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3 次元離散渦法による渦運動の数値解析 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 工 学 ) 石 井 学 位 論 文 題 名

3 次元離散渦法による渦運動の数値解析 学位論文内容の要旨

  われわれの周辺に起きている流体現象の大部分は乱流である。身近な乱流現象の例として,地 球上の大気の循環にともなう気象の変化,あるいは航空機に代表される工学的諸装置に関連する 内部流れ,外部流れがあげられる。

  乱流は, 不規則な変動を伴う無秩序な流体運動 と定義される。しかし,例えば,高レイノ ルズ数における噴流および自由混合層中の渦構造の可視化結果を見ても明らかなように,全く規 則性の無いようにみえる乱流中に,実際には様々な大きさを持つ多数の渦が混在している。この ことから,乱流を 大小無数の渦の集合 と解釈することが可能である。渦を乱流の基本構成要 素とする観点にたっと,一見乱雑で捕らえどころのない無秩序な乱流現象を 大小様々な強さと スケールを持つ渦の運動と,それらの渦の相互干渉 として捕らえることができる。このことに よって多種多様な乱流現象に共通した普遍的な渦構造,換言すれば,普遍的な乱流モデルの構築 に寄与できると期待される。

  渦が作られるためには空間的速度差(速度勾配)が必要である。速度勾配が大きい流れとして せん断乱流(後流,噴流,自由混合層,境界層)があげられる。一様流中でこれらのせん断乱流 ができる要因となるのは,密度の一様な流れ場を仮定すると,物体の壁の存在である。さらに物 体に作用する流体カおよび物体表面の圧力変動に関連して,物体に衝突する渦,物体から放出さ れる渦など,物体とその近傍に存在する渦の関係を調べることは重要である。このように,乱流 現 象 は 渦 と 渦 の 干 渉 お よ び 渦 と 物 体 の 干 渉 の2っ に 分 類 す る こ と が で き る 。   ニュートン流体の流れ場でIま,流体の運動はNavierーStokes方程式によって記述される。こ の方程式を解析的に解くことができれば,実験的に求めることが困難な任意の時刻・位置におけ る速度と圧カの情報を得ることができる。しかし,Navier―Stokes方程式は非線形な慢性項を 含むため,解析的な解が得られるのは,この項を無視できるか線形近似できる流れ,例えば流速 が遅く定常で境界条件が単純な場合に限定される。そのため,この方程式の解を得ようとすると

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数 値的手 法に 頼らざ るをえ ない。 微分方 程式 の数値 解法の 内でそ の結 果を最も信頼できるのは,

モ デルを 一切 取り入 れずに 直接的 に差分 法で 解く方 法であ る。し かし この方法による場合,レイ ノ ルズ数 が大 きいと ,特に 物体近 傍で多 くの 格子点 を必要 とする ため ,計算時間は実際に実行不 可 能なほ ど膨 大なも のにな る。そ こで高 レイ ノルズ 教の計 算をす る場 合には,乱流モデルによっ て 微 細 な 渦 の流 れ 場 に 対す る影響 を定 式化し ,Navier―Stokes方程 式に組 み込 み,空 間格子 お よ び時間 間隔 をある 程度粗 く取る ようにする。現在でも数多くの乱流モデルが提案されているが,

そ の普遍 性に 問題が あるこ とが指 摘され てい る。普 遍性の ある乱 流モ デル構築のためには,第一 段 階とし て簡 単な乱 流にっ いて解 析し, 理解 するこ とが必 要であ る。

  本 研究 は,乱 流を渦 の集合 体と して捕 らえ, 乱流の 基本構 成要 素を考 えられる渦と渦の相互干 渉 を3次元離 散渦法 によ って数 値解析 したも のであ る。

  第1章で は,関 連する 従来の 研究 の概説 ,本研 究の背 景, 本論文 の目的 ,特徴 ,流体 工学 的意 義 にっい て述 べた。

  第2章 で は , 本 研 究 で 採 用 し た3次 元 離 散 渦法 に っ い て 記 述し た 。 離 散 渦法 は ,1931年 に Rosenheadによ っ て 始 め られ た 計 算 方 法で あ る 。 そ の 後, こ の 方 法 は主 に2次 元流 れの計 算に 用 い ら れ て きた が ,1976年 にLeonardに よ っ て3次元 計 算 へ の 拡張 が 行 わ れ た。3次 元 離 散渦 法 は,流 れ場 の中で 渦度が 存在す る領域を分割して渦要素で近似し,渦要素の移動および変形(伸 縮 , 回 転 ) を, そ れ ぞ れBoit←Savartの 法則お よび渦 度方 程式に よって ラグラ ンジ ュ的に 計算 す る方法 であ る。渦 の相互 作用を 数値解 析す る場合 には, 渦度が 存在 する領域のみを計算対象と す る離散 渦法 が,渦 度の存 在しな い領域 も計 算対象 とする 差分法 およ び有限要素法に代表される 領 域型解 法よ りも, 一般に デー夕 数および計算時間の節約ができる点で有利である。さらに,コー デ ィ ングが 簡単で あるこ と, 並列計 算に向 いてい ること など の利点 がある 。しか しそ の反面 ,3 次 元計算 の場 合には 渦度の 発散が 起こり それ 以後の 計算が できな くな る問題点をもつ。本研究の 離 散渦法 の特 徴のー っは, 乱流を 特徴づ ける エネル ギスペ クトル ,工 ンスト口フィスペクトル,

