博 士 ( 工 学 ) 益 村 公 人
学 位 論 文 題 名
厚層締固めによる盛土構造物のカ学挙動と その管理基準に関する研究
学位論文内容の要旨
わ が 国 に お け る 藍 土 構 造 物 の 構 築 に おい て は , 盛 土 材料 や盛 土の 構成 部位 に 応 じ て 締 固 め 機 械 が 選 定 さ れ て い る . 特に 高 速 道 路 の よう な土 工量 の多 い工 事 で は , 一 般 的 に 転 圧 力200kN振 動 ロ ー ラ が 用 い ら れ , 日 本 道 路 公 団 設 計 要 領 や 道 路 土 工 指 針 で は 盛 土 路 体 の 締 固 め 層 厚 を30cm以 下 と 規 定 し , 所 定 の 密 度 以 上 と な る よ う 締 固 め を 行 う も の と し て いる , こ の 層 厚 規定 は, 締固 め層 厚30cm 以 上 と な る 場 合 , 下 層 部 ヘ 伝 達 さ れ る 締固 め エ ネ ル ギ ーの 減衰 によ り層 内密 度 の 大部 分は 管理 基準 値を下 回る とい う理 由か ら定 めら れて いる .し かし ながら,
30cmの 締 固 め 層 厚 に お い て も , 深 さ 方 向 の 密 度 は 上 層 が 高 く 下 層 ほ ど 低 く な る も の が 認 め ら れ , 盛 土 材 料 に よ り 程度 の 差 こ そ あ るが ,層 内の 密度 分布 は 必 ずし も均 一で はな い.
とこ ろで ,現 在の 高速道 路建 設は 急峻 な山 岳部 を通 過す る路 線が 主体 であり,
取 扱 う 土 量 は こ れ ま で 以 上 に 増 大 し て いる , そ の た め ,こ れら の贐 土で は現 地 発 生 材 を 有 効 に 活 用 す る た め , こ れ ま での 高 速 道 路 で は類 の無 い大 規模 な高 磁 土 が 数 多 く 計 画 さ れ て い る . 当 然 な が ら, 施 工 の 効 率 化を 図る ため 大型 施工 機 械 が 導 入 さ れ , 月 当 り の 掘 削 ・ 運 搬 能 カも こ れ ま で 以 上に 向上 して いる .し か し , 盛 土 施 工 は 上 述 し た 締 固 め 層 厚 規 定の ま ま 行 わ れ てお り, 両者 の施 工能 カ に ア ン バ ラ ン ス が 生 じ て い る . し た が って , こ の ア ン バラ ンス を解 消す る締 固 め 施 工 技 術 , っ ま り 締 固 め 施 工 能 カ の 向上 を 目 的 と し た盛 土の 厚層 締固 め技 術 を 確 立 す る こ と が , 更 な る 効 率 的 な 施 工を 可 能 と し 同 時に 経済 性の 向上 も図 ら れ るも のと して 期待 される .
し か し , 上 述 し た よ う に 転 圧 を と も なう 締 固 め で は ,深 度方 向へ の締 固め エ ネ ル ギ ー の 減 衰 に 伴 い 層 内 に 密 度 勾 配 が生 じ る こ と か ら, 厚層 締固 めで はさ ら に こ の 現 象 が 顕 著 に な る と 考 え ら れ る .ま た , こ れ ま での 高速 道路 贐土 の構 築 に お い て は , こ の よ う な 締 固 め 層 内 に 生じ る 密 度 勾 配 が盛 土の 要求 機能 であ る 安 定 性 や 残 留 圧 縮 沈 下 に 及 ぼ す 影 響 を 考 慮 し た 設 計 は な さ れ て い な い の が 現 状 であ る.
こ の よ う な 背 景 か ら , 本 研 究 で は 締 固 め 層 厚 を これ ま で の2倍 と し た 厚 層 締 固 め 施 工 ( 層 厚60cm) に お い て も , 今 ま で の 設 計 ・ 施 工 に よ る 盛 土 と 同 様 な パ フ オ ー マ ン ス を 保 証 す る 品 質 管 理 基 準を 確 立 す る た め, 密度 勾配 を有 する 驢 土 の 安 定 性 に 関 す る 評 価 を 行 い , さ ら に圧 縮 沈 下 特 性 を考 慮し た品 質管 理基 準 の 提案 を行 った ,
本論 文は ,以 下に 示す7章か ら構 成さ れて いる .
第1章 で は, 関 連 す る 既 往の 研究 をレ ビュ ーし ,本 研究の 目的 を位 置付 けた .
