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岩盤斜面における落石運動の数値解析 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 細 谷 昭 悟

学 位 論 文 題 名

岩盤斜面における落石運動の数値解析 学位論文内容の要旨

  近 年 , 我 が 国 で は 急 峻 な 斜 面 を も つ 山 岳 地 帯 , 海 岸 地 帯 ま で 道 路 網 が 拡 充 さ れ 地 域 格 差 の 是 正 に 寄 与 し て き た 。 ー 方 , こ れ ら の 道 路 網 沿 線 で は , 岩 盤 斜 面 の 崩 落 , 落 石 , 地 す ぺ り や 雪 崩 等 の 自 然 災 害 に 対 す る 警 戒 が 必 要 に な っ て き て い る 。 落 石 に 関 し て は , 早 急 な 対 策 を 必 要 と す る 危 険 箇 所 が 山 岳 ・ 海 岸 道 路 沿 い を 中 心 に56,700箇 所 も あ る と い わ れ , 単 な る 自 然 現 象 と は 言 え な い 問 題 に な っ て い る 。1968年 に 発 生 し た 飛 騨 川 バ ス 転 落 事 故 に お い て , 裁 判 所 は 道 路 管 理 者 で あ る 国 の 過 失 を 認 め , 「 道 路 管 理 者 は 施 設 対 策 と 交 通 規 制 等 の 回 避 対 策 に よ っ て 道 路 利 用 者 の 安 全 を 確 保 す べ き で あ る 」 と の 判 例 を 示 し た 。 以 後 , 道 路 や 鉄 道 に 関 し て は , 防 護 施 設 の 整 備 と と も に 研 究 自 体 の 必 要 性 も 高 ま っ た 。 一 方 , 資 源 開 発 分 野 で は 国 内 に お け る280箇 所 の 石 灰 石 鉱 山 , 約1,800箇 所 の 砕 石 場 で 落 石 が 発 生 す る 可 能 性 が あ り , 防 護 柵 ・ 防 護 壁 の 設 置 , ト レ ン チ の 掘 り 込 み 等 の 対 策 を と っ て い る が , 防 護 対 策 に 関 す る 研 究 事 例 は 多 い と 言 え な い 現 状 に あ る 。

  落 石 に 関 し て は , 「 落 石 が ぃ つ , ど こ で , ど の よ う な 規 模 で 発 生 す る か 」 の 予 知 に 関 す る 研 究 と , 「場 合 に よ っ て は 数10t〜 数100tの 質 量 を 持 つ 岩 塊 の 衝 突 か ら 人 命 , 交 通 機 関 , 建 造 物 , 構 造 物 を 守 る 」 防 護 に 関 す る 研 究 が 必 要 で あ る 。 後 者 の 問 題 で あ る 有 効 な 防 護 対 策 に は , 落 石 源 を 始 発 点 と し た 岩 塊 の 落 下 軌 跡 , 斜 面 末 端 で の 落 下 速 度 , 運 動 エ ネ ル ギ ー , 到 達 距 離 , 跳 躍 量 等 の 落 石 特 性 値 を で き る だ け 正 確 に 知 る 必 要 が あ る 。

  本 研 究 で は , 後 者 の 落 石 特 性 値 に 関 す る 実 デ ー タ 蓄 積 を 図 る た め 採 石 場 斜 面 に お け る 落 石 の ビ デ オ 計 測 を 実 施 し , 既 往 の 落 石 特 性 値 と の 比 較 を 行 っ た 。 次 い で , 個 別 要 素 法(DEM)を 用 い た 落 石 運 動 の3次 元 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム の 構 築 を は か り , 実 測 結 果 を 再 現 で き る か の 研 究 を 行 っ た 。 第1章 は 序 論 で あ り , 主 た る 研 究 内 容 を 第2章 〜 第8章 に 述 べ て い る 。 第9章 は 結 論 で あ る 。

  第1章 で は , 本 研 究 の 目 的 と 本 論 文 の 構 成 に つ い て 述 べ て い る 。

  第2章 で は , 落 石 の 運 動 に 関 す る 既 往 の 研 究 に っ い て , 年 代 経 過 と と も に 整 理 を し た 。 ま た , 現 場 落 石 実 験 結 果 お よ び 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 法 に っ い て , 詳 し い 説 明 を 加 え , 本 研 究 の 位 置 づ け を 明 ら か に し た 。

