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新商品紹介-温水タンク用高耐食フェライト系ステンレス鋼『NSS WCR』

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Academic year: 2021

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温水タンク用高耐食フェライト系ステンレス鋼『NSS WCR』 35. 日 新 製 鋼 技 報 No.95(2014). 新商品紹介. 温水タンク用高耐食フェライト系ステンレス鋼『NSS WCR』. 原 田 和加大* 山 本 修** 野々村 明 廣*** 河 野 明 訓****. Ferritic Stainless Steel Developed for Hot-Water Tank Appliances “NSS WCR”. Wakahiro Harada, Osamu Yamamoto, Akihiro Nonomura, Akinori Kawano. *技術研究所 ステンレス・高合金研究部 材料第二研究チーム チームリーダー **技術研究所 ステンレス・高合金研究部 材料第二研究チーム ***技術研究所 ステンレス・高合金研究部 材料第二研究チーム (現 周南製鋼所 生産推進部 品質保証チーム 主任部員) ****技術研究所 ステンレス・高合金研究部 材料第二研究チーム (現 日新製鋼大阪大学共同研究講座). 445M2やSUS 444と同等の溶接部の耐隙間腐食性を有し ており,温水タンクの製造において溶接時のバックシ ールドガスが不要である。本商品の特徴について述べ る。. ₂.成分設計. 表1にNSS WCRの代表成分例を示す。24%Cr-0.5%Mo- 0.5%Ni-Nb, Ti-LowC, Nを主成分とする。溶接時に生成 する酸化スケール直下でCr濃度が低下しても,温水環 境で必要な耐食性を発現できるCr濃度を維持できるよ うCrを24%添加している。さらに,MoとNiを微量添加 することにより,隙間部で生じる局部的なpH低下環境 での耐食性を有している8)。MoとNiは価格変動が大き いため,添加量を極力少なくし,従来材であるSUS 444 に比べて価格安定性の高い商品とした。さらに極低C,N 化および安定化元素としてのTi,Nbの複合添加により 溶接熱影響部の鋭敏化を抑制している。. 1.緒 言. ステンレス鋼は耐食性に優れ,衛生的であることから 厨房,配管,容器など水周りの器物に多用されている。 住宅や家電における省エネが進められている中で,電気 給湯設備としてエコキュートが普及している。エコキュ ートや電気温水器などには温水をためるタンクが必要で あり,従来からステンレス鋼が使われている。1960年代 にAl棒などで犠牲防食したSUS 304やSUS 316が電気温 水器用タンクに用いられていたが1),応力腐食割れの問 題から1980年代にはSUS 444などのフェライト系ステン レス鋼を用いた無防食タンクが主流となった2,3)。近年 ではレアメタルの高騰もあり,Mo含有量の少ないNSS 445M2などが使われるようになった4)。 温水タンクでは,鏡板と称す上下加工品と胴と称す側板 を一般的にTIG溶接で接合する。溶接時にステンレス鋼の 表面が酸化して耐食性が低下することを防ぐために5,6), タンク内面においてArなどの非酸化性ガスをバックシ ールドガスに用いて,溶接する必要がある。したがって, 容量の大きい温水タンクを製造する場合は,Arガスの 使用量が多いことやガス充填用の部品を取り付ける必要 があるなど,製造メーカーにおける作業,コストの負荷 が大きかった。 NSS WCRは温水タンク用ステンレス鋼として開発さ れた7)。溶接施工する際にバックシールドガスを用い なくても,バックシールドガスを用いて溶接したNSS. 表 1 NSS WCRの代表成分例 (mass%) Table 1 Chemical composition of NSS WCR (mass%). C Si Cr Mo Ni N Ti Nb. 0.01 0.2 24.0 0.5 0.5 0.01 0.2 0.2. 日 新 製 鋼 技 報 No.95(2014). 温水タンク用高耐食フェライト系ステンレス鋼『NSS WCR』36. 3.2 一般耐食性. NSS WCRの耐孔食性を評価した。図₂にNSS WCR の焼鈍酸洗仕上げ材の孔食電位をNSS 445M2と比較し て示す。耐孔食性はNSS 445M2の同仕上げ材と同等で ある。. JIS Z3040に準じてNSS WCRのTIG溶接における適 正範囲を評価した。 