― 136―
第2 章では,高 速道路盛土 の設計法と その品質管理の現状として,盛土構造 物に求 められる要求性能を明らかにすると共に,その設計法及び品質管理の基 本的な 考え方を整理している.また特に,高盛土及び大規模贐土に付加される べき設計上の留意点を詳細に述べている,
第3 章では,厚層締固めに用いる大型締固め機械(転圧力300kN 振動ローラ)
の性能 評価を行う ため,従来 の主流機で ある転圧力 200kN 振動ロ ーラ1 機 種と 大 型化 さ れた 転 圧力 300kN 振動 ローラ7 機種を用い ,粒度の異 なる3 種類の地 盤材料を対象に含水比を変化させた室内土槽転圧試験を実施した,これにより,
締固め 層厚及び含水比の違いによる締固め効果を明らかにするとともに,機械 諸元の 相違に基づ く性能を明 らかにして いる.さら に,日本全 国 26 箇所の高 速道路 建設現場において原位置転圧試験を実施し,その結果から材料特性の違 いによる層内密度分布特性を詳細に調ベ,原位置締固めによる密度勾゛配の定量 評価を試みている.
第4 章では,厚 層締固めに よって生じ る贐土内の密度勾配と圧縮沈下挙動に 及 ばす 影 響を 解 明す る ため , 締 固め 層 厚30cm お よび 60cm に よる試験 盛土を 実施し ,その動態観測結果から種々の解析を行った.また,密度勾配を与えた 供試体 による大型圧縮沈下試験を実施し,非水浸および水浸条件下の圧縮沈下 特性に およばす諸要因を詳細に調べた,その結果,@試験盛土から締固め層厚 の厚層 化による施 工において も道路盛土 としての十 分な機能を 満足する検証 結果が 得られたこと,◎室内試験から密度勾配の程度および含水比や材料の違 いによ り圧縮沈下特性は変化するが,その特性は供試体の平均密度に強く依存 する等の知見が見出されている.
第5 章では,厚 層締固めに よる盛土に おいても,今までの設計・施工による 贐土と 同様なパフオーマンスを保証する品質管理基準を確立するため,密度勾 配を有 する盛土の 安定性に関 する評価・ 検討を進め,さらに第4 章で得られた 結果から,盛土体の圧縮沈下特性を考慮した品質管理基準の提案を行っている,
具体的 には,厚層締固めにより生じた密度勾配の贐土上載荷重の増加に対する そ の変 化 挙動 を 詳細 に 調べ る ため,盛土 内の密度分 布を2 孔 式 RI 計器によ り 計測し た.また,粗粒材料による締固め密度を変化させて実施した三軸圧縮試 験より 得られたせん断強度特性に基づぃて,密度勾配を考慮した盛土の安定解 析を行 った.厚層締固めにより構築された盛土内の密度分布の結果から,施工 初期に 生じた密度勾配の盛土工の進行にともなう変化は認められず,同様な密 度勾配 を有したまま密度が増加すること,また円弧すべり面法による安定解析 から, このような密度勾配の違いが贐土の安定性に及ばす影響を定量的に解明 している・
第6 章では,第 5 章で 提案した品 質管理基準 により管理 された贐土 のパフオ ーマン スを評価している.第二東名高遠道路浜松・浜北サービスエリアで,厚 層締固 め(締固め 層厚60cm )によ る実藍土を 構築し,層 別沈下量の 実測値か ら双曲 線法により 推定される 残留圧縮ひ ずみは構築後1 年程度で収束すること が示されている.また,粗粒材料により構築された既存盛土(締固め層厚30cm ) との比 較から,厚層締固め盛土においても高速道路磁土に要求される圧縮沈下 性能を 十分にクリアできることが明らかにされている.さらに,盛土内ポーリ ング調 査を実施した結果から,厚層締固めによる盛土の強度・変形は従来施工 による 既存盛土と同等以上のパフオーマンスを有することが示され,提案した 品質管理基準の妥当性が検証されている,
第7 章では,各 章で得られ た結諭を総 括し,今後の展望と課題について述べ ている.