  第3章 で は , 落 石 の 運 動 形 態 を 特 徴 づ け る パ ラ メ ー タ の ー っ に 岩 石 形 状 が あ り . 落 下 す る 岩 石 形 状 を 塊 状 , 板 状 , 棒 状 の3種 類 に 分 類 す る こ と を 提 案 し た 。3つ の 形 状 に 分 類 す る と き . 縦 軸 に 短 軸 径 と 長 軸 径 の 比(S/M), 横 軸 に 中 軸 径 と 長 軸 径 の 比(1WL)を と っ た ダ イ ア グ ラ ム を 用 い , 境 界 を S/L〓0.4の 横 軸 に 平 行 な 直 線 とM/L=0.5の 縦 軸 に 平 行 な 直 線 で 区 分 す る 方 法 を 提 案 し た 。 ま た , 岩 石 試 料 の 真 重 量 と 長 軸 径 , 中 軸 径 , 短 軸 径 の 積 か ら 単 純 に 求 め た 計 算 重 量 と の 関 係 で あ る 回 帰 直 線 を 示 し た 。

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  第4章 で は , 落 石 運 動 の 現 場 実 験 を 実 施 し , 砕 石 場 の オ ー プ ン シ ュ ー ト に お け る 投 石 の 落 下 速 度 , 回 転 速 度 , 衝 突 前 後 の 速 度 比 , 跳 躍 量 等 を ビ デ オ カ メ ラ で 撮 影 ・ 分 析 し 測 定 結 果 を 示 し た 。 ま た , 岩 石 が 斜 面 脚 部 で 保 持 し て い る 運 動 エ ネ ル ギ ー と 到 達 距 離 の 関 係 を 明 ら か に し , 運 動 エ ネ ル ギ ー が 大 き く な る と , 到 達 距 離 の 分 布 の 平 均 値 は 大 き く な り , 逆 に そ の 標 準 偏 差 は 小 さ く な る 。 運 動 エ ネ ル ギ ー の 値 が 与 え ら れ れ ぱ こ の 関 係 を 用 い て 最 大 到 達 距 離 を 推 定 で き る こ と を 明 ら か に し た 。   第5章 で は , 落 石 運 動 の3次 元 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 理 論 と 数 値 解 析 法 を 示 し た 。 落 石 を 直 六 面 体 の ブ ロ ッ ク で モ デ ル 化 し , そ の 並 進 運 動 方 程 式 と 回 転 運 動 方 程 式 を 組 み 合 わ せ て 解 く 手 法 を 示 し た 。 ま た , 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に 必 要 な9つ の 座 標 系 を 設 定 し 座 標 変 換 法 に っ い て 述 べ た 。 ま た , 任 意 形 状 の 斜 面 に 適 用 可 能 な 岩 石 接 触 判 定 法 と 岩 石 位 置 判 定 法 を 確 立 し た 。   第6章 で は , 前 章 の 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 法 を 直 線 型 斜 面 へ 適 用 し 数 値 結 果 を 示 し た 。 接 触 時 の 剛 性 値 と し て106N/mオ ー ダ の 値 を 与 え る こ と で , 直 線 型 斜 面 に お け る 落 下 速 度 , 回 転 速 度 , 衝 突 時 の 貰 入 量 , 跳 躍 量 , 到 達 距 離 等 に つ い て は , ほ ぼ 実 測 値 の ぱ ら っ き の 範 囲 に 入 る 計 算 値 が 得 ら れ る こ と を 明 ら か に し た 。 ま た , 落 下 速 度 , 回 転 速 度 , 衝 突 時 の 貫 入 量 , 跳 躍 量 , 到 達 距 離 等 の 落 石 特 性 値 と と も に 、2次 元 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は 得 ら れ な い 落 石 の 走 向 方 向 へ の 拡 が り に 関 す る 計 算 結 果 が 得 ら れ る こ と を 明 ら か に し た 。

