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松波馨士 学位論文審査要旨

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Academic year: 2021

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平成23年2月

松波馨士 学位論文審査要旨

主 査 清 水 英 治 副主査 景 山 誠 二 同 井 藤 久 雄

主論文

肺癌における体細胞性PARK2遺伝子変異の頻度と特異性

(著者:松波馨士、松本慎吾)

平成23年 米子医学雑誌 62巻 31頁~43頁

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学 位 論 文 要 旨

肺癌における体細胞性PARK2遺伝子変異の頻度と特異性

肺癌は癌死因の第一位を占める予後不良の疾患であるが、近年、EGFR遺伝子変異や EML4-ALK融合遺伝子が発見され、これらの存在とそれぞれの分子を標的とする治療薬の効 果との相関が明らかになっている。PARK2遺伝子は、常染色体劣性遺伝性若年性パーキンソ ン病の原因遺伝子であるが、肺癌を含む種々の悪性腫瘍で体細胞性変異を認め、癌抑制遺 伝子として機能しているとの報告がある。しかし、肺癌における体細胞性PARK2遺伝子変異 の頻度や組織型別の特異性などは未だ明らかにされておらず、本研究では、より多くの肺 癌細胞株や肺癌切除検体を用いて、この遺伝子変異を解析した。

方 法

肺癌細胞株 43 株、肺癌切除検体 137 例を対象として遺伝子変異を解析した。肺癌細胞株 は大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター、NCI-Navy Medical Oncology Branch などの 施設より供与され、10%FCS 加 RPMI-1640 などの培地にて継代したものを、肺癌切除検体 は 2007 年 12 月 10 日より 2010 年 4 月 14 日の間に鳥取大学医学部附属病院胸部外科にて切 除され、直ちに-140 ℃で保存したものを使用した。変異の検出にはゲノム PCR、RT-PCR 及びダイレクトシークエンス法を用いた。肺癌細胞株または切除検体から DNA や RNA を抽 出し、PARK2 のエクソン 1-12 の各エクソンを、イントロンプライマーを用いて PCR 増幅(ゲ ノム)、PARK2 エクソン 3-4 の cDNA 増幅(RT-PCR)を行った。得られた PCR 産物を電気泳 動で確認した後、マルチスクリーン PCR フィルタープレートにて精製、標準プロトコール に従ってダイレクトシークエンスを行った。

結 果

PARK2遺伝子変異は肺癌細胞株43株中3株(7.0%)、肺癌切除検体137例中1例(0.7%)

で認めた。遺伝子変異を認めた肺癌細胞株は肺腺癌細胞株18株中2株(11.8%)、小細胞肺 癌13株中1株(7.7%)であった。扁平上皮癌や大細胞癌の細胞株では遺伝子変異を認めな かった。今回肺癌細胞株で認めた遺伝子変異の型は、ホモ欠失が1例とアミノ酸のミスセン ス変異を引き起こすグアニンからチミンへの点突然変異(G>T変異)が2例であった。肺癌 切除検体では扁平上皮癌検体で1例の点突然変異を認め、これはサイレント変異であった。

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3 考 察

PARK2遺伝子は1998年に常染色体劣性遺伝性若年性パーキンソン病の原因遺伝子として 日本人の患者から発見された。PARK2蛋白は,ユビキチン-プロテアソーム系蛋白質分解シ ステムにおいて蛋白のユビキチン化に関与しており,ドーパミン神経細胞内で不要な基質 蛋白の分解処理により神経細胞死を抑制し神経保護的に作用している。今回認めた遺伝子 変異は、PARK2の蛋白構造においてユビキチン様領域、RINGフィンガー領域、RINGフィンガ ー領域に挟まれる領域に位置しており、これらの領域のアミノ酸変化あるいは欠失がPARK2 蛋白の失活をもたらすと考えられる。肺などの上皮系細胞におけるPARK2蛋白の失活により、

肺癌の発生あるいは進展に関与する分子メカニズムは不明であるが、サイクリンEなどの DNA合成に必須の酵素のユビキチン化の障害により細胞増殖が促進される可能性も示唆さ れている。これらの変異が肺癌のなかでも特に腺癌や小細胞癌で存在することが明らかと なった。また、今回認めた遺伝子変異の4種類のうち2種類がグアニンからチミンへの点突 然変異(G>T変異)であり、喫煙者の非小細胞癌に多いとされているKRAS遺伝子変異やTP53 遺伝子変異でもG>T変異が最も多いとされており、PARK2の遺伝子変異の原因の1つとして喫 煙暴露が示唆された。

結 論

PARK2の体細胞性遺伝子変異が肺癌のなかでも特に腺癌や小細胞癌で存在し、いずれも喫 煙と関連した癌形成に関与する可能性を示した。このことは、肺癌の診断や病態解析に PARK2の検索が重要であり、肺癌の新たな治療標的として有用な可能性を示唆するものと考 えられる。

参照

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