図₁にNSS WCR,NSS 445M2お よびSUS 444のTIG溶接における適正溶接条件範囲を示 す。NSS WCRはNSS 445M2やSUS 444と同等の溶接性 を有し,温水タンクへの溶接成形性を有する。. 図1 NSS WCRのTIG溶接における適正溶接条件 Fig. 1 TIG welding conditions of NSS WCR.. 図 2 NSS WCR/2B仕上げ材の孔食電位 (3.5%NaCl, 30℃ ) Fig. 2 Pitting potential of NSS WCR.. 図 3 沖縄における暴露試験3年後の外観 Fig. 3 Appearance of NSS WCR after 3 year’s atmospheric. exposure test in Okinawa.. NSS 445M2. 孔 食. 電 位. Vc ’1. 00 (m. V, SC. E). 1000. 800. 600. 400. 200 NSS WCR. NSS WCR NSS 445M2. 20mm. 溶接速度 (cm/min) 0 20 40 60 80 100 120. 溶 接. 電 流. (A ). 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0. OPEN : 溶け込み良 SOLID : 溶け込み不足. :NSS WCR :NSS 445M2 :SUS 444. 表₂ NSS WCRの機械的特性 Table ₂ Mechanical properties of NSS WCR. 0.2%耐力(N/mm2) 引張強さ(N/mm2) 突合せ伸び(%) 表面硬さ(Hv20). NSS WCR 362 514 31 167. NSS 445M2 365 507 30 167. SUS 444 372 529 31 167 NSS WCRの耐発銹性を沖縄における暴露試験で評価 した。暴露試験は沖縄県中頭郡の海岸より30mの場所に 暴露試験台を設置して実施した9)。試験片の四隅をベー クライトワッシャーで固定した。図₃に焼鈍酸洗仕上の NSS WCRの沖縄における暴露試験3年後の外観をNSS 445M2と比較して示す。NSS WCRの耐発銹性はNSS 445M2の同仕上げ材と同等である。. ₃.基本特性. 3.1 成型性. 表₂にNSS WCRの0.9mmtの機械的特性を示す。引張 強度,耐力,伸びおよび硬さともに現行温水タンク用フ ェライト系ステンレス鋼と同等の特性を示す。また,n 値やr値も現行温水タンク用フェライト系ステンレス鋼 と同等であり,温水タンクに加工可能である。. ₄.温水タンク用材料としての耐食性. 4.1 溶接隙間部の耐食性. 温水タンクの構造例を図₄に示す。温水タンクには3 箇所の溶接部が存在する。胴板と胴板をたてに付けあわ せTIG溶接する部位,胴板を鏡板にTIG溶接接合する部. 日 新 製 鋼 技 報 No.95(2014). 温水タンク用高耐食フェライト系ステンレス鋼『NSS WCR』 37. 図 4 実機温水器缶体の構造の例 Fig. 4 Schematic illustration of hot-water tank.. 図₅ ラボ試験に用いた試験片形状 Fig.₅ Specimen for the evaluation of crevice corrosion resis-. tance.. ①TIG突合せ溶接. 上鏡. 胴. 下鏡. フランジ ②TIG重ね溶接. 胴. フランジ③スポット溶接. バッフルプレート─耐食性評価部位─ ①胴/胴・・・・・・・・TIG突合せ溶接 ②胴/鏡・・・・・・・・TIG重ね溶接 ③バッフルプレート・・・スポット溶接. 上鏡. 下鏡. L. TIG溶接部(バックシールドガス有無). TIGトーチ. バックシールドガス. 100mm. 30mm×15mm. 上水+2000ppmCl- 80℃, 30d. 補助カソード (PtめっきTi板 : 40×60mm). 空気 A. V. 試験液. 照合電極(SCE). 試験片. 図 6 Pt補助カソード浸漬試験方法 Fig. 6 Schematic illustration of immersion test by Pt-plated Ti. auxiliary cathode system.. 位および鏡板にバッフルプレートをスポット溶接する部 位である。特に耐食性が懸念されるのが,胴板を鏡板に TIG溶接接合する隙間部である。 実験室的に温水タンク環境におけるNSS WCRの溶接 隙間部の耐食性を検討した。図₅に腐食試験に用いた溶 接隙間試験片の形状を示す。二枚重ねたステンレス鋼試 験片をTIG溶接で重ね溶接し,隙間面を形成した。