一 』平 凡 社, 1994, pp.52 ∼68. よ り 筆 者 作成 。) 4. 文 字 資 料 女 た ち も怠 け て はい な か っ た が, そ の 仕 事 は ず っ と 昔 か ら お なじ み の単 調 な き まり き っ た 仕 事 の 繰 り 返 し だ っ た。 時 に はい つ も と 違 っ た 仕 事 が や っ て く る こ と が あ っ た が , そ れ は主 に 夏 で , 野 に 出 て 野 イ チ ゴ を な ど の実 を つ む と きや , 林 や 畑 で 働 い て い る男 た ち にビ ー ルを 届 け る と き な ど だ っ た。 冬 に はそ う い っ た わ ずか な気 晴 ら し も す べ て 絶 た れ た。 な か に は安 息 日 の集 会 の と き以 外, 家 の外 に は ぼ と ん ど一 歩 も 外 に 出 な い 人 もい た。 既 婚 婦 人 に は こ の単 調 さ も 馴 れ っ こ に な って い た。 足 手 ま とい に な る ご く 小 さ い 子 ど もが い る 人 は, 忙 し さ で 気 が 紛 れ た。 し か し , ま だ 縁 談 も か か っ て こ な い 若 い 娘 に と って は, 冬 は 救 い の ない 単 調 な 苦 行 だ っ た。 と い っ て も 彼 女 た ち か ら み れ ば , 結 婚 す れ ば ロ マ ン チ ッ ク な 生 活 が 送 れ る と は 必 ず し も思 え な か っ た 。 娘 た ち が 暮 ら し て い る精 力 旺盛 な 社 会 で は, 既 婚 婦 人 は ま るで 牝 牛 の よ う に し ょ っ ち ゅう 妊 娠 す る の が み ら れ た し, 出 産 の つ らさ もよ く わ か っ た 。 し か し た とえ そ う だ とし て も, 結 婚 か, そ れ の は っ きり わか る 見 通 し が な くて は, 将 来 の方 向 が ま る で 検 討 がっ か なか っ た し, お ま け に そ れ以 上 に 悪 い こ と に, 一 人 前 に扱 って も ら え な か っ た。 彼 女 た ち に は 居 場 所 も 地 位 も なか っ た。 ひ とり よ がり の 既 婚 婦 人 や 寡 婦 の い う ま ま, な すが ま ま に 暮 ら す ほか な く, な か に はそ う い う 既 婚 婦 人 や 寡 婦 を ひ ど く恨 んで い る者 も い た。 ( ス タ ー 牛 −, 前 掲m p.28. よ り 引 用。) 文 字資 料 人 物 立 場 主 張 ・ 状 況 認 識 コ ッ ト ン ・ メ ー ザ ー イ ェ ール 大 学 設 立 者 で , 牧 師。 種 痘 の 推 進 者。 悪 魔 の 存 在 を 信 じ, 魔 女 狩 り を 奨 励。 ニ ュ ー・ イ ン グ ラ ンド 人 は, かつ て悪 魔 の 領 土 で あ った と こ ろ に住 み着 い た 神 の民 で あ る 。 悪 魔 は, こ れ ら の人 々 が イ エ ス に対 し て な さ れ た約 束 を 達 成 し よ う と し て い る の に気 づ きお お い に困 惑 し て い る で あ ろ う 。 ‥ ・ こ う し て 悪 魔 は怒 り だ し, こ の 貧 し い 植 民 地 を くつ が え そ う と し て あ ら ゆ る 手 段 を こ ころ み た。 ・ ‥ い ま わ れ わ れ はそ う い う 恐 ろ し い 企て を 見 い だ し て い る。 一 軍 の悪 魔 が セ ー ラ ム に瞿 い か か っ て い る 。 セ ー ラ ム の土 地 こ そ, わ が イ ン グ ラ ンド の植 民 地 の 中心 で あ り, い わ ば そ の最 初 の も の な の だ。 レ ベ ッ カ・ ナ ース 71 歳 の 女 性 。 魔女 と 告 発 さ れ , 裁 判 に か け ら れ た ( 工692年 7月 処 刑) 。 魔 女 だ と認 め れば , 死 な ず に 済 む の は 分 か っ て い る 。 し か し私 は 永遠 の父 の 前 で 自 分 は 無 実 だ と言 う こ とが で き ま す。 そ し て 神 様 は 私 の無 実 を 明 ら か に し て く だ さ る で し よう 。 ウ ィ リ ア ム ・ ス タ ウト ン レ ベ ッカ ・ ナ ース 裁 判 の 裁 判 長 。 ハ ー バ ード 大 学 と オ ク ス フ ォ ード 大 学 で 学 ん だ。 ( 陪 審 団 の無 罪 評 決 に対 し) 私 は 陪 審 に 口 を はさ む つ もり は な い。 し か し 自 白 し た 魔 女 の の一 人 デ リ ヴ ァ ラ ンス ・ ホ ッ ブ ズ が , レ ベ ッ カ ・ ナ ー スを 見 て ,「 お や, あ の人 を 連 れ て き た の ? あ の 人 は私 た ち の 仲 間 な の に。 」 と 言 っ た。 陪 審 員 た ち が こ の言 明 の含 む意 味 を 考 慮 し て 無 罪 評 決 を 下 し たか は疑 問 だ。 ト マ ス・ フ ィ ス ク レ ベ ッカ ・ ナ ー ス裁 判 の 陪 審 員 長 。 無 罪 評 決 を 出 し た も の の, 自 分 だ ち よ り 学 識 も経 験 も豊 か な裁 判 長 が, 被 告 を 魔 女 だ と確 信 し て い る よ う な の で, 評 決 を 「 有 罪 」 と変 更 し よ う。 ウ ィ リ ア ム ・ フ ィ ップ ス マ サチ ュ ー セ ッ ツ州 総 督 レ ベ ッ カ・ ナ ー ス の 子 ど も た ち の 主 張 は十 分 納 得 の い く も の だ っ た の で, 死 刑 執 行 延 期 に サ イ ン し た。 し か し, こ の 延 期 に クレ ー ムを つ けて き た人 の 中 に は, 無 視 で きな い マ サ チ ュ ーセ ッ ツ の お 偉方 もい た ので , 死 刑 を 再 度 認 め る し か なか っ た のだ 。 だが , ニ ュ ー ヨ ー ク の 聖 職 者 た ち は , マ サチ ュ ー セ ッ ツ の 魔女 裁 判 に 疑 問 を 呈 し て い る。 ま た, 魔女 裁 判 が 原 因 で , 人 心 は荒 廃 し , 経 済 も 停 滞 し て い る。 こ れ 以 上 の 魔 女 裁 判 は 禁 止 し な け れ ば な ら な い 。 ( ス タ ー牛 −, 前 掲 書 及 び 浜 林 正 夫 , 井 上 正 美 『 魔女 狩 り 』 教 育 社, 1983, を 参 考 に 筆者 作 成。) −68 −