―137―
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
三浦 石島 三田地 石川
学 位 論 , 文 題 名
清一 洋二 利之 達也
厚層締固めによる盛土構造物のカ学挙動と そ の 管 理 基 準 に 関 す る 研 究
近年の高 速道路建設では、急峻な山岳部を通過する路線の選定が余儀なくされている。この ような地 点の盛 土では現地発生材を有効に活用するとともに、これまでの高速道路では類のな い大規模な高盛土工が必要になっている。そのため、掘削・積込み・運搬に関する大型機械の能 カを積極 的に活 用し、盛土の施工において効率化を計ることが重要である。しかし現在の一般 の盛土工 では、 締固め層 厚を30cm以 下とする ことが 仕様で規 定されているために、新たな管 理基準を 策定し ない限り合理的な施工の実現は難しい。したがって、このような状況を解消す るー つ の 方策 と し て盛 土 の 厚層 締 固 め 技術 を 確 立す る こ とが 緊 急 の課 題 と なっ て いる 。 一般に、 転圧をともなう締固めでは深度方向へのエネルギー減衰のため盛土層内に密度勾配 が生じる ことか ら、厚層で締固めを行う場合にはこの現象が更に顕著になると予想される。こ れまでの 高速道 路盛土の設計ではこのことについての考慮はなされていないが、締固めを厚層 化した場 合、も たらされる密度勾配が盛土の安定性や残留圧縮沈下性状に及ぼす影響は無視で きない問題となる。
このよう な背景 から、本 論文は 厚層締固め盛土工(層厚60cm)の可能性を地盤工学的に明ら かにする ため、 大型締固め機械の性能評価および任意の密度勾配を有する盛土の沈下特性や安 定性能を 詳細に 研究する ととも に、厚層 化盛土の品質管理基準の提案を行ったもので、7章か らなっている。
第1章 では研 究の背景 および 目的と論 文の概要 を述べ ている。 第2章では高速道路盛土の設 計法の現 状と盛 土構造物に求められるカ学的性能を明示するとともに、高盛土及び大規模盛土 工におい て考慮 されるべ き設計 上の留意 点を詳細に述ぺている。第3章では締固め層厚、含水 比および施工機械諸元の違しゝに着目した室内土槽転圧試験及び原位置転圧試験から、大型機械 による厚 層締固 めによって構築された盛土の実挙動を紹介するとともに、締固め層内に生じる 密度勾配 の定量 的評価法 を示し ている。 第4章では、盛土の圧縮沈下挙動に及ぽす密度勾配の 影響を現 地試験 盛土およ び大型 圧縮沈下 試験の結果と考察から明示している。第5章では盛土
ー 138―
の安定性に及ぽす密度勾配の影響を室内試 験および数値解析から検討を進めるとともに、前章 で明らかにされた密度勾配の影響を考慮し 、高速道路が満たすべきカ学的性能を確保する厚層 締固め贐土の品質管理基準の提案を行って いる。第6章では提案した管 理基準による厚層締固 め盛土で得た種々の動態観測および原位置 試験結果より、管理基準の有用性を検証している。
第7章は結諭で あり、得られた知見を総括するとともに、今後の展望と研究課題を述べている。
本論文の各章で示された 成果を要約すると、次のようである。
(1)厚層締固めでは、層内深度方向において無視できな い密度の低減が誘発される。その分布 性状は盛土材料の示標 特性や含水比の値に強く依存する、また原位置において密度が低減 する割合(密度勾配) は最大で0.8 g/cm3/rri程度となる、などの事実が明らかにされた。
な お形 成さ れる 現場 密度 は、300VR級の 締固 め機械の採用により、締固め層 厚60cmまで は高速道路盛土の路体 部に要求される値に到達することを、一連の原位置転圧試験より示 している。
(2j異 なる 管理 基準 に基 づ いて 構築 した 厚層 締固 めによる盛土および任意の密度 勾配を与え た供試体による大型土 槽転圧試験から、沈下挙動に及ぼす密度勾配の影響は確実に存在す るが、層内の平均密度 を増加させることにより、均質な締固めによる盛土と同レベルの最 終沈下量にすることが 可能であることを見出している。
(3)締 固め 時に 生じ た密 度 勾配 は盛 土構 築後 にお いても存在することが試験盛土 より示され た。このような密度勾 配を有する盛土構造物の安定性を評価するために、種々の構造条件 と種々の盛土材料につ いて解析的研究を進め、均質な密度で作られた盛土と同等の強度安 全率となる盛土が保有 すべき密度勾配と盛土高さの組合せを見出すことに成功している。
(4)以上の研究結果を踏まえて、厚層締固めによる高速 道路盛土の品質管理基準を提案してい る。この管理基準によ り設計・施工された実盛土は、供用上満足すべきカ学性状を示すこ と が 一 連 の 動 態 観 測 お よ び 原 位 置 試 験 結 果 か ら 確 認 さ れ て い る 。 これを要するに、著者は 、これまで未解明であった締固め層内に生じる密度勾配が盛土構造 物のカ学挙動に及ぼす影響 とその評価法を一連の実験と解析によって明らかにするとともに、
密度勾配を考慮した厚層締 固め盛土の管理基準の提案を行い、さらにはその有用性を実盛土の 動態観測および原位置試験 から示しており、地盤工学の発展に貢献するところ大なるものがあ る。
よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の学 位を 授与 され る資 格あ るも のと 認め る。
‑ 139―