バッ クシールドガス中の酸素濃度の影響を検討するために Arと酸素混合ガス雰囲気で溶接を行った。Arガスのみ をバックシールドガスに用いる場合は溶接隙間開口部側 よりArガスを流した。この場合,大気の巻き込みがあ るためバックシールドガス中の酸素濃度= 0.1%である。 バックシールドガスを用いない場合には大気雰囲気で溶 接してそれぞれ試験片を作製した。比較にはSUS 444を 用いた。. 図₆にPt補助カソード浸漬試験方法を示す3)。試験液 には山口県周南市の上水にNaClを加えて,2,000ppmCl−. に調整した水溶液を用いた。腐食の加速性を上げるため に試験片とPtを電気的に導通させ,恒温水槽を用いて. 80℃に保持した。30日後の隙間腐食状態によって耐食性 を比較評価した。 図₇にArと酸素混合ガス雰囲気で溶接した場合の酸 素濃度とNSS WCRの溶接隙間部の腐食深さの関係を SUS 444と比較して示す。酸素濃度= 0.02%ではNSS WCRとSUS 444の腐食深さは同程度であるが,SUS 444. Arガス雰囲気中の酸素濃度(%). 最 大. 侵 食. 深 さ. (m m. ). 0.7. 0.6. 0.4. 0.2. 0 0.01 0.1 1 10 100. バックシールドガス有相当. バックシールドガス無(大気雰囲気). SUS 444. NSS WCR. 図 7 NSS WCRの溶接隙間部の耐食性と溶接雰囲気中の酸素濃度 の関係. (Pt補助カソード試験, 上水+ 2000ppmCl−, 80℃, 30日) Fig. 7 Effect of concentration of O2 in back gas shield of TIG. welding on crevice corrosion depth of TIG welded joint after 30days immersion test.. 日 新 製 鋼 技 報 No.95(2014). 温水タンク用高耐食フェライト系ステンレス鋼『NSS WCR』38. . 1mm. 5mm. *:Ar+0.1%O2. 最大侵食深さ 0.05mm. 最大侵食深さ 0.35m. 最大侵食深さ 0.4mm. 最大侵食深さ 0.65mm. 観察方向 バックガスシールドガス有* バックガスシールドガス無. X線透過 腐食断面 X線透過 腐食断面. NSS WCR. SUS 444. 図 8 Pt補助カソード浸漬試験30日後のTIG溶接隙間部のX線透過写真と腐食断面 (Pt補助カソード試験, 上水+ 2000ppmCl−, 80℃, 30日) Fig. 8 Cross sections of TIG welded joint and X-rays transmission photographs after 30days immersion test.. は酸素濃度= 0.1%の時点で,腐食深さが0.04mmまで深 くなるのに対し,NSS WCRは耐食性の低下が少なく, 酸素濃度= 20%でも腐食深さは0.3mmであった。 図₈にNSS WCRとSUS 444の溶接隙間試験片の腐 食試験後のX線透過写真および代表的な腐食断面を示 す。バックシールドガスなしのNSS WCRの最大隙間 腐食深さは0.35mmであり,バックシールドガス有りの SUS 444と同等以上の耐隙間腐食性を示した。またバッ クシールドガス有りのNSS WCRの最大隙間腐食深さは. 0.05mmであり,わずかに隙間腐食が認められる程度で あった。. 4.2 試作タンクによる評価. NSS WCRの実機試作タンクを用いた腐食モニター 試験により耐食性を評価した。板厚が0.9mmの材料を TIG溶接によりタンクに加工,接合した。バックシー ルドガスにはArを用いて,バックシールドガス有無で それぞれタンクを試作した。比較材に同じ板厚のNSS. 日 新 製 鋼 技 報 No.95(2014). 温水タンク用高耐食フェライト系ステンレス鋼『NSS WCR』 39. 445M2およびSUS 444のバックシールドガス有りの試作 タンクを用いた。図₉に実機腐食モニター試験方法を 示す。試験液には山口県周南市の上水にNaClを加えて, 2,000ppmCl −に調整し,腐食の加速性をもたせるために Cu2+を2ppm添加した水溶液を用いた10)。試験液タンク で270Lの試験液を80℃に保持し,10L/minの流速で試作 タンク内に60日間循環させた。試験後に試作タンクを切 り出し開放し,腐食状態を調査した。腐食の厳しかった 下鏡側の隙間腐食深さで評価した。. 図10に実機腐食モニター試験後の隙間腐食深さを示 す。