  第7章 で は , 実 際 に 測 距 儀 を 用 い て3次 元 座 標 を 測 定 し た 斜 面 モ デ ル を シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に 採 用 し , 斜 面 を 構 成 す る 各 三 角 形 の 頂 点 座 標 に 乱 数 を 加 え て 凹 凸 を 表 現 す る 方 法 を 示 し た 。 落 下 軌 跡 , 落 下 速 度 , 回 転 速 度 , 跳 躍 量 , 到 達 距 離 , 走 向 方 向 へ の 拡 が り 等 の 落 石 特 性 値 が 斜 面 の 局 所 的 な 凹 凸 を 発 生 さ せ る こ と に よ り ど の よ う に 変 化 す る か に つ い て 計 算 結 果 を 示 し , 斜 面 の 凹 凸 を 大 き く す る と ,

「 落 下 軌 跡 の 曲 折 が 大 き く な る 」 , 「 斜 面 の 途 中 で 停 止 す る 割 合 が 増 え る 」 , ま た , 「 走 向 方 向 へ の 拡 が り が 大 き く な る 」 等 の こ と を 明 ら か に し た 。

  第8章 で は , 落 石 直 後 の 調 査 に よ り 落 石 源 , 落 石 停 止 位 置 の 座 標 が わ か っ て い る 実 斜 面 に お け る 落 石 事 例 を 再 現 す る た め に3次 元 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 っ た 。 植 生 が 無 い 砕 石 場 斜 面 の 落 石 に 対 し 同 定 し た 解 析 条 件 を , 植 生 が あ る , 崖 錐 が 長 い , 湧 水 が あ る 等 , 相 対 的 に 軟 弱 な 日 方 泊 覆 道 斜 面 に 適 用 し た 結 果 , 極 端 で は な い が , 到 達 距 離 , 跳 躍 量 が 大 き 目 に 算 出 さ れ た 。 そ こ で 解 析 条 件 の う ち , 粘 性 減 衰 定 数 式 の 係 数aの み を 修 正 す る こ と で , 日 方 泊 覆 道 斜 面 で 発 生 し た 落 石 の 到 達 距 離 , 走 向 方 向 へ の 拡 が り 分 布 等 を ほ ゞ 再 現 で き た 。 す な わ ち , 本 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に お い て , 当 該 斜 面 の 解 析 条 件 を 同 定 す る こ と が で き た 。

  最 後 に 第9章 で は 全 体 を 通 し て の 結 論 を 述 べ た 。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    名和豊春 副査    教授    三上    隆 副査    教授    三浦清一 副査   教授    金子勝比古

学 位 論 文 題 名

岩盤斜面における落石運動の数値解析

   わが 国の一般 道路沿線において早急な対策を必要とする危険箇所は5 万7 千箇所といわれ,落石 に対する予知と防護対策を構築することが重要な社会的課題となっている。落石による災害事例は 古く1968 年に飛騨川バス転落事故が発生しており,国内の大学・研究機関では落石の落下挙動を予 測し,防護施設の設計法を整備することが進められてきた。しかし,落石の岩盤斜面での落下挙動は 岩石の特性のみならず斜面の特性の影響も受け,さらにすべり運動,回転運動,跳躍運動など多様な 運動形態をとる。このため,岩盤斜面における落石運動を予測する研究は未だ十分でなぃ状態にあ り,今後の発展が待たれていた。

   本論文は,このような現況の中で,岩盤斜面での落石による災害の発生防止対策への実用化が期待 できる「落石運動の数値シミュレーション法」の開発を目的として,実砕石場斜面における落石の ビデオ計測による実際の落石運動の定量的評価およぴ個別要素法を用いた落石運動の3 次元数値シ ミュレーションモデルについて研究した結果を述べたものである。

   本 論 文 は 8 章 か ら な り , 以 下 に 本 研 究 で 明 ら か と な っ た 知 見を 各 章 ご とに 要 約 す る。

   第1 章では,本研究の必要性と目的について論じると同時に,本論文の全体構成について述べて いる。

   第2 章では,落石の運動に関する既往の現場落石実験結果およぴ数値シミュレーション法につい てレビューし,著者が提案する個別要素法による3 次元落石運動シミュレーションモデルの新規性 と位置づけを述ぺている。