ヘ リ シ テ ィ , 全 渦 度 , 運 動 量 , 角 運 動 量 の 物 理 量 を 容 易 に 計 算 で き る 点 で あ る 。   第3章で は,渦 の相互 干渉の 代表 的な例 として ,円形 渦輪 と直線 渦糸, 複数の 円形渦 輪の 相互 干 渉に対 する 計算結 果とこ れにっ いての 考察 を行な った。 円形渦 輪は ,乱流を構成する基本要素 で あると 考え られる からで ある。 直線渦 糸は 円形渦 輪の半 径を無 限大 にしたものとみなせる。円 形 渦 輪 と 直 線渦 糸 の 相 互 干渉 に は 両 者 の相 対 位 置によ って4っの モー ドの存 在が明 らかに なっ た 。 さ ら に , 並 進 す る2っ の 円 形 渦 輪 の 相 互 干 渉 の解 析 を 行 い , 渦の っ な ぎ 換 えに お け る Bridging過 程 に っ い て も考 察 も 行 な った 。 ま た , 初 期状 態 に お い て正 多 面 体 上 に配 置 さ れ

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た4〜8個の渦輪の相互 干渉では,そのエネルギスペ クトルにKolm ogorovの5/3乗則に近 いスペクトルが現れることを示した。

  第4章では,非円形噴流の軸の回転および分岐に関連して,非円形渦輪の時間発展に対する計 算結果を示した。非円形渦輪として採用した渦輪は,長方形の短辺を半円で置き換えた擬楕円渦 輸である。この渦輪の長軸と短軸の比を系統的に変化させて計算を行った結果,その変形には4 っの基本的な変形パターンがあることがわかった。さらに,擬楕円渦輪を多数の渦管の集合で表 現した場合の計算結果も示した。

  第3章と第4章では,渦輪を中心とする比較的簡単な渦運動を伴う乱流にっいて考察したので,

第5章でtま,一様流中に様々な迎え角(90℃〜45℃)をもって置かれた円板まわりの流れに対す る数値解析を行った。離散渦法を物体周りの流れに適用した例は多いが,そのほとんどは2次元 流れの計算である。3次元物体周りの流れの離散渦法による計算は,一様流中に垂直に置かれた 円板周りの流れのみである。離散渦法に類似した渦糸法による計算を含めても,球のまわりの流 れあるいは自由混合層に適用された報告があるのみでその応用例は多くない。ここでは,計算結 果に基づいてフ口一パ夕一ン,時間平均速度分布,レイノルズ垂直応カおよびレイノルズせん断 応カに関する考察を行った。

  第6章では,本研究で得られた主な結論を要約している。

学位論文審査の要旨

  乱流現象の解明と予測は流体工学における最も重要な課題のーっである。乱流は多数の渦の複 雑な相互作用の結果であると考えることができる。本論文は,この観点にたって渦の相互作用を 数値的に解析し,基本的な乱流の渦構造と統計量を求めたものであり,6章からなっている。

  第1章は序論であり,乱流現象の工学的重要性,乱流の数値解析に関する従来の研究を概説し,

3

勝 博

一 興

   

   

谷 口

田 倉

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本論文 の目的 ,意義 およひ 構成 にっい て述べ ている 。

  第2章では ,本論 文の数 値解 析に用 いた離 散渦法 にっい て述 べてい る。離 散渦法 は渦 度の分布 する領 域を多 数の渦 要素に 分割 し,各 渦要素 の位置 と渦 度をラ グラン ジュ的に計算する方法であ る。こ れには 渦要素 の構成 ,近 接する 渦要素 の取り 扱い などに 関連し て,いくっかの異なる方法 が提案 されて いる。 著者tまこ れらを 比較 検討し ,適切なものとして渦ブロッブ法を採用すること を述ベ ,その 基礎式 の導出 を行 ってい る。乱 流の研 究で はエネ ルギー ,工ンストロフィー,ヘリ シティ および これら のスペ クト ルが重 要であ る。本 章で は渦ブ 口ッブ 法の基礎式に基づいて,こ れらの 基本的 諸量を 渦要素 の位 置と渦 度の関 数とし て解 析的に 表現し うることをはじめて明らか に し た 。 こ れ は 離 散 渦 法 の 乱 流 解 析 へ の 応 用 に お け る 重 要 な 貢 献 で あ る 。   第3章では ,まず 渦ブ口 ッブ 法によ る計算 精度を 検討し ,十 分な精 度を得 るため に必 要な渦要 素の大 きさ・ 個数, 渦要素 のま わりの 渦度分 布の重 なり ,など を明ら かにしている。この結果に 基づ い て 円 形 渦輪 と 直線 渦糸の 相互作 用を解 析し ,両者 の初期 配置に 依存す る四 っの基 本的パ ターン がある ことを 示した 。こ れは速 度の異 なる三 っの 流れが 合流す るときに形成される自由混 合層に 対する 主流乱 れの効 果を 理解す るため の有益 な知 識を与 えてい る。本章では渦の継ぎ換え の際に 発生す る特徴 的な現 象が,渦ブ口ッブ法で表現できることがはじめて明らかにされている。