実験室的試験結果と同様にバックシールドガスなし のNSS WCRはバックシールドガス有りのNSS 445M2や SUS 444と同等以上の耐隙間腐食性を有しており,実タ ンクにおいてNSS WCRは溶接時にバックシールドガス を用いなくても耐食性を有すると考える。. ₅.適用例. 図11にNSS WCRの温水タンク加工例を示す。温水タ ンクへの加工,溶接も問題なく,お客様における溶接施 工費の削減が可能であることから,現在,エコキュート 用の温水タンク材料として採用いただいている。. 図₉ 実機温水器缶体の腐食試験方法 Fig.₉ Schematic illustration of corrosion test using hot-water. tank.. 図10 実試作タンクによる腐食モニター試験後の溶接隙間部の腐 食深さ. Fig.10 Crevice corrosion depth of TIG welded joint at test tank after 60days corrosion test.. P. 上水+2000ppmCl-+2ppmCu2+ 80℃, 10ℓ/min, 60d. 温度制御盤 熱電対. ヒーター(Ti). 試験液槽 270ℓ. タンク タンク. ※)BG=バックシールドガス. 最 大. 侵 食. 深 さ. (m m. ). 0.5. 0.4. 0.3. 0.2. 0.1. 0 BG有 BG無 BG有 BG有 NSS WCR NSS 445M2 SUS 444. 図11 NSS WCRの温水タンク加工品 Fig.11 Appearance of hot-water tank by NSS WCR.. ₆.結 言. NSS WCRは,温水タンクに溶接施工する際にバック シールドガスを用いなくても,溶接隙間部で耐食性を有 することを最大の特徴としている。したがって,お客様 における溶接施工費,すなわちArガスのランニングコ. 日 新 製 鋼 技 報 No.95(2014). 温水タンク用高耐食フェライト系ステンレス鋼『NSS WCR』40. 参考文献. 1)森英臣, 小田一磨, 末田進彦:日新製鋼技報, 35 (1976), 86.. 2)林公爾, 西川光昭, 足立俊郎, 吉井紹泰:日新製鋼技報, 52. (1985), 48.. 3)足立俊郎, 西川光昭, 林公爾:日新製鋼技報, 63 (1990), 109.. 4)足立俊郎, 西川光昭, 杉本育弘, 林公爾:日新製鋼技報, 66. (1992), 119.. 5)東茂樹, 幸英昭, 村山順一郎, 工藤赳夫:防食技術, 39 (1990),. 603.. 6)鈴木伸一, 臼井幸夫, 矢沢好弘, 宇城工, 佐藤進:CAMP-ISIJ, 10. (1997), 463.. 7)原田和加大:特殊鋼,11(2013), 34.. 8)河野明訓, 溝口太一朗, 原田和加大:日新製鋼技報, 94 (2013), 8.. 9)汐月勝幸, 溝口太一朗, 原田和加大:日新製鋼技報, 91 (2010),. 26.. 10)野々村明廣, 足立俊郎, 原田和加大:日新製鋼技報, 90 (2009),. 20.. ストや製品のシールドガス導入部品コストを低減でき る,新たな温水タンク用高耐食フェライト系ステンレス 鋼である。 エコキュートや電気温水器の温水タンクに限らず,次 世代エネルギーとして今後の普及が見込まれる家庭用燃 料電池給湯システム用の温水タンクなどにも同様のメリ ットが期待される。また温水タンクに限らず,溶接隙間 部の耐食性が要求される貯水タンクや構造物への適用も 期待される。. 5 新商品紹介 温水タンク用高耐食フェライト系ステンレス鋼『NSS WCR』

図 3  沖縄における暴露試験3年後の外観
Fig. ₅  Specimen for the evaluation of crevice corrosion resis- resis-tance. ①TIG突合せ溶接上鏡胴下鏡 フランジ ②TIG重ね溶接 胴③スポット溶接 フランジバッフルプレート─ 耐食性評価部位─①胴/胴・・・・・・・・TIG突合せ溶接②胴/鏡・・・・・・・・TIG重ね溶接③バッフルプレート・・・スポット溶接上鏡下鏡LTIG溶接部(バックシールドガス有無)TIGトーチバックシールドガス100mm 30mm×15mm 上水+2000
Fig. 8  Cross sections of TIG welded joint and X-rays transmission photographs after 30days immersion test.
Fig. ₉  Schematic illustration of corrosion test using hot-water  tank.

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