   第3 章では,最初に落石の運動形態を特徴づけるパラメータのーっである落下する岩石形状の分 類方法について検討を行い,短軸径/長軸径比およぴ中軸径′長軸径比をパラメータとして形状を塊 状,板状,棒状の3 種類に分類する方法を提案した。ついで,オープンシュート法を採用している砕 石場において,投下される石の落下挙動をビデオカメラで撮影し,投石の落下速度,回転速度,衝突 前後の速度比,跳躍量等を定量化した。その結果,板状岩石ではすべり運動と回転運動で落下速度が 異なり落下速度分布が2 ピークを有するなど岩石の形状が落下運動に大きな影響を与えることを明 らかにした。また,現場実験結果から落下速度に関する最大速度残存係数は,岩石形状の影響はある ものの、既往の研究結果に基づく経験式でほぼ近似されるなどの実用上で重要な知見も得ている。

さらに,落石の運動は岩盤斜面の凹凸の影響も受けることを示し,斜面に凹凸が存在する場合や.小

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段差が あった場 合は従 来の落石対策で設定されている最大跳躍量2m の値を超える場合もあること を示し,落石防護壁の設計に対して有意義な結果を明らかにしている。

   第4 章で は,落 石運動 の3 次元 数値シ ミュレー ション モデル の理論 と数値 計算法にっいて述べ ている。落石は直六面体のブロックでモデル化し,その並進運動と回転運動の運動方程式の連成に よって落石の運動を解析する手法を提案している。また,任意形状の斜面に適用可能な岩石接触判 定法と岩石位置判定法を確立すると同時に,斜面衝突による並進運動や回転運動の変化に関する構 成式を明らかにしている。

   第5 章では,前章で提案した数値シミュレーションモデルを,形状の異なる岩石の理想的な直線 型斜面での落下へ適用し,逆解析から接触岩盤斜面の剛性定数,粘性低減係数および摩擦係数を推 定している。また,岩石形状の違いにより落石運動に差異があることを示し,さらに2 次元数値シ ミュレーションモデルでは得られない走向方向での落石軌跡の拡がりに及ばす岩石形状の影響につ いても述べている。

   第6 章では,斜面性状が落石の運動に及ぼす影響を数値シミュレーションモデルを用いて検討し ている。斜面は、実際の斜面を測距儀で測定した3 次元座標を有する三角形要素の集合体としてモ デル化し.さらにモデル斜面を構成する各三角形要素の頂点座標に乱数を加えて岩盤斜面の微細な 凹凸を表現している。数値シミュレーションを行った結果,斜面の凹凸を大きくすると,落下軌跡の 曲折が大きくなり,斜面の途中で停止する割合が増加することを明らかにしている。さらに,斜面の 凹凸を大きくすると,走向方向に対する落石軌跡が拡がり,防護すべき範囲が大きくなると述べて いる。

   第7 章では,落石源,落石停止位置の座標がわかっている実際の落石事例を用いて,本研究で提案 した落石運動の3 次元数値シミュレーションモデルの妥当性にっいて検証を行っている。初期の解 析条件として,既知の採石場斜面の値を用いて解析を行い,実際の落石状況との差異を調べ,次に落 石事例の斜面の地質条件や植生条件を考慮して岩盤斜面の剛性定数,粘性低減係数および摩擦係数 の修正を行い,実落石事例で発生した落石の到達距離,走向方向への拡がり分布等をほぼ再現できる ことを 明らかに してい る。このことは.岩盤斜面での2 〜3 例の落石挙動があれぱ本研究で提案し た3 次元数値シミュレーションモデルの当該斜面の解析パラメータの値を同定できることを示すと ともに,様々な地質条件や植生条件での解析パラメータを蓄積することにより,落石事例や現場実験 がな く と も 岩盤 斜 面 の 特性 を 推定 できる 可能性 を示唆し ており ,実用 上重要 な知見 である 。    第8 章は,本論文の結論であり,得られた知見を要約した上で,今後の展望と課題を述べている。

   これを要するに,著者は,個別要素法を用いて岩石の形状を考慮した落石運動に関する3 次元数 値シミュレーションモデルを新しく開発し,その妥当性を実現場での落石挙動や落石事例から検証 したものであり,岩盤工学およぴ防災工学に貢献するところ大なるものがある。よって著者は,北海 道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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