さら に 本 章 でtま , 正n面 体(n=ニ4,6,8)の表 面 上 に 配 置さ れ たn個 の円 形 渦 輪 の 相互 作用 を解析 し,相 互作用 によっ て空 間的ス ケール の小さ い変 形が発 生した 段階で,工ネルギースペク トルに 広い波 数範囲 にわた って コルモ ゴ口フ ・スペ クト ルが現 われる ことを示している。コルモ ゴロフ ・スペ クトル はレイ ノル ズ数の 高い乱 流の普 遍的 法則で ある。 この法則が比較的少数の円 形渦 輪 の 相 互 作用 に よっ て実現 される ことを 示し たこと は,本 論文の 特に重 要な 貢献で ある。

  第4章では ,非円 形渦輪 の変 形過程 に対す る計算 結果を 示し ている 。最近 ,非円 形ノ ズルから の乱流 噴流は 同一の 面積を もつ 円形ノ ズルか らの噴 流に 比較し て,よ り大きな拡大率と周囲流体 との混 合速度 をもっ ことが 明ら かにな りつっ ある。 本章 の数値 解析は この機構を非円形ノズルの すぐ下 流に形 成され たノズ ルと 同一形 状の非 円形渦 輪の 変形過 程を調 べることによって解明する ことを 目的と してい る。非 円形 渦輪と しては ,二っ の平 行な線 分の両 端をそれぞれ半円で結んだ 中心線 をもつ 渦輪が 採用さ れて いる。 数値解 析結果 はこ の非円 形渦輪 にはアスペクト比(長軸と     丶  ・

短軸 の 比 ) に よっ て っ ぎ の4種 類 の 基 本 的な 変 形 の パ ター ン が あ ること を示し ている :(i)渦 輪の長 軸と短 軸が周 期的に 切り 換わる ;( ii)1回 の軸の 切り換 わりの あとで2個の渦輪に分裂す る;( 血)軸 の切り 換わり なし に2個 の渦 輪に分 裂し再 結合を して1個の 渦輪 になる ;(iv)軸の 切り 換 わ り な しに3個の 渦輪に 分裂 する。(i), (五) および (丗 )の現 象は実 験によ って も確

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認 さ れ て おり , と く に(i)お よ び (五 ) に お ける 軸の切 り換 わり周 期およ び分裂 時間 は実験 結 果 と よ く 一致 し て い る 。 さら に ,(i)お よ び(ii)の 現 象 は, 楕 円 ノ ズ ルか ら の 噴 流 にお い て も 実験的 に確認 され ている もので あり, 本章の 結果 は非円 形噴流 の乱流 構造解明の上で極めて有 用 である 。

  第5章で は ,3次 元離 散 渦法の より複 雑な流 れへ の適用 性を確 認する ことを 目的 として ,流れ の 中にお かれた 円板 の後流 に対す る数値 解析を 行っ ている 。円板 の迎角 を種々に変化させて計算 を 行い, 後流中 の渦 要素, 渦度, レイノ ルズ応 カな どの分 布を明 らかに している。流れと垂直に お かれた 円板の 後流 にfま らせ ん形の 渦構造 のある ことが実験的に知られていたが,これは本計算 で 明確に 再現さ れて いる。 また迎 角が45°の円 板のす ぐ下流 に,互 いに 反対方向に回転する一対 の 縦渦が 形成さ れる ことも 明らか にされ ている 。こ れらの 結果は 渦ブ口 ッブ法の多様な工学的問 題 への応 用性を 示唆 したも のであ り,高 く評価 され る。

  第6章 は結論 であり ,本 論文の 結果を 要約し てい る。

  以 上を要 する に,本 論文は 乱流中の渦構造の変形過程およびこれにともナょう乱流特性の解明と 予 損IJを行 うた めの3次元 離散渦 法の有 用性を 確立 したもので,流体工学上寄与するところ大なる も の が あ る 。 よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 霞 与 さ れ る 資 格 あ る もの と 認